2017年09月22日

9/22小型本家庭内比較浅薄論考

外出はしたのだが、雨に祟られてしまったので、古本屋さんに寄ることもなくスゴスゴと帰宅する。だが気分を落ち込ませることなく、濡れた服を着替えて始めたのは、昨日手に入れたばかりの、柿色市松模様の山本文庫を読み始めること。買ってから何度も優しく手にしているが、薄くて小さくて儚くて愛おしい小型本である。現代の通常の文庫本は、105mm×150mmほどが標準サイズだが、山本文庫は95mm×135mmと二回りほど小型なのである。いつかは同文庫にラインナップされている、佐藤春夫譯(本当は平井呈一譯)の「吸血鬼/バイロン」(本当はポリドリ作)を手に入れたいものだが、あからさまにド高嶺の花なので、今は我が手の文庫で我慢我慢…。ふと思うのは、昭和十一年刊なので、同時代の日本小説文庫や岩波文庫や新潮文庫は105mm×157mm〜159mmの、少し背の高いトールサイズが主流である。果たしてこの時代に、同じようなサイズの本は出版されていたのだろうか?そんなことを気にしてはみたが、今確かめる術もなく、また調査して掘り下げる真面目な探究心も、怠け者の私には湧いて来なかったので、ひとまずこの家庭内で浅薄に調査してみることに決める。よし、時代に関係なく似たサイズの本を集めてみよう。ドサドサ、ガサガサ、ゴソゴソと、いつものように疲労する本の山との闘い。だが今回の相手は、文庫山のみなので、比較的楽な展開を見せる。探し出したのは以下の本(豆本は除く)である。
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左上から昭和四十三年の「中学生傑作文庫」98mm×135mm、上段真ん中が昭和十一年「山本文庫」95mm×135mm、右上は大正十五年刊の復刻版「勞働放浪監獄より」95mm×131mm、左下は昭和二十一年の「手帖文庫」91mm×126mm、下段真ん中は昭和三十九年「黒い招待券」89mm×115mm、右下は平成八年の「角川mini文庫」86mm×111mmとなっている。どれも正式な用紙サイズに該当する寸法は見当たらない。無駄のない用紙裁断や、デザインなどの理由でしかるべきサイズに設定されているのだろうか…それにしても自由過ぎるではないか。また文庫より小さいと勝手に思っていた「アテネ文庫」は、薄いだけでサイズはしっかり文庫と同じであった。そりゃそうだ、文庫棚に収まってると、高さは変わらないもんな。蒼土社の「探偵小説文学撰」もちゃんと文庫本と同サイズだったか…。山本文庫に並んで貴重な文庫シリーズの「手帖文庫」は、イメージでは同じ大きさかと思っていたが、実は山本文庫より縦横ともに少し小さめであることが判明。この二種の小型本と文庫本とのサイズ感、しかと覚えておこう。いつ何時、古本市や古本屋さんで奇跡の如く出会うかわからぬのだ。あるかないかわからぬ背文字が超絶読み難いが、似たようなモノを見つけたら、そこは面倒くさがらずつまみ出し、しっかりチェックすることにしよう。そんな馬鹿なことをしていたら、外の雨が、ますます激しくなって来ている。途絶えぬ雨音を聞きながら、ひとつ正直に言っておこう。小型本は、文字が小さくて、夜だと読み難いなぁ。年かなぁ…。
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2017年09月21日

9/21バイトで足をガクつかせた後、95mm×135の小型文庫を手に入れる

今日は午後から「盛林堂書房」(2012/01/06参照)に付き添い、とある住宅街の中での買い取りを、荷運びバイトとして手伝う。ミッションは、車が一台しか通れぬ路地に盛林堂号を停め、アパート二階から四十本強の本束と二十箱ほどのダンボールを階下に運び、素早く積み込むというもの。私はバイトなので、階段を駆け上がり本を下ろし、また駆け上がり下ろしを、ひたすら繰り返す役目を担う。他の車が来ぬ前に、何とか短時間ですべてを終えねばならぬのだ!と早速作業開始。本束を二本〜四本手にして、ひたすら階下に運び下ろす。その間、幸い車は登場せず、自転車を一台通すために、少しだけ車を動かすに留まる。鉄の茶色い階段を、カンカンカンカン上がり下り。たちまち全身から吹き出す汗。だが、時間と盛大に闘っている今は、足と手を休めるわけにはいかないのだ。そんな風に歯を食いしばり頑張り、およそ三十分強で本束をすべて積み込むことに成功する。ここで一旦作業を中止して、ひとまず西荻窪に舞い戻り、本束を倉庫に入れた後、再び現場に戻ってダンボールを積み込むことにする。往復の復路車内で、アイスクリームでクールダウン&栄養補給を行い、今度はダンボール下ろしに従事する。こちらは二十分弱で終えることが出来たが、気付いたら腕はワナワナ、足はガクガクとなっていた…ふぅ、おつかれさまです。荷を再び倉庫に下ろした後「盛林堂書房」に立ち寄り、「フォニャルフ」に補充したりしながら、帳場脇で労いの和菓子に舌鼓を打つ。そうして午後五時には出来上がって来るはずの、盛林堂ミステリアス文庫新刊「怪人ジキル」を待ち焦がれるが、何だか搬入時間が遅れているようなので、諦めてお店を辞去する。陽が落ちるのが早くなった表は、もはや寂し気な秋の夕暮れ。段々と濃くなる紺の中を歩き、北側に抜けて「古書音羽館」(2009/06/04参照)へ。表で二冊をつかみ、ギシギシ賑わう仄明るい店内に身を滑り込ませる。お店の中で個人的に一番注目している、左側部屋左奥の古書棚に近づき、目新しい本や珍しい本がないか目を光らせる。するとパラフィンに包まれた、薄手で小型の背文字が読めぬ本が気になって、そっとつまみ出すと、おぉっ!市松模様(色はオレンジ)の山本文庫じゃないか!初版の平田禿木譯「蜜月・幸福/マンスフイルド」である。ドキドキしながら値段を見ると、歓喜溢れる500円なので当然ながらいただくことにする。毎日新聞社「夢の放浪者 江戸川乱歩/牛島秀彦」光琳社「VISIONS of JAPAN SHIBATA Toshio」とともに計1000円で購入する。レジでは奥から無理矢理身を乗り出した笑顔の広瀬氏としばしお話し。
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山本文庫が嬉しかったので、お店の前で記念撮影。帰りの車中で95mm×135mm・60pの蝶のように軽い文庫を開くと、たちまち昭和初期の世界文学の世界に没入してしまい、危うく阿佐ヶ谷駅で乗り越しそうになる。紙の蝶が何処かに逃げぬよう、両の掌に、隠してしまうように優しく挟み込み、バタバタと降車する。
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2017年09月19日

9/19八十の大人向絵物語が待ってくれていた

早い時間に上石神井に流れ着いたので、まだまだ余力の残る身体を動かし、そのまま『早稲田通り』の流れに乗って、家に帰ることにする。何百台もの車に追い越されながら、三十分ほどで『中杉通り』へと近づく。せっかくなので古本を買って行こうと立ち止まり、通り沿いの「古本ブック流通センター」(2008/08/09参照)のサッシ扉を右にスライドさせる。
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16年一月の雪の日以来の来店ではないだろうか…。相変わらず棚にはブランクが存在し、本も不動の構えを見せているが、店内はなんだかスッキリとしている。ちょこちょこと片付けたのだろうか。かつてない薄めの清々しさが、店内に漂っている…。奥から「いらっしゃいませ」と飛び出して来たご婦人店主と挨拶を交わし、既視感の強い棚を見ながら店内を一周する。だが、所々に小さな小さな変化あり!というわけで、中公文庫「マイアミ沖殺人事件D・ホイートリー」(解決編未開封)ひるぎ社 おきなわ文庫「オキナワ・マイ・ラブ/黒川修司」(京都から本土復帰前の沖縄に乗り込み、のらりくらりと腕を磨いたフォークミュージシャンの沖縄エッセイ集)を計200円で購入する。

家に帰るとレターパックの包みが郵便ポスト内に収まっていた。内容物は久々のライバルなきヤフオク落札品。部屋の中でボール紙封筒を引きちぎると、意外に大判の付録冊子が滑り出て来た。「家の光」昭和三十四年新年号付録「明朗お楽しみブック」である。表紙は獅子舞の大川橋蔵で、中身は芸能情報満載(スター俳優・歌手・落語家・漫才師・野球選手&相撲取りが大挙登場している)なのだが、西條八十のスリラー絵物語「奇怪な贈物」が掲載されているのだ。“八十ぐるい(2016/21/31参照)”の私としては、是が非でも手に入れたかった代物である。当初てっきり子供用の冊子かと思っていたが、よく考えたら「こども家の光」ではなく「家の光」の付録なのだ。中身は当然大人向けなのである。ということは八十先生の絵物語も大人向け!堂昌一の二色刷りのリアルなイラストが冴えまくる誌面に目を細めながら、四段組六ページの短く他愛無い物語を、綿菓子を食べるように楽しんで行く…。あぁ、どストレートな◯落ちとは、八十先生!
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スリラー絵物語の面目躍如。六ページ内に描き文字題字も含め、計13点の美麗なイラストが配置されている。調べるとこのお話、どうやら初出は昭和二十四年の雑誌「天馬」に掲載されたものらしい。こちらも絵物語だったのだろうか…?
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2017年09月18日

9/18地味に蒸し風呂のような部屋で蠢く。

台風一過で気温がグングン急上昇する中、家に閉じこもり『さすらいの十年展』の準備を進める。とにかくちゃんと展示しなければならないので、暑い部屋の中でそこら中を引っ掻き回し、思いつく限りの主だった物を手元に集めて行く。この時ばかりは、整理能力と分類能力が皆無の己を、独り言の悪態をついて呪いまくる。『確かあそこにあれがあったはずだな…』と大体の検討で本の山(色んな物が本の山と融合しているので、何かを探す時は、結局古本を探す時のように本の山を切り崩さねばならないのだ…)に挑み、失望と発見を阿呆のように繰り返す。そんなことをしていたら、たちまち五時間が経過していた。だがまぁ変な物(一見はただの紙くず!)がたくさん集まった。初期のフリペや、最初に「古本屋ツアー・イン・ジャパン」として世間に姿を現したリトルプレスは、なかなか見物である。とは言ってもこんなものを展示して、果たして誰が喜ぶのだろうか?やっぱり何だか気が重い…。
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すっかり埃に塗れた肺腑を清浄に復すべく、日射しの強い表に飛び出す。ヒタヒタ歩いて「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)。文藝春秋社「裸の王様/開高健」(三版)新潮社「南氷洋/きだ・みのる」(きだの南洋捕鯨船同船記)を206円で購入しつつ、店主・天野氏となかなか開かぬ古本を扱う新店について言葉を交わす。それだけで、ふうわりと心が軽くなり『展示がなんだ!』と奇妙な威勢が湧き上がって来る。古本屋ってやっぱり良い所だ。すぐさま家に戻り、再び奇妙な宝探しに没頭する。そんな今日の嬉しい発掘物は、深川の人形師・石塚公昭氏(人形を実景の中で撮影し、物故した人間を現代に召還する魔術師である)のオリジナル・ミニプリント群。江戸川乱歩・怪人二十面相・谷崎潤一郎・中井英夫・永井荷風・泉鏡花などをコレクションしていた。確か一枚千円くらいで、旧サイトや『東京たてもの園』のイベントなどで、ちょこちょこ買い集めた物である。左上の銀座上空をアドバルーンで逃げる二十面相は、ホント最高だな。いつかちゃんと額装しなければ…。
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2017年09月17日

9/17神奈川・石川町 るなぱあく古本街

東京ではさほど激しくなく、一定量でシャワーのように雨が降り続ける中、午後に外出。向かったのは、横浜の雨の馬車道で、地下から顔を出すと、改装中で封鎖された『県立歴史博物館』の威厳ある灰色の陰鬱な姿が視界に飛び込んで来る。そのまま伊勢佐木町に向かい、まずは「活刻堂」(2009年10月12日参照)に腰を据え、講談社「13の凶器」「13の密室」「13の暗号」三冊共に渡辺剣次編を計300円で購入する。そして時刻が午後四時に近づいたので、狭い横丁に飛び出して傘を開き、南東に向かってビルの谷間を歩き始める。目指すは寄せ場として有名な寿町の『寿町総合労働福祉会館』跡地で開催されている、劇団「水族館劇場」が企てた混沌とした野外イベントなのであるが、嬉しいことにその一環として古本市も開かれているのである。寿町で古本…まさに夢のような組み合わせである。台風接近のため人影の少ない街路を寂しく進み、羽衣町→不老町→翁町→扇町と、何だか昔話の世界に迷い込んだような町名を伝い、やがて寿町に至る。ビル化した現代的な安宿とコインランドリーと飲み屋が連続し、傘を差した老人が街角の所々に立ち尽くしている…確かに独特な雰囲気は今もって維持しているが、全盛期ほどの荒れた危なさは感じられない。町の南西に位置する福祉会館の跡地は、『安全第一』と書かれた工事現場用の塀にぐるりと囲まれ、さらに内部が工事用の足場や鉄骨で、武骨に荒々しく、俗っぽく言えば寺山修司or丸尾末広的見世物小屋空間として組み上げられ、どんよりとした雨空の下で、町からは完全に浮き上がった“ハレ”の日の空間として、堂々と怪しく存在していた。『盗賊たちのるなぱあく 娯楽の殿堂』と掲げられた入口ゲートの下には、すでにグッズや演劇の当日券を買い求める人々の列が、雨にも負けず出来上がっている。ゲートを潜り、礫と泥で出来た会場内に入り込む。様々なゲリラ的建築物には、鬼海弘雄のポートレートパネルが大量に貼付けられ展示されている。さて、古本市は何処で…と入って左方向に進んで行くと、左にはメリーゴーランドのような奇怪で巨大なオブジェがあり、すぐ下にはすでに池のように広がってしまった、暗褐色の大きな水たまりがある。その上を延びるようにして、三列のアルミニウム足場が橋として組まれ、その先には薄暗い空間を湛えたテントがあった。強い水気の中に古本の気配を感じ取り、ゆっくり慎重に足場の橋を進んで行くと、おぉ!やはりそこが古本市の会場だったのである。
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橋と同じくアルミニウム足場で作られた高床の足下三十センチは、すでに泥水に侵略された、水上古本市なのである!テント内は薄暗く、開かれた入口側以外は、棚や平台が置かれ、中央には背中合わせの本棚二本と古い冊子類や紙物の詰まったプラ箱が並んでいる。市としては小規模である。並ぶジャンルは社会問題・アングラ・サブカル・アウトロー・映画・和本・古い洋探偵小説雑誌・演劇・思想・ストリップ・性愛・日本近代文学・教科書類・田中小実昌など、奇怪な芯が通った世界である。だが、だが、何よりも、この台風が生み出してしまった、亜細亜バザール的空間がとにかくアナーキーで素晴らしく、上陸した瞬間からトキメキが止まらない!次々橋を渡って来る人も感嘆の声を上げながら、非日常的過ぎる空間の虜となって行く。たちまち混み合う会場。そんなお客さんたちと、池側では気をつけないと転落してしまうので、慎重に譲り合いながら、古本を細かくチェックして行く。その間に「古書 信天翁」(2010/06/27参照。店主・山崎氏は長靴を履き、池の中を自由に動き回っている!)「古書ほうろう」(2009/05/10参照)「古書 赤いドリル」のみなさんと、挨拶を交わす。普通の古本市だったら、台風接近の荒天は絶望的な状況なのに、皆一様に笑顔を浮かべ、この状況をマックスに楽しんでいる模様。なんと麗しい変わり者たち!いや、正直この奇跡の光景を生み出した、みなさんと台風と水族館劇場には、とにかく絶大なる感謝を捧げたい。今日来て本当に良かった!と喜びを噛み締めながら、嬉し過ぎ楽しみ過ぎて、会場を馬鹿みたいに三周はしてしまう。八雲書店「金泥/吉井勇」アルス「フレップ・トリップ/北原白秋」(白秋の樺太旅行記。昭和三年初版だが函ナシで口絵も二枚抜け落ちている。でもやっぱり嬉しい!表見返しには神保町「一誠堂書店」(2010/03/27参照)の古い古書店ラベルあり!)を計700円で購入する。
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再び橋をギシギシ渡り、泥と礫を踏み締めて、寿町の街路に舞い戻る。さっきより、雨と風が強くなり始めている。斜向いの角地ビル一階には、謎の酒屋があり、ちょっと怪し気な男女が嬌声を上げながらアルコールに酔い痴れている。途端にこちらもビールが飲みたくなるが、とてもその中に飛び込む勇気はない。水上古本市の興奮覚めやらぬまま、傘も差さずにワンブロック歩き、やたらと酒類の豊富な自動販売機で缶ビールを購入。グビグビ喉に流し込みながら、ようやく傘を差して元来た道をたどり始める。寿町→扇町→不老町→羽衣町と進み、ちょうど『国道16号』にぶつかったところで、缶ビールを飲み終わる。あぁ、台風の日の、夢の中のような古本市よ、さらば。この市は今日が最終日であった。
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2017年09月16日

9/16ネコジャラ市の11人!

怪し過ぎる空模様がどうにかもってくれたことに感謝しながら、お洒落な人があらゆる路地を闊歩する奥沢に流れ着く。自由が丘周辺であるこの地区は、どうにかしてパリになろうとしているらしい…。そして同時に、明日の「みちくさ市」が中止になったことを知り、ションボリ肩を落とす…いや、その分、用意した古本も情熱のすべても、10/1の「LOFT9 BOOK FES.2017」にぶつけるしかない!と気持ちを新たにしながら、奥沢駅の南側に出て久しぶりの「PINNANCE BOOKS」(2012/06/11参照)を楽しむ。
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相変わらず海外文学と絶版文庫が絶景である。講談社文芸文庫「熊野集/中上健次」を300円で購入してから、お洒落人で賑わいの増す自由が丘方面に足を向ける。ちょっと迷った末に「西村文生堂」(2013/09/10参照)に到着。
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ビニールシートで守られた雨仕様の店頭を抜けて店内に入ると、なんだかとても慌ただしい雰囲気である。店内二通路には本と箱が積み上がり、若い衆がたくさん集まり、表にそれらを運び出して行く…だが、準備中というわけではないようなので、お仕事の邪魔をせぬよう通路に入り込み壁棚を眺めるが、二十秒に一度「すいません」と言われ、背後で荷物が激しく行き交っている…これはイカンと、集英社世界の文学16「黒猫/ポー作 福島正美訳」を500円で購入して、そそくさと退散する。

阿佐ヶ谷に帰り着き、例の新店の様子をうかがうが、今日も開店していない模様。だがきっといつかは見られるだろうと、さほど気は落とさずそのまま北に進んで古道具屋の「J-house」(2015/12/26参照)前に差し掛かる。最近店内リニューアルを行い、入口を二つにして、左が骨董・古道具・アンティークで、右が玩具関連と変化したのである。その右側部屋に入ると、新顔としてA4サイズの紙芝居が十種弱置かれているではないか。ほとんどがディズニー物だが、エポック社ファミリー紙芝居アイドルシリーズ「ムーミンと魔法使」「ネコジャラ市の11人(脚本は井上ひさし・山崎忠昭・山元護久)」(ともに箱型の紙芝居舞台とソノシートは欠品)を見つけたので計千円で購入する。「ネコジャラ市の11人」は、1970年から三年間NHKで放送された人形劇。残念ながら私は記憶にまったくない。放映時は三才〜六才なので、恐らく一度は見たことがあるはずなのだが…。紙芝居の一枚目がテーマ・ソングで始まっているのだが、この歌詞が本当に素晴らしく、達観と諦念と潔さと不安が単純な語彙の中にせめぎ合い、読み進めるほどに涙がこぼれ落ちそうになるくらいビリビリきてしまう!調べるとNHKアーカイブに幻のオープニング映像がアップされていたので、ご興味持たれた方はぜひご一聴あれ!
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2017年09月15日

9/15さすらいの十年!

朝から諦めずに日曜の「みちくさ市」の準備を進める…台風なんかに、負けるもんか…。と同時に、しばらくほっぽらかしていた「フォニャルフ」補充の準備も進める。午前十一時に日射しが強くカラッとした空気を身に受け、駅前の銀行で市用の小銭などを捻出しつつ荻窪へ向かい、開店と同時に「ささま書店」(2008/08/23参照)店頭に到達。だが結局店内文庫棚から光文社日本文学選「酒ほがひ/吉井勇」を315円で購入する。そのまま西荻窪に向かい、途中神保町に向かう盛林堂・小野氏と出会ったりしながら、久々に「フォニャルフ」に補充する。一緒に引き返して来た小野氏とお店を出て、色々お話ししながら中央線で阿佐ヶ谷まで同道。「どう?展示の準備進んでる?」「まぁ展示する物はそれほど多くないし、近い日に搬入するつもりなんで。ポスターとチラシは作ったよ」……これはいったい何の話かというと、九月終りから十月上旬にかけて、恐るべきことに、今年でブログを開始して十年目に突入している私の展示が『東京古書会館』にて行われることになったのです!血迷ったか、東京都古書籍商業協同組合!私如き一介の市井人が、一体何を展示出来ると言うのか!と呆れ返りつつ戦きつつも、準備はカタツムリのようにジリジリと進み、焦りも大いに募らせ、早九月も半ばとなっているのです。恐らく私の人生で、最初で最後の展覧会となること必至なので、地下の古本市ついでに二階にも足を運び、鼻で笑っていただければ幸いです。10/7には展覧会開催を記念して神保町ツアーも行う予定なので、こちらも合わせてよろしくお願いいたします!ちなみにポスター&チラシは、林忠彦撮影の坂口安吾の写真を超えるべく、自演自作いたしました…。
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『古本屋ツアー・イン・ジャパン さすらいの十年展』
■9月30日(土)〜10月16日(月)
■10時〜17時 日曜・祝日休館
■東京古書会館 2F 情報コーナー 
■東京都千代田区神田小川町3-22
http://www.kosho.ne.jp

『小山力也と行く神保町体験ツアー トーク&ガイド』
■10月7日(土)
■最大12名 先着順 申込み制
■14時〜16時(予定)
■参加費1000円
■トークイベント(30分程度)後、小山さんに神保町を案内して頂きます。
※お申し込みは展覧会会場かこちらのホームページからどうぞ。http://www.kosho.ne.jp/tour/index.html

さらに午後二時過ぎになって高円寺を手ぶらで散策し、「ドラマ高円寺店」で光文社「新版 今日の芸術/岡本太郎」河出文庫「ジャンキー/ウィリアム・バロウズ」を計216円で購入し、『庚申通り』を北上して「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)では講談社「完全犯罪/加田伶太郎」を千円で見つけ、ささやかな喜びを抱く。
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2017年09月13日

9/13日曜の準備と打ち合わせ

早起きしたのを幸いに、日曜の「みちくさ市」のための古本準備を開始する。基本の骨子を組み上げて、後はあちこちの古本山から本を抜き出し、肉付け肉付け…そうして三時間ほどで、大体の形が完成する。ここまで漕ぎ着けてしまえば、後は微妙な入れ替えを繰り返しながら、クリーニングと値付けをすればいい。まぁその作業は、金曜辺りにするかと、一息入れる。日曜日、どうか台風が雨を降らせませんように。
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午後外出して神保町。普段通りにパトロールしているが、今日は「原書房」(2014/05/15参照)で岩波書店「田園銷夏漫録 並震後雜感/長岡半太郎」を300円で購入するに留まる。大正十三年刊の、物理学者が関東大震災の一年後に、神奈川・三浦で一夏を過ごす避暑随筆である。附録に「大震雑感」が付いているが、とにかく全体的に震災についての生々しい記述が多い一冊。そのたった一冊だけの成果を懐にして「東京古書会館」にてまたもや打ち合わせ。しばらくこちょこちょやっていたこちらについては、もうすぐ詳細が出せることになりますので、しばらくお待ち下さいませ!
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2017年09月12日

9/12東京・国立 丸信リサイクルショップ国立西店

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今日も国立に流れ着くが、だいぶ西寄りのほぼ立川との中間地点である。すでに空は夕暮れになるべくその色を、刻一刻と変えつつある。そして目の前には、三階建てのビルをお店とした、大きなリサイクルショップがあった…古本がありそうな予感…。駅からは南口に出て、中央線高架沿いを西にテクテクテクテク歩き詰め、『国立八小』の交差点を南へ。そして三本目の『国立音大附小』手前を再び西へ。500m弱進めば、スーパーに向かい合った左手に『激安販売』と看板に大きく書かれたお店を発見出来るだろう。洗濯機や冷蔵庫が並ぶ店頭から店内に進むと、家具や日用道具系が集まっている。たくさんいる定員さんの「いらっしゃいませ」を浴びるようにして、レジのさらに奥へ。すると右手に三段ボックスラックに、見事古本が入れられているのを発見!興奮しながら手を伸ばすと、和本・学術古書・美術図録・アメコミ・軍事系雑誌などである。むぅ〜、めぼしい本は見当たらないなぁ…唯一、安野光雅の1950〜1970年代の画集に食指が動くが、値段はしっかりめの千円が付けられていた。あきらめて棚に戻し、一旦店頭に出て右端の階段から、アンティーク&玩具&古道具が集まるらしい三階フロアを目指す。静かにゆっくり長い階段を上がると、そこには一階の半分ほどの店舗空間が広がっている。アンティーク・古雑貨・DVD・レコード・ゲーム・コミック・軍物関連…むっ、古本も少しだけあるじゃないか。写真家ユージン・スミスの図録もあるが、これも千円か…と色々諦めかけていると、軍物棚の下段に、四角い缶に詰められた500均の折り畳まれた地図を発見する。『明治時代から昭和の地図がたくさん!』と書かれているが、多くは国土地理院の地形図っぽい。だが、確かに古い戦前のものが多いな…と丁寧に探って行くと、おぉ!日本統治下の京城府の地図を発見!これが500円なら、大しためっけものだ!と己を褒めそやし、中央のレジでそそくさと精算する。十字屋(京城の地図屋である)「京城府管内圖」(昭和十三年五月五日発行、五萬分ノ一。裏は「仁川畧圖」一萬分ノ一)を購入する。

中央線沿いの屋根波を飲み込み、ビルの上だけに黄金の光が当たる、都会特有のマジックアワーに見蕩れながら帰宅する。そして買って来た地図を早速取り出し広げ、それに加えて韓国で出版された「京城の日本語探偵作品集」を古本タワーの中から探し出す。この本は、統治下当時に京城で出版されていた、日本語の雑誌に掲載されていた探偵小説を、複写復刻した探偵小説集なのである。もちろん中には東京や外国が舞台のものもあるのだが、これで京城を舞台とする小説は臨場感たっぷりに楽しめるはず!と期待に胸を膨らませ、地図と本に笑みを浮かべながら目を落とす。
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2017年09月11日

9/11勝手にそろい踏んでもらう。

今日は国立と国分寺の間に流れ着いたので、丘の上から栗畑の間の道を抜け、国立駅を選択する。ここから向かうべきは南口駅前の「みちくさ書店」(2009/05/06参照)である。おっ!入口側左の壁棚が、下部が角度を持ったお揃いの棚になっており、収納力と見やすさがアップしている。
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そんなことに気付きながら、細長い一階通路店内を行ったり来たり…奥で箱に入れられ売られている、小さな不気味な像たちは何なのだろうか?個人的には鯨に足を絡み付かせて頭にかぶりついている蛸の像がとても気になってしまう(蛸と鯨が大幅に絡み合っているので、なんだかちょっとクトゥルーっぽい…値段は千円)…。だがぐっと我慢して無駄遣いはせずに角川文庫「寺山修司青春歌集/中井英夫解説」を200円で購入する。他には何処も寄らずに家に帰りつつ、阿佐ヶ谷で新店の様子を伺うが、今日もシャッターが下ろされたままであった。だがまぁ、そのうちに巡り会えるだろう。

家に帰ってからは色々片付けつつも、昨日手に入れた蜂須賀侯の「密林の神秘」に夢中になる。挙げ句、あるひとつのことを思い付き、大事な本が集まる特別古本タワーから、二冊を抜き取り、記念写真を一枚。
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大好きな探検家たちを勝手にそろい踏ませてみたのである。左から大谷光瑞探検隊の独り別動隊・橘瑞超「新彊探検記」(大正元年)、真ん中が探検建築家・伊東忠太(日本建築のルーツを実見すべく、中国〜中央亜細亜〜欧羅巴と経巡る)「余の漫画帖から」(大正十一年三版)、そして「密林の神秘」(昭和二十九年)である。う〜ん良い眺め。この中には、目的の違うそれぞれの命を懸けた旅路が、何千、何万キロに及び収められているのか。あぁ、これにいつの日か、自転車旅行家・中村春吉の一冊(確か「武侠世界」の別冊みたいなので出ていた気が…)を加えられれば最高なのだが…。こんなバカなことをしてうっとりしながら、愚かで幸せな古本の夜は更けて行く。
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2017年09月10日

9/10緑色の古本に縁がある一日。

午後、友人の陶器展を見るために西小山へと向かう。道すがら、今日も阿佐ヶ谷の古本を扱うお店が開いていないのを確かめて、落胆しながらも西小山には直接向かわず、隣駅の武蔵小山で下車して二ヶ月ぶりの「九曜書房」(2009/03/26参照)にまずは寄り道。入口近くの500均棚にピタッと張り付き、すぐさま三冊を抜き出す。法政大学出版局「密林の神秘 熱帯に奇鳥珍獣を求めて/蜂須賀正氏」(カバーナシ)無明舎「最後のマタギ/朝日新聞秋田支局編」講談社「殿山泰司のミステリ&ジャズ日記」を計1500円で購入する。なんたって嬉しいのは侯爵の探検鳥類学者・蜂須賀正氏の著作が、500円で入手出来たなんて!と、カバーが無い故の緑の表紙をなで回しながら、高校グラウンド脇の小道で思わずスキップ!少し取っ付き難い、データ実見主義で独特な節回しの文章が、読み進めるほどに癖になる!足取り軽くそのまま西小山に徒歩で向かい、駅前商店街の「ハイカラ横丁まるや」(2015/02/18参照)にも寄り道。店内で店主と高校生が大橋巨泉について意見交換しているのに聞耳を立てながら、中央棚の奥側の棚脇で、雑誌列の中からとても良さげな一冊を発見する。これまた緑色の本の、大阪市動物園「大阪動物園アルバム」。昭和十一年の三版であるが、大阪市動物園の哺乳類〜鳥類〜爬虫類〜両生類〜魚類〜甲殻類までを、全56ページにモノクロ写真で収めた一冊である。『くろしやうじやう(チンパンジーである)』の人気者、リタとロイドが背広を着てクラシックなペダルカーに乗っている写真がワンダフル!1080円で購入する。たちまち鞄の中に収まった寄り道の収穫に、ウキウキしながら元カメラ屋の古びたギャラリーにたどり着き、本来の目的を果たしつつ、手に馴染んでくれたおちょこをひとつ購入する。
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「密林の神秘」口絵写真の蜂須賀侯爵尊影と「大阪動物園アルバム」。表紙もくろしやうじやう。一ページ目も樹陰に寝転ぶくろしやうじやうの群れの写真にトレーシングペーパーが重ねられ『樹蔭に嬉戯するくろしやうじやう』の言葉が刷られている。この当時はくろしやうじやう、つまりはチンパンジーが一推しの動物だったのだろうか。
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こちらがリタ&ロイド。調べてみると『天王寺動物園』には人気者だった二頭の象が建てられているとのことである。
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2017年09月09日

9/9当てが外れたので「銀星舎」でダベる。

今日はわりと早い時間に荻窪北の天沼辺りに流れ着いたので、「ささま書店」に寄って行こうかと考えるが、実は最近阿佐ヶ谷に古本を扱うお店が誕生したらしいので、そちらに大いに期待して、方向感覚を狂わせがちな迷路のような住宅街を擦り抜けて阿佐ヶ谷方面へ向かう。だが、そのお店はやっていなかった…昨日もやっていなかったが、土曜日に営業しないのはどういうわけなのか…こんなことなら「ささま」に寄って、店頭棚にかぶりついておくべきだった…。哀れにも後悔先に立たず!すっかり当てが外れてしまったので、慰めてもらうようなような心持ちで「銀星舎」(2008/10/19参照)へと向かう。角川文庫「カクテル・パーティー/大城立裕」を400円で購入し、奥さま店主と、火曜日が定休日になったことや、二万五千円の宮澤賢治の生徒たちの話を集めた本や(う〜〜〜〜〜ん、とても欲しい…でも、でも、二万五千円か…)、昨今の古本屋事情やamazon事情や、飼っている天才猫などの話題に花を咲かせる。

家に戻ってからは、仕事その他をおっぽり出し、いよいよ大詰めになってしまった黒白書房「トレント最後の事件/E・C・ベントリイ作 延原謙作(本扉には“譯”ではなく“作”と書かれているのだ。当時の価格は1.5円!)」を最後まで読む。ぐむぅ、探偵小説なのに、なんでこんなに切ない思いが胸に込み上げてしまうんだ!途中から探偵トレントが、衝撃の◯の告白をしたり、まさか英知の結晶である推理力が◯◯するなんて!二〇一七年九月九日午後六時十四分、読了。紛うことなき名作であった。読み終わってからこの松野一夫挿釘の函を見ると、読了時の感動と心地良さが、何度でも胸に去来してしまう!ありがとうベントリイ。ありがとう延原謙。ありがとうトレント!
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2017年09月07日

9/7あぁっ!

今日は経堂の南に位置する、桜辺りに、すでに日の暮れた午後六時過ぎに流れ着く。ちょっとした高台から下り、駅方面を目指しつつ、それならば「大河堂書店」(2009/03/26参照)を急襲して行こうとほくそ笑む。だが、お店は木曜定休で、見事なまでのシャッターアウト。仕方なく北口に足を向け、『すずらん商店街』をゆるゆると遡上して、夜の「遠藤書店」(2008/10/17参照)にたどり着く。
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一日中雨模様だったため、表に長テーブル均一台が出ていないのが何とも残念である。というわけで主に文庫に狙いを付けた結果、古く背が高めの岩波文庫「眞景累ケ淵/三遊亭圓朝」を180円で購入する。駅に引き返して小田急線各駅停車に乗り込み、車内で買ったばかりの怪談を読みつつ新宿駅。文庫を手に持ったまま、人差し指を栞代わりに軽く挟み、地下から連絡改札を抜け、中央線の12番線ホームに顔を出す。ちょうど中央線快速が滑り込んで来たところだが、ちょっと遅れているらしく、車内はたちまち人間の身体的縄張りを度外視したラッシュ状態と成り果てる。う…む、これではとても読書の続きは出来そうにない。だが、とにもかくにも早く帰りたいので、入口近くにかろうじて身体を潜り込ませ、発車を今か今かと待ち焦がれる。その時、ひとりの女性が慌てつつ「すいませんすいません」と連呼しつつ、私の横にある隙間に身体をグリグリ捻入れて来た。そして収まった瞬間、身体を勢い良く反転させ、外に向かっての正対を試みる。その時左に抱えていたハンドバッグが、私の文庫を持っていた手を痛打!たちまち軽く握っていた文庫ははたき落とされ、身体をなぞるように滑り落ち、ホームと電車の間にスローモーション映像で、消えて行った…。「あぁっ!」車内で思わず叫び声を上げた瞬間、周りの視線が集中すると同時にドアが閉まり、電車は急速にスピードを上げ、中野駅へと向かって行った…。と言うわけで、新宿駅12番線ホームに落ちている岩波文庫「眞景累ケ淵」は、私の本なのであります…スマン、初代圓朝。まだ10ページまでしか読んでいなかったのに…。
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2017年09月06日

9/6阿佐ヶ谷で早稲田の「萩原書店」を知る。

今日はある原稿に腐心しなければならないのだが、その前に古本を買って心に平穏を充満させておこうと、午前のうちに新宿へ向かう。JR駅から地下道を通り、さらに深い場所にある『サブナード地下街』に流れ込む。まだ開いたばかりの、きらびやかさしかないショップの間を抜けて行くと、スクエアな地下広場の隅に、たくさんの古本ワゴンと早速そこに群がっている、頼もしい同志たちの姿が見えた。今日から出店店舗を入れ替え始まった「古本浪漫洲Part3」である。署名本コーナー・映画DVDコーナー・100均コミック&単行本・500均ワゴンが際立っている。結構真面目に立体的に重なる古本を動かし背を確認しまくる。結果、500均ワゴンから晶文社「対談 植草甚一」を、100均ワゴンから扶桑社文庫「二十世紀鉄仮面/小栗虫太郎」「真珠郎/横溝正史」を見つけ出し、計700円で購入する。

さぁ、古本も買った。後は家で原稿を…というのが正しい人間の在り方であるが、『もうちょっと買いたいな』と興が乗ってしまい、そのまま荻窪へ直行して月曜日に訪れたばかりの「ささま書店」(2008/08/23参照)へ。だがさすがに、定休日を挟んでの連続訪問では、そこまで棚に変化が起きているわけがない。珍しく何も買わずにそのままトボトボ阿佐ヶ谷へと戻ることにする。そんな帰り道の「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)で店頭棚を定点観測していると、入口右横のコミック&新刊&カルチャー系103均棚に、薄手の冊子が散見されるのでマメにチェックして行く。するとその内の一冊、冗談エクスプレス「畸人研究16号」が『古本道』をテーマに特集を組んでいるではないか。今柊二氏の妄想古本屋や全国さすらい古本日記(半分は今氏らしく食べ物の情報である…)などが載っているが、一番興味を惹かれたのはその表紙であった。小さな間口の狭い古本屋の写真が真ん中にレイアウトされ「実に古本屋らしいたたずまいだった萩原書店(早稲田・今はない)」と書かれている…知らない書店だ。
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というわけでこの冊子を購入し、家に帰って「萩原書店」について調べてみると、2001年7月発行「全国古本屋地図21世紀版」には『早稲田通り』北側の「金峯堂書店」(2010/10/19&2012/04/06参照)と「西北書房」の間にあった、一般書のお店として掲載されている。ということは、この「畸人研究」が2002年の12月発行となっているので、およそ一年の間に閉店してしまったわけか…。写真を見る限りでは、小さな店頭には台上にも足元にも雑然と本が積み上がり、かろうじて両脇の細い書棚に、早稲田らしさが見て取れる(お店の両脇に立て掛ける細い本棚、早稲田古本街ではスタンダードだったのだろうか?)。…この小さなお店に、入ってみたかった。今はただただ、お店の貴重な写真を撮ってくれていたことと、それを表紙に使ってくれたことに感謝するのみである。
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これは「萩原書店」について調べていたら偶然本の間から見つかった、「早稲田古書店案内図」。68mm×180mmの短冊型で、恐らく昭和四十年代前半のものと思われる。バス停名が『戸塚』になっており、「古書現世」(2009/04/04参照)はまだ誕生していない。
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2017年09月04日

9/4一日雌伏する予定

本日は些事をこなしたり、様々な準備を進めるために家に閉じこもるつもり。九月終り〜十月初め辺りに、あるおかしなことを行う予定なので、詳細が決まり次第お知らせいたします。だがやはり、閉じこもる前に古本は入手しておこうと、「ささま書店」(2008/08/23参照)開店時間参りにペタペタと出かける。午前十一時半過ぎの店頭は雨仕様で、先客はひとりのみ。素早く本の背に目を走らせ、背のない中綴じ本は抜き出し確認したりしていると、あっという間にお客さんが集まり始め、人影が少なかったのは束の間で、たちまちいつもの賑わいである。東京創元社「創元推理21 特集◎祝・百歳 渡辺啓助/温」平凡社「乱歩の時代」特別付録「犯罪圖鑑」晶文社「アメリカの鱒釣り/リチャード・ブローディガン」角川書店「雲のいる空/吉行理恵」(タイトル描き文字も含め金子國義の装幀に吸い寄せられる一冊)を計420円で購入する。外に出たらさっきまでの霧雨が本降りとなり、見事な濡れ鼠になって家へと戻る(古本は全力で死守!)。さぁ、がんばろう!
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そして大阪「梅田蔦屋書店」での「夏の古書市2017」にお越しのみなさま、短い間でしたが誠にありがとうございました。市は昨日無事に終了しましたが、売場がまた元のサイズに戻りつつも、引き続き『古本屋ツアー・イン・ジャパン』の古本コーナーは継続いたしますので、ふと思い出した時にでも、ぜひお立ち寄り下さい。売れた本リストが先ほど届いたのですが、まだまだ良書も駄本もたくさん残っていますので、よろしくお願いいたします!
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2017年09月03日

9/3下北沢の古本屋さんは殊更混んでいた!

今日は代田辺りに流れ着いたので、そのまま住宅街を縦横に抜けまくり坂を下ると、そこはいつもの下北沢の賑わいプラス、秋祭りで神輿が担がれる祭礼の賑わいで大混雑の南口商店街の尻尾であった。着飾った若い男女と、法被を纏った老若男女。そしてその間を、片足に茨の刺青を入れたミニスカートの外国人女性が、颯爽と闊歩して行く…。突然見知った街並に接続出来た驚きと、いつでも“ハレ”の場である街が、さらにパワーを増して完全なる祝祭空間と化しているのに圧倒されながら、神輿を避け人ごみを擦り抜け、遠目に店頭に人が鈴なりになった「古書ビビビ」(2009/10/15参照)を眺め、愛しの「ほん吉」(2008/06/01)へと向かう。うわっ!こちらも、店頭も店内も人で一杯じゃないか!と大いに面食らいながら、何だか古本市のように人の背越しに、店頭棚に視線を血走らせる。するとすぐさま新潮社「野獣死すべし 復讐篇/大藪春彦」(箱付き初版)を発見出来たので、それなりに満足して早々にレジに並んで100円玉で精算する。

「野獣死すべし」と言えば、思い出すのはやはり角川映画の村川透監督・松田優作主演の映画である。だから主役の伊達邦彦は、頭の中では永遠に松田優作として定着してしまっている。原作発表当時に近い、仲代達矢主演のモノクロ映画「野獣死すべし」(こちらの方が原作に忠実でピカレスクロマンとしても傑作の部類である。仲代がかなりコワイ)もあるのだが、やはり松田優作が日本映画に変革を起こすべく、全身全霊を込めて挑んだ角川映画の方が、私の中では優位なのである。日本に、正真正銘本物のハードボイルド作品を誕生させるべく、主演作品ごとに常に大奮闘する優作。だが、松田優作が本気になればなるほど映画は歪み(「野獣死すべし」では、当初伊達邦彦(原作の眉目秀麗な青年とは違い、街の片隅でひっそりと生きる男を想定)を演じるために、足を切って身長を低くしたいと願ったのだが、どう考えてもそれは無理なことなので、奥歯を抜くことで我慢した…)、本人の崇高な意志とは別に、何故かコメディ要素を胚胎してしまうのが、大いなる魅力のひとつとなっている。角川映画前作の「蘇る金狼」も、愉快な共演陣にとても楽しくすべてをぶち壊されていたが、「野獣死すべし」もまた例外ではない。相棒を演じる鹿賀丈史の危な過ぎるキレやすいアフロヘアキャラ。ヒロイン小林麻美の粘着的過ぎる喋り。伊達を勘だけで追いかけるしつこい刑事の室田日出夫。そして絶対演じるのに無理のあった、東大同級生の阿藤海と風間杜夫…。これらがなければ、恐らく優作理想の映画に近づいていたのかもしれない。だが、この綻びてしまったところが、残念ながらこの映画の輝きであり、優作自身が映画の中でひとり浮いてしまうところが、優作作品の絶大な魅力なのである。などとツラツラと思いながら、昭和三十五年刊の本を抱え、下北沢から浜田山まで移動し、すぎ丸に乗って帰宅する。
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賑わう「ほん吉」前にて。
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2017年09月02日

9/2昭和初期の本は私にとって麻薬である。

今日も疲労を抱え込み、成城の奥地に流れ着く。午後六時を過ぎると、辺りはもはやトワイライトで、日に日に陽が短くなっているのを実感してしまう。トボトボと駅への道をたどって行くと、やったぁ!まだ「キヌタ文庫」(2009/10/25参照)が頼もしく営業中じゃないか!
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と感謝しながら、表の200均単行本ワゴンから一冊掴み、店内に滑り込む…おや、帳場にいるのは初めて見る痩身中年の男性である。なんだかいつもより明度が高いような店内を、ゆるゆるとチェックして行く。すると左端通路の映画演劇関連棚で、少し背の傷んだ古い本を発見する。そっと取り出すと、昭和九年刊の第三書院「レヴユウ王コクラン自傳 見世物談義/中村秘一譯」と言う本であった。
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すかさず後見返しの値段を見ると500円。この独特の、昭和初期のきめ細かく重い紙の感触!活字を読む以前に、それに触れ、どっしりとした重さを味わうだけで、心はすでに本が出版された時空に、勝手にコネクトされてしまうのである。…あぁ、何故私はこんなにも昭和初期の本に、いとも容易く虜になってしまうのだろうか。その時代が好きだと言うのもあるのだが、恐らくは、決して手も身体も心も届かぬために、恋い焦がれている心が焦げ焦げ状態の過ぎ去った時代を、かろうじて味わうための健全な、私にとって必要な麻薬なのであろう…。さて、落ち着いたところで、店内でしばしページを紐解いてみる。十九世紀終り〜二十世紀初頭に米欧で活躍した、大興行師の自伝である。ショウマン・サーカス・レスラー・ボクサー・歌手・俳優、果てはマルクス兄弟までを奇跡の剛腕で呼び寄せ競演させる、ワールドワイドな呼び屋のお話が目白押し。おぉ!ジャック・デンプシー(日本ではボクシング漫画『はじめの一歩』で有名な技、“デンプシー・ロール”の始祖として有名である。後年はパンチドランカーになりながらもレストランを経営)についても載ってるぞ!と大喜びし、国書刊行会「オールバックの放送作家/高橋洋二」と共に計756円で購入する。帰りの車内は「見世物談義」を読み込み、すっかり百年前に気持ち良く没頭してしまう…。
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2017年09月01日

9/1東京・東京 TRAVELLER'S FACTORY

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今朝届いた、書皮狂の帰山健一氏が発信するメルマガ『本棚の溜息』で、東京駅のお店で古本が売られているのを知る。なので中野で所用を済ませた後、中央線で一直線に東京駅へ向かう。三階のホームから長いエスカレーターを下り、さらに地下一階へと向かい、『丸の内地下北口改札』を抜ける。すると直ぐ右手に、落ち着いた色合いの木材とガラスと花崗岩パネルで形作られた、シックでお洒落なミニ地下商店街が現れる。フラフラと近づいて行くと、手前右手が件の目指すお店であった。主に“旅”をイメージした統一感のある文房具類や雑貨を扱っているようだ。古本はレジ横の右壁奥隅に固まっているのだが、その棚が余りにも独特なので、つい笑顔が綻んでしまった。壁に錆びたレール二本と枕木が打ち付けられ、その上に本を並べた棚が貨車のように連なっているのだ。線路の幅は五十センチもないので、かなりの狭軌と言えよう。こんな素敵にやり過ぎたディスプレイは、「古書 赤いドリル」(2010/06/23参照)の旧店舗内にあった、侘しい昭和の街路を再現するための黒電柱と笠外灯以来ではないだろうか…。九台の貨車には、単行本と文庫本がほぼ交互に並んでおり、ヴォネガット・ブコウスキー・ブローディガン・シェパード・植草甚一・片岡義男・旅・紀行・旅情・自然・東京などが並び、透明感のある選書が為されている。文庫は300円〜600円くらいで、単行本も手頃な価格設定である(中にはプレミア値あり)。店内には若いお客が次々と吸い込まれ、それを若くお洒落な男女店員が接客して行く…なかなか人気のお店なのだな。岩波文庫「東京日記 他六編/内田百閨vを購入する。「八重洲古書館」(2008/07/03&2012/07/27参照)と「R.S.BOOKS」(2012/11/19参照)が閉店して以来、潰えていた東京駅の古本の灯りが、また復活する日が来るとは!小さいながらも、ここで古本を買って旅立てば、その旅は一層滋味深くなり、また有意義に暇も潰せることになるであろう!

帰りに高円寺で途中下車し「藍書店」(2014/01/14参照)の外壁大棚にへばりつくと、最下段に背のない大量の映画パンフが詰め込まれているのに気付く。その背群の所々に、明らかに紙質の違う古めのパンフが混ざり込んでいるので(とは言っても七十年代)、しゃがみ込んで一冊一冊夢中になって確認する。気になるものは取り出して地面に積上げて行くと、たちまち十冊以上になってしまったので、そこからさらに厳選。「アメリカングラフィティ」「デルス・ウザーラ」「フレンチ・コネクション」(これが一番嬉しい!)「オリエント急行殺人事件」「地球最後の男オメガマン」を計500円で購入する。

そして大阪「梅田蔦屋書店」での「夏の古書市2017」も、早いもので残すところ今日も含めて後三日!未見の方は、どうかカフェの壁面に並ぶ奇妙なセレクトの古本群を眺めに、ご足労ですが九階まで足を運んで下さいませ!

そしてさらに九月の「みちくさ市」にも大はしゃぎで出店いたしますので、9/17のもはや秋となる日曜日に、古本を介してお会いいたしましょう!
『鬼子母神通り みちくさ市』
■2017年9月17日(日)11:00〜16:00(雨天中止)
※当日8:00に天候による開催の有無を決定します
※みちくさ市本部 携帯電話:090-8720-4241
■雑司が谷・鬼子母神通り 東京都豊島区雑司が谷2丁目・鬼子母神通り周辺 東京メトロ副都心線・雑司が谷駅1番出口または3番出口すぐ
■お問合わせ
michikusaichi●gmail.com(●をアットマークに変えて送信してください)
みちくさ市本部 携帯電話:090−8720−4241
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2017年08月31日

8/31よるのふるほんや

八月三十一日、夏休みの終りの日である。そんな学生的夏休みから離れること、早28年。かなりの疲労を背負って夜の三鷹に流れ着いてしまう。体力ゲージはゼロ。古本を求める心のゲージももはや一桁代なのだが、ここで流されて尻尾を畳んでは“古本屋ツアー”の名が廃る!とどうにか夜の「水中書店」にたどり着く。
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實業之日本社「鴎外文學/日夏耿之介」を100円で購入する。総武線に乗り込んで阿佐ヶ谷駅に帰り着き、いつものように「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)に立ち寄る。
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平凡社「古本屋の女房/田中栞」文春文庫「星の王子とわたし/内藤濯」講談社大衆文学館「奇想小説集/山田風太郎」を計109円で購入する。

ところで夜の古本屋さんは、なぜこんなに心を暖かくさせてくれるのだろう。そんなことをちょっと考えながら、古本を背のリュックに詰めて、トボトボと家路をたどる。昼間の店内は外より薄暗いのだが、夜は外の闇より遥かに暖かみを持ち明るい。それはまるで、登山道を登る途中の山小屋のようであり、帰り着くべき暖かい家庭のようであり、上映前の映画館館内のようであり、水族館の水槽を覗いているようでもある。それは店内に、外界とは違う確かな空間が存在する証拠であり、さらにそこから本と言う触媒を経由して、あらゆる世界の深淵にコネクト出来る可能性が秘められているためだろう。あぁ、なんだか今日はすっかり秋の気配である。
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2017年08月29日

8/29「地球堂書店」は寸分変わらない

今日は昼間の立川に流れ着く。ちょうど廣池秋子の文芸作品(残念ながら推理小説ではない)、戦後直ぐの立川が舞台の「愛と憎しみの街」をポツポツ読んでいるところなので、何かリンクする景色に出会えると思ったのだが、街は想像以上に変化発展しており、何の予備知識もない今の状態では、見事な直線の街割にしか、当時の面影を感じることは出来ない。たくさんのガードマンが早くから警備する『立川競輪場』近くから、住宅に挟まれたその真っ直ぐな細道を北へ向かう。『立川通り』に出ると、ちょうど横断歩道の向かいに、貴重なモルタル看板建築の「地球堂書店」(2008/08/30参照…ということは、ほぼ九年前の今日、このお店に初めて訪れたわけか…)が、もう何年も前から(いや、もっともっと以前から、この整然として静かな動かぬ状態なのかもしれない…)、寸分変わらぬ姿で建っていた。今日は特徴ある木製台には何も陳列されておらず、ただ大きな餅のような薄い白い直方体が、ペトリと置かれている。入口側の両壁棚を、大量の茶紙がゾロリと覆い、まるで古本屋とは異なる光景が出現している。
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帳場には誰もいないが、静かなパラフィン包みの本に囲まれた店内に入るとチャイムがピロピロ鳴り響き、いつの間にか髪をひっつめた女将さんが、帳場に横向きに座っていた。店内には入ったが、何も買わないつもりである…いや、正直に言おう。何も買えないのだ。だから一通りパラフィン越しの背を眺めただけで、静かに退店しようと思っていたのだが、棚最上段の大型本を取り出した時にアクシデントが発生。高過ぎて棚にうまく戻せないのだ。すると見兼ねた女将さんが「大丈夫ですよ」と笑顔でバトンタッチし、ヒラリと棚下の平台に飛び乗って、本を見事に戻してくれた。お手間かけてしまった…これは何か買わなければ…と言うわけでカッパ・ホームズ「この愛いつまでも/加山雄三」を350円で購入する。…まぁ、こんなこともたまにはあるだろう。さらに帰り着いた阿佐ヶ谷では「千章堂書店」(2009/12/29参照)の右側100均単行本台から桃蹊書房「年刊創作傑作集 第一篇/日本文藝家協會編」を100円で購入する。

夜になって再び家からペタペタ飛び出し、文芸寄りフォークミュージシャン・世田谷ピンポンズさんのワンマンライブ『都会、なんて夢ばかり』が開かれる『ザムザ阿佐ヶ谷』へ。当日券を求めて地下への階段を下りると、すでにかなりのお客さんが階段状の桟敷に座っているが、幸いにもチケットを手に入れることが出来、履物を脱いで会場に来合わせていた岡崎武志氏&山本善行氏古本黄金コンビの横に腰を下ろす。午後七時半から休憩を挟んで正味二時間強続いたフォークライブ。世田谷ピンポンズさんは、くどいと形容するのが相応しい演出とMCで会場を湧かせながら、初期の吉田拓郎を彷彿とさせるスタイルで歌うのだが、それはフォークと言うよりは、まるでフォークから脱却するために、常にもがいているようでもあった(しかも一曲一曲がパンクミュージックのように短くて潔い)。消え入り控え目そうなルックスとは裏腹の、魂を引きちぎって投げつけるような、驚くほど堂々たる低音の歌声は、聴き入る魂をビシリと客席に釘付けにする。フォークだから“ノスタルジー”というわけでは決してなく、まるで現代の都会の片隅の情景を、モノクロ写真でスナップしたような、奇妙な新鮮さor違和感を、その短い曲の間に、常にざらりと感じさせてくれるのだ。とにかくそれほどひねくれていて、ちょっと変わった現代的な、遅過ぎて大遅刻のフォークシンガー。興味ある方は、ぜひとも一度接触してみて下さい。
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この写真はライブ終了後の阿佐ヶ谷で、午後十時過ぎの路地裏に浮かび上がる岡崎&善行親友コンビ。この後仲間を引き連れて、夜のカラオケ大会に向かいましたとさ。
posted by tokusan at 23:48| Comment(2) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする