2021年06月23日

6/23春陽堂の洒落たマーク。

激しいアジアのスコールが大地を洗い流した後の保谷駅の南に流れ着いたので、当然駅近くの「アカシヤ書店」(2008/12/17参照)に足を向ける。いつ何時、雨が降るかわからない空模様なので、店頭百均棚は店内通路に引っ込められている。というわけで手動ドアを開けて入口前に陣取り、百均棚を検分する。上から下まで見た後に、下から上まで見逃しが無いかどうか確認してから、二冊を掴む。そして本来は入口横の百均ストック横積みゾーンにも探りの手を入れたいのだが。今日はその前に店頭棚が置かれてしまっているので、深く掘ることが出来ない。仕方なく表層だけ見てから、背後のそれほど動きのない百均壁棚に意識を移す。すると最下段の端っこに古そうな深緑のクロース装の本を発見する。引き出してみると、明治四十年刊の春陽堂「黒風 後編/田口掬汀」という本であった。カバーもなくて後編だけだが、明治の小説にここで出会えるとは!折り込み口絵は鏑木清方だろうか?(後で「黒風」について調べてみると、国立国会図書館のデジタルアーカイブで前編が公開されているのを発見。だが、悪夢のように恐ろしく不鮮明なコピーなのであった…)リブロポート「血と薔薇のフォークロア/栗本慎一郎」寶文館「世界英傑巡禮/海軍中将・山本英輔」(献呈署名入り)を計330円で購入する。その後は西武池袋線で中村橋に出て、「古書クマゴロウ」(2018/03/21参照)を楽しむ。新書館「赤糸で縫いとじられた物語/寺山修司」(1979年刊初版帯付き)を1500円で購入し帰宅する。
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これはふと気付いた「黒風」表4にある浮き彫りマーク。『春陽堂』の漢字“春”と頭文字の“S”を、アール・ヌヴォー風に巧みにお洒落に融合デザインしているのである。グッドデザイン!
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2021年06月22日

6/22イレギュラーズで再訪・森英俊氏邸!

正午前に「盛林堂書房」(2012/01/06参照)の小野氏と荻窪で待ち合わせ、“盛林堂・イレギュラーズ”となり、レンタカーで軽ワゴンを借りて、すぐさま出発。目指すは都内某所の、ミステリ評論&翻訳家の古本神・森英俊氏邸。氏の「まんだらけZENBU」の連載『貸本小説に魅せられて』(主に昭和三十年代に活躍した貸本小説中心の出版社を、出版社別にミステリ&スリラー&大衆&時代&明朗小説を解説することで紹介して行く、壮大な書評連載)で、資料として使い終わった本の買取と、盛林堂がある本のために資料として使用する、稀少な雑誌を発掘し借り受けるための出動である。どこも渋滞気味で、やけにパトカーの多い道々を乗り越え、小一時間で現場着。私は「本の雑誌」の巻頭グラビアページ『本棚が見たい!』の取材同行時に続く、二度目の訪問である(2016/10/11参照)。森氏に迎え入れられ、まずは玄関脇の部屋に通されると、質の良い本がすでに横積み準備され、かなりの絶景を生み出している。続いて縦長の大型セダンが縦に二台並ぶほどのガレージに入ると、驚異のジュニア探偵小説壁が、王者の如き偉大さと完璧さで、相変わらずの偉容を誇っていた…い、いつ見ても古本魂が震えっ放しになる棚だ……様々な人が血眼になって探している本が大量に並んでいるのだからしょうがない……。
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そんな棚のある通路で、本を移動させて作業スペースを作ったり、ダンボール箱を発掘したり、大量の貸本本を玄関に積み上げたりと、ワチャワチャ動き回って過ごす。このガレージは本は大量にあるが、基本的には整理整頓が行き届いており、カオスに振り回される煩雑さは皆無なので、スムーズに作業は進行して行く…棚のあちこちに目を奪われながら…水谷準のジュニアもの「黒面鬼」…西條八十の東光社版「悪魔博士」…同じく東光社の『少年少女最新探偵長編小説集』が列に…島村出版の香山滋「ゴジラ東京大坂編」があんなところに横積みに…あぁ!右のコンテナ物置を見ると、帯付きの梶龍雄が大量に!なんだ、この見たこともない横溝正史のコミカライズ詰ダンボールは!…さりげなく固まっている箱入りの優良児童文学ゾーンもヨダレもの…足元にサンヤングシリーズが土台の如く大量に!などとやりつつ、二十本の本束と十ほどのダンボールをワゴンに積み込み買取作業終了。無事に資料雑誌の詰まったダンボール箱も発見し、およそ二時間半ですべての任務が完了となる。そして森氏から「これ、今日のお土産に」と貸本仕様のポプラ社「母よぶ瞳/北條誠」を拝受する。「こんな表紙ですが、北條の少女ミステリーです。落丁が二枚ほどあるので、国会図書館でコピーして補って下さい」と説明を受ける。り、了解しました。ありがとうございます!コピーでしっかり補完してから読むべきか、落丁していても想像力で補い読むべきか…それが問題だ!
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2021年06月21日

6/21やはり「のんき」に買いに行く。

午後に不要本や読了本をまとめ、エッチラオッチラ「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)へ運び込む。帳場に座る店主・天野氏に「ご無沙汰してます」(営業再開後に会うのは初めてだった)と挨拶しながら持って来た古本を渡そうとすると、彼は老人くさいステッキを頼みにして、ユラリと立ち上がった。「ど、ど、ど、どうしたんですか?あっ!またスケボーで怪我したんですね」と言うと、「そうです。足にヒビが入ってます。どうぞブログのネタにしてください」と自虐的返答が返って来た。側にいる奥さまも、ナイスな諦め顔の笑顔である。全治一ヶ月半だそうだが、まったく、この人がいつもどんな大技を決めようとして負傷するのか、一度見てみたいものである。何はともあれお大事に。ところで「開店十周年ですね。まだなにもやらないのですか?」と聞くと、すでにデザイナーさんに記念グッズの発注はしているのだが、忙し過ぎるのか何の音沙汰もないとのこと。とにかくグッズが出来次第、記念キャンペーンは始めるそうである。すでに買取査定待ちの店内で、記念グッズを入手出来る手頃な値段の本に目を付けておいたので、それらが売れてしまう前に、早くキャンペーンが始まって欲しい!そんなことを思いながら、創業十周年のお店を後にする。そのまま荻窪までトボトボ歩き通し、「古書ワルツ荻窪店」(2020/07/30参照)で宝石社「別冊宝石 島田一男読本」彰国社「ライトの遺言/フランク・ロイド・ライト」(函ナシ)を計220円で購入する。そして普段ならこのままトボトボ歩いて阿佐ヶ谷に引き返すところだが、今日は意を決して電車に飛び乗り吉祥寺へ。高架沿いに歩き進み、「古本のんき」(2021/03/30参照)にたどり着く。この前を目を付けた本が、やはりどうしても欲しくて欲しくてたまらなくなって、買いに来たのである(こんなことばっかだな…)。手指を消毒して店内に進み、一応他の棚も見ながら、ほぼ帳場正面の建築・美術関連の棚を見上げる…おぉ、一昨日見たままに、あの本がある!と即座に手を伸ばし、その本に手を掛ける。日本評論社「農村更生叢書 農村家屋の改善/今和次郎」である。くるりと踵を返し、アクリル板が張られた帳場に差し出して、2000円で購入する。考現学者で建築家で民俗学者の大家の、農村家屋の伝統性と時代に合わせた利便性を追求する、簡素な新書サイズの指南書である。昭和八年刊でカバー付き。そしてこれがなんと、献呈署名入りなのである!
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考現学の泰斗・今和次郎の署名!尊敬して止まない、フィールドワーク命の学者のサイン!こういう思いもよらぬ本に出会える古本屋さんは、私にとってはこの世で一番の興奮を味わえる空間なのである。ありがとう、「古本のんき」!君は出来たばかりなのに、こんなにも古本心を楽しませてくれている!そんなカタルシスを味わいつつ「よみた屋」(2014/08/29参照)にも回り込み、カッパブックス「かぜ 近代ウィルス学のとらえた謎/加地正郎」東映株式会社「近くて懐かしい昭和あのころ」を計220円で購入する。「かぜ」は昭和36年刊だが、現在の新型コロナウィルスパンデミック下の世界に相応しい一冊で、カバーデザイン&挿絵の柳原良平の仕事が秀逸なのである。飛沫が飛び散る様子を、こんなプリティーに六十年前に描いていたとは…。
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最後に「百年」(2008/09/25参照)にも立ち寄り、東京創元社 世界恐怖小説全集12「屍衣の花嫁 世界怪奇実話集/平井呈一訳編」を1100円で購入して帰宅する。
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2021年06月19日

6/19「バサラブックス」の店頭が粋だった。

雨降りの吉祥寺に漂着したので、傘をクルクル陽気に回しながら、古本屋さんを巡って行く。あっ!「古本のんき」(2021/03/31参照)の軒先に、おニューのテント看板が出現している。
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店内の棚もほぼ本でしっかり埋まり、いよいよ本格始動と言った感じである。そして一冊、値段はしっかり目だが、物凄く欲しい本を見つけてしまう…だが最近、目をつぶるようにしてよいお値段の古本をポンポン買ってしまっているので、しばし悩むことにする…ら、来週また見に来て、あったら買うことにするか…。などと世迷い言を呟きつつ、何も買わずにお店を出て、すっかりビニールに包まれた店頭の「よみた屋」(2014/08/29参照)へ。日本文芸社「ラジオ・TVドラマ構成法/大林清」を110円で購入する。続いて駅南口に出て「バサラブックス」(2015/03/28参照)に到着すると、店頭ラックが大変に可愛らしいことになっているではないか。普通は店頭棚の雨除けには、うっすらと本の背も見ることが出来、前面を大きく覆うビニールシートが使われるのがほとんどだが、なんとここでは大きめのビニール傘が差し掛けられ、本を雨から守っているのだ。
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初めて見たぞ、こんな粋でメルヘンチックな雨対応は。正進社名作文庫「虫のいろいろ・聖ヨハネ病院にて/尾崎一雄・上林暁」を300円で購入し、「古本のんき」に残して来た本に心を囚われまくり、後ろ髪を引かれまくりながら、いつの間にか傘を回すのも忘れ、トボトボ帰宅する。
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2021年06月18日

6/18東京・代田橋 バックパックブックス

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阿佐ヶ谷から渋谷行きのバスに乗り、途中の『代田橋』で下車。京王線の代田橋駅にに向かうため、ビルの谷間の小さな地元商店街を通過して、駅横で南に踏切を渡る。すると駅南口の階段を上がったところは、道が広角に折れ曲がる、小さく短い地元商店街である。その中に、何だか白い小さなお店が、梅雨の晴れ間の日光の下で浮かび上がっている。メールタレコミで知った、新刊と古本を扱うお店である。店前の道路には、立看板と百均文庫&単行本棚。それに絵本を詰めたアタッシュケースがあり、他にも椅子やテーブルが続いている…さらにマスクをした白シャツの、若かりし頃の利重剛を思わせる細めの青年が、表で店番をしている。何故表に出ているのか?それは店内を見れば一目瞭然である。そこはちょっとした広めの玄関ほどの小空間で、壁際に棚が巡らされている。三人は入れるだろうが、コロナ禍のご時勢では、一人がベストである。現代思想&カルチャー・文学・新刊(リトルプレス)・映画・ヒップホップ・ニューヨーク・エッセイ・植草甚一・小林信彦・阿久悠・旅・セレクトコミックなどが並び、三百冊弱ほどで、現代的でクリエイティブな若者空間を造り出している。値段は普通。表の絵本アタッシュケースから、岩崎書店「まんだくんとマンガキン/矢玉四郎・作 井上洋介・絵」を購入する。聞けばこの四月に開店したのだが、すぐに緊急事態宣言の休業要請により店を閉めることになったので、本格始動したのはここ一ヶ月ほどとのことである。それにしても、これで代田橋近辺には、「プチニコラ」(2019/12/15参照)と「flotsam books」(2020/08/08参照)に続き、古本を扱うお店が三店に増えたことになる。駅北側の『リトル沖縄』に続き、小さな『古本タウン』になってくれると嬉しいのだが。とにかく開店おめでとうございます!「本の買取もしてますので、よろしくお願いします」の声に送られ、小さなお店を後にする。

そして『環八』に出て、ズンズンズンズン南へ歩く…やはり、昨日のあれを馬鹿みたいに買いに行くことにしよう。小田急線の世田谷代田駅から電車に乗り、祖師ケ谷大蔵駅で下車。サッサカ『ウルトラ商店街』を北に進み、十分ほどで「祖師谷書房」(2009/03/05参照)に到着する。すると先客が二人…だがそれをものともせずに、右側通路に進入し、昨日買おうかどうか迷った本を探す…おぉ、あった。春鳥會「特異兒童作品集」を2500円で購入する。昭和十五年三版の、精神に障害のある子どもの絵画作品を集めた一冊であるが、これが何と後の放浪の天才画家として全国的に有名になる山下清の、若かりし頃の作品集!と言っても過言ではない編集がされているのである。…こんなのが絵本の山の中に紛れ込んでるんだもんなぁ……。仮名の『清』の名で、昭和十〜十四年作成の色紙貼絵・鉛筆画が計四十七点(二十五点は原色刷り)。掲載作品を選んだのは画家の安井曽太郎で、床一面に児童の作品を並べて吟味したところ、自然と清の作品に集中してしまったらしい。解説にはちゃんとイデオット・サヴァン(サヴァン症候群)についての記述もあるし、少し載っている他の児童の作品(仮名“謙二”君の作品が、かなりアウトサイダーアートで圧倒される)も魅力的で、やはり買って良かった!と純粋に感じる一冊である。山下清は、養護園に入る前から、色紙貼絵に熱中し、熟練していたとのこと。彼の放浪生活が始まるのは、この本の初版が出た一年後からである。
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右は清の昭和12年作『お化け』。いいですなぁ〜。
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2021年06月17日

6/17雨は生き物のようだった。

昨日は下井草に流れ着いてしまったので、どうしても古本屋さんには行きたくて、テクテク西武新宿線沿いに二駅歩いて、「井草ワニ園」(2019/01/05参照)へ。相変わらず古本屋然とした店内にゆったり滞留し、岩崎書店「ぬすまれた月/和田誠」大日本絵画「ノーティ・ナインティーズ お行儀の悪い世紀末 ●アダルト・ポップ-アップ●」を計850円で購入する。「ぬすまれた月」は1963年に出た『ボニ・ーブックス』シリーズの同名絵本のリニューアル版。物語は同じだが、イラストは新しく描き直したものなのである…うぅ、アーリー・和田誠の仕事が見てみたい…。「お行儀の悪い世紀末」はヴィクトリア朝末期(本文では『ヴィクトリ朝』になっている)を舞台にした、ライトなエロ飛び出す絵本。登場人物のエロ紳士の一人が、ディアストーカー+天眼鏡装備なので、微妙に案件な気が…。そして夕方に岡崎武志氏よりTELあり。なんと超速で、ちくま文庫「愛についてのデッサン 野呂邦暢気作品集/岡崎武志編」の重版が決まったそうである。快挙也!

そして本日は、雨が走って来るの目撃したりして(雨の降っていないこちらに向かって、雨しぶきとアスファルトを叩く雨足が、目に見えて迫って来るのだ!まるで生き物のように!)、祖師ケ谷大蔵南の砧に流れ着く。ならば「祖師谷書房」(2009/03/05参照)へ!と『ウルトラ商店街』を長々と北へ伝い、営業再開している店内に突入する。古本の間でニジニジと蠢きつつ、大泉書店「世界のこども/朝日新聞社編」を300円で購入する。
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昭和39年刊の、“平和の祭典”東京オリンピックに合わせた、世界のこどもたちの可愛い生態をルポする連載記事をまとめた一冊である。取材対象は西欧の白人国家が中心で、アジアの国は極めて少なく(インド・タイ・韓国のみ)、アフリカにいたっては一国も取り上げられていないなど、時代性を感じさせる構成である。…それにしても、悩んだ末に買わなかったのだが、気になる一冊が、帰りの電車の中でも、ずっと心に引っ掛かっている。どうしよう…やっぱり欲しいな…明日、折りを見て、馬鹿みたいにお店を再訪して、買うべきか買わざるべきか、それが問題だ……。
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2021年06月15日

6/15未知の「平井書店」。

家に腰を据えて色々片付けながら過ごし、その合間合間に読書も進め、新潮社「丹下左膳 こけ猿の巻/林不忘」と日吉堂本社「膽勇五少年/中井苔香」を早々に読了する。「丹下左膳」はやはりモダンでスピード感に満ち、無類の面白さであった。この続きは、いつの日か同じ新潮社「丹下左膳 日光の巻」を手に入れた時に楽しむこととしよう。「膽勇五少年」も五牛少年(五人の少年たちの総称)が、海賊を退治した後、旭少尉の発明した五人で協力して操縦する最新型飛行機で(やはり戦隊ヒーロー物の元祖であろうか)、巴里で開かれる『萬國飛行大競争』に参加するために、超長距離飛行を始めたところで終わってしまった。どうやら続きがありそうな予感…こちらもいつの日か物語の続きに出会えれば、読み進めたいところである。そして午後にちょっとだけ外出し、「ドラマ高円寺庚申通店」で偕成社「ジュニア版日本文学名作選13 怪談/小泉八雲 平井呈一訳」を110円で購入する。「怪談」の番号が“13”なんて、なかなか素敵で、巻末の『作者と作品について』もちゃんと平井呈一が執筆しているのが、またまた素敵である。そして家に戻ると、またもやのヤフオク落札品が到着していた(最近買い過ぎだ。ちょっと控えねばなるまいな…控えねば…どうにかして控えねば…)。1300円にて落札した富國出版社「爬蟲館事件/海野十三」である。昭和二十一年刊の仙花紙本で、表題作以外に『昆蟲圖譜の秘密』『省線電車の射撃手』『點眼器殺人事件』を収録。そして本の巻末には興味深いものが挟まっていた。以前の持ち主の、この本の購買データと、当時のレシートである。1979年9月17日に「平井書店」というお店で4500円で購入している。最初は「「平井書店」か…大森の奥にあったお店だな」と思ったのだが、それは「平林書店」という一字違いのお店であった。ではこのお店は?慌てて1978年と88年の「全国古本屋地図」を繰ってみるが、どこの都道府県にも「平井書店」の名は見当たらなかった…79年以降の地図ではないとダメかもしれない。ネットで検索してみても、情報は浮かび上がって来ない…むむぅ、何処にあった、どんな古本屋さんだったんだろう。だがそれにしても、この時代にこの仙花紙本に4500円の値を付けているとは、かなり専門店的なお店であることだけは、想像出来るのであった。
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2021年06月14日

6/14「武侠小説 膽勇五少年」!

未だ昨日の大食いからこなれぬ感じのお腹とともに、はっきりしないボヤボヤした雨がようやく上がった午後に、武蔵境の遥か北の新町に流れ着く。浄水場脇を通って、国木田独歩の文学碑を横目にして、水気たっぷりの玉川上水を渡り、駅方面へ。そしてその途中で「おへそ書房」(2019/07/28参照)に立ち寄る。店頭は雨仕様で、絵本箱などは中に仕舞われている。その店内では。先客がひとりどっかりと椅子に腰掛け、大量の絵はがきを嬉しそうに吟味している。読売新聞社「ミロ版画展 ART GRAPHIQUE 国立西洋美術館 1962」を百円で購入し、帰宅する。そして家には、ここのところ連続しているヤフオク落札品が、無事に届いていたのであった。日吉堂本店「武侠小説 膽勇五少年/中井苔香」である。大正二年刊の、バンカラな硬派の少年が活躍する、冒険小説ならぬ武侠小説!ライバルナシの1500円にて落札す。背が外れていたが、チャチャッと修理して、安心して読める形に仕上げる。というわけで早速ちょっと読んでみて粗筋を書いてみると、日露戦争の英雄・旭少尉が左手と右足を名誉の負傷で無くし、内地に戻って来た。その英雄を慕い集う、“牛”の一字を名に持つ五人のバンカラ少年たち。中でも主人公の牛川猛は少年界の偉人として知られ、地方少年界の視察を兼ねて全国を旅していたりする(素敵にバカだなぁ…)。彼らは世にはびこる軟弱で軟派な少年たちの頭を硬化して回り、蔓延る悪を打ち倒して、やがて世界へとその舞台を広げて行く……「南総里見八犬伝」+少年『天狗倶楽部』+戦隊ヒーロー物(五人はそれぞれの特性を生かし、敵と戦ったり難関を乗り越えるのだ)と言った内容…ふぅむぅ〜、ぶっ飛んでいて狂っていて、読み始めたら止まらなくなってしまった。現在主人公の少年界の偉人・猛君は雷に打たれて気絶し、追いはぎに身ぐるみ剥がされているところ。ハラハラドキドキ…。
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2021年06月13日

6/13腹いっぱいのイレギュラーズ!

本日は早朝から“盛林堂・イレギュラーズ”となり、北関東のとある街にレンタカーの『キャラバン』で出張買取に向かう。およそ二時間で現場に到着し、まずは状況を確認。縁側と家横に建て増しされた物置と、さらにプレハブ物置から、およそ五十本の本束とダンボール三箱を運び出すことになるらしい。ひとまずはお茶をいただき、その後にテキパキと作業する。依頼人の方にもお手伝いいただき、ものの三十分ほどで作業を終了する。だが、今日の仕事はこれで終わりではなかった。なんと依頼人さんが手作りの昼食を饗してくれるというので、ボスの小野氏とともにありがたく頂戴することにする。ところがこの昼食が凄かった。ノンアルコールビールとともに、野菜の漬け物や煮物の小鉢がオードブルのように五つほど出され(そのうちの『らっきょうの小鉢』は、小野氏が苦手と言うことで二鉢たべることに)、さらに家庭菜園で作られた野菜の大鉢サラダ、さらに普通盛りのパスタ別種二皿、そしてデザートのオレンジと珈琲という、至れり尽くせりのヘルシー二人前コースであった。…美味しかった。私の今日の仕事は、本を運ぶことではなく、食べることであったか…だが、お腹がはち切れそうにいっぱいだ。おかげで帰りの車中では、過剰な満腹感+血糖値の急上昇から、二人とも激しい異様な眠気に襲撃され、まるで雪山で遭難した登山者の如く、お互いを眠らせぬよう、懸命に話しかけ合い、どうにか東京に帰り着く…あぁ、ぜんぜん腹がこなれない……。倉庫に本を下ろしてレンタカーを返却し、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)に帰り着く。そして実はこれからが私にとって今日のメインイベント。一息ついて、事務的な作業を片付けてから、「では例のあれを…」と小野氏にお願いすると、すでにキレイに切り取られたカラーコピーが一枚差し出された。不盡書院「爆撃鑑査寫眞七號/小栗虫太郎」のカバーカラーコピーである。先日小野氏が市場で小栗虫太郎の束を落札したことを聞き及んでいたので、もしや!と思い、仕事のメールの中でその束の中に「爆撃鑑査寫眞七號」があったかどうか聞いてみたところ、『入っていました!』と返答があったのだ。しかも、貴重な稀少なカバーがちゃんと付いているというのだ!実は「爆撃鑑査寫眞七號」の裸本を以前に奇跡的にヤフオクで入手していたので(2017/12/14参照)、コピーでもカバーがあれば、嬉しい擬完品になる!と目論んで、平身低頭お願いして、ご好意で入手出来ることになったのである。聞けば「爆撃鑑査寫眞七號」は小栗本の中でも高位のレア本で、今回盛林堂さんが手に入れた奇跡のカバー付きの一冊も、高額なのにたちまち売約済みになってしまったとのことである。まだまだお腹いっぱいのまま家に帰ったら、早速準備していた裸本にコピーカバーを巻いてみる。おぉ、美しい。まるで本物のようだ!オレの「爆撃鑑査寫眞七號」よ、見違えたように素敵だぞ!と感動に打ち震える。
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ちなみにカバー裏面はこんな感じで、内容目次が刷られている。
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2021年06月11日

6/11野呂邦暢と丹下左膳。

午前十時に家を出て、荻窪を定点観測する。「古書ワルツ荻窪店」(2020/07/30参照)では、岩波書店「児童文学の旅/石井桃子」KKベストセラーズ「ミステリーゾーンを発見した/佐藤有文」を計330円で購入する。続いて商店街の「竹中書店」(2009/01/23参照)に向かい、朝日選書「カリフォルニアの黄金 ゴールドラッシュ物語/越智道雄」平凡社「日本魁物語/駒敏郎」を計400円で購入する。そこから横道に入って〆の「藍書店」(2018/12/24参照)へ。新潮社「樹の鏡、草原の鏡 武満徹」を300円で購入し、暑くなる前に家へと戻る。するとポストにA5版のボール紙の封筒が…あっ、筑摩書房からだ。住所ラベルには『献本在中 岡崎武志編 ちくま文庫『愛についてのデッサンー野呂邦暢作品集』』と表記されている。古本神・岡崎武志氏からの献本である。ありがとうございます!
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阿佐ヶ谷の古本屋「佐古書店」店主・佐古啓介が巻込まれる、古本ロマンミステリーの連作を集めた表題作に加え、『世界の終り』『ロバート』『恋人』『隣人』『鳩の首』を収録している。「愛についてのデッサン」は初文庫化である。カバー絵の番台に見切れる佐古が、かなり今時の古本屋さんなのが素敵である。などと書いていると、郵便屋さんからレターパックが届けられる。くぅぅ、待ちに待ったヤフオク落札品だ。ボール紙の封筒を引きちぎって中身を取り出すと、それは菊判の函入り本。新潮社「丹下左膳〔こけ猿の巻〕/林不忘」である。
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三つの筆名を使い分け、ベストセラーを量産しまくった忘れられた作家・谷譲次&牧逸馬&林不忘ファンとしてはネットで見た瞬間に血が沸騰し、「これは是が非でも入手する!」と唇を噛んで誓い、ライバルありの結局3700円にて落札。それでもこれは完全に安い。昭和九年刊の丹下左膳戦前オリジナル本の一冊が、ついに我が手に!口絵の志村立美による左膳はさすがの毒々しさと美しさだが、本体表紙に描かれた装幀の山川秀峰による左膳が完璧過ぎる!流麗な筆さばきで簡素に描かれてはいるが、刀を右に落とし差ししているところなんか、とてつもなくリアル!左膳は左腕の隻腕なので、闘うことを考えれば、右に差しているのが本当は正しいのだが、志村や他の人の左膳は、左に落とし差ししていることが多いのだ。くぅ、痺れる〜。
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これは志村立美の口絵。

それにしても、私は〔こけ猿の巻〕を収めたこの本の存在を知らなかった。昭和十年刊の、志村立美が描いた、まるで写楽画のような左膳の顔がドドンと函に印刷された本は知っているが(もちろんこれも憧れの本である)、これは『こけ猿の巻・日光の巻』を収録したもの。つまり一冊で完結しているのだ(〔こけ猿の巻〕と〔日光の巻〕は続き物で、〔こけ猿の巻〕は左膳が洞窟でピンチに陥るところで終わってしまうのだ)。サイズもB6版なので、改めて出された本なのだろう。なのでネットでズンズン調べてみると、昭和九年刊の〔日光の巻〕の志村立美の口絵に行き当たった。本自体は確認できなかったが、この口絵の本がどうやら続刊となる一冊らしいことが判明する。これもいつかは手に入れたいものだ。なんにせよ果てしなく嬉しいので、早速愛でながら読み始めることにする。丹下左膳、久々に読むことになるが、これが掛け値なしに本当に面白いんだよなぁ。
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2021年06月10日

6/10東京・西荻窪 ガレージショップ ネット蔵

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六月の炎天下、顔面に縦の棒線を発生させながら、西荻窪の住宅街を彷徨っていると、突如オアシスのように一般住宅のガレージを利用したリサイクルショップを発見する。場所は駅南口を出て、高架沿いに『平和通り』を東へ東へ。500m弱進んだ、二本目の高架下を突っ切る通りを南へ曲がり込む。ひとつ目の十字路を過ぎれば、左手に門の前に立看板を出した白い住宅が現れるだろう。ごちゃごちゃと棚が立て込み、多数のプラケースが混在する店内に目を凝らすと、ほぅ!奥の壁棚に古本が並んでいるではないか。手指を消毒し、突然の闖入者に疑いの視線を寄せるご近所の奥さま客の背後を通過し、突然出会った棚の前に立つ。新しめの本が五十冊ほど。大沢在昌・平岩弓枝・京極夏彦・今野敏・誉田哲也・小野不由美などなど。明らかに読み終わった趣味の本を並べている感じである。だが値段は30〜100円と激安。むむむむと、せっかく入ったのだから何か買って行こうと、趣味じゃない本に脂汗をかきながら、集英社文庫「弁護側の証人/小泉喜美子」を購入する。

ひょんな出会いは素敵だったが、古本心は満たされぬので、テクテク駅方面に向かい、「古書音羽館」(2009/06/04参照)の外棚と対峙する。右端文庫棚横の木製ラックから、大雅堂「大東亜玩具史/西澤笛畝」を見つけたので700円で購入する。昭和十八年刊の、亜細亜の玩具を蒐集&類似性を比較検討する研究書である。玩具からも東亜共栄圏を成立させようという胡散臭さに溢れているが、各国の似た玩具を並べた三十五ページに渡るグラビアは、魂をふるふると揺さぶって来る。後見返しに群馬県・伊勢崎市の古本屋さん「書肆いいだや」の古書店ラベルアリ。
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2021年06月09日

6/9「月世界」には今は入れなかった。

午後に用賀の南に流れ着いたので、『環八』沿いの古本屋さん「古書 月世界」(2013/10/24参照)を見に行ってみると、ドアに貼紙があり、コロナ禍の現状では買取とその相談しかしていない旨が書かれている…い、いたしかたない…。
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さて、どうしよう。今日は水曜だから愛しの「江口書店」(2010/03/29参照)が開店するのは午後五時…ダメだ、まだ二時間半もあるじゃないか…と田園都市線沿線を諦めて、渋谷まで出て「古書サンエー」(2008/08/24参照)を訪れる。店頭棚で赤い背の島田一男の文庫本が大量に並ぶのを眺めつつ、店内では左奥の壁棚に戦前戦後の古い児童文学が十冊弱並ぶのに興奮するが、ちょっと値付がきっちりなのでどうも手が出ない。結局表から持ち込んだ、皓星社 犯罪研究資料叢書「殺人法廷ケースブック(三)」「殺人法廷ケースブック(四)」を計200円で購入する。昭和初期に刊行された「斷獄實録/石渡安躬」の誌面覆刻本である。『星亨暗殺事件』『原敬暗殺事件』『お艶殺し事件』『和歌山の大惨劇入婿殺事件』を収録。そして阿佐ヶ谷に戻り、「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)にフラリ。二見書房「隠された顔/サルバドル・ダリ」大和書房「ボマルツォの怪物/A・P・ド・マンディアルグ 澁澤龍彦譯」株式会社三越「三越のあゆみ」(箱ナシ)を計750円で購入し、梅雨入りもまだなのに、突然の真夏並の暑さにすっかり疲弊して帰宅する。

そろそろ発売になる「本の雑誌 冷やし飴ぐびり号」の連載『毎日でも通いたい古本屋さん』では、ちょっと変化球の高田馬場の「ブックオフ高田馬場北店」に出没!…だってコロナ禍の休業宣言で、ほとんどの古本屋さんが閉まっていたんです…。だがこの古書も扱う新古書店で、意外な嬉しい本を買ったりしていますので、今月もどうぞよろしくお願いいたします!
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2021年06月08日

6/8「アニマル洋子」の閉店のお知らせ。

午後に中野に出て所用を片付けつつ、「まんだらけ海馬」(2015/02/06参照)で福音館書店「かがくのとも18号 なかまはずれ」「26号 くらべてみよう」ともに安野光雅を計220円で購入する。「くらべてみよう」はついこの間買ったばかりだが、百円ならダブりでも迷わず購入だ。そして1970年刊の「なかまはずれ」は教育絵本の名作。今見ても一瞬知恵を絞らねばならぬ状況に陥るページがあるほど、なかなか侮れない難しさと楽しさを合わせ持っている。
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その後は「古本案内処」(2015/08/23参照)で講談社文庫「お噺の卵 武井武雄童話集」を110円で購入し、同じ『早稲田通り』沿いにある「ブックオフ中野早稲田通店」(2012/11/15参照)では白川書院「夢野京太郎のシナリオ 浪人街/天明餓鬼草紙/竹中労」PARCO「大阪の表現力」TBSブリタニカ「大阪の空間文化 商都のコスモロジー」を計760円で購入する。とここでしばらく雨に降られたので、『中野ブロードウィエ』に逆戻りして、雨宿りする。三十分ほどで雨が小止みになったので、街路に飛び出し高円寺へテクテク。「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)で毎日新聞社「秘境ブータン/中尾佐助」を100円で購入した後は、『庚申通り』をひたすら南下し、中央総武線ガード下を抜け、『パル商店街』から『ルック商店街』に入り、緩やかな坂を上がると、左手に「アニマル洋子」(2014/03/14参照)の店舗が…だがここしばらく開いたことはなく、そしてついに先日シャッターに閉店の貼紙がしてあるとのコメントが齎されたのであった。人の顔面が三つ並ぶシャッターに近づく。右端の三枚目のシャッターに、件の貼紙は小さくテープで留められていた。…うぅ、本当に閉店のお知らせである。建物の解体による閉店なので、また何処かでお店を再開することはあるのであろうか…だが、そんな希望のアナウンスは一文字も書かれていない…こちらこそ長い間、面白い古本をたくさん買わせていただき、生活に潤いをあたえていただきありがとうございました。そういえば、『宮崎美子のすずらん本屋堂』で、お店を取材させてもらったこともあったけ(2013/11/19参照)。グッドバイ、そしてサンキュー、高円寺のサブカル&アングラの殿堂「アニマル洋子」!
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2021年06月07日

6/7「死靈」掲載誌!

朝から暑くなる前に真面目にお仕事…まるで夏休みの真面目な小学生みたいだ(宿題は涼しい午前中に片付けよう!)…。そして午後にうだるような暑さが襲来してから外出。久しぶりに東村山の「なごやか文庫」(2020/04/07参照)を見に行くことにする。だがお店は、母体の施設ごと緊急事態宣言発出中と言うことで、無念の休業中であった。無駄足を踏んだことを悔やみながら、踏切を渡って古本も売る駄菓子屋さん「きりん館」(2013/11/17参照)を訪れてみる。するとシャッターは下がったままで、以前はなかった貼紙があるのに気付く。近づいてみると、去年の11月に閉店したとのお知らせであった…あぁ、残念至極。
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あの駄菓子売場の奥にあった、明かり取りの窓からの光に浮かび上がる古本棚…本当に崇高だったなぁ。というように、二連続で外してしまったので、駅に戻って所沢に出て、西武池袋線に乗って保谷に出る。もちろん向かうは「アカシヤ書店」(2008/12/17参照)である。店頭の棚が前回訪問時より結構入れ替わっているなと嬉しく感じつつ、隅から隅まで厳しく眺め、店内に進んで入口横の店頭古本ストック山も綿密に精査する。大量の文学同人雑誌も懸命に繰って行くと、近代文學社の「近代文學」のNo.2と八雲書店の「近代文學」6・14を発掘する。すべて埴谷雄高の「長編 死靈」が連載されている号なのである。“あっは”と喜び、博文館「星學 全/須藤伝治郎」改造社「女性改造 2.1949」(グラビアが土門拳撮影)操書房「オダリスク/ヴォルテール」三星社「春情妓談 水揚帳/柳亭種彦」工作舎「月と幻想科学/荒俣宏×松岡正剛」東京三世社「大根入りカレーライスの唐辛子あえ/守村大」とともに計990円で購入する。
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一番左のNo.14の表紙絵は脇田和。またこの号には木々高太郎の『探偵小説と文學の普遍性』という記事の寄稿あり。日本の文學が世界で読まれるようになるための、私小説からの脱皮を促す短文である。期せずして、すでに探偵小説はその域に達しているとの見解も示されているが、捕物帖だけは日本限定のジャンルとしてバッサリと除外されている。こんな木々の檄文が載っている雑誌に、世界に類を見ない探偵小説の形を借りた思考実験形而上小説「死靈」が連載されているのは、なんとも感慨深いものがある。
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2021年06月06日

6/6「尾花屋」がちょっと変化していた。

明治の探偵小説「血漿の鉄瓶」を読んでいると、気になるフレーズが頻出する。『向島の有馬温泉』や『鶯谷の伊香保温泉』などである。何だこりゃ?何かの間違いなのか?といぶかしみながら調べてみると、向島の『秋葉神社』境内に有馬温泉の湯の花を使用したお風呂が『有馬温泉』なる行楽施設が実在したとのこと。ここでは泉鏡花の『化物会』が開かれたこともあるそうだ。さらに鶯谷には『伊香保楼』という料亭があり、しっかりと本家の伊香保温泉からお湯を運び、温泉の支店という形で営業していたそうである。そんな遠隔地の温泉を模した人気施設があるということは、当時は東京の東側が中心で、いかに栄えていたかと言う証拠であろう。探偵小説を読んでいて、興味深い事実を知ってしまった。これは楽しい。

本日は武蔵小金井と東小金井の間にある『はけの道』辺りに流れ着いたので、トボトボ東に歩き続け、新小金井の小さな商店街に入り込む。すると「尾花屋」(2017/06/15参照。そろそろ創業四周年!)はしっかりと営業中であった。
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店頭で一冊掴み、磁石で留められている網カーテンの開け方にまごつきながら、どうにか店内へ進むと、以前とは少し様子が変わっている。フロア中央に背中合わせの棚が新たに据えられ、洋書絵本・レトロビジュアル・岩波文庫・ちくま文庫・美術・幻想文学・人文・思想などが収められ、古本屋度がよりアップしていたのだ。また奥の帳場脇は棚ではなく、レア児童文学ラックに変化しており、オリジナルの「北極のムーシカミーシカ」や石井桃子の「山のトムさん」などが飾られ、なかなか良い景色。三田出版会「日本ロケット物語 狼煙から宇宙観光まで」を300円で購入する。その後は東小金井までトボトボ歩き、電車に乗って西荻窪で途中下車。「盛林堂書房」(2012/01/06参照)に立ち寄り、番台横に腰を据えて、仕事の打ち合わせをアレコレする。そして家に帰ると、うひゃぁっ!またもや『古本屋分布図』の直しが発生!いったいこいつにいつまで振り回されるのか…と思いつつ、『破る!この地獄を突き破らなきゃ、俺には明日はやってこねえんだ!』と映画『東京流れ者』の渡哲也的に思考して、速攻で直してデータを送付する。とこのように、いまだに苦労を重ねている予約限定販売の「東京古書組合百年史」を、みなさま何とぞよろしくお願いいたします!

http://www.kosho.ne.jp/100/index.html
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2021年06月05日

6/5届いた本に慰められる。

昨日今日と家に篭城し、色々やらなければいけないことと格闘する。おかげで今日も外に出られそうにない。まぁコロナ禍のご時勢には丁度良いことであるが、やはり古本屋さんに行けぬのは寂しいものだ。だが嬉しいことに、そんな寂寥を慰めてくれるかのように、ポストに本がひっそりと届いていた。一冊は「股旅堂」さん(2018/10/01参照)の最新目録「MATATABIDO 24 June,2021 巻頭特集:或る蒐集家秘蔵の戦後カストリ雑誌〜風俗娯楽雑誌大放出!」である。
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相変わらず剥き出しの人間の本能が集まったような、282ページに渡る欲望全開の目録である。『盛り場風景』に並ぶ本が魅力的だなぁ…浅原六朗「愛慾行進曲」も入ってる。誠文堂十銭文庫「エロ・エロ東京娘百景/壱岐はる子」は五万円か…十銭が五万円にってことは…ご、五十万倍!九十一年後に、五十万倍の値段に!などと早速楽しんでしまう。「股旅堂」さんの書庫も、またいつか懐中電灯&ヘッドライト二刀流を頼りに、じっくり探索してみたいものだ。

そしてもう一冊はヤフオク落札品で、貸本仕様に造本された、明治廿九年刊の盛花堂「探偵小説 血漿の鉄瓶(ちしほのてつがめ)/多田省軒」である。ライバルナシの1100円にて落札。補強用の表紙や遊び紙が付けられているが、色刷りの表紙も鮮やかな折り込み口絵も健在なのが嬉しい。
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物語は上野公園内の殺人から始まるようだ。それにしてもこの口絵がかなり気になる。右側の女性はまぁ置いといて、獄吏のような男性が机の脇に立ち、その机に座る眼鏡の紳士は、顕微鏡や薬瓶を準備しながら、鉄瓶をナイフのようなもので調べているのだ。これは、明らかに科学捜査をしている場面ではないだろうか?読み進めてみなければ詳細はわからぬが、翻案物の薫りがプンプン……。
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2021年06月03日

6/3再開情報。

お昼過ぎに西荻南に流れ着く…二日連続で西荻窪…というわけで「盛林堂書房」82012/01/06参照)には日を空けて訪ねることにして、駅前を通過してテクテク歩き続け、ステーキ屋『キャロット』脇の道に曲がり込むと、「古書音羽館」(2009/06/03)営業再開ありがとうございます!と店頭棚にへばりつく。店頭右側百均文庫棚脇のラック状木棚から、彰国社「図説 近代建築の系譜/大川三雄+川向正人+初田亨+吉田鋼市」を400円で購入する。そして素直に阿佐ヶ谷に戻り、『旧中杉通り』を北に歩いて行くと、「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)が営業再開している(昨日から)、嬉しいいつも通りの阿佐ヶ谷の光景にぶつかる。六月にお店が開くことになって本当に良かった、今月の二十日には、創業十周年を迎えるのだ。古本を買って祝えるし、毎年恒例の記念グッズも非常に楽しみである。手指を消毒して店内に進み、ハヤカワポケミス316「時計の中の骸骨/カーター・ディクスン」を530円で購入する。かなり前に読了した平井呈一訳の「黒死荘殺人事件」の面白さの余韻がいまだに体内に残留しているので(2021/03/05参照)、同じ陸軍情報局の名探偵H・M卿(ヘンリー・メリヴェール卿)が活躍する一冊を選んでしまう。
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…などと書いていると、ホームズ研究家&作家で古本神の北原尚彦氏より、『再開情報』というタイトルのメールあり。吉祥寺「防破堤」(2020/01/22参照)、三鷹「りんてん舎」(2019/03/30参照)、武蔵小金井「はてな倶楽部」(2013/12/18参照)、「古書みすみ」(2020/11/23参照)、「中央書房」(2020/12/08参照)などの再開情報とともに、所沢の古本市に自転車で駆け付けた話や、今週末の高円寺即売会参戦宣言などが、弾むように楽しそうに綴られているのだ。うむむむ、氏に負けぬよう、営業再開店を感染予防対策を施しながらたくさん訪れ、古本を買いまくりたくなって来たぞ!嗚呼、古本屋さんが普通に開いている世界って、本当に精神的に豊穣で素晴らしき哉!
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2021年06月02日

6/2「八月がくるたびに」オリジナル版!

色々仕事をしながら、さらに原稿を書いたり、土壇場の“古本屋分布図”の直しを済ませたりする。午後六時前に古本を携え家を出て、西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)へ。大阪に負けじと「フォニャルフ」にもしっかり補充しつつ、共立出版株式会社「空とぶ実験室 宇宙船の旅/M・ワシリエフ」日本出版協同株式会社 異色探偵小説選集「デイン家の呪/ダシール・ハメット」「黄色の部屋/ガストン・ルルー」を計300円で購入する。そして怒濤のように新刊を出し続ける盛林堂ミステリアス文庫二冊を受け取る。一冊はカバーデザインを担当したペガーナ・コレクションの最終巻で、最後は何とダンセイニではなく、キプリングの長編妖精物語!6月6日より予約がスタート。そしてもう一冊は6月9日から発売開始の、イラストレーターYOUCHANさんの個展図録「ゾランさんと探偵小説」である。文庫サイズで可愛い図録だが、中井英夫「虚無への供物」の新人シャンソン歌手でラジオの構成作家でにわか素人探偵の奈々村久生がまた、凛として可愛い……。
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買った古本といただいた新刊を携えて阿佐ヶ谷へ戻ると、夕暮れの街で、「ネオ書房」(2019/08/11参照)が電燈明るく営業を再開していた。ついつい虫のように明るさに惹き寄せられ店内へ。久しぶりの棚をゆっくり上から下まで眺め、さらに棚前に積み上がる雑誌や絵本や図鑑の山も見逃すまいと、視線を注いで行く。すると図鑑と古い漫画雑誌の下の方に、理論社 どうわの本棚「八月がくるたびに/おおえひで・作 篠原勝之・え」があるではないか。長崎への原爆投下をテーマにした問題作で、とにかく篠原勝之の意欲的で前衛的なペン画やコラージュが、読み手に見境なく挑みかかり、心を激しく動揺させる。これは1971年第一刷のオリジナル版で(ちゃんとカバー付)、後に出た愛蔵版では、ほとんどの挿画が差し替えられてしまっているのだ。2750円だが、これは買っておかなければ。と帳場に差し出し、ポイントカードにスタンプを五つ捺してもらって購入する。
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2021年06月01日

6/1「東京古書組合百年史」!

朝、大阪に本を送ろうとダンボール箱を抱え、エッチラオッチラ郵便局へ。ややっ、まだ開いてない…そうか、営業開始は午前九時からか…幸いにも後十分ほど待てば良かったので、シャッターの前で時間をブチブチ潰し、どうにか発送する。昨日の既報通り、ミステリ&探偵小説関連が多めだが、いつものように奇天烈な本もしっかりと混ぜ込んでいる。前回補充後に、すぐに緊急事態宣言が発出されてお店が休業になってしまったので、まだまだ豊富に残る前回在庫と合わせて、お楽しみ下されば幸いです。大阪「梅田蔦屋書店」の古書棚を、『海外ミステリー宣言!』フェアとともに、引き続きよろしくお願いいたします!

そして午後は連載の取材をどうにか済ませ、ついでにと八王子の「古書むしくい堂」(2018/01/03参照)に久々に立ち寄ってみるが、残念ながらシャッターアウト。がっくりしながらもめげずに吉祥寺に出て、今日から営業を再開した「古本のんき」(2021/03/31参照)を覗く。棚は八割五分埋まっている模様…後一息ですな。河出文庫「人間失格/太宰治」を200円で購入する。昭和三十年刊のカバー装で、解説は小山清である。巻末広告に「斜陽」もあるが、そちらも解説は小山なのであろうか?ちなみに同じ河出書房の市民文庫の「太宰治集」は、小山清が編集&解説している。その後は駅前の「古本センター」(2013/07/01参照)の処分品棚から、もはや伝説の音楽バンド“たま”のファンクラブ会報誌「正直」を五冊発掘。No.2・3・6・7・8号(すべて九十年代初頭のもの)が一冊50円だったので一気にまとめ買いする。うむ、ラッキー。
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※お知らせ
今年の八月に東京都古書籍商業協同組合から、創立百周年を記念して「東京古書組合百年史」が刊行されます。組合や古本屋という職業の歴史や在り方を様々な角度から記録した、前代未聞の大著であります(なんと総ページ数696ページ!)。ひょんなことからその中の資料の一部、支部別の『古本屋分布図』を作成する光栄に浴しました。令和の時代に現存するお店と、古本屋最盛期と言われた昭和六十二年のお店を同図上にプロットした、なかなかユニークな資料図。これがずっとブログで書いていた、『謎の古本屋分布図』の正体なのであります。苦労しました。苦しみました。それがようやくこの手を離れ、みなさまにお知らせ出来る時を迎えたので……む?なにか連絡が?……ヒィィィエイ!地図に直しを入れるだとぉ!?もう入稿したのにぃ!くぉぉぉぉぉぉ、この土壇場でいったい!………な、などといまだに苦しめられておる次第です。予約限定販売で、値段は八千円ですが、後世に残る立派な、記録足りえること間違いなし。愛しの古本修羅たちよ、詳細は以下のアドレスへどうぞ!

http://www.kosho.ne.jp/100/index.html
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2021年05月31日

5/31明日から『海外ミステリー宣言!』フェアスタート!

朝からしばらく頭の中であれこれ組み立てていた、古本屋さん関連の秘密のデザイン仕事を、一気呵成に手を動かして押し進める。そんな風に集中して午前の大半を過ごし、『古本を買いに行かなければ』とハッと気付いて荻窪に定点観測に向かう。「古書ワルツ荻窪店」(2020/07/30参照)では婦人之友社「こどものおやつ百種」を330円で購入する。昭和二十九年刊の、こどものお腹と健やかな成長に必要な栄養を満たすためのレシピ本である。百種と言いながらそれ以上の和洋お菓子の作り方が載っており(うどんやサンドイッチやおむすびさえも!)、素朴なシンプルさと完成例のモノクロ写真が、とにかく無闇矢鱈と美味しそうなのである。
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お辯當箱でつくる『おべんとうカステラ』。これはこどもは喜びそう。ぜひとも食べてみたい!

さらに「藍書店」(2018/12/24参照)で新潮社「私の現代芸術/岡本太郎」同朋社「イタリアの魔力 怪奇と幻想の「イタリア紀行」/島村菜津」を計220円で購入する。そしてさらに午後には高円寺にもテクテク足を運び、「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)で河出書房 世界探検紀行全集14「エベレスト登頂記/藤木九三」を100円で購入し、「ドラマ高円寺庚申通店」では「ケルト神話/プロインシァス・マッカーナ」を110円で購入する。

さてさて、緊急事態宣言はまだまだ続きますが、一部規制が緩和されたことにより、明日から時短営業ですが、大阪梅田の『ルクアイーレ』9Fの「梅田蔦屋書店」が営業再開することになりました。それに合わせて、古書棚も無事営業再開!と同時に書店では『海外ミステリー宣言!』の名のもとに、ミステリ翻訳家や編集者らによる選書フェアがスタート。それに便乗して、古書ゾーンでも特設平台を設置し、ミステリの古書を並べる予定(こういう時に「ジグソーハウス」さん(2016/06/11参照)が一緒だと、大変に心強いのであります。あぁ、ジグソーさんの並べる本を、買いに行きたい…)。このフェアに合わせて、以前からミステリ多めに補充していましたが、明日辺りにまた補充本を発送予定ですので、西の皆さま、感染症対策を十分に施し、フェアにひっそりと駆け付けていただければ幸いです。
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posted by tokusan at 18:55| Comment(0) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする