2018年08月12日

8/12やはり買ってしまうのであった…。

午前中から実家に日帰り帰省し、しこたま酔っ払って午後七時過ぎに東京へ戻り始める。酒精に浸された頭で考えるのは、やはり昨日の気になる古本のこと…買うべきか、買うまいか、買うべきか、買うまいか……。よし、営業時間に間に合い、まだ残っていたのなら、これも運命と諦め、潔く買うことにしよう。渋谷に到着したのは午後八時半。エレベーターでで西館八階まで上がり、昨日来たばかりの「渋谷大古本市」が開かれている、人影の少ない催事場に飛び込み、吉祥寺「藤井書店」(2009/07/23参照)のブースを一心に目指す。一番端の上段の木箱の、本の列の上に横に詰め込まれた古本の背に目を凝らす…ある、残ってる!迷うことなく素早く抜き出し、帳場へ直行して精算する。新潮社 新興藝術派叢書「高架線/横光利一」、五千円である。背の下に蔵書ラベルが貼られ、経年劣化の茶色さを誇っているが、それでもこの値段は充分に安いはず。これでこの叢書は「街のナンセンス/龍胆寺雄」「物質の弾道/岡田三郎」「神聖な裸婦/楢崎勤」に続き四冊目を手に入れたことになる。とほくそ笑みつつ、会場の外で袋から本を取り出しページを開くと、横光が将来は捨てることになる、新感覚派スタイルが、眩しいほど本文に満ち満ちている!『O川はその幼年期の水勢をもって鋭く山壁を侵食した』…ぐぐ、シビれる!やはり買って良かった、買って良かったんだ!と確信して記念撮影を行う。するとその行動を、半身の見切れた格好で、入口近くに立つひとりの古本屋さんに鋭い視線でチェックされていた。一連の動きがやはり怪しかったのだろうか。だが、さほど臆することもなく、酔いと、本を無事に入手出来た喜びに包まれながら、本を袋にそそくさと戻し、静かな閉店間際の百貨店を後にする。
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2018年08月11日

8/11城昌幸の『地下鐡サム』!

取材で遠くへ行こうかと思っていたのだが、ここ最近の無理が祟って、どうも身体か重めである。というわけで自分を甘やかし、無理をせずに、ただ近場に古本を買いに行くことに決める。午前十時に家を出て、街に人影は少ないが、妙に混み合う電車を乗り継いで渋谷着。『東急東横店』の西館八階催事場にエレベーターでたどり着き、「第27回東急東横店 大古本市」(2014/08/14参照)を覗き込む。横長の会場に、八本の通路とショウケースゾーンとミニ回遊通路で造り出された古本市である。今日でもう市が始まって五日目…初日に駆け付けなかった愚か者たる己に余裕を持たせるために、まぁ何か読める面白そうなものが一冊でも買えればいいさ。そんな心持ちで熱心に本を選ぶ人の中に分け入って行く。それほど熱の籠らない眼で、本の背をダラリダラリと追いかけ続ける。そして途中で思い出す。そうだこの会場は、いつでも冷房が効き過ぎていて、寒いんだった。半袖でいると、三十分経った頃には、身体がブルブル震え始めるほどである。なので足を早めて、台の上と下に視線を走らせて行く。何冊か気になる本を見つけたが、購入しようとつかんだままになるには至らないものばかり。だが中盤の「石田書房」(2010/01/15参照)の台下に、何故か心に引っ掛かる一冊を発見する。雄鶏社「増刊日曜日 銀座読本」である。野口久光の銀座夜景の表紙絵に惹かれたのは、まず間違いない。昭和二十七年刊の、銀座の表裏に渡り特集した、当時のシティガイド本である。二千円か…セロファン袋からスルリと取り出し、まずは目次の執筆者に注目する。菊岡久利・山本嘉次郎・三船敏郎・原節子・三国連太郎・佐田啓二・淡島千影・春山行夫・北村小松・古川緑波……ふむふむ。おっ、城昌幸も書いているのか…!なにっ、『新版地下鐡サム』だと!城が『地下鉄サム』を書いていたと言うのか!慌てて当該ページにたどり着くと、メインタイトルは『銀座の栗鼠』で、サブタイトルが『新版地下鐡サム』となっている。内容は日本の銀座を舞台にしたオリジナルストーリーで、主人公は若干廿歳のアプレ娘掏摸・リエである。本家の「地下鉄サム」(原作マッカレ―。気が良く腕も良い、地下鉄専門掏摸のサムが巻き起こす都会軽犯罪冒険譚)よろしく、この娘が掏摸仲間と掏摸の矜持を守るため、殊更詳しく描写された昭和二十年代後半の銀座を縦横無尽に駆け回るのだ(タイトルの“栗鼠(りす)”は“掏摸(すり)”に掛かっているのだろう)。おぉっ!「地下鉄サム」好きとしては、決して逃すことの出来ない一冊!と購入決定。その後も更に会場を経巡るが、やはり襲って来た寒さによる震えには勝てずに、そそくさと購入して百貨店の外に逃げ出す。…そして実は迷っている。他に見つけたある一冊を買うべきかどうか…安い気がするんだよなぁ…でもちょっと高いかなぁ…でも欲しいなぁ…読みたいなぁ…どうしよう………。
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2018年08月10日

8/10東高円寺〜高円寺をテクテク。

ちょうど正午に、東高円寺の『蚕糸の森公園』近くに流れ着く。緑陰濃い公園は、降るような蝉の鳴き声に満たされ、まるで巨大な炭酸水のようにジュワジュワジュワジュワ弾けている。公園近くの裏道に入ると、「イココチ」(2009/12/10参照)がしっかりと営業中。
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8/31まで古本20%オフのサマーセールが行われており、グッドタイミング。ワニの本「世界の名探偵50人/藤原宰太郎」を160円で購入する。そのままテクテク歩き通して、高円寺を経由して『早稲田通り』まで、古本屋さんと古本を売っているお店をたどりながら帰ることにする。ところが、『青梅街道』沿いの古道具屋「まるゆう」(2016/02/03参照)では収穫ナシ。『ルック商店街』の「アニマル洋子」(2014/03/14参照)はシャッターを下ろしてしまっている。「大石書店」(2010/03/08参照)&「藍書店」(2014/01/14参照)でもつかむ本は見つからず、「都丸書店」(2010/09/21参照)はシャッターを下ろしていた。ここまでダラダラと来てしまったが、実はそれほど落胆はしていない。何故なら最後に麗しの「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)があるからだ!と余裕綽々で、胸に『睡眠不足』背中に『寝るの大好き』と書かれた奇妙なTシャツを着た外国人と歩調と歩幅をシンクロさせながら、『庚申通り』を遡って行く。ここまでわりと元気に来られたが、「サンカクヤマ」前に着いた時には、すでに体力ゲージが突然怪しくなり始めていた…。フレーベル館トッパンのキンダー絵本「こびとといもむし/肥塚彰・文 黒崎義介・え」(「みにくいアヒルの子」の変形。泣ける!)筑摩書房「世界無銭旅行者 矢島保治郎/浅田晃彦」書物展望社「書物展望 第一巻 第四號 十月號」を計1000円で購入する。うむ、満足。近くの銀行ATMに立ち寄ると、オッサンが端の椅子に座り声を荒げて電話している。「振り込まれた給料の額が、どう考えても少ないんですよ!」…どうか無事に解決しますように。
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これは昭和六年「書物展望」の表4広告。日本橋の「白木屋」が、満を持して巨大百貨店をオープンさせるというものである。『創業二百七十年の老舗 いよいよ十月上旬開店 東洋一の大百貨店』とあり、地下二階地上七階(一部八階)、エレベーター十二臺、エスカレーター三臺などのスペックが表示されている。設計者は石本喜久治。掲載されている写真は実物ではなく、建築事務所が作った模型であろう。『白木屋大火』と呼ばれる、歴史に残る大火事を起こすのは、次の年の昭和七年である。
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2018年08月09日

8/9こネズミとディズニーランド

午後イチに上連雀に流れ着いたので、跨線橋や車両基地に集まる電車をボ〜ッと眺めてから、『良し、古本を買いに行こう!』とまずはテクテク「水中書店」(2014/01/18参照)へ。蚊取り線香の煙に守られながら、まずは店頭木箱を気にしてみる。むむむ、なかなか良い絵本たちが混ざり込んでいるじゃないか!と二冊をピックアップ。他にも単行本棚から二冊抜き取り、店内の堀内誠一が多く面陳された絵本棚を楽しんだ後、奥の帳場でバイトのお姉さんに精算していただく。平凡社「はみだし生物学/小松左京 絵=長尾みのる」九藝出版「ターザン日本へ来る ジャングルの王者たちと全作品 ゲーブ・エソー」フレーベル館「キンダーおはなしえほん いたずら こネズミ/作・いぬいとみこ 絵・村山知義」福音館書店「どうぶつえんのおいしゃさん/降矢洋子さく 増井光子監修」を計400円で購入する。
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「いたずら こネズミ」は未知の『村山知義・絵』絵本だったので嬉しい。1973年の出版なので、村山72歳と晩年の作品である。リアルなこネズミたちが、気色悪く可愛らしい。

そのまま『井の頭通り』をテクテクテクテク東に歩き続けて吉祥寺に到達。駅前も通過して井の頭線の高架を潜れば、そこは「よみた屋」(2014/08/29参照)前。多くの人が店頭棚に取り憑き、左端の老人は何故か棚の整理に一生懸命手を染めている…どうやら本がナナメになっているのが許せないらしい…。店頭で二冊、店内文庫棚で一冊抜き取り、かなり忙し気な本の積み上がった帳場で精算。ちくま文庫「JAMJAM日記/殿山泰司」大日本學術協會「人間の進化/石川千代松」(大正六年刊の『古い最も簡単な生物が如何にして又如何なる變化を経て今日の人間になったのか』解き明かす本。しかしそれより何より、後見返しに貼り込まれた『ガンヂアン書房 香川縣観音時町柳町』とある古いレッテルがとても気になってしまう。おそらく大正〜昭和初期にこの書店名…格好良すぎる!)Walt Disney production「WALT DISENEY'S Disneyland A PICTORIAL SOUVENIR」を計250円で購入する。
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「Disneyland A PICTORIAL SOUVENIR」は『ディズニーランド』で売られていた、お土産用の記念写真集であろう。フロリダの『ディズニーワールド』も最終ページに掲載されていることから、70年代のものと推測できる。豊富な各ランドの写真とともに、必ずはしゃぎ気味のウォルト・デイズニーがそのランドに合った扮装をしたり、アトラクションに乗り込む写真も掲載されている。

そしてそろそろ「本の雑誌No.423 指ぬき逃走号」が発売になりますが、連載「毎日でも通いたい古本屋さん」では、本当に恥ずかしいほど通い詰めている荻窪「ささま書店」を秘密取材!店頭だけで上手く済ませようと思っていたら、見事に店内で高い本を買ってしまいました。だって、我慢できなかったんです!事の顛末は、ページを開いて確かめて下されば幸いです!
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2018年08月08日

8/8古本屋ツアー・イン・教授トランクルーム【第四章】

台風が接近中だが、“盛林堂・イレギュラーズ”として出動を余儀なくされる。イレギュラーズであるからにはボスである「盛林堂書房」(2012/01/06参照)小野氏とともに、都内某所のトランクルーム前。セキュリティの高い鉄扉がガチャリと開くと、そこには懐かしい新保博久教授の笑顔!上京のタイミングに合わせ、教授の飛石書庫でもあるトランクルームの整理を、少しでも進めるための、荒天の下の集合である。今日の作業は、教授がいつもの如く本の仕分けに専念し、小野氏は仕分け本と廃棄雑誌の結束、私が雑誌の運び出し&さらなる仕分けのための箱整理となる。と言うわけで、まずは大部屋2の積み上げられた箱の中から、雑誌をひたすら穿り返さねばならない。ダンボールをふんぬふんぬと移動させ、見やすいように固めて積み上げ、潜む雑誌を廊下に積み上げて行く(文芸雑誌類は意外に重いなぁ)。たちまち失われる体力とともに、廊下はいつものように物品で溢れ返る…何度見ても恐ろしい光景である。
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教授は、せっせと仕分けるとともに、性懲りもなくまだ京都に本を送るために、新たなダンボールを生み出している…や、山村美紗のノベルスなんて、もういらんでしょう!…などと心の中で突っ込みながら、新ダンボールと旧ダンボールを大部屋2に新たに積み上げて行く…。
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旧ダンボールは恐らく三部屋合わせて百箱近くあるのだろうが、資料や本や雑誌や雜物が、引越のドサクサで詰め込まれた状態なので、これはすべて開けてみて仕分けなければならないのである…こればっかりは、教授の上京頻度アップと根気強い作業に期待するしかない…ガンバレ、教授!
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※大部屋1で床に座り込みひたすら本を仕分ける教授。準備万端ジャージに着替え、午前十一から五時間程ぶっ続けで作業中。

そして結束された雑誌を、雨の中運び出すために、控え目に束を積み上げた台車の上に、展開ダンボールを広げて乗せる…何だか百科事典の列に変装した小林少年のような感じに…。
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一度西荻に廃棄雑誌を運び出し、戻ってからは結束作業と整理作業。午後四時半に作業を終了する。…三時間半だが、やはり本との格闘は重く濃密で、身体の芯にどっしりした疲労を残している。これで三部屋ともずいぶん余裕が出来、スペースを作るなどの雑用的仕事も少なくなって来たので(つまり古本屋的には後はひたすら本を運び出すだけ)、今後の作業の進行は、ひとえに教授の腕にかかっているわけである。教授は明日もここを訪れ、仕分けを進めるとのことである。果たしてこのシリーズは、いったい何章まで続いて行くのだろうか…。そんな本日の嬉しい収穫は、今は亡きミステリ古本屋「TRICK+TRAP」のブックカバー。以前いただいた物とは別バージョンで、こちらは、いしいひさいち描くシャーロック・ホームズがプリントされている。他には目をギラリと輝かせて、函ナシで背が赤いテープで補修された春秋社「Yの悲劇/バーナビイ・ロス」を強奪すると、教授が「「紙魚殺人事件」を抜かれてから(2018/06/22参照)、もう完全じゃなくなりました。いっそのことこっちも持って行って下さい」と笑いながら、ぶらっく選書の「Xの悲劇」「Zの悲劇」も手渡される。ありがたや〜ありがたや〜。
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「Yの悲劇」がやはり嬉しい。装幀は吉田貫三郎。この人の民藝チックなデザインワークに、本を手にする度に魅せられて行く。しかしその本がどれも高値なのは何故だろうか…。序文は江戸川亂歩で、冒頭近くの『私は今この翻譯のゲラ刷りを讀み終わったところなのだが、私の中の探偵小説の鬼が眞赤に興奮して踊り出してゐるのを感じる』の素敵で滑稽な一文が、物語への期待を俄然高みへと誘いまくる!
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2018年08月06日

8/6ルビについて少しだけ考える。

そんなわけで谷譲次「テキサス無宿他三十一篇」をオリジナル本で再読しているわけだが、やはり無類に面白い!異国・亜米利加で、“めりけん・じゃっぷ(谷譲次(ジヨウヂ・テネイ)含む)”として生き抜く、怪しくたくましい人たちの、胸のすくような嘘のような活躍小話!デキシーランド・ジャズのような文体で、それらが生き生きと滑るように描かれているのである。しかし今回再読してつくづく思ったのは、ルビを読む楽しさである。通常ルビは、読み難い漢字などに振られたりする、本文を読み易く補助するためのものだが、いつしか文章や表現方法の進化により、別な形で使われるようにもなっている。読み方を表すのではなく、事物の意味や通称などを単語の横に掲げ、文章の現実感&親密感を強固にしたりもする。例えば小栗虫太郎の「黒死館殺人事件」では、読む人を惑わし、迷宮へと誘い込むように、登場する事物に様々な言語のルビが振られている。漢字で読んでもルビで読んでも、もはや本文をそっちのけにして迷宮の脇道に入り込むしかない、まさにペダンチック(眩学的)で暴走的な使用方法である。で、「テキサス無宿他三十一篇」であるが、こちらは漢字の読み以外にも、要所要所の単語に、洋行気分を演出するためか、ブロークンな英語のルビが振られている。『廣小路(アヴエニウ)』『摩天楼(スカイ・スクレイパア)』『小憩(オフ)』『土人の夏(インデアン・サンマー)』『鹿狩り(デア・ハンテイング)』『皿振人足(デイシユ・スウインガア)』『小猫(プシイ)』『熱い犬(ハツト・ドツグ)』『玉菜(キヤベイジ)』『幸福神(マスコツト)』『こせう(ペパア)』『降誕祭・菓子(クリスマス・ケイキ)』『鈴小僧(ベル・ボウイ)』『汚い(ダアテイ)』『四角(コウナア)』などなど。万事がこの調子で、おまけに本文にもカタカナ英語と英語が混ざって来るので、大変にバタ臭い異国情緒が噴出して来る仕組みになっているのである。だが決して読み難いようなことはなく、むしろ頭の中でも軽快にイングリッシュが跳ね踊るのだ。あぁ!谷譲次のとっくにいない九十年後にも、このルビ装置が効果を上げているなんて!
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そんなことをツラツラと考えながら、月曜日の通い路をたどり、午前十一時半の「ささま書店」(2008/08/23参照)へ。ぬぉ、今日はやけに人が多いなぁと驚きつつ、三百円棚から一冊、百円棚から一冊。新潮社「大陸の琴/室生犀星」(函ナシ。満州が舞台の長編小説)學風書院「おばけの歴史/江馬務」を計432円で購入する。「おばけの歴史」はなかなかの拾い物である。
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2018年08月05日

8/5午前中の横浜。

早くから動き出し始め、午前十時ちょうどの反町。古く短く歪なアーケード商店街とビルの谷間を伝い『反町公園』沿いに出れば、赤い『古本まつり』が力無くはためく「神奈川古書会館」が視界に入る。一階の薄暗い横長のガレージでは、昨日今日と「8月反町古書会館展」が開かれているのだ。暑さ厳しく、この時間なら一番乗りか!と会場内を透かし見ると、半袖半ズボンの探検家or南洋の日本兵スタイルの先客二人が、骨張った手足を素早く動かし、棚にがっしり食らいついていた…ま、負けた。だが、実に平和な古本市である。六つの大きな古本島が並び、場内の両脇では大型扇風機が唸りを上げ、温い空気をかき回している。会館前の道路では打ち水も始まっている。そんな緩く温い雰囲気の中、久々の神奈川の棚に視線を走らせて行く。「香博堂」の安売古書棚に秘かに感動していると、「グリム書房」さんが「久しぶりですね。暑い中をありがとうございます。ゆっくり見て行って下さい」と声をかけてくれ、風のように去って行った。結局二十五分ほど滞在し、大日本雄辯會講談社「講談倶楽部新年號附録 怪奇 探偵 情話 美談 最近実話集」(昭和十二年)民友社「風速五十米/武田麟太郎」(昭和二十一年仙花紙版)を計600円で購入する。
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会館向かいの『反町公園』の木陰に立ち、リンゴジュースを飲みながら、本に光の斑を落として記念撮影。「最近実話集」は怪奇と探偵の割合が高く嬉しい。『監獄部屋で消えた女』『若妻の放火事件』『殺人鬼は夫か妻か』『怪盗まぼろし小僧』『闇を縫ふ魔影』などなど。
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2018年08月04日

8/4欲しかった「テキサス無宿他三十一篇」!

なにもかも使い果たした態で、赤堤に流れ着く。もはや朦朧としながら、それでも足はズルリズルリと坂の下の「大河堂書店」(2009/03/26参照)へ。集中力を大幅に欠きながら棚前をうろつき、昭和九年の「中央公論」別冊附録「趣味の旅行案内」を450円で購入する。おぉ、東京鐡道局が出したB4サイズ二色刷りの『花見臨時列車』の時刻表が、折り畳まれ挟み込まれているではないか。小金井堤・三里塚・熊谷・長瀞・江戸川堤・上野公園・飛鳥山・大宮公園・利根川堤・土浦堤・小涌谷・強羅・湯河原・熱海・修善寺などが桜の名所として挙げられている。

そんなものを買ってヒィヒィ家に帰り着くと、懲りずにヤフオクで落札した古本が、静かに行儀良く待ってくれていた。改造社「テキサス無宿他三十一篇/谷譲次」である。函ナシでライバルナシの1500円であった。谷譲次は、本名長谷川海太郎。大正末期から昭和初期にかけ、谷譲次(米国&欧州のルポや体験小説)・林不忘(時代物。代表作は『丹下左膳』)・牧逸馬(犯罪怪奇実録物や家庭小説)の三つの筆名を使い分け、それぞれにベストセラーを叩き出した、驚異の作家である。多数の連載を抱え、道半ばの集大成として『一人三人全集』を出版するなど、華々しく活躍し続けたが、昭和十年に三十五歳で早世。そのため第二次世界大戦を挟んで日本が激変すると、すっかり忘れ去られた作家となってしまったのである。しかし私は、谷が亡くなってからおよそ六十年後の東京で、教養文庫に入っていた「テキサス無宿」と出会ったことにより、探偵小説の世界に深く足を踏み入れ始めることになったのである。その道筋を簡単&あやふやに記してみると、小学生時代は乱歩の少年探偵団シリーズ&偕成社の名探偵ホームズシリーズ、中学・高校は新潮文庫のシャーロック・ホームズシリーズを。大学時代初期は春陽文庫の乱歩文庫(多賀新の版画が表紙)を読み漁っていた。とまぁ、ここまではまだそれほど探偵小説獣道に分け入ってはいない、県道を歩いているようなものだろう。だがある日、バイト先の年上のライターさんと「帝都物語」や探偵小説の話をしていると、久生十蘭を教えられ、どんな流れでそうなったのかよく覚えていないのだが、コーベブックスから出ていた十蘭訳の「ファントマ」を激推しされたのである。本当に面白いのだろうか?と多少疑いつつ取り寄せて読んでみると、これが本当に予想以上に面白かったのである。こうなると、途端に火が点き色々読みたくなってしまい、自然とソロリソロリと探偵小説獣道に踏み入ったのである。最初は十蘭を求め、三一書房の全集を少しずつ買い揃えて行くのだが、やはり全集は高い!もっと手軽に買える本はないのかと色々調べてみると、教養文庫に収録されているのが判明する。街の小さな書店には、教養文庫はあまり置かれていなかったので、大きな書店で探してみると、マイナーそうなtyっと古めかしい文庫があるある。「魔都」は抜群に面白かった。そして良く見ると、この文庫は他の作家の探偵小説も出版しているではないか。夢野久作・小栗虫太郎など(何故かこの時は橘外男までは手が届かなかった。恐らく他の作家とは明らかに異なる鬼畜っぷりを、いつの間にか感じ取っていたのかもしれない…)も読んでみると、やはりこれらも抜群に変わっていて面白い!スゴいな昭和初期の探偵小説は!突き抜けてるな、探偵小説は!もっともっと読みたいぞ!…とまぁそんんは風になってしまったのである。そりゃぁ「魔都」の後に「ドグラマグラ」や「黒死館殺人事件」を途中で投げ出さずに読了してしまったら、毒されてしまうのは必至であろう。そこからさらに桃源社の国枝史郎の「神州纐纈城」に衝撃を受けたりしつつ、ここでようや牧逸馬の実録犯罪シリーズにも手を出してみると、これが実に刺激的!必然的に“めりけんじゃっぷ”物にも恐る恐る手を出してみると、従来とは違った衝撃を受けてしまうのである。畳み掛け、滑るように連なって行く軽妙な文章に、けれん味を感じることなく、素直に驚嘆し、ついには六十年前の文章に笑い声を上げてしまったのである。やっぱり、昭和初期はスゲェ!尖りまくっている!もっとこの人の書いたものが、読みたい!……と言うわけで、この日からジワッと始まってしまった古本屋通い。当時まだまだ初心者の私は、主に神保町と伊勢佐木町に出没し、谷・林・牧の名を本棚に探し求め、なるべく安い本を買い漁って行ったのである…。それから幾星霜、谷譲次の「踊る地平線」と「もだんで・かめろん」(恐るべきことにこの二冊は、「テキサス無宿他三十一篇」と同じ昭和四年の出版なのである)を見かけることはあっても、「テキサス無宿他三十一篇」は一度も見たことがなかった代物である。それがついに、完品ではないが、我が手に落ちたか。東郷青児のイラストと本の厚さと、活字と馴染みの良い厚手の紙の感触を味わいつつ、ブロークンな英語が頻出する文章に、今宵はニヤニヤ耽溺することにしよう。
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2018年08月03日

8/3縄文と補充

昨日は午前中に酷暑のためにすべてのエネルギーを使い果たし、精神的に溶解しながら浜田山に流れ着く。もはや何処に行く気力もなく、すぎ丸に乗車して阿佐ヶ谷へと戻る。動かぬ足を引き摺りながら北口アーケードをたどっていると、やはり自然と「千章堂書店」(2009/12/29参照)に流れ込んでしまう。左側手前の文庫ワゴン横の漫画コーナーに、集英社文庫「暗黒神話/諸星大二郎」が200円で売られているを発見。実はNHK『新日曜美術館』の縄文展特集(ゲストは建築史家の藤森照信)を見て以来、再読したくてしょうがなかったのだ。その時は本が見つからず、仕方なく平凡社の傑作ムック「太陽の地図帖 諸星大二郎『暗黒神話』と古代史の旅」をパラパラ繰りながら、“美”の方向から縄文文化を見つめ直す番組を観賞していたのだ。単行本が家の何処かにあるはずなのだが、良くあるように見つけられなかったので、誠にグッドタイミングである。文春文庫「未来のだるまちゃんへ/かこさとし」とともに計350円で購入する。
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岡本太郎に匹敵するほど、縄文に対する愛と妄想が果てしなくハイテンションに止まらない本編と必携の副読本。登場人物全員が縄文文化&古代史に異様に精通し、全編に渡り日常会話のように古代の祭祀や神々について話し続けるところは、もはやコメディの域であり最高。こんな漫画が「少年ジャンプ」で連載されていたとは…。ムックの漫画のコマを意識し、同シチュエーションでスナップされる諸星大二郎もまた最高なのである。

本日は早起きして本をジリジリとセレクト。結構な重さになったバッグを抱え、西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)の「フォニャルフ」棚の改造手術に取りかかる。本を大幅に入れ替え、動かぬ本を買取と持ち帰りに仕分け、段を二段に減らす…というつもりだったのだが、あれこれ頭を悩ませていると、店主の小野氏がスルスルと近付き「この段、久しぶりに“悪い奴ほどよくWる”さんに貸すことになったんだ。だからお盆明けくらいまでは、まだ使っててもいいよ」とのこと。というわけで何だか中途半端なことになってしまったが、全体的にフレッシュになっていますので、西荻窪方面にお立ち寄りの際は、ぜひとも覗いてみてください!
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2018年08月01日

8/1雑誌ゾーンを掘り起し、徒労に終わる。

幻の“乱歩”ゲームについて書いて思い出したのが、今は亡き新潮社の大判雑誌「03」に載った、サイバーパンクの雄ウィリアム・ギブスンの短篇小説。確か近未来に女の子が、かつての京都を懐かしみ、その昔の街並を保存したバーチャルゲームを、涙を流しながらプレイする…そんな内容だったと記憶している。小説の中のゲームだが、これもまたいつかプレイしてみたいゲームのひとつである。だから途端に、そのタイトルすら忘れている短篇小説が読みたくなり、仕事部屋に唯一あるスチール棚(しかし本棚としてはまったく機能していない)の下部に大量に横積みされた、絵本や雑誌を掘り出して行く。
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…だが、何故か見つからない。日本映画特集や香港特集の「03」は見つかったのに、中折れ帽にトレンチ姿の前田日明が表紙の京都特集が見当たらない…どの段を探しても出て来ない…すべてが徒労に終わり、手を埃まみれにしたところで、ぼんやりと気付いたことがある。もしかしたら、いつかの古本市で売っちゃったんだっけ。う〜ん、そうだとしたら諦めるしかないのだが、何故せめてカラーコピーくらい取っておかなかったのか。バカバカ、俺のバカ!

などと午前中の貴重な時間を費やしながら、午後に外出。銀行で野暮用を済ませ、そのまま西武新宿線に乗り込み、気晴らしの古本買いへと向かってしまう。東村山駅で下車すると、明らかに都心より高温なロータリー。もはや驚かぬが、それでもツラい暑さの中を泳ぎ、「なごやか文庫」(2012/01/10参照)に到着する。店内は、静かな夏休みのような無人販売時間帯である。ゆっくり各棚を見て回り、桃源社「蒼ざめた日曜日 曾野綾子恐怖小説集」ちくま文庫「武士の娘/杉本鉞子」岩波文庫「河童駒引考/石田英一郎」を計290円で購入する。往復の電車代534円を鑑みても、まぁ安い買物である。その往復の車内では、春陽文庫「社会部記者 午前零時の出獄/島田一男」を読み終える。謎解きより何より、スクープ合戦と新聞の一面が出来上がって行く過程がたまらなく面白い。続いて「社会部記者 環状線の女」を読み始めることにしよう。
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2018年07月30日

7/30幻の“乱歩”ゲーム

早朝から原稿書きに集中。途中、午前十一時半の「ささま書店」(2008/08/23参照)詣では滞り無く行い、学研「ムー特別編集 世界ミステリー人物大事典」主婦と生活社「赤毛のアンの手作り日記 パッチワークからクッキーまで」を計216円で購入して家に舞い戻り、再び原稿に集中する。夕方前に形を成し、ホッと一息ついていると、床の上の本の山の間でホコリ塗れになっていた、もはや年代物のゲーム機・スーパーファミコンが偶然目に留まった。挿さりっ放しのソフトは、ゲーム制作会社ヘクトの「イーハトーヴォ物語」(1993年製作)である。イーハートヴォ各地を舞台にした宮沢賢治の童話世界を、失われた七冊の賢治の手帳を求めて彷徨う、RPGゲームである。だがRPGとは言っても戦闘は皆無で(殴られることはある)、ほぼ聞き込み&調査&お使いをしまくるアドベンチャー寄りのゲームと言える。スーファミなので乏しい16BITの表現力の世界なのだが、そんな環境に負けじとグラフィックも音楽も物語も大奮闘しており、プレイしている間はしっかりと宮沢賢治の世界に浸れ、尚且つその世界に疑似侵入出来る、賢治狂いの私にとっては、一生手放せぬだろう名作ソフトなのである。発売当時、よく遺族がゲーム化を許可したなと思ったのを覚えているが、その後花巻の『宮沢賢治記念館』を訪れたら、ロビーにこのソフトが挿さったスーファミがプレイ出来る状態で展示されており、感動のあまり真剣にプレイし始め、時間を忘れて第一章をクリアしてしまったこともあった。

そしてまだゲーム攻略本やゲーム雑誌を作る仕事をしていたその昔に、発売前にヘクトの方が宣伝のため、開発ROMを当時勤めていた編集プロダクションに持参してくれ、プレイしたこともあった。その時には『こんな売れなさそうなゲームを作って、この会社は大丈夫なのだろうか?』と内心失礼なことを思いながら、口ではゲームを絶賛し続け(いや、私的には本当に素晴らしいゲームだったのだ)、「これ、文学シリーズみたいにして、出し続けましょうよ。芥川龍之介とか萩原朔太郎とか(この二人のゲームも本当に面白そう!)」などと調子づいて、夢のような個人的提案を持ちかけた。するとヘクトの方は「実そう思っているんです」と答えたので「ほ、ほ、本当ですか。じゃあ次作は何をっ?」と畳み掛けるように聞き返すと、耳を疑うような驚くべき答えが返って来たのである。「江戸川乱歩をやろうかと企画しています」…えぇ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!「それやりましょう、ぜひやりましょう!絶対やりましょう!『二銭銅貨』とか『盲獣』とか『白昼夢』とか『踊る一寸法師』とか『パノラマ島奇談』とか『二十面相』とかで!」と大喜びで大賛成したのだが、結局何年経ってもそんな乱歩の物語世界を彷徨う変態的RPGが販売されることはなかったのである…やはり「イーハトーヴォ物語」の売り上げが、芳しくなかったんだろうな…ある意味画期的だがオルタナティブなソフトだったからな…。もう宮沢賢治のゲームが存在すると言うだけで、充分満足しなければいけないのだが、それでも今でも時々、ブラウン管のモニター内に、16BITでどうにか表現される幻の乱歩の小説世界を渇望して、哀れに嘆息する己が存在するのである…。よし、久々に「イーハトーヴォ物語」をプレイしてみるか…面白くて、あっという間に二時間強が経過する。イカン、『貝の火』『カイロ団長』『虔十公園林』『土神と狐』と、第四章まで夢中になってしまったじゃないか。次章の『グスコーブドリの伝記』をプレイしたら、恐らく目に涙が溜まってしまう。ここで止めておこう…。
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起動中のスーファミと、背後の画面は『羅須地人協会』一階である。
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2018年07月29日

7/29東京・平井 平井の本棚

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台風が過ぎ去った途端に全力で放射し始めた日射しを恨めしく思いながら、総武線に乗り込んで東へ。昨日順延となった花火大会が行われる隅田川を越え、両国・錦糸町・亀戸でたくさんの乗客を吐き出した後、旧中川を越えて下車。高架ホームから改札に下り北口に出ると、新し気なロータリーである。すぐに西に足を向けテクテク歩んで行くと、線路沿いの道が延び始めるコンクリ法面向かいのビルに、『本』の文字や、カラフルな本が描かれた看板が現れる。ここは昨日7/28に開店したばかりの、出来立てホヤホヤのお店である。内装を手掛けた、“古本屋建築界の安藤忠雄”中村敦夫氏からタレコミをいただいたのである。ピンクと黄色に塗り分けられた『本』とある標の横には、緑色の文庫木箱が四つ置かれている。安売文庫と絶版文庫の組み合わせに胸を軽くドキつかせながら、凝った造作の引戸をスライドさせて中に入ると、店頭箱同様緑の棚で構成された小さな統一感のある空間である。入口右側にはまず小さな棚があり、『文鳥文庫』(最大16ページの名作文特殊文庫)が並んでいる。続く右壁から奥壁にかけて八本の壁棚が設えられ、棚上には文学全集が積み上がり、棚最上段には100均単行本が横一線に並び、現代思想・ビジネス・社会・芸能・タレント・映画・歌舞伎・古書・文学・詩集・井上靖・三浦哲郎・庄野潤三・塚本邦雄・遠藤周作・小川国夫・辻邦生・中村真一郎・写真集などが続いて行く。とはいえ、まだ『値付前』ゾーンなどもあり、少し雑本的な並びを見せている。中央には背中合わせの緑の棚が二本あり、脇に南方熊楠粘菌手拭などを展示しながら、新書・美術大判本・文庫・自然・旅・エッセイ・エッセイコミック・料理・園芸などを揃えている。入口左横には児童文学と絵本が集まり、左壁棚には新刊書や南方熊楠&猫コーナーが設置されている。とここで、お久しぶりの「リコシェ」さんから声をかけられ、店主さんを紹介してもらう。長身痩身の女性店主は、何だかアニメ『名探偵ホームズ』のモリアーティー一味・スマイリーのような素敵な方である。アッ!良く見ると新刊書の棚の前には、独り出版社『共和国』の下平尾氏が本をディスプレイしているではないか。そんな風に知り合いと錯綜し、初めて来たお店で和やかな雰囲気になってしまったので、「リコシェ」さんに圧されまくり、勢いでオススメ本のポップを作成してしまう(店主さんから図らずもスマイリーを連想してしまったので、児童本のドイル「うしなわれた世界」とねずみの国のシャーロック・ホームズ「ベイジル」を推薦しております)。本は安値だが、棚造りは一部以外は、まだまだこれから固まって行く発展途上の模様。しかしお店造りと新刊&古本棚造りの楽しさに満ちあふれているのは確実なので、目を凝らせば良い本が買えそうである。出版芸術社「怪獣小説選集2 怪獣大戦争」(500円!)生活社「都市下層社會/西田長壽編」(『最暗黒の東京』『貧天地饑寒窟探檢記』『大阪名護町貧民社會の實況紀略』『東京府下貧民の眞況』を収録)を購入する。お店の左奥が帳場になっているのだが、黒塗りの木材で縁取られた畳敷きの上がり框があり、そこに置かれたカウンター代わりの、小さな飴色の古いミシン台がとてもとてもプリティーである。何はともあれ、開店おめでとうございます。地元らしきお客さんが「この辺り、本屋さんがないんで、すごく嬉しいです!」と力説しているのが、微笑ましく印象的であった。
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2018年07月27日

7/27パロディ&リスペクト!

多少は過ごしやすい感じがするが、やはり夏であることに変わりはないので、結局いつものように塩塗れになって上連雀に流れ着く。疲労困憊の身体で、感慨深く長い跨線橋を渡って線路の北側に出て、「水中書店」(2014/01/18参照)を偵察する。潮文社リヴ「夢と戦慄の国を訪ねて ドイツ怪奇物語/前川道介」を100円で購入する。続いて西荻窪で途中下車して「盛林堂書房」(2012/01/06参照)に立ち寄り、カバー&表紙デザインを担当した盛林堂ミステリアス文庫の新刊を受け取る。そして手にした瞬間、本当に涙が出るほど爆笑してしまう。「午前零時の男 他三編/紅東一」は、幻の探偵小説家・潮寒二の別名儀によるアクション小説集で、日活映画の無国籍アクションや、新東宝の“地帯(ライン)シリーズ”を思わせる四編を収録している。今回のデザイン依頼には珍しく条件があり、それはなんと『昭和三十年代辺りの春陽文庫と同じにしてくれ』というものであった。『●●みたいにしてくれ』『●●の雰囲気で』などと頼まれるのは、職人デザイナーの私としては良くある出来事である。だが、全く同じにしてくれというのは、やはり掟破りで前代未聞!…それでも面白そうだし、同人誌だしということで、驚異の丸投げをニヤリと笑って快諾する。その結果、本当に『春陽文庫』そのままの本が出来上がってしまったのである。もうパラフィンを掛けてしまうと、『あれ?こんな春陽文庫あった!?』と思ってしまうほどの、馬鹿らしい出来映えなのである!自分としては決してパクリではなく、楽しいパロディであり、その装画にもデザインにも、大好きな昭和三十年代の春陽文庫への万感の思いとリスペクトを込めたつもりである。この文庫は、8/12(日)のコミケ・盛林堂ブースでの販売が初売りで、お店売りは8/15(水)からとのこと。ひとつ皆様もこの悪ふざけに乗っかって、昭和三十年代に『何か考え無しに軽いアクション物でも読みたいなぁ…』というような、銭湯帰りの下駄履きで向かった町の書店で春陽文庫を買う心持ちになって、入手していただければ幸いです!(そして改めて、春陽堂に向って、敬礼!)
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デザインのギャラと共に、無理&無茶を聞いた作業の補填として、表紙周りを改装した東光出版社「東光少年 昭和廿四年十一月号」をいただく。口絵の『高原に轟く銃声』は向井潤吉画!海野十三の遺作と称し『少年探偵長』の最終回が掲載されている!わぁ〜い!そしてさらに、昨日取材で手に入れた面白い本について、小野氏に聞取り調査………なるほど、なるほど。ではあの状態は、正しい当時そのままのオリジナルと言うわけだと、確証が得られて満足する。この何だかもったいつけたあやふやな文章の詳細は、すみませんがかなり先の次々号の「本の雑誌」連載にて。
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2018年07月26日

7/26取材の前後にも古本を買う。

せっかくちょっと過ごしやすくなったのだから、要領良く連載の取材を済ませてしまおうとお昼過ぎに外出。ところがさっそく「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)の店頭に引っ掛かり、二冊つかんで店内に吸い込まれてしまう。すると中央通路のミステリ&幻想文学棚に、世界恐怖小説全集が三冊だけ並んでいるのが目に留まる。気軽に値段を見てみると、515or1030円と超お買い得ではないか!思わず考えなしに全部買ってしまいそうになるが、ぐぐっと我慢して、欲しかった一冊を胸に抱く。東京創元社「幽霊島/A・ブラックウッド 平井呈一訳」河出文庫「薔薇への供物/中井英夫」婦人画報社「MEN'S CLUB BOOKS No.2 SHIRT」を計1236円で購入する。早速カバンを重くしながら、都内某店にて秘密取材…引きが良いのか、店頭で無事に面白い物が買えて良かった。無事に任務を果たした後は下北沢に立ち寄り、「古書明日」(2017/01/31参照)を覗く。棚が質高く豊かで、相変わらず古書の楽しいお店である。左側通路壁棚上段に、竹中労著作がカバーナシで並んでいるのを見つけてしまったので、読んだことのない一冊を選んで精算をお願いする。日新報道出版部「芸能界をあばく/竹中労」(カバーナシ。表4には誰だか分からぬサインが入っている。それにしても、こんなところにサインを入れてもらう何てことがあるのだろうか。しかもこの暴露本にどんなスターがサインするというのか…)を1000円で購入する。
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というわけで、これが取材時間をサンドイッチしたような、ついでの収穫二冊である。
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2018年07月25日

7/25二冊の本に載ってます。

今日はお昼過ぎに吉祥寺の北側に流れ着いてしまったので、まずは駅方面に戻りつつ「藤井書店」(2009/07/23参照)に立ち寄る。入って右側の文庫壁棚が、ちくま文庫・河出文庫・講談社文芸文庫を安く縦横に並べていて豊潤である。講談社文芸文庫「ロンドンの味/吉田健一」を500円で購入する。そのままアーケードを貫き、天井のいやに低い駅下を潜って『井の頭通り』に出て「よみた屋」(2014/08/29参照)へ。店頭で、ブルーノ・ムナーリのミニ図録を百円で発見してニンマリし、入口自動ドア手前の三百円棚からも一冊引き出し店内で精算する。武蔵野美術大学美術資料図書館「Bruno Munari展 -偶然性と意図性の視覚コミュニケーション-」松本清張記念館友の会5周年記念誌「講演集 清張と私」を計400円で購入する。

※夏のお知らせ二つ。
偶然にも本日7/25に発売になった二冊の本に、縁あって色々載せてもらっています。

■集英社「夢の猫本屋ができるまで/井上理津子 協力:安村正也」
三軒茶屋近くの住宅街に去年できた、プリティーな保護猫たちが店員として働く猫本屋カフェ「Cat's meow Books(キャッツ・ミャウ・ブックス)」の、赤裸々にすべての準備と不安と喜びが開陳される、開店&営業記。この中で、開店時の様子を伝えるために、当ブログのレポートがドバッと引用されております。…近々出版祝いがてら、ビールと猫を慈しみに行くことにしよう。
■本の雑誌社「旅する本の雑誌/本の雑誌編集部編」
本を求める旅、本を携える旅、本の世界を探る旅、本の中に溺れる旅…様々なカタチで“本を巡る旅”について集めた雑文集。この中の『本好きの旅ココロエ帖』で『古本者編』として、個人的な旅の心構えと楽しさをブツクサと語っております。

書店でお見かけの際は、この二冊を何とぞよろしくお願いいたします!
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2018年07月24日

7/24古本屋ツアー・イン・教授トランクルーム【第三章】

午後一時前に、家の前の道路にキキッと盛林堂号が停まる…そう、このパターンは“盛林堂イレギュラーズ”としての出動である。向かうは新保博久教授のトランクルーム!前回に続き教授は不在だが、八月に上京予定なので、その時までに少しでも整理を進めておく心積もりなのである。だが、今日もトランクルームのフロアは灼熱である。盛林堂・小野氏がフロア内温度計に目をやると、三十四度!センサーでエアコンが唸り始めるが、ただ熱い空気をかき回しているだけである。活動限界は二〜三時間だろう。今日の予定はトランクルーム小の文庫を運び出し棚をずべて解体、そしてダンボールだらけの方のトランクルーム大の整理…とここまで進めたい。早速小部屋の床にあった本や棚にあった本を大部屋に逃がし、文庫を運び出し始め、小野氏がそれを結束して行く。
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※作業前のトランクルーム小。スッキリしているように見えるが、恐ろしいほど文庫本が二重にビッシリ詰まっている…。

途端に汗塗れになりながら、水分をこまめに補給し、途中にアイス休憩を挟み、それでも確実に早い限界に近づきながら、文庫束四十本を造り出し、棚を五本解体する。するともう午後三時になっている。まだもう少し大丈夫だろうと、大部屋の雪崩れているダンボール箱を多数小部屋に逃がし、右側に現れた文庫本の集合住宅…いや、増築に増築を重ねたような文庫本・九龍城の全貌を露にする。
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これらは旧新保邸の台所周りや、押入れに収納されていたケースである。これらをスパスパ抜き出し、小野氏が素早く結束する。だが三十分も続けたところ、「小山さん、ゴメン。これ戻して。もう縛る手が限界だ!」と文庫束五十五本を作ったところで作業を中止し、撤収作業に取りかかる。時刻は午後四時半…酷暑の中の古本&その他もろもろとの格闘は、やはり三時間が限界であった…。だが、エネルギーをすべて使い果たし、身体は疲労の極地に達しようとも、今日の収穫は掠め取らねばならない!トランクルーム大の壁棚に齧り付き、あかね書房 少年少女世界推理文学全集「魔女のかくれ家/ディクスン・カー」(扉セロファンには、教授の手によるインク消しで描かれた魔女の横顔が!)「マギル卿さいごの旅/クロフツ」盛光社ジュニア・ミステリ・ブックス「物体Xの恐怖/ジョン・キャンベル・Jr」の三冊を拝受する。教授に報告すると『むむむ、痛いところを突いてきますね。でも可愛がってやってください』と返って来る。教授、大事にします!その後はゼエハァ西荻窪に本を運び出し、本日のお務め終了となる。お疲れさまでしたぁ!
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そして家に帰ると、嬉しいヤフオク落札品が到着していた。表紙は黄色い布張りのオリジナルになってしまっているが、中身はちゃんと奥川書房「孔雀屏風/横溝正史」!昭和十七年出版の短篇集であるが、このタイトルから思わず想像してしまう捕物帳ではなく、探偵小説・奇妙な味の小説・防諜小説・戦意高揚ミステリーなど、1932〜1941に執筆した十編を収録しているのである。これが何とライバルゼロで三千円!姿形はちょっと異なるが、まさか手に入る日が来るとは!読める日が来るとは!これが俺の「孔雀屏風」!と小躍りする。『二千六百萬年』は、何と横溝のSF作品!少女探偵小説『ヴィナスの星』では、三津木俊助が荻窪に住んでいることが判明する。ウヒヒヒ、素敵だな。楽しいな。たちまち昼間の疲れが、何処かに霧散した気になる。
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2018年07月23日

7/23夜の西荻窪にて。

またも昨日の話から。ほぼ終日家に閉じこもり、休息をとる。そして夕方になっても決して涼しくならぬが外出。「盛林堂書房」(2012/01/06参照)にて岡崎武志氏と落ち合う。今年もようやく動き出す二人の古本屋本のための企画会議を行うのである。お店では母岩社「詩と芸術の総合誌 ぴえろた VOL.2 1970.MAY」を100円で購入する(特集は『シュールレアリスム』で、滝口修造を中心に組まれ、土方巽・暗黒舞踏の写真も多数掲載)。では飲みながら打ち合わせを、と外に出ると、岡崎氏の様子がどうもおかしい。実は昼から祝いの席で聞こし召し、もうずいぶんと酔っ払ってしまっていたのだ。なので「まずは珈琲を飲みに行こう」となるが、何故か酔い覚ましに「古書音羽館」(2009/06/04参照)→「にわとり文庫」(2009/07/25参照)と巡ってしまう。氏は酔眼をぎょろつかせ、「「にわとり文庫」は何処だ〜」と、ほぼお店の前で小さく叫ぶ。そして店に入るや否や、奥に座るにわとりさんに話しかけ「古ツア君が本を必ず買ってくれるで」と勝手に宣言してしまう。苦笑しながらこちらもにわとりさんとお話しし、クーラーがようやく今日から動き始めたことや、「本の楽市」(2018/07/16参照)の動向などを伺う。六興推理小説選書「探偵コンティネンタル・オプ/D・ハメット 砧一郎訳」を1500円で購入する。その後ようやく珈琲を啜りながら、本の打ち合わせを少々。すっかりエネルギーを使い果たしてしまった岡崎氏のお尻を叩き、河岸を変えて飲み屋に腰を据え、ビールをようやく喉に流し込む…この一杯まで、長い長い道のりだった…。盛林堂・小野氏が所用を片付け駆け付けたところで、岡崎氏は乾杯して早々に帰宅する。おつかれさまでした!その後はビールやハイボールを飲みながら、古本屋と古本の話や『盛林堂ミステリアス文庫』出版計画についてあれやこれやお話しする。

そして今日は、朝早くのまだ涼しいと思えるうちから仕事を片付け、午前十一時半に溶けそうなアスファルトの上を滑って、午前十一時半の「ささま書店」詣でへ。尾崎一雄・川崎長太郎・外山繁・庄野潤三の函入り本がまとめて出されている。と言うわけで、講談社「すみっこ/尾崎一雄」エポナ出版「抹香町/川崎長太郎」ワニの本「因果鉄道の旅/根本敬」神戸新聞出版センター「ジャパン・クロニクル紙 ジュビリーナンバー 神戸外国人居留地」新宿書房「プラハ幻景 東欧古都物語/ヴラスタ・チハーコヴァー」を計540円で購入する。
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これは昨日の収穫「コンティネンタル・オプ」。『六興推理小説選書(ROCCO CANDLE MYSTERIES』は流用装丁で、文字と上の帯色が本によって異なる。西日が当たるカーテンをバックに写真を撮ったら、こんなソフトフォーカス気味になってしまった。これを収穫として飲みの席で小野氏に見せると、パラパラと捲りながら「1500円、安いじゃん……あ、栞がないからか。人物表の栞がないんだよ」とバッサリ。古本屋さんは冷徹である。いいもん!人物表がなくたって、覚えるもん!
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2018年07月22日

7/21神保町でいろいろあった。

すでに昨日のことである。早い昼餉を摂ってから、午後二時スタートの古書会館でのトークに合わせて家を出る。神保町をすっかりパトロールしてから会場入りしてやろうと、古本を買う気満々で街を縦横に経巡るが、珍しく何も買えずに終わる。途中「一誠堂書店」(2010/03/27参照)前を通過すると、「小山さん!」と大きな声を掛けられ振り向くと、ニコニコ笑った番頭さんの姿が。一瞬、たくさんの行き交う人々とともに、店前を瞬間通り過ぎただけなのに…この方は本当に私を見つける名人である。そんな“鷹の目”を持つ番頭さんと言葉を交わし、『東京古書会館』(2010/03/10参照)へ。まずは二階の『情報コーナー』で開催中の『古本乙女の日々是これくしょん展』を覗くと、昭和エロ本とカストリ雑誌といかがわしい&どぎつい紙物と特殊一点紙物と古本屋がおしくらまんじゅうをしている、混沌の世界であった。人間の欲望は、様々な形で花開くのだなと、感心することしきり。会館の七階で開かれたトークは、本日の主人公であるガチガチガチガチの古本コレクターこと“古本乙女”カラサキ・アユミさんが、非常に楽しそうに終始喋ってくれたので、実にやり易く、掛け合いをするこちらも乗せられて走り抜けた二時間であった。途中和み過ぎて、段々と九州弁を頻発するカラサキさんがとってもプリティー。ちなみに彼女にトーク中にプレゼントした本は、清水正二郎本人の削除指定本(2018/04/26参照)であった。無事に大役を果たし、さて、まだ古本を買っていないので地下の『趣味展』でも覗いて行くかと、楽屋で秘かに画策するが、なんとそのまま打ち上げに突入することになってしまった。『明大通り』と『靖国通り』をつなぐ『富士見坂』に面した居酒屋でビールとハイボールに古本屋話をしながら塗れる。だが二時間弱経過したところで、仕事の緊急の直しを依頼する電話がかかって来てしまったので、泣く泣く途中離脱する。表に出ると時刻は午後七時で、空がまだ青く明るい。急いで帰らなければならぬのだが、何処かで古本が買えないものだろうかとも考えてしまう。そんな欲望に血走る目に飛び込んで来たのは、やまだ紫が書いた猫看板が輝く「虔十書林」(2010/01/27参照)!すでに閉店準備に取りかかろうとするところだが、慌てて飛び込み横長の店内を探索する。すると目に留まったのは、右奥の宮沢賢治棚に並んでいた、中央公論社ともだち文庫「どんぐりと山猫/宮澤賢治」である。棚から引き出した瞬間に、とてつもない違和感を覚える…何でこんなに大きいんだ!私の知っている“ともだち文庫”は、B6版。だがこの昭和十七年初版本は、A5サイズじゃないか!背が少し傷んでいるが、即購入することを決意し、先ほどいただいたトークのギャラで2700円を支払う。するとダンナさんから突然「古本屋の方ですか?」と声をかけられる。「いえいえい違います。ただ今日は古書会館に呼ばれてトークをしていました」と言うと、レジの奥さんとともに「あ〜っ!」と何となく納得の歓声が上がる。どうやら何処かで見たことはあるが、正体がまるで分からなかったらしい。「では猫の袋に入れますね」「イラスト、やまだ紫さんですよね」「そうよ。61で亡くなっちゃって…本当早過ぎるわよね」などと会話を交わす。
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家に帰って、持っていた昭和二十一年二刷の「どんぐりと山猫」と比べてみる。中尾涁の装画は同じだが、デザインも違うし、シリーズの通し番号も違っている。初版は『ともだち文庫11』だが二刷は『ともだち文庫1』である。
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2018年07月20日

7/20東京・西荻窪 CARPE DIEM

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昨日は西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)の「フォニャルフ」棚にストトトトンと補充する。店主の小野氏と打ち合わせをしたかったのだが、不在で会えず。結局この日は補充だけに終わる。明けて本日、午後二時過ぎに昨日来たばかりの西荻窪に流れ着いてしまう。いつものように体力ゲージはピコピコ点滅状態…だが、最後の力を振り絞り、先ほど見かけたお店に白昼の幽鬼のように接近して行く。駅からは北口に出て『西荻北銀座』の西側歩道を北進。アーケードを抜け、カツ丼の美味しい赤い日除けの『坂本屋』前も通過し、プラタナスの生い茂る坂を下って三本目の脇道を西に入る。するとすぐに、小さく瀟酒で控え目なアンティークショップが目に入るだろう。その店頭に並ぶ足の長い木箱の一つに、一冊五十円の古本が十冊強並んでいるのだ。『地獄に仏』!『渡りに舟』!と二冊をつかんでドアを開ける。小さな薄暗い店内に目が慣れ始めると、アンティーク&雑貨たちに混ざり、右奥に岩波文庫棚・ちくま文庫棚・美術骨董関連棚もあるのが目に留まる。冊数は多くはないが、ちゃんと店内で古本を扱ってくれているのが、無性に嬉しくてたまらない。しかしそこから本は抜かずに、奥の小部屋のような帳場に入り込み、橋本大二郎風紳士に精算をお願いする。「二冊で百円ですね。お包みしますか?……うわっ!本が熱い!熱いじゃないですか!」「この日射しだから仕方ありませんよ。あ、このままで大丈夫です」「そんな暑さの中、お買い上げありがとうございました」などと楽しい会話を交わす。新潮文庫「楢山節考/深沢七郎」扶桑社ミステリー「ジキルとハイド/ロバート・ルイス・スティーヴンソン」を購入する。駅への道すがらの「TIMELESS」(2012/06/30参照)が開いていたので、店内で少し涼んで英気を養いながら、アスペクト「電子頭脳映画史/聖咲奇」を1500円で購入する。そして明日はいよいよ古本乙女カラサキ・アユミさんとのトークショー。よし、彼女に今回プレゼントする古本は、アレに決めたぞ!
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2018年07月18日

7/18宇陀児が買えたから帰る!

今日も無情に続く炎熱地獄を潜り抜け、命の綱のようなアイスをバリバリ噛み砕きながら、午後一時の中野に流れ着く。今直ぐ帰りたいのだが、まだほんの少し体力が残っているようなので、頑張って『中野ブロードウェイ』まで足を延ばし、ビル内を探索する…が、せっかく来たのに成果ナシ…まぁこういう時もあるさと、『早稲田通り』に抜け出して「古本案内処」(2015/08/23参照)にすべてを懸ける。奥の中央通路右側上段に、案内処には珍しく茶色い古書が一列出現しているのに目を奪われる。しかもだいぶ安い!と気になる本をためつすがめつしていると、棚下に並んでいた、古書ではない一冊が目に飛び込んでくる、光文社「長編推理小説 自殺を売った男/大下宇陀児」である。ビシッとキレイな本で、値段を見ると1800円と、こちらもだいぶ安いので、コバルト文庫「ヨコジュンのSF塾/横田順彌」とともに計2268円で購入する。わざわざ足を延ばしてみて、良かった良かった。だがこれで今日の古本活動限界を迎えてしまったので、警察病院前からおとなしくバスに乗って帰ることにする。
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装丁は駒井哲郎!カバーと扉に版画作品が使われている。だが、“装丁”ということは、このイカしたタイトル描き文字も手掛けているのだろうか?
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