2021年02月25日

2/25俺の「鬼の言葉」!

午前十一時半の西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)である。白水社「バイエルン犯科帳/アンゼルム・フォイエルバッハ」を100円で購入し、ちょっと腰を傷めてしまった店主・小野氏とともに盛林堂号が停めてある駐車場へと向かう。盛林堂・イレギュラーズ…というほどの仕事ではない手伝いと、デザイナーとしての打ち合わせのため、東京東部にミステリ評論家・松坂健氏の書庫(2019/03/08参照)を訪ねるのである。渋滞に捕まることなく都心を通過し、非常にスムーズに現場着。ダンボール四箱を書庫まで運び上げ、三時間ほど滞在する。処分のダブり本を受け取ったり、ある本の打ち合わせをしたり、当然のごとくなんでもある、欲し過ぎる本や素晴らしいミステリ系紙物が蒐集された書庫をウハウハと楽しむ。午後五時前には、またも渋滞には引っ掛からず無事に帰り着き、恙無く任務を完了する。そして!帳場にて平身低頭してお願いしておいた、貴重なカバーカラーコピーを拝受する。春秋社「感想集 鬼の言葉/江戸川亂歩」の初版アンカット版を、新たに裁断した後の再出荷分に巻かれたと思しき、春秋社探偵小説本の異装共通パターンカバーである。先日見せてもらった瞬間に、まさかこんなものが存在していたのかっ!と激しく衝撃を受けた、驚天動地のカバーなのである。優しく家に持ち帰り、そっと持っていた「鬼の言葉」に巻き付ける(幸いこの「鬼の言葉」も裁断版であった)。ピッタリだ。やった!俺の「鬼の言葉」よ、お前はこの瞬間、かりそめにも美しく装われたのだ!と、小さいながらも俺の心にも巣食っている“探偵小説の鬼”とともに小躍りする。はぁ、幸せだ。あ、本体定價は【金壹圓】なのに、カバーでは【特價・.80(八十銭)】になっている(外地定價は鮮・滿・台が.88(八十八銭)となっている)。値下げして、売り出したのだな…。
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そして昨日記事にした、岩谷書店「名作捕物小説集(昭和二十八年度年鑑)/捕物作家倶楽部編」に収録されたホームズ翻案作品『謎三味線/佐々木壮太郎』について、ホームズ研究家の北原尚彦氏に報告すると、『うわあ。それは知りませんでした』との嬉しい言葉が返って来た。というわけで未知の北原案件と認定され、読了後に久々のトレードで、研究資料として氏の元に輿入れする予定。その様子はまた改めて。
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2021年02月24日

2/24今日こそ大阪に古本を送った。

午後三時過ぎに風の強い田無駅前に漂着したので、そのまま西武新宿線に飛び乗り、鷺ノ宮に帰還する。駅を出て、妙正寺川と『中杉通り』を踏切際でダブルで渡り、川沿いに西へちょっと進んで、「うつぎ書房」(2008/08/06参照)に顔を出す。ちゃんと営業中で、サッシ扉が半開きになって、そこには季節外れの風鈴が下げられている…リリン…何故…?扉を開いて風鈴を掠め、薄暗い店内へ。奥の帳場&生活空間は真っ暗で、誰もいない…と思ったら、そのさらに奥の一間に、シルエットとなって店主の横向きに座る姿が浮かび上がっていた。とても2021年とは思えない、なかなか幽玄さ漂う空間である。こちらもその薄暗い幽玄さに身を浸しつつ、文庫とコミックとアダルト以外は不動気味な棚を注視して行く。そし相変わらず店内にはきちんと揃えられた靴がたくさん並んでいるのだった…。徳間ジャパン「ショウほどすてきなマンハッタン/わたせせいぞう」(こんなに平仮名とカタカナばかりで…)を左側通路から見つけ出し、400円で購入する。奥に向かって精算をお願いすると、店主は電気を点けながらこちらに近づいて来るのであった。何か、ご足労かけてすみません。
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「うつぎ書房」名物の日除け看板をバックに写真を一枚。実に文字量多めですな。

そして家に帰り、古本ダンボールを抱えて郵便局へ。大阪に三十冊ほどの精選古本を発送する。明日到着後、古書コンシェルジュさんの商品化作業を経て棚出しされるので、西の皆さま、今暫くお待ち下さい。いつものように探偵小説関連も混ぜ込んでありますが、今回奇怪な本がポイントになっていますので、どうにかお楽しみいただければ幸いです。

ところで、連載の取材で手に入れた、岩谷書店「名作捕物小説集(昭和二十八年度年鑑)/捕物作家倶楽部編」をチビチビ読んでいるのだが、佐々木壮太郎『謎三味線』が、ドイルの『四人の署名』&『六つのナポレンオン』の合わせ技翻案(短篇なのにかなり盛りだくさん)であることに気付く。というわけで北原案件発見!ご報告しなければ。
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2021年02月23日

2/23今日は祝日であったか…。

午後に古本を一抱え携えて西荻窪に向かい、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)「フォニャルフ」棚に真面目に補充する。このところ棚の動きがどうも鈍く、気を揉んでいるのだが、まぁ地道に清く正しく棚に空気を入れ続けることにしよう。店主・小野氏とは帳場脇で色々打ち合わせしつつ、春秋社「鬼の言葉/江戸川乱歩」の異装カバー付きを見せられ、目眩を起こす。本の角に欠けはあるが、読むのに支障のない、ちょっと安値の創元推理文庫「三つの道/ロス・マクドナルド」(初版)を二千円で購入する。いいカバーだねぇ〜。お店を辞し、冷たい風が吹き始めた西荻窪を縦に突破し、『青梅街道』まで出て「古書西荻モンガ堂」(2012/09/15参照)へ。おぉ!店内に二人も先客がいて、その二人とも本を買って行った!「モンガ堂」ばんざい!と他人事ながら喜び、店内をウロウロ。帳場近くでこちらの出現にようやく気付いたモンガさんと、色々古本話古本屋話。そして「やまがら文庫」さんより届いた委託販売本が、帳場前の棚上平台にドバッと並べられれ、安値のつげ義春や田中小実昌が唸りを上げている。学研少年少女・新しい世界の文学9「オルリー空港22時30分/ポール=ベルナ作」(昭和43年初版箱入り。「首なし馬」の作者によるフランスの児童推理小説。挿絵は長尾みのる)朝日新聞社「ソンブレロは風まかせ メキシコ旅日記/長尾みのる」墨水書房「豫言大東亜戦争/高田知一郎」(昭和十七年刊。機械箱入り。明治四十二年に報知新聞に連載された、独逸人の著書を翻案した架空戦記である)の三冊を、いつものように少し安くしてもらい、計1100円で購入する。モンガさん、サンキュー!その後は二駅分を家まで歩いてテクテク戻り、荷造りした古本箱を大阪に送り出そうと郵便局へ……噫々、そうか。今日は祝日であったのか…。
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2021年02月22日

2/22怪猫(かいびょう)。

午前のうちから春めいた気持ちの良い戸外に飛び出し、「古書ワルツ荻窪店」(2020/07/30参照)を観察す。店内BGMの軽快なフュージョンに乗せられるようにして、わりとじっくり棚を見て回る。途中、古本サンタのベレー帽を粋に被ったイソガイ氏に声尾をかけられたりしながら、およそ四十分ほど滞店。めるくまーる社「パタゴニア/ブルース・チャトウィン」JICC出版局「ザ・インタビュー'85 宝島ロング・インタビュー集」日活映画シナリオ「帝銀事件 死刑囚/脚本・監督 熊井啓」を計1100円で購入し、一旦帰宅する。そして午後により麗らかな陽気に唆されて、高円寺へテクリテクリ。「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)で、朝日ソノラマ「破嵐万丈 薔薇戦争/富野由悠季」みき書房「占星王をぶっとばせ!/梶尾真治」日本公論社「趣味の科學/橋爪檳榔子」を計700円で購入する。「趣味の科學」は昭和十二年刊の、当時の最先端科学を通俗的な隨筆に落とし込んで紹介する、わりとライトな科学啓蒙書。出版元の日本公論社は探偵小説を多く出しており、巻末の自社広には「スタイルズの怪事件」「沈黙の環」「マギル卿最後の旅」「文化村の殺人」「絹靴下殺人事件」「霧中殺人事件」「變装の家」「消ゆる女」「アリ・ババの呪文」などのタイトルが並んでいる。そして後見返しには古い購入店のラベルが貼付けられているのだが、これが何とも軽やかに素敵な代物なのであった。
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さて、今日は2月22日で、ニャン・ニャン・ニャンで“猫の日”とのことである。何か面白い猫の本でも紹介するか…と考えて引っ張り出して来たのは、ポプラ社「怪猫屋敷」(カバーナシ)東京ライフ社「亡霊怪猫屋敷」(カバー帯カラーコピー)ともに橘外男の著作である。驚くことに、片や児童用、片や大人用なのに、内容はまったく同じ小説なのであります。ひどいや、橘センセイ……。
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左が「亡霊怪猫屋敷」で、右は「怪猫屋敷」のモノクロ扉。
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2021年02月21日

2/21『ウォットサン』と『和登サン』

昨日は夕方四時に世田谷の奥地・深沢に流れ着いたので、暖かなのを幸いとして辛抱強く北東に歩き続け、『駒沢公園』の空が広い大階段前を通過し、どうにか明るいうちに三宿の「江口書店」(2010/03/29参照)に到達する。だが店内で古書漁りに時間を忘れていると、あっという間に外は真っ暗になってしまった…。結局店内のそこかしこに積み上がる、戦前戦中の岩波文庫と格闘し、「シャーロック・ホームズの冒險」「シャーロック・ホームズの囘想」「シャーロック・ホームズの歸還」すべてコナン・ドイル作 菊池武一譯を見つけ出し、残念ながら赤帯は付いていないが、岩波文庫ホームズ初期出版が三冊一気に揃ったぞ!と仄かに喜び、相模書房「家政のあり方/今和次郎」とともに計600円で購入する。
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「冒險」は昭和十六年の七刷で「囘想」は昭和十六年の五刷だが、「歸還」は昭和十三年の初版。戦前戦中出版なので、旧字の混ざるタイトル含め、右書きになっております。そして本文の『ワトソン君』の表記は、『ウォットサン君』になっております。手塚治虫の名作古代史オカルトSF漫画『三つ目がとおる』の主人公・写楽保介の相棒であり庇護者でもある女子中学生『和登サン』の語感にかなり近いですな。

そして本日は午後イチに吉祥寺の南の牟礼に流れ着いたので、春のような陽気に誘われて集まった人々でごった返す『井の頭公園』を早足で突破し、「よみた屋」(2014/08/29参照)へ。店頭棚からは、研究社「この大陸は種子なのだ アメリカ文明のゆくえ/諏訪優」(『早稲田大学政治経済学部蔵書』印アリ)ツクダオリジナル「Here's the solution Rubik's CUBE」を引っ張り出し、店内では村山書店「抵抗クラブ 青春のカレンダー/飯沢匡」に目を留めて、計550円で購入する。「Here's the solution Rubik's CUBE」は、立体パズル『ルービックキューブ』の基本解き方集で、1981年当時に380円で売られていたもの。この本は第3刷…パズルも売れて解答集も売れて、ツクダオリジナル大もうけ!そして「抵抗クラブ」は昭和三十一年刊の、銀座新橋辺りを舞台にした青春小説らしいが、表紙絵の可愛らしさにクラリと来る。
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古本を携え家に戻ったら、大阪に新たに送る古本の準備をいそいそと始める。
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2021年02月19日

2/19東京・神保町 光和書房

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午前のうちに家を飛び出し、御茶ノ水駅方面から神保町入りする。今日はわりと暖かくなるはずなのに、ずいぶんとまだまだ寒いじゃないかと、冷たい風にかじかむ手を擦り合わせて『駿河台下交差点』に立つ。すると対岸からでも、「大島書店」(2012/11/08参照)跡地に入った古本屋さんが、店頭棚を出しているのが確認出来るではないか。歩行者信号が青になるのを待ちかね、長い横断歩道を踏み締めながらお店に近づく。小さなお店の軒には、小豆色の店名看板があり、店頭には二本の白い両面棚と、小さめのスチールラック、それに箱がひとつ出されている。箱にはファイルなどの文具類が入れられている。ラックには書道用品が安値で並べられている。棚には、新書・岩波写真文庫・絶版文庫・雑本・古書・古雑誌・資料冊子など。値段は300円〜1500円と様々であるが、なかなか質の良い並びが魅力的である。「新青年」「苦楽」「宝石」「日活」「コギト」「ロマンjス」「幼稚園」「死刑台へどうぞ/飛鳥高」「新造軍艦(口絵&裏表紙ナシ)/押川春浪」「放浪漫記/大谷光瑞」などが見つかるのをウハウハと楽しむが、小学館「中学生の友 昭和三十七年7月号付録 海外推理小説 ふたつのワナ/ヒュー・ペンテコースト」が梶竜雄(文)なのに気付き、値段も600円の激安なので、優しく握り締めて店内へ向かう。自動ドアのボタンを押す…開かない…もう一度推す…開かない…もう一度押す…やはりドアはピクリとも動かない。などとやっていると、ガラスの向こうで帳場にいた青年が慌ててドアに駆け寄り、ガチャガチャと扉を解錠する。ンが〜とドアが開くと「す、すみませんでした。開けてませんでした。申し訳ないです。ありえないですよね」と照れながら平謝り。いえいえ、結果的に入店出来れば何の問題もありません!中は高級感溢れる空間で、両壁に恭しく硯や墨や古典籍が上品にディスプレイされている。店頭と店内がまったく別なお店であるが、店頭に並ぶ本はスコブル魅力的である。これから必ず立ち寄るお店のひとつとなりそうだ。先述の小さな付録本を購入する。
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その後は隣りの「三茶書房」(2010/10/26参照)で光文社文庫「落語推理 迷宮亭」を100円で購入し、「田村書店」(2010/12/21参照)で平凡社 別冊太陽「探偵・怪奇のモダニズム 竹中英太郎・松野一夫」を600円で購入し、『神保町交差点』近くの『白山通り』沿いの「東西堂書店」が閉店してしまったのを目撃してから(貼紙に書かれた『閉店の原因は、新刊書店業界の長期低落と新型コロナウィルスです』が切ない…)、水道橋駅より帰路に着く。
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2021年02月18日

2/18向井潤吉がホームズを!

本日は午後二時半に吉祥寺南に漂着したので、そのまま素直に吉祥寺の古本屋さんを訪れる。まずは『井の頭通り』を伝って「よみた屋」(2014/08/29参照)へ。すると店頭棚に昭和三十年代後半刊の『岩波少年少女文学全集』が数冊並んでいるのが目に留まる。岩波少年文庫から精選した作品を、箱入りハードカバーにアップデートした全30巻の全集である。第3巻「シャーロック・ホウムズの冒険/コナン・ドイル」を手にして箱から引き出し、パラパラと眺めてみる。おぉぉ!口絵や挿絵が、古民家の絵で有名な洋画家・向井潤吉の仕事じゃないか!と驚き喜び確保する。隣りの「海底二万里/ヴェルヌ」も試しに見てみると、こちらも口絵&挿絵が向井潤吉であった。二冊を手にして店内に進み、入口右横の五十均文庫棚を見つめていると、またも目に溜まったのはホームズ本。新潮文庫「シャーロック・ホームズの冒険/コナン・ドイル」は昭和四十四年の三十四刷だが、赤茶色のカバーが見たこともなかった長尾みのるの仕事だったので、これも確保し、計275円で購入する。
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岩波「シャーロック・ホウムズの冒険」には月報的な『岩波少年少女文学全集だよりNo.27』が挟まっており(左下)、福永武彦のホームズ物語
解説『頭脳の体操』や、教師によるホウムズ物語の読書指導や、生徒の読書感想文が掲載されており、大変に興味深い構成になっている。

お店を出たら駅に近づき、「古本センター」(2013/07/01参照)の処分棚から講談社「ロックの子 桑田佳祐インタビュー」太田出版「電波系/根本敬+村崎百郎」を計130円で購入する。そしてさらに「バサラブックス」(2015/03/28参照)の店頭300均箱から婦人之友社 復刻「子供之友」大正13年3月号・大正14年4月号を引っ張り出し、計600円で購入する。そんなこんなで阿佐ヶ谷にようやく帰り着き、喉が渇いたので缶ジュースを購い、顎マスクでクピクピ喉を潤しながら、人気のない裏道をたどっていると、三十メートルほど離れた道を偶然横切る「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)天野氏に見事発見され、遠距離会釈される。
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2021年02月17日

2/17古本屋地図、ひとまず手を離れる。

長〜く取りかかっていた謎の古本屋地図製作が、昨日で一応のカタチにたどり着いた。つい最近まで、自分で作っていながら、完成するとはまったく思っていなかった。それほどの難物を、空間を捩じ曲げ折り曲げ、頭から汁が出るんじゃないかと思うほど知恵を絞って、十四枚の古本屋地図にまとめ上げたのである。ここからは一旦こちらの手を離れ、校正の段階に入る。…真っ赤っ赤になって戻って来そうで、テリブルテリブル…。だがそんな怖れはひとまず脇に退けておいて、すっかり解放された気分で、今日は西荻窪の遥か北の今川に流れ着く。テクテクと駅に戻りながら古本屋さんを…水曜日だから「モンガ堂」(2012/09/15参照)は定休日か。そう気付いたので『青梅街道』を通り越し、久々の「benchtime books」(2019/03/09参照)を訪れる。表には看板しか出ていないので、真鍮製のドアノブに手をかけ、店内に入り込む。古本は一階フロアと中二階フロアで、児童文学と絵本と美術と暮らしとカルチャーと古書が、しっかりと手を繋ぎ合って、強固で小さな宇宙を形成している。一階の旅本棚から、雄鶏社「ノンポリ世界をゆく 42ヵ国無銭旅行/広瀬勝裕」を550円で購入する。
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昭和44年刊の、一足早いバックパッカーの世界旅行記である。カバーイラストは、現在は絵本で大活躍中の柳生弦一郎。この表紙の雰囲気、何かに似ているなと考え、たどり着いたのが五木寛之の「青年は荒野をめざす」であった。思えばそのカバーも柳生弦一郎が手掛けていた。「ノンポリ世界をゆく」の序文は、五木寛之の転載書評が使われており、本文には、ストックホルムで『作詞家のぶ・ひろし』と名乗っていた五木寛之と出会う描写が登場する。「青年は荒野をめざす」の弟分といったところか。そして阿佐ヶ谷に戻り、「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)で空きの多い店頭棚を見つめる…何かが売れに売れたのか?と思いつつ、こちらも負けじと二冊を掴む。文藝春秋「東京の下町/吉村昭 繪・永田力」中央公論社「モダン都市東京/海野弘」を計220円で購入する。ところで「モダン都市東京」には『江戸川乱歩『D坂の殺人事件』』という論考も載っているのだが、その中に『団子坂の上の方に、この小説にでてくるのとそっくりな、二間半間口の、みすぼらしい古本屋が今でもある』と書かれており、そのお店の写真も添付されているのだ。昔の古本屋地図で調べてみると、千駄木5−4−3にあった「川崎書店」らしい。本が出版された昭和58年当時は現存していたが、昭和六十年代には足立区に移転したとのことである。団子坂上の古本屋さん…見てみたかった。『D坂の殺人事件』気分が味わえるとともに、乱歩が営業していた「三人書房」気分もダブルで味わえたはず…。
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2021年02月15日

2/15謎の古本屋地図、ひとまずラストスパート!

今日明日は、謎の古本屋地図のラストスパートにすべてを捧げるつもりで、朝から叩き台作りに集中しまくる。窓を叩く雨風に集中力を削がれる事無く、頭とモニターの中とノートの上で百軒以上の古本屋さんを彷徨いまくり、夕方までにどうにか目標としていた地点までたどり着く…ついにぬかるみ地獄の向こうに、固そうな大地が見えて来た!よし、これで後はデータ化するだけだ。
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ノートにはこんな手描きの地図がもう二十ページほど…我ながら常軌を逸した労作であるな。

そうひとまず安心して油断して、幸い雨も上がり太い虹も出ていたので、ちょっと「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)に不要&読了古本を売りに行く。ところが店主の天野氏が不在だったので、帳場にいた奥さまに本を預け、夜に再訪することを約束し、ひとまずお店を離れる。ええぃ、外出ついでだ!と冷たい風がゴウゴウと道を駆け抜けるのをものともせず、荻窪まで歩き「古書ワルツ荻窪店」(2020/07/30参照)を覗く。中央奥の児童書ゾーンで、古い箱入り児童文学二冊とカバー装本を一冊手にする。理論社*どうわの本棚「こぶたのブウタ/神沢利子=作・え」学研「ちびくろおじさん/レナート=ランシェル・さく」ポプラ社の創作童話4「トン子ちゃんのアフリカぼうけん/谷真介作・赤坂三好絵」を計990円で購入する。「こぶたのブウタ」は1971年の初版で、表記通りに神沢自身がカバー装画から物語舞台の地図から挿絵から多数の絵を玄人はだしに手掛けた、ちょっと珍しい作品。2006年に復刻されているが、やはりオリジナル版にはそこはかとない良さがある。
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そんな昔の子どもの本を背に抱え、すっかり空気が冷たくなった夜道を阿佐ヶ谷まで引き返し、「古書コンコ堂」で店に戻っていた天野氏と楽しく無駄話し、古本を売った代金を受け取り、古本屋地図の待つ我が家に帰宅する。
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2021年02月14日

2/14「流れ星の歌」を悶絶読書中。

本日は午後三時前にまたもや上連雀に流れ着いてしまったので、昨日とは趣向を変え、「古書上々堂」(2008/07/17参照)に赴く。店頭には絵本平台とビジュアル本平台と文庫ワゴンと百均単行本棚と三百均単行本棚が出ており、そのそれぞれに人が食らいついている。瀟洒なガラス戸を開き、手指を消毒して左壁棚の三百均単行本ゾーンに意識を集中する。文藝春秋社「乾いた空の流れ/笹沢佐保」を購入。昭和三十八年刊の中編推理小説集である。帯の惹句は『本格派No.1の傑作を蒐めた珠玉推理選』となっている。その後は駅に向かいがてら、ビル街裏町の「BOOKS三鷹」(2010/01/17参照)が健在なのを確認するが、何も買えずに退散する。一番食指が動いたのは、古い見たことのない藤澤桓夫の大阪小説集だったが、裸本で表紙が反り返っており値段が二千円だったので躊躇してしまったのである。そして疲れ果てていたので、駅北側に出て古本屋を巡ることはせず、ゼエハアと帰宅する。一息ついてから、昨日の地震で崩れた古本山の修復に着手する。幸いに壊れた本などは見当たらないので一安心。

西條八十「流れ星の歌」を、ウフウフと読み進めているのだが、予想通りに素っ頓狂で期待を裏切らない展開を見せてくれるので、悶絶している。埼玉県行田(『ここはたびの名産地でゆうめいな埼玉県の行田。市にはなっているが、さみしい町です』と説明が…)でにわとりを飼って暮らしていた少女が、その経営に失敗して生活に行き詰まり、すべてを売り払い、腹違いの姉を頼り単身上京する。ところがその田園調布に住み元映画女優の姉は、夫ともに今や宝石強盗犯の一味で、訪ねて来た妹を酷薄にあしらうのだが、その純真無垢さを利用して、盗んだ宝石の運び屋をさせるのであった。だが妹はすぐに警察に捕まってしまい、何故かひとりで罪を引っ被り少年院へ。そして刑期を終えた一年後、姉を頼らず就職しようと奮闘するのだが、前科者ということで、みな気味悪がり働き口は全く見つからない。そこに麻布にある魔法屋敷に住む、警察からもマークされている不思議な老人・丸角大八から『仕事をあげます』という手紙が届くのであった…そしてその仕事とは、『人の気持ちをいらいらさせる仕事』…あぁぁぁ、八十先生。どんな思考回路がスパークして、こんな変な物語を思いつき、それを子供に読ませようと思ったのですか。少女がひたすら奇怪なズンドコ世界に叩き込まれて行く、容赦ない物語展開は唯一無二!いったいこれからどうなってしまうんだろう。は、早く続きを読まなければ。
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自動で扉が開き、誰もいないのに声がする魔法の家で、魔法使いのような福禄寿のような皺だらけの老人・丸角大八と会う少女・美穂子。その第一印象は『まあ、なんて、いやらしい顔だろう』であった。
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2021年02月13日

2/13『明智探偵事務所』のステッカーが眩しかった。

本日は夕方に上連雀に流れ着いたので、ボチボチ歩きながら古本屋さんを巡る。「水中書店」(2014/01/18参照)では店頭で池田書店 イケダブックス210「クレー射撃・付狩猟/北晴夫」を見つけて血流を早める。初心者でもわかるクレー射撃のガイドだが、こいつはなかなかのレア本なのである。店内では講談社 現代推理小説大系別巻2「ミステリ・ハンドブック/中島河太郎」(別紙の末尾にある『編集部からのお詫び』がさり気なく壮絶。『当巻は執筆編集に手間どり、当初の予定より六年余も遅くなりました……』)を選んで、計600円で購入する。そのまま夕闇迫る中を吉祥寺までトボトボ歩き、「バサラブックス」(2015/03/28参照)の店内へ。すると最奥のミステリ棚に、春陽文庫版「江戸川乱歩名作全集 全7冊」が、セット箱入りでちんまり並んでいるのが目に留まる。箱の表面には『明智探偵事務所 NHK総合テレビ放映』の金ステッカーが貼られている。1巻巻末に書かれた値段を確認すると、激安の800円だったので迷わず購入を決める。
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この「江戸川乱歩名作全集」箱入り、他に全9冊版もあるのだが、やはり1972年放送のNHKドラマ『明智探偵事務所』のステッカーが眩しく、足りない二冊を補って余りあるものがある。

最後に「よみた屋」(2014/08/29参照)にたどり着き、警察関連の資料本が固まって並んだ店頭棚から、その中の一冊、警察庁警務局教養課「制服を着た紳士 警察官の話し方」を110円で購入する。『受付と応対』『巡回連絡』『地理案内』『職務質問』『拾得物の受理』『少年補導』『酔っぱらいの取扱い』『参考人との面接』などなど、ロールプレイングとともに実例も載っており、かなりリアルで楽し気な非売品本である。
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2021年02月12日

2/12クレイジー・八十の少女探偵小説(おそらく)!

午前のうちから荻窪を一回りし、結局開店二十分後の「古書ワルツ荻窪店」(2020/07/30参照)に流れ着く。なんだかお客さんが多いなと感じつつ、店頭で二冊を掴んでから店内へ。先日じっくりモードで見たばかりなので、今日は少し流しめの中速スピードで棚の間をウロウロ。すると中央右奥の絵本棚に、先日記事に書いたばかりの『artback』シリーズの一冊に遭遇する(2021/02/09参照)。CBS・ソニー出版「カラスのリヒャルト/ヘルメ・ハイネ作 北杜夫訳」である。ビニカバはナシだが440円なので、ここで会ったが百年め!と喜んで抱え込む。もしや他にも…と思いつつ、さらに左にスライドしながら絵本棚に目をピカピカ光らせるが、さすがにそう甘くはなかった。軽くため息をついて、立ち上がり腰を伸ばす。すると上段の児童文学ゾーンが自然と視野を占めることになる…その一角に違和感……ほほぅ、カバーはないが、ポプラ社の少女小説「流れ星の歌/西條八十」があるじゃないか。早速手に取って値段を見ると、激安の330円なので、こちらも素早く抱え込む。ニヤつきながらページを捲ってみると、本扉の絵が非常に不穏なシチュエーション…注射器をバックにして怯える少女…な、なんだこれは。これはもしかしたら悲劇と感動の少女小説ではなく、もしや少女探偵小説なのでは…慌てて目次に目を通す。『少年院へ』『ふしぎな手紙』『魔法の家』『三人の悪漢』『なぞの小石』『うごく仏像』『なぞの男』『おそろしいひみつ』『おそろしい注射器』『ねずみ地獄』『かくごしろ!』『闇の中の銃声』…章タイトルの半分以上がこんな調子である。これは完全に、やり過ぎな八十のクレイジーな一面が噴出した、少女探偵小説だ!そう確信し、ハヤカワポケミス「十二人の評決/R・ボストゲート」新潮社「百物語 参/杉浦日向子」とともに計990円で購入する。わぁ〜い、今や読むことの難しい西條八十の少女探偵小説(おそらく)がヒョイッと手に入るなんて、これは読むのがとにかく楽しみである。そそくさと家に戻り、午後はまだまだ続けている謎の古本屋地図作製に根を詰めまくる。
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2021年02月11日

2/11さらば『探偵小説狂想曲』!

今日は午後三時過ぎに上石神井に流れ着いてしまったので、冷たい風の中を西武新宿線に乗り込み、鷺ノ宮に帰還する。そのままさらに自宅に向かうが、古本と触れ合うためにいつの間にか自宅を通り過ぎ、「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)の店頭棚を眺めている己に気付く。日本放送出版協会「NHK土曜ドラマ・シナリオ 山田太一シリーズ 男たちの旅路 第III部」(『シルバー・シート』『墓場の島』『別離』収録)北海社「サッポロ'76 5 サッポロビール100年記念号」の二冊を抜き取り、いつの間にか自動手指消毒器が導入されているのに感心しつつ消毒を施し、計220円で購入する。すると店主の天野氏が「探偵小説、今日市場に出しちゃいました」と申し訳なさそうに告白。ど、ど、ど、道理で中央通路の古い探偵小説が固まっていた『探偵小説狂想曲』ゾーンが、茶色と黒い背が一掃され、スッキリ見やすく比較的最近の本を並べていたわけだ。一瞬、誰か強者の物好きがまとめて購入したのか?と棚を見て想像してしまったが、そういうことだったか。まぁここ最近動きは見られなかったし、お店としては致し方ないことである。「市場に出す前にお知らせしようと思ったんですけど…」「いや、大丈夫ですよ。欲しいものはすでに買っていましたから」…と動揺を隠しつつ答えたものの、実はまだまだ気になる本は厳然と存在していた。「木乃伊の恋/香山滋」「鐵鎖殺人事件/浜尾四郎」「カルメンの死/横溝正史」などなど…あぁ、だが、たった二段の棚に振り回されまくった、楽しい楽しい、八ヶ月余であった。ご近所故の頻繁チェックで、多くの探偵小説を購入してしまった、興奮の日々であった。記念すべき初の購入本は大下宇陀児「どろんこ令嬢」、最後に買ったのも同じ大下の「火星美人」。ふと気付けば、この『探偵小説狂想曲』で一番買った作家は、大下宇陀児なのである。前述の二冊+「鐵の舌」「偽惡病患者」「くちなし鬼語」の計五冊。実はまだ「鐡の舌」しか読んでいない体たらくだが、棚に見出し購入した時の興奮を保ちつつ、一冊一冊読み進めることにしよう。次は…「火星美人」にするかな。
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2021年02月10日

2/10「新しい中学造形3」!

本日は午後三時過ぎに祖師ケ谷大蔵の北の果ての谷に流れ着いてしまったので、坂を上がって駅方面に向かい、開店中の「祖師谷書房」(2009/03/05参照)とご対面する。すぐには中に入らずに、サッシ扉ギリギリに横積みされた文庫本から見て行く。すると左側棚上に、古いがキレイな角川文庫が固まっているのに気付く。ちょっとだけサッシを開けて、文庫に手を伸ばす。昭和三十三年初版の「白鷺/泉鏡花」はカバーを外すと、元パラフィン&緑帯付きの厚着本だったので確保。続いて昭和三十七年初版の「フライパンの歌/水上勉」も掴み出す。先日買った署名入りの「霧と旗」の宇野浩二の序文に、この「フライパンの歌」についての言及があり、気になっていたのだ(水上は昭和二十三年に「フライパンの歌」を出した後、十年余り沈黙するが、突然昭和三十四年に長編推理小説を引っさげて文壇に復活したのである。宇野の序文にも新作が推理小説であることへの驚きが記され、また「フライパンの歌」の十返肇の解説にも『まさか氏が推理作家としてカム・バックしてこようとは夢想だにしなかった』と書かれている)。二冊を手に今度はサッシを大きく引き開けて店内に進む。狭い通路でギラギラと四方に足元に視線を走らせ、最終的に右側通路の美術棚の上部隙間に差し込まれていた、東京書籍株式会社「新しい中学造形3」という文部省検定教科書である、計35ページの薄手のビジュアルブックを手にする。題名通り、中学生のための美術解説書なのだが、『空間構成』『機械製品と手工製品』『近代建築(掲載されている建築が、グロピウス、ライト、コルビュジェ!)』『都市計画』『舞台美術』なども含み、“美術”の懐をガバッと広げているのに感心する。表4にクレジットが載っていたので目を通すと、『編集に携わった人』の中に滝口修造の名があり驚くが、さらに驚いたのは『写真』のクレジットである。カメラマン五人の中に大辻清司と石元泰博が含まれているではないか!大辻清司は商業写真家ながら、滝口とともに前衛集団『実験工房』を立ち上げ、シュールな作風を追求。石元泰博は「シカゴシカゴ」や「桂離宮」の写真集が有名なバウハウスの流れを汲む写真家である…なんと豪勢な教科書。印刷が昭和三十二年で発行が昭和三十三年だから、実験工房華々しく難解に活躍し、石元は桂離宮を撮影している頃…つまりバリバリに尖っている時期なのに、このような教科書に携わっていたとは…。どの写真が二人の作品か特定は難しいが、椅子や工業製品や日用品、モビールや彫塑の写真が、実に怪しい……というわけで計200円で購入する。
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2021年02月09日

2/9 絵本叢書『artback』!

今日は朝から、まだまだ作り続けている古本屋地図の制作に没頭する…ふぅぅぅぅぅ、何処まで続くぬかるみぞ…。午後にちょっとだけ外出し、高円寺へ。「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)店頭棚に、白水社「彼等の昭和 長谷川海太郎・潾二郎・濬・四郎/川崎賢子」を見出して300円で購入する。長谷川四兄弟(長男・海太郎は谷譲次・牧逸馬・林不忘の筆名を使い分けた流行作家。次男・潾二郎は眠る鯵虎猫の絵で有名な洋画家で、幻の探偵小説作家・地味井平造でもある。三男・濬は満州映画協会に勤務したりロシア語通訳として活躍しながら小説を執筆。四男・四郎は作家・翻訳家として活躍)に材を取った、サントリー学芸賞受賞の評論書である。谷譲次が好きで好きでたまらないのに未読…不覚っ!と恥じ入りつつも、良い本と店頭で出会えたことに感謝しながら帰路に着く。

とまぁ、こんな短いご近所古本屋訪問だったので、最近何だか手元に集まって来た絵本叢書について無駄話をひとつ。先日渋谷の「中村書店」(2008/07/24参照)で購入した絵本二冊が、その発端である(2021/01/30参照)。「6人のガールフレンド/萩原朔美・文 石田光於・絵」「都会という名の船/奥村茂雄」は、CBS・ソニー出版の『ARTBACK』というシリーズから出されており、絵本の体裁は採っているが、七十〜八十年代のスノッブで軽薄で、空虚さと透明感に溢れ、カッターナイフのような鋭さを見せるアート作品集である。「6人のガールフレンズ」に愛読者カードが挟み込まれており、『artbackはCBS・ソニーから出版されている新しい絵本です』と欄外に書かれていた。私はこの時代の空気は決して嫌いではないので迷わず購入したのだが、あれ?家にあるあいつらも、同じ絵本叢書ではなかったか?と思い至る。家に帰って確かめてみると、先日岡崎武志氏から譲り受けた「ALONG V・A・C・A・T・I・O・N/大瀧詠一作・永井博絵」と、連載の取材で「井草ワニ園」(2019/01/05参照)で購入した「ヒトニツイテ /五味太郎」が、二冊とも版型は大きく違えど、まさに同じ叢書であった。レコード会社の出版部門が、こんな贅沢な本を出していたなんて、ずいぶん儲かっていたのだなと気づかされる。俄然興味が湧いたので、他にはどんな絵本が出ていたのか調べてみると、大友克洋・和田誠・浅井慎平・寺山修司・谷川俊太郎・大橋歩・矢吹申彦らが手掛けており、また海外作家物を星新一・北杜夫・遠藤周作らが翻訳しているものがあるらしい。この叢書はあまり見かけぬし、ハードルが高そうな物も含まれているが、何処かでハタと出会って、値段と折り合いがつくものから、コツコツ買い集めてみることにして行こう。決意固くと言うわけではなく、何となくダラッとしているが、こういう密やかな目標を胸に秘していると、古本屋さん巡りが、また一層楽しくなるものなのだ。
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2021年02月08日

2/8またもやの署名本と小石清。

午前のうちにサササッと荻窪に向かい、「古書ワルツ荻窪店」(2020/07/30参照)を偵察する。今朝は頭が痛くなるほどの冷徹な寒さを誇っているので、店内ではアルコール消毒した手がずっと氷のように冷たいまま。その手をそすそすと擦り合わせながら、わりとじっくり棚を見て行く。すると本の場所が変わっているところ多々あり、ジャンルで固まり気味のところ少々あり…などと気付く。そして帳場前通路の下段で、昭和三十五年刊の長編推理小説を発見する。新潮社「夜、生きるもの/菊村到」(初版帯付き)である。和田浩治主演の日活映画『俺は死なないぜ』の原作本である。手に取りパラッと捲ると、おぉ!本扉裏に献呈署名が入っているではないか。最近署名本づいてるなぁと思いつつ、献呈相手が絵画コレクターのキャバレー王の福富太郎であることに気付く。ちおみに「夜、生きるもの」は、夜の街を舞台にバンドマンが、父の死因を探る推理スリラーで、長尾みのる装幀のカバーや表紙は、夜の飲屋街に題を採っている。実にキャバレー王に相応しい献呈署名本ではないだろうか!そんな風に喜び、440円で購入する。
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そしていくらか寒さが和らいだ午後、一冊のヤフオク落札本が到着する。揚子江社「詩集・遺書/西村皎三」(函付き)である。ライバルナシの千円にて落札。軍人が書き残した戦争詩が主であるが、いわゆる国威発揚大政翼賛的な無闇矢鱈と勇ましいものではなく、最前線で闘う兵士としてのやるせない心情や、生と死の狭間で獲得する詩情を綴っている、この時代としては珍しいニュアンスの詩集である。だが、私にとってこの本の眼目はそこではないのだ。挿入されている口絵写真が、前衛写真家・小石清によるものだと知ったからなのである。小石は、表紙を亜鉛板にした尖り過ぎで攻め過ぎの写真集「初夏神経」が有名(古書価ン十万円…)。その昔、『神奈川県立近代美術館』の図録「日本の写真1930年代展」で、夜の街の空に浮かびがある大時計の文字盤が悪夢的な『泥酔夢・疲労感』や、連作『初夏神経』を目にして、その現在でも通じる独創性に、いっぺんで虜になってしまったのである。その写真家の作品が、この詩集には七枚収められているのである(その他にも一枚あるのだが、それは何故か映画監督・衣笠貞之助撮影)。口絵写真は、従軍した時に撮影した連作『半世界』と共通の世界観を持っているようだ。う〜む、こんな本が存在していたなんて、今の今まで知らなかった…。
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さて、そろそろ書店に並び始める「本の雑誌 お馬ちゃかぽこ春風号」の連載『毎日でも通いたい古本屋さん』では、西荻窪の北の外れにある古本屋さん「古書西荻 モンガ堂」を取り上げております。店主のモンガさんにはいつも優しくしてもらい、私は非道にも本を値切って買ったりしていますが、それにはある理由が…。どうぞ本誌を手にしてその真意を確かめつつ、そのためなのか計り知れませんが、ひとつの大きな罰が当たったようなので、失笑していただければ幸いです。それでもめげずに、モンガさん、また本買いに行きますね!
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2021年02月07日

2/7仙花紙文庫本!

一日をあれこれ忙しく立ち回り過ごしてしまい、最後を見届けたかった「ポラン書房」(2009/05/08参照)にはもう一度行けず終い…ちくしょう!そしてさらば、西武池袋線の雄、「ポラン書房」実店舗よ!ありがとう!などと感謝つつ、すっかり暗くなり、寒い風が吹き始めた下北沢に流れ着いたので、「ほん吉」(2008/06/01参照)に足を向ける。すると薄闇の中でも、棚に古書が多めに挿さっているのが目に入る。古書のところだけ、闇が深まる…と感じつつ、アルス普及版「北齋/織田一磨」六文館「傳説民話考/長尾豊」を計220円で購入し、続いて「古書明日(2017/01/31参照)へ。店頭の絵本箱から福音館書店「かがくのとも117号 おなら/長新太」(英題は「A Story of Fart,」である)を引っ掴み、なかなかお客さんの多い店内に進む。そして右側通路の古書ゾーンで、見慣れぬ…と言うか見たことのない文庫本を手にする。富士出版株式會社・富士選書「あそび・妄想・外四篇/森鴎外森於菟解説」である。昭和二十三年刊の仙花紙文庫本で、外四篇は『金毘羅』『蛇』『心中』『百物語』となかなか不穏なラインナップで、表紙紙も本文並にペラペラ。タイトル文字は手書きのレタリングという味のあるチープさ。だが解説は鴎外の息子森於菟がしっかりと担当している正統派さ…なかなか謎な文庫本だ(家に帰ってから調べても、情報は皆無。日本の古本屋では一点引っ掛かったのみ)。「おなら」とともに計600円で購入する。
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2021年02月06日

2/6今日も素晴らしい署名本を入手する!

暖かで、雲ひとつない青空がちょっと恐かった二月初めの土曜日。夕方近くに下石神井に流れ着く。…石神井公園を越えて、西武池袋線で「ポラン書房」に行くべきか…いや、今日はなんだかさすがに疲れた…日和って上石神井駅に行くことにしよう…そして西武新宿線に乗り込み、最寄り駅の鷺ノ宮を乗り過ごし、都立家政駅で下車する。駅前商店街を南に歩いて、すっかりご無沙汰の『♪駅から〜1分、走れば4秒』の「ブックマート都立家政店」(2011/12/13参照)の店頭棚前に屈み込む。下部に固まる300均古書や古雑誌を丁寧に漁って行く。ぬぬぅ、大正四年刊の國民文學社・抒情詩社「濁れる川/窪田空穂」がちゃんと函付きで出て来たではないか。し、しかも扉前のページに“空穂”の署名とともに、『その心抂ぐなといへば教へ子のこのをとめ子の涙こぼすも』の一首が書かれている。密やかに喜びながら330円で購入する。函は素っ気ない機械箱だが、本は文庫サイズで革装で天金の豪奢な造りである。嗚呼、古本屋さん、ばんざいっ!
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身近な濁れる一級河川『妙正寺川』のか細い流れをバックに記念撮影。

そして南にズンズン歩いて、高円寺『庚申通り』の北口に到達し、「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)にも立ち寄る。明日まで千円以上お買い上げの場合、6周年記念2割引セール中。福音館書店「たくさんのふしぎ第321号 これ、わたし/さわだともこ」を300円で購入し、残念ながら割引ならず!
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2021年02月05日

2/5中野北側で古本を買ったりもらったり。

中野にて所用を済ませた後、『早稲田通り』に出て「古本案内処」(2015/06/13参照)に立ち寄る。銀貨社「電氣スケート/奈街三郎著・茂田井武絵」を330円で購入する。これは2001年の復刻版で、『電氣スケート』『おとしあな』『さるとかにのげんまん』を収録。茂田井の震える可愛い線が炸裂しまくり!の絵物語である。お店を出たら東にググッと向かい、「ブックオフ中野早稲田通り店」(2012/11/15参照)の古書コーナーに目を光らせ、日本テレビ「優作トーク/山口猛編」白水社 新しいフランスの小説「踏みはずし/ミシェル・リオ 堀江敏幸訳」を計420円で購入する。そして今度は来た道を逆戻りし、横断歩道を渡って『薬師あいロード』に入り込んでズンズン進み、突破した後も『新井薬師前駅』に進路を採り続け、南口の「文林堂書店」(2008/08/04参照)に到達する。新潮文庫「黄色い部屋の秘密/ガストン・ルルー 堀口大学訳」を550円で購入する。昭和三十八年三刷で、『探偵・時代小説』ジャンルを表す白色帯付き。ちなみにその帯の作者名は『ル・ルウ』となっている。さて、これでまだ終わりではない。続いて踏切を北に渡り、西武新宿線の線路沿いに西へテクテク。坂を下りながら次の踏切が見えて来ると、『リサイクル展示室』という、集めた古着や家具などを無料で配布している公共施設があるのだが、なんと古本の無料配布も行っているというのだ。手指消毒し、小ホールのような一階に入ると、すぐに右壁際に四本ほどの本棚が展開していた。棚脇には『一人一日二冊まで』と貼り出されている。では早速その二冊を選んでみるかと、棚に目をやる。単行本・文庫本・コミック・絵本・実用書…単行本はそのほとんどが図書館のラベルが貼られたままの廃棄本らしい。文庫は何故かハヤカワ文庫が目立つなと感じつつ、創元推理文庫「探偵小説の世紀 上/G・K・チェスタトン編」大英博物館「大英博物館見学記念ガイド JAPANESE」を抜き取る。それを入口近くに陣取るオジさんたちに見せると「二冊だね。いいよ」と無事に受け取り完了。ありがとうございます!
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さらにここから線路沿いに西に歩き続け、沼袋に出る。北に緩やかな坂道を上がって「天野書店」(2008/11/14参照)に最後に飛び込む。静かな学術的店内を、棚や積み上がる本を見ながらウラウラ巡っていると、右奥の本の山の上に河出書房新社「長編推理小説 霧と影/水上勉」がポンと置かれているのを発見する。このお店にあまりに合わぬ本だなと手を伸ばしてみると、ぬぉっ!献呈署名入りじゃないか。水上勉の一般小説の献呈署名なら買おうとは思わぬが、昭和三十四年の推理小説への献呈署名ならぜひとも手に入れなければならない!と意気込みつつ値段を探すが、何処にも書かれていない…一瞬逡巡した後、帳場の奥さまに「すみません、これお幾らでしょうか?」と聞いてみる。「あら、値段がないのね。ちょっと二階に聞いて来るは」と本を持って上に行ってしまった…ドキドキ、幾らになるんだろう…二千円くらいまでなら買うことにしよう。そう決めて待っていると奥さまが姿を現し、「千円ですって。高いわよね〜」と教えてくれた。やった!と喜び「ではいただきます」と伝えると、「えっ、買うの?」と奥さまが目を本当に丸くして驚かれた。というわけで千円で購入する。うむ、これにて大大大満足。さぁ、帰ろう帰ろう。
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家で献呈相手を調べてみると、某有名児童出版社の創業者であった…。
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2021年02月04日

2/4実は栞が目当てだった。

立春の次の日に春一番が吹くなど、矢継ぎ早な感じで目出度いな…とは思いつつも、何だ!?この冷たい春一番はっ!とすっかり閉口して、武蔵境南の井口に流れ着く。すぐさま駅に向かい、中央線に飛び乗るが、何処かで古本を買って行かねば!と不必要な使命感を燃やし、荻窪駅で途中下車する。「竹中書店」(2009/01/23参照)の店頭二百均木製ワゴンを覗き込み、美術出版社「日本の彫刻 平安時代」「日本の彫刻 鎌倉時代」を計200円で購入する。編集者に瀧口修造が名を連ねており、「平安時代」は土門拳撮影。「鎌倉時代」には北園克衛が『文殊五尊像』について寄稿しているのだ。そんな大判な昭和二十七年の彫刻写真集をリュックに上手く納めてから、続いて「古書ワルツ荻窪店」(2019/07/30参照)へ。店内でミリオン・ブックス「推理小説ゼミナール ミステリー解読術/長沼弘毅」に目を留める。ポオの『モルグ街の殺人』『マリー・ロージェの怪事件』『おまえが犯人だ』『黄金虫』『盗まれた手紙』を、微に入り細に入り分解解読講義する、ちょっと不思議な昭和三十七年刊のミステリ研究本である。真鍋博描く挿絵やカットがポオ色満点で大変に小気味良い。これは面白い本に出会ったぞ!と手の中にキープしつつ、店内中央手前の『なんとなくミステリ棚』にさらに意識を集中する。するとすべて函ナシだが、東京創元社のクライム・クラブが五冊ほど並んでいるのに気付く。みな330〜550円ほどだが、ある理由で「歯と爪/B・S・バリンジャー」を買うことに決める。二冊で計1210円であった。実は「歯と爪」には読書カード係行きのハガキとともに、創元推理文庫の栞が挟まっていたのだ。…本よりこれが欲しかった…。生成りの厚紙には、十三作のラインナップとともに、文庫は毎週金曜日に発売されることや、四つのマークの説明が書かれている。裏面は小林秀雄のエッセイ集「感想」の広告である。ちなみに湘南探偵倶楽部の「初期創元推理文庫 作品&書影 目録 新訂増補版」に栞についてあたってみると、書影6P下の『創元推理文庫メモ』に「歯と爪」に挟まる栞についての記述あり。あぁ、これとおんなじヤツだ!
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posted by tokusan at 18:28| Comment(4) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする