2017年02月23日

2/23古本市2DAYSの準備はスパルタ式!

一週間前と同じく、国立で野暮用をこなすと、やっぱり陽の落ちた駅南口。当然の如く、ビルのエントランス通路を店舗としている「みちくさ書店」(2009/05/06参照)の明かりに吸い寄せられる。
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入口から奥までの壁棚を見た後に、地下一階の店舗にさらに吸い込まれる…相変わらず堅固な棚造りだ…。真ん中棚の上に500均の「古通豆本」が集まっているのを見付け、ちゃんと袋付きの日本古書通信社「明治の貸本屋/沓掛伊佐吉」を購入する。そしてユラユラと阿佐ヶ谷に戻り、「古書 コンコ堂」(2011/06/20参照)の店頭棚に目を凝らす。補充に出て来た若奥さまと挨拶を交わした後、入口右横の棚でコミックやソフト本に挟まれた、肩身の狭そうな古いハードカバーの裸本に目が留まる。引き出すと、アニメーションの専門書であった。ずっしりとしたその本を開くと、アニメ制作の理論と実践が横書きでしたためられているのだが、大量に掲載されているアニメの白黒写真がエクセレント!1930年代〜1950年代の見たこともない海外アニメのスチールばかりで、CMアニメを中心に劇場用CM&オープニングアニメや実験アニメや人形アニメまでもが余すところなく載っていて、見ているだけで楽しいのだ!と言うわけで、昭和三十八年刊の東京中日出版局「アニメーション 理論・実際・応用/ジョン・ハラス ロジャー・マンベル」を103円で購入する。…週末の古本市で売ろうと思っていたが、これはもうしばらく手元に置いて、じっくり愛でることにしよう…。
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家に帰ったらいよいよ今週末に迫った古本市の準備にしゃかりきになる。先ほども「盛林堂」小野氏から電話があり、第二弾として準備した本の大体の量を伝えると、あの会場でちゃんとした市にしたいのならば、もっともっと用意しなければいけないと、ビシビシ指示されてしまった。盛林堂は、わりとスパルタ式なのである。というわけで、もう何度目のアタックになるのか不明だが、自宅各所の古本山に挑み、根性で本を選り分けて行く…これも。これも。これも。これも。これも!完全に自分のキャパを超えた量の古本たち…まぁこのくらいやらないと、本は減らないし、確かに二日間古本を売ることもおぼつかないだろう。もっと、まだ、がんばるんだ!そんな風に作業をヒイヒイ進めながら、いよいよ明日は第二回目の本の搬入と、会場設営と相成ります。おかげで本の山はだいぶ標高を下げたが、まだまだ本が足りないって言われるかも……。古本市って、大変なんだな…。
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2017年02月22日

2/22グラノーラ専門店と懐かしもの屋で古本を買う。

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●上井草「井草ワニ園」
各駅の西武新宿線から、ピンクと白の壁と柱のホームに足を突き出すと、わりと段差があり、油断していた踵に軽い衝撃が走る。ホームベルは『機動戦士ガンダム』。コンクリタイルがアーガイルに埋め込まれた、古いタイプの駅の南口から街に出る。駅前は道路で、東に進めば線路とともに直線に延びて行く『上井草商店街』の入口である。所々下ろされたシャッターにガンダムが描かれており、すぐにアニメ制作会社『サンライズ』のビルも左手に出現する。真っ直ぐ、何のてらいもなく駅から150mも歩けば、道は徐々に下り坂になり始める。そこで右手を見ると、白くシンプルなガラスウィンドウのお店…一見カフェのようだが、その機能も有する“グラノーラ”専門店とのことである。そして店頭には、古本箱が置かれているのである。数段のレンガタイルステップを上がり、白いテント日除けの下の箱をのぞき込む。料理・食・暮らし・絵本など。100均と言うわけではなく、表4側見返しに、糸付きの値段タグが貼付けられており、そこに各々の値段が書かれている。店内はほぼカフェのようだが、すぐ目の前のウィンドウ越しに本棚の裏側が見えているので、勇気を奮ってドアを開ける。ゆったりしたと言うか、情報量の少ないガランとしたイメージの空間である。左がカフェスペースで、正面に厨房カウンター、そして右側壁面に結構本棚が並んでいる。右寄り手前フロアに固まる絵本箱やセレクトコミックで作られた通路に入り、まずは入口右横の棚に目を凝らす。そこには『並んでいるのは古本です』のカードがあったので、本を手に取り開いてみると、見返しにあったのは「古本 一角文庫」のラベルであった。ここは、一角文庫の出張販売棚なのか。この居候なのに意外に多い本の量は、まるで立派な一角文庫の店舗のようではないか。入口右横は旅や街の本から始まり、田辺聖子・村岡花子・高峰秀子・岩崎ちひろ(一段分。ご近所に『ちひろ美術館』があるためか)・100〜300円コミック、そして小さな絵本棚。右壁沿いには、セレクトコミック・暮らし・お洒落・絵本・レコード・植草甚一・本&古本・日本文学・海外文学・幻想文学・美術・映画・現代思想・漫画研究&評論などが並ぶ。キレイ目な本が多く、空間に合わせたライトなこだわり棚造りが為されている。値段は普通。結局グラノーラはいただかずに、カウンターで本の精算をお願いする。向こうから顔を覗かせたのは、ファッショナブルなインパルス板倉風メガネお兄さん。タグ付きは自分の本で(カウンター下に食&音楽の個性的な棚あり)、他は定期的に入替補充も行う一角文庫のものであることの説明を受け、さらに一角文庫の活動内容についても詳しくレクチャーされる。一角さん、幸せなお店に本を置いてますな。主婦の友社「60年代郷愁の東京/本橋信宏」集英社「学習漫画 くらしの相談室」を購入し、ホットなジンジャーシロップお湯割を振る舞われる…美味しい!

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●阿佐ヶ谷「1960年代専門店 甘辛人生劇場 懐かし屋」
のどを生姜でヒリつかせながら、その後は新宿に出て用事をこなし、さっさと阿佐ヶ谷に帰り着く。買物を済ませたり、古本屋の店頭を冷やかしたりしながら、『中杉通り』西側歩道を北上して行く。谷を超えて坂を上がり、駅からはおよそ700m弱の地点。昨年末から開店準備を進めていたアンティーク&懐かし玩具店が、いつもは『Close』の札を出しているばかりだったのに、今日は『Open』になっているじゃないか。これは、やっている!ちょっとガラス越しに店内の様子を透かし見た後、本日二度目の勇気を奮って店内へ。整然とガラス棚やガラスケースに、大量の玩具やキャラ物やアンティークが飾られている。そして壁面に並ぶクラシックな掛時計たちが、ガチャガチャチクタクカチカチと時を刻むオーケストラを奏でている。左奥に帳場があるようだが、誰もいない…と思っていたところ、突然「いらっしゃい」の声がそちらから聞こえて来た…あっ!白髪白髯眼鏡の店主が、ちゃんと帳場にいるではないか。どうやら店内の情報量があまりに多過ぎ、店主を人として認識出来なかったようだ…。実はここは下北沢から移転して来たお店(2013/09/19参照)で、以前は残念ながら何も買うことが出来なかった思い出が。果たして今回は…。壁に飾られた紙物(新宿『どん底』の歌集なんてものが!)や、大小様々なソフビに目玉が吸着するが、肝心の古本は見当たらない。うむぅ〜、残念だなと思っていると、ガラスケースの下の隙間に、薄く横並びに隠されたように本が詰まっているのを発見!我慢出来ずに「下の本、見せてもらっても良いですか?」と聞くと「どうぞどうぞ。ちょっと手が汚れるかもしれませんけど…」「いや、構いません!」となったので、堂々としゃがみ込み、優しく本を引っ張り出して行く。浮谷東次郎・のらくろ関連・古い漫画・雑誌付録・映画パンフ・ソノシートなどがあるが、一番多いのは玩具系のガイド本である。だが、見たこともない良い一冊を掘り出せたので、値段を問うてみると、何と500円だったので喜んで購入する。購入会話を交わしながら、流れで古本好きであることを明かし、時々見に来ることを約束する。鶴書房「のらくろ先生の観葉植物/田河水泡」を購入。
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田河先生のオリジナル観葉植物の楽しみ方をしたためた本であるが、中にはのらくろイラスト(描き下ろし)が満載。遠い世界の果てのような、園芸ギャグ四コマ漫画(もちろん主役はのらくろである)までが収録されており、まるでのらくろ外伝に出会ったような喜びが迸ってしまう。
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2017年02月19日

2/19「あやかしや」をもてなした後、「書原」に別れを告げに行く。

夜に、大市のために上京した広島の古本屋「あやかしや」さんをもてなすために荻窪へ向かう。おもてなしの発案者は古本神の森英俊氏である。午後七時が開始時間だったのだが、仕事が押して遅刻したのを幸いに、夜の「竹陽書房」(2008/08/23参照)をこっそりと訪れてみる。
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おっ、今日の店番は店主夫婦ではなく、時々帳場に座り留守を預かっている老紳士か。では、店主の鋭い視線を気にせず、おおらかに買物が出来るぞ。やけにすっきりした店内だが、通路には市で落札して札を入れる封筒が付いたままの古本束が積み上がっている。そんなものをちょっと気にしながら、扶桑社「大船日記 小津安二郎の思い出/笠智衆」日刊工業「宇宙2025年/パトリック・ムーア」を計800円で購入し、もてなし会場の串カツ屋に駆け付ける。もてなすとは言っても、当然のことながら古本者ばかりが集まっているので、延々果てることのない古本話に終始する。最終的には、いつまでも堂々巡りで出口の見えない帯の話にぐったりしてしまう…いや、確かに面白いのだが、よくもまぁ、帯だけで一時間以上も話せるものだ…。そしてドサクサに紛れて、野村宏平氏につい先日発掘に成功した(2017/02/16参照)動物推理小説「ピースランド殺人事件」に厚かましく署名していただく。
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やった!これで古本の格が急上昇!聞けばこれはゲームのノベライズで、編集部に無理矢理執筆を依頼され、苦しんで苦しんでどうにかでっち上げた小説ということであった。そんな黒歴史的著作に署名していただき、ありがとうございます!ちなみにこの文庫、誰も持っていないと思っていたら、同席した「古書いろどり」(2015/12/12参照)彩古氏が「ボク持ってるよ」とさらりと宣った。うぅむ、さすがは古本神…。

午後十時に散会した後は、通常の帰宅コースは採らずに、丸ノ内線に乗って南阿佐ヶ谷下車。すると大河のような『青梅街道』対岸に、古い昭和四十年代的ビルの「芝萬ビル」が、不夜城のようにそそりたっていた。
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思えばここはとても不思議なビルであった。屋上にフットサル場があり、かつてはアニメ制作会社の『MAD HOUSE』や、エロDVD制作会社が入ったりしていた、まさにキング・オブ・雑居ビルとして君臨した歴史が、杉並の一隅に存していたのである。そしてその一階には『靴流通センター』と、阿佐ヶ谷の文化をどっしり支え続けた新刊書店「書原」が入居していた。だが、その文化のリレーも、本日2/19日をもって、ビル取り壊しのための閉店を迎えてしまったのである…嗚呼。自転車留めの鉄柵が乱立する階段下を突破し、上に駆け上がると、『靴流通センター』はすでに営業を終え、ビルのエントランスは「書原」の天下となっていた。
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これは、一時期南阿佐ヶ谷に住んでいた者としては懐かしく、夜に本屋が開いているホッとする光景なのである。だが店内は当然の如く、平常時とは完全に異なる状況となってしまっていた。お店との別れを惜しむお客さんが大挙押し寄せ、いつもの五倍増しほどの混雑を見せていたのである。店内に突入し、人と擦れ違うのが困難なほどの通路を、どうにか擦り抜け棚を検分して行く。あっ!ちゃんと本屋&古本屋コーナーに『古本屋ツアー』シリーズが並んでいる!ちゃんと取り扱ってくれてたんだと、なんだかとても感激してしまう。そんな店内を楽しみながら彷徨し、最後に購入する一冊を吟味。結局大好きな“夢ちゃん”こと、平山夢明「デルモンテ平山の「ゴミビデオ」大全」を購入し、記念に原稿用紙モチーフの書皮を巻いていただく。感慨に耽りながら表に出て、柱に大きく貼られた閉店の挨拶に視線を走らせる。その閉店挨拶の書き出しは、『昭和四十二年の開業以来、約半世紀にわたり〜』…えっ!俺とまったく年が一緒ではないか!とさらに感慨を深くして、万感の思いを込め、ビルとお店に別れを告げる。
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2017年02月18日

2/18粛々と古本市の準備を進め、家に戻って佐藤さとるを弔う。

日々、身体も心も、2/25・26に開催する個人古本市のために追い詰められて行く。昨日は夜に仕事が終わった後に、古本市を後援していただく「盛林堂書房」(2012/01/06参照)小野氏に、第一弾の古本山を運搬しに来てもらう。文庫はどうにか運び出せ、二往復目の単行本山を台車の上に形作り、エレベーターに載せて階下へ。だが、箱から外に出ようとした時に、単行本の結束が無様に次々と緩んでしまい、入口付近で古本雪崩を巻き起こしてしまう。すべては私の結束が緩いために起こるべくして起きてしまった、情けない事態であった…。このままでは誰もエレベーターに乗れなくなってしまうので、急いで本を退かし、小野氏が本束の再生に猛スピードで勤しむ…本当に申し訳ないっす…。どうにか車に運び込んだ後、西荻までの移動間に、小野氏から古本結束の大事さを、切々と説諭される。私は本を簡単に一文字に縛り、少し持ち運ぶことしか想定していなかった。だが、古本束の積上げに加え、台車移動や車での運搬を経由するならば、移動距離や振動での緩みを計算に入れなければならないのである。おぉ、そうこうしているうちに、後に積み込んだ私の結束部分は、早速緩みつつあるのだった…。
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写真はマンションロビーにて、臨時結束作業中の小野氏である。…本当にすみません…。

そして本日は、会場となる西荻窪『銀盛会館』にお昼前から独り閉じこもり、運び込んだ古本の値付を、ただひたすらマシンとなって継続する。100均・300均・500均に分けた本に、それぞれの値札をペタペタ黙々と貼付け続けるのである。やはり古本屋さんは、商品をただひたすらにどんな時も、作り続ける職業であるな…。そんなことをボヤ〜ッと、値札貼り付けハイに陥りながら思い出し、午後六時までに三分の二を片付ける。次回は来週金曜に再び会館に閉じこもり、新しく運び込んだ本と共に値付を再開し、会場の設営までどうにか漕ぎ着ける予定である。というわけでみなさま、2/25・26は西荻窪で古本とともに心底お待ちしております。さらにたくさんの人々に来ていただけるようみなさまのお力も借り、情報拡散もお願いする次第であります。

★人間としての住居を取り戻すための「古本屋ツアー・イン・ジャパンの大放出古本市」2DAYS!
■2/25(土)・26(日)
■両日共AM11:00〜PM6:00
■西荻窪「銀盛会館一階」(JR西荻窪駅南口徒歩五分 杉並区西荻南2-18-4)
■後援「盛林堂書房」
■古本市のお問い合わせは盛林堂書房 seirindou_syobou-1949@yahoo.co.jp 03-3333-6582

…ふぅ、疲れた。そんな息が詰まるほど古本と対峙した本日のご褒美は、先日手に入れた背の消失した「地球盗難」(2017/02/13参照)の、健康を取り戻した姿である!値付作業の始まる前に、小野氏に危うくすべてのページが離ればなれになる寸前の「地球盗難」を手渡し、普通に読める程度の回復を望んだ修復をお願いしておいたのである。ところが、およそ四時間後の手術後の姿は、予想を遥かに超えた出来映えであった!さすがに糸かがりをするほど手間をかけるわけには行かなかったので、まずは背をボンドで固めた後、本をギュギュッと金槌等で圧縮し、無線綴じの要領で本としての形をまずは取り戻す。その後、お店にあった同じラヂオ科学社「地球盗難」の背をカラーコピーし、紙板でさらに背を補強してから、その上にコピー背を移植し、無事手術完了と相成ったのである。このビジュアルがフランケン的科学小説集……無事に読める!読めるぞ!本を開いても大丈夫だ!これで思う存分昭和十二年の風を、浴びることが出来るのだ!と喜んだ後に、早く読みたい気持ちを抑えながら値札貼りに邁進していると、気づかぬうちに「地球盗難」に値札を貼付けてしまいそうになる…危ない危ない。
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家に帰った後は、自主的な弔いをひとつ。今日の『朝日新聞』朝刊には、悲しい悲しい敬愛する佐藤さとるの訃報が掲載されており、大変にショックを受けてしまう。すでに今月九日に、八十八歳で亡くなられていたとのこと。とにかく私にとっては、昔住んでいた横須賀の“谷戸”を原風景として作品に生かした『コロボックルシリーズ』と「わんぱく天国」が、児童文学の忘れ得ぬ金字塔として輝いているのだ。悲しみに暮れながら、家にあった児童文学本を掻き集め、自主的に敬愛する作家を弔う。佐藤暁名義の本たちは特別な宝物であるが、コロボックルシリーズが『冒険コロボックル』としてアニメ化された時の帯が付いた「だれも知らない小さな国」(昭和四十八年の十四刷で、絵は村上勉)も即物的だが、とても嬉しい本なのである。『だれもの心の中に住む愛らしいコロボックルたち!!』『いま、日本中のテレビで大評判の「冒険コロボックル」その香り高い原作です!!』『土曜日の夜の人気者「冒険コロボックル」の主人公たち』『土曜のテレビで大人気!! 「冒険コロボックル」の名原作』などなどの惹句が、アニメキャラとともに踊っている。箱周りには、合計七つの『コロボックル』という言葉が散りばめられた事態に…とにかく佐藤さとる先生、素晴らしい物語をありがとうございました。私は多分老人になっても、「だれも知らない小さな国」と「わんぱく天国」を愛で続けると思います。
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2017年02月16日

2/16またもや夕暮れの最中の古本屋

国立近辺で野暮用をこなしていると、いつものように夕暮れを迎えてしまう。家路をたどる途中に、『旭通り』の東南端から駅へ向かっていると、都合の良いことに夕暮れの中の「ユマニテ書店」(2009/06/22参照)前を通りかかる。最近、夕暮れの古本屋に行き着くことが多くなっているが、どのお店もなんだかホッとする、昼間のお店とは微妙に異なる、美しい店頭光景になっていると感じてしまうのは、古本屋好き故の贔屓な視点のせいであろうか…。
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歩道が狭いために100均ラックしか出ていない侘しい店頭。だが中に進むと、古書多めの棚がふわりと古本心を気前よく受け止めてくれるのだ。帳場付近に近付くと初めて「いらっしゃいませ」と小さく声をかけるご婦人に、ぺこりとお辞儀しながら静かな静かな二本の通路を行き来する。ここは値段はしっかり目だが、所々鉛筆で値段が書き換えられた値下げが敢行されているので、そこに望みを賭けて、面白そうな本を手に取って行く。十分ほど滞店した結果、千円から五百円に値下げされた弘文堂世界文庫「樺太島紀行(上)/チエホフ」(ちなみにこの文庫、(上)とあるが(下)は未刊行である)を購入する。ご婦人は帳場下をガサゴソしながら、「すいません、ウチの袋じゃないんですが…」と照れながら、『国際交流海外視察団派遣計画』という袋に文庫を収めていただく。帰りの電車でボヤボヤしながらも、18ページまで読み込む。まだ樺太に着いてもおらず、『樺太は島ではなく半島説』という過去の誤りを列挙している段階で阿佐ヶ谷駅に着いてしまう。

家では色々やりつつ、相変わらず古本市用古本束の作成に勤しむ。ようやく四十本を越えたところだが、どうせ盛林堂さんには「全然まだまだ足りないよぉ〜」と怒られるに違いない…。そんな風に打ちひしがれながらの今日の発掘本はこちら。私のバイブルでもある「ミステリーファンのための古書店ガイド」作者である野村宏平氏の異色推理小説、エニックス文庫「ピースランド殺人事件」である。動物たちの楽園で、大富豪であるキタキツネが殺され、真相解明のため動物たちが珍騒動を繰り広げる…と折り返しの解説にはある…すみません、まだ読んでいません。だが『あとがき』だけチラッと見てみると『それにしても動物の世界を舞台にした推理小説というのはむずかしい。だって、動物の世界には、人間の世界とは違ったルールがあるでしょ。そこをちゃんと説明しておかないと、推理小説のフェアプレー精神に反することになっちゃうもんね』と、とてもファンシーな設定なのに、ミステリマニアとしての筋を通そうとしているところが、真面目で何かおかしい。実はこの本、ちょっとしたレア本なのであるが、近々野村氏にお会いする予定があるので、さらなるレア本にしてもらおうといやらしく画策中なのである。
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2/15中央線重鎮の話に耳を傾ける。

午後に「中央線古本屋地図(仮)」の取材があり、そこに照準を合わせて始動する。テクテク歩き始めて「古書 コンコ堂」(2011/06/20参照)に立ち寄り、店頭棚から角川文庫「黄色い犬/ジョルジュ・シムノン」「箱舟時代/長田弘」新潮新書「SF魂/小松左京」を計315円で購入し、先日BSの番組『TOKYOディープ』に「コンコ堂」が出て来た感想をひとしきり伝える。そのまま荻窪までさらに進軍し、「ささま書店」(2008/08/23参照)でTRIAL Books「東京路線バスの旅」日本地歴企画調査会「わたしたちの文京区」(学校で配布された、郷土教材的副読本。本郷古本屋街の記述があり)を計210円で購入し、駅近くの喫茶店で岡崎武志氏と合流し、一時間半ほどたっぷり取材。紐解かれる中央線古本屋さんの歴史話に、うっとりと聞き惚れてしまう。…これは早くどうにかまとめて、みなさんにお伝えしなければ…というわけで鋭意編集作業中なので、どうかお楽しみに!

夜はある会合のために三宿に向かい、そのついでに「江口書店」(2010/03/29参照)に突入する。創元推理文庫「思考機械の事件簿V/ジャック・フットレル」ベースボール・マガジン社秘境探検双書「謎の山 アムネ・マチン/レナード・クラーク 水谷準訳」支那文献刊行會「迷樓記 外十一種/田村初」を計700円で購入する。嬉しかったのは大正十四年刊の「迷樓記」で、中国の珍談奇談怪談を集めたアンソロジー集。帳場前の本の山の底から背文字に惹かれて取り出すと、見事大好物な本だったのでニンマリ喜ぶ。
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2017年02月14日

2/14「神楽坂サイクル」は健在であった。

珍しく雑誌対談の仕事が入ったので(もちろん古本屋についてである)午後に神楽坂へ向かう。『1番出口』から地上に出ると、対談場所に指定されたブックカフェ『神楽坂モノガタリ』はすでに目の前なのだが、まだそちらには足を向けずに、逆側の西へテクテク。するとすぐに古びた自転車屋「神楽坂サイクル」(2012/07/10参照)が見えると同時に、うほっ!店頭には未だ頼もしく継続している、小さな古本販売箱が視界に飛び込んでくる。近付き見下ろすと、相変わらず硬めと言うか、融通の利かなさそうな函入本のラインナップ。
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だがせっかく足を留めたのだ。何か買っておきたいと、潮出版「透明な時の中で/島尾敏雄」を200円で買おうとすると、料金缶に放り込むべき小銭がないことに気づく。慌てて先のコンビニまで足を延ばし、チョコを買ってお金を崩す。そして自転車屋まで戻り、百円玉二枚を缶に落とし込む。そうこうしいるうちに、対談の時間が近付いて来てしまったので、さらに慌てながら『モノガタリ』へ。古本屋や書店について、ペラペラと熱く楽しく語り合ってしまう。当対談については後日詳細をお知らせしますので、どうか発売日に書店に駆け付けていただければ幸いです。

帰りは『神楽坂』を東に下り、飯田橋より帰路に着く。家に帰ってからは、仕事をしながら再びの古本束作り。だが、500均〜自由値付けゾーンに入ってからは、本の選択に時間がかかり、あまり山を切り崩せない状況が続く。仕方ないので、再び均一本候補をある程度掘り出しつつ、そのスピードと勢いでアンコになりそうな古本をジワジワッと選び続ける。結局二本の束を作ったところで、あっという間に疲労してしまったので、本日の作業を終了とする。今日の再読したかった発掘本は、ちょっと手こずっている、なかなか高さの減らない仕事部屋左側の山から出て来た二冊を紹介しよう。一冊目は港雄一の「犯し屋ブルース」。最低のタイトルだが(“犯し屋”は港の男優としての異名でもある)、ポルノ映画男優・港の駆け抜けて来たマイナー映画世界の貴重な記録であり、抜群な面白さを誇っている。大和屋竺の名作『荒野のダッチワイフ』主演時のエピソードが載っているのも高得点。二冊目は薄手の自費出版本で、有名切手マニアが、切手を題材にした珍しい小説と言うことだけで昭和六十三年に復刻した「探偵小説 切手の奇遇」である。昭和三年に講談社「キング」に掲載された、ゆったりとした二段組み十ページの短篇で、大阪と東京を舞台に『キ半銭』という稀少なエラー切手を巡るストーリー。作者の此木久山は切手マニア界重鎮のペンネームで(他に『洒落録保留無寿』という筆名も)、挿絵は松野一夫。解説は基本的に、コレクターとしての作者と切手のことばかりなのが、ただただ素敵である。
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2017年02月13日

2/13アニマル洋子〜反町茂雄〜海野十三

新高円寺での野暮用を済ませ、夜の兆候が頭上から舞い降りて来た『ルック商店街』を北へずんずん進んでいる。途中、緩やかな坂が始まる前の右手に、お店の入口すべてに防寒用ビニールを下げた「アニマル洋子」(2014/03/14参照)の冬の姿。店頭棚から、見たこともないシリーズ物B5版ムック、柳正堂書店「中部山岳放浪の記録 伝説と怪談」「甲・信・三河・秩父多摩・富士・昇仙峡をめぐる 伝説と怪談」共に泉昌彦を計200円で購入する。奥に座る店主と軽く挨拶を交わし、再び商店街を遡上して行く。
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ガード下の「都丸書店」(2010/09/21参照)では、店頭棚の隅に縦になっていた小冊子を引っ張り出すと、古書鑑定の権威であった反町茂雄の「弘文荘待賈古書目 第二十九號」であった。最近熊本より届いた「舒文堂河島書店」(2008/12/22参照)の目録に何冊か載っているのを見たばかりなので、素敵なめぐり逢いだと購入を決める。嬉しい三百円。門外漢な古文書や江戸版本が踊る目録なのだが、後学のために持っておくことにしよう。

そのまま歩いて家に帰り着くと、おぉ!ヤフオクの落札品が無事届いているではないか。多少息を荒くしながら封筒をひっちゃぶくと、現れたのは海野十三のラヂオ科学社「科学小説集 地球盗難」である!ふぅむ、こんなに厚い本だったのかと驚くと同時に、悲しみにも暮れる…予想外の安値で落札出来たのだが、もちろんそれには大きな理由があった。残念ながら背が消失しているのである。とは言ってもなんたって、戦前の海野のオリジナル本なのだ。松野一夫の無邪気とも言える装幀イラスト、横山隆一による著者シルエット、質感のある本文紙、そして活字で組まれた科学小説群…昭和十二年の風が本の中から吹き出してくるようではないか。小説は読んだことあるものばかりだが、この本でもう一度読めるのは、必ずや過分な幸福となるであろう。しかし本は、今にもバラバラに崩壊してしまいそうなほど、危うい状況。…これは、あの人に手術してもらうとするか。しっかり直ったら存分に読み込んで、さらに強く昭和十二年の風を浴びることにしよう。
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2017年02月12日

2/12必死に計三十六本の本束を縛り上げる。

今日は誠心誠意古本に一日を捧げることを決め、早朝午前七過ぎに家を出る。向かったのは門前仲町『富岡八幡宮』の骨董市である。『骨董市には開始時間の早朝から訪れるべし!』というのが猛者の定説であるが、時々当てはまらないことも起こり得る。それは!ゆっくり目に準備するお店がちょこちょこ見受けられるので、あまり早く着き過ぎると、目指すお店がまだ開いていないという悲惨な状況に陥ることがあるのだ。今日が案の定そんな日で、楽しみにしていた古本屋さんは、ダンボール箱すら開けていない悲しい状況であった開店を待ち望みつつ、冷た過ぎる早朝の空気を吸い込みながら、しばし境内フラフラ散策する。美術系古本のお店に、萩原朔太郎の「定本 青猫」が並べられているのに驚き、ある店では、家庭内ゴミ箱のような円筒ケースの中にソフビや人形消しゴムが詰め込まれているのを発見し、ガサゴソ漁ると、触角は折れて塗装も所々剥げているが、常に悲哀を誘う仲間外れライダー・ライダーマンをつかみ出すのに成功する。こんな状態だ、五百円くらいだったら喜んで買おうと思い、ちょっと高台にいる店主にソフビをグッと掲げ「これお幾らですか?」と聞くと「1500円」と苦虫を噛み潰したような顔で即答される。すまん、ライダーマン!と心の中で詫びながら、そっと円筒の中に人形を戻す。そんな風に楽しみながら時間を潰し、件のお店を再訪してみると、ダンボールは置かれているが、店主は他の店主と話し込んでしまっていた。主に雑誌付録や古い漫画が売れなくなって来たことを嘆いている。開いている箱の中を覗くが、紙物ばかりで収穫ナシ。早々にお店を離脱し、脇参道の開店中だったお店に行ってみる。すると先ほどより品物が増えており、見応えあり。古い郷土ガイド本の中から出版社も出版年月日も不明の「大東京百景寫眞帖」を千円で購入する。恐らく昭和十年代の、東京の名所や戦争記念物や街の様子を掲載した粗悪な写真集である。百景と謳っているが、実際に掲載されている写真は百六枚である。
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これはビルディングのページである。紙はわりと上質であるが、表裏で質感が異なっている。そこに戦争の影をユラユラと感じ取る…。

一旦家に戻って、再び外出。荻窪「ささま書店」を経由して、海文堂「帆船への招待/荒川博」朝日新聞社「ファディッシュ考現学/田中康夫」新潮文庫「昨日のツヅキです/都筑道夫」を計315円で震えながら購入してから、西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)へ。古本市の準備もそうだが、「フォニャルフ」を放置するわけにはいくまいと、ほとほとと補充する。後は店主・小野氏と市の打ち合わせや「中央線古本屋地図(仮)」の話や、市場で仕入れた垂涎の新入荷などを見せていただいたりする。だが、ここでいつまでもウカウカと楽しく話しているわけにはいかないので、早々にお店を離脱して帰宅する。そこから馬力をかけて、ひたすら古本の準備に没頭する。結局昼過ぎから夜九時まで休み休み続け、計三十六本(およそ千冊)の古本の束を作成する。
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…つ、疲れた…手の油が、すべて紙に吸い取られてしまって、カサカサだ…縛って積上げた本は、家にあるにはなかなか凶悪な量となったが、まだまだ本の山は減りそうにないな…根性で後千冊は用意しなければ…後半戦は残りの500均本とちゃんと値付する本の作成に傾注だな…疲れた身体と頭でそんなこと思いながら、本日の発掘した一冊を紹介。集英社の学習漫画「シートン動物記4 裏町の野良ネコ」。2015/02/07に牛久の「高島書店」(2009/04/23参照)で入手した、急逝した谷口ジローの超初期単行本なのである(名義は『谷口治郎』)。私にとっての谷口ジローは、「事件屋稼業」と「LIVE!オデッセイ」と「飢狼伝」と「坊ちゃんの時代」に尽きる。そして恥ずかしながら、本当は「事件屋稼業」の主人公・深町丈太郎のような大人になりたかったんだが、やっぱり、なれず終いだったなぁ。それでも諦められずに、せめてあんな高潔な精神で格好良く無様に生きられたらとは、今でもまだ思っているのだが…。
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2017年02月11日

2/11妙なスライドを買ってしまい早速持て余してしまう。

色々片付けつつこなしつつ彷徨い、気づいたら陽が落ちる瞬間の西荻窪駅北側。駅方面へと戻る途中で、裏通りの週末営業古本屋さん「TIMELESS」(2012年06月30日参照)の灯火に引き寄せられる。
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店内で暖をとりながら、主に入ってすぐ右側の棚を吟味。中間上段にちょっとだけ古い本が増えているな…おっ!背が少し壊れているが、新潮文庫の甲賀三郎「犯罪発明者」が…三千円かぁ。とため息をつき、隣りの筑摩書房「眞昼の暗黒/アーサー・ケストラー 岡本成蹊譯」を引き出してみる。見返しに『書き込みあり』ということで400円か。古本エネルギーを補充するために購入する。あれ?帳場に座る人が、ハンチングに白髪のナイスミドルだが、店主はもっと若い人ではなかったっけ…いや、それだけいつの間にか、時間がギュンギュン流れたと言うことなのかな…。後でセロハン袋から本を取り出し開いてみると、『書き込み』というのは、譯者が歌人夫婦に送った、献呈署名であった…。

阿佐ヶ谷に帰り着き、今日は覗くこと叶わなかった「J-house」(2015/12/26参照)朝市の残滓とも言える、店頭100均ダンボール箱を、すっかりあきらめムードでガサリゴソリ。すると予想に反して、面白気な物をいくつか発見してしまう。泰光堂「たのしいおり紙ときり紙/高橋春雄」とフジカラーのスライド箱を計200円で購入する。スライドは箱が可愛かったのと、中にちゃんとマウントされたスライドが詰め込まれていたので、好奇心が勝り購入を決意。家に帰ってから一枚一枚電灯に翳して目を凝らしてみると、昭和四十年代の、オヤジと少年(二人とも日本人)のアメ車旅行を撮影したものであった。面白いは面白いのだが、私はこれをいったいどうするつもりなのだろうか…。
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そして夜にまた古本市の作業をコツコツ進める。そんな今日の再読したかった発掘本は、講談社X文庫「ようこそ雪の館へ ルピナス探偵団/津原やすみ」である。現在、津原泰水名義の創元推理文庫「ルピナス探偵団の当惑」に収録された一話の、原型少女推理小説版文庫。確かまだツアーブログを始める前の、2006〜2007年辺りに、今は亡き鹿児島の「満遊書店」で100円で購入したものである。倉庫型店内にエスカレーターのある、大きなリサイクル系のお店であった。
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2017年02月10日

2/10「うつぎ書房」にて雪宿りする。

今日は中野で長々とお仕事。雪が散発的に降り始めた午後四時前に完遂し、フラフラフラフラと、時折風とともに舞い来る雪片を惚けるように楽しみながら、やがて新井薬師駅前広場…「文林堂書店」(2008/08/04参照)が開いている。店頭に出された本の悉くが、『強風のため置いています』と書かれた板きれに押さえられている。そう言えば今日初めて気づいたのだが、今の日除けはいつの間にか新調されたものであるなと、変わらず今は入れぬ二階と一緒に見上げていると、店頭棚の下段に目を凝らす素敵なオヤジさんがいつの間にか出現。お店のカオスさとマッチした、これぞ見事なまでの古本屋的光景である。
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オヤジさんを邪魔せぬよう店頭から二冊を手にして、中へ。じっくりすべての棚を、コックピット式帳場に座る店主のチラ見視線をあっけらかんと受け流し、見て回る。だが中では何にも手が伸びず仕舞い。早川書房「定本 半七捕物帳」講談社文庫「その夏の今は・夢の中での日常/島尾敏雄」を計400円で購入する。お店を出たらそのまま改札を抜けて西武新宿線下りに乗り込み、鷺ノ宮駅下車。橋上改札を抜けて階段を下り、南の妙正寺川前に出ると、突然恐ろしく雪が降り始め、まるで吹雪のようになる。ちょっとだけ雪を避けるために『中杉通り』を渡り、「うつぎ書房」(2008/08/06参照)にてしばしの雪宿り。
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店主は店内入口近くで、買取したコミックと文庫と同人誌の整理真っ最中であったが、飛び込んで来た珍客のために、作業を一時中止して、奥の座敷でやむを得ない一休みに入る、その隙にこちらは棚をキョロキョロと、服にこびり付いた粉雪を融かしながら楽しみ、奥の本の壁裏の棚にちょっと隠れていた、櫻井書店「北風ぞ吹かん/寒川光太郎」をどうにか引きずり出し、500円で購入する。外に出ると、おや、もう雪は消えている。

家に帰ってちょっと休んでから、ジリジリ古本市の作業に取りかかる。しばらくは地道な100均本作り…と手を動かしていたのだが、同時に目玉本を各古本山から取り寄せる作業も進めてしまう…楽しいが、悲しい…これを本当にお前は売ってしまうのか?と自問自答しながら生木を裂くようなセレクトを続ける…だが、これらの本を手にして喜ぶ人がいれば、それはそれで本望なのである。あっ!椅子の下から、再読したかった講談社現代新書「ファンタジーの世界/佐藤さとる」を発見!こんなところに紛れていたのか。やはり安針塚の思い出から始まる導入部、グッと来るなぁ…。
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まだまだまだまだまだまだ序の口な光景。しばらくここで仕分けをした後に結束し、ドバッと『銀盛会館』に運び込む予定なのである。
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2017年02月08日

2/8「なごやか文庫」の古本市と今年最初の「たけうま会」!

今日は楽しみにしていた「なごやか文庫」の「大古本市」(2012/02/15参照)初日である。午前十時からの開催に照準を合わせて家を出て、午前九時三十五分に東村山駅に到着。タッタカ歩いて文庫の入る『社会福祉センター』に突入すると、入口付近にはすでに常連の古本修羅&レコード修羅&絵本修羅が十人ほど固まっていた。なんとなく列が出来ているだけなので、奥の古本市会場に向かう態の、古本修羅の塊に何となく身を寄せておく。開場五分前に、職員の指示により確固とした列が形作られ、ラジオの音が流れ始めたのを合図に、列が突入を開始する。後から走って来て追い抜く、傍若無人な修羅もあり。私が目指すのはもちろん、入って右側の四本の古書棚である。パッと見た感じ良さげな並びで、期待に胸を膨らませながら、早くライバルが多数出現する前に見極めて行かなければと、さらに焦燥胸に渦巻かせて棚に張り付く。すると隣りに老年修羅が現れた。こちらが気になる本をスパスパ抜き出すのを見て「あぁ、いいなぁ。眼鏡がないと見えない。こりゃあ眼鏡をかけないと、何も分からない。いいなぁ、すぐ見えて」とつぶやき始めたので、「がんばりましょう!」と無責任に励ましつつ、手と目を素早く動かし続ける。今年は仙花紙本が多い気がする…ソ連関連も目立つな…。すると腕の中には、たちまち二十冊ほどの本が積み上がってしまった。古書は一冊二百円なのだが、これはちょっと買い過ぎだ。端っこに寄りつつ、抱いた本を改めて吟味し、必要なさそうなものを棚に戻しながら、もう一度じっくりゆっくりと棚を眺めて行く。すると当然の如く見逃した本がチラホラと見つかり、結局本が増えることに…阿呆か、俺は。もう一度端に寄り、さらに吟味してみる。それにしても、これだけ抱えてこれだけ迷うということは、今回の古書棚の質はかなり良いものであることの証明であろう(私にとってという意味で)。途中二階のレコード市を経由して現れた岡崎武志氏に、古本を抱えた姿を見つけられ声をかけられる。その後メイン会場も回ってみるが、文庫も単行本も新古書的な並びで、ちょっと手が出なかった。結局古書十七冊を計3400円で購入する。市は12日(日)まで。外の硬く浅いソファでお茶を飲みながら、岡崎氏と例の「中央線古本屋地図(仮)」について軽く打ち合わせつつ四方山話。富士塚話で小さく無邪気に盛り上がる。ちなみに私のお気に入りは、『品川神社』『代々木八幡宮』『十条富士神社』にある富士塚である。氏と別れ、二階を一周してから正午前には帰宅する。本日の特に嬉しい収穫は、森書房「歌姫物語/W・サッカレエ 平井呈一譯」東光出版社「少女小説 乙女ごころ/片岡鐵兵」(仙花紙本なのに二色の挿絵ページが所々に挿入されている)萬里閣「外地の魅惑/大宅壮一」(昭和十五年の大宅による南支・満蒙探索記。銀座「三昧堂」の古書ラベルあり)弘道閣パレット文庫「ロマンスグレー/平野威馬雄編」(新書サイズで箱に穴が空けられた造本を、何処かで見た覚えがあることに気づく…そうか、乱歩邸で見た楠田匡介の「能率的な事務の執り方」と同シリーズなんだ。内容は『ロマンスグレー』をテーマにした特殊なエッセイ集。嬉しいことに楠田が参加しており、オッサンの夢のような四人のギャルたちとの熱海旅行妄想小説を載せている)昭星社「開化飛龍車/宇井無愁」日本電報通信社「魔法の窓 テレビジョン/フランク・デンマン」(テレビ普及黎明期の啓蒙児童書。図版豊富で、最後はテレビジョンのSF的発展章で幕を閉じる。表4の『原子爆弾と並んで、世紀が生んだ奇蹟、テレビ!』とあるのがスゴい)岩波書店「プー横丁にたった家/ミルン作 石井桃子譯」(昭和十七年の初版である)久保書店昭和三十一年「かっぱ3月号」の八冊であった。それにしても、本を減らすために古本市を開くと宣言したばかりなのに、早速こんなに買ってしまった…。
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夜…というか午後五時から渋谷にて、今年初めての『たけうま会』。第一回目(2016/05/10参照)と同じく「たけうま書房」稲垣氏と「古書 赤いドリル」那須氏とお酒を酌み交わす。飲めば飲むほど無礼講となり、自己検閲せざるを得ない、古本屋界のお話盛りだくさん。でも最終的には、『古本屋稼業は苦しくはあるけど、とても楽しく人生を賭けるに値する!』という格好良いところに落ち着く。これからも迷わず付いて行きますので、引き続き楽しくもあり苦しくもありの古本屋さんの生き様を見せていただければ幸いです!
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2017年02月07日

2/7「古本屋ツアー・イン・ジャパンの大放出古本市」2DAYS!

というわけで、最近ポロポロ発言していたたったひとりの古本市を、いよいよ開くことになりました!発表したからには、これでもう逃げることは出来ない…。後はがむしゃらに古本を泣く泣く準備いたします!

★人間としての住居を取り戻すための「古本屋ツアー・イン・ジャパンの大放出古本市」2DAYS!
■2/25(土)・26(日)
■両日共AM11:00〜PM6:00
■西荻窪「銀盛会館一階」(JR西荻窪駅南口徒歩五分 杉並区西荻南2-18-4)
■後援「盛林堂書房」
■古本市のお問い合わせは盛林堂書房 seirindou_syobou-1949@yahoo.co.jp 03-3333-6582
■古本に占領されつつある住居を、どうにか再び人間の住み易いように復元するための、単独極私的大古本市開催。三つの部屋にある五つの古本山を切り崩し、大量に放出! 奥の方に何が眠っているのか分からないので、発掘作業は、実は楽しみでもあります。そして懸命にがんばって、あの会館を埋めるぐらい値付けして本を運び出し、なるべく安値で販売しようと思っております。私が全国から集めて来た古本を受け継いでくれる勇者を、心の底からお待ちしております!寄ってらっしゃい見てらっしゃい。買って下さい古本を。

…いやまぁ、多少古本を売って来たとは言え(その古本販売がさらなる古本購買に拍車を掛けたとも言えるのだが…)、ブログを初めて九年目。毎日古本を買っていたら、そりゃあ部屋は恐ろしいことになってしまう。台所にも、居間にも、そして仕事部屋にも、何処にも本棚がないのに、盛大に古本が蔓延る状況は、今更ながらだが、やはり多少ゾッとせざるを得ないのだ。ある日の夜中にパッチリ目が覚めたとき、横臥したこの身に迫る高い古本タワーの影は、その人智を越えた量感を、昼間よりもまざまざと味わわせてくれた。ある時の打ち上げで本棚探偵と話している時に、集合住宅の六階に本を溜めていることを告白すると、「い〜けないんだ、いけないんだ。一階じゃないといけないんだ」と、やたら嬉しそうに注意された。ある時、古本屋さんの買取を手伝い、本を運び出していると、見た目を遥かに上回るその凶悪な量と重量に、慄然としたことも何度か。そんなことが重なり、少しは身軽にしなければと考え始めた末に、人間が住むに相応しい住居をこの手に取り戻すための、単独古本市に行き着いたのである。最初は普通に古本屋さんにドバッと引き取ってもらおうかとも考えたのだが、せっかくなのでまずは安値で販売した後、売れ残ったものを引き取ってもらえば、一石二鳥であろうと、捕らぬ狸の皮算用…。というわけで、100均・300均・500均もたくさん準備する予定である。さぁ!市までもう二十日余り!まだ100均分を少ししか用意してないので、本腰入れて商品作りに励みます!
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写真は各部屋に点在する古本山や古本タワーや古本崖や古本塊である。果たしてこれが古本市後にはどのように変化するのだろうか…。
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2017年02月06日

2/6「澤口書店 小川町店」は閉店セール20%off中!

午前十一時過ぎに水道橋駅に降り立ち、古書街のパトロールに取りかかる。ガード下から『白山通り』を南下し始め、初っ端の「有文堂書店」(2010/09/03参照)でまだ開店準備真っ最中のオヤジさんから宝文館「随筆集 植物學九十年/牧野富太郎」を500円で購入する。そのまま南に早足で下り続け、愛しの「日本書房」(2011/08/24参照)では先客のライバルが店頭和本タワーに執拗に挑んでいるのを目撃し、ハラハラしてしまう。彼が退いた後に慌てて飛びつくと、ちょっと良さげな仙花紙本が、しっかり残っていたじゃないか。良文堂書店「江戸自慢 風流伊達姿/桑野桃華」(桑野は探偵小説「ジゴマ」の訳者でもある。この本は二代目市川團十郎の小説で、装幀や口絵を伊藤晴雨が担当している)を300円で購入する。
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そのまま通りを下り、今日はいやに長い焼肉屋の行列横を通過しながら、「アムール」(2011/08/12参照)でコロナ社コロナ・シリーズ「人工衛星/新羅一郎」「渦/鬼頭史城」を計100円で購入。『靖国通り』では西に東にと行き来するが、結局何も買えずじまいだったので、すぐさま古書街から離れるようにして『靖国通り』を東へ東へ…。そうしてようやく『小川町交差点』を過ぎると、地下鉄出入口の横のビルの谷間に挟まれた、コメントタレコミ近々の閉店を知った「澤口書店 小川町店」(2008/08/14参照)が見えて来た。あっ、確かに店頭新書棚の脇には、赤い『閉店セール20%off!!』の貼紙がある。セールは二月末まで…今後は、神保町の「神保町店」(2011/08/05参照)「巌松堂ビル店」(2014/04/12参照)と「東京古書店」(2014/12/17参照)に、すべての機能を集中させるということだろうか。ビルの谷間の青空をバックにした、『安い本』やドデカい『本』の看板を仰ぎ見て、四角い洞窟のような店内に足を踏み入れる。右には文化系の専門書が並び、左は文庫を中心に文学や歴史が続く。主に文庫棚に意識を集中して、恐らく最後になるであろうお店での買物を楽しむ。店内には「巌松堂ビル店」の詳しい店内見取り図あり。しかし、入口近くと、奥の曲がり込み少し上がり込んだアダルトコーナーの、蛍光灯の明滅具合は、なかなか激しいものがある。大都会のど真ん中なのに、無闇に場末感を覚えてしまうほどである。…今がこの状態ということは、恐らく閉店までこのチカチカ状態で、乗り切るつもりだな…。新潮文庫「幻花/梅崎春生」を20%オフの160円で購入する。そしてこのお店での心残りと言えば、今はもう入れぬアダルトだらけの二階に、一度くらい勇気を出して上がってみるべきだったかなということ。いったい外から様子をうかがえぬ階上は、どんな構造になっていたのだろうか…。
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2017年02月05日

2/5東京・新宿 ホホホ座 at BEAMS JAPAN

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野暮用で横浜方面の実家に里帰りし、夜になって東横線で帰京する。東横線に乗り続けて渋谷駅を通過し、電車が各駅の副都心線に成り代わった後に、午後七時前の『新宿三丁目駅』で下車したところで、昨日から京都の「ホホホ座」(「古本屋ツアー・イン・京阪神」P45参照)が『新宿丸井本館』裏の『BEAMS JAPAN』にて、3/5までの期間限定ショップを開いているのを思い出す。果たして古本が売っているかどうか定かではないが、念のため足を運んでみるかと『A2出口』から丸井前に出て、『明治通り』からその裏側に回り込み、若者で賑わいを見せるガラス張りの『BEAMS JAPAN』ビル前。通り側のウィンドウには、路面電車・嵐電が写る大きなポスターが貼り出され、横にはコラボショップのロゴマーク。そのガラスの向こうには、商品を品定めする、お洒落な若者たちの楽しそうな顔・顔・顔。角面の入口から中に入ると、異様にジャポニズムを意識した、モダンシンプル和匠な空間。入口近くのウィンドウ際には、ホホホ座がセレクトした独特な京都商品や雑貨・ZINEなどが集められ、ほぼ若者のためのニューウェイブなミニ京都が出現中。入口右側のカフェスペース前には、三方(切腹するときお尻を乗せるやつ)が巨大化して重層化したような台があり、京都の銘菓や新刊本などが並べられている。その裏側に回り込むと、おっ!三十冊ほどだが古本がちゃんと並んでいるではないか。すべては京都に関する本で、歴史・史蹟・寺社・人間・風土・祭事・庭・文化財・動物園などなど。値段はほとんどが千円以下で、リーズナブルな印象である。下の段には「月刊京都」というローカル雑誌が、三十冊ほど横積みされている。ふむふむと一冊選び、奥の全国を象徴的記号的に並列化したようなジャポニズム商品を集めた棚にぐるりと囲まれた、奇妙な神殿的レジで精算をしようとすると、お客をひとりずつ、丁寧過ぎる過剰な接待&包装を施しているので、大いに神殿外で待たされてしまう。京都新聞社「京都 滋賀 秘められた史跡」(京都と滋賀がワンセットになっているコンセプトがワンダフル!)を購入し、ホホホ座作製の『ホホホ座の考える京都エリア地図』も手に入れる。レジ待ちで瞬時にちょっと疲れてしまったが、古本をちゃんと売ってくれていて、本当に良かった…。
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2017年02月04日

2/4夜の「バサラブックス」で一日の疲れを癒す

日中を吉祥寺近辺で仕事して過ごす。気づけばすっかり夜となり、疲れた身体から気力を絞り出してズルズルと歩み、週末の賑わいを見せる駅周辺にたどり着く。すると突如、古本が買いたくなり、中央線高架南側に出て、ついこの間訪ねたばかりだが、棚の印象がすこぶる良かった「バサラブックス」(2015/03/28参照)に立ち寄り、己を慰めることにする。
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三角形の店内に入り、集中力をすっかり欠いたまま、棚に漫然と視線を注ぐ。河出文庫「贋作吾輩は猫である/内田百閨v洋泉社「ボンクラ映画魂/杉作J太郎」「幻の怪談映画を追って/山田誠一」を計1600円で購入し、お店のオリジナルプラ袋に三冊を入れてもらい(結婚式を迎えた花婿&花嫁の間に天上への階段が伸び上がるシュールなイラスト。こんなのあったんだ)、フラフラと帰路に着く。

もうこの『映画秘宝コレクション』の単行本1と3を、私は何冊買ったことだろうか。ともにもう二十年前の本なのだが、未だにこの二冊は、我が心の中に作るべき本のバイブルとして、燦然と輝いているのだ。片や東映映画出演男優の極私的&偏執的エンサイクロペディア(後に徳間書店からA5版の増補本として復刻されるが、本としては断然こちらの方が素敵なのである)で、片や大蔵映画や新東宝の怪談映画をマニアックに追跡したノンフィクション。この人たちが取り上げなければ、きっと時代の片隅に永遠に忘れ去られたであろう人や事柄についての集積が、見事な本になっているのである。己の独自の視点で、まさにその己にしかまとめえない仕事…いつか、いつの日か、この二冊に比肩する本を作ってみたいと、常に目指し願っているのである。だがやはり、その道のりは、まだまだ果てしなく険しく遠い…。
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2017年02月03日

2/3「雲波」復活!久米元一!! 中川信夫!!!

昨年店主の急逝により、休店を余儀なくされていた国分寺の「古本 雲波」(014/09/05参照)が、いよいよ本日から奥さまが店を継がれ、再始動!新たなるお店の門出を目撃するために、中央線で西へ。巨大タワーマンション建築の槌音が響く北口を抜け、商店街を通って『国分寺街道』の坂道に出る。北にグイグイと向かい、ベーグル屋の前を通り、右手前方に今日も「才谷屋書店」(2012/05/07参照)が開いていないのを確認すると、青い日除けの下の「雲波」は、以前と同じ姿で営業中であった。
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均一壁棚を眺めてから店内に上がり込むと、すでに先客が三人ほど。恐らく本日の再開を待ち望んでいた方々ではないだろうか。棚には変わりなく本が詰まり、安値で良書を並べていた雲波らしさを保持している。つまりは、左側の絵本や児童文学関連(絶版漫画が繁殖中…)以外は、元のままなのである。だがこれからは、奥さまが棚を整理したり補充したり買取したりして、古本屋を営んで行くことにより、ゆっくりゆるゆると変化し続け、新たな雲波の展開を見せて行くのだろう。それにしても、いつの間にか店内には、本棚や床板の木の香りではなく、古本の匂いが満ち満ちている。…う〜む、とても良い香りだ…。じっくりと店内を一周している間に、先客はみな古本を買っていく。奥さまは活版印刷について聞かれたり、「これからもう、ずっと開いてるの?」などと聞かれたりしながら、新たな営業日と営業時間を伝えている(12:30〜19:00で金土日月営業。夏休み&冬休みあり)。くさぶえ文庫「子どものための科学の本/吉村証子」毎日新聞社「餓鬼一匹/山中恒」を計650円で購入し、新たな門出をささやかに祝う。

再び中央線の人となって、西荻窪下車。「盛林堂書房」(2012/01/06参照)に立ち寄り「フォニャルフ」に補充する。すると同じ「古本ナイアガラ」の「本棚探偵のひとたな書房」が、入替補充したばかりなのにもはやスカスカになっている、背筋も凍る状況が目に留まる。だが!スカスカでもそこには、素晴らしき本がナナメになりつつも、まだ並んでいた!偕成社「白髪鬼/久米元一」である!貸本仕様で、落書き(文字の落書きで『ガンテツ』『くそたれ』『ニクリロ』などの言葉が見返しに書かれている)はあるが、それでもカバーはキレイだし、見返しがテープで補強してあり、糸かがりされているとは言え、本文ページはいたってまとも。それが値段を見ると、何と2000円なのである!本棚探偵に膝を屈するように、購入を決意する。聞けば棚には同様のジュニア探偵小説が並んでいたそうだが、二人の古本神が神速でかっさらっていったとのこと。ところがこの「白髪鬼」は、神たちがすでに所持していると言う理由で、奇跡的に残されていたのであった。
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というわけでお店に許可を採り、本棚探偵棚札とともに、喜び悶えながら記念撮影。

その後は帳場にて店主・小野氏と、仕事の打ち合わせや月末に予定している個人古本市(近日中に詳細発表いたします)の話をしていると、先日手伝った買取本が、整理も値付も終わって棚に並んでいるというので、より充実した映画棚を、わが子を見るように観察する。ところがその中の一冊に、おかしな気を感じ取る。映画監督・中川信夫の詩集?中川信夫が詩集を出していた?思わず苦笑いしながら、その詩集を手にして開いてみると、途端に本扉裏に筆で書かれた識語署名が現れた。それを隣で見ていた小野氏が「あっ…」と微かな声を上げる。こちらも「これ…」と、思わず時間が停まる。値段は激安の千円なのだが、このまま購入してよいものか逡巡すると、小野氏は即座に覚悟を決め「いいよ、千円で。いいよ」と男気を見せてくれた。ありがとうございます!雑草社「中川信夫詩集 業(ごう)」を購入する。奥付を見てみると、発行所と著者である中川信夫の住所が一緒なので、ほぼ自費出版本であることが分かる。ビニカバが付いて、何故か小豆色と紺色の帯二種(表1表4のアオリやキャッチが異なる)が巻かれている。長らく絶版だったらしく(自費出版本だから当然か…)、2009年に『中川信夫偲ぶ会酒豆忌』により復刻されたことを後で知る。
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再び喜び悶えながら記念撮影。今日は何だか、素晴らしい古本日和であった。
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2017年02月01日

2/1小山清に喜び六本木に古本屋さんの幻を視る。

午前から細かい仕事に集中していたら、ムラムラと古本が買いたくなってしまい、キリの良いところで家を飛び出し、早足で開店直後の荻窪「ささま書店」(2008/08/23参照)に駆け付ける。店頭はそれほどでもないが、店内にはすでに多数の古本修羅の侵入を許してしまっている…。買うぞ買うぞと意気込んで、店頭で四冊を掴んでから店内文庫棚にベタづきする。どこかに動きはないものかと、一棚ごとに視線をゲーム『ドンキーコング』の樽のように左から右→一段下→右から左と走らせることを繰り返し、結構下方の“こ”のコーナーに小山清の文庫が二冊並んでいるのを発見する。共に新潮文庫の「落穂拾ひ・聖アンデルセン」なのだが、一冊は平成復刻版でカバーに汚れがあるため420円。あれ?こっちは…元パラ&白帯…ということはオリジナル版か!そっと手に取り奥付を見ると、昭和三十年十一月二十日の初版である!初めて古本屋さんで出会ったぞ!では値段は?最終ページに貼付けられた値段札を見ると、これが525円!もちろん遠慮会釈なく買わさせてもらいます。今日もありがとう、「ささま書店」!桃源社「黄金バット 天空の魔城 彗星ロケット/永松健夫」芳賀書店「破滅SF 破滅の日/福島正美編」未来社「すねこ・たんぱこ 第二集 岩手の昔話/平野直編」大陸書房「日本の妖怪/早川純夫」山と渓谷社「現代の探検 創刊号」等とともに計1365円で購入する。
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喜びを記録しておくために、向かい側の歩道からお店とともに記念撮影。

満足したのでスタスタ家に戻り、しばらく真面目に仕事する。午後に再び外出し、先日の古本神と古本魔神の響宴に参加した折に耳にした、六本木にあった「竦書店誠志堂」(2008/12/16参照)が秘かにビル階上で営業しているらしいという情報を確かめに行く。深い深い大江戸線ホームから地上の『六本木交差点』に脱出し、早速交差点近くの古本屋さんのあったビルを見に行く。ビル入口や壁面には、店舗については何も情報が出ていない。だが、細く昭和の通路に踏み込み、ビルの案内板に目を凝らすと、五階部分に「竦書店誠志堂」の表示があるではないか。せっかくここまで来たんだ。とりあえずエレベーターで向かってみようと、通路奥のこれまた昭和なカゴに乗り込んで上階へ。扉が開くと、静かで人の気配はない。階段室から左側の通路の様子をうかがうと、奥に確かに古本屋さんが存在していた。
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壁に立て掛けられているのは、何処かで使っていた看板を外し、そのまま使用しているようだ。でもやっぱり、これは明らかに事務所店である。常連さんや、予約をしてから入店するのが、正しい作法であろう。忍び足でエレベータに引き返し、階下へ。

せっかくここまで来たので、歩いて渋谷方面を目指し、『宮益坂』上の古本屋さんを観測して行くことにする。交差点近くの『六本木通り』は、街にも道行く人にも生活感はにじんでおらず、ただリッチでハイソなライフスタイルの潤いのみに満ちあふれている。北側の歩道を西に歩いて行くと、首都高越しにかろうじて日光が降り注ぎ、少しだけ暖か。テクテクテクテク大都会を、蟻になった気分で歩き詰め、結構急な『霞坂』を下れば、そこが西麻布。谷底から、これも角度のきつい急坂を上がってさらに西に進み、化粧品広告ばかりがディスプレイされた『富士フィルム』ビル前を過ぎ、およそ一キロの『骨董通り』に入り込む。途中、現代的なビル一階に小さな本屋があるのに気付き、いそいそと近付いてみると、「BIBLE HOUSE」という、多種多様な聖書を集めて販売しているお店であった。そして七車線の『青山通り』を渡り、左に『青山学院大学』キャンパスを臨みながら渋谷方面に進んで行くと、まずは「巽堂書店」(2008/07/04参照)が出現。いつもとは逆のルートなので、なんかちょっと新鮮なアプローチである。牧神社「鳥葬 梅原彬暉詩集」講談社「燃える薔薇/中村真一郎」(函ナシ)能登印刷出版部「ふるさと文学探訪 鏡花・秋声・犀星」日本出版協同株式会社「ミッキー・スピレーン選集3 復讐は俺の手に」(元パラ帯付きで、帯文と解説は大下宇陀児である)を計400円で購入。続いて「中村書店」(2008/07/24参照)に飛び込み、角川文庫「JAMJAM日記/殿山泰司」朝日文庫「魔都/久生十蘭」を計830円で購入する。後は『宮益坂』をグングン下り、人が渦巻く谷底の駅へと向かう。
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2017年01月31日

1/31東京・下北沢 古書明日

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様々な方から「何故初日にちゃんと行かないんだ」とお叱りの言葉をいただいていた、元々都立大学にあった時々入れる事務所店(2013/01/22参照)の新実店舗に、冷たい風に巻かれながら駆け付ける。北口に出ると、仮改札はいつの間にやら北東に向いており、目の前はフェンスに囲まれた味気ないアスファルトの広場になっている。かろうじて懐かしい面影を残す『下北沢北口駅前食品市場』の無惨な残滓を横目に見ながら、狭く賑わう商店街を北東に進む。途中鍵の手に曲がりつつ、さらに歩き続けて短い坂を下ると、目前の小ビル二階に「CLARIS BOOKS」(2013/12/01参照)の強い明かりが輝く『下北沢一番街』である。緩い坂道の商店街を東南に下り、『茶沢通り』とつながる元小田急線踏切を目指して歩いて行く。すると左手の、ついこの間まで下北沢老舗の「白樺書院」(2016/12/23参照)が入っていた店舗に、カラフルな立花に祝されている古本屋さんが、すでに誕生していた。おぉ!出入口が、左右二ヶ所になっている!店頭ワゴンには木箱が所々はめ込まれ、100均文庫・安売本・変な新書・猫本などが並び、茶色く古い本が紛れ込んでいるのが特徴的。ガラス扉には店名含め、お店の情報が貼り出されているが、それはすべて半紙に墨で柔っと書かれている。左側から中に入ると、正面奥が帳場となっているのだが、白樺時代とずいぶん違い、後がぶち抜かれ、すっきりと広くなった印象である。その帳場には昭和の雰囲気をたおやかにまとう女性が店番中。左右の両壁は本棚で、左奥壁も本棚。そして真ん中に背中合わせの棚が一本立ち、すべての棚下に低めの平台が付属している。店内には、香水なのか花の香りなのか、古本屋さんにはあまり似合わぬ香しき匂いが漂っている…。左壁は新書サイズ本と文庫(大藪春彦多し)から始まり、少しカオス気味にサブカル・カルチャー・文学・社会・民俗学・近現代史・映画などが混ざり合い、続いて行く。平台は棚と近い並びで、単行本が背を見せて並んでいる。向かいは文庫棚で、講談社学術・岩波・ちくま・ハヤカワSFが幅を利かせ、平台にはちょっと古めのはみ出し文庫や、おかしな新書サイズ本が集まっている。右側通路へ移動すると、奥壁棚は民具や骨董・文学古書・歴史資料系古書・園芸古書がなどが集まり、一部は面陳となっている。右壁には映画・演芸・美術・思想・海外古典文学・西洋宗教が並び、下には紙物箱や雑誌や小冊子が置かれている。通路棚は、戦争・植民地・アジア・沖縄・東京・文学評論&評伝・大判本・図録類となっている。小さなお店である。そして結構な硬さを誇っている。まさか若者文化溢れる下北沢に、こんな硬めの正統派古本屋さんが誕生するとは、思ってもみなかった。新書・古書・紙物に奇妙なところがあり、どちらかと言うと軟派な私は、そこに惹き付けられてしまう。値段は普通。三井物産株式會社機械部「ライブラリ・ビウロウ 鋼鐵製書架 並ニ圖書館用品各種」大月書店「神奈川県の戦争遺跡/神奈川県歴史教育者協議会編」を購入する。凶暴インコはいないけど、店舗を引き継いで下さり勝手に感謝!そして開店おめでとうございます!

字面が物々しい「鋼鐵製書架」は恐らく昭和十年代の、米國ライブラリ・ビウロウ製造品の棚を中心とした商品カタログである。使用例の『大阪毎日新聞社圖書室』の写真や、強固で巨大な本棚やレミントンのタイプライターまでが掲載されている。中でもまるで巨大なビルディングのような『鋼鐵製カード凾』と青銅&ガラス製陳列箱の見開きページには、尋常ならざる魅力を感じてしまう。これはカッコいい!
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2017年01月30日

1/29「音羽館」の楽しくもハードな長い一日

まずは28日土曜日の話から。仕事を終えて午後六時半過ぎの中野に駆け付け、駅近くの居酒屋で古本怪気炎を上げまくっている、古本神&魔神であると同時にド級のミステリマニアたちの飲み会に、畏れ多くも参加させていただく。新保教授の難問、親指と人差し指で作る小さい丸に通るポケミスは存在するのか…答えは、マーガレット・ミラーの「狙った獣」が、驚くほどクナクナシナシナの軟体本で、キュキュッと丸めると容易に通ってしまうのである…こんなおかしな紙のポケミスが、存在していたとは…(ちなみに教授は、この本だけが特殊なのかと思い、もう一冊「狙った獣」を買ってみたところ、やはり同様にクナクナだったという)。さらに話は北原氏のホームズ狂に及ぶや否や、東京メトロのCMで、すぐ近くの『中野ブロードウェイ』を探索するホームズ姿の石原さとみポスターの話になったのだが、目の前の三人(新保博久氏・三橋暁氏・北原尚彦氏)の三人ともが、まったくその名を思い出せない事態に陥っていた!「ほら、あの『シン・ゴジラ』でアメリカ帰りの変な英語を話す女の子!」などと、名は思い出せないのに、イメージだけを共有し合い、納得しているのである。しかも何故かみんな笑顔で、とてつもなく楽しそうなのである。仕方なくヒントとして「石!」と一言叫ぶと、「あ〜!石原さとみだ!」と北原氏が満面喜悦で記憶を引きずり出すのに成功した。古本やミステリに関する話題は、即座に回路が直結するのに、疎いところは大いに疎い…全く持って愉快な方々である。楽しくビールを飲み過ぎたが、明日は西荻窪「音羽館」で一日バイトしなければ!と、遅れて来たのに早めに退散してしまう。
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明けて29日、西荻窪に向かう前に、道すがらの「J-house」(2015/12/26参照)に当然の如く立ち寄ると、むぅ、今日も古めの映画パンフが少々出ているではないか!と途端に色めきたち、急いで繰ってみる。すると「ウエストワールド」と「夜の大捜査線」に目が留まり、計200円で購入する。早速電車内でパンフを開いてみると、「夜の大捜査線」の方には様々な当時のものが、楽し気に挟み込まれているではないか。フランス映画のチラシ二種、吉祥寺東映のガリ版ニュース。中でも嬉しかったのは、「007カジノロワイヤル」(丸の内東宝)の三つ折りチラシである!すぐさま頭の中に、バート・バカラックのあの軽快な曲が流れ始める…今日は何だかいい日になりそうだ。

正午前に「音羽館」(2009/06/04参照)に到着すると、店はまだシャッターを下ろして沈黙しており、待っていたのは古本屋内装のエキスパートである中村敦夫氏だけであった。挨拶を交わしつつ、何故か去年の「七七舎」バイト時に続き、またまた頑丈な特製木箱をいただいてしまう。木箱の差し入れ…決して通常では体験出来ない、異常な出来事である…。そうこうするうちに、店主・広瀬氏が現れ、先輩バイト氏も自転車で颯爽と登場し、ついに長い長い「音羽館」の一日がスタートする。シャッターを上げ、まずは店の中から店頭棚や箱類を引きずり出し、開店準備が進められて行く。その間、私は店頭を掃き掃除し、その後店内の木床に掃除機を満遍なくかけるのを、初めての「音羽館」仕事とする。
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するとたちまち開店を待ちかねたお客さんが姿を見せ始め、半開店状態の店内を、鋭い目で容赦なく観察し、本を買って行く。その後もお客さんは、ひっきりなしに訪れ、分かっていたつもりなのだが、「音羽館」が凄まじい古本屋であることを、改めて思い知らされてしまう。いわゆる古本好きの方々も多いが、メインの客層は二十代〜三十代の男女なのである。そして100均だけではなく、惜しみなく高額の本を買う人もコンスタントに登場する。葱を提げた主婦も本を買って行く。このお店に寄らないと調子が狂うと言う方や、地方から訪ねて来た人も登場し、結局店内は、常に活気を見せているのである。そんな怒濤の営業時間の中、主に受け持った仕事は、広瀬氏が次々値付けする本を、店内と店頭に補充することであったが、これがキリなく間断なく継続し、営業中はずっとずっと果てしなく続くお仕事なのである、特に均一棚の補充は、入れても入れてもブランクが生まれて行く、恐るべき回転率を誇っていた(そして本を並べるところを間違うこと、多々あり。均一と店内を間違え、さらには店内でジャンルは何となく分かるも、微妙な本を何処に並べたらいいのか迷うことしきり。普段は偉そうに店内棚のジャンル分けなどをしているが、とても一筋縄では行かぬことに、お店というものの奥深さを切々と感じ取る…)。
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途中そんな作業をずっと続けながらも、外に出した買取本の山を、先輩バイト氏と連携プレイで見易く整理した上に、ちょっとこの中からすぐ棚に並べられそうな本と、100均に並べる本の選別作業をいきなり任され、面食らってしまう。
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だがその作業は当然の如く楽しく、軽く偉そうに疑似古本屋さん的気分を、充分に味わってしまう。「サヨナラだけが人生だ」や木村伊兵衛の戦後すぐの粗悪紙写真集「TOKYO FALL 1945」(ただいま驚異の7000円で販売中。ヒィ〜ッ!)などを見付けて、大いに興奮してしまう。選別したそれらを、すぐ値付けしてもらい店頭に並べると、「ミコのカロリーBOOK」や写真家・井上青龍の図録が瞬く間に売れたりして、小さな感動を体感する。その後は品出しを続けつつも、帳場で本のクリーニングにも従事。
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そこから次第に恐るべきレジ作業にも参加して、緊張しながら慎重に愚直に売買の基本を取り扱う。夕方十五分、夜に一時間の休憩を終えると、今日初めて、店内にお客さんが誰もいない一瞬が生まれる。その間に広瀬氏と古本屋さんについて大いに話し込む。高原書店時代や近所の過ぎ去っていた古本屋さんの話、新しく出来るお店の話、などなど。先輩バイト氏とは、故郷いわきの古本屋話で盛り上がる。晩ご飯が済んだ頃とおぼしき午後八時過ぎには、昼間ほどではないのだが、再び人の流れが生まれ始める。その人の波が再び凪いだところで、お店の横で本の結束作業。不器用&不手際ながら五本ほどをグルグル縛る。そんな風にまじめに仕事し、気づけばいつのまにやら午後十時半。広瀬氏と先輩バイト氏は、車への結束本積み込み作業に従事、その間だけ、たった一人で心細くありながらも、ひとりでレジを受け持つ。
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いやぁ、古本屋さんの仕事はとても興味深く肉体労働も存分に混じりながらも、やっぱり楽しいものであるな。最後のお客さんを無事に送り出し、午後十一時を過ぎ、ついに店頭を撤収してシャッター下ろして、本日の営業終了。
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バイト代をいただく前に、さり気なく抜け目なく目を付けていた本を買うことにして、バイト代から遠慮なくさっ引いてもらうことにする。函ナシだが、春秋社「浜尾四郎随筆集」を1000円で並べたのに頭をかち割られたようなショックを受け、棚に並べた時点から「どうか売れないでくれ!」「ミステリファンなど、今日は一切「音羽館」に来ないでくれ!」と真剣に願い、無事に売れずに誰の目にも留まらずに、十一時間を駆け抜けたのである。さらに函ナシの國際文献刊行會「怪奇草雙紙畫譜/尾崎久彌」(和本の幽霊&妖怪絵盛りだくさん!)と一緒に計2000円で購入する。当然高らかに、どひゃっほうと叫べる案件である。

本日お越しいただいたみなさま、言葉を交わしていただいたみなさま、差し入れをいただいたみなさま、本当にありがとうございました。今後とも新生と言いつつ、それほどの変化はないがスッキリとして良い本をドドドと次々品出しし始めている「音羽館」さんを、何とぞよろしくお願いいたします!というわけで本日の嬉しい収穫を、いただいた木箱の中に収めてみました。…でも、やっぱり疲れたな。毎日これをやるのは、身体が慣れるまでは、とても大変なことである。しばらくは身体の奥にこの疲労を抱え、日々を過ごすことになるだろう。
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posted by tokusan at 02:52| Comment(6) | TrackBack(0) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする