2019年10月15日

10/15待ちながら古本と戯れた一日。

今日はデザイン仕事にかかりっきりになるつもりで、素材が到着したり連絡があったりを朝から待っているのだが、どこからも何の音沙汰もない…すべては俺の妄想なのか?と思うくらい未だに連絡がないのである。というわけでジリジリと家でじれまくっていても仕方ないので、野暮用を済ませがてら高円寺までテクり、古本屋さんを覗いて行く。「大石書店」(2010/03/08参照)では店頭ワゴンに講談社の絵本シリーズが出ていたので、何かあるかなと探ってみると、おっ!「ドリトル先生アフリカ行き/絵・矢車涼 文・土家由岐雄」が出て来たので、喜んで百円で購入する。ちょっとバタ臭いブタ鼻のドリトル先生だが、これはこれで人間臭くて味わい深い。あぁ、良い古本を安値で買えば、モヤモヤや杞憂が見事に霧散して行く。何という不可思議な精神安定剤か…そんなことを考えながら『庚申通り』を北へ進み、「DORAMA高円寺庚申通り店」では、朝日新聞社「村上朝日堂の逆襲/村上春樹・安西水丸」を110円で購入。何故か外国人客が店内ではしゃいでいる「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)では、白川書院「聞書アラカン一代 鞍馬天狗のおじさんは/嵐寛寿郎+竹中労」を200円で購入する。そんな風に古本を買って過ごし、気分よく家に戻っても、仕事関連は相変わらず何の音沙汰もなし。仕方ないので押入れをちょっと掘り返して、一体何冊持っているのかと思ってしまう、野呂邦暢「海辺の広い庭」を見つけたりして、瞬間楽しむ。それに飽きたら、いよいよ後二日に迫った熊本行きのために、機中&車中読書のために持って行く本を選ぼうと大いに悩む。…ううぅ〜ん、そうだ!ここはタイちゃん(殿山泰司)の顰に倣い、旅先でもフハフハとミステリを読むことにしよう…となると、ポケミス辺りが最適か。そう決めて、何冊かのペーパーバック本を古本の山の中から掘り出す。よし、田中小実昌訳の「ゆがめられた昨日/エド・レイシイ」に決めた!まぁ、旅行中に読了出来るかは分からないし、旅先では何冊の古本を買ってしまうか不明だが、この本を中心にして楽しんで行くことにしよう…などとしていても、結局連絡はひとつも来ない…こりゃぁいったいどうなってるんだ…。
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余談をひとつ。昨日から群馬県沼田の古本屋さん「レン太くん」(2013/02/10参照)の検索が急上昇している。不審に思って調べてみると、なんと14日に店内で殺人事件が発生したらしい。うひゃぁ、古本屋殺人事件…一日も早く真相が解明され、犯人が捕まることを、心の底から願うばかりである。
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2019年10月14日

10/14古本に温められる。

何だか週末の台風とつながっているような、雨降りの月曜日。突然の秋の寒さに震えながら、午後に南荻窪に流れ着く。早く家に帰って暖をとりたいのはやまやまだが、やはり古本は買って帰らねばなるまい。というわけで駅方面にピタピタと向かい、均一台にブルーシートを掛けた雨仕様の「竹陽書房」(2008/08/23参照)に立ち寄る。そのブルーシートを捲り、七十年代のスヌーピー雑誌を二冊抜き取り、暖かな店内に滑り込む。壁棚&通路棚をゆっくり何も見逃さぬよう落ち着いて見て行くと、すぐに購入候補本が何冊もリストアップされる。だが、左側通路の奥に達した時に、壁棚上段にちょっと古い本が少し並んでいるのが目に留まる…古本オーラが放たれている…と勝手に感じ取り、その中の深海のような濃紺革装釘の本を抜き出す。おっ、第一書房「ポオル・フオル詩抄/堀口大學譯」か。
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何と可愛らしく手に馴染む美しい本なのか。そう感心しながらページを開くと、うぎゃっ!扉の前の遊び紙に、堀口大学の墨書署名が入っているじゃないかっ!
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函はないが、これは何が何でも買わねばならぬ!と慌てて後見返しの値段を確認すると、これが奇跡の800円。先ほどのツル・コミック社「SNOOPY OCTOBER NOVEMBER」とともに計1000円で購入する。すると帳場の奥さまに「表の本、シートで塞いじゃってて、すみません。今日は雨がね…」と丁寧に言われるが、すでに大物を手に入れた私は、今や何を言われてもえびす顔なのである。そんな風に、お店と古本ですっかり温まり、どうにか阿佐ヶ谷に帰り着くと、「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)店頭棚の雨除けビニールシート越しに、気になる少女漫画を見出してしまう。集英社りぼんマスコットコミックス「おじゃまさんリュリュ/大矢ちき」じゃないか。カバーが少し傷んでいるが、110円で大矢ちきが読めるのなら安いものだ。クリップを外してビニールシートを捲って、横合いから手を伸ばして本を取り出し、店内で今日はバイトさんが店番中のレジにて購入する。
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2019年10月13日

10/13一日早い定点観測+α!

台風が過ぎ去ったのに秋は来ず、十月の街は、まるで夏の海辺のような陽気である。昨日計画運休した電車網は、まだあまり復旧していない。強い日射しを浴びながら、両の足を頼りにまずは荻窪へと向かい、一日早い定点観測に取りかかる。「ささま書店」(2018/08/20参照)店頭の交通網の乱れに屈せぬ古本修羅たちの姿に驚きながら、「藍書店」(2018/12/29参照)で平河出版社「魔法修業/W・E・バトラー」を330円で購入する。これでいつものように家に引き返してしまうのは、何だかもったいない気がするので、駅北口へと向かい、動き始めたガラ空きの電車が走る線路下を潜って北口に向かい、石神井公園駅行きのバスに乗り込んでしまう。車中でハヤカワポケミス「野獣死すべし/ニコラス・ブレイク」を読了し、江戸川乱歩の巻末解説で、この名漢文調タイトル『野獣死すべし(原題:The Beast must Die)』が、乱歩譯であることを初めて知り、乱歩の偉大さを再確認する。およそ三十分弱で石神井公園駅着。裏路地の「きさらぎ文庫」(2009/01/21参照)をまずは覗き込み、創元推理文庫「吠える犬/E・S・ガードナー」(再版)を百円で購入する。そのまま繁華な商店街を突き進み「草思堂書店」(2008/07/28参照)へ。徳間文庫「真っ赤な犬/日影丈吉」をこれまた百円で購入する。そしてここまで来たのなら、やはり大好きな「アカシヤ書店」(2008/12/17参照)をチェックして行かなければと、保谷まで移動。車に脅かされる駅前通りを伝って店頭に食らいつく。素早く視線を素晴らしいスピードで疾駆させ、たちまち手の中に四冊を収める。小沢書店「吉田一穂の世界/吉田美和子」八雲井書院「五代教祖の実像 霊友、佼成、PL、メシヤ、生長の内幕」成山堂書店「自衛官への道 防衛庁監修(昭和三十九年版)」北隆館出版部「日本動物圖鑑 日本植物圖鑑 内容見本」を計440円で購入する。「日本動物圖鑑 日本植物圖鑑 内容見本」は大正十五年刊の図鑑の内容見本小冊子。動物圖鑑の冒頭には蝶の美しいカラー口絵が付いているが、植物圖鑑の口絵は著者・牧野富太郎のポートレートが!これは嬉しや。
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概ね満足しながら中村橋に至り、最後に「古書クマゴロウ」(2018/03/21参照)を覗く。店内で棚を見ていると、突然背後で本が落ちる音が。私が落としたのではないのだが、取りあえず棚に戻しておこうと拾い上げると、レジの店主がそれを見て駆け寄り「お手が汚れてしまいます」と本を受け取る…いや、そんな大したもんじゃないですよと、何だか照れる。そして中央通路の食関連の棚で、企業PR誌の「洋酒天国」(十冊弱)「嗜好」(三十冊弱)「サッポロ」(二十冊弱)がぞろっと並んでいるのに出くわす。「洋酒天国」は800円均一。ミステリー特集が紛れ込んでいないか探してみるが、残念ながらナシ。「嗜好」も取り出しちょっと目次を確認してみるが、いまいちピンと来ない。そこで「サッポロ」の目次に目をやると、最初で上手く引き当てた形で、大坪砂男のコント的小説が載っているではないか!おぉ!と色めき立ち、残りの冊子の目次にも懸命に目を通す。すると城昌幸の小品スリラーも発見!日本麦酒株式会社「サッポロ6号」「サッポロ19号」を計600円で購入する。大坪の「ビヤホール風景」は、四ページに二編のコント小説が上下に分かれて掲載されている。読んでみると、タイトル通り同じビヤホールにいる人物たちの物語が、巧みにクロスし、そこはかとない感動を呼び起こす佳品であった。薔薇十字社「大坪砂男全集」には収録されていないが、創元推理文庫の「大坪砂男全集」に初収録されている模様。
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2019年10月12日

10/12和田誠についてちょっと考える。

巨大台風により、一日中家に雪隠詰めになることが決定しているので、当然古本屋さんには行くことが出来ない(臨時休業のお店も多い)。だから思う存分読書でもして過ごすつもりなのだが、昨日、偉大なイラストレーター・和田誠が天に召されてしまったので、勝手にその莫大な仕事の恩恵を浴び続けた者として、少し書き付けておくことにする。和田誠は、あらゆる形で常に身近に存在していた。一番大きな形はイラストレーターとしてであるが、その他にも文筆家として(「銀座界隈ドキドキの日々」は素晴らしい半自伝的作品。だが七十年代にライバルとも言えるデザイナーやイラストレーターやアーティストに自ら行ったインタビューをまとめた「デザイン街路図」が白眉であろうか)、映画監督として(私にとってのベストを挙げるとしたら、初々しく尖り映画好きとして力瘤の入りまくっている『麻雀放浪記』。折りに触れて何度か観て、最終的に好きになった)、デザイナーとして(水色と白抜き文字が鮮烈な煙草『ハイライト』のパッケージは永遠の名作である。あっ!そう言えば代々木上原の古本屋さん「ロスパぺロテス」(2008/07/14参照)の看板犬をモチーフにしたロゴは、和田誠のデザインであった)、装幀家として(自ら描くイラストとともに、『和田フォント』と言えるような独特の文字で描くタイトルは、秩序あるフリーハンドで作り上げられた、静かで穏やかな小宇宙である。余談になるが、映画『蒲田行進曲』を観ていると、ラストのメタ的展開を見せる大団円時に掲げられる『蒲田行進曲』のパネル文字を見る度に「あっ!和田誠の字だ!」と愚かにも喜んでしまうのだ)、作曲家として、活躍し続け作品を生み出していたのだから、当然のことである。作家性を大量の仕事で突き詰め過ぎ、もはや“和田誠”という職人の域に達していたかのようで、その結果獲得した多くの人たちが見知る、マンネリとは異なる安心感とも言えるような普遍性を思うと、何だか恐ろしくなって来る。そんなことを考えながら、身の回りを見てみると、私が持っている和田誠の作品は、児童文学や絵本が圧倒的に多い事が分かる。目に付いた本を手近に引き寄せてみると、「ぼくのおじさん」「よわむしおばけ」「しのはきょろきょろ」「このえほん」…前二作は北杜夫、後二作は谷川俊太郎とのコンビで生み出された作品である。
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どれも七十年代のもので、すでに現在の和田誠と変わらぬタッチとクオリティが展開されているのがまた恐ろしい。あ、この土屋耕一の文庫本「軽い機敏な仔猫何匹いるか」も装幀が和田誠か…とたちまち手元に積み上がって行く。とここで、脳内に何か引っ掛かる言葉が、淀んだ記憶の底の方から浮かび上がって来た…それは“アーリー和田誠”…………そうか、あれがあった!と児童文学ゾーンから、さらなる一冊の裸本を引き出す。理論社「ノコ星ノコくん/寺村輝夫・作 和田誠・絵」である(2017/10/26参照)。1965年刊のSF風物語で、その挿絵が、和田誠のイラストでありながら、ちょっとスヌーピーのシュルツ風であったり、レオ・レオーニ的構成であったりと、あまり見たことのないプリティーな感じなのである。1965年と言えば、和田はまだ独立しておらず、ライト・パブリシティに勤めている時代。グラフィックデザイナーとしての自分が、恐らく活動の中心であったはずである。これが私の持っている、一番古い和田誠の作品であることは間違いない。これからも、大事に愛でて行くことにしよう。
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こんな風にして、これからもこの世界には、和田誠の何かの作品が、色々な形で、長く普く存在し続けるのだろう。巨人は旅立ったが、彼の手から生まれた線は、生き生きと残っていくのだ…。外の風雨が段々と激しくなって来た。そろそろ読書に没頭しよう。まずは、「ノコ星ノコくん」でも、挿絵を楽しみながらもう一度読むことにするか。
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2019年10月11日

10/11台風が来る前に横田順彌追悼展を観に行く。

巨大台風接近に伴い、段々雲行きが怪しくなって来た、十月の金曜日の午前九時。神保町パトロールを兼ね、「東京古書会館2F情報コーナー」で今日からスタートする、『横田順彌・ヨコジュンのびっくりハウス 横田順彌追悼展』を観に行くことにする。新宿まではすし詰めの中央線に乗り、途中四ツ谷駅で総武線に乗り換え、水道橋駅に午前九時四十九分着。少し雨粒の落ちる『白山通り』を南へ歩いて行く。銀杏が白く踏み潰された歩道をさらに踏み締め、テクリテクリ。今のところ古本は買えていない…『靖国通り』に入る。「明倫館書店」(2012/04/04参照)は、珍しく店頭ワゴンがスカスカな光景を見せている。どうやらこれからドカドカと補充するようだ。結局「田村書店」(2010/12/21参照)店頭台に早くも行き着いてしまう。まだあまり人が手を付けていないようだ。その上人の気配もない…で、じっくりと見る。日本文学が多い…そう感じながら、薄手の詩集を一冊抜き出す。大正十五年刊の新潮社「情艶詩集/佐藤惣之助」である。背の金文字もピカピカで美しく、表紙の青赤の波模様もバタ臭く鮮烈である。中の数編に目を通すと、選ばれた言葉たちが、美しく尖りながら、都会の中を跳梁跋扈している。これは俺の求めていた佐藤惣之助だ!と即座に確信し、1200円で購入する。続いて「慶文堂書店」(2012/01/14参照)に立ち寄ると、端っこのワゴンに明治&大正の雑誌がちょっと放り出されていた。大正十一年刊の趣味の雑誌、土の鈴會「土の鈴 第十二輯(地蔵號)」を手に取る。文字通り“地蔵”を特集しており、表紙は地蔵の胸掛を再現した凝った仕様。その上カラー口絵があり、絵葉書が挟み込まれたり、折り込み図解があったりと、ただならぬ編集者の意気込みを感じながら目次に目を通すと、おぉぉぉっ!何と南方熊楠が寄稿しているではないか!良く見たら佐々木喜善も!と大喜びで300円で購入する。
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後は「東京古書会館」(2010/03/10参照)に一直線。二階への階段をカタコト上がると、受付には『日本古典SF研究會』会長の北原尚彦氏と会員の一人である「盛林堂書房」小野氏が座っており、にこやかに浅田飴を渡してくれた。横田氏の名駄洒落フレーズ『朝だ。雨だがふっている。朝だ雨だ。』に因む、株式会社浅田飴の粋な計らいである。さらに受付脇の長テーブルには、まるで書店のように横田氏の著作が山と積み上げられている。遺族からご好意で、一冊好きなものをいただけるとのこと。うむむ、こりゃスゴい(飴も本もなくなり次第終了)。そして展示もスゴいことになっている。ハチャハチャSF作家、古典SF研究家、押川春浪&天狗倶楽部研究家、SFファン、落語&野球ファンなど、様々な方角からの濃密な展示で、横田順彌という偉人を炙り出している。「宇宙塵」がぁ!「冒険世界」がぁ!天狗倶楽部の資料がぁ!「超革命的中学生集団」平井和正識語献呈署名本が泣ける…などと一渡り眺めたところで、北原氏に中央テーブルに置かれたスケッチブックに横田氏へのメッセージを書くよう促される。まだ誰も書いていないので、火付け役に任命されたようである。もにゃもにゃとどうにか書き付け、本はピラールプレスの「近代日本奇想小説史 入門編」をいただくことにする。さらに小野氏からは日本古典SF研究會「未来趣味 増刊 横田順彌追悼號」(ぶ、分厚い!盛林堂の店頭&通販サイトで発売中)をいただく。この展示は10/19(土)まで。そのまま地下の会館展に向かい、しゃがんで古書の棚を眺めていると、いつの間にかついさっきまで二階受付に座っていたはずの北原氏に、後を取られてしまっていた!どうやらというか当然というか、早く見に来たくてしょうがなかったらしい。「昼から小野さんが入札があるんで、今のうちに、ね…」。たちまち本を一冊二冊と抜き取って、奥の古本修羅ゴミに紛れて行った…。こちらもじっくりと棚を見て回るが、実は地上で買った佐藤惣之助と熊楠論文掲載の冊子で大いに満足してしまっているので、あまり古本心ががっつかないのだ。結局、宝文館「現代詩の実験」に北園克衛の論考が掲載されていたので、これを200円で購入し、地上へと帰還する。
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2019年10月10日

10/10つながる古本。

段々と空が曇り始めた午後に吉祥寺に流れ着いたので、古本屋さんを伝いながら駅へと向かう。まずは「バサラブックス」(2015/03/28参照)で角川書店「甦る「幻影城」?」を300円で購入し、最終的にいつもの如く「よみた屋」(2014/08/29参照)にたどり着く。おっ、早速面白い本発見!毎日新聞社「社会の窓/えのきどいちろう」は1990年に刊行された『サンデー毎日』連載のエッセイをまとめたもの。アーリー・えのきどいちろうな単行本である。本文の挿絵は、これもアーリーなナンシー関の消しゴム版画。こういう本は、手に入れようとすると、意外に苦労するんだよな。というわけで迷わず確保すると、続いて表紙の取れたカバーナシの本が目に留まる。朝日新聞社「ロンドンー東京 五万キロ 国産車ドライブ記/辻豊・土橋一」は朝日新聞社の記者とカメラマンがトヨペットに乗り込み、特派員としてロンドンから東京までを旅する旅行記である。実はこの旅行記、先日同じ吉祥寺の「一日」(2017/08/11参照)で掘り出した、「東京―パリ バイク無銭旅行」(2019/09/04参照)とリンクしているのだ。
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同じ昭和三十一年に、片や東京からバイクでパリを目指し、片やロンドンからトヨペットで東京を目指し、それぞれの道をひた走る、そして偶然にも、無銭旅行のバイク乗り兄弟と、国産車で東を目指す特派員記者&カメラマンは、トルコのホテルで偶然にもその旅路を交錯させていたのである。この出会いは、それぞれの単行本のトルコ国の項目に、ちゃんと記されているのだ。おぉ、六十年前の無謀な旅路の交錯が、現代の吉祥寺で偶然つながったのである。さらに続いて偕成社「雨の動物園 私の博物誌/舟崎克彦」を手にする。作者の子供時代〜青春時代を自然や動植物を核に描く随筆集であるが、これは完全に朝日新聞社「わたしの博物誌/串田孫一」へのリスペクト単行本ではないか。現物を手にして初めて感じ取れる確信である。解説は矢川澄子。と言うわけで以上の三冊を計330円で購入し、ニコニコと帰宅する。
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左が昭和三十八年刊の「わたしの博物誌」。装幀や挿絵は辻まことである。

さて、お知らせです。
1. そろそろ発売の「本の雑誌 ナス天にらめっこ号」の連載『毎日でも通いたい古本屋さん』では、阿佐ヶ谷に見事復活した「ネオ書房」を早速取材。復活した途端にお店にハマってしまった顛末が描かれていますので、皆様もこれを読んで、どうか「ネオ書房」に向かって下さい!

2. そしていよいよついに、後一週間後となりました。まだ熊本に行くなんて実感がありませんが、一週間後には九州の大地に立っていることでしょう。よろしくお願いいたします!
■オカタケ&古ツアの古本屋を語り尽くす夜 in 熊本
■10月17日(木)19時より
■くまもと県民交流館パレア10階 第7会議室 熊本
市中央区手取本町8-9
■入場無料・申し込不要
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2019年10月08日

10/8十月の盛林堂・イレギュラーズ

朝から一仕事をテキパキ片付けて、午前十時半に外出。涼しいんだか暑いんだか分からぬ街を進み、西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)へ。今日は2019/09/24の続きの、盛林堂・イレギュラーズとしての任務遂行日なのである。店頭&店内を眺めていると、店前にレンタカーの白いワンボックスが滑り込んで来た。盛林堂号に代わり、古本をよりたくさん運んでくれる強力な助っ人である。いつものように店主・小野氏がハンドルを握り、午前十一時過ぎに千葉県某所に向けて出発。前回のような首都高渋滞地獄を避けるために、素早く行動し、素早く帰還しようという目論見なのである。早速そんな作戦が功を奏し、午後一時には現場に到着する。依頼主と二週間ぶりの挨拶を済ませたら、すぐさま作業に取りかかり、小野氏は残りの本の結束に集中し、私は通路奥に溜めていた本束や新しく出来上がる本束を、まずは書庫の入口にプールし、その後台所や直角に曲がる廊下を経由して、運び出しやすいように玄関に本束を積み上げて行く作業を進めて行く。動線の確保が難しいのだが、そこは上手く呼吸を合わせ、お互いの作業を邪魔せぬよう黙々と仕事する。午後三時にはスムーズにそれらの作業が終了し、およそ七千冊の本をドシドシと荷台に積み上げて行く。もう少し余裕があるかと思ったら、あっという間に上部を残して満杯に…やはり立派な書庫を持っている人の本の量は凄まじいものがある。棚に入っている時と、まったく物量としての規模が合わないのが、本という物体の不思議なところである。
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猛烈に重い本たちと闘ったので、身体の各所に乳酸を溜めながら、午後四時には現場を無事に離れる。渋滞に巻込まれぬことを祈りながら、早くも首都高に入ると、これが奇跡のように車が流れており、首都“高速”道路の名に恥じぬ、スピードが出せるスムーズさなのである。おかげで今回はそれほどバカ話に興じることなく、何と一時間弱で西荻窪着。倉庫に最後の力を発揮して、古本をドカドカと下ろしまくり、午後六時前に任務を終了する。ふぅ、お疲れさまでした。レンタカーを返し、「盛林堂書房」に向かうと、そこでは二冊の今日の作業を労うご褒美本が待ってくれていた。一冊はちょっと背が危うくてボロいが、大正二年刊の磯部甲陽堂「少年軍事探偵/三津木春影」である。ふぉぅ!三津木春影が我が手に!序文は押川春浪で、予備陸軍少尉と紅顔の中學生と海軍大佐の令嬢が、東京に潜む間諜團と横濱に空中に雪中高田に横須賀に北京にと、縦横無尽に活躍するお話らしい。うひょぅ、面白そう。早く読みたいっ!そしてもう一冊は、盛林堂ミステリアス文庫の新刊、ショートショート作家・高井信氏の単行本未収録作品集「見知らぬ他人」である(しかしこの本は、ショートショート集ではなく短篇集という意外な展開)。心の意表を突くような物語たちが並んでいるが、巻末に並ぶ解説者たちの名も意表を突いて来る。井上雅彦、江坂遊、草上仁…なんだ、この無闇に物凄い豪華さは!また、YOUCHAN氏が手掛けるカバーデザインが、イラスト含めどうにもコケティッシュで、一デザイナーとして畏れ多くも大いに嫉妬する。
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2019年10月07日

10/7三日間の古本小規模活動

ここ三日ばかりの小規模な古本活動をまとめてご報告。一昨日は花小金井からの帰りに、下車駅の鷺ノ宮で「うつぎ書房」(2008/08/06参照)を久々に覗いて行こうと思ったら、無情にもシャッターが下りている。夕方に閉まっているのは珍しいなと思いつつ、諦めてそのまま『早稲田通り』方面へ。関東バス阿佐ヶ谷営業所斜向いの「古本 ブック流通センター」(2008/08/09参照)を、これも随分久しぶりに訪れる。すると珍しいことに先客がおり、古本を買物している…私以外の人間がここで古本を買っているのを、初めて見た!と小さな感動を胸の内にこっそり湧き立てつつ、ちくま日本文学全集「尾崎翠」を200円で購入する。昨日は下井草からの帰りに、阿佐ヶ谷『中杉通り』沿いの「J-house」(2015/12/26参照)に立ち寄る。…今日は古本は出ていないか…と言うわけで気まぐれにレコード箱を漁ってみることにする。やけに聖飢魔Uのレコードが多いなと感じつつ、LPレコード束の下部に潜んでいたシングルレコードの塊を引っ張り出す。多くは八十年代アイドルのものであるが、その中に戸川純「レーダーマン」が混ざっていた。おぉ、懐かしきニューウェーブの密やかな女王!と喜び110円で購入する。
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そして本日は月曜恒例の定点観測で荻窪へ、長袖シャツでテクテク。「ささま書店」(2018/08/20参照)でダヴィッド社「シナリオ修業/新藤兼人」宝文館「武蔵野 日本の風土記/上林暁編」を選んで帳場に差し出すと、折しもお店は5%値引セール中。二冊を計210円で購入する。そのまま街の奥へトコトコ歩き「藍書店」(2018/12/29参照)へ。店頭のラインナップに変化があり、新鮮な気分。まずはカバーナシのポプラ社「櫻貝/吉屋信子」を選び、さらに目を光らせて行く。すると入口横ラック棚の最下段に、ワイズ出版「海のタッチ/鈴木翁二」を発見する。店頭で見かけるなんてラッキーだなと思いつつ早速手にする。さらに見返しを見ると、太いマジックで書かれたサイン入りであった。こりゃぁ更にラッキーだ!と計550円で購入する。
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2019年10月04日

10/4 1915年の秦テルヲ!

今日も朝から雨の音を聞き続けながら古本と格闘し、三十冊強をダンボール詰めにする。やがて雨が止み、強い風だけが残った日射しの強い午後に、そのダンボールをエイコラと抱え込み、郵便局へ向かう。窓口のお姉さんの手と力を煩わし、大阪に古本を送る。明日には到着するはずなので、しばらくしたら古書コンシェルジュさんの手を経て、棚に並び始めることでしょう。今回も良い本変な本面白い本詰め込みましたので、大阪「梅田蔦屋書店」の古ツア棚を引き続きよろしくお願いいたします。そのままの足で住宅街の中に分け入り、坂道を下り、空が強風で轟く音を耳にしながら、コンクリで護岸された妙正寺川を渡る。坂道を上がり、さらなる住宅街の中に分け入り、やがて『都立家政商店街』にたどり着く。そこを北に遡上し目指すのは「ブックマート都立家政店」(2011/12/13参照)である。今日は面白い出物が見つかるだろうか…そうワクワクしながら、古本と古着と雑貨とパネル漫画が混在するカオスな店頭に近付き、もはや聴き慣れた感のあるお店オリジナルのメタル曲を強制的に聴かされ続けながら、店頭棚に熱い視線を送る。すると棚最下段に、横積みになった古雑誌の小山があった。取り出してみると、古い俳句雑誌などだが…おぉ!明治時代の「文章世界」が出て来た!それに、表紙が何故か「文藝倶楽部」の「新小説」…やった「日本少年」までもが出て来た!と、予想通りの出物に大いに気を良くする。店内では青年が店員さんに「ここ、面白いお店ですねぇ〜」と嬉しそうに語りかけている。確かにここは、予想外の物が買えてしまう、面白いお店だ!とその意見に激しく同意しながら、博文館「文章世界」明治四十年十月號・大正四年九月號、実業之日本社「日本少年 大正六年一月號」春陽堂「新小説 明治四十年三月號」を計430円で購入する。
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「新小説」には鏡花の『吉原新話』が八十ページに渡り掲載。「日本少年」の『事實綺譚 三十萬円の金剛石』とか『冒険小説 怪頭號』とか『寫真小説 無線電信』もたまらない。そして「文章世界 九月號」の口絵は、なんとデカダン画家の秦テルヲの作品『女』がっ!絵には署名の横に『1915』とあるから、雑誌発行の大正四年と同じいうことで、網点の印刷物ではあるが、その時代を生きるテルヲの熱っぽい体温が伝わって来るようだ。うぅっ、430円でこんなに興奮出来るなんて、楽しいなぁ。
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そして本文ページを繰っていると、さらにモノクロの挿絵も掲載されていた。
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サーカス団の女玉乗り師の図!ステキ!
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2019年10月03日

10/3熊本行まで二週間!

昨日は午後二時過ぎに東小金井の南に流れ着いたので、久々の「尾花屋」(2017/06/15参照)を楽しもうと新小金井に向かうと、シャッター半開きの刑…これは、ちょっと待っていたくらいでは開かないようだ。スパッと諦め、進路を東に採る。テクテクテクテク武蔵境まで歩いて、「プリシアター・ポストシアター」(2015/01/03参照)へ。やった、開いている。道路側の百均ワゴンに近付くと、そのほとんどがペーパバック。
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良く見ると、007やクリスティやフリーマンが混ざっているので、表紙を見ているだけでちょっと楽しい。その中に「ドゥリトル先生物語」と言う英和対訳本も含まれていたので取り出してみると、おぉ!やはり「ドリトル先生」ではないか。これはぜひ買っておこうと抱え込んで店内へ。店主さんに「おや、久しぶり」と笑顔で迎えられる。消費税が上がったので、打刻に戸惑うレジ操作で精算していただく。南雲堂不死鳥文庫「ドゥリトル先生物語/ロフティング・成田成寿訳」河出文庫「澁澤龍彦初期小説集」大日本図書「よるのねこ/ダーロフ・イプカー」を計575円で購入する。家に戻った後は即座に再び外出し、「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)に不要本を売りに行く。「もう単行本くらいは持てるようになりましたよ」と骨折からの回復ぶりを店主・天野氏に嬉しそうにアピールされ(もうすぐ全快。良かった!)、消費税の話や今まで悩まされて来た大量の一円玉の話などなど。そして本日は吉祥寺に午後二時に流れ着いたので、いつものように「よみた屋」(2014/08/29参照)へフラリ。灰谷健次郎がたくさん出されている店頭棚から、河出書房「ブラキストン線を越えて/森澤昌輝」(カバーナシ)のら書店「うみぼうやとうみぼうず/山下明生作 長新太絵」岩谷書店「宝石 昭和三十一年二月号」を選び、計330円で購入する。「宝石」の表2広告には、東映映画の「拳銃対拳銃」が載っている。『地獄の街角に佇む 仮面のギャング ウェスタンの秀!!』『妖艶・赤い服の女!抱擁のかげに光る復讐の眠!』などとB級感漂う胡散臭いキャッチが踊っているのだが、あれ!原作は山田風太郎&高木彬光「悪魔の群」(と広告にはあるが「悪霊の群」が正しいはず)なのか。…途端に無性に観たくなって来たぞ!
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いよいよ熊本行まで後二週間。みなさま、10/17(木)の夜は、古本屋の話ばかりのトークショーを、どうにかして聴きに来て下さい!よろしくお願いいたします!
■オカタケ&古ツアの古本屋を語り尽くす夜 in 熊本
■10月17日(木)19時より
■くまもと県民交流館パレア10階 第7会議室 熊本市中央区手取本町8-9
■入場無料・申し込不要
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2019年10月01日

10/1古本をあちこち移動させた一日。

昨日の宵の口のこと。表に出たついでに高円寺「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)に立ち寄り、店頭で蚊と闘いながら二冊を選んで店内へ。21世紀ブックス「都市ゲリラ/小山内宏」(献呈署名入り)萬里閣「たたずまひ/佐多稲子」を計200円で購入すると、店主の粟生田さんに「本ばっかり買ってないで、たまにはタピオカ買った方がいいですよ」と言われる。「な、な、な、なんで唐突にタピオカなんですか」と聞くと。今高円寺に九店ものタピオカ店が乱立し、その闘いに知り合いも参戦しているとのこと。タピオカか…恥ずかしながら、一度も飲んだことないんだよな…多分これからも飲まないんだろうな…これから寒くなるし(そしたら「冬はホットタピオカです。アハハハハ」と粟生田さんに言われる)…「か、考えときます」とお店を後にする。

本日は家で原稿を書いたり、たっぷりと仕事のやり取りをして、午後四時過ぎに外出。西荻窪「盛林堂書房」82012/01/06参照)に飛び込み、パシフィカ「シャイニング上・下/スティーヴン・キング」(再版の映画スチール版カバー)を計200円で購入しつつ、「フォニャルフ」に景気よく補充する。新興藝術派叢書や城左門「近世無頼」など並べていますので、お近くにお寄りの際はお手に取ってご覧下さい!

そして家に戻り、大阪「梅田蔦屋書店」古書コンシェルジュさんからのメールにより、古ツア棚が『4thラウンジ』の壁ではなく、『ホビー・スポーツ』エリア横と『ガーデンラウンジ』内に移動したことを知る。以前と違い、常時閲覧出来る状態になったそうなので、いつでも立ち寄りお楽しみいただければ幸いです。というわけで、昨日戻って来た分や、先月売り上げた分を埋め合わせるべく、本の選定に取りかかり、我を忘れて『選ばなければ、選ばなければ、もっと面白い本を!』と奇妙に焦りながら小一時間ほど奮闘してしまったので、暗い部屋の通路隅に選定本を積み上げひと休み。これで二十冊強か。もうちょっと必要だな。ただし送り出す時に、あまり重くならぬよう気をつけなければ…。
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2019年09月30日

9/30出戻り本と定点観測。

朝から仕事していると、玄関のベルが鳴る。午前中に人が訪ねて来るのは珍しいなと思いつつ、ちょっとドキドキしながら扉を開ける。そこにいたのは、重そうなダンボール箱を抱えた、宅急便配達人。どうやら大阪から本が届いたようだ。「梅田蔦屋書店」(2016/11/14参照)の『4thラウンジ』というカフェの壁棚で、長らく古書を販売させてもらっているのだが、そこでかなり長い間売れずに残っていた本を、棚の新陳代謝のために送り返してもらったのである。その数、およそ三十冊ほど。つまりこの分だけ棚が開いたので、早々に三十冊余の新古本を、大阪に送らねばならぬのだ…が、頑張ります!ダンボールを開けると、何だか懐かしい本や、こんなの持ってたっけ?といういような本がギッシリ詰まっている。黒白書房「近世快人傳/夢野久作」(函ナシ)なんて、いつかの「みちくさ市」で激安値で売ったはずなのに、何故ここに?…二冊持っていたということか…まぁせっかく出戻って来たんだ、大事にしよう、と寝床脇の本タワーの上にソッと置く。これらの本は、しばらく寝かせたり、また別の本と組み合わせて販売すれば、動くこともあるだろう。ただ、また大阪に送ってしまわぬよう、気をつけて分けておこう。
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「近世快人傳」の本扉。探偵小説の装幀も多く手掛けた山下謙一のナイスなデザインワーク!

そんなことをしていたら、いつの間にか午前十一時。定点観測に向かう時間だ。慌てて身支度を済ませ、ビーサンを引っかけて夏のような表に飛び出す。ペタペタ歩いて荻窪「ささま書店」(2019/08/20参照)。七分で遅れているのに誰もいない。いつものように目玉に古本魂を集中させ、本をじっくり吟味して行く。角川文庫「黄色い犬」「男の首」ともにジョルジュ・シムノン、三月書房「聞きかじり 見かじり 読みかじり/坂東三津五郎」冨山房「天然記念物開設/三好學」を計648円で購入する。「聞きかじり見かじり 読みかじり」は参百部限定特装本の内、第番外十三番本の布装本(つまり参百番の中には含まれない別枠ってこと?ややこしい…)で、ちゃんと八代目三津五郎の署名入りである。大正十五年刊の「天然記念物解説」はその名の通り、当時の日本の天然記念物の實例を写真豊富に細かく解説する五百ページ余の大著である。写真を見ているだけでも楽しい。それにしても、無くなっているのも、多そうだな…。
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この厳めしさと金文字がまたワンダフル!

そして買った古本袋のなかには、一枚のちらしがソッと忍ばせてあった。取り出し広げてみると、十月の営業カレンダーとともに、『読書の秋 5%値引きSALE』のお知らせが!十月から非道にも10%に上がる消費税対策の一環であろうか。10/2(水)〜10/31(木)まで、ほぼ一ヶ月に渡り、店舗の商品が値引対象となるようだ。よ〜〜〜し、いつものように、買ってやる!
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2019年09月28日

9/28Peroさんの挿絵!

正午過ぎの国立に流れ着いたので、裏路地の「飛葉堂」(2018/10/24参照)を見に行くことにする。すると開店はしているが、以前とちょっと様子が変わっている。表に百均ワゴンが出ていない。それに左側のガラス窓際の棚が姿を消し、ただのディスプレイ棚になっている。いったいどうしたのだろう…と心配しながら自動ドアを潜ると、目の前に百均ワゴンが現れたので、まずは抱いたばかりの心配をよそに、文庫の列に視線を落とす。するとたちまち、一冊二冊と掴み取る。これで古本心が多少落ち着いたので、今まで古本が並んでいた左側ゾーンに視線を移すと、フロア棚は無くなり、窓際の棚も消えている状況。ただ窓際下部には文庫を詰めた木箱が積み上げられている。そして以前フロア棚裏側にあった児童文学や絵本は、中央棚の文庫が並んでいた部分に移されていた…恐らく奥のカフェスペースが拡大されるのかもしれない。右奥の古本屋ゾーンは喜ばしいことに今までと変わらずである。変化しつつある現状を把握したので、中央右奥の古本屋事務所ゾーンに進み、二冊の精算をお願いする。すると、本の地に引かれた百均目印である鉛筆の線を確認した青年は、「これだけでも108円ですが、もう一冊加えても108円ですよ」とアドバイス。そうか、三冊108円であったか。と、そそくさワゴンに引き返し、もう一冊を加える。ハヤカワポケミス「ゆがめられた昨日/エド/レイシイ 田中小実昌訳」カッパノベルス「日本アパッチ族/小松左京」創元推理文庫「帽子蒐集狂事件」を計108円で購入する。
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「日本アパッチ族」は角川文庫で読了しているのだが、初版なのでついつい買ってしまった。だが帰りの車中でページを開くと、イラストレータ・伊坂芳太良(愛称“Pero)”のシュールでアーティスティックな懐かしくもある挿絵が載っていたので、嬉しい誤算にイヒヒヒと満足を覚える。開高健の、大阪の陸軍砲兵工廠跡地(通称“杉山鉱山”)に出没する屑鉄泥棒軍団、通称“アパッチ”が縦横無尽の活躍をする「日本三文オペラ」も最高だが、同様に“アパッチ”を題材にし、そこから“食鉄人種”が蔓延る日本を描いたSF「日本アパッチ族」もまた最高なのである。ちなみに東宝で、岡本喜八監督、クレージーキャッツ主演で映画化される予定だったが、撮影開始直前に頓挫してしまったそうである。…あぁ、そんな面白そうな映画、物凄く観てみたかった…。
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2019年09月27日

9/27“川原たんてい”の正体判明す!

午後に吉祥寺に所用で出たついでに、テクテク『井の頭通り』を西に歩いて、久しぶりの「りんてん舎」(2019/03/30参照)に向かう。あぁ!左側の通路棚の右左が、入れ替わっている。つまり左端通路の通路棚に文庫が並び、中央通路左側に風俗・ミステリ・探偵・推理・SF・世相・エッセイなどが並ぶ状態に変化。中央通路の居心地の良さが、アップした感じだ。ジ〜ッと棚を集中して眺め、昭和四十二年に、外国特派員が実際に足を運びその身で味わった、日本の十七の歓楽郷をルポする東都書房「夜のニッポン探検/J・F・モンゴメリ」を864円で購入する。

家に戻ると、古本神・森英俊氏より一通のメールが届いていた。タイトルは『川原たんてい』となっている。どうやら昨日の当ブログを読んでの連絡らしい。慌てて本文に目を通すと、『川原たんていは、自身も小学館の編集者だった梶龍雄が学年誌向けに作り出したキャラなので、その推理クイズ本も作者名はクレジットされていませんが、梶龍雄の手になるものだと思います』とあった。うぉぉっ、疑問がたった一日で一気に氷解!“川原たんてい”が梶龍雄の生み出したキャラだったとは!これで、頭の中の名探偵リストに、川原たんていが突如仲間入り。付録本では梶龍雄とちゃんとクレジットされた『世界びっくり〜』とか、雑学本系はたまに見かけるが、ちゃんと推理ブック類も手掛けていたのか。ということは、この本の後半に載っている推理読み物、『怪とう紅コウモリ事件』『なぞの地図』『アレブ首相を殺せ』『川原たんていあやうし』『あの宝をさがせ』『むらさきのひみつ』も梶龍雄の作品ということになろうか。くぅ、こういう嬉しい展開、俄然盛り上がるなぁ。貴重な情報を齎してくれた古本神・森英俊氏に改めて感謝である。
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これは『上級コース』扉の、何故かお茶目なポーズをとる“川原たんてい”。
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2019年09月26日

9/26川原たんていと臺灣本。

昨日は夕方に駅頭で、立ち話のように軽く打ち合わせた後、フラフラ家に戻りながらも「ネオ書房」(2019/08/11参照)に吸い寄せられる。外の安売棚を屈んで眺めた後は、ゆっくりと店内へ。今日は奥さまが店番なのか。まずは右壁棚…おっ、小さな本は付録本の昭和49年小学四年生1月号ふろく「推理探偵クイズ」。それを両手で優しく挟み込みながら、続いて左壁棚…講談社ゼミナール新書「都筑道夫の小説指南」は初めて見る本だ(怪奇・推理・SF小説の書き方が載っているのは言わずもがなだが、パロディ&パスティッシュ小説の書き方までもが!)。というわけでこの二冊を計900円で購入する。「推理探偵クイズ」は、見たことも聞いたこともない“川原たんてい”がメインキャラのクイズ&懸賞推理よみもの。川原たんていは実写でも漫画でもイラストでも小説内にもふんだんに登場するが、彼についての説明は一切ない…いったい誰なんだ!そして“たんてい”を演じている眼鏡のオッサンも、一体全体誰なんだ!
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下部のモノクロ写真が“川原たんてい”である。本誌の方で激しく活躍していたのだろうか…。

本日は正午の西荻窪に流れ着いたので、「古書音羽館」(2009/06/04参照)に立ち寄り、ハヤカワ文庫「ペガーナの神々/ロード・ダンセイニ」白水Uブックス「異端教祖株式会社/ギョーム・アポリネール」を計200円で購入し、満足して帰宅する。するとポストには、嬉しいヤフオク落札品が投函されていた。大正十一年刊の實業之臺灣社「新世界の旅より/宮川次郎」である。1620円にて落札。当時『臺灣新聞』に連載され、臺灣の出版社から刊行された(中身はもちろん日本語である)、臺灣→神戸→京都→東京→横濱→シアトル→サンフランシスコ→シカゴ→ニューヨーク→ワシントン→ロンドン→パリー→ベルリン→ロンドン→マルセーユ→ポートセッド→コロンボ→シンガポール→バタビヤ→スマラン→香港→アモイと巡る、九十八年前のとても威勢の良い、世界一周毒舌漫遊記である。内外のすべてをぶった切りながら、豪華な旅が進んで行く…。こういう外地出版の本は、知られていないものが、まだまだたくさんあるのだろうな。そんな中の一冊が、我が家に来てくれたのは、非常に喜ばしいことである。先日買って読書中の「東京-パリ バイク無銭旅行」とともに、ゆっくりと旅をするように、ジワジワ読み進めることにしよう。
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2019年09月24日

9/24久しぶりのイレギュラーズ!

九月とは思えない暑さに耐えながら、午前十一時の街路を進む。今日は、久々の盛林堂・イレギュラーズとして、千葉県某所まで出張買取に向かうのである。西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)前に到着すると、すでに銀色の盛林堂号が、陽の光をギラギラと反射させながら待ち構えていた。良く見ると、後部のワゴン部分には、すでに結束本束やダンボールが詰め込まれている。「ちょっと古書会館寄って、これ下ろして行くから」…ハイ、私は盛林堂・イレギュラーズ。仰せの通りにいたします!とまずは神保町へ。古書会館の一階搬入口に車をキュキュッと乗り入れ、速攻でカーゴに本と箱を積み上げ、後は小野氏が上階に運び上げ作業終了。ようやく東京を離れ、しばし車を東に走らせる。午後一時半前に現場着。早速依頼主と挨拶を交わし、奥の書庫を見せていただく。当初の報告では、本棚六本分ということだったので、まぁスパスパ作業は進むだろうと、二人は思っていた…ところが、その書庫にあったのは、巨大で横幅のある天井までの高さの頑丈スチール棚で造られた、三本の通路であった…そ、想像と全然違う、確かに棚は六本だが、まさかこれほどの大きな棚だったとは!しかしここで心を折るわけにはいかず、早速小野氏と買取全体プランを打ち合わせ、本の結束に入って行く。その前に素早く各棚を動き回り、盛林堂店舗好みの本を勘で抜き出し、核となる本をまずは大雑把にまとめ上げる。その後改めて、私が棚から本を下ろし、小野氏が結束を進め、その本束を運び出し易いように私が固め積み上げて行くという戦法を採る。取りあえず今日持ち出せるのは恐らく三分の一ほどなので、残りは後日改めて大きな車で運び出すことに決める。テキパキテキパキ狭い通路空間で馬車馬の如く働き続け、およそ三時間が経過する。ゼイゼイ。程よい感じなので、玄関に本束を移動させ、続いてそれらを盛林堂号に詰め込んで行く。この辺はわりとあっという間。
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そんな風にどうにか作業を終え、午後五時過ぎに現場を離れる。ところが!高速にのり、新富町手前に至ると、そこからはもう大渋滞。およそ一時間強を掛けて都心をノロノロと横断する羽目になる。おかげで車内で色々と小野氏と下らない話に花を咲かせることとなったのだが、バンプレストの名作ゲーム『スーパーロボット大戦』シリーズに出て来る、並み居る有名ロボットに混ざり出ていた、存在感の薄いゲームのオリジナルス―パーロボットはなんだったけ?と聞くと、「魔装機神だよ」と小野氏に即答される。あぁ、そうだったそうだった、ギャハハハと無闇に爆笑する…などとやっていたら、高速出口前でようやく渋滞を抜け、西荻窪に午後七時に帰り着く。後は倉庫に荷を下ろし、本日のイレギュラーズとしてのお仕事が終了する。ふぅ、おつかれさまでした。作業のオマケお土産として、海野十三の会「海野十三」日本美術刀剣保存協会「人間国宝 宮入昭平」などをいただく。たちまち元気が出るなぁ。よし、次回も頑張ります!
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2019年09月23日

9/23二つの街で定点観測する。

祝日など、フリーランスにとっては関係なく、早朝から馬力を入れて仕事をこなす。雨が上がり、気温も上がり、風がとても強くなって来た午前十一時に外出し、荻窪「ささま書店」(2018/08/20参照)へ定点観測に向かう。アメックスビルの前で、身の危険を感じるほどのビル風を前のめりにどうにか突破し、お店に到着。ここにも風は吹き荒れているが、店頭は通常通りの晴天仕様である。百均棚から二冊、三百均棚から一冊選び出す。PARCO出版「現代美術の流れ/エドワード・L=スミス」荒竹出版「世界の前衛演劇/J・ルース=エヴァンズ」沖積舎「紀ノ上一族/久生十蘭」を計540円で購入する。再び風に抗いながら一旦帰宅し、昼食を摂ってから再び外出。今度は『早稲田通り』を伝って高円寺「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)へ向かう。店頭棚前に立つと、後に通りかかったおばあさんが「この前ここで買った本、もう読み終わっちゃったのよ。また何か買わなきゃ。ホホホ」と連れの人に笑いかけながら、本選びに入った。他にもお客さんが立ち読み座り読みしており、祝日の幸せな古本屋風景を見せている。筑摩書房「キミは動物と暮らせるか?/飴屋法水」文藝春秋「テレビ屋独白/関口宏」を計200円で購入する。パフォーマーの飴屋法水がこんな本を書いており、おまけに東中野で珍獣のペットショップを経営していたとは…。そして関口宏の「テレビ屋独白」は、書店に流通していた本とは異なり、紺のクロス装ハードカバーで背文字が銀箔押しの豪華非売品本。出版時に関係者に記念品として配ったものだろうか。こういうのがポロリと見つかるのは、古本屋巡りのちょっとした醍醐味である。
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2019年09月22日

9/22古本屋で伝説のアニメーターを目撃する!

当たらぬ天気予報に翻弄されながら、お昼過ぎに吉祥寺の北に流れ着く。駅方面にトボトボ向かいながら、先日ガレージで良い本が買えた「一日」(2017/08/11参照)にまずは向かってみることにする。カップルが古本デートを楽しんでいる空間に割り込み、気合いを入れて本の背を眺めて行く。自然と古めかしい本を求めてしまう目は、昭森社「大切な雰圍気/小出楢重」を発見する。函ナシだが昭和十一年の四刷。後見返しには荻窪「岩森書店」(2008/08/23参照)の古い古書店ラベルあり。ビニールカーテンを潜り、店内レジで324円を支払うと、ギャラリー部分ではNHK朝の連続テレビ小説『なつぞら』主人公のモデルとなった、アニメーター・奥山玲子の銅版画展が開かれていた。思わず引き寄せられ、アニメとは違う作家性の強いシニカル・ファンタジーな世界をしばし眺める。するとそこに「あっ、今日もいらっしゃったんですか」と店員さんに言われ、ひとりの老紳士が姿を現した。げげぇっ!アニメーターで奥山玲子の旦那さんの小田部羊一じゃないか!すかさず他のお客さんが話しかけると、丁寧に優しく応対している。うひぃ、伝説のアニメーターが、今目の前に!ついつい頭の中で、ハイジが「おじいさんに知らせて来るぅ〜」と、血相を変えて何度も駆け出してしまう…。はぁ、畏れ多くてとても話しかけられないが、ご尊顔を拝謁出来ただけで、なんだか光栄である。
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ポヤ〜ッとしながらお店を出た後は、「バサラブックス」(2015/03/28参照)の外の安売箱から、弥生書房「詩集帰郷/金井直」を300円で購入。さらに足を延ばし「よみた屋」(2014/08/29参照)で、冒険&ハードボイルド小説がたくさん並ぶ店頭棚から、立風ノベルス「ゴールド/ウィルバー・スミス」を見つけ出し100円で購入する。
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2019年09月20日

9/20東京・神楽坂 アルスクモノイ

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「新宿支部に新しい人が入ったんですよ。お店もやるらしいですよ」と随分前から「古書現世」(2009/04/04参照)向井氏にタレ込まれていたお店が、いよいよ本日開店を迎えるという。色々と片付けてから、東西線で神楽坂に向かい、構内を吹き抜ける強風に嬲られながら『1b』出口から地上に出る。するとそこは露店が参道に並んだ『赤城神社』の前。露店の誘惑に抗い、鳥居前から離れ、『白銀公園』方向に足を向け緩い坂を東に下る。そしてすぐに行き当たる北北東に延びる道に曲がり込む。趣きのある神楽坂の裏路地が、たちまち変哲の無い住宅街へと変化する。道なりにぐいぐい進むと、道は急激にガクンと落ち込み、神田川沿いの谷間へと誘い込んでいる。コンクリに刻まれた丸い滑り止めを踏み締めて、落込むように北北東に進み続ける。途端に街の雰囲気は一変し、スクエアな街区に、集合住宅と雑居ビルや小工場が殺風景に建ち並んで行く。大小印刷会社・箔押し会社・孔版印刷…フォークリフトがやけに目につくのも、この辺りの特色である。ずんずんずんずん進み、『目白通り』一本手前の通りを西へ。すると小さな十字路の先、右手の小さなビル一階に、シンプルなファサードの、白っぽいお店が見えて来た。白い立看板の上の壁には、丸傘の付いた電灯が備え付けられている。夜になったら、路上に明るく看板を、照らし出すのだろう。蜘蛛の巣をモチーフにしたロゴマークの刷られたサッシ扉を開き、店内へ。板敷き白壁のシンプルな広めの空間である。右側にはしっかりしたカウンターが据えられ、先客の数人が楽しくお酒を飲みながら、有名グラフィックデザイナーについて熱く論議を交わしている。入って直ぐ右側のゾーンには、アンティークな机の上に、古い紙物が飾られている。足元にはマッチ箱を詰めた箱も置かれている。忍者記念館のパンフレット、いいな。左壁沿い初っ端には、ミシン台が置かれ、洋書などを並べている。腰高に平台を備え、下部が大判棚となった壁棚には、海外文学(充実)・洋絵本・パリ・アート・デザイン・海外詩集・言葉・民俗学・西洋思想・ビジュアルブックなどが、良く練られた感じで端正に並んで行く。ヨーロッパを核とした偏愛の棚である。古書も良く混ざり、時々太宰治や林芙美子の古書が混ざるのもまた面白い。奥には、洋雑誌や「暮らしの手帳」が入った箱が床に置かれている。さらに右奥のゾーンに進む。手前壁際には小さな文庫棚があるが、思想・学術・民俗学・歴史・江戸などの特殊な並びである。右奥の壁棚には、性風俗・志村ふくみ・ファッション・児童文学・澁澤龍彦・佐野繁次郎装幀本・料理・金持ち・建築・武田百合子・女性関連(何故か『女性便所』の強烈な木札あり!)・旅などが収まっている。所々に額装された古い変な紙物があり、お店の雰囲気を造り出すのに一役買っている。こだわりが美しく顕在化した、見ていて気持ちの良いお店である。右奥の資料的にいががわしい本も混ざる棚がとにかく魅力的で、欲しい本が何冊も見つかってしまう。値段は普通〜ちょい高。店主はショートボブの、笑顔と笑い声を絶やさぬ女性で、お客さんとの会話で「砂漠のような場所に店を出したかったんです。寂しいところにポツンと灯りが浮かんでいるようなお店」と語っていたのがとても印象的であった。帝國出版協會「世界建築めぐり/藤島亥治郎」(カバーカラーコピー)を購入する。開店おめでとうございます。この地での古本オアシスとしての活躍を、心より祈っております!

「世界建築めぐり」に載っていた、ニューギニヤの住宅がスゴ過ぎて、思わず口アングリ。
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2019年09月18日

9/18水曜日の定点観測。

今日は午後前にようやく雨の降り始めた吉祥寺に流れ着く。傘を差しながらブラブラと古本屋さんを巡るが収穫ナシ。そう言えば月曜は定点観測が出来なかった…荻窪に移動して「竹陽書房」を覗いてから「ささま書店」(2018/08/20参照)に向かおう。そう決めて、総武線で二駅移動。荻窪到着前に上半身を南側の車窓に捻り、「竹陽書房」が開いているかどうか確認する…あれ、シャッターが下りっ放しだ。時刻は午後一時である。まだ少し早いのかな…と早々に諦めて、「ささま書店」へ一直線。雨が強くなり始めた。店頭はもちろん雨仕様。ビルの庇に守られた均一単行本棚二本に、じっくり視線を走らせる。ここ最近で何度も見ている本の間々に、昭和三十年代の大衆小説がふわりと浮かび上がる。二冊を確保して店内へ。左側通路に均一文庫棚が一本引き込まれ、奥の帳場斜め前にもう一本が置かれている。おっ、詩集棚の下では、つい先日逝去した池内紀特集が組まれている。それを横目に文庫棚からも一冊抜き取る。光文社「長編推理小説 蒼い描点/松本清張」(初版)東方社「はだか太平記/北町一郎」角川文庫「土屋耕一回文集 軽い機敏な仔猫何匹いるか」を計324円で購入する。
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うっとうしく降り掛かる雨も吹き飛ばす、なかなかの収穫である。テクテク歩いて帰宅すると、筑摩書房から何か届いている。どうやら本らしいのだが、筑摩から本が届く覚えなどないはずだが…とボール紙の封筒を開けると、出て来たのは岡崎武志氏の新刊、ちくま文庫「上京する文學」であった。岡崎さん、ありがとうございます!パラパラとページを捲ると、18の作家上京話に加え、新たに二編が追加されている。その内の一編が野呂邦暢の上京物語で、本文内では氏とともに編集した「野呂邦暢古本屋写真集」についても触れられている!…そうだ、東京と言えば、今楽しみにジワジワ読み進めている春陽堂「大東京・インターナシヨナル」は、やはりとてつもなく面白い。徳田直『裏切者』は、バクチ好きの写植工が、無意識の密告や警察への収監を経て、共産黨員として目覚めて行く物語。橋本栄吉『ゼネ・スト』は、印刷所での労働争議を組織の目から忠実に描いた物語。…ここまではまぁプロレタリア的に普通である。ところが、三人目の窪川いね子に突入すると、ギアがぐいっと何段か上がる。「東京一九三〇年物語」は、黨の通信員として働く少女が、当局に目をつけられぬよう、東京の様々な場所で手紙を投函するスケッチ風の物語なのだが、少女が東京内を細々と移動するとともに、自然と東京の街の風景も文章の中を流れて行くという、素晴らしい仕掛けが施されている。他に、乗合自動車のバスガールが変装して、ストライキをする同士と密会する物語。監視入院している若者が、病院から脱走する物語。王子の街の描写と、女工の暮らしが美しく絡み合う物語。そして、銀座のデモ行進で使われた催涙瓦斯を起点に、共産黨員の地味な草の根行動を描く物語。そんな小さな物語たちが連なり固まり、大きな一つの物語となっているのだが、労働者というよりは、東京のあちこちの街を主人公としているような展開に、シビレまくってしまう。窪川いね子は「私の東京地図」も名作だが、この小品も、負けないほどの東京への愛おしい情感が込められている!そして次の山田清三郎『求人廣告』はちょっと奇天烈なユーモア風(期せずしてそうなってしまった感あり)プロレタリア小説だが、そこから続く未読の、小島勗『アスファルト』、藤澤桓夫『首府の欲情』、武田麟太郎『淺草・餘りに淺草的な』黒島傳治『お化ケ煙突』、片岡鐡兵『アスファルトを往く』は、さらにボルテージがアップして行くようだ。特に最後の片岡作品は、まるで詩というか、プロレタリア新感覚派と言ってもいいような(ある意味めちゃめちゃである。何たってプロレタリア文学の隆盛が、新感覚派を衰退させたのだから…)、言葉が文章から先走りギラギラと煌めく掌編のようである。あぁ、スゴい!色んな昭和五年の大東京を渉猟して、早くここまでたどり着かなければ…。
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posted by tokusan at 16:19| Comment(0) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする