2020年09月22日

9/22『ひとごろし』

朝起き抜けに、まだなんだか薄暗い寝床の中で、大正十一年刊の崇文堂「よわい子供/ソログープ」を読み始めてしまう。そのなかの一編『罪のない赤ん坊を殺した人の話』を読んでいると、はたと気付いたことがある。羅馬の騎兵隊が攻め入った敵国で勝利を収めて帰還する途中、子供の一団に出会うが、その中の一人に「人殺し」と罵られたので、将来羅馬に仇為すような子供は殺してしまえと、全員が惨殺されてしまう。するとその夜、暗闇から「人殺し」の声が何度も聞こえて来る。恐れ戦いた騎兵たちは、声の元である殺したはずのズタボロの子供を見つけ、またも剣と槍で徹底的に打ち倒すのである。ところがその後も声は聞こえ続け、ついに騎兵隊は…と言うようななかなか残酷なお話なのだが、一枚の挿絵を見た時に『これは山本周五郎『ひとごろし』の元ネタではないだろうか?』と考えてしまったのである。実はこの話、以前にも春陽堂少年文庫「影絵 ソログーブ童話集」(こちらではタイトルは『少年の血』となっている)で読んでいたのだが、その時にはそんなことは微塵も気付きもしなかった。挿絵を描いたのは村山知義で、騎兵と歩く槍兵に向かって、子供が『ひとごろし』と平仮名文字で罵っているのである(本文はすべて漢字混じりの『人殺し』となっている)。この平仮名文字が、周五郎の『ひとごろし』と瞬時に結びついてしまったのだ。『ひとごろし』は藩に仇為した武芸者を追って、臆病者の若侍が上意討ちの旅に出るのだが、その上意討ちの方法が、武芸者から距離を取り、人の居る所で「ひ〜と〜ご〜ろ〜し〜」と叫び続け、精神的に追いつめて行くと言うものであった。片やシリアス、片やコミカルだが、力のない者が強い者を言葉のみで打ち倒そうとする姿勢は、まさに同じなのである。山本周五郎は、ソログープを読んでいたのだろうか…。などと寝床でゴソゴソリ。
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正午過ぎに、取りかかっていた原稿がカタチになってきたので、一息ついて外出する。中野で所用を済ませた後、『中野ブロードウェイ』に潜入して「まんだらけ海馬」(2015/02/06参照)で、福音館書店こどものとも159号「こぶたのまーち/むらやまけいこさく・ほりうちせいいちえ」(1969年初版)イヴニングスター社「柳碧花紅録/徳川聲」を計220円で購入する。その後は『早稲田通り』を西進し、昨日来たばかりの「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)へ。ブルース・インターアクションズ「雲の上の散歩/沼田元氣」バンダイ「機動戦士ガンダムZZ&Z保存版設定資料集」を計300円で購入する。昨日悩んだ買物は、まだまだちょっと悩み中…。
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2020年09月21日

9/21中井英夫の死亡記事。

新たな原稿に取りかかりながら、まだ締め切りが先のため何となくノンビリしてしまい、ついでに机の引き出しの中の片付け(現実逃避ともいう…)などしてしまう。すると一番底から出てきたのは、黄色に変色した1面と28面の一枚だけの、1993年12月11日(土)の朝日新聞朝刊であった。何故取ってあるんだろう?と、紙面の隅から隅まで目を通してみると、社会面の死亡欄に、中井英夫の記事が載っていた。これを取っておくなんて、当時よっぽど入れ込んでいたのだろう。それにしても、71歳なんて、若過ぎる!
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写真が小さいので、網点の大小で、中井英夫と認識出来る画像が構成されているのがよく分かる。つまりは人間の目が錯覚を起こして像を結んでいるわけだが、性能が優秀なんだか優秀じゃないんだか…。

午後にちょっと外出して「古書コンコ堂」(2011/06/20m参照)に足を向けると、お店は開いているのだが、店頭には暗幕が張られ、人が集まり、何か撮影している様子が見て取れる。お店の横の脇道を見ると、店主・天野氏が所在なさげに床敷きマットの埃叩きなどしている。挨拶がてらお話ししてみると、CM撮影にお店を提供したらしい。「じゃあ今日はお休みなんですか?」と聞くと「二時で終わるはずだったんですけど…終わりませんねぇ」とのこと。というわけでまた後で寄ることにして、ブラブラと高円寺へ向かうと、連休三日目とあって、結構な人出で賑わっている。『庚申通り』を遡上して「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)へ。新宿書房「ぼくたちのちんどん屋日記/林幸次郎・赤江真理子」を100円で購入しつつ、児童文学&絵本コーナーに非常に気になる一冊を見つけてしまう…う〜む、買おうか買うまいか…ちょっと考えておこう。その後は馬鹿みたいに阿佐ヶ谷に引き返して「古書コンコ堂」に向かうと、無事に撮影は終わっており、通常の開店状態である。弘隆社「彷書月刊 11 1989 特集小栗虫太郎」を110円で購入する。
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2020年09月19日

9/19『探偵小説狂想曲』アンコール!

わりと涼しい風の吹く午後三時過ぎに吉祥寺の北へ流れ着いたので、駅に近付いてから恐ろしいほどの人波を擦り抜け潜り抜け、まずは「古本センター」(2013/07/01参照)へ。処分棚からたちまち八幡書店「新世紀未来科学/金子龍一」どうぶつ社「恐竜は生きている/アラン・チャーリング」宝島社「世紀末百貨店/伴田良輔」を抜き出し、計280円で購入する。続いて「よみた屋」(2014/08/29参照)では、まずは店頭棚上段から映画『タクシードライバー』のパンフを見つけて喜び(監督名がマーチン・スコルセーセになっている…)、成武堂「タイ案内/タイ室東京事務局」山王書房「明治のおもかげ/鴬亭金升」、そして森見登美彦「夜は短し歩けよ乙女」で有名になった大型絵本、岩波書店「ラ・タ・タ・タム ちいさな機関車の不思議な物語/ペーター・ニクルス文 ビネッテ・シュレーダー絵 矢川澄子訳」の初版(扉に『とまと文庫』と蔵印はあるが、ちゃんとカバーも付いてるぞ!)を見つけてさらに小さく喜ぶ。よし、これで今日は素晴らしい日になったぞ。そう確信して、手指を消毒し、計440円で購入する。そして阿佐ヶ谷に戻り「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)前を通りかかると、店頭棚に東都書房の推理小説全集などが出されている…こ、これは!きっと店内にも何か出ているはずだ!そう『探偵小説狂想曲』のアンコールを察知し、またもや手指消毒して店内に飛び込む。中央通路の茶色い探偵小説ゾーンに注目を浴びせると、推理小説の研究&評論本が何冊が棚出しされている。くむむむむ…愉快にと唸り、南北社「推理小説への招待/荒正人・中島河太郎編」を530円で購入する。様々な探偵小説かや評論家の論考集である。香山滋の『怪奇を生む鍵』とか鮎川哲也の『ペテン術の研鑽』とか、意外な村岡花子の『探偵小説と私』とか、たまらんですな。これでさらに今日が素晴らしい日になったというわけだ。
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2020年09月18日

9/18こんなパンフがあったのか…。

「少年探偵・エミール」を読み進めているが、やはり時代を越えた普遍性を獲得している岩波の高橋健二訳と違い(始まりの構成も違っている。岩波版は最初に序文の如き『話はまだぜんぜんはじまらない』と登場人物を紹介する『十枚の絵が説明する』が入るが、中央公論社版は序文はなくいきなり物語が始まり、その途中の所々に登場人物紹介が挿入されている)、時代を感じさせる仕上がりになっている。お金の単位が“圓”だったり、エミールが『合点』したり。とは言ってもこちらの方が物語が書かれた時代に近いので、リアルと言えばリアルなのかもしない…さぁ、また仕事の合間に、続きを読み進めよう。

だが、そんな仕事の連絡が何だか滞っているので、一瞬の隙を見て、風の強い真夏のような九月の街に脱出。テクテク歩いて荻窪に向かい「古書ワルツ荻窪店」(2020/07/30参照)でハヤカワポケミス「海軍拳銃/フランク・グルーバー」を330円で購入する。続いて油断ならない「竹中書店」(2009/01/23参照)に立ち寄ると、店頭木製ワゴンの映画パンフレットが増加している。また何か面白いものはないだろうかと、丁寧に繰って繰って繰りまくる。すると珍品と呼ぶべき黒いB5サイズのパンフレットを発見してしまう。『DEEP THLOAT(ディープ・スロート)』…1975年日本公開の伝説の洋ピン映画(洋画のピンク成人映画)のパンフレットである。こ、こんなものが存在していたのか!映画館で、ピンク映画のパンフレットを売っていたのか!っていうか、パンフ作ってたんだ!そして買った人がいるんだ!と驚愕する。私は未見だが、世界に衝撃を与えたカルト映画として低俗に名高い作品である。だからパンフの中身は推して知るべし、と言っておこう。最後のページに主演女優・リンダ・ラブレイスのスキャンダル記事まで載っていて、ヒュー・ヘフナー、フランク・シナトラ、ジョン・レノン、エルビス・プレスリー、サミー・デイビス・ジュニアなどの並み居るスターを総嘗めにしたとか、スゴいことが書いてある…。というわけで、ヴィム・ヴェンダース監督「夢の涯てまでも」パンフとともに計100円で購入する。あぁ、こういう時代的なエロ風俗関連を発見したら、すぐに古本乙女のカラサキ・アユミさんに報告したくなってしまうなぁ。そしてお堅い「竹中書店」でこんなのを買う日が来るとは…。
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2020年09月17日

9/17昭和九年のエミール!

昨日は午後二時過ぎに上連雀に流れ着いたので、北上して「りんてん舎」(2019/03/30参照)へ。店頭棚&箱とにらめっこして、角川文庫「モルグ街の殺人事件/エドガア・アラン・ポオ」日本ブリタニカ「遊びの百科全署7[玩具館]/澁澤龍彦編」を計220円で購入する。そしてそのまま歩いて吉祥寺へ移動。う〜む、「一日」(2017/08/11参照)は相変わらず休業中か。もはや休業の案内すら出ていないので、いったいいつまで開かないのだろうかと、少し心配になる。そのまま駅に近付き「バサラブックス」で徳間書店「死の博物誌/神津拓夫」を百円で購入し、駅を通り過ぎて「よみた屋」へ。今日は入口前300〜500円棚から、裸本の南洋探検本、海洋文化社「メラネシア探檢/ベルナチク」を550円で購入する。昭和十八年発行なので、南進政策啓蒙の一冊と言ったところだろうか。ウィーンの民俗研究家が、ソロモン群島・ニュウギニア・バリ島を研究旅行し、原住民に密着撮影した貴重な写真を多数掲載。そして何より気になるのが、この本に捺された蔵書印である。見返しと本扉に捺されているのだが、あまり個人の蔵書印っぽくなく、とてもセンスがあり可愛いのだ。どこかの開架していた文庫のものだろうか?
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そして本日は梅ヶ丘に流れ着いたので、トボトボ元小田急線線路沿いを伝って下北沢にたどり着き、「ほん吉」(2008/06/01参照9で広済堂ブルーブックス「高木家の惨劇/角田喜久雄」を110円で購入してから「古書明日」(2017/01/31参照)へ。おっ!持っている本より状態の良い、おはなしチャイルド「がんばれねずみたち/作・山元護久 絵・高橋透」が百均絵本箱に入っているのを見つけたので、確保してから店内へ。さらに妙な新書本が混ざり込む棚からNESCO BOOKS「図解さあ、手づくりだ/小林泰彦」を選び取り、計600円で購入する。すっかり満足したので、京王線とすぎ丸を乗り継いで家に帰ると、その瞬間にピンポ〜ンとお届け物が到着した。待ち遠しかった、久々のヤフオク落札品である。ダンボール箱を開けると出てきたのは、黄色いクロス装の裸本、昭和九年刊の中央公論社「少年探偵・エミール/エリツヒ・ケストナー 菊池重三郎譯」である。ライバルナシの嬉し過ぎる880円で落札。映画の公開に伴い、1934年にドバッと出版された、三冊の内の貴重な一冊である。岩波書店のケストナー全集「エーミールと探偵たち」と同じ物語であるが、どれだけ訳や雰囲気が違うか、比べるのが楽しみ楽しみ。
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2020年09月15日

9/15謎の東天鬼。

昨日は一日中、ちょっと長めの原稿と取っ組み合い、悪戦苦闘する。だが昼過ぎには、古本は買っておきたいと素早く外出し、『早稲田通り』を東にタッタカ伝って「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)を見に行く。おじいさんの自転車が店頭棚の前に立ちはだかっているが、めげずにスルッと奥側に身を滑り込ませ、たちまち三冊を手にする。晩聲社「職人百づくし/絵・武田秀雄 文・野坂昭如」徳間ブックス14「暗号の話/田中潤司」すばる書房「マザーグース・ファンタジー/銅版画・東逸子 訳・矢川澄子」を計400円で購入し、満足してすぐさま家に引き返すが、道すがら、店頭でいつの間にかおでこを蚊に刺されていたのに気付き、途中寄った『セブンイレブン』では、お客と店員の現金の受け渡しを必要としない、感染予防新型レジを突然体験し、もはや自販機のような形態に軽くカルチャーショックを覚える。

そして本日も引き続き原稿とがっぷり四つに組み合う。そしてちょっと息抜きに夕方前に外出。少量の厳選古本を携えて、毎度お馴染み西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)に向かい、「フォニャルフ」棚に補充する。裸本故に、安めの探偵小説が並んで眠っておりますので、お近くにお寄りの際はぜひとも冷やかして上げて下さい。そして帳場では店主・小野氏にここ最近仕入れた素晴らしい本を見せていただく。黒岩涙香と丸亭素人の合作って…うわぉ!春秋社の「探偵小説 山羊鬚編集長/夢野久作」だっ!吉田貫三郎の装幀が眩し過ぎる!本扉には小説集1とあるが、続きが出る予定だったのだろうか?そして極め付けは、素性のしれぬ謎の探偵小説作家・東天鬼の香蘭社書店「淫魔捕物帳」なるいかがわしい函入り本を見せていただく。うひゃぁ〜東天鬼だ。と慎重に函から取り出し、分厚い本のページを開く…あれ?あれ?あれ?俺、これを読んだことがあるぞ…とは言っても、読んだことがある東天鬼と言えば、神戸で二千円の安値で入手した(「古本屋ツアー・イン・京阪神」p255参照)大盛堂書店「探偵秘録 修羅の巷」(昭和参年壹月刊)しかない。小野氏にそのことを告げ、家に帰って本を確認してみると、あぁっ!やっぱり見事に同じ内容だ。生首の小包が伯爵家に届くところから、物語が始まってるじゃないか。「淫魔捕物帳」の方は昭和十二年刊。九年の時を超え、同じ内容をタイトルを変えて、さも違う本のように出版したのは明らかである。ますます謎が深まるなぁ、東天鬼…。
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これが俺の東天鬼だ!ちなみにずっとこの作家名を『トウテンキ』だと思っていたら、小野氏に『アヅマテンキ』であると教えられました。
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2020年09月13日

9/13油断ならない「竹中書店」。

本日は午後に芦花公園近くに流れ着いたので、関東バスに飛び乗り、環八を北上して荻窪へ。駅南口線路際の終点でバスを降り、フラフラと「竹中書店」(2009/01/23参照)へ。店頭の二冊100円ワゴンには、大量の映画&ミュージカルパンフが追加されているようだ。辛抱強く丁寧に、商店街を行き交うたくさんの人に背を向けて、薄手のアート紙冊子と曇り空の下で格闘する。ケイブルホーク「戦慄的サスペンス映画 フリッツ・ラング スペシャル「M」「マンハント」」をまずは確保。続いて東映「金田一耕助の冒険」を見つけたので計100円で購入する。「金田一耕助の冒険」は先日逝去した大林宣彦監督のナンセンス外伝的横溝映画。低予算ではあるが、わりと豪華なスタッフ&キャストが画面狭しと無闇に暴れ回る、映画業界のお祭り騒ぎ映画でもある。だが実は、角川文庫的探偵&推理小説お祭り騒ぎ映画の側面も持っているのだ。何たって、横溝正史先生が角川春樹からジュラルミンケース一杯の印税を貰ってほくそ笑むシーンがあるし、床屋の客として高木彬光が。またテレビ局のゲスト役で笹沢左保(凛々しいイケ面である)も顔を出しているのだ。同時上映は、村川透監督・松田優作主演のハードボイルド映画『蘇る金狼』(ただしクセの強過ぎる共演者たちが、よってたかって面白演技を展開しているので、優作が真面目にハードボイルドを演じれば演じるほど、周囲とのギャップが際立つ非常に楽しい映画となってしまっている)。ちなみにパンフ表4の『横溝正史フェア』の広告は、映画原作の文庫「金田一耕助の冒険1・2」とジュブナイル作品のみがラインナップされている。いやぁ、最近の「竹中書店」さんは、油断がならないなと感心しつつ、「古書ワルツ荻窪店」(2020/07/30参照)へ。おぉっ、店内中ほど新書棚の横に、大量のポケミス棚が出現しているではないか。これは何か他にも動きがありそうだ…と察した矢先に、むぅ、新書棚にて古い新潮文庫「奇蹟の扉/大下宇陀兒」発見!多少疲れ気味だが、頑張って補強すれば、頼りになる手応えを取り戻してくれそうだ!と550円で購入する。
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2020年09月12日

9/12早稲田通りでちょっと結城昌治を。

雨が降ったり止んだりの中、所用あって下井草を訪れたので、やはりいつでも気になる元「芳林文庫」の前を戀に通りかかると…あぁっ、ついに店名木看板が無くなり(2018/02/09参照)、ここがマニアックなミステリ古本の供給源であったことは、もはや感じ取れない。だが中にはまだ、見たら涎が止まらなくなるような、探偵小説が渦巻いているのだろうな。相変わらずそんな愚かな妄想に囚われながら、トボトボ歩いてお家を目指す。途中『早稲田通り』沿いの小さな小さな『大鷲神社』にお参りして、「古本ブック流通センター」(2008/08/09参照)前で足を停める。視線を落としたのは漫画やノベルスの多い店頭ワゴンである。そのノベルの中に、一冊古めの本が混ざっている。文華新書138「狙った女 推理小説/結城昌治」である。こういうあまり見かけぬマイナー新書は、出会った時に買っておかなければ、次にいつ出会えるのかまったく予想がつかない。というわけで握り締めて店内に進むと、帳場には誰もいない。だがすぐに家の何処かからドタドタと動く音が聞こえ始め、しばらくすると、奥の引戸から奥さまが「お待たせしてすみません!」と姿を現した。いいえ、全然待ってないですよ。「あぁ、古い本ですね。拭きます拭きます」と丁寧にカバーを拭っていただき、百円で購入する。
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2020年09月11日

9/11柳瀬正夢初装幀本!

本日は少しノンビリした朝を過ごしながら、次第に部屋中から三十冊ほどの不要&読了本を掻き集める。午後に外出して「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)へ趣き、二週連続の買取をお願いする。査定中に店内を見回り、店頭から素晴らしき本を一冊掴み、査定終了とともに購入する。その際、店主・天野氏に「ブログ読みました。あんなに買ってたんですね〜」と言われる。2020/09/06『「探偵小説狂想曲」の顛末を並べてみる』の感想なのであるが、『全部アンタが売ったんだよ!』と心の中で軽くツッコミつつも「棚一列くらいになってますもんねぇ」「いや、もっとですよもっと」などとやり取りする。まぁまだ今並んでいる中からまた買うかもしれないし、新在庫が出たら買うかもしれないし、まだまだ増える可能性は大なのである。そして110円で買ったのは、我等社「長谷川如是閑創作集1 奇妙な精神病者の話」(大正12年刊。函ナシ)なのだが、実はこの本、『ねじ釘の画家』柳瀬正夢の記念すべき初装幀作品なのである。出版元の我等社は、長谷川如是閑が仲間とともにつくった出版社で、柳瀬はそこから出ていた雑誌『我等』の校正係を務めていた。なので画家としても活躍する柳瀬に、創作集装幀の白羽の矢が、ブスリと刺さったのかもしれない。大正12年ということは、このすぐ後に柳瀬も参加する伝説のダダ集団・MAVOが結成されるわけか…うぅ、今日も良い古本に安値で出会えて、興奮。
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これは本扉。描き文字は、背と表紙と扉でそれぞれ異なるが、この扉の文字が一番凝っている。中央の兎と亀のシンボルも素敵!

というわけで軽く脳内で一通り興奮した後、駅方面に足を延ばし「千章堂書店」(2009/12/29参照)で新潮文庫「人外魔境の秘密/横田順彌」を150円で購入する。

さらに夕刻、段々陽が落ちるのが早くなるのを実感しながら駅に向かい、出来たばかりのカバーデザイン担当新刊を受け取る。綺想社「綺想紙漿雑誌 暴譯叢書参 ハワードマガジン ソロモン・ケイン シリーズ2 死者の丘/ロバート・E・ハワード」である。清教徒ソロモン・ケインを主人公にしたヒロイック・ファンタジー第二弾!実はこのシリーズのデザインは、なるべく気色悪い色合いを出そう出そうと努めているのだが、今回は「妖蛆の国」に続くなかなかの秀作。この後もまだまだスゴい作品の訳が続く予定なので(次巻はエイブラム・メリット「這いよる影」だ!)、より一層気色悪さを増して行くよう精進いたします。「死者の丘」は明日9/12から「盛林堂書房」(2012/01/06参照)店頭や通販や、中野「まんだらけ海馬」(2015/02/06参照)で購入可に。
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2020年09月10日

9/10新潮文庫のトレーナー。

風と曇り空でちょっと過ごし易い今日は、午後に下連雀に流れ着く。三鷹はちょっと久しぶりだなと思いつつ、線路を越えて北に出て、当然「りんてん舎」(2019/03/30参照)に顔を出す。店頭文庫棚に、カラーイラスト&写真満載の絶版名著と言える新潮文庫「アウトドアライフ入門/小林泰彦」があったので喜びつつ、河出書房新社「手塚治虫の絵本館3 空とぶラビ」とともに計220円で購入する。そのまま「水中書店」(2014/01/18参照)に足を延ばすと、店頭木箱にちょっと古めの建築雑誌が何冊か放り込まれている。そこから抜き出したのは、鹿島出版会「SD別冊NO.5 空間と象徴 最高裁判所における建築構想の展開」であった。お壕端の司法権威の象徴である厳粛で不可思議な建築『最高裁判所』のムックである。ほぼ建築写真集なのだが、掲載写真の撮影者がほとんど写真家・石元泰博なので、石元泰博の『最高裁判所』写真集と言える一冊なのである。これが百円は嬉しいと、すぐさま購入する。そのままツラツ東に歩き、昨日も来たはずの吉祥寺へ。「バサラブックス」(2015/03/28参照)でワニ文庫「にっぽん怪奇地帯/佐藤有文」を100円で購入し、「古本センター」(2013/07/01参照)と「よみた屋」(2014/08/29参照)も見て回るが、さすがに昨日の今日で買うものはナシ。それが確認出来ただけでも良しとして、潔く帰宅する。
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というわけで、この二冊が嬉しい今日の収穫。「アウトドアライフ入門」には、帯や当時の自社広が挟まっていた。その昭和58年当時の自社広『新潮文庫の100冊』のイメージキャラクターは、読売巨人軍の投手・江川卓で、キャッチコピーは『やる時は、やります。読む時は、読みます。』。折りの最後には『新潮文庫の100冊クイズ』が掲載され、江川が景品を持っている写真があるのだが、三千名に当たる『新潮文庫オリジナル・トレーナー賞』が衝撃。紺色のトレーナーの胸に、新潮文庫の象徴である葡萄のイラストとともに、ローマ字で『ShinchoBunko』とプリントされているのだ。トレーナーが一世を風靡していた時代とは言え、これはかなりダサイのでは…いや、でもレアと言えばレア…あえてちょっと欲しい気がしないでもない。着るかどうかは別として。
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2020年09月09日

9/9なんだか良い吉祥寺。

吉祥寺の北に午後に流れ着いたので、高架線を南に潜り、まずは「よみた屋」(2014/08/29参照)へ。強い日光が容赦なく降り注ぐ、過酷な店頭である。だがめげずに視線を丁寧にぐうるりと巡らし、新書棚からアニメーション作家山村浩二のPARCO出版「マイブリッジの糸1・2」(四次元綴じフリップブック…パラパラ漫画ですな)を見つけたと思ったら、単行本棚から理論社小学生文庫「忍術らくだい生/古田足日・作 田島征三・え」(昭和43年初版)婦人之友社「ゆずりうけた母の味 辰巳浜子料理帖より/辰巳芳子」思索社「戦場のメリークリスマス 原作版 影の獄にて◎映画版/ヴァン・デル・ポスト」をたちまち引き出し、五冊の本を抱えつつ手指消毒して店内入りし、計550円で購入する。紙袋に入れてもらったら、何だか大物になってしまった…。

続いて駅前の雑踏を掻き分け「古本センター」(2013/07/01参照)に行くと、処分品棚にゲームボーイの生みの親・横井軍平の柔軟なアイデアの元となった講談社「水平思考の世界 電算機時代の創造的思考法/エドワード・デボノ」がキラリと輝いたので確保する…これを読めば、横井氏のような素晴らしく面白いアイデアにたどり着けたりするのだろうか…。そしてさらに棚横の横積みタワーに目を向けると、おっ!ハヤカワポケミスのナポレオン・ソロが挟まってる。と、「気ちがい科学者/ジョン・T・フィリフェント」「放射能キャラバン追跡/ピーター・レスリー」の二冊を引き出し、計180円で購入する。うむ、なんだか良い吉祥寺であった。
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「気ちがい科学者」は小鷹信光訳で、中には『ナポレオン・ソロシリーズ〔全13巻〕』の一色刷り二つ折り広告が挟まっていた。「ミステリマガジン臨時増刊」のナポレオン・ソロ特集なんてあるのか。これはぜひいつか読んでみたい。
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※そろそろ発売の「本の雑誌 柿の実とてちてた号」の連載「毎日でも通いたい古本屋さん」では、7/31日に本格オープンした後、すっかり定点観測店になっている「古書ワルツ荻窪店」に突撃!棚が古本市形式で安売本が雑多に並んでいるので、頻繁に全部の本が動いてるわけでもないのに、毎回行く度に全棚をチェックせねば気が治まらず、楽しいのですが、消耗したりもしています…。
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2020年09月07日

9/7TVドラマ『ハンマーを持つ人狼』!

昨晩、『探偵小説狂想曲』の顛末を並べて、ひとり悦に入った後、晩ご飯を食べてから、腹ごなしに漫然とテレビチャンネルの旅に出る。ポチポチ番組を切り換えまくり、最後に行き着いたのはCSのAXNミステリーチャンネル。放映していたのは1973年のTVドラマ『科学捜査官』であった。警視庁捜査一課(課長補佐警視・芦田伸介、科捜研部長・原保美、捜査主任警部・中野誠也)が手掛ける難事件を、科捜研(徳丸法医学技官・田中邦衛。意外にはまり役)の技官が科学力で証拠を分析収集し、事件解決に大いに貢献しまくる刑事ドラマである。原作・監修は島田一男先生!ほっほぅと、引き込まれるように観始めてしまうと、謎やサスペンスや科学技術の骨子がしっかりしており、セリフも練り込まれており、なかなか面白いじゃないかと感心することしきり。長谷川公之が脚本の回もあり、『事件記者』+『警視庁物語』!とコンボ技にちょっと興奮しながら、そのまま観続けてしまう。そして第15話『黒い通り魔』が始まった。厚生省に勤める女性が帰宅すると、計理士の兄が自宅の庭で殴り殺されている。それに驚く暇もなく、女性も殺されてしまう。その頃世田谷区では“黒い通り魔”と名付けられた、女性を鉄パイプで殴打する事件が連続発生していた。なので兄弟殺害事件も通り魔事件のひとつと考えられ、捜査は進んで行く。ところが科捜研の、殺された女性の親友であった女性心理技官が捜査の方向性に疑問を抱き、捜査主任と反目し合いながらも、夜の世田谷でおとりになることを志願する。ある夜の公園で、主任に守られながら夜の公園を歩く心理技官…ここまでおよそ三十分。このシーンを観た時に、突然襲う既視感。何かが頭の中でピシッと弾ける。『これ、これ、ホイット・マスタスンの「ハンマーを持つ人狼」じゃないかっ!』と気付き、驚きの電光が背骨を走り、全身に鳥肌を立ててしまう(「ハンマーを持つ人狼」については、創元推理文庫読了時に記事を作成している。2020/04/09参照)。その後も、多少登場人物の異同はあるにせよ、ほぼ原作通りに話は進み、無事に犯人は逮捕される。スゲェ面白かった。あの長いお話をよくもまぁわりと忠実に(ちなみに原作での『第二の事件 ふたりの女とガンマン』はカットされている)、一時間弱のドラマに仕上げたものだ。翻案物としては、非常に満足の行く出来である…あぁ、まさか「ハンマーを持つ人狼」が、日本でこんな風にひっそりと映像化されていたなんて。だがここで、それにしても!と思うことがある。これは完全に『原作・島田一男』ではなく、『原作・ホイット・マスタスン』ではないか!……し、島田先生ィ!もしかしたら担当脚本の池上金男が、「この小説、面白いんですよ。今回これを基にして作りましょう」と言ったのかもしれないが、明らかに丸パクリなのである。フフフフフ、おおらかな時代だったんだなぁ。この分なら、まだ他の話にも翻案物があるかもしれない。などと、偶然行き当たった昔のTVドラマに、他愛無い興奮を覚える夜を過ごす。
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そして風の強い、曇りで雨で晴れの月曜日。午後に一瞬だけ外出し、「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)で、萩原星文館「煙草と悪魔/芥川龍之介」(三版函ナシ)を110円で購入する。
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2020年09月06日

9/6『探偵小説狂想曲』の顛末を並べてみる。

今日も荻窪近辺に流れ着いてしまったので、ブラブラ吸い寄せられるように駅方面へ。西から古本屋さんの店先をたどって行こうと思っていたら、突然の大雨に見舞われる。どうせすぐ止むだろうと、ビシャビシャチャプチャプズブズブたどり始めると、あまりの土砂降りっぷりに、たちまち何処のお店も店頭は雨仕様となり、ビニール類でガッチリガードされてしまっていた。というわけでほとんど見ることが出来ずに、結局「古書ワルツ荻窪店」(2020/07/30参照)にて雨宿りする…いつの間にかテント看板の文字が復活しているな。清流社「隨筆 探偵小説/江戸川乱歩」を330円で購入する。

家に帰って一息ついたら、戯れに『探偵小説狂想曲』at「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)の顛末を、一列に並べてみることにする。
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…むぅぅぅぅぅ、三ヶ月の間に、これだけ買ったのか…安いとは言え、箍が完全に外れていたのであろう。ほとんどが函欠やカバ欠の本ばかりだが、それでもこの並びを眺めていると、ニヤニヤニヤニヤしてしまう。この中で読了したのは、「鐵の舌/大下宇陀兒」「呪ひの塔/横溝正史」「山峡の夜/ジヨルヂユ・シメノン」「蝋美人/横溝正史」の四冊だけで、摘み読み的に読書中なのが、「GUN教室/大藪春彦」「愛情會議/久生十蘭」「人間豹/江戸川乱歩」「爆風圏/海渡英祐」「完全殺人事件/C・ブッシュ」「或る年の記念/松本泰」の六冊である。いったい全部読み終わるのは、いつの日になることやら…いや、とても嬉しい贅沢な悩みである。
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2020年09月05日

9/5『サンダーバード6号』は三本立てだった。

秋の足音などさっぱり聞こえない、九月最初の酷暑の土曜日。荻窪駅の北側に流れ着いたので、地下道に入って線路下を潜り、ブラブラと「竹中書店」(2009/01/23参照)を見に行く。ギラつく日に照らされた店頭台に、己の影を落としつつ全体を俯瞰すると、右側二冊百円台に、古い映画パンフレットが新たに追加されているのに気付く。大体三十冊ほどか…一冊一冊丁寧に繰り、タイトルを確認して行く。六十〜七十年代のものが多く、邦画と洋画が絶妙な均衡を保っている。日本ヘラルド“アニメラマ”「千夜一夜物語」が出て来た。1969年の手塚治虫が製作・総指揮を務めた大人のための壮大な実験アニメーション映画である。演出は山本暎一、美術監督はやなせたかし、音楽は冨田勲で、構成協力に大宅壮一・北杜夫・小松左京が名を連ねている。…他にも何か、出て来そう…むっ、ユナイト映画「サンダーバード」と続編の「サンダーバード6号」発見。ちゃんと六十七・八年の当時公開物だ。中身はほとんど少年雑誌の特集記事みたいで(乗物や基地の紹介と図解、人形の仕組や、特撮撮影方法などなど)、丁寧な造りに好感を抱く。と、この三冊が喜ぶべき収穫なのだが、二冊百円なのでもう一冊選ばなければと、ユナイト映画「アラモ」を選んで、計200円で購入する。
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ところで「サンダーバード6号」だが、表紙をめくると、いきなり一ページ目に違う映画の紹介が登場する。『大怪獣メギラ』(原題は『THE MONSTER THAT CHALLENGED THE WORLD』…直訳すると『世界に挑戦した怪獣』といったところだろうか)。調べてみると、どうやら公開当時に同時上映された映画らしい。ウルトラマンに出て来た光熱怪獣キーラやラドンに出て来るヤゴ怪獣メガギラスみたいな顔した怪獣の造形が、不気味でとてもイカしている。2ページ目が『大怪獣メギラ』の詳細な物語説明になっているのだが、その最下段にはさらに、『アカデミー短篇漫画賞を受賞したデラックス・カラーまんが『いじわるヒョウ ペンキ屋の巻 デパートの巻』(ピンクパンサーですな)』載っている。さらに調べてみると、『サンダーバード6号』は『大怪獣メギラ』と『いじわるヒョウ』の三本立てだったのだ。なんて豪華なプログラムだ。そう言えばピンク・パンサーって、怪盗ファントマに狙われるダイヤの中に棲んでいるイメージキャラだったような…。
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2020年09月04日

9/4探偵小説狂想曲はひとまず一段落。

朝から色々駆けずり回り、些事をこなす。午後もそんな調子で動き回り、荷物を持ってちょっと前を通りかかった「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)の店頭棚を見て息抜きしていると、店頭文庫棚補充のために店主・天野氏が姿を現したので挨拶を交わす。そして「夕方に、また本を売りに来ますね」と約束し、一旦お店から姿を消す。暑さが少しだけ収まり、西から迫る雲に太陽が隠れ気味で、妙に薄暗い午後四時過ぎに、バッグ一杯の古本を抱え持って、再びの「古書コンコ堂」。帳場の天野氏に本を預けたら、査定結果が出るまで店内をジリジリグルグル。おっ、お馴染みの探偵小説ゾーンに、微妙な変化アリ。香山滋の復刻版「怪龍島」と柳香書院「世界探偵名作全集5 陸橋殺人事件/ロナルド・ノックス作 井上良夫譯」(函ナシ)が出現している。すぐさま「陸橋殺人事件」を確保し、査定終了の声がかかるとともに530円で購入する。「いやぁ、ここ最近、売るにも買うにも大変お世話になってますなぁ。ありがとうございます」と言うと「せっかく来られるんで、少しだけ補充しておきました。でもさすがにそろそろネタが尽きかけていますが、ちょくちょくプレッシャーをかけてもらってよかったです。そうでなければ、あの探偵小説の山は、きっと何年も放置していたと思います」とのことであった。どうやら大きな塊はあらかた片付いたとのこと。でもまだ少し残っているらしいので、今後はゆっくりお店での出会いを待つことにいたします…というわけで楽しかった夢のような『探偵小説狂想曲』も一段落か。いや、それでもここ三ヶ月の日参するクセは、なかなか抜けずに、期待に胸躍らせて、店頭&店内を偵察してしまうのだろうな。
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柳香書院・世界探偵名作全集は全三十巻の出版予定だったが、何と六巻目で挫折。楽しみにしていた人たちをかなりがっかりさせたという。巻末の見開き自社広告がまた壮観である。こりゃ確かに、期待しちゃうよなぁ。
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2020年09月03日

9/3九月になって思うこと。

本日は武蔵小金井に流れ着いてしまったので、昨日同様突然の雨に傘を差しかけながら、あるひとつの情報を確かめに駅の北側に出る。……うぁっ!本当だ。「中央書房」(2009/03/11参照)隣りの焼き鳥屋が火事になり、別に焼け落ちてはいないのだが、「中央書房」も被害を免れなかった様子…まだ辺りに漂う焦げ臭い匂いを嗅ぎながら、長い間営業していると、本当に色んなことがあるのだなと実感する。
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そして噂では、「中央書房」さんはもうすでに新店舗の準備に動いているらしいとのこと。おぉ、新しいお店!怪我の功名と言うか、棚から牡丹餅と言うか、とにかくその素早い行く末が楽しみである。と言うわけで、何も古本を買わずに阿佐ヶ谷に舞い戻る。だが今日もいつものように古本は買っておきたいので、「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)に滑り込む。麗しの探偵小説ゾーンには、新たに香山滋の「魔境原人」と「木乃伊の恋」が出現!相場よりかなりお安めだが、やはりそこは香山滋のオリジナル本。ちょっとおいそれと手は出ない。なので以前から狙っていて売れ残っている本で、古本心を慰撫することにする。平凡社「建設者/國枝史郎」(函ナシ)530円である。ちょっと傷んでいるが、これはいつものように、木工用ボンドでちょちょいのちょいするとして、「建設者」は昭和四年刊の、國枝初の現代物長編小説である。その内容は、赤裸々な自伝的浪漫小説!言わば己の東京出奔後を伝奇小説的に展開する斬新な小説。中一弥の上手過ぎる挿絵が、浪漫小説に艶やかな花を添えております。
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…そう言えば九月と言えば、本来ならまだ暑い秋の「みちくさ市」の季節。残念ながら今回もコロナ禍ということで中止が決まっております。いつも古本を買いに来てくれるみなさま、話しかけてくれるみなさま、お変わりありませんか?またいつの日か、この騒動が終息に向かったら、その時はいつものように選んだおかしな古本をたちを介して、楽しく愉快にお話しいたしましょう。
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2020年09月02日

9/2帯から『冒険コロボックル』を思い出す。

午後二時過ぎに東小金井に流れ着いたので、突然の豪雨に土砂降られながら、平面で直線的な住宅街を縫い縫い、新小金井の「尾花屋」(2017/06/15参照)へ。着いたところで、ちょうど雨が通り過ぎて行った。傘を畳んで店頭で一息。やはりこのお店での注目ポイントは、左側店頭の安売絵本棚だろう。店頭カゴは雨のために店内に引き入れられているようで、これは後で見ることにする。すると最下段で、佐藤さとるの大判絵童話があるのを発見する。講談社 児童文学創作シリーズ(幼年版)「タツオのしま/佐藤さとる・作 村上勉・絵」。名コンビの昭和46年の作品である。これは47年の第2刷だが、帯が付いているのが素晴らしい。子供のために買われた児童文学や絵本で、帯が生き残る確率は、かなりの低さであろう。箱やカバーさえ、子供たちの激しい活動には、耐えられないのだ。華奢な帯なんて、すぐさまビリビリグシャグシャに。というわけで四十八年前の帯が残っているのを祝福して店内へ。ややや、いつの間にか中央に洋服掛けが出現し、洋服が売られている。こりゃいったいどうしたことだ。と驚きながら棚やカゴを見ていると、短時間に三人のお客さんが訪れ、みな本を買って行った…「尾花屋」さんが、すっかり地元に定着している様を目にしながら、「タツオのしま」を300円で購入する。佐藤さとる作品は、その人気のせいか、後年に様々なタイプの全集や作品集や選集などにまとめられていることが多いのだが、やはり出版当時のオリジナルが一番魅力的である(全集では「タツオの島」と漢字になっている)。

家に帰り、絵童話なのでスパッと楽しく読了し、唯一ある棚(一段だけだが)児童文学棚に挿そうとしたところで、おっ!これもそう言えば帯がちゃんと付いていたな、と気付く。講談社「コロボックル物語1 だれも知らない小さな国/佐藤さとる」である。もはや新版なので絵は若菜珪ではなく、村上勉にバトンタッチしてからの本である。しかも昭和48年の第十四刷と別にめずらしくもないのだが、当時コロボックル物語を原作としたテレビアニメ『冒険コロボックル』の宣伝帯が巻かれているのだ。このアニメ、うっすら見てた覚えがあるなぁ。せいたかさんは原作と同じだが、コロボックルはボックル・クスクス・ラブラブという、わかりやすく現代的な名前になっていた。帯の惹句『「冒険コロボックル」の名原作』『いま、日本じゅうのテレビで大評判の「冒険コロボックル」その香り高い原作です!!』が泣かせてくれる。
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2020年09月01日

9/1九月の始まりにウッドハウスを。

朝から必死に原稿と取り組み、一段落した後、昼食を摂ってから外出する。蒸し暑いのだが、陽が陰る分だけ少し楽な感じがする。トボトボ歩いて荻窪へ。「古書ワルツ荻窪店」(2020/07/30参照)にたどり着くと、ありゃ!テント看板の店名やら何やらがすべて消え去り、緑一色のまっさらな状態に戻っている…いったいどうしたのだろうか?そんな風に不思議に思い、手指消毒して店内へ進み、日本テレビ「太陽にほえろ/魔久平・新樹瞳志」を330円で購入する。魔久平…一瞬、島久平を連想してしまうが、恐らくエド・マクベインのもじりなのだろうな。つまりこのノベライズ「太陽にほえろ」は『87分署シリーズ』を想定しているということか…。そしてそのまま吉祥寺に出て、「古本センター」(2013/07/01参照)では新しい芸能研究室「季刊 藝能東西 創刊号 小沢昭一編集」を80円で購入し、続いての「よみた屋」(2014/08/29参照)では学研ジュニア世界の文学4「長かった週末/ホーナー・アランデル」を100円で購入する。暑い盛りにマスクを着けたり、お店に入る度に手指を消毒したり、他人との距離を保ったり、家に帰ったら手洗いうがいをしたりと、と相変わらず様々に苦労しながらも、何気なく古本を買う喜びを味わう八月の終わりであった。

そして九月の始まり。午後に古本を携えて外出。ここ最近より涼しいのがかなり救いである。西荻窪へ直行し、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)内の「フォニャルフ」に補充する。だいぶ棚の景色が変わったので、九月の秋の風とともに、探偵小説多めの棚をお楽しみ下さい。そして学研ユアコースシリーズ「ティーンズファッション」青木文庫「古本屋 その生活・趣味・研究 第4号」を計200円で購入し、なかなか困難なミッションである仕事について、店主・小野氏とビニールカーテン越しに話し合う。二人で知恵を出し合い、困難の乗り越え方を模索していると、帳場左横の黒岩涙香類の下に、大正〜昭和初期の翻訳探偵小説群が出現しているのに気付いてしまう。あまりに良いメンバーなので、途端に話そっちのけでウットリしてしまう。見たことも聞いたこともない面白そうなヤツが、何冊も紛れ込んでいるな…。と心の中で探偵小説涎をダラダラ垂らしながら、昭和十六年刊の三學書房「長編ユウモア小説 笑の響宴/P・G・ウッドハウス 黒豹介譯」が千五百円のお手頃値段なのに気付いたので、早速購入してしまう。
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2020年08月30日

8/30どうして松本泰が好きなのか!?

午後一時前に青梅街道沿いの梅里に流れ着いたので、しばらく『梅里中央公園』で、木漏れ日の下に座りボ〜っと涼んでから、どっこいしょと阿佐ヶ谷に足を向ける。それで迷わず「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)へ。今日も探偵小説ゾーンに動きはナシ。なので、昨日も手にして悩んだ、ここしばらく買おうと思っていた本を買うことにする。奎運社「或る年の記念/松本泰」(函ナシ)である。お安めの2100円で購入する。棚出しされた時から目を付けていたのだが、『なぁに、松本泰だ。まぁしばらくは売れないだろう』と高を括っていたのである。だが最近、このゾーンが秘かに人気になっているらしく、何かと売れ方が慌ただしいので、松本泰とは言えいつ消えるかわからない!とついに買う決心をしたのである。クロス張りで瀟酒な本の装幀は初山滋で、大正十三年刊の創作短篇集である。
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ちょっと読んでみなければ、ミステリがあるかどうかは不明。それにしても松本泰は、日本探偵小説黎明〜勃興期から創作や翻訳に活躍した小説家であるが、何故かいまいち影が薄い。自らが起こした出版社・奎運社で『探偵文藝』という雑誌を出すほど、探偵小説に入れ込んでいたのだが、やはりこれと言った代表作がないためだろうか。どちらかと言うと、創作より翻訳や犯罪実録物の方で名を馳せた感に、その像が落ち着いてしまうのだ…。この本には嬉しいことに、その入れ込んでいた探偵小説関連の自社広告がある。その名も『黒猫探偵叢書』!
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1「赤い腦髄/オッペンハイム」2「ソマビル大探偵捕物帳/松本泰編」3「幽靈船/マーシュ」などが並び、すでに五版・六版と増刷を重ねているのが宣伝されている。う〜む、こんな面白そうな本たちは、まったく知らないぞ(『日本の古本屋』で『黒猫探偵叢書』で検索しても、何もヒットしない…)!やはり世の中は広く深く、まだまだ未知の本が、ひっそりと何処かに存在しているのである。このように、関わった出版物が多いにも関わらず、すっかり歴史の中に埋没してしまっているのが、私にとっては全貌が掴めぬ松本泰の、大いなる魅力となっているのかもしれない。
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試しに一作目を読み始めたら、松本の倫敦生活時代の自伝的小説らしい。いきなり『ズボン』が『ズボボン』になっており、秀逸な誤植に心をザバッと洗われる。
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2020年08月29日

8/29「おへそ書房」は明日から開店予定!

凶悪に気温が上がり始めた午後に、武蔵境の南に流れ着く。砂漠を歩くような心持ちでアスファルトの上をズリズリ進み、中央線高架を潜って久々の「浩仁堂」(2011/02/15参照)へ。激安本の並ぶ店頭&小さな店内を一巡し、中央公論社「悪魔のいる天国/星新一」を買おうとすると、少し傷んでいるので、200円を100円にしていただく。ありがとうございます!外に出て、さらに気温が上がったのを実感しながら、「おへそ書房」(2019/07/28参照)にも足を延ばしてみる…あれ、閉まってるぞ。シャッターの貼紙を見てみると、何と店主が怪我をされたそうで、しばらく休業中だったらしい。だが、その貼紙の下に新たな貼紙が出現しており、明日8/30(日)から営業を再開する予定らしい。お店には入れなかったが、何はともあれよかったよかった。そして阿佐ヶ谷に戻り。「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)を偵察。元々社のSF全集が新たに出現しているな…ややっ!「虚無への供物」が売れてしまっているな…安かったもんなぁ…買っとくべきだったかなぁ…まぁいいや。まだ狙っている本は売れずに残っている。まだまだ売れそうにないが、そろそろ買っておいた方がいいかな…などと探偵小説棚の前で腕組みして思案する。…まるっきりの阿呆ですが、こんなこともまた、楽しいものなのです。

そういえばここで買った春秋社「山峡の夜/ジヨルヂユ・シメノン」を早々に読了。表題作の『山峡の夜』はアルザスのホテルで起こる盗難事件をきっかけに、宿泊客・地元民・警察・ホテル&旅館経営者&従業員が、国際的詐欺師の影に苛まされるお話。何と主要登場人物全員が、なんやかんやと片がつくのだが、決して◯◯にはならない、激シブで切な過ぎるな終わり方。思わず『ハチミツとクローバー』か!と突っ込んでしまったが、シメノンの素晴らしさを改めて認識する。併録の『北氷洋逃避行』ハンブルクから出航し、ノルウェーの淋しい港を伝って行く船の中で殺人事件が起こるお話。唇が紫になりそうなほどの、極寒旅情が全編に吹き荒れている…。
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これはデザイン的に素晴らし過ぎる扉。いよっ、探偵小説デザイン千両役者、吉田貫三郎!
posted by tokusan at 16:48| Comment(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする