すでに昨日のことである。午前七時に近所の交差点で、盛林堂号を駆る「盛林堂書房」(2012/01/06参照)小野氏と待ち合わせし、店舗を経由して盛林堂・イレギュラーズに変身し、関東某所へと向かう。日下三蔵氏邸の書庫御用お片づけなのだが、実は日下氏が七月に急病で入院されため、実に二ヶ月弱ぶりの訪問になるわけである。片付けに向かうということは、日下氏は退院快癒しているわけだが、詳しい闘病の顛末については、今月発売の「本の雑誌」連載『断捨離血風録』をご覧いただければまるわかりである(ちなみに先月は病気のため休載となっていた)。都内の渋滞をどうにか潜り抜け、朝マックで休憩&栄養補給した後、午前九時半過ぎに現場到着。玄関からスポーティーなスタイルで現れた日下氏は、いたってお元気そうである。快癒祝いに山田風太郎『おんな牢秘抄』連載が載っている双葉社「週刊実話」を一冊プレゼントする。邸内に招かれると、整理は地道に進んでおり、仕事部屋も新たな仕事の資料で賑やかな状態である。だが快癒したとは言え、無理は禁物なので、なるべくスローにマイペースに作業は進めなければならない。そんな本日のミッションは、マンション書庫に移動し、すでに大量購入してあるカラーボックスを組み立て、それを壁際棚の上部に設置した後、そこに仕分け済みの同人誌を詰め込んで行くというものであった。と言うわけで、三人でマンション書庫に移動すると、廊下にCDを満載した金属フレーム棚が鎮座していたり、数個のカラーボックスが新たに設置さえていたり(これは妹さんが組み立てたとのこと)と、こちらも少しではあるが、整理前進を見せていた。

そして作業は、小野氏がひたすらカラーボックスを電気ドライバーで組み立て、私は棚上の物を下ろし、そこにカラーボックスを上げ、さらに日下氏から手渡される同人誌を放り込んで行く、という布陣で進めて行くことになった。今日はほぼひたすらこの単純とも言える作業に徹し、お昼休憩を挟み、時に棚目前の本の山や物体を移動する小作業を挟みながら、午後五時まで継続。

和室のまるで資材置き場のようなカラーボックスの部品の山…。
とにかく高所に重いものを上げ下ろしするのは、大変に体力を消耗するものだ。上に載っている本も箱も紙袋も重い、カラーボックスも重い、同人誌も重い…。

下ろします…。
そしてその同人誌は、日下氏の指示により、なるべく量を詰めるために、まずは縦にして同人誌を積み重ね、それが同人誌横幅の高さに達したら、脇の開いている部分に背を下にして詰める。続いて横積みと背下の同人誌の上にさらに横積みし、開いた脇にこちらも背を下にして同人誌を詰め込む。そしてさらにカラーボックスの上にも天井まで同人誌を積んで行く…ぐぁぁぁぁ、疲れたぁ。

ぎっしりみっしり…。
小野氏もカラーボックス十八基を、最後は集中力を欠きながらも組み立て終わり、奇妙な達成感に陶然としている。

そんな小野氏は、買取品に物凄い本を出され大満足の態だが、日下氏は「今日は小山さんに渡すものがなんにもないなぁ…」と不安なことを呟いている。こういう時は、自分から提案作戦だ!と厚かましく意を決して、アパート臨時書庫にダブっているはずの、山田風太郎「道化の方舟」を所望する。「じゃあアパートに寄って、ピックアップしてから本邸に行きましょう」ということになり、午後六時に本邸に到着する。小野氏が買い取り本の査定を進めている間に、日下氏と本邸書庫の山田風太郎ゾーンで「道化の方舟」を確認する……だが、ないっ!なんと「道化の方舟」がないのだ!「おかしいなぁ。そんなhずないんだけどなぁ」と訝しがる日下氏に、マンション書庫に数冊の「道化の方舟」があるはずですと教えたので、労い焼肉を食べに行く前に、再びマンション書庫に舞い戻ることにする。だがそのマンション書庫では、すでに色々整理を進めていたあために、絶対にあるはずの「道化の方舟」が行方不明になっていたのであった…噫々。仕方ないので「道化の方舟」は次回見つかった時に…ということにして、代わりにCD部屋の奥に転がっている貸本仕様の本を何冊かいただくことにする。ムリヤリ函に仕立て上げられた光書房「犯罪の場/飛鳥高」他に大下宇陀児・柴田錬三郎・海野十三・角田喜久雄などの少年探偵小説を。ありがとうございます!

ちなみに右端の講談社の少女漫画「マグノリアの天使/菅沼美子」は、なんと藤木靖子原作のミステリーなのである。
ところが労いの品も受け取ったので、晴れて焼肉屋に移動中の車内で、後部座席の日下氏が異様にダンマリを決め込んでいるのである。どうしたのだろう?と不審に思っていると、焼肉屋の駐車場に車が滑り込んだ時に、「よし、これで次回「道化の方舟」は小山さんのものですよ」と妙なことを口走った。「え?何言ってんですか?どうしたんですか」「今、注文しました。『日本の古本屋』で「道化の方舟」」「ええっ!?買ったんですか?だって絶対にマンションから出て来ますよ」「いや、いいんですよ。安いのを順に買いましたから。三冊」「ええええっ!?何してんですか?三冊も買う必要ないじゃないですか」「いや、風太郎研究家として、「道化の方舟」が一冊だけなんてありえません」「…も、もしや、見つからなかったのが悔しかったんですか?」「そうです。風太郎研究家としてありえないですよ。ハハハハハ」「…ク、クレイジー………。あぁ、今、日下さんの蔵書がなんであんなに増えて行くのか、その現場を目の当たりにしましたよ。クレイジーですよ、暴挙ですよ!」…というわけで、無事に次回「道化の方舟」が手に入ることになりました。ウフフフフ……。
posted by tokusan at 09:14|
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関東
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