2020年07月08日

7/8未来派と「呪ひの塔」とカネゴン。

すでに昨日のことである。早朝に田山花袋「生」を読み終える。花袋の自伝的な、母の死に際にまつわる出来事を、巧みに詳細にドロリと描いた物語であった。死と生に正面と側面から向き合う暮らしとともに、舞台である早稲田・戸塚・目白などの、明治の様子が活写されるのが、心にジンワリと暖かで静かな感動を呼び起こす仕掛けが、素晴らしかった。午後に所用で中野へ外出。『中野ブロードウェイ』四階の「まんだらけ海馬」(2014/02/15参照)で文研出版「新訳シャーロック・ホームズの冒険/ドイル作 飯島淳秀」を110円で購入する。昭和45年刊の児童用ホームズ。収録阪は『赤毛連盟』『口のねじれた男』『青いルビー』『まだらのひも』『黄色い顔』『六つのナポレオン』となっている。最初の四作は「〜冒険」の収録作だが、『黄色い顔』は「シャーロック・ホームズの思い出」、『六つのナポレオン』は「シャーロック・ホームズの帰還」収録作である。背文字の“シャーロック”の入れ方が、なかなかアナーキー。
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さらに二階の「BOOKSロンド社」(2008/08/28参照)にて、大和書房ヤングアダルトブックス「怪獣ゴジラ/香山滋」を400円で購入する。北から表に飛び出し『早稲田通り』を歩いていると、よく「みちくさ市」出店時に古本を買ってくれる常連さんに偶然お会いする。今回のコロナ禍で家に閉じこもると、大量の古本と改めて対峙することになり、これは整理しなければ!とハタと気付いたそうである。読了本や雑本整理処分の真っ最中で、「いやぁ、もうそんなに本を買ってられないですよ。先行きのことも考えなきゃね」「これから何処行かれるんですか?」「あっ、盛林堂に行って、新刊のミステリアス文庫がまだ店頭にあるかどうか、見に行くんですよ」「か、買う気満々じゃないですか…」などとやり取りする。夜、ソニー・マガジンズ「モービー・ディック航海記/たむらしげる」をゆっくり楽しむ。漫画屋絵本ではなく、小説に寄った絵物語。72歳の“Q”が、伯父の遺産である機械生物とも言えるクジラの潜水艦(オタマジャクシのような大きさから、段々成長してようやく乗れるようになる。可愛い)に乗り、宇宙を旅するお話。たむら版「星の王子さま」ではないだろうか。

そして本日は祖師ケ谷大蔵の果てに流れ着いたので、エッチラオッチラ表通りに出て、久々の「祖師谷書房」(2009/03/05参照)の様子を伺う。シャッターは上がっているが、カーテンが閉まってしまっている…お昼休み中か。残念也。楽しみにしていたので落胆しながら駅に向かっていると、「DORAMA」が消滅しているのに気付いてしまう。店頭百均ワゴン、時々面白いのが拾えて好きだったのに。残念也。そんな落胆たちを家まで引き摺らぬように、下北沢で途中下車して「ほん吉」(2008/06/01参照)に立ち寄る。今日の店頭は何だか三百円本が豊かだ。双葉社「本棚探偵の冒険/喜国雅彦」(二刷。帯・月報付き)河出書房新社「ごっこ/山田稔」扶桑社「未来派2009/坂本龍一+細川周平編集」を計990円で購入する。「未来派2009」は1986年刊で、一見すると当時出された坂本龍一のアルバム『未来派野郎』の副読本のようだが、中を開くと正統なイタリア“未来派”のガイドブックなので吃驚。機械的ビジュアルが全ページに炸裂し、見応えあり。と言うわけですっかり現金に元気になり、阿佐ヶ谷「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)前を通りかかると、東方社「長編探偵小説 呪ひの塔/横溝正史」(貸本仕様。カバーナシ。背にテープ補修あり)が店頭にてギラリと輝いたので、即座に110円で購入する。

おまけ:祖師ケ谷大蔵の商店街は、駅から広がる様々な商店街が力を合わせ、『ウルトラマン商店街』と名乗り、幟や外灯やゲートで、ウルトラ的雰囲気を共有している。駅北口に出て、西に商店街を伝って行くと、かなり奥の方の『祖師谷ふれあいセンター』のエントランス部分に、実物大のカネゴンが座っているのを、本日初めて発見する。おぉ、これはまるで『ウルトラQ』の『カネゴンの繭』で、銀行前で女子行員の運ぶ小銭を狙うシーンか、腹が減って胸のカウンター数がドンドン下がって行くシーンのようではないか。こんな素晴らしいものが、いつの間にか建っていたんだ!と、いつまでもウルトラを卒業出来ない人間として、大いに感動する。
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2020年07月06日

7/6地道に二店を見て回る。

朝からある原稿のため、今年の己のブログを流すように読み返していたのだが、やはりコロナ禍による四月〜五月の緊急事態宣言下の四十八日間は、何だか微妙に息苦しくなって来る。少し東日本大震災の時と、肌触りがなんとなく似通っている。繰り返す読書も、開けてくれている古本屋さんを訪れることも楽しいことなのだが、やはり潜伏する感染の恐怖と、自由を奪われた生活には、緊張感が漂ってしまっているのか…とは言っても、今もまだそのコロナ禍の真っ最中なのである。何だか雨風の強い初夏であるが、まだまだマスクを装着し、手指消毒に務め、手洗いうがいを励行して行こう。

午後に外出し、営業を六月から再開していた東村山の「なごやか文庫」(2020/04/07参照)の様子を見に行く。店先に置かれた三つの無料本箱を覗き込み、手指消毒してから、すっかりキレイになった店内へ。新し目の単行本や漫画や文庫を漫然と眺め、結局右壁棚下の一列の古書ゾーンに注目する。それしても真面目な本ばかりだ…と浅ましいため息をつきながら、新潮社「画家のことば/香月泰男」NHK出版「テレビ作家たちの50年/日本作家協会編」を計400円で購入する。帳場には誰もおらず、小さな立て札が置かれている。『この時間は事務所窓口で』と古本の精算を促している。そうか、もはや無人販売は無くなったのか。古本屋さんゾーンから出て、ちょっと奥に入って事務所で精算する。帰りの車中で本を見ていて気付いたのだが、「画家のことば」は表見返しに『y・kazuki』のサイン入りであった…うぅぅぅぅぅぅ、嬉しぃっ!
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鷺ノ宮に戻り、テクテク『中杉通り』を南へ。そうだ、『早稲田通り』沿いの「古本ブック流通センター」(2008/08/09参照)もハシゴして行くか。東京都の休業要請中は、ちゃんと休業していたので、その後ちゃんと開いているかどうか気になっていたのである。おっ、店頭にガチャガチャの機械が出されている。営業再開しているようだな。店内に滑り込むと、前入った時と相変わらず変化のない状況。それでもブランクが所々に生まれている棚を念入りに検分し、岩波文庫「日本渡航記(フレガート「パルラダ」號より)/ゴンチャロフ」(昭和十六年第二刷)を100円で購入する。本は朽ちて行くばかりだが、お店が健在なので、何はともあれよかったよかった。
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2020年07月05日

7/5太宰と小酒井。

古本屋とは何の関わりもないが、昨日午後八時に家のベランダから見た夜景。まるで夕方のような明るさが、空に垂れ込める雨雲と地表の間に出現しており、魂消てしまった。夏至も過ぎたと言うのに、まるで白夜を思わせる明るさではないか…。
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色々バタバタしてあまり動けず、今日ようやく西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)に顔を出し、「フォニャルフ」売り上げを受け取りつつ、木馬社「太宰治の手紙/小山清編」を100円で購入する。河出新書の「太宰治の手紙」は、これが元本なのか。店主・小野氏は注文が殺到している盛林堂ミステリアス文庫新刊「孤島の花/香山滋」の発送作業に勤しんでいる。ちょっとだけ先の仕事の話をして、すぐさま阿佐ヶ谷に逆戻り。「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)で文藝春秋社「日本の黒い霧/松本清張」岩谷書店「別冊宝石31 世界探偵小説全集 L・J・ビーストン G・K・チェスタートン篇」を計640円で購入すると、奥から店主の天野氏が姿を現し(この時のレジ対応は奥さまだった)、今まさに棚に出そうとしていた最近とっても気になっている、古い探偵小説の一群を見せてくれた。今回は小酒井不木中心か…。全集・探偵小説関連・犯罪関連・医学関連と、不木の得意分野が過不足なくまとまった感じである。再版だが、ちゃんと函付きの京文社「殺人論/小酒井不木」が素敵なので、1050円で購入する。あぁ、家の至近で古い探偵小説関連が安値で買える幸福、ここにあり!
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というわけで、ちょっとの外出で嬉しい収穫二冊。「太宰治の手紙」の題字は井伏鱒二によるもの。「殺人論」には、冒頭の序文に森下雨村への謝辞あり。そして少しボロいが、函があるのはやっぱり嬉しい!
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2020年07月03日

7/3古本を買って送ってまた買って。

昨日は古本神・岡崎武志氏に埼玉・東松山周遊に誘われていたのだが、所用があり断念。ささやかに吉祥寺に出たついでに古本屋さんを巡るに留まる。「よみた屋」(2014/08/29参照)でグラフ社「ミステリー美食紀行/菊池直子」を110円で購入し、「バサラブックス」(2015/03/28参照)では読売新聞社「推理小説読本/木々高太郎」を500円で購入し、「一日」(2017/08/11参照)では復刊ドットコム「藤子不二雄Aランド 怪人二十面相1・2」を計440円で購入する。…もはや吉祥寺は、古本の狩猟場として欠かせぬ街になったな。

そして本日は午前のうちに神保町へ。今回は午前十一時開店のお店に合わせるように、午前十時半過ぎに水道橋駅に降り立つ。『白山通り』をスルスルと下り(ひとつ気になることが。シャッターの下りた「神田書房」(2012/02/16参照)の店脇の柱に、管理会社の貼紙が貼り出されているのだ。ということは、もしや空き物件になってしまったのか?久しく開いているところを見かけないので、とても心配しているのである)、「アムール」(2011/08/12参照)で岩波文庫「註文帳/泉鏡花」講談社文庫「死の報酬/結城昌治」を計100円で購入する。『靖国通り』に入って午前十一時を過ぎると、「田村書店」(2010/12/21参照)ももう販売を開始している。すぐさま木製ワゴンに魅了されたひとりとなり、第一書房「詩法/マックス・ジャコブ」芝書店「Xへの手紙/小林秀雄」日進堂「趣味の動物/飯塚啓」を計700円で購入する。「詩法」には後見返しに、蔵書票を模した古い古書店ラベルあり。『峰元文雅堂 省線神田駅前』と書かれている。“省線”とあるからには、かなり古いものであることがわかる。店名から察するに、月島「文雅堂書店」(2008/07/14参照。森下移転後は2012/06/14参照)の一派だろうか?
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お昼過ぎに帰宅し、昼食を摂った後、大阪に三十冊ほどの古本を送り出す。駄本・珍本・探偵小説関連など、いつものように悩みに悩んで詰め込んだので、ルクアイーレ9Fの「梅田蔦屋書店」古書棚を、七月も引き続きよろしくお願いいたします。そして郵便局に出た足がそのまま高円寺に向き、「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)でNEKO MOOK2420「レッツ・プレイ・フォルクスワーゲンvol.49特別付録 Kdfワーゲンカタログ」を100円で購入する。…フォルクスワーゲン専門の雑誌があるなんて、今の今まで知りませんでした。そしてこの購入冊子は別冊付録で、1938年発行のドイツの、ナチスが国民車として開発したワーゲンカタログの復刻版である。ポルシェも開発者の一人として登場している。
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2020年07月01日

7/1香山滋新刊を『海鰻荘』跡地に誘う。

連載原稿を仕上げてホッと一息。スッキリしてまだ風が吹き荒れる夕方、西荻漥へ向かう。「盛林堂書房」(2012/01/06参照)内「フォニャルフ」棚に真面目に古本を補充しつつ、帳場でカバーデザインを担当した盛林堂ミステリアス文庫の新刊を受け取る。「海洋冒険連続小説 孤島の花/香山滋」である。併録作品は『眼球盗難事件』。ともに児童雑誌や少年新聞に連載された児童冒険&探偵小説で、「香山滋全集」に未収録の作品。貴重な復刊となったわけだが、全集から漏れたのには当然理由があるのだ。詳しくは発行者の『あとがきにかえて』をお読み下さい…。さて、何はともあれ、大好きな秘境探検家・人見十吉を生み出した、香山滋の新刊である。デザインを担当出来た嬉しさと、幻の作品を読める嬉しさを合体させ、早々に帰宅しつつある場所に足を向ける。およそ四十分後にたどりついたのは、中野区大和町『蓮華寺』墓地裏の、昭和十二年〜二十八年の十六年間を香山が暮らした寓居『海鰻荘』跡地付近である。『孤島の花』も『眼球盗難事件』も昭和二十四年に連載された作品なので『海鰻荘』で書かれたわけである。七十一年の時を経て、一冊の文庫本となり、創作の地に舞い降りたわけである。うぅむ、感激。本は7/4から「盛林堂」店頭販売開始(通販は予約部数に達しているため、現在予約停止中)。
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そんなバカなことをして家に帰ると、大阪「梅田蔦屋書店」から、営業再開後の先月分の古本の売り上げ表が届いていた。おぉぉぉぉっ、ちゃんと売れていて、これは非常に嬉しい。お買い上げのみなさま、誠にありがとうございます!よし、気合い入って来たぞ!もうすぐ面白い珍妙な補充本も送りますので、引き続き西の古本棚を、何とぞよろしくお願いいたします!
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2020年06月30日

6/30平井呈一の文字を見ながら団子を頬張る。

昨日受け取ったばかりの、ロバート・E・ハワード短篇集「地獄船の娘」を、ビュビュビュンと読了する。いやぁ、痛快で爽快で残虐でセクシーで面白かった。水夫で射撃手で密猟者であるワイルド・ビル・クラントンが大活躍する、腕力と閃きと行動力こそがすべての、マクガフィンを奪い合う暗黒の世界。そこにぐいっと割り込む勝ち気な美女たちとのラブシーン。1930年代のアメリカのラノベと言った感じか。文字を追ううちに、頭が空っぽになって行くのを実感…そして何も残らずに、目の前に本だけが残る。いずれ出る二巻目も楽しみにしておこう。

今日を最後に、阿佐ヶ谷の名和菓子屋「うさぎや」が一ヶ月半ほどの店舗改装休業に入ってしまうので、しばらくのお別れに団子なぞ買って来て食べることにする。平井呈一の揮毫した筆文字が踊る包装紙を剥がし(平井は店主の叔父にあたる)、三連のみたらし団子をパクリ。やはり、ウマいウマい。
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午後は原稿を書き進め、雨の降る前に少しだけ外出して高円寺に足を向ける。「大石書店」(2010/_03/08参照)で講談社「黒い秘境コンゴ 刺青と割礼と食人種の国/宮田文子」を200円で買ったところで(帳場では「「課長島耕作」と「男はつらいよ(DVDマガジンか?)」を探しているんだ!」と堂々宣言するおじいさん客が、高円寺・阿佐ヶ谷・荻窪の古本屋巡りの楽しさについて熱く語っていた)、雨が降り始めてしまったので、慌てて家に引き返す。
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2020年06月29日

6/29梅雨の狭間の古本屋回り。

昨日は、土曜日の時点で財布を無くしていることに、遅ればせ過ぎながら気付き、悄然と過ごす。だが、すぎ丸に乗る時に使い、その後は手も触れていなかったので、恐らくすぎ丸で落としたに違いない。そう当たりをつけ、運行している京王バスに電話し、落とした日時と財布の詳細を伝えると、何と永福町の営業所に当該財布が届いていると言うのだ。大喜び永福町に駆け付け、財布を無事に引き取る。受け取る時に、所定の用紙に名前や住所や電話番号を書き付けるのだが、その時に「これを何か証明するものはお持ちですか?」と係の方に聞かれるが、運転免許証も健康保険証もすべて財布の中…「す、すみません。すべてその中に…」というと、係の方は「ハハハハハハ、そうですよね〜」と笑って渡してくれた。ふぅ、一時はどうなることかと思ったぞ。

そんな己の招いた愚かなアクシデントを乗り越え、本日は午後に外出。そろそろ開いているのではないかと、保谷「アカシヤ書店」(2008/12/17参照)を見に行ってみるが、すでに営業時間内なのに、パイプシャッターがガッチリと下りてしまっている。扉にはコロナ禍の休業要請に応え貼付けられた、二枚の休業のお知らせが貼られたままである…う〜む、これが貼りっ放しということは、まだお店は再開していないのだろうか?まぁ、また偵察に来ることにしよう。そんな風に空振りに終わったが、このまま空手で帰宅するわけにはいかぬので、大泉学園に出て「ポラン書房」(2009/05/08参照)へ。春陽文庫「清風荘事件/松本泰」を330円で購入し、ひとまず古本心を宥めすかす。続いて石神井公園に出て、「きさらぎ文庫」(2009/01/21参照)に立ち寄る。おぉ!岩波少年文庫46オリジナル版の「サル王子の冒険/デ・ラ・メア 飯沢許」をラック棚に発見する。NHKラジオドラマ『ヤン坊 ニン坊 トン坊』の原案となったお話でしょう!と喜んで抱え込み、文春文庫「旅芝居殺人事件/皆川博子」とともに計200円で購入する。なんだかエンジンの回転数が、無闇矢鱈と上がって来たぞ!そのまま南口駅前からバスに乗り込み荻窪へ。「竹陽書房」(2008/08/23参照)では河出文庫「家と庭と犬とねこ/石井桃子」アトリエ社 現代ユーモア全集第五巻「喃扇樂屋譚 碁盤貞操帶徳川夢聲」(函ナシ)を計600円で購入する。まさか『現代ユーモア全集』と竹陽さんで出会えるとは。これだから古本屋回りは、やめられないこたえられない。
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「竹中書店」(2009/01/23参照)は店頭ワゴンの中身がいつもとちょっと違っており、右側の二冊100円コーナーに、古い映画館の二番・三番館のニュースパンフが小分けされ並んでいる。パラパラと繰って行くと、『東宝映畫封切 阿佐ヶ谷 名画座』『阿佐ヶ谷オデヲン座』などがまとめられた一群を見つけたので、「ゆうばり国際冒険・ファンタスティック映画祭'92」パンフレットとともに100円で購入する。『阿佐ヶ谷 名画座』は駅南口にあったらしい。その跡地と思しき場所を遠望し、里帰りの記念撮影。
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そんな一日を締めくくるように、駅頭でカバーデザインを担当した本を受け取る。綺想社「綺想紙漿小説 スパイシー三昧壹 地獄船の娘 竜涎香の秘宝/ロバート・E・ハワード」。『剣と魔法の世界』を築いたコナンシリーズのハワードが、パルプマガジンに発表した、本邦初訳のB級アクションバイオレンスお色気小説…言わば逆ハーレクインとでもいいましょうか…いや、低俗で通俗的で大衆的で素晴らしい!うひゃっ、この文庫、糸縢りでスピンも付いてる。何でこんなに豪華な造りなんだ!と製作者に疑問をぶつけると「いや、どうせそんなに売れないだろうから、自分が楽しむために手をかけたんですよ」とのこと。全く持って物好きである。まぁそうでないと、こんな訳本は出版しないか。七月四日から「盛林堂書房」や「まんだらけ海馬」に並ぶと思うので、一風変わった刺激を味わいたい方は、お店で探してみてください。
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2020年06月27日

6/27「豊川堂」の様子が少し変わっていた。

今日は午後に桜上水の南に流れ着いたので、、谷から次第に脱するように北西に進路を採り、下高井戸に出る。踏切を渡り、マーケットのアーケードを横切って『下高井戸商店街』。あっ!「豊川堂」(2016/07/04&2008/09/09参照)が久しぶりに営業している!…いや、正確には、私が久しぶりに営業しているお店に出会えたと言うべきか…。そして、二つの扉を全開にし、そのためか次々とお客さんが店の中に吸い込まれて行く、今までに見たことのない賑わいの状況!釣られるようにして中に引き込まれると、左翼のコンクリ土間が、物凄く整理がいつの間にか進んでおり、床の半分を埋め尽くしていた本の山が片付けられ、左壁棚が上から下までちゃんと見られ、手が伸ばせるようになっている。おまけに棚下に、一列の新たな文庫ゾーンが出現しているのだ。おかげで店内には営業する気満々の姿勢が漲っているようで、清掃も事細かに施されているので、何だかとっても清々しい…これは、清新な老舗の古本屋さんだ。「豊川堂」の、そんな小さな変貌を楽しみながら、主に左壁の棚に気持ちを集中させる。すばる書房「十二人の絵本作家/瀬田貞二」を700円で購入する。児童文学研究&翻訳家の瀬田貞二が、ウィリアム・ニコルソン、ブルーノ・ムナリ、初山滋、小山内龍、エズラ・ジャック・キーツ、村山知義、ペール・カストール、樺島勝一など、内外の絵本作家の論考をまとめた一冊である。帰りのすぎ丸車中でちょっと読み始めると、各作家ごとに、代表作の絵本のページ構成を、詳細に文字で説明するコーナーがあり、絵本を文字で表すのが何だか逆説的で、難しいルートから山に登っているようなので、新鮮で屈折していて楽しい。
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2020年06月26日

6/26王子の「山遊堂」はあと数日。

王子の「山遊堂 王子店」(2008/08/31参照)が六月末に閉店するというコメントタレコミを入手したので、『六月末って、後幾日もないじゃないか!』と慌てて昼過ぎに駆け付ける。王子駅の高架島式ホームに降り立つと、こんもりと緑が生い茂る飛鳥山が、梅雨の間の晴れ間にギラギラと輝いている。北口から駅前に出て、歩道橋を渡って『明治通り』をグイグイ進む。そして小さなビルのお店にたどり着くと、軒の大きな看板がいつの間にか無くなっている。目立って『閉店』などとは貼り出されていないが、良く見ると、小さな『閉店セール 文庫本 ALL100円』『閉店のお知らせ 諸般の事情により、6月末日をもちまして閉店いたします。長年のご愛顧に感謝いたします』などの紙が、そこここにひっそりと存在している。店頭壁棚を一渡り眺めてから店内へ進む。一階はゲームやコミックや一般書が並んでいるが、単行本に混ざり文庫本も並んでいるので、注意が必要である。店内には『500円以上お買い上げは30%オフ(ただし100円の商品は除く)』の貼紙アリ。二階へ向かい、踊り場の古書コーナーに目を光らせてから、メインフロアの専門書・文学・文庫本ゾーンに身を浸す。棚はまだまだ嬉しいくらいにギッシリである。並びは新古書メインだが、古書も稀に紛れ込んでいるので、見逃さぬよう注意を払いながら通路を進む。む、む、む、む、む、む…と六冊ばかり掴み、二階のレジで精算する。作品社「天使/黙示/薔薇 笠井潔探偵小説集」創元推理文庫「戦場のコックたち/深緑野分」河出文庫「蟇屋敷の殺人/甲賀三郎」ちくま文庫「謎の物語/紀田順一郎編」講談社国枝史郎伝奇文庫「神秘昆虫館」光文社文庫「少年ミステリー倶楽部」「森下雨村 小酒井不木」共にミステリー文学資料館編を計950円で購入する。三階のコミック売場には足を踏み入れず、重い古本を携え、一階入口脇レジの「ありがとうございました」の声に送られ、暑い日が射す表に出る。このお店は、私にしては珍しく、同行者とともに訪れることが多いお店であった。2017年6月29日には古本トリオと『せんべろ古本ツアー』で。2018年10月28日には、古本神・森英俊氏とともに。王子からこの大きなお店が消えるのは、何とも寂しい限りである。
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家に帰って、大阪に送る古本を少し作り始める。
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2020年06月25日

6/25昨日と今日の吉祥寺。

昨日は西永福に流れ着いたので、トコトコ浜田山まで出て、すぎ丸に乗ろうかと思ったが、思い直して京王井の頭線に乗り込み、吉祥寺へ向かうことにする。そう言えば、先日の「ゆたか。書房」での最後の買いもの(2020/06/18参照)、「燈火節/片山廣子」を大事にチロチロと読み進めているのだが、戦中戦後に片山が住んでいたのが濱田山で、土地に関する隨筆が何編か掲載されている。当時は畑の中に竹薮や椎や樫の大樹が茂る、いわゆる“武蔵野”的風景が駅の周りに広がっており、信濃に匹敵する空気の清冽さを誇っていたそうである。今は見えるのはびっしりと身を寄せ合う、人工物の家ばかり…そんな感慨に耽りながら、まずは「古本センター」(2013/07/01参照)へ。処分品棚からクレオ「秘する肉体 大野一雄の世界」を250円で購入してから「よみた屋」(2014/08/29参照)へ。こちらでは300〜500円棚から、同盟出版社「黄菊の館/西條八十」を330円で購入する。昭和十八年刊の、悲し過ぎる嘆きの大政翼賛詩集で、装幀は藤田嗣治。

そして本日は井の頭公園の南側に流れ着いてしまったので、「book obscura」(2018/01/12参照)の店頭が安売写真集コーナーに変貌したのを目撃してから、公園をスパッと横断して、まずは「一日」(2017/08/11参照)へ。するとガレージの300均コーナーで、講談社「誘拐作戦/都筑道夫」が渋く輝いていたので、330円で購入する。真鍋博の装幀が抜群に決まっている一冊。
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その後、昨日もお世話になった「よみた屋」では、童心社「宮沢賢治 花の童話集」「宮沢賢治 星の童話集」岩波書店「星の王子さま/サン=テクジュベリ」を計330円で購入する。「星の王子さま」は、先日入手した裸本の初版本を入れる邪な目的のために購入。1974年の二十八刷なら、なかなかに古いしまぁ大丈夫だろう…と思ったら、あぁ!定価が違っている。初版は600円だが、こちらは値上がりしていて800円…もうちょっと古いヤツを見つけないとダメか…。
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2020年06月23日

6/23待ちあぐねて二冊の本を読み進める。

昨日から引き続き、仕事の連絡がない…設定の締め切りはとっくに過ぎているのに、まったく困ったものだ。と言うわけで、そんな頼りない連絡を待って家に閉じ篭り、あれこれやりながら、易風社「生/田山花袋」と竹書房文庫「幻綺行 完全版/横田順彌」を交互に読み進め(「生」は章ごとに、「幻綺行」は短篇一作ごとに…早稲田辺りが舞台で一家族の心情を詳細にドンヨリ描く自然主義文学と、ユーラシアを舞台にした痛快SF世界無銭自転車探検冒険小説…頭がどうにかなりそうな気もするが、これが意外にもギャップをそれほど感じることなく、二つの世界に素直に分け入れられるのが、不思議不思議)、本物と紛い物の明治の空気を深くじっくり吸い込み、脳髄にジワジワと毒のように浸透させる。ところで「幻綺行」には巻末にオマケとして、「SFアドベンチャー」掲載時の漫画家・バロン吉元による挿絵が収録されているのだが、この中村春吉が、癖になるほどの格好良過ぎのダンディー過ぎのバタ臭過ぎで、思わず心の中で『中村春吉、こんなんじゃないだろ!』と突っ込んでしまう。あぁ、バロン吉元の絵は、一級の芸術品だな…。
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これが世界無銭自転車旅行家・中村春吉の勇姿。ぜひバロン吉元の絵と比べてみて下さい。

そして痺れを切らして午後に一瞬外出し、高円寺まで出て「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)を覗く。春秋社「わが本籍は映画館/木村威夫」早川書房「ハリウッド映画特急/原田真人」を計400円で購入して家に戻ると、ようやくお仕事の返事か帰って来ていた。これで進行出来る。よかったよかった。
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2020年06月22日

6/22古本に擬態した新刊を買い求める。

朝から本日締め切りの仕事の連絡を待っているのだが、待てど暮らせど何も言って来ない。仕方なく、雨と風の音を憂鬱に聞きながら、春秋社「現代世界探偵小説傑作集」を読み進める。先日、アポリネエルの作品がSFであることを挙げたが、後半の一編『クリシイ街の遺書/モーリス・ルナール』は、W・W・ジェイコブスの『猿の手』の変形版と言える、なかなかドギツいモダンホラーであった。やはりこんなのを『現代世界探偵小説傑作集』に滑り込ませる水谷準は素敵だ!…などとやっていても、連絡は来ない。こんな調子ではとても古本屋さんをブラブラ楽しみに行くわけにはいかないので、雨のちょっと治まった午後三時過ぎに一瞬だけ駅前の書店に外出し、古本に擬態した新刊文庫を買い求める。驚異の明治の世界無銭自転車旅行探検家・中村春吉を主人公にした幻想冒険譚、竹書房文庫「幻綺行完全版/横田順彌 日下三蔵編」である。昭和二十年代のポプラ社の児童用『探偵冒険小説』の装幀を模し、古本的な傷みや破れやスレや汚れを印刷で施した、大変に愉快痛快な一冊。新刊が古本に擬態することに、いったいどんな意味があるのか?基本的に“擬態”の目的とは、攻撃や自衛のために、見る者を欺いたり警戒心を起こさせることであろう。だがこの場合、新刊書店で同文庫を見かけた時に『うわっ、これ古本じゃん。汚れてるじゃん。破れてるじゃん。なんで新刊書店にこんなのが並んでるんだよ』と、手を遠ざけさせるのが目的でないのは、明らかである。本を書店に並べるのは、お客さんに買ってもらうのが目的。ということは、たまたまブラッと新刊書店を訪れた古本修羅に、『あっ!こんなところに古本が売ってる!しかもポプラ社の少年探偵冒険小説じゃん!ラッキー!』と勘違いさせて、買わせるためではないだろうか…なんて下らないことを考えてしまうほど、小さな文庫サイズなのに、見事に古本のポプラ社児童本に擬態しているのだ。書店で平台にこれが並んでるのを見た時は、ハッとして、手にした瞬間ニヤリとしてしまった。つまりこの擬態は、マニアックな古本へのリスペクト&パロディなのである。手間ひまかけた。粋な遊び心の反映なのである。こんな楽しい文庫が出るなんて、二〇二〇年代も捨てたものじゃない。出版不況なんかなんのその!と声を大にして叫びたくなって来る。そんなこんなで家に素早く戻り、この小説の大元となった明治四十二年刊の博文館「中村春吉自転車世界無銭旅行/押川春浪編述」とともに記念撮影する。百十一年の時を経て出会う、中村春吉本二種!片や押川春浪、片や横田順彌!うぉぉ、興奮する!
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2020年06月21日

6/21西荻窪で明治の花袋を!

天気がコロコロ入れ替わる日曜日の午後に、松庵に流れ着いたので、フラフラ北に歩いて西荻窪に出て、まずは「盛林堂書房」(2012/01/06参照)に顔を出す。早川書房「海外探偵小説作家と作品/江戸川亂歩」(函ナシ。いったいどんなミスなのか、本扉が上下逆になっている。そしてカットが北園克衛だ!と初めて知る)至誠堂「搦手から/長谷川如是閑」(函ナシ)を計200円で購入しつつ、新しく美しく機能的になった番台周りの揃いもの棚を愛でつつ、店主・小野氏とビニールカーテン越しに楽しく古本話をペチャリクチャリ。憧れの島田一男「猫目博士」を見せてもらい、小さく興奮する。さらに盛林堂ミステリアス文庫最新刊「中山忠直SF詩集 地球を弔ふ・火星抄/横田順彌・北原尚彦編」を献本していただく。受け取った瞬間に「あ!文庫サイズなんだ」と驚くと、「北原さんが編集なんだから、このサイズに決まっているじゃないですか」と当然のように返される。さ、さすがは小さい本スキー。そして“SF詩”とはいったい何なのか?恐らく初めて接する文学の一形式なので、心して取りかかることにしよう。
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その後は「古書音羽館」(2009/06/04参照)に足を向け、角川文庫「黒いトランク/鮎川哲也」創元推理文庫「黒いハンカチ/小沼丹」を計200円で購入し、“黒い”コンボだ!と他愛なく喜んだりする。さらに「忘日舎」(2015/09/28参照)の店頭棚前で足を停めると、最下段にパラフィンの掛かった裸本に古本心を搦めとられる。手にすると、明治四十一年再版の易風社「生/田山花袋」ではないですか!明治時代の花袋本が、カバーナシであるとは言え、百円で買えるチャンスなどそうそうそうそうあるわけではないっ!と思う存分いきり立ち、百円で購入する。うぅむ、表紙の箔押し文字が金キラキラなのに加え、石井柏亭のアール・ヌーヴォーな装幀にうっとりする。今から百十二年前の明治の自然主義文学、バンザイ!
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2020年06月20日

6/20「一日」も再開していた。

正午過ぎに、いつかのように新川に流れ着いたので、トボリトボリ『吉祥寺通り』を北上して、車も人も自転車も恐ろしいほどの賑わいを見せる吉祥寺へ。行列の出来ているうどん屋の角を曲がって、高架脇の裏路地に入ってみる。おぉ!「一日」(2017/08/11参照)の『本買います!』の幟が翻っている。ようやく営業を再開してくれたのだな!待ちかねていたんだ!そう喜びお店に近付くと、ありゃりゃりゃ?アコーディオンシャッターがガッチリ閉まっている。だが、ガレージスペースにはしっかりと300均本が並び、お客さんの姿もあるではないか…そうか、入口をひとつにして、入店時の手指消毒を徹底しているのか。そう気付いて、開け放たれた入口扉に回り、消毒してから店内に飛び込む。すると左側のギャラリースペースでは、児童文学&絵本の50%オフセール中。見事にそこに吸い寄せられ、函入り児童文学ゾーンから、あかね書房「それゆけ ねずみたち/山元護久作 司修絵」を見つけたので、907円で購入する。連日の児童文学本買いである。「それゆけ ねずみたち」はネズミの言葉がわかる少年が、仲間のネズミとともに、空とぶ車を持つ星みがきチャンピオンのおばあさんを、星を狙うギャングの魔手から救うために、知恵と勇気と暴力で渡り合うアクションファンタジー物語…こう簡単に書くと、とってもクレイジーな作品であることが、端的に伝わるだろう。いや、実際にかなりクレイジーなのだ。だが、これが山元護久の本領&十八番と言えよう!
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函入り児童文学本の重さを慈しみながら、続いて「よみた屋」(2014/08/29参照)へ。すると、入口前の300〜500円棚で、春陽堂書店「續山窩綺談 掟(はたむら)/三角寛」を見つけたので、喜び勇んで330円で購入する。今日もタイミング良く素晴らしい古本に出会えたことを感謝しながら、渦巻く人波から離脱して阿佐ヶ谷に帰る。すると「ゆたか。書房」さん(2020/06/18参照)は、まさに予告通りに、店内の本を運び出しの真っ最中であった。棚が、どんどん空になって行く…。今まで本当にありがとうございました!とさり気なく目礼し、青々とした六月のケヤキ並木の下を、いつものように家路をたどる。
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2020年06月19日

6/19世界こども名作館。

午後にBSで始まった映画『ウエスタン』の冒頭シーンを観て陶酔した後、買物のために外出。色々買い足しながら、最終的に中野にたどり着き、『中野ブロードウェイ』四階の「まんだらけ海馬」(2014/02/15参照)に古本的安らぎを求める。様々な形の本が挿さっているので、立体的な並びとなっている児童文学棚を一心に眺めていると、特異な作家名が目に飛び込んで来た。『ダンセイニ』…えっ?ロード・ダンセイニの児童文学本なんてあったの?と面食らい、引き出してみる。潮出版社 世界こども名作館6冒険と勇気編「ケイバー博士の冒険/ダンセイニ作他 亀山龍樹訳編」という本である。ダ、ダンセイニだ…どうやら短篇集の一編として収録されているようだが、それにしてもこの懐かしい装幀…何処かで見覚えが…ハッ!もしかしたらあの本の同シリーズかもしれない。そう気付いて1100円で購入し、そそくさと帰宅する。長尺なのでまだ放送していた『ウエスタン』を横目にしながら、取り出したのは光文社文庫「ミステリーファンのための古書店ガイド/野村宏平」。言わずと知れた2000年代前半の古書店名ガイドブックである。最後の方の楽しいオマケコラムページに『古本屋で見つけた珍品』というのがあるのだが、そこに掲載されている「正義のルパン」が、まさに『世界こども名作館』のうちの一冊なのであった。やっぱりそうだったか!ちなみに「正義のルパン」は『名探偵と推理編』で、このアンソロジーでしか読めない珍品が含まれているとのこと。いつか読みたいものだが、めったに出会うことのない本である。確か一度ジュニアミステリの城「青梅多摩書房」(2013/02/16参照)で見かけたことがあったが、なかなかのお値段だったので、とても手が出なかった。シリーズには他に『魔法とファンタジー編』『おばけと怪奇編』『動物と野生編』『いたずらとユーモア編』『スリルとスピード編』『なぞとふしぎ編』『SFと未来編』『友情とまごころ編』があり、国立国会図書館には一冊も保管されていないそうである。全十冊を追い求めるには、偶然の出会いを求めて古本屋さんをさすらう必要がありそうだ。
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2020年06月18日

6/18いつまでも覚えていよう。

お昼過ぎに曇り空の下の高円寺に流れ着くと、住宅街の中にある、たくさんの老人たちが昼間っから日常的に酒盛りをしている公園を発見し、衝撃を受ける。何というアナーキーな公園…。世の中には様々な社会的空間があるのだな。そんなことを感じながら駅近くに出ると、「都丸書店」(2010/09/21参照)が本日から営業を再開していた。店頭棚で創元社「秘境への旅/大阪読売新聞社文化部編」を掴み、手指を消毒してから店内で購入する。帳場には感染予防のためのビニールカーテンが下がっているのだが、店主がレシートを渡そうとすると、下に潜らせるのではなく、そのままビニール越しにぬぬっと突き出して来た。当然受け取れるわけがなく、程なくして気付いた店主は、「あっ、すみません」と下から改めて渡してくれた。こういうのは、慣れるまでがなかなか大変ですな。取りあえずは営業再開ありがとうございます。

歩いて阿佐ヶ谷に戻って「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)に滑り込み、探偵小説関連古書棚に熱視線を放射する…よし、今日はこれを買って行こう!講談社小説文庫「平賀源内捕物帳/久生十蘭」である。表4に貸本屋の印が捺されているが、それでも破格の1050円で購入する。
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『中杉通り』に出て北に向かっていると、「ゆたか。書房」(2008/10/19参照)のシャッターが半分上げられ、店内では二人のご婦人が整理作業を進めている。これは最近良く見かけていた光景なのだが、コメントタレコミにより「ゆたか。書房」店主はご病気で、ついにこのままお店を閉めることとなり、お二人は今週土曜日の本の搬出の準備作業をしていることが判明する。というわけで、今日がお店に入る最後のチャンスなのである。店内にしずしずと入り込み、お二人に声をかけると、閉店と搬出の事情を丁寧に教えていただく。その上で「よろしかったら、ぜひとも本を見て行って下さい」とのことなので、お店とお別れをするために、作業の邪魔をせぬよう棚を見て行くことにする。…あぁ、そうか、もうオヤジさんとは会えないのか。お店にちょっと通ううちに、いつしか道で出会うようにもなり(本当に何故か良く『中杉通り』で擦れ違ったのだ)、お互いに照れながら会釈を交わしたなぁ。小さなお店だったけど、この棚の硬さがいつでも心地良かったなぁ。などと感慨に耽りながら、最後の一冊を選ぶ。カバーナシの暮しの手帖社「燈火節/片山廣子」を“お気持ち”価格の500円で購入。お二人にオヤジさんへの「どうかお大事に」の言伝を頼み、お店を後にする。このケヤキ並木の広い通りに、小さな古本屋さんがあったことを、いつまでもいつまでも覚えておくことにしよう。…あぁ、俺の頭の中は、次第次第に、忘れてはいけない古本屋さんの思い出で、いっぱいになり始めている…。
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2020年06月17日

6/17「銀星舎」さんに挨拶する。

午後二時に北沢に流れ着いたので、ブラリブラリと下北沢に向かい、「ほん吉」(2008/06/01参照)店頭に姿を現す。ふむ、店頭棚に学研のB5ペーパーバック伝記物がたくさん並んでいるな…伝記の人物より背の執筆者に重点を置いて眺めていいく…須知徳平もお仕事しているな…それを確認してから上部の伝記名に視線を移す。担当しているのは宮沢賢治である。これは手に入れておいた方がよいな。そう決めて手指をアルコール消毒してから、店内へ。学研 小学生の伝記11「宮沢賢治/須知徳平」を110円で購入する。
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表紙の絵は、まるで渡辺篤史かはたまたドニー・イェンの如き宮沢賢治。巻末の須知徳平の著者紹介は、最後は『六二年「ミルナの座敷」で第三回講談社児童文学賞受賞。翌年「春来る鬼」で第一回吉川英治文学賞受賞。そのほか作品に「アッカの斜塔」「人形は見ていた」「石川啄木」などがある』と〆られている。「ミルナ」「アッカ」「人形」の三作が、児童推理文学である特異さに、古本心が震える…いつかは手に入れて、オールナイト三本立てで読み耽りたいものだ。

阿佐ヶ谷に戻り、営業を再開した「銀星舎」(2008/10/19参照)に立ち寄る。ちくま文庫 怪奇探偵小説傑作選2「横溝正史集 面影双紙/日下三蔵編」を700円で購入しつつ、ビニールカーテンの向こうでマスクをしながら笑顔を見せてくれた奥さま店主と再会の挨拶を交わす。旦那さま店主とともに蒲柳の質なので、しばらくは身体を第一に労りながらの不定期営業となるそうだが、開けていただいて本当に嬉しいです!また開いている時に飛び込みますので、どうかお体をお大事に!
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2020年06月16日

6/16三ヶ月ぶりの神保町パトロール!

買ったばかりの「世界探偵小説傑作集」を早速読み始めると、最初はフランスの詩人で劇作家ギョオム・アポリネールの『僞救世主』。一読して、オーバーテクノロジーが出て来るSFチックな作品なのに驚く。戦前の“探偵小説”というジャンルの懐の深さを感じるセレクトである。これを冒頭に持って来た水谷準はスゴい!

本日は午前十時半に神保町に入り込む。およそ三ヶ月ぶりの神保町パトロールである。まずは「三茶書房」(2010/10/26参照)で店頭の300均ワゴンに取り憑き、全集目録や文学館パンフの束に挑む。丁寧に繰って行ったおかげで、『横溝正史館』のリーフレットを発見。横溝が上諏訪に向かう際、乗物恐怖症なので山梨市でよく途中下車をしていたことが縁となり、東京・成城の書斎を移築し、出来た記念館である。300円で購入する。街を進んで行くと、空きテナントが少し目につく。新型コロナの影響なのだろうか…そして、とっくに午前十時を過ぎているのにまだ開いていない古本屋さんや、開店準備中のお店が多い。これはどうやら、感染予防のために営業時間を短縮し、午前十一時からの開店が増えたためらしい。やはりまだまだいつも通りというわけにはいかないようだ。やがてビジュアルも店内も重厚な「一誠堂書店」(2010/03/27参照)に差し掛かると、ガラスウィンドウの前に立つマスク姿の番頭さんが、親し気に手を振ってくれていた。「神保町に来たの、三ヶ月ぶりですよ」とご挨拶し、非常事態宣言下の神保町の様子などを教えていただく。やはりお店はほとんどが閉まり、一誠堂さんも営業を再開したのは五月中旬からとのこと。六月に入り、ようやく街全体も動き出しているが、まだまだ以前の客足にはほど遠いそうである。せっかくなので店頭で目についた、紐で括られた新潮文庫「シャーロック・ホームズの冒険」「思い出」「帰還」「事件簿」「最後の挨拶」「叡智」「緋色の研究」「バスカヴィル家の犬」「恐怖の谷」をいただくことにする。すると550円だったのを、何と440円にしてくれるという。思わず「まさか、一誠堂さんに負けてもらえる日が来るなんて…」と感慨深く呟くと、番頭さんと店員さんに笑われてしまう。その後は『白山通り』の「タクト」(2011/11/11/参照)で、春陽堂書店「戀愛曲線/小酒井不木」(復刻版。函ナシ)を110円で購入し、最後に「日本書房」(2011/08/24参照)へ。久々に柔柔和本タワーや古い文学本にうつつを抜かし、中央公論社「彼女等と語る時/片岡鐡兵」を800円で購入する。モダンな中央公論社・中間物選集(隨筆やコント)の一冊である。ちなみに同シリーズの淺原六朗「都會の點描派」の巻末自社広告には、『ジヤズとキネマとダンスのモダーンライフ! 自動車と高層建築とスポーツの都會交響楽! 感覺的な機智に富んだモダーンナンセンス! そしてマルキシズムとアメリカニズムの街頭行進曲! この近代的カクテルを召上がれ!』の乱痴気な宣伝文あり。そんなモダーンな一冊を最後に釣り上げ、神保町を後にする。それにしても、いつもの感覚でお店をハシゴすると、お店に入る度に手指を消毒することになるので、なかなか大変だ。消毒液の種類も各店で違うし、手はスースーしまくるし、いつか一緒に気化してしまいそうだ…。
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というわけで本日の嬉しい収穫。そういえば横溝センセイ、昨日BSで放送された映画『病院坂の首縊りの家』で、冒頭に長い時間出演され、セリフもメチャメチャたくさん喋っていた。さすがは文士劇でならしただけのことはある……と言っておこうか。
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2020年06月15日

6/15「古書現世」で割と大物を。

午前中、仕事を進めつつ印刷所と電話でやり取り。現在鋭意制作中の綺想社のクラーク・アシュトン・スミス短篇集第二巻のカバーについて打ち合わせていると、印刷所の担当者が「スミスさんの背幅ですが…」と大真面目に発言したので、思わず携帯を握り締めながら笑いをこっそりこぼしてしまう。よもや、怪奇幻想作家クラーク・アシュトン・スミスも、二十一世紀の未来の日本で、“スミスさん”なんて親しみ込めて呼ばれているとは、想像もしなかっただろう。

そして午後に外出し、早稲田へと向かう。目的は6/8から営業を再開した「古書現世」(2009/04/04参照)である。店頭ワゴンに煉瓦の如く積み上がる、黒い三島由紀夫全集を横目に、手指を消毒して店内に入ると、おや?以前より通路がスッキリと広くなっている。帳場に座る、いつものようにちゃんと大きな向井氏と目が合ったので、棚も見ずにまずは帳場にズズッと向かい、再会の挨拶を交わす。「古ツアさんが来てくれて、これようやく本当の営業再開ですよ」と、涙が出そうなことを言ってくれる。ご無沙汰しました。お元気そうで何よりです!これはしっかり何かを買って行かなければ…と休業中に整理の格段に進んだ通路店内を一巡。「現世」にしては珍しく、レア漫画評論関連・同人系復刻漫画・豪華漫画が幅を利かせているのが愉快である。だが、私が最初から買おうと思っていた本は、実は決まっていた。去年からずっと狙いを付けていた、存在感デカく売れ残っていた一冊、春秋社「現代世界探偵小説傑作集/水谷準選・江戸川乱歩監修」(函ナシ)である。読みたかったんだ。欲しかったんだ。夢に観てたんだ。売れずにずっと俺に買われるのをけなげに待ってくれていて、ありがとう!と、再会&再開を祝う心積もりで五千円で購入する。念願の古本を買った後は、三島由紀夫全集がホイホイ売れて行くのを目撃しながら、休業中のお店のことや市場のことや古本屋業界のことや催事や早稲田大学の封鎖や買取のことや『本の雑誌スッキリ隊』のことや「みちくさ市」の今後や高円寺の自粛警察について、あれやこれやお話しする。そして向井氏は「これで書物蔵さんが来てくれれば、正真正銘の再開になりますよ」とのこと。というわけで「現世」では、書物蔵さんの来店を心よりお待ちしているようです。
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車通りの何だか少ない『早稲田通り』で、「現世」を遠望しながら記念撮影。

帰り道、『早稲田松竹』前を通りかかると、おぉ!6/20からはロメロの『ゾンビ』と『死霊のえじき』の二本立てが始まるのか。これは素晴らしい。今の感染症に脅かされる時代を、巧みに表現してくれる粋なラインナップである。
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2020年06月14日

6/14少年名探偵特集号!

午後二時過ぎに雨の経堂に流れ着いたので、もっけの幸いと「大河堂書店」(2009/03/26参照)に足を向ける。雨なので、店頭はすっかり布やビニールなどでガードされているが、しっかりと営業中である。およそ五ヶ月ぶりの訪問…うぅ、また来られて、感無量である。入店にはマスク着用が必須条件で、また店内滞留も三十分が目安となっている。久々の店内を、詳細な品切れ文庫棚を、帳場周りに散らばるお薦め本を存分に楽しみたいのだが、今はまぁ仕方ない。素早く見て回ることにしよう。ふむふむ、岡本喜八が多数入荷している…それに古い少年漫画雑誌も積み重なっている…とその山を漁っていると、まだまだ薄い時代の「少年マガジン」が目に留まる…おやっ、そのうちの一冊の背に『少年名探偵特集号』とあるではないか。無闇矢鱈な探偵物好きとしては、これをスルーしたら沽券に関わってしまうな。そうひとりごち、1000円で購入する。駅で急行を待つ間、講談社「週刊少年マガジン 昭和36年 少年探偵特集号」を引っ張り出す(ちなみに掲載の連載漫画は、吉田竜夫『マッハ三四郎』白土三平『狼小僧』石森章太郎『快傑ハリマオ』ちばてつや『ちかいの魔球』などである。全138ページで、漫画と読み物が半々の割合)。さて、どの辺りが少年名探偵となっているのか?まずは表紙写真が横浜港に怪しい黒眼鏡の男を追いつめた少年名探偵の特写(撮影協力は衣装提供の西武百貨店)。巻頭折り込みカラーグラビア『パトカーのすべて』(裏の一色グラビアは『犯人を見わける科学そうさ』)。特集物語『かた目の黒人形』(作者不明。目ざとい少年が、タクシー強盗事件の重要目撃証言をする、雰囲気はあるが緩めの少年探偵小説))。新百科事典『きみとぼくの探偵大学』。これらが特集内容である。『きみとぼくの探偵大学』は、犯罪やその捜査や探偵に関わる小さな五十のコラムが、雑誌全体に散らばっている形式である。専用目次には『この事典をおかきくださった先生』として、日本探偵作家クラブ副会長・中島河太郎のクレジットがあるではないか。河太郎先生、良いお仕事、ありがとうございます!
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阿佐ヶ谷では「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)に立ち寄り、平凡社「世界探偵小説全集9 ブラウン奇譚/チエスタートン作 直木三十五譯」(箱ナシ)を530円で購入しつつ、店主の天野氏に六月二十日の開店九周年には、また古本購入特典イベントをやるのか聞いてみると、色々あってスケジュールがかなりズレ込み気味であるが、何かちゃんと用意するとのことであった。よっしゃ。楽しみに待つこととしよう。
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