2017年11月23日

11/23カミとちか

夕方に外仕事から帰着し、返す刀で古本を携え西荻窪に向かう。しばらく「フォニャルフ」棚を放置していたので、是が非でも本日補充しなければならないのだ!と言うわけで夕暮れの中の「盛林堂書房」(2012/01/06参照)。店頭に日活映画『抜き射ちの竜』シリーズ原作の一冊が出ていたので、迷わずつかみ出して店内へ進む。通路に跪いて補充を手早く済ませ、すっきりして帳場ににこやかに向かう。そこで手渡されたのは、カバーデザインを担当した盛林堂ミステリアス文庫「ルーフォック・オルメスの事件簿」と、東都我刊我書房「左川ちか資料集成」!オルメスは楢喜八氏のイラストが決まっているので、文庫本としてとにかく可愛く出来た出来た!そして左川ちかの方は、前書「前奏曲」からの流れをイメージし、月をモチーフにしてシックにダークに仕上がった仕上がった!それにしてもこの「左川ちか資料集成」は、編者の執念が封じ込められた末恐ろしい本である。左川ちかによる、詩・散文・翻訳の、雑誌&単行本初出バリエーションを、可能な限り同ページ&見開きに収録しているのだ。別宇宙のように分かれていた各誌面の文章パラレルワールドが、視覚的に認識出来るよう同一宇宙に強引にまとめられてしまっている…素晴らしいが、なんと恐ろしい…。二〜三年は、モダニズム詩に溺れていられそうな濃密さなのである。帳場脇で本を開き、しばし唸りながら時を忘れる。青樹社 抜き射ち・シリーズ「鉄腕東京無宿/城戸禮」河出書房「シナリオ文學全集2 日本シナリオ傑作集」を計900円で購入し、カミの北原尚彦氏による解説を読んだり、複写されて滲んだ活字文字さえもが美しい資料集成にうっとりしながら、帰宅する。
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2017年11月22日

11/22本を開けたら二笑亭!

午前中に銀行と区役所で野暮用をこなし、そのまま『青梅街道』を歩いて、午前十一時半の「ささま書店」(2008/08/23参照)開店を目指していると、道すがらのガソリンスタンドから男が飛び出し、こちらに向かって陽気に手を降り始めた。なんだ、「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)の天野氏ではないか。珍しいところで会うものだ。どうやら愛車ボンゴの給油中に、眉根に皺を寄せ下を向いて歩く私を見つけたらしい。うむ、そうだ。下を向いている場合ではないのだ。と天野氏に思わぬ力をいただき、テクテク歩いて荻窪着。ところが早く着きすぎて「ささま」はまだ開いていないので(常連の古本修羅が歩道で待機中)、そのままお店を素通りして「岩森書店」(2008/08/23参照)の店頭台をまずは眺める。文春文庫「私の東京物語/吉行淳之介」を108円で購入し、すぐさま「ささま」にとんぼ返りする。おっ、時間通りに開いている。そして店頭店内ともにすでに古本を抱え込んだ修羅たちの姿が…全く持って素晴らしい…。ややっ、店頭棚に建築家・谷口吉郎の本が挿さっているじゃないか。早速来た甲斐があったなと首肯し、本を手に取り開いてみる、すると口絵ページには予想外の、狂建築『二笑亭』の写真が掲載されているではないか!なんだこれは!と慌てふためき本文をに目を移すと、その冒頭三十ページが「二笑亭綺譚」作者の式場隆三郎に誘われ、建築家の端くれとして「二笑亭」を見学に行く話なのである。谷口の「二笑亭」についての文章は、平成元年に求龍堂から出た「二笑亭綺譚 五〇年目の再訪記」に『二笑亭の建築』として収録されているが、それより遥かに長い詳細な見聞記と考察!毎度ありがとう「ささま書店」!ともはや何百回目となるであろうお礼を心中で唱え、他に二冊を選んで帳場にて精算。読売新書「意匠日記/谷口吉郎」河出ペーパーブックス「日本迷信集/今野圓輔」講談社文庫「人形の家/マーシュア・ミラー」を計315円で購入する。
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午後は下北沢でまたもや野暮用をこなした後、そのまま「ほん吉」(2008/06/01)に雪崩れ込む。店頭棚から三笠書房「マダム/織田昭子」(カバー破れ。織田作之助の内縁の妻による男女関係と新宿のバーと文壇の話)を100円で購入し、このまま少し月曜の『せんべろ古本ツアー』よろしく、沿線の古本屋を巡って行くかと決めて(ただしアルコールはなし!)、小田急線下りに乗り込む。最初は経堂で下車して、空模様がズンズン怪しくなる中を愛しの「大河堂書店」(2009/03/26参照)へ。先客と入れ替わるようにして店頭棚右翼ゾーンに入り込むと、春鳥會「みづゑ 日本洋畫沿革號 二十周年紀念特輯」を見つける。状態良好な大正十四年刊の第二四七号で、表紙は黒田清輝の女性クロッキー…何でこんなものが店頭に!と悩ましく悶えつつ値段を見ると210円なのである。おぉ、この一冊に大正時代に早くも振り返られた、日本洋画界黎明期から現在(大正十四年)までの軌跡がまとめられているのかっ!と感激しながら購入する。そして外に出るとまだ午後四時半なのだが、すでに薄闇のベールが掛かり、冷たい雨がポツリポツリと落ち始めているではないか。負けるもんか!とポケットに手を突っ込み、商店街から抜け出すように東に向かって歩き始める。しとどに濡れながらも歩いて歩いて豪徳寺の「靖文堂書店」(2011/09/06参照)。ここでは左側通路で、ちょっと高いが今まで一度も出会ったことのない、昭和十五年刊の『世界秘境探檢叢書』に魂を奪われてしまう。なんと素敵な血湧き肉踊るネーミング…千円としっかりしたお値段だが、買ってしまおう…。博文館 世界探檢叢書「中央アジア熱沙行/春日俊吉」池田書店「尾崎一雄作品集 第二巻」(函ナシ)を計1100円で購入し、冷たい雨と夜に寂しさを覚えてしまったので、そそくさと家へ戻ることにする。
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2017年11月20日

11/20せんべろ古本ツアー再潜入!

昨日の寒〜い寒〜い「みちくさ市」では、無事に四十九冊を旅立たせることに成功。通りがかりの人が、いつもより足を停めて買ってくれるのが嬉しかった。家で一冊だけ発掘された「野呂邦暢 古本屋写真集」もちょい高値を付けて並べていたが、あっという間に旅立って行った…ありがたや。お会いしたみなさま、出店のみなさま、わめぞスタッフのみなさま、ありがとうございました!また来年もよろしくお願いいたします!自分用の古本は、一瞬だけ店を放置し、三省堂「吉田松陰言行録/廣瀬豊」鱒書房「洋娼史談/戸伏太兵」(カバーナシ)永井出版企画「その他大勢の通行人/天野忠」を計1600円で購入する。

明けて本日、午前十一時前に冷え込む上野駅頭に姿を現し、高架東側の飲屋街に入り込む。かなりの背徳感&解放感を覚えながら、立ち飲み屋『たきかわ』の中に入ると、とみさわ昭仁氏(特殊古書店「マニタ書房」(2012/10/27参照)店主&ライター)が先着しており、すぐに柳下毅一郎氏(特殊翻訳家&映画評論家。昨晩中国から戻ったばかりで、身体がボロボロ気味。中国のある場所に存在する、リアル・パノラマ島『小◯国』の土産話に驚き爆笑する。世界はやはり、とてつもなく広い…)と安田理央氏(ライター&アダルトメディア研究家。風邪っぴき。新刊「巨乳の誕生」上梓、おめでとうございます!)が合流。そう、今日は再び『せんべろ古本トリオ』からお声掛けいただき、京成線沿いの、古本と酒精に溺れるツアーに同行させていただくのである(前回参加ツアーは2017/06/29参照)。喜びと不安を心に同居させつつ、今回もとにかく飲み過ぎないことを心がけ、まずはビールで景気をつける。そして実は『せんべろ古本ツアー』のルーツは、旧『聚落』で安田氏と柳下氏が飲んでいたことに端を発するそうである。そこにとみさわ氏が秩父から呼ばれ、偶然持ち合わせていた奇妙なカード、ダムカードとミイラカードをトレードしたことにより、一気に親交が深まったそうである…何のこっちゃ!
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そんな話をたっぷり聞いてから、まずは京成上野駅から、地下をノロノロとのたうつ銀色の電車に乗り込み、やがて薄日の差す地上に出て堀切菖蒲園に到着。線路脇の名店「青木書店」(2008/07/19参照)はしっかりと営業中。
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ドアの取っ手が本で作られているのに感動した後、店内に入った瞬間、全員がいきなりゾーンに突入してしまう。おぉ、みな実は楽しく酔っ払いながら古本に飢えていたのだな。講談社「みれんな刑事/多岐川恭」(貸本仕様)大散歩通信社「古本のことしか頭になかった/山本善行」(署名入り)朱雀社「女優キラー/池俊行」(裸本)を計1500円で購入する。表に先に出て皆が買物を終えるのを待つ間、隣りの激安総菜屋にて、コロッケとアジフライを計100円で購入し、昼飯代わりに路上でムシャムシャ…美味い!柳下氏が、どんな本にもいちいちパラフィンを掛けてくれるのに感動している。
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続いてお花茶屋に向かい、駅前のブックオフ看板そっくり店「BOOKS-Uお花茶屋店」(2011/12/06参照。ブックオフマニアのとみさわ氏が激しく色めきたつ!)を冷やかした後、車本専門店の「青木書店」(2010/08/17参照)へ。
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何も買えるものがないはずなのに、取りあえず店内に突入する頼もしい古本三銃士を見送り、店頭箱で見つけた角川mini文庫「注文の多い料理店」「銀河鉄道の夜」「宮沢賢治詩集」すべて宮沢賢治を計300円で購入する。間髪入れず「ブックステーションお花茶屋店」(2010/08/17参照)に足を向け、全員吸い込まれるように店脇の廃品本棚やブックエンドが積み重なる激狭壁棚通路に入り込み、感嘆の声を上げる。
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店内の充実古書も堪能し、理論社「考えろ丹太!/木島始」(推理小説児童文学。1970年の元本。嬉しい!)広済堂「藤吉捕物覚書/林不忘」ソノラマ文庫「謀略のゲリラ星域/在沢伸」計1763円で購入する。安田氏と柳下氏が同じ本を買っていて苦笑する。

青砥では「竹内書店」(2009/08/25参照)に立ち寄り、端正な100均棚から婦人画報社「天馬のなげき 北原白秋伝/大木惇夫」を購入。
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さらに一駅移動して立石では、ガソリンを入れるか古本を買うか駅頭で迷うが、「岡島書店」(2010/02/02参照)は駅からちょっと離れているので、ガソリン補給後は難しかろうの結論に至り、テクテク歩いて夕暮れのお店へ。
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安田氏がストリップ文献がちょい充実しているのにウンウン唸っている。それを横目に、ゆまに書房「紅ばらの夢/横山美智子」を500円で購入する。駅方面に立ち戻り、260BPMの早過ぎる踏切音を楽しんでから、踏切を渡って名店『鳥房』に上がり込む。忙しないフルスピード接客に圧倒されながら、ビールと日本酒を飲みつつ、半身の650円若鶏唐揚げに黙々と食らいつき、超絶美味を味わうのと引き換えに、解体に手間がかかったので、微妙に体力を消耗する。…でも満腹満腹。
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すっかり日が暮れてしまったので、ラストスパートを掛け押上に向かい、トボトボきらびやかな『ソラマチ』を抜けてスカイツリー駅までたどり着き、「業平駅前書店」(2009/04/20参照)へ。
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オヤジさんと挨拶を交わしつつ、段差のある長細い店内を行ったり来たり。奇妙な新書サイズ本が充実する棚から、筑摩書房「アメリカ西部開拓史/中屋健一」を500円で購入する。そしてすぐ近くの居酒屋『のんき』に腰を落ち着け、本日の打ち上げと獲物品評会を執り行う。その成果の評価は、買った本の高さにて!勝手に隣りのテーブルに本を積上げ、柳下氏が中国で購入してきた、メジャー付きUSB充電ケーブルを駆使して計測すると、左から古ツア・18.5cm、とみさわ氏・21cm、安田氏・9.8cm、柳下氏・17cmという結果に。
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そんな勝手に積み重ねた古本山を見て、店員のお姉さんが「すごい本ですね〜。みなさんそういうご商売なんですか?」と珍しがられる。いや、本日も楽しかったです。良く笑い・喋り・買い・飲み・酔い・喰いまくった一日の、駆け足レポートでした。
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2017年11月18日

11/18 昨・今・明

昨日の話から始めると、午前十時前に神保町入りし「田村書店」(2010/12/21参照)の前を通りかかると、開店待ちの古本修羅が三人張り付いており、午前十時に箱と台の布が取り去られるのを、今か今かと待ちかねている。ついその気合いに感化され、台の近くで待機してしまう。午前十時を迎えるとともに布が取り去られ、修羅たちがまずは気になる本を抱え込んで行く…ある種感動の光景である。こちらは台から一冊抜き取り、すぐさま100円玉も取り出し、店頭精算を済ませる。太虚堂書房「ジイキル博士とハイド氏/スチブンソン 谷崎精二譯」を購入する。この時点ですでに微妙に遅刻なので、急いで『本の雑誌社』に向かい、一時間ほど取材を受ける。帰りは裏路地の「富士鷹屋」(2009/09/11参照)に立ち寄り、旺文社ジュニア図書館「地球の危機/アシモフ作 小尾芙佐訳」(カバーナシ)創元推理文庫「シカゴの事件記者/ジョナサン・ラティマー」を計1100円で購入し、さらに「丸沼書店(2009/12/17参照)」で山形謄写印刷資料館「H丸伝奇/井上修吉」(井上ひさしの父による、幻の昭和十年「サンデー毎日」大衆文芸第一位入選作品を、平成二十三年に一冊にまとめたもの。こんなの出てたんだ)を200円で購入して、一旦家に戻る。そして午後六時過ぎに再び外出し、高円寺まで歩いていつもの「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)へ。河出文庫「アリス・ミステリー傑作選/中井英夫他」東宝株式会社ビリー・ワイルダー監督「シャーロック・ホームズの冒険」パンフレットを計350円で購入し、『中通り』の「コクテイル書房」(2016/04/10参照)へ。熊本から『古典籍展観大入札会』のために上京してきた「舒文堂河島書店」(2008/12/22参照)の若旦那と店内で落ち合い、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)小野氏とともに歓待する。途中からひとり出版社「共和国」の下平氏も合流し、古本と詩集の話で多いに盛り上がる。特に大好きな萩原恭次郎で殊更盛り上がれたのは、嬉しい稀な体験であった。酒宴の最中、河島氏から「これ、お土産です」と、『阿蘇ジャージー牛乳 ドーナツ棒』をいただくが、続けざまに「小山さん、こういうのお好きですよね?」と一冊の古雑誌をプレゼントされる。ふぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!「ぷろふいる」!
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ページを開くと黒白書房の広告!小栗虫太郎のモノクログラビア!古今荘「探偵文學」の広告!橋本五郎の『双眼鏡で聴く』!編集長は三上紫郎(九鬼紫郎)!表4に大阪圭吉「死の快走船」の広告!などと心があっという間に沸騰し、お礼を言うのも忘れてしまう。ぷろふいる社昭和十一年七月號「探偵雑誌ぷろふいる」(切り取りアリ)を入手する。

そして今日は三鷹に流れ着いたので、「古書上々堂」(2008/07/17参照)に潜り込み、ハヤカワ文庫「鳥はいまどこを飛ぶか/山野浩一」ちくま新書「名探偵登場-日本編/新保博久」を計200円で購入し、さっさと家に戻って明日の「みちくさ市」準備のラストスパートに入る。明日は寒くなるようですが、どうか暖かくして古本を買いに、雑司が谷へ足をお運びください。ブルブル震えて舌の根を合わさずに、お待ちしております!
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2017年11月16日

11/16「あばかれた秘密」と「青い魔術師」

映画『ニッポン無責任時代』の脚本を一読した青島幸男は、物語の骨子がハメットの「血の収穫」であることを、即座に見抜いたという。その鋭い洞察力に、ただただ頭を垂れるしかない、魂の震える極上のエピソードである。洞察力なくすぐさま物語に乗せられ欺かれてしまう立場としては、この話に限らず、何かを見たり読んだりして『この元ネタは◯◯だな』『あの話を翻案したものじゃあないか』などと気付く人全般を、常に尊敬し憧憬している。一度だって気付いたことはないのだ。良く明治〜大正の探偵小説を読んでいるので、登場人物の名を日本名に変えただけで、これは元の話があるんだろうだなあ…と鈍臭く感付くこともあるが、知識も調査力も不足しているので、決してその原作にたどりついたことはないのである。一度でいいから味わい、ニヒルに呟いてみたい…『あぁ、これは◯◯だな』…。ところがついに、そんな鈍い自分にも、元ネタに気付く日が訪れたのである。その話は、ヤフオクで落札し、つい昨日届いた一冊の本から始まる。ポプラ社 世界推理小説文庫(11)「あばかれた秘密/江戸川乱歩 原作ランドン」(昭和三十八年刊。貸本仕様。1400円で落札)。ニューヨークに出没する神出鬼没の怪盗『霧男』とその一味は、人々の度肝を抜くトリックを駆使し、鮮やかに目的を果たすことで、市中に悪名を轟かせていた。ところがそのテクニックは、かつて活躍した義賊『灰色の幻(グレイ・ファントム)』の手口と酷似していたのである。『霧男』が市中の金持ち七人を、唯一毒&唯一解毒剤(そんなのズルいぞ、霧男!)で脅迫する大仕事を始めたことにより、必然的に対決へと向かう『霧男』と『灰色の幻』…とまぁそんなストーリーが、「怪人二十面相」シリーズでお馴染みの柳瀬茂のドキドキする挿絵とともに展開して行くのだが、児童用にリライトしてあるので、スラスラと読み進めてしまう。笑い死にする唯一毒を金持ちに注射し、財産を脅迫する『霧男』…?この『笑い死にする毒』を注射…何か既読感が…。敵のアジトのひとつ『淡青荘』の秘密部屋に忍び入り、出たり入ったりしてゲリラ戦を繰り広げる『灰色の幻』…この秘密部屋を出たり入ったりする闘い方、何処かで…。悪の博士を捕え、解毒剤の在処を白状させるために、目に毒をさそうとする『灰色の幻』…!!!むむむむむ、この話を俺は知っているぞ!この博士の目に毒を目薬よろしくさそうとするシーンを、確かに以前に読んでいる。しかもそれは、極最近のことのように思われる。え〜っと、何の話だっけ…どんな話だっけ…。確かそちらの主人公は少年で、ゲリラ戦の舞台となる敵のアジトも城だったような気が…。だから児童文学の探偵小説だろうな…う〜ん、思い出せない。と考えつつ昨日は眠りに落ち、今日も外に出て仕事をしたりしながら考え続けてしまう。そうか、最初の事件は劇場で起こるんだったな。発端の舞台が劇場劇場劇場劇場劇場劇場…あ!もしかしたら、島田一男の「青い魔術師」か?少年俳優探偵・鏡海太郎が不可思議な怪盗・青い魔術師と…そうか!『青い魔術師』は『霧男』なのか!とようやく気付き、家に戻ってから二冊を照らし合わせると、やはりほぼ同じ話であった。つまり島田一男「青い魔術師」はハーマン・ランドン「あばかれた秘密」(博文館文庫では「灰色の幻」、論創海外ミステリでは「灰色の魔法」)の翻案なのである!だが「青い魔術師」には、そんなことは一行たりとも書かれてはいない。「あばかれた秘密」は、元々『世界名作探偵文庫』の一冊「灰色の幻」(昭和三十年刊)を、昭和三十八年に『世界推理小説文庫』として再出版したものである。つまり同じ年にこの二冊がポプラ社から出されているのだ…これは、いいのだろうか。たまたまこの二冊を買ってしまった子供は、混乱しなかっただろうか…。読了したら、十二月の古本市で売ってしまおうと思っていたのだが、これで何だか重要な本になってしまったので、まだしばらくは手元に置いておくことにしよう。う〜ん、それにしても気付き方が逆なのだが、それでも元ネタに気付くって気持ちいい!
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左の「あばかれた秘密」の表紙絵は、挿絵と同じ柳瀬茂だが、発注を間違えたか、それとも違う絵を間違えて入稿してしまったのかと思うほど、本文と全然関係ないものになっている。なんだ、この大航海時代のようなシチュエーションは!右がかつて喜国雅彦氏の「ひとたな文庫」で購入した「青い魔術師」。カバーはカラーコピーである。

と言うわけで、来る12月9日(土)に、毎年恒例となっている古本市を、岡崎武志氏とともに開催いたします!ジャンジャン古本買いに来て下さい!お願いします!
【オカタケ&古ツアガレージ古本市】
◆日時:2017年12月9日(土)11時〜18時
◆会場:西荻窪 銀盛会館1階 JR西荻窪駅南口徒歩5分(杉並区西荻南2-18-4)
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2017年11月15日

11/15素早くパトロールする。

午後は色々たて込み、家を離れなくなりそうなので、午前のうちに家を飛び出し久々の神保町パトーロールに向かう。なるべく早く戻るつもりなので、基本的に早足で古本屋から古本屋を渡り歩く。となると、自然と店頭台や棚を見るのも高速になり、つまりは大雑把なパトロールとなってしまう。本の背を流して見ている時は、視線が停まる引っ掛かりを頼りにしているのだが、ちょっといつもより速度が速過ぎるせいか、残念ながら何も引っ掛からない…やはりこういう棚の見方は不確実だな。かなりの古本を見逃している可能性大…。結局『靖国通り』沿いでは何も見つけられず、『もしやボウズか…』という考えが頭を掠め始める。『白山通り』に入って、そんな嫌な流れを断ち切るために、あえて「アムール」(2011/08/12参照)の棚をじっくり見ることにする。集英社文庫「青春の休み時間/三木清」新潮文庫「街に顔があった頃 浅草・銀座・新宿/吉行淳之介・開高健」を100円で購入し、取りあえずボウズを回避してホッとする。そのままジワジワ北上して、愛しの「日本書房」(2011/08/24参照)着。おっ!右側木製台の上段列と下段列の間に、「女学生の友」の古い付録がギュッと押し込まれているではないか。挿画がすべて美少女バストアップの五冊の小型本を取り出し、チェックして行く。三木澄子と森一歩の長編小説がほとんどだが、一冊だけ宮敏彦の推理小説が紛れ込んでいた!「日本書房」の奇妙な懐の深さに感謝しながら、小学館 女学生の友 昭和四十年2月号付録「推理小説 しらかばの微笑/宮敏彦」春陽堂「佐藤春夫選集」(函ナシ)を計800円で購入する。こうなると気分は燃え上がり、続いて「丸沼書店」(2009/12/17参照)では鹿島出版会「近代建築ガイドブック[関西編]」白水社「海洋奇譚集/ロベール・ド・ラ・クロワ」を計500円で購入し、ここで古本街は終りだが、心に古本の熾火を携えたまま荻窪に向かい、この頃足繁く通っている感のある「ささま書店」(2008/08/23参照)の店頭棚と対峙する。安岡章太郎がずいぶん流れ出ているな…あっ!「肥った女」も出てしまっているではないか。こいつはいただきだ!と手にすると、たちまち他にも三冊をつかんでしまう。現代文芸社「新鋭作家叢書2 肥った女/安岡章太郎」弥生書房「井伏鱒二集/小沼丹編」新人物往来社「真紅の法悦」「戦慄の創造」を計420円で購入したところで、ようやく古本熾火が鎮火したので、家へと歩いて舞い戻る。
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素早い神保町&荻窪パトロールの、ささやかな嬉しい収穫代表二冊である。
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2017年11月14日

11/14阿佐ヶ谷最後の貸本屋に異変あり。

阿佐ヶ谷最後の貸本屋は、駅北口に出てアーケード商店街を通過し、『旧中杉通り』に入って「ネオ書房」(2010/02/09参照)→「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)と通過し、墓場脇の緩くカーブする緩い坂道を下ってしばらく進むと、右手に『本はレンタルで』とある年季の入った電飾看板が現れる。「ネギシ読書会 中杉通り店」(2009/08/12参照)である。その店頭は、コミックカバーのカラーコピーや、激安古本漫画に相変わらず賑やかに囲まれている。…だがしかし、その中につい最近、赤い一枚の貼紙が出現したのだ。『閉店セール開催中!12月31日に店を閉じます(予定)在庫品大処分!1冊5円から!』…長らく阿佐ヶ谷の変わらぬ景色として貢献してきたお店であるが、ついに閉店してしまうのか…。だが本が貸本とは言え、一冊5円から売られているとは聞き捨てならん!と、何も見つからなかった時の保険となる50円本を一冊つかみ、サッシ戸を開けて、コミックだらけの店内に思わず突入してしまう。店頭ではすでに一部のハードカバー本の50円セールが行われているので、店内にも確かにその類いの本があるはずなのだ。そう信じて棚も床も乱雑気味なコミックだらけの空間に視線を走らせる。ほぅ、左壁棚上段に、質の良さげなクセのある本がちゃんと並んでいる。通路に積み上がったコミック越しにつま先立ち、一冊二冊と気になる本を抜き出してみる…果たして幾らで売ってもらえるのだろうか?右側ゾーンにも行ってみるが、こちらは入口横以外すべてコミックで埋め尽くされている。絶版漫画もチラホラ混ざり込んでいるな…と気にしつつ、買う予定のなかったそのコミックも二冊手にしてしまう。そして奥の帳場に座るオヤジさんに「本は売ってもらえるんですか?」「ええ」「じゃあこれお幾らでしょうか?」と五冊を差し出す。50円本をスッと除外し、残りの四冊の背を並べて眺め、しばし沈思黙考…「みんな今ない本だからね。一冊400円でどうでしょう?」「いただきます!」と言うことで無事に交渉成立。「でも、アマゾンのマケプレとか見れば、もっと安く売ってるかもよ」と優しく諭されるが、「いえ、今ここで買いたいんです」と答える。社会思想社「聖林の王 早川雪洲」王国社「不可能からの脱出 超能力を演出したショウマン ハリー・フーディーニ/松田道弘」講談社「二つの月の記憶/岸田今日子」青林堂「薔薇と拳銃/谷弘兒」ふゅーじょんぷろだくと「少年が夜になるころ/鈴木翁二」を計1650円で購入する。本には貸本仕様のビニールが掛かっていたが、セロテープで仮留めされていただけなので、簡単にキレイに剥がれてくれて、すべて見事な古本へと転身を遂げてくれた。店頭貼紙にはその他にも『長期休業中コミックス差し上げます!無料冊数無制限!』とある。もしかしたらコミックス以外の在庫も、いずれ放出されるかもしれない。しばらく経ったら、また見に来ることにしよう。
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2017年11月13日

11/13東京・早稲田 早稲田青空古本祭

珍しく午前のうちに早稲田に向かい、今回から「青空古本掘出市」(2012/05/19参照)から「青空古本祭」へと名称を変えた、『早稲田大学』構内・大隈重信像近くの11号館・10号館・9号館に囲まれた中庭的場所で開かれている古本市に向かう。ゆっくりとした学生の人波に乗って大学へたどり着き、色づいた銀杏並木を通過すると、まったく変化のない緑の杉並木に見下ろされた、巨大白テントの古本市にたどり着く。樹と空と校舎が高いので、まるで白テントはアスファルトに張り付いているような低さに見える。
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すでに多くの古本修羅影がテントの中で蠢いているようだ。そんな修羅場に突入しようと近づいて行くと、森英俊氏&彩古氏の二大古本神と擦れ違い、挨拶を交わす。時刻は午前十時半、早々の神の離脱である…もはやミステリ方面でめぼしいものは残っていないであろう…。案の定テントの中は賑わっており、最奥の帳場もすでにその忙しさがピークを迎えてしまっている。物凄い活気であるが、日陰のためかテント内の空気は冬の冷たさで、手をかじかませるほどである。各ワゴンを巡り、時に張り付き、時に背越しに覗き込み、時に首だけ人垣に差し入れたりして行く。「玄書房」の硬めの古書が素敵であるが、これは!と思った本はちゃんと値段が付けられているので、今回は残念ながらパス。その代わりに「古書現世」(2009/04/04参照)スペースの片隅に、先日向井氏から聞いた黒い本の一部(2017/11/06参照)、サトウハチロー・石黒敬七などが固まっているのを見付け、裸本で安値なので一冊抜き取る。結局二十分ほど滞在し、求龍堂「二笑亭綺譚 五〇年目の再訪記/式場隆三郎・藤森照信・赤瀬川原平・式場隆成・岸武臣」六藝社「風流記/石黒敬七」(裸本)審美社「二人の友/小山清」(函ナシ)を計1200円で購入する。古本市チラシの裏に描かれた大学構内地図を参考にし、丘の上の西門から構外に出て、そのまま『早稲田古本街』をブラブラ散策。すると「飯島書店」(2010/04/14参照)店頭100均文庫ワゴンで、正進社名作文庫「虫のいろいろ・聖ヨハネ病院にて/尾崎一雄・上林曉」(収録作は、尾崎が『虫のいろいろ』『やせた雄鶏』『小鳥の声』『華燭の日』『退職の願い』、上林が『聖ヨハネ病院にて』『小便小僧』『薔薇盗人』)を見つけたので、そのまま地下鉄に乗って帰らずに良かった!と思い購入する。

さて、来る11/19(日)の、今年最後の「みちくさ市」に、いつもの如く勇んで参加いたします。家中から選びつつ引っかき集めた良書・珍書を並べていますので、ぜひとも雑司が谷でお会いいたしましょう!

鬼子母神通り みちくさ市
●開催日時
2017年11月19日(日)11:00〜16:00
雨天中止です。
・当日8:00に天候による開催の有無を決定します
・みちくさ市本部 携帯電話:090-8720-4241
●会場
雑司が谷・鬼子母神通り
東京都豊島区雑司が谷2丁目・鬼子母神通り周辺
東京メトロ副都心線・雑司が谷駅1番出口または3番出口すぐ
●お問合わせ
michikusaichi●gmail.com(●をアットマークに変えて送信してください)
みちくさ市本部 携帯電話:090−8720−4241
●主催
鬼子母神通り商店睦会  運営/わめぞ http://d.hatena.ne.jp/wamezo/
協賛/雑司が谷地域文化創造館
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2017年11月12日

11/12三冊の「看板建築」

木曜辺りからかなりハードな週末を過ごしたために、身体がすっかり疲弊しているのに気付いたので、今日はノンビリだらしなく過ごすことにする。そうと決まれば古本を買いに行かなければと、テクテク冷たい風の中を歩いて高円寺「西部古書会館」(2008/07/27参照)の「好書会」二日目へ。午前十時半だが、古本修羅的殺気は何処にも感じられず、いたって長閑な館内である。じっくりと棚を見て行くが、なかなか心を掴む本には出会えない。それでも二冊を手にして、最後に「古書ワルツ」(2010/09/18参照。現在は事務所店に)の棚に集中すると、薄手小型の年季の入った本が気になったので、古本修羅の習慣として引き出してみる。よっ!プラトン社「苦楽」大正十三年四月特別号附録「近代情話選集」じゃあないか。
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里見ク・小山内薫・久米正雄・泉鏡花・谷崎潤一郎が収録されているが、特に鏡花の「第一菎蒻本」が嬉しいぞ!と小さくはしゃぎ、報知新聞社「長編小説 空手風雲録/牧野吉晴」学習研究社「三年の科学」昭和三十二年7月号第1付録「こんな人になりたい」とともに計500円で購入する。続いてすでに午前十一時半なのですっかり出遅れているが、荻窪の「ささま書店」(2008/08/23参照)に電車で向かい古本を求める。河出文庫「ホームズ贋作展覧会/各務三郎編」富文館「傳記小説 雨ニモマケズ 宮澤賢治の生涯/斑目榮二」白地社「ボン書店の幻 モダニズム出版社の光と影/内堀弘」を計735円でスパッと購入し、テクテク歩いて阿佐ヶ谷に舞い戻る。

ところで昨日の一箱古本市で唯一買い求めた古本、三省堂「看板建築/藤森照信・文 増田彰久・写真」は、実は三冊目の所蔵となる「看板建築」なのである。だがこの三冊はすべて異なる三冊で、昨日手に入れたハードカバーの『都市ジャーナリズム』シリーズの一冊は1988年出版。次のソフトカバー選書版は新たに「看板建築始末記」を収録し1994年出版。そして1999年出版の“新版”を冠され本文用紙の厚くなったソフトカバー本は、カラーグラビアページと新たに書き下ろした「はじめに」を収録。
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十年の間に基本的内容は変わらず形だけを変え、同じ出版社から三度著作が出版されるのは、ちょっと稀なことではないだろうか。単行本→文庫本、新書本→文庫本、単行本→ノベルス→文庫本などの道筋は良く見られるとしても、ハードカバー単行本→ソフトカバー単行本→ソフトカバー単行本と単行本を渡り歩くのは、ちょっと不思議な流れである。この本については、かつて渋谷・道玄坂にあった「文紀堂書店」(2015/03/31参照)の貴重な写真が掲載されているので、2010/03/02『古本屋遺跡・繁華街の盲点』記事内で言及しているが、実は他にも今はもうない看板建築の古本屋さんが紹介されているのである。神保町の「澤書店」と九段下の「ペンギン文庫」と高円寺の「西村屋書店」(2010/04/11参照)。そしてもう一店が、月島「文雅堂書店」である。「西村屋」以外は、どれも行ったことのない八十年代の古本屋さん…当然夢の中で入ることしか叶わぬお店ばかりであるが、それでも「文雅堂書店」二階壁面の本を模した意匠は、一度で良いから目にしたかった…。いや、この写真が見られるだけ、幸せっていうものなのか。
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2017年11月11日

11/11愛知・中京競馬場前 安藤書店

少し暖かな南風の吹く東京を夜明け前に立ち、愛知県・知立(ちりゅう)で行われる一箱古本市&トークに向かう。こだま号にて三河安城駅に午前九時に降り立ち、『正文館書店知立八ツ田店』店長さんに出迎えられ、会場である書店に車で向かう。そうして十分ほどでたどり着いた巨大書店は、ほぼ広大な田んぼの真ん中に位置し、地域の読書文化を一身に担う、お城のようであった。店長さんが「日の入りが見えるのが取り柄です」と柔和に微笑む。一箱古本市の会場は、その巨大店舗と道路を挟んで向かい合う第二駐車場。こちらは二面がダンプなどが頻繁に行き交う道路に接し、後の二面をダンプが停まる駐車場と土建会社のプレハブ小屋が建つ、なかなかハードで殺風景なロケーション…おまけに雨が上がり晴れたは良いが、恐ろしいほどの強風が吹き荒れているのだ。さらにおまけに!トーク会場もこの駐車場なので、すでにネームプレートの止められた長机が道路を背にしてセッティングされている…だ、大丈夫なのだろうか…。
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この荒れた状況を四時間共にする他店も準備を終え、とにかく午前十時には一箱古本市が時間通りにスタート。余りにも寒いので、場を離れる時用に支給された布を身体に巻き付け、風を凌いだつもりになって暖を取ったつもりになり、寒さから自分を誤摩化し続ける。お客さんは一時間に五人ほどという、こちらも過酷な状況が展開するが、どうにか二十三冊を売り上げ古本市のカタチとなる。お客としては三省堂「看板建築/藤森照信・増田彰久」を500円で購入。いやぁ、ちょっとした罰ゲームのようだったが、終わってみればこれはこれで楽しいひと時であった。そんなもはや荒天とも言える強風のため、結局トークは会場を店内に急遽移動して開催。初対面の目黒考二氏の胸を盛大に借り、本と古本と古本屋と書店と書評と読書と「本の雑誌」について、あちこち行き来しながら楽しくお話しする。その過程で氏の著作の一冊、ご尊父のことを書き記した角川書店「昭和残影」に、原書房「古本屋ツアー・イン・ジャパン」の一節(佐藤さとるの「わんぱく天国」を追体験するための塚原公園行。実は目黒氏も横須賀で活動していた父の足跡をたどっていたら、偶然「わんぱく天国」に行き着き、同様に塚原公園フィールドワークを行っていたのである)が引かれているのを知り、驚く。イベント後、恐縮して同書を購入し、署名していただく。そんな風に無事に任務を達成した後、京都競馬に向かう目黒氏を早々に見送り、こちらも負けじと古本屋ツアーへ向かうことにする。本を買って下さったみなさま、会場でご一緒したみなさま、トークを聞きに集まっていただいたみなさま、そして貴重な機会を与えていただいた『正文館書店』のみなさま、大先輩の目黒考二さま、ありがとうございました!

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またもや店長さんに車で送っていただき、名古屋鉄道牛田駅。各駅停車に乗り込み、ガタゴトと名古屋方面に向かう。日がすっかり落ちたところで目的駅にたどり着き、改札を抜けて駅前北口に出ると、おぉっ!目の前にもう古本屋さんが見えているではないか!駅舎の屋根が、そのまま店まで伸びる下を、競馬帰りの人たちと擦れ違いながら、藍色の大きな看板を壁面に巡らせたお店に近付く。店頭には鉄製の立体ワゴンが三台並び、100均文庫と100均単行本が収まっている。ほぅ!いきなり梶龍雄のノベルス発見。それにちょっと古く見かけない本が多く含まれているではないか。たちまち期待に胸が轟き、あっという間に四冊を手にして、早くも満足感を覚えながら店内に進む。壁面は棚で覆われ、入って左に文庫棚が二本、右に背の高い通路棚が一本鎮座し、その奥はさらに広がり、四面の柱状の正方形棚が二本並んでいる。右奥が帳場になっており、未整理の古本タワーに囲まれた棟梁的店主が横向きに座り、高尚な店内BGMに目をつぶり耳を傾けている。入ってすぐ左の『100均ではない』と書かれた文庫棚には、絶版&品切れ文庫と海外文学文庫・日本純文学文庫が並び、すでにただ者でない気配を漂わせている…店頭から感じた通り、このお店は一味違うぞ。そこを囲む壁棚には、ジャンル別新書・鉄道・料理・つげ義春・自然・動植物・園芸・趣味絵本・ビジュアルムック・日本美術・建築が並ぶ。右側に進むと、入口側壁面には美術・漫画評論類・古代中世・中国関連。向かいの通路棚には時代劇文庫・日本文学文庫・絶版文庫・古書の域に突入した文庫・ミステリ&探偵小説文庫(質の良い春陽文庫あり)・出版社別文庫が集まり、かなりハイレベルな構成を見せている。裏側には郷土・名古屋関連・歌句が詰まり、柱的四面棚には美術・近現代史・戦争・映画・歴史・ミステリ。帳場横の棚では歴史・風俗・民俗学・幻想小説・探偵小説(少々)が、奥の板の間のバックヤードを背景にして燦然と輝いている。そして最奥の壁棚には、純文学と大衆小説が絶妙に混ざり合い支え合う、日本文学がドッサリ!深く古く絡み合い混ざり合う棚造りに、思わず血眼になってしまう…ちょっと二度三度見ないと、良い本を見逃していそうでコワイなと思っていると、突然店主が声をかけてきた。「ごめん、もう閉めたいんだ。わるいなぁ〜」と片目をつぶり片手で拝まれてしまう。えぇ〜っ!こんなに心が燃え上がっている時に、それは切ないなぁ〜…だが、駄々をこねてもしょうがないのは百も承知である。仕方なく今手にしている本を精算すべく、帳場に潔く向かう。店主は「悪いね」を連呼しつつ、一冊の高値の文庫を目にすると「これ高いよ。いいの?」と聞いてきたので「がんばります!」と間髪入れず答えると「じゃあ…」と2500円をたちまち2000円にしてくれた。ありがとうございます!そして、「いやぁ、この辺は午後四時半を過ぎるとダメなんでね」と早めの閉店理由を簡潔に語ってくれた。品揃えはゾクゾクワクワク。良い本・珍しい本に値段はしっかりつけられているが、相場よりは安めで、また所々に隙もあり、とても楽しめるお店である。じっくり見られなかったのが返す返すも残念なので、今度は夕方前に訪れ、存分に探索することを心に誓う。角川文庫「臨海樓綺譚/スティーブンソン」「ボロ家の春秋/梅崎春生」バニーブックス「ミステリ博物館/間羊太郎」光文社文庫「幻のNHK名番組 私だけが知っている 第二集」徳間書店「連続殺人 枯木灘/梶龍雄」流動「すたこらさっさ/田辺茂一」を購入する。外に出ると、教えられた通り人影の少な過ぎる寂れた駅前。朝とは正反対の冷たい北風が吹きまくり、早めの帰宅を促しているようなので、名古屋駅にさっさと向かい、速い速いのぞみ号に飛び乗って、帰京の途に着く。
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2017年11月08日

11/8準備と月世界

早朝から仕事を超高速で進める(早いからと言って、決して手を抜いているわけではない)。午前のうちに幾つかの案件を済ませ、午後は土曜の古本市の仕上げにかかる。用意した古本を値付けし、ゆうパック大ダンボール一箱に入る量を取捨選択しながら調整。どうにか夕方前に愛知に送り出す。
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だいたい五百円前後の安値なので、来られる方はぜひとも漁りまくって下さい!そして暗くなり始め寒くなり始めたところで、やはり今日も古本は買っておきたいと外出。近場のお馴染み「銀星舎」(2008/10/19参照)に入り、奥さま店主のハイテンション・マシンガントークに耳を傾けながら、本棚にも意識を集中する。そして本日初めて奥さまの実家が、老舗のプロ用楽譜出版社であることを知る。う〜むそうだったのかと驚きつつ、手は気になっていた古本に伸びて行く…。弘文堂世界文庫「月世界旅行記/シラノ・ド・ベルジユラツク」(昭和十五年刊の、文庫と名乗りつつ新書サイズの簡素な本。これでもカバー装なのである)を二千円で購入する。家に戻ってからは、再び仕事に従事する。
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そして迫り来る11/11土曜日!いよいよ愛知県知立市の「正文館書店知立八ツ田店」で一箱古本市とトークです。古本を売り、本と古本と本屋と古本屋について、大先輩・目黒考二氏の胸を借りまくって話す(あぁ、本当にちゃんとお話し出来るだろうか。ブルブル…)、本に塗れた見知らぬ土地での一日!果たしてどんなことになるのか、まったく想像出来ていないので、どうか皆々皆々皆々様、馳せ参じていただければ幸いです。駐車場にて、お会い出来るのを楽しみにしています!

★一箱古本市in正文館書店知立八ツ田店
■11/11(土)第2駐車場(雨天時は店内カルチャースクエア))
■10:00〜14:00
※少数精鋭で、変な本持って行きます!

★THE対談 目黒考二×小山力也(古本屋ツアー・イン・ジャパン)
■11/11(土) 14:00~15:00 トークショー 15:00~15:30 サイン会
※一箱古本市の一環として開催します。
■第二駐車場にて(雨天時は入口特設会場)
■予約は、インフォメーションカウンター、またはお電話にて承ります!。
正文館書店知立八ツ田店 知立市八ツ田町曲り57-1
TEL0566-85-2341 10:00~22:00 年中無休 http://www.shobunkanshoten.co.jp
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2017年11月07日

11/7お店と家に古本が届いていた。

今日は東小金井の南南西にある谷、野川沿いの『武蔵野公園』近くに流れ着く。その名の通り、武蔵野の面影を色濃くどころか、そのまま保護したような広大な一帯に目を瞠り、暖かな黄金色の秋の雑木林に、心がついついしゅるしゅる解けてしまう…。だが、そんな楽園から脱出するように、キツい坂道を上って街中に帰還し、電車に乗って西荻窪へ向かう。「盛林堂書房」(2012/01/06参照)で「神田古本まつり」の成果を聞きながら、先月分の「フォニャルフ」売り上げを受け取りつつ、お仕事の打ち合わせをいくつか。帰り際「そう言えば北原さんから本を預かってないですか?」と聞くと、すっかり忘れていた小野氏が、奥の棚から持ち重りのする角封筒を取り出してくれた。その表には『物々交換のブツです。版元にご注目下さい。北原』と書かれている。…話の始まりは、先日「古本案内処」(2015/08/23参照)で手に入れた、春陽堂の日本小説文庫を何らかの理由で一部だけ改装したと思われる、叢文社の日本小説文庫である(2017/10/11参照)。略称“SBS”とあるこの謎の文庫本をブログで目にした、作家&ホームズ研究家&文庫本スキーの北原尚彦氏が「未知の文庫本なのでダブっているのなら一冊譲ってくれないか」と連絡をいただいたのである。この時以前買った「近代異妖篇(綺堂讀物集)/岡本綺堂」は、すでにいつかの古本市で販売してしまっていたのだが、読了しているし、こういうナゾの本は蒐集家&研究家の手元に嫁いだ方が幸せであろうと、即座にお譲りすることを決めたのである。だがただ譲り渡すのは味気ないので、北原蔵書の中から氏が選んだ推薦の本とのトレードをお願いしてみると、氏は面白がり快く承諾してくれたのであった。それから三週間…氏が足指を骨折していたり、神田古本まつりがあったりと、様々な障害をようやく乗り越え、本日無事に交換が成立したのである。なんだろうとワクワクしながら袋から取り出すと、予想外の箱入り本である。
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自警文庫24「捕物小説に学ぶ江戸用語の基礎知識」というA5版・ハードカバー・全415ページの本であった…そういえば版元に注目とあったな…自警文庫?…いやいや、このサイズで文庫を名乗るのは、どうかと思うぞ。もしかしたら北原さん、ホームズが江戸時代に出現して半七と知恵比べしてまうパスティーシュでも書こうと思って、資料としてのこの本をネットで見つけ、『文庫だしラッキー!』と思って注文したら、こんなデカイ本だった…というような経緯があったのではないだろうか。あぁ、警察関連の本なので、序文には『この文庫をそばにおいて目をとおされ、巡回連絡や聞き込みなどのときに活用されると、きっと街の人からも一目おかれ、おそらく良い成果が得られるものと思います』などと書かれている。やだなぁ、聞き込みの時に『科人』とか『主殺し』とか江戸用語をちょいちょい挟んでくる刑事…。何はともあれ北原さん、ありがとうございました!

その後家に帰り着くと、待ちに待った古本が逆に待ち構えてくれていた。先日の「くまねこ堂」さん(2017/10/29参照)訪問時に、値段調べになっていた一冊である。値段確定後交渉が成立し、本日無事に手元に届いたのである。ポプラ社「黒バラの怪人/武田武彦」(裸本)五千円也!倉庫内を探索していたとき、海野十三全集の間にしれッと挟まっていたのを発見。裸本だが状態はまずまずで、このチャンスを逃したら当分出会えないと覚悟を決めて、何が何でも手に入れて読みたかった残忍系少女探偵小説なのである。挿絵は北田卓史!あぁ、早く読まなければ!「くまねこ堂」さん。ありがとうございました!
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2017年11月06日

11/6タイちゃん買って、今年最後のたけうま会へ。

朝から仕事をしながら、合間を縫って粛々と土曜の「正文館書店知立八ツ田店」での古本市の準備を進める。さらにその合間を縫って外出し、愛しの午前十一時半過ぎの「ささま書店」(2008/08/23参照)へ。店頭&店内、開店したばかりなのにもはや人が溢れている…。店頭で新潮文庫「トットのピクチャー・ブック/黒柳徹子」宮崎芸術創作家協会「宮崎文学散歩/NHK宮崎放送局編」をつかんで店内へ進むと、すぐの左壁棚で、殿山泰司の本がまとまって入荷しているのを認める。タイちゃんは愛すべき尊敬すべき偉大なる書き手である。と言うわけでじっくり吟味し、未所持の講談社「三文役者あなあきい伝/殿山泰司」を選び取り、計1785円で購入する。家に帰ってからは色々な作業の続きを進める。そして夕方五時過ぎに再び外出。テクテク歩いて高円寺までたどり着き「古書サンカクヤマ」の店頭に取り憑くと、店主の粟生田さんは、その店頭で、お散歩中の黒い耳の尖った犬を撫でまくっている真っ最中。地元の方々としっかり交流しているのを感じつつ、久保書店Q-T books「宇宙の放浪怪物/ジェイムズ・ブリッシュ」中公文庫「蒐集物語/柳宗悦」を計850円で購入する。

そのまま新宿に出て、すっかり観光地化している歌舞伎町の、ゴジラがビルの屋上に覆い被さっている『TOHOシネマズ』で待ち合わせ。すぐに「たけうま書房」さんと出会い、そこに自転車で駆け付けた「古書現世」(2009/04/04参照)向井氏と合流。今年最後の「たけうま会」(ただ単に「たけうま書房」さんのコーディネイトにより、古本屋さんと肩肘張らずにお酒を飲む集まり)は、向井氏をゲストに迎え、同時に氏のホームグラウンドたる歌舞伎町で飲んだくれることになったのである。まず最初に連れ込まれたのは、『TOHOシネマズ』すぐ横の猥雑な脇道に連なった一軒、名前のないお寿司屋さんである。何と一貫十円のお寿司が存在する、いつの間に過去へと遡るタイムトンネルを潜ってしまったんだ!というお店なのである。客同士の背中がぶつかり合いそうな狭い立食の店内で、お寿司をつまみながらまずは一杯。実はたけうまさんと向井さんは、飲むのが初めてということを知り、ちょっと驚く。接点がありそうでなさそうな二人なのである(その昔「あいおい古本市」(2011/03/26参照)で、たけうまさんが「古本屋になりたいんですが…」と質問し「止めといた方がいいよ」と言われたことはあるらしい…)。お寿司を五・六貫食べ、一人頭千円で精算し、続いて裏側のラブホテル街に向かい、ラブホテルを改造した謎の激安居酒屋「アルプス」に連れ込まれる。
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お店の外壁に貼り出された、ビール・サワー・ハイボール100円のポスターに笑いつつ、白木とプラ板の内装で仕上げられた永遠の仮店舗的店内で、酔いを深めながら様々な古本屋話を拝聴する。というわけで、只今盛大に酔っぱらい中なので、そんなに深く記述出来ないのが、誠に残念である。覚えているのは、今月13日から始まる「早稲田青空古本祭」の現世の本は、全品新ネタであることと、奥に良い黒い本が仕舞いっ放しであること(これは近日中に見に行くつもり)。たけうまさんは神保町の古書会館に行くと入口で緊張マックスになってしまうが、向井さんも神奈川の古書組合に行くと同様に緊張してしまうこと。後は新書サイズ本を主にネットで販売しているたけうまさんが、書名はまったく覚えていないが高値の和物ミステリの古い本を棚に並べていること(これは近日中に書名を追求し、食指の動く本だったら買わせてもらうつもり)などである。いやぁ、とてもとても楽しかったです。たけうまさんには、楽しい古本屋をたくさん紹介していただき、今年一年誠にお世話になりました。向井さんには、今月19日の「みちくさ市」で今年最後のお世話になります!古本屋さん、バンザイ!
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ありそうでなさそうなツーショット。それでも今宵、何かの強い絆が結ばれたことは確かである…。
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2017年11月04日

11/4雨の夜の復活した「十二月文庫」

突然の黒雲と強風に吹き寄せられるようにして、世田谷の若林に流れ着く。うわ、なんとちゃんと雨まで降り始めてしまった…。少しだけ濡れそぼり、打ちひしがれて世田谷線駅近くの路地に迷い込むと、すぐに明るく優しい「十二月文庫」(2014/11/12参照)の灯火が目に飛び込んで来た。
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女性店主の病没により、休業を余儀なくされていたのだが、お店を愛する有志たちの奮闘により、九月から営業を細々と再開していたのである(詳しくは「十二月文庫」のコメント欄をご覧下さい)。雨の中に立ち尽くし、しばしお店のしなやかな姿を、うっとりと凝視する。続いてビニールシートの掛けられた店頭100均を一渡り眺めてから、珈琲の香り漂う店内へ。基本スタイルはほぼ昔と変わらぬ状態だが、帳場には二人の男女がおり、「棚はそのまんま?」「ちょこちょこ手を加えてるよ。眺めてみて、感想教えて」などと会話している…おぉ、彼らが、お店を継いでくれた素晴らしい人たちなのだな!この度は、古本屋さんを受け継いでいただき、誠にありがとうございます!と心の中でお礼を絶叫する。時が経ったために、皺が寄り見難くなったパラフィン越しに本の背を必死に透視し、狭い通路に次々と入り込んで行く。やはり私の興味は、以前と変わらず左奥の文庫棚にあるようだ。一冊手にして、さらにサンリオSF文庫のい二冊を抜き出すと、値段が書かれていない。ちょっと以前から読みたかった二冊なので、安かったら買おうと思い、帳場に立つ女性に「値段のない本があるんですが…」と聞いてみると「これから値付する本なんですよ。次はいついらっしゃいます?その時までに値付けしておきますよ」とのこと。ならば仕方ない。次の訪店予定は未定だが、ひとまず値付をお願いしておく。日本小説文庫「大川端/小山内薫」を500円で購入する。何はともあれ、祝復活!

帰りは環七をトボトボたどり、世田谷代田駅から小田急線に乗り込む予定。地下への長いエスカレータを下り、ようやくホームにたどり着く…だが、何かおかしい。良く見るとホームには誰もおらず、その際はすべて柵で囲まれ、線路も封鎖されている。
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これは、新しい未使用の線路とホームなのか。煌々と明かりが点いているので、危うく来ない電車を待ち続けるところだった。線路の上の仮橋を渡り、さらに地下へ下ると、そこに本来のホームが存在していた。それにしても何故新旧二つのホームが上下に…。
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2017年11月03日

11/3百円の金語樓に慰められる

祝日なのに仕事に押し迫られ、大好きで堪らない古本屋に行くのがままならぬ状態。だがそれでも古本は買わねばならぬと、半段落着いたところで外に飛び出し、「ささま書店」(2008/08/23参照)に駆け付ける。少な過ぎる無理矢理捻出した自由時間を、一瞬の古本購入に賭けるのだ!と店頭棚を時間に追われて焦りながら、素早く精査して行く。屈むのも立ち上がるのも素早く!横に移動するのも裏側に移動するのも素早く!…今日は古めの戦後純文学が目につくな…と、その中の一冊の背に『金語樓』の文字を発見する。原稿用紙がモチーフの表紙に質の悪い帯が巻かれたその本を取り出すと、昭和二十六年刊の「笑話倶楽部 第一巻/柳家金語樓」であった。よもや店頭百均で、金語樓に出会える日が来るとは、無理にでも駆け付けた甲斐があると言うものだ。その一冊をつかんで店内もササッと巡回し、函ナシの經済知識社「夢のハイキング/磯辺晋」(昭和十年刊。丸ビル三階で耳鼻咽喉科を営む著者が集めた、人が見た“夢”の話集)とともに計945円で購入し、家へ飛んで帰る。そして午後二時過ぎに本当の一段落を迎えたので、ちょっとだけ「神田古本まつり」(2008/10/28参照)に行こうかと言う気が、ムクムクと湧き上がる。あっ!でもそうか、今日は「しのばずくんの本の縁日2017」(2016/11/03参照)も開かれているんだった!こちらは今日だけ…「神田古本まつり」はまだ日曜まで続くはずだ…よし、本駒込に向かおう。と再び慌てて家を飛び出すが、すでに時刻は午後二時半を回っている…イベントは午後四時まで…間に合うだろうか?総武線→中央線→南北線と乗り換え、本駒込駅に着いたのが午後三時二十分過ぎ。会場の養源寺を目指して歩いていると、駄々猫さんと擦れ違ったのでしばらく立ち話。五分弱消費する。…イカン!とようやくお寺の境内である会場に滑り込んだのが午後三時半過ぎ。今年は正面の参道からすでに古書ゾーンが始まっている。時間が時間なので、さほど出物は期待出来ないが、力の限り目を凝らして行こう!と気合いを入れて各店舗を巡って行くが、途端に店主やたくさんの知り合いに挨拶され、皆とそれぞれ短いながらも会話を交わす。だからそれだけで、時間がチクタク過ぎて行く…あぁ、ありがたいことであるが、古本を見なければ!と言うわけで、話しながらも古本に目を落としたり、そこそこの会話で引き上げ古本に集中したりする。そんな風に不義理しながらグルッと一周。「古書ソオダ水」に、美しい山本文庫が三冊並んでいたが、恐くて手を出せず終い。その後に面陳してあった「阿部金剛画集」がまた素晴らしくて、かなり欲しくなってしまうが、相場より安くとも六千円か…うぅ〜む。今回は迷って買わなかったが、次何処かで出会ったら、確実に買ってしまいそうだ…。結局宇宙関連本を並べた楽しい「古書鮫の葉」(2016/03/12参照)で、パラパラ立ち読みしている時に落葉がページに挟まって来た、ひばり書房ジュニア入門百科「やさしい宇宙科学 月旅行への招待」を700円で購入する。その後は『本の雑誌社』ブースに挨拶をしていると、エマーソン北村が妙なる音色を奏で始め、時刻はあっという間に午後四時。さぁ、古本も買ったし、もう帰らなければと会場を離脱する。だが早く帰らなければならないのに、地下鉄に乗らずにテクテク地上を歩き続けて、祝日でも営業してくれていた「第一書房」(2011/08/16参照)前。熱心に外棚を眺める外国人と視線を並べ、日本建築協会「建築と社会 2/1961 居留地建築特集」を100円で購入する。
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写真は「笑話倶楽部」の帯。ジャガイモの如き金語樓の生首イラストと、『魅力100%の笑いの原子爆弾』の惹句が、心に熱い楔を打ち込んでくる。
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2017年11月01日

11/1目論み崩れ、ただ古本を買う。

昨日話から始めると、夜の南荻窪に流れ着いたので、環八に出て荻窪駅方面にトボトボ向かい、この辺りでは定休日の多い火曜日でも営業している「竹陽書房」(2017/02/19参照)にフラリ。雑本の並ぶ棚をぐるりと一巡りし、彰国社「ライトの生涯/オルギヴァンナ・L・ライト」を300円で購入。阿佐ヶ谷に帰り着いて『旧中杉通り』を歩いていると、おや?定休日なのに「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)が営業しているではないか。表で二冊、中の文庫棚で一冊選び精算。双葉社「半七捕物帳を歩く/田村隆一」新星出版社「たのしいあやとりの遊び方/あやとり研究会編」角川文庫「自動巻時計の一日/田中小実昌」を計515円で購入すると、昨日忘れたトートバッグを取り出し「中に本入れときますね」と手渡してくれた。ありがとうございます。さらに『中杉通り』を北上していると、「ゆたか。書房」(2008/10/19参照)の灯りに誘われ、ユラリと入店。店内通路には未整理本が多数横積みされ、オヤジさんがヒイフウと片付けている。新潮文庫「追いつめられた男/カルコ」毎日新聞社「大逃走論/小田実・安岡章太郎」を計500円で購入する。

そして本日は午後一時前に外出。目指すは花小金井の事務所店「秋桜書店」である。「古書の日」スタンプラリー開催に伴い、一時的に事務所店を店舗として営業しているのだ。この稀なチャンスを逃してなるまじ!と、スタンプを捺すフリをして、一気にツアーしてしまおうと目論んだのである。そう、私は似非スタンプラリー参加者!偽りの訪問者なのである!その証拠である真っ白な台紙を携え、花小金井駅に降り立ち、南口側の『花小金井南町交差点』近くにあるお店を目指す。その交差点には、昭和な豆腐屋や焼鳥屋が肩を寄せ合っており、横断歩道を渡り脇道に少し入ったビル一階に、半分シャッターを下ろしたマジックミラーフィルムで通りを鏡のように映し込むお店があった。
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…だが、スタンプ台が外に出されてしまっている!これは、店主が外出している徴でもあるのだ!うぉぉぉ、なんたるタイミングの悪さ…扉に近づき、そっと隙間に目を凝らすと、鍵がガッチリと掛けられている…くぅ。仕方なく、所在なく、カフカ「変身」のスタンプを、取りあえず台紙に捺してみたりする。目論みは脆くも崩れ去り、ただのスタンプラリーを始めたばかりの者になってしまった…。さりとてこのまま帰るのも切ないので、青空に浮かぶ美しい鱗雲を眺めながら東村山まで移動して「なごやか文庫」(2012/01/10参照)に突入。こぐま社「かお かお どんなかお/柳原良平」立風書房「現代民話考[第二期]3 ラジオ・テレビ局の笑いと怪談/松谷みよ子」を計280円で購入する。スタンプラリー終了まで後四日か…。
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2017年10月30日

10/30強風に怖じ気づき中野をパトロールする。

風の強くなった午後、大きめのトートバッグにパンパンに詰めたデザイン&アート関連の大型本を抱えて、エッチラオッチラ「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)へ。買取をお願いし、バッグごと本を渡して、後で再訪することを約束し、査定を待たずにひとまずお店を離脱する。電車で二駅移動して、中野で用事をこなした後に、ちょっと西東京に足を延ばすつもりだったのだが、あまりの風の強さに辟易してしまい、遠出する心を根こそぎ奪われてしまう…ならば中野近辺の古本屋さんを巡り、急場を凌ごうではないか。いやなんたって、本当に風がとんでもない強さなのだ。ビルの近くやビルに挟まれた大通りを歩こうとすると、前進を向かい風に阻まれ、身体を持って行かれ、まるでサイレント映画の強風シーンのような状態に陥るのだ。手動ドアのコンビニから出ようとしたら、ドアがあり得ないほど急激に開き、腕ごと身体を外に持って行かれ、思わず「うわぁ」と叫んでしまった…恥ずかしい。そしてまずはついこの間来たばかりの「古本案内処」(2015/08/23参照)。店内に葉が舞い込むのを目にしながら、店頭&店内100均棚にいつものように不思議な新書サイズ本が集まっているのを確認。河出新書「微笑/小島信夫」光画コミュニケーション・プロダクツ「珍版 横浜文明開化語辞典」を計216円で購入。続いて命からがら『早稲田通り』を伝って「ブックオフ中野早稲田通店」(2012/11/15参照)にたどり着き、左端の古書コーナーから角川書店「美少年映画セミナー/長沢節」を108円で購入する。ここからさらに北に向かい、風のためにいつもより時間をかけて、新井薬師前駅前の「文林堂書店」(2008/08/04参照)に到達。横から店頭を見たら本が出ていたので、『やっているな』と思い近づくと、何と脚立と箱で左右の通路が塞がれ、『急用ができましたので一時閉店しています。間もなく再開します。(零分〜十数分後)』の貼紙が。う〜ん、基本的に開けっ放しの状況である。何とも剛胆な一時閉店だ。少し待ってみるかと、店頭棚を眺めたりガラスウィンドウを凝視したりする。『本の無いところ 暴力が生まれる』の手書き標語は、力強く健在である。
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するとほどなくしてオヤジさんが姿を現したので、入店して迫り来る棚を見て回る。結局レジ横に積み上がる本上部にあった、ミステリ文庫コーナーから創元推理文庫「技師は数字を愛しすぎた/ポワロ&ナルスジャック」(白帯初版)を選び、980円で購入する。よし、中野パトロール終了!中野駅までとって引き返し、阿佐ヶ谷に戻ってようやく「コンコ堂」に帰り着く。本のお金を受け取り、天野氏から『学習院』の学内古本市(身内の人しか入れない)の話をうかがう。単行本が100円で、十六冊も買ったそうである。羨ましい。その後、家に戻って仕事をしていると、「コンコ堂」から電話がかかってくる。本を運んで来たトートバッグを忘れているので、いつでも取りに寄って下さいとのこと。あぁ!ご迷惑おかけしてすみません…。
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2017年10月29日

10/29東京・南砂町 くまねこ堂

大雨の神保町である。「神田古本まつり」(2008/10/28参照)の各ワゴンは、雨粒を一滴たりとも侵入させまじ!と厳重にブルーシートで梱包されている。それはまるで、青い巨人のソファが並んでいるような、シュールな寂しい光景であった。
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「神田古書センター」二階の「夢野書店」(2015/03/13参照)にテクテク向かい、店内で古本神・森英俊氏と合流する。これから南砂町にある、催事とネット販売の専門店「くまねこ堂」の事務所&倉庫探訪に向かうのである。先日の神田明神「古本感謝祭」(2017/10/04参照)で出店していた「くまねこ堂」さんに、森氏が巧みに取り次いでいてくれたのである。おぉ、我が古本メフィストフェレスよ、ありがとう!とまずは集英社明星文庫「二人のゴッドファーザー マーロン・ブランド アル・パチーノ」豊年社「接吻市場/邦枝完二」を古本まつり特別割引の計240円で購入し、地下鉄で東京の東へと向かう。途中愚かにも逆方向の地下鉄に乗り換えたりしてしまいながら、およそ四十分後に集合住宅で構成された町に到着する。氏の長いコンパスに合わせるように、必死に早足で、北に向かって歩いていると「「たなべ書店」(2011/02/25参照)、一応寄って行きますか」と、今まさに古本屋に向かっていると言うのに、氏が古本神たる所以を発揮される。一刻も早く「くまねこ堂」が見たいので、『仕方ないなぁ』と思いつつもつられて店内に進み、左通路奥の古書コーナーにへばり付いてしまう。だから、ここでとても素晴らしい一冊に出会うとは、微塵も思っていなかったのである。氏に続くようにして棚に視線を走らせていると、見たこともない一冊の本にグイッと惹き付けられる。磯部甲陽堂「幽霊探訪/大窪逸人」、大正五年の本である。それなのに新刊のように美しい…パラパラと繙いてみると、軍人のM中尉(もしくは少尉)が、幽霊話を収集する五話を収録している。その序文に目を向けると、作者の大窪逸人は若き日の山中峯太郎であることが判明!うぉっ!こりゃ凄い!ぜひとも買わなければ!と値段を見ると驚愕の300円!嬉しい、嬉しいよ〜と心中むせび泣きながら購入する。

お店に引き入れてくれた氏に掌返しで感謝しながら、多少迷いつつ「くまねこ堂」に到着する。氏が来意を告げ中に招き入れられると、そこは数人のスタッフが静かに立ち働く完全なる事務所であった。古本に囲まれた倉庫的事務所を勝手に想像していたので、仕事場的空間に多少面食らう。すぐに「くまねこ堂」さんが姿を現し、椅子を薦められお茶を薦められ、しばし歓談する。「くまねこ堂」さんは、古本以外にも骨董や玩具や絵画も扱う、オールマイティな事務所店である。お店の生命線である買取が、月に三十以上あると聞き、さらに面食らう。ブログにアップされる、時にレアミステリも混ざり込む潤沢な買取品は、その精力的活動の賜物であったか。その買取品の一部でもある、事務所内に飾られた石森章太郎&宮崎駿色紙や手塚治虫原画に目を奪われていると、森氏が付録漫画を蒐集しているのを聞き、早速奥の倉庫から四本ほどの付録漫画束が現れてしまった。買い取ってからもう二年ほど放置していたそうだが、その背を見て森氏がゾーン(お目当ての本に出会った瞬間、周りが目に入らなくなり古本だけにひたすら集中するモード)に入ってしまう。紐を解き、一冊一冊吟味し、さらにはi-padで所蔵本を検索し照らし合わせて行く…こうなると長い、長いのである。氏が見終わった付録本を回してもらい、興味ある本を一応選り分けたりもするが、いつしか飽きてしまったので、こちらは一足先に倉庫を見せてもらうことにする。すると森氏は手を止め、「私も」と付いて来てしまった…あぁ、身勝手な古本メフィストフェレスよ!サッシ扉を開けて入り込んだ倉庫は、相当に広い、手前に本棚が大量に並び、六本の通路を造り出し、奥は主に本を詰めたプラケースと結束本が大量に積み上がる構成。倉庫内に入り込んですぐ右の棚には、店主が買取して嬉しかった、愛でるに値する本が集められている。水木しげるの戦記漫画オリジナル・手塚古書漫画・北園克衛詩集・横溝正史レア本(あぁっ、こんな絵の「青髪鬼」見たことがない!)
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・「墓場鬼太郎」・貸本漫画…う〜ん、これは凄い。そして奥に進んで色々探ってみると、海野十三の古い全集や、「火星魔」の箱付き本、付録本「ラドン」、創元推理文庫の白帯ズラリ、竹久夢二大正オリジナル本、「のらくろ」戦前本、などが普通に見つかり、別に買えるわけでもないのだが、とにかく大興奮してしまう。古本以外にもゲームウオッチ・少年サイボーグ・古銭(金銀貨含む)・ナチス勲章・ライダーカードなどなどが集められ、結構何処を見ても楽しめる質の高い倉庫であるのを実感する。
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いつまでも興奮し、いつまでも滞留し、いつまでも掘り返していたいのだが、実はこの後二件の買取が入っているそうなので、泣く泣く断念する。それでも倉庫内から手の出せそうな二冊を握り締め、充実の探索を終了。隣りの事務所に戻り、再び付録漫画の吟味に入る森氏を尻目に、計四冊の精算をお願いする。そのうちの裸本の一冊は値付に時間を要するとのことで、ひとまずお預け、その他の三冊、小学館 小学五年生昭和三十二年九月号付録「怪魚のひみつ」(生きた化石シーラカンスを題材にした探偵漫画)集英社 小学五年生昭和三十三年三月号付録「まぼろしの衛星/三木一楽」(森氏に「面白いですよ」と勧められたので)愛育社「都市覆滅團/野村胡堂」(多少傷んでいるが、欲しかった読みたかった一冊!)を明らかにサービス価格の計二千円で購入する。帰りは、買取出発ついでに車で駅まで送っていただくことに。そのまま買取に同行したい気分であったが、それはさすがに叶わぬことなので、おとなしく本日の嬉しい獲物を鞄に秘し、氏と本日の感想戦を行いながら再び地下鉄で東京の西へと戻る。

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と言うわけで、とても嬉しい本日の獲物である。無条件にどひゃっほうである!「幽霊探訪」はカバー付きの本で、カバーは柳に火の玉がじゃれつく絵だが、表紙は花の横で裸の女が長い髪を梳る絵となっている。いやぁ、古本神と行動をともにすると、やはり嬉しい本に出会えます。次回は何処に誘ってくれるのやら…。
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2017年10月27日

10/27「モンガ堂」でダベる。

今日は西荻窪北の上荻北に流れ着いたので、そのまま夕闇を切り裂き「青梅街道」へ出る。横断歩道を渡って「古書西荻 モンガ堂」(2012/09/15参照)前に到着すると、店内の灯りが、店頭に大量にあふれ出した均一本を、ボオッと幽鬼のように浮かび上げている。しばし店頭にしゃがみ込んで目を闇に慣らし、本の山と格闘する。むしゃぶりついた甲斐があり、二冊の児童文学本をつかんで店内へ進み、根が生えたように帳場に座るモンガさんと挨拶を交わす。ポツポツと会話しながら、店内をグルグルグルグル…相変わらず良書が犇めいているが、以前とさほど変わらぬ景色ということは、動いていない証拠…なんだかちょっともったいないなぁ。「モンガさん、ちょっと本の値段下げたらどうですか。そうすれば、たちまち売れますよ」「う〜ん、そういうのも、ありかなぁ…」「セール形式でもいいし、ちゃんと告知すれば、この棚を知ってる人たちなら、たくさん飛んで来るはずですよ」「う〜ん、そうかなぁ…」「試しにこの「眠りと犯しと落下と」、今下げて来れば買いますよ」「あ、下げる下げる………3800円でどうですか」「3800円かぁ…う〜〜〜〜ん、買った!買います!買いますよ!」と即座に交渉成立。先の均一本と合わせてなけなしの4000円を差し出すと「やったぁ!4000円の売り上げだぁ!」と大喜びするモンガさん。…なんちゅう古本屋さんだ。それにしても、「モンガ堂」店内のあちこちを掘り出しひっくり返すのは、なかなか楽しい作業である。徹底的に気兼ねなく探索すると、意外な所に意外な本が眠っていたりするので、止められない止まらない…おかげであっという間に一時間弱が経過してしまった。と言うわけで、草月アートセンター「眠りと犯しと落下と 高橋睦郎・詩集」あかね書房「しのは きょろきょろ/谷川俊太郎作 和田誠絵」(カバーナシ)旺文社「宇宙ねこの金星たんけん/トッド」(箱ナシ)を購入する。尚モンガさん、11/15(水)に高架下の『続・西荻案内所』で、古書販売と五周年記念ライブ(モンガさんが歌うわけではありません)を開くとのこと。モンガ堂ファンにとっては、忘れられない一日となりそうである…。
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「眠りと犯しと落下と」は、実は積年の憧れの一冊。跋文・三島由紀夫、装釘・横尾忠則、写真・沢渡朔、発行者・勅使河原宏…うぅ、豪華。帯ナシだが、中に縦の三枚綴りになっている「眠りと犯しと落下と」申し込みハガキが挟まっていた。そこには栗田勇・渋沢竜彦・武満徹・谷川俊太郎・細江英公・三島由紀夫の推薦文が!ちなみに写真は裏表紙である。
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2017年10月26日

10/26「ウサギノフクシュウ」に惜別と感謝を。

湘南新宿ラインで秋の鎌倉へ向かう。車中で昼食を摂るつもりだったが、意外な平日の混雑に萎縮し、結局鎌倉駅ホームで心地良い秋風に吹かれながらパンを齧る羽目に…。まずは東口に出て、街を調査中の黄色い帽子小学生軍団を掻き分け掻き分け『小町通り』を北進し、「藝林荘」(2013/02/17参照)へ。入ってすぐの良い眺めである右壁の文学棚に意識を集中して、欲しい本を何冊も見つけるが、いつものように値段に怖じ気づき、結局ガラスケース脇の小棚からダヴィッド選書「コクトー わが生活と詩/片岡美智訳編」を800円で購入するに留まる。横須賀線線路の西側に渡り、「游古洞」(2012/01/28参照)を眺めてから線路際の道に入る。そしてホームからも見える一軒の建物のドアを開け、二階への階段を静かに上がる。廊下奥左側の小さな古本屋さん「古書ウサギノフクシュウ」(2014/06/20参照)が、残念ながら今週一杯で営業を終了してしまうので、最後のお別れにやって来たのである。思い返せば三年前、ひょんなことから私に背中の一部を押されて始めてしまった古本屋さんなので、心境はとても複雑なのである。ドアをゆっくり丁寧に開き、小さく整然とした空間に滑り込む。奥の帳場に座るのは店主の小栗氏である。まずはじっくりと店主の色に染まったセレクト棚を眺めて行く。お店の形は以前と全く変わりはない。本は閉店セールで20%オフとなっている。黙りこくったまま店内を二周し、最後の買物に決めた一冊を手にして帳場へ。そして店主と久しぶりの挨拶を交わす。閉店について聞いてみると、一番の原因は経営の厳しさということであった。三年間、どうにか頑張って営業して来たが、現実的に色々考えた末、ここで一旦立ち止まり、古本屋の世界から身を引くことを決断したのである。「つまりは、自分が商売下手だったということです」と笑いながら、明け透けに包み隠さず話し続ける。「苦しかったけど、もちろん楽しい時間でしたし、たくさんの人にも出会えました。だから後悔はしていないんです。ただ、同じ時期にお店を始めた人でも、頑張っている人は多いので、通ってくれたお客さんには申し訳ないなぁと」と忸怩たる思いも吐露するので、聞いているこちらがぐっと切なくなって来る。そしてまだこの先は、何をするか考えていないので、ちょっとゆっくりしつつも、襲い来る現実と不安と焦燥と闘う覚悟は決めているとのこと。「まぁこの状況も、取りあえず楽しみますよ」と再び笑う。そんな風に話している間も、わかり難く入り難いこのお店に、人がフラフラ迷い込み、きれいに並んだ古本を息を詰めて眺めて行く。そんな不思議な吸引力を持つ“場”を作れるのは、ある種ひとつの才能と言えるので、今後もぜひ何処かで生かしていただきたいものである。この観光古都・鎌倉に、奇妙な名を持った小さな古本屋さんがあったことを、私は生涯忘れないであろう。ありがとう「ウサギノフクシュウ」!めるくまーる社「ウィダの総督/ブルース・チャトウィン」を20%オフの二千円で購入し、お店最後の買物とする。
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その後は「books moblo」(2011/10/10参照)にも立ち寄り、店主と久しぶりの挨拶を交わし、あまり見かけぬ本が棚の所々に頻出するのに感心しつつ、理論社・童話プレゼント「ノコ星ノコくん/寺村輝夫・作 和田誠・絵」(函ナシ)を1800円で購入する。夕方東京に戻り、西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)内「フォニャルフ」に補充を行い、旅装新書「地下鉄サム/J・S・マッカレー」(地下鉄サム好きとして探していた一冊!)を500円で購入する。

「books moblo」で買った「ノコ星ノコくん」は1965年の第一刷。物語は主人公のドッペルゲンガー的宇宙人が現れ、様々な代役をこなしてくれる『ドラえもん』SF的な展開から始まるが、途中から時間の早さの異なるパラレルワールドが登場し、無闇にSF度が高まって行く。しかし何より素晴らしいのは、アーリー和田誠のイラスト!ちょっと『スヌーピー』のシュルツを思わせるキャラが本当にプリティ!そして一ページに広がるこの町の情景!このまま創元推理文庫の表紙に使えそうなクオリティである。
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posted by tokusan at 19:31| Comment(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする