2019年01月16日

1/16今年初の神保町パトロール

朝から昨日の続きで「みちくさ市」の準備。掘り起こしに飽きたところで、寒い表に飛び出して、今年初の神保町パトロールに向かう。午前十時二十分。珍しく御茶ノ水駅からアクセスすると、ありゃ?「三茶書房」(2010/10/26参照)の店頭ワゴンが、いつの間にか五台になっている。
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三台はいつも通りだが、新たなものは洋書と揃い本が詰まっている。そんな小さな変化をまずは目にして、『靖国通り』を西進して行く。「田村書店」(2010/12/21参照)では木製ワゴンの本の上に積み上がった文庫群の中から、ちくま文庫「画文集 山の声/辻まこと」を200円で購入。「一誠堂書店」(2010/03/27参照)前では、表に出ていた番頭にさんに見事発見され、新年の挨拶を交わした後、冬の寒さと古本屋さんの古本屋巡りのジレンマなどについて言葉を交わす。そして店頭台に硬めな単行本が出ていたが、じっくり選んで函ナシだが評論社「旅と作家と私と/龍口直太郎」を200円で購入する。後で気付いたのだが、見返し裏に献呈署名入りであった(“たつぐち”だと思っていたら“たつのくち”であった)。『神保町交差点』を渡り、「ブンケン・ロックサイド」(2014/08/28参照)で集英社文庫「アニメ・キャラ大全集/鳴海丈編」を108円で購入。最後に『白山通り』北端の「丸沼書店」(2009/12/17参照)でちくま文庫「新編酒に飲まれた頭/吉田健一」集英社文庫「シャーロック・ホームズ傑作集/ドイル 中田耕す治編」を200円で購入し、午前中の内に家へと戻る。

そしてSF作家の横田順彌氏が旅立たれてしまった。「古本探偵の冒険」「古書ワンダーランド」などは、独自の目線で面白い本を探す楽しさに満ち溢れた古本屋ツーリストとしてのバイブルであり、「快男児 押川春浪」や「幻綺行 中村春吉秘境探検記」などは、明治にあまりにワールドワイドで規格外の人間がいることを、面白おかしく教えてくれた素敵な本であった。氏とは、盛林堂書房「荒熊雪之丞大全」の表紙デザインを手掛けた縁で、北原尚彦氏と盛林堂・小野氏に、番台横で紹介されたことがあった。氏は私を見るなり「細い、細いね〜。私なんかこんなだからねぇ。そんな風にならなきゃいけないねぇ。それにしても、細いね〜」と宣われた。こちらはただただ緊張するばかりだったが、一瞬でも同じ時を体験出来たことは、幸せこの上ない瞬間であった。きっと今頃は青い青い空の上で、天狗倶楽部に入部し、押川春浪と喧々諤々語り合っておられることであろう。横田先生、面白いことをたくさん教えていただき、本当にありがとうございました。
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これが「荒熊雪之丞大全」。楢喜八氏のイラストが素晴らしいので、ビシッと気持ち良くデザインできた覚えあり。
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2019年01月15日

1/15スピレイン以上のスリル!

最近大河ドラマで話題の『天狗倶楽部』と押川春浪であるが、先日の「ニワトリブンコ100均大会」(2019/01/04参照)で入手した著作「絶島軍艦」を昨日読了した。想像を超えた凄まじい物語であった。タイトルにもある“軍艦”は、敵対する露西亜・日本ともに途中で沈み(日本の軍艦“浮島丸”なんか、島の原住民の手にかかり『物凄く良く燃える油』で燃やされてしまうのだ…)、最後は露西亜・日本・原住民・人食い人種が、島で肉弾掃討戰を繰り広げる始末。日本の理学博士・吉野武夫は血刀を振りかざし、斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬りまくり、鬼神の如き活躍を見せるのだ…ウググ、メーターを振り切った話を読んでしまった…消化し切れない…でも面白いのは確かなのである…。

本日は突然の雨に祟られながら、世田谷の赤堤に流れ着いたので、豪徳寺まで濡れそぼりながら歩き、「靖文堂書店」(2011/09/06参照)でしばし雨宿りを兼ねた古本探しに取りかかる。帳場のテレビから聞こえるドラマ『捜査一課長』の内藤剛の力強い声に気を取られながらも、岩波写真文庫「近代藝術/監修 岡本太郎」改造社 世界大衆文學全集「ルコック探偵 河畔の悲劇/ガボリオー」(カバーナシ)春陽堂書店「半七捕物帳/岡本綺堂」を計600円で購入する。この「半七捕物帳」は昭和三十年刊の四六版ハードカバーで、貸本仕様。後見返しには『下北沢 ネオ書房』のハンコと『一般向 ネオ書房』のラベルが確認出来る。面白いのは帯の惹句や説明がすべて手書き文字で構成されているところ。表4は「江戸川乱歩全集 全15巻」の広告で、『スピレイン以上のスリル!サスペンス』と書かれている。かなり的外れな感じが、どうにもおかしい。
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雨が上がりつつあるので、世田谷線の線路を伝って下高井戸駅まで静かに歩く。家へ帰ってからは、日曜の「みちくさ市」の準備を少しずつ、ジワジワと進める。
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2019年01月14日

1/14高円寺経由定点観測

月曜日である。例の如く定点観測に向かう前に、今日が祝日故の催事最終日に向かうことにする。というわけで、テクテク顔を冷たくして歩いて、いつもとは逆の高円寺へ。「西部古書会館」で行われている「大均一祭」(2013/09/08参照)が驚異の50均で開かれているのである(一日目200円、二日目100円、三日目50円)。午前十時半過ぎだが、会場には熱気が渦巻いている。棚にはブランクが生まれ、もはや補充などない売り尽くし的雰囲気だが、来場者は皆懸命に棚に食らいつき、カゴや腕の中に本を積み上げている。そんな様子に気圧されながら棚を見て行く…か、硬い本が多い…だが、50円…と、こちらもこちらなりに懸命に一巡し、どうにか日新書院「隨筆 船醫手帖/伊藤行男」を50円で購入する。その後は駅に素早く向かい、電車で荻窪駅に移動する。車窓から見えた「ささま書店」(2018/08/20参照)は、すでに表に本棚を並べ終えたところである。皆「大均一祭」に行っているからだろうか、店頭にはまだ誰の姿も見えない。棚脇にはアルバイト募集の貼紙がある。週四〜六日で時給は1100円か…。ゆっくり眺めて三冊を掴んだ後は、店内の文庫棚に視線を注いで行く。日本人作家五十音順を入口側から見始め、次第に左に移動しつつ、最後はしゃがんで最下段の並びをチェックする。すると、すぐ左の海外文庫棚最下段に、横向きに無造作にレア文庫の「魔法入門」が置かれているではないか!慌てて手に取ると、初版・角川文庫フェスティバル帯付きで破格の1500円!定点観測、今週もバンザイ!と喜んでいただくことにする。角川文庫「魔法入門/W・E・バトラー」中央公論社「鍵 縮刷普及版/谷崎潤一郎」日本放送出版協会「写真表現の150年/伊藤俊治」文藝春秋「記念碑散歩/谷川吉郎編」を計1944円で購入する。
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安値で見つけた「魔法入門」はこれで三冊目(2016/12/18&2017/05/29参照)。「魔法入門」ハンターの称号を得るには、後二冊ぐらいは見つければ良いのではないだろうか。

続いて「藍書店」(2018/12/24参照)に足を向け、集英社文庫「海外版 怪奇ファンタジー傑作選/武田武彦編」を200円で購入してから、テクテク歩いて阿佐ヶ谷へ戻る。「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)で春陽文庫「悪魔の百唇譜/横溝正史」を103円で購入すると、店主の天野氏が「先日ブログに書いていた「井草ワニ園」(2019/01/05参照)ですけど、ウチにも来るお客さんなんですよ。記事が載った後、メッチャお客さん来たらしいですよ」と教えてくれた。なんだかちょっと嬉しいぞ。
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2019年01月12日

1/12五年振りに「象のあし」にサヨナラを。

サラサラパラパラと、粗い砂糖のような霰を浴びながら、いつもとは違うルートで荻窪へ向かう。しばらくして到着したのは、『四面道交差点』近くの『青梅街道』沿いにある「象のあし」(2008/09/03参照)である。およそ五年前に閉店することになり、50%セールに駆け付けたことがあったが、その後何故か閉店せずに復活営業を継続(2013/12/23&2014/11/26参照)。そのまま月日は流れて行った…たが、ついに今回は正真正銘の閉店を1/20(日)に迎えることになったのである。ぬぬっ、店前には驚くほど自転車がたくさん停まり、店内が若者からお年寄りまでで、異様に混雑しているではないか。セール内容の貼紙に目を向けると、『22年間のご愛顧ありがとうございました』『990円以下は全て100円』『その他の商品は販売価格の80%OFF』となっている。本当に売り尽くすための値段設定ではないか。そりゃあ混むわけだ。早速店内に入り込み、熱心に古本を選ぶ人たちの間を縫いまくり、各棚をチェックして行く。驚くことに棚下のストック引き出しも開けられ『ご自由にご覧下さい』とある。今にバックヤードまでも開放しそうな、売り尽くしへの激しい勢いである。ウロウロして結局三冊。白亜書房「コーネル・ウールリッチ傑作短篇集2 踊り子探偵」東京創元社「樹のごときもの歩く/坂口安吾・高木彬光」ワニの本「世界の怪談集/矢野浩三郎・青木日出夫」を計830円で購入する。店長さんは「今までありがとうございました。1/20までやってますので、ぜひまたお越しください」と、誰にでも丁寧に頭を下げている(常連らしい奥様に「今度はホントに閉店しちゃうの?」と聞かれたりもしていた)。レジにあった黄色いオリジナル栞を摘み取り、かつてあった、おかしな名前の同チェーン店の名に瞳を凝らす。中目黒「たらの芽書店」(2010/10/13参照)「熊の木書店」祐天寺「あたた書店」学芸大学「本とうです。」(2009/01/16参照)高田馬場「キノコノクニヤ書店」(2008/10/06参照)「ばーばー書店」(2008/10/06参照)…すべて閉店してしまった。これで残るは、小岩「どですか書店」(2011/01/17参照)と西荻窪「ねこの手書店」(2010/07/27参照)の二店だけとなったのである。
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2019年01月11日

1/11「なごやか文庫」がっ!

朝からある原稿の準備をのんびり進めるが、まだそれほど切迫はしていないので、午前十時過ぎには、思い立って東村山に出かける。福祉系古本屋さんの「なごやか文庫」(2012/01/10参照)が、単行本30円・新書&文庫10円の『新春たなおろしセール』を実施しているんだっけ。段々と気温が上昇する郊外の街を歩き、『社会福祉センター』に到着する。自動ドアから薄暗い施設内に入り込み、左手の「なごやか文庫」で早速激安値の古本と戯れ始める。二十分ほど滞在し、水書坊「紫の履歴書/美輪明宏」21世紀BOX「殺人王 世界殺人鬼ファイル/目黒殺人鬼博物館編」河出書房新社「みがけば光る/石井桃子」新人物往来社「推理文学 1971新春特別号」理工図書株式会社「奇術 種あかし/柴田直光」講談社「岩のある庭の風景/外村繁」俳人協会「西東三鬼集」カッパブックス「民法入門/佐賀潜」(以前大阪の「絶版漫画バナナクレープ」さん(2016/08/21参照)に教えてもらった通り、挿絵が笠間しろう)講談社青い鳥文庫「幽霊たちの館/ブルックスほか」岩波文庫「手仕事の日本/柳宗悦」を計220円で購入する。よし、それなりに買ったぞ!とお店から出ると、左に手作りの立看板があるのに気付いた。…なにぃ〜!「なごやか文庫」が建物大規模修繕のため、2/18〜11/30の間、営業を休止するだとっ!ガガ〜ン。およそ九ヶ月の間、安値の古本を思うさま買う喜びに、浸れなくなってしまうとは…うぅ。だが耐え忍んで待ち続ければ、いずれ新しいお店が出迎えてくれるのだ。待ちます、九ヶ月!尚、たなおろしセールは2/3まで行われている。
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2019年01月09日

1/9一月のお知らせ二つ。

本日は寒さと強風に脅かされながら、国立の南側に吹き溜まったので、「ユマニテ書店」(2009/06/22参照)にて小学館ミニレディー百科シリーズ15「バレエ入門/清水哲太郎」を100円で購入した後、震えながら阿佐ヶ谷へ戻り、さらに「ゆたか。書房」(2008/10/19参照)で福音館書店「めのはなし/堀内誠一」(2005年特製版)を300円で買い足し、早々に家に逃げ帰る。
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子供用のハードカバー本は、とても頑丈である。

さて、これだけでは素っ気なさ過ぎるので、最近気になっていることの与太話をひとつ。もうすぐだが、1/25にダリオ・アルジェントのイタリアホラー映画『サスペリア』のリメイク作品が公開される。私にとって『サスペリア』は、小学校四年生の時に横浜の馬車道の映画館に『ラッシー』を家族で観に行ったら、ロビーに置かれたテレビでエンドレスで次回上映の『サスペリア』の予告編が流れており、血まみれの首吊り少女や、針金で身動きが取れぬ少女などが、バンバン目に飛び込んできてしまい、おかげで完全に『ラッシー』どころではなくなってしまった、トラウマ体験を持っている。また高校生の時に、深夜にテレビで『サスペリア2』(『サスペリア』より前に製作された作品で、正確には続編ではない)を恐いもの見たさで観ていたら、例の人形が出て来るシーンが余りにも恐過ぎて、その後朝まで眠れなかったことがあった。かように心に深い傷を残した『サスペリア』シリーズだが、さすがに五十歳を超えた今、もう脅かされることはないだろうと思っていた。だが、それは甘い考えであった。己を過信した、ただの思い込みであった。ふと目にした新作『サスペリア』のあるものに、奇妙な畏怖を抱いてしまったのだ。それは映画そのものではなく、映画の欧文ロゴに恐怖を感じ取ってしまったのである。…、なんだ、この心の落ち着きを奪い、良く分からぬ不安が黒雲のように胸に広がる、可愛いが気持ちの悪いロゴは。ボンヤリと血と痛みを感じさせ、底無しの狂気を孕んでいるようではないか。う〜ん、やだなぁ…恐いなぁ。この欧文ロゴに似せて作ってあるカタカナロゴからは(翻案したように良く出来ている)、そんなもの感じられないのになぁ。不思議だなぁ。いったい何が原因なんだろう。下部の埋め込まれ並んだ針のような飾りが、その原因のひとつであることは何となく感じるのだが。…あぁ、もやもやとして、理由が分からない。それともこれは、私の心の問題なのか?…あぁ、やっぱり、恐い。

とまぁ、何だか無闇に恐がっているのですが、一月のお知らせを二つ!
●明日辺りから発売になる「本の雑誌 雪かき突進号 No.428」の連載『毎日でも通いたい古本屋さん』では、漫画家・喜国雅彦氏の「ひとたな書房」を取り上げております。探偵小説の嵐が吹きまくる、棚一列の小さな古本屋さん。もうここで何冊の本を買ってしまったことだろうか。入手困難な憧れの本を、何冊手に入れてきただろうか…ちなみに去年は八冊も購入してしまっている。あぁ!今でも毎月二回の補充が、楽しみで楽しみでならないのだ!いったい今年は何冊買うことになるのだろうか…?
●今年最初の「みちくさ市」に駆け付けます!去年から始まった一月の古本市が、今年もまた開かれます。昨年十二月に大量放出したばかりですが、まだまだ家には良い本やおかしな本がブンブン唸っているので、冬の雑司が谷に持って行きます。油断していると、面白い本がパッパと売れちゃいますよ!その前に来て下さい!そして買って下さい!
■「第45回 鬼子母神通り みちくさ市」
■1月20日(日)11:00〜16:00 雨天中止(当日午前八時に天候による開催の有無を決定)
■東京都豊島区雑司が谷二丁目・鬼子母神通り周辺
https://kmstreet.exblog.jp/
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2019年01月08日

1/8「調布の古本市」でデパート展突入を疑似体験する。

阿佐ヶ谷駅前から、コミュニティバス・すぎ丸に乗り込み、浜田山で京王線に乗り換え、午前九時五十分過ぎに調布駅着。地上に出てロータリー越しに『調布パルコ』の入口付近を臨むと、すでに二十人弱の人が集まっているのが分かる。その先頭には、古本神・森英俊氏&風書房さんの姿が!…およそ百メートルは離れているのに、間違いなくあのお二人だということが、分かるぞ…。そのロータリーをグルッと回り込み、入口の小人波に近付いて行く。すると突然後から、「小山さん!」と声を掛けられる。振り向くより早く、風のように目の前に現れたのは、自転車に乗った北原尚彦氏であった。あぁっ!つい四日前と、まったく同じ出来事がっ(2019/01/04参照)!と笑い驚きつつ、自転車を駐輪場に停めに行く、氏の背中を見送る。入口に近付くと、他にも何人か四日前の「ニワトリブンコ100円均一大会」で見かけた方たちが…皆にわとりさんの「調布の古本市に来て下さい!」の言いつけを守り、ちゃんと馳せ参じるとは、自分も含めて義理堅い人たちだと感心する…いや、正直に告白すると、ただ古本を買いにきただけなのだが…。自転車を置いた北原氏が「間に合った」と姿を現すと、ガラス戸の向こうのガードマンたちが、腕時計で時間をチェックし始めた。ほどなくして午前十時になると、開店となりドアが開けられ、そこに並んでいた人たちが整然と、だが意外に素早く吸い込まれて行く。そして左にあった一基のエレベーターに全員が乗り込み、五階を目指す。北原氏に「なんかちょっと、話に聞く昔のデパート展突入シーンみたいですね」と言うと「うん、そんな感じするね」「昔、突入してました?」「いや、ないんじゃないかなぁ…あ、でも確か京王デパートで一回…」などと話していると、エレベーターの扉が五階で開く。するとゲートが開いた競走馬のように、半分以上の人が小走りになり、誰もいないフロアを催事場目指して突き進んで行く。先行隊に遅れて催事場入りするが、想像以上の混雑や争いはなく、余裕を持って各店のワゴンを見られる状態である。「ハナメガネ商会」(2014/04/26参照)の(2009/07/25参照)児童文学、「東京くりから堂」(2009/10/29参照)の旅古書、「うさぎ書林」(2009/07/07参照)の映画古書、「にわとり文庫」のジュニアミステリなどが目を惹きつける。ぐるぐる催事場を一筆書き(もちろん動線は交差してしまっているが…)で二周ほどして、「一角文庫」から出帆社「ルーフォック、オルメスの冒険/カミ」河出書房新社「生存術/吉田八岑・川村光曉」を選び、さらに「かぴぱら堂」でサンケイ新聞社「未来の仲間・大ロボット博」(1982年に『日本橋高島屋』で開かれた、当時最先端のピンからキリまでのロボットを展示した博覧会のパンフレット)などを選び、計1620円で購入する。精算時ににわとりさんの奥さまに「強制してしまってすみません」とにこやかに謝罪される。いえ、どうせ、強制されなくても、来ていたんです!買物を終えた北原氏と肩を並べて会場を離脱する。この「第4回 調布の古本市」は1/22(火)まで。一階エスカレータ下り口で氏と別れた後は、やはりビルの隙間の「円居」(2009/03/02参照)に足が向いてしまう。するとそこには市で見かけた方が一人二人…行動パターンが同じなのに、頬を少しだけ赤らめる。角川文庫「JAMJAM日記/殿山泰司」早川書房「SF英雄群像/野田昌宏」を計700円で購入し、往きのルートを逆になぞる形で帰路に着く。
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古本市は浅生ハルミンさんのイラストが目印!
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2019年01月07日

1/7古本屋さん定点観測初め!

朝の内に連載原稿を完成させ、送信してスッキリしてから外出する。月曜は「ささま書店」(2018/08/20参照)の定点観測日であるが、お正月を跨いだので、何だか久しぶりな気がする。いつも通り裏路地を伝い、テクテク歩いて、強い風に頬を冷やしながら、塀の上の首輪をした猫に話しかけたりして、店前にたどり着く。午前十一時三十三分であるが、すでに三人の人が棚前に張り付いている。首を竦め、ポケットに手を突っ込んだまま、少し前屈みになったりして寒さを凌ぎ、幻洋社「北海道こわいこわい物語/合田一道」文庫クセジュ「妖術/ジャン・バルー」「呪術/J・A・ロニー」を計324円で購入する。さて、去年ならばこのまま帰路に着いているのだが、今年からは一味違う。南側にググッと向かい、「藍書店」(2018/12/24参照)を定点観測ルートに組み入れたのだ。開いているかな?と思いながら、大通りから横道に入り込むと、おっ!ちゃんと本が表に出ている出ている。ゆっくりとプラ箱と棚を眺めて行くが、今回は表では手が出なかった。そこで即座に店内に進み、棚を詳しくチェックして行く。先日来た時と大勢で動きはないが、それでも細かいところに変化は生まれている。それを一冊も見逃さぬよう、目玉に神経を集中させる。すると、ウィンドウ際の棚下段に挿さっていた古書の背に、古本回路がショートするほど反応してしまう!松本泰の訳書だ。これ、いつか盛林堂さんに見せてもらったことのある本だ。取り出してページを開く。そうそう、前書きが、倫敦に暮す郡虎彦に、セルビアの劇作家ヨシフ・コーソルを紹介してもらうところから、始まるんだよな。盛林堂の番台横で読んだことのある、古い活字に必死に目を走らせる。やはり本と言う物体は、折に触れ、目にしたり手にしたりしておくべきものだな。だからこそ、こんな時にその淡いデータが生かされ、目に留まるのだ。大正十年刊のこの本は二編の戯曲を収録しているのだが、表題作ではない『不滅の船』がミステリ仕立てなのである。値段を見ると大喜びの二百円なので、浮かれながら奥の帳場へ進む。聚英閣「情火/ヨシフ・コーソル著 松本泰譯」を購入。年明け早々素晴らしいものが買えてしまった。定点観測、バンザイ!
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2019年01月06日

1/6開業六十五年の「ネオ書房」が閉店半額セール中!

寒い寒い夕方の笹塚に流れ着いたので、『甲州街道』沿いの「BAKU」(2012/05/28参照)に思わず身を寄せてしまう。するとそこには、いつの間にかまんが喫茶メインになってしまった光景が広がり、古本は右側ゾーンのみに固められている。多くは195均の文庫本と大量のコミック。単行本は左側通路に残るのみである。あまりの激変ぶりに惚けつつ、河出文庫「盲獣・陰獣/江戸川乱歩」光文社文庫「神津恭介、密室に挑む/高木彬光」を10%オフの計378円で購入する。そしてバスに飛び乗り阿佐ヶ谷に舞い戻り、『旧中杉通り』をトボトボ歩いていると、悲しさと浅ましい嬉しさが瞬時にない交ぜになるような貼紙が目に飛び込んできた!それは、「ネオ書房」(2010/02/09参照)の粗末なサッシ戸に大きく貼り出された、『閉店半額セール』の文字!
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その左上の小さな貼紙に目を凝らすと、昭和二十八年に貸本屋として開店し、十年前からは古本屋として営業していたが、ついに寄る年波には勝てず、やむを得ず閉店すると書かれていた。おぉ、六十五年の長き時を阿佐ヶ谷で刻んできたお店が、ついに閉店してしまうのか。ここでは、仁木悦子の蔵書印が入った本を買ったり(2016/07/20参照)、偕成社文庫の「水曜日のクルト」を五冊は買ったなぁ…と奇妙な感慨に耽りながら、静かな店内にソッと闖入する。あまり棚に動きのないところは、いつも通りである。主に右側通路の児童文学と左壁棚の混ぜこぜ棚をチェックする。値付がかなり強気なのは相変わらずだが、ところどころにいままで見たこのない面白い本が出現しているのは、嬉しい状況である。マイナーな小説類や、七十年代コミックなどに光あり。あっ、「水曜日のクルト」がちゃんとあるが、確か以前見た時は六千円位の値が…ややっ、1300円じゃないか。これは絶対に買わねばなるまい。他にも数冊食指の動く本を見つけるが、半額とは言え元々が強気値なので、ここはセコくぐっとひとまず我慢して、また後日偵察に来ることにしよう。偕成社文庫「水曜日のクルト/大井三重子」(初版。スリップ・アンケートハガキ・偕成社文庫目録アリ)未来社「国境の夜/秋田雨雀」を半額の計675円で購入しつつ、店主に「いつ閉店してしまうんですか?」と聞いてみる。すると「う〜ん、まだ決めてない!」と返ってきた。「いや。正直。ある程度今ここにある本は減らしたいんで、その減り具合次第かな」とのことであった。「ならばまた買いに来ます!」と宣言してお店を後にする。まだしばらくは、この古いお店を楽しめそうだが、あくまでも油断は禁物である。
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2019年01月05日

1/5「井草ワニ園」がスゴイことに!

昨日は夜になってもう一度西荻窪へ外出。そうなるとやはり、「にわとり文庫」(2009/07/25参照)の「100円均一大会」が気になってしまう…もしかしたら補充されているかも…。暗い街路に暖かな光を投げ掛けているお店に近付くと、朝とは違い、外棚が展開しているのは店前だけになっている。そっと近付き、棚の様子をしゃがんで探る。するとたちまち手の中に三冊が収まってしまう。やはり来て良かった。古本を手に店内に進むと、にわとりさんご夫婦がにこやかに出迎えてくれ「わざわざ確かめに来たんですか?」と謎の言葉を投げ掛けられる。「いえ、用事があって来たんですけど、補充されてるかなと思って」「なるほど。実はあの後、出してない棚が一本見つかりまして…」とのことであった。尚更来て良かった。改造社 世界大衆文學全集「ダイヤモンド、カートライト事件/フレッチャー 森下雨村」旺文社中二文庫11「旅客機の怪事件/クリスティ作」サンデー新書「ただひとすじに/中村錦之助」を計300円で購入する。一番嬉しいのは錦ちゃんの「ただひとすじに」。棚の上にソッと置かれていなければ、多分見逃していただろう。
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ウキウキと足取り軽く、続いて「盛林堂書房」(2012/01/06参照)に向かい、「フォニャルフ」に補充しつつ新年の挨拶を交わし、店内にて南陀楼綾繁氏と待ち合わせる。ほどなくして現れた南陀楼氏が棚をじっくり見て回るのを待ち、その後は酒場に雪崩れ込み、新年会+情報交換+打ち合わせ。やはり古本屋の話に終始しながら、夜はとっぷりと更けて行く…。

明けて本日は、夕方近くに上石神井に流れ着く。フラフラとガンダム像が建つ上井草駅前南口を通過し、線路沿いを東に進む。この道は、いつか来た道…そうか、「古本 一角文庫」さんが棚を置いている、グラノーラ専門店の「井草ワニ園」(2017/02/22参照)がこの通りにあったっけ。ちょっと覗いて行こうか…と、緩い坂の途中の店前に立ち止まると、何だか様子がおかしいのである。特に左のガラスウィンドウ…あそこに、あんなにビッチリ本が並ぶ棚があったっけ。
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不思議に思いながら扉を開くと、何と棚を整理中の一角文庫さんと鉢合わせ。そして驚くことに、店内全体に古本棚が増殖しており、まるっきり古本屋さんの光景なのである。一角さんに「あぁ。こんなところまで!」と言われてしまいながら「ど、どうしたんですか。なんでこんなに棚が増えたんですか」「あ、私の棚はここの一本だけなんですけど、お店が増やしたんですよ」などと言葉を交わす。うひゃぁ〜、こんなに劇的に古本屋寄りに変化を遂げたお店が、未だかつてあっただろうか!入って直ぐ右側には100〜300円の文庫棚&単行本平台が据えられ、その隣りに一角文庫の静謐なセレクト棚、そこにせれくとコミック棚が続く。左はウィンドウ&壁沿い&奥のカウンター下まで十本ほどの棚がカクカクと連続し、大量の絵本(ムーミン・のりもの・おはなし・図鑑・民話・外国絵本・国内絵本・学習など、わりと細かくジャンル分けされている)・児童文学・紀行・エッセイ・本関連・暮らし・映画・サブカル・民藝・文学・花森安治・音楽・料理などが収まって行く。中央には絵本がギュッと詰まったラックと、テーブル平台あり。いやぁ、絵本棚がとにかく丁寧に蒐集されており、見応えあり。ちょっと古めの珍しいものもプカプカ浮き上がって来るので、油断出来ない棚造りと言えよう。値段は安め〜ちょいプレミア値のものまでと、様々。大量の古本との意外な出会いに興奮しながら、岩波新書「子どもの図書館/石井桃子」飯塚書店「ジャズ/ヒューズ」旺文社ジュニア図書館「怪奇 帰ってきた死者/白木茂訳・編」を購入する。ここは、また来よう。最後に一角さんに「調布の古本市、来て下さいね」「大丈夫です。にわとりさんに厳命されています」「ハハハハ、そうですか。ぜひ」と、楽しくお店を後にする。
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2019年01月04日

1/4目論見通りに春浪を百円で買う。

朝から原稿を書いているのだが、どうにもソワソワして落ちつかない。…早く、早く午前十一時過ぎにならないものか…。重要な古本市がある時は、いつもこんな具合である。朝からというか、その前の晩から過剰に楽しみにしてしまい、あれが買えるんじゃないか、見たこともない本に出会えるんじゃないかと、捕らぬ狸の皮算用を、ひたすら永久機関のように繰り返してしまうのだ…。今日は西荻窪「にわとり文庫」さん(2009/07/25参照)が、二年ぶりに「新春100円均一大会」開いてくれるのである!その驚きの再開理由は、この大会を愛して止まない、ホームズ研究家&作家の北原尚彦氏が『ぜひまた開いて欲しい!』と懇願したため…人間、何でも必死に、お願いしてみるものだなぁ…。北原氏に盛大に感謝しながら、原稿をほっ放り出して午前十一時二十分に家を飛び出す。西荻窪駅南口に飛び出し、建物の隙間を縫ってから『平和通り』に入り、早足でお店を目指す。このときすでに午前十一時四十五分。まぁちょうどいいだろうと思いつつ、足はどんどん早まって行く。すると後から「小山さん!」と声をかけられたと思ったら、スピードを落とした自転車には笑顔の北原氏が。「あぁっ!今年もよろしくお願いします」などと答えていると、自転車はたちまちスピードを上げ、お店の方角に消えて行った…くぅ、急がなければ。焦って店前に到着すると、すでに古本神と古本修羅と古本高校生が、緑のシートを被せられた棚や台や箱の前に、己の勘を信じて陣取っている。
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その中にスイと紛れ込みつつ、新年の挨拶を交わしたり、古本神同士の怪しい秘密古本取引を目撃したり(見ているだけで勉強になります!)、シートの裾からチラと見えている本の背に視線を走らせたりしながら、長い長い十五分をやり過ごす。やがてにわとりさんが、正午前に新年のご挨拶。1/8から始まる「第4回 調布の古本市」に来て欲しいこと、来年も当大会を望むならたくさん買うこと、車に轢かれないようにすること、お土産のみかんを用意していること、などがほのぼのと告げられた後に、シートが捲られ大会はスタートする。熱い闘いの始まりである。みな早速真剣な眼差しで古本を吟味奪取し、本の山を造り出して行く。よし!とこちらは文庫箱に接近し、目を付けていた一冊とともに周りの二三冊も掴み出す。おぉ、押川春浪の「絶島軍艦」がっ!表紙と裏表紙が欠損しているが、ちゃんと読めれば何の問題もないのだ!二年前の当大会では、同じ春浪の表紙の取れた「東洋武侠團」を買えたことがあったので、今回ももしや…と思っていたら、ズバリ的中したのである。目論見通りに欲しかったものが買えたラッキーに浴することが出来たので、後は余裕を持って神と修羅の間を流して蠢く。その結果、本郷書院「冒險奇譚 絶島軍艦/押川春浪」(表紙周りナシ)日本小説文庫「蜘蛛男/江戸川乱歩」(落丁&乱丁本)春陽文庫「若さま侍捕物手帖(1)/城昌幸」「人間椅子/江戸川乱歩」新潮文庫「黒蜥蜴/江戸川乱歩」青鳥會「マーテルリンク氏作 青い鳥のをしへ/宮崎最勝」立風書房「未来惑星ザルドス/ジョン・プアマン」日本輸出工藝聯合會「南北亜米利加乃工藝概観」博文館「新青年 昭和十五年十二月号」を計900円で購入する。精算時ににわとりさんに「調布の古本市は強制参加ですからね」と念を押される。了解しました、1/8は午前十時に駆け付けます!
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「絶島軍艦」の素晴らしき口絵である。いったいどんな状況に陥ったら、こんなことになってしまうのか!あぁ、もう期待で胸がはちきれそうだ…。
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2019年01月03日

1/3年の始めは「青銅の魔人」!

昨日今日とお正月的野暮用を様々にこなしまくる。その過程で、府中本町にあった農閑期営業の古本屋さん「落兵衛図書園」(2009/03/20参照)が、消滅しているを知る…くぅ、さびしいなぁ…。さて、色々終わったのでそろそろ古本を買いに行きたいのであるが、まだ松の内の一月三日なので、営業を開始しているお店は、極々少数…そうだ!「ブックオフ」が、一月四日まで二十%オフセールをやっていたな。それならば、売れ残っているアレを買いに行くことにするか。そう駅前の空中ロータリーで思いつき、武蔵野線→中央線→山手線とJRを乗り継いで、高田馬場駅で下車する。駅前から、侘しい裏道で谷底に落ち込み、神田川を越えて「ブックオフ高田馬場北店」に到着する。店前に恐ろしく自転車が停められている。二十%オフセールの賜物だろうか。ステップを上がり、自動ドアから店内に進むと、各通路活気に溢れる状況である。ドンドン奥に入り込んで、最奥の古書売場に近付く…フフ、やはりまだ売れ残っているな。光文社の江戸川乱歩・少年探偵シリーズ三作である。一律1960円の値付がされているのだが、これが一向に売れる気配が無い。もう見つけてから三ヶ月近くこのままだったのである。セールなら、1960円が1568円となるわけだ。これならば、なかなかのお手頃価格と言えるのではないだろうか。と言うわけで選んだ一冊は、「青銅の魔人」。私が幼少の頃、初めて読んだ乱歩作品である(それはポプラ社の背が西洋鎧兜バージョンのもの)。その恐さと面白さに衝撃を受け、ついには読書感想文まで書いてしまった、永遠の作品である。二十八版とは言え、そのオリジナル版を所有するのは、ひとつのささやかな夢であったのだ。これぞ、二〇一九年最初の買物に相応しい!と、紀伊國屋書店「推理小説論/ポワロー・ナルスジャック」とともに、計1816円で購入する。
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神田川をバックに記念撮影。コンクリで固められた水路が、乱歩世界に共鳴しているようで、ちょっと楽しい。
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2019年01月01日

1/1初詣には『海鰻荘』跡地を。

年越しは宣言通りに山下三郎の「室内」を読んで過ごす。その短篇集の最後の作品、『一人の役者』を読み進めていたら、物語の舞台の一つとして出て来る『ハイデルベルヒ』が、日中電車内で移動中に読んでいる河出書房市民文庫「太宰治集/小山清編」内の本当にまさに読みかけの『老ハイデルベルヒ』とシンクロし、その偶然に打ち震える。本をたくさん読んでいると、まま起きる出来事であるが、何か世界の神秘に触れてしまったような感触があり、こういうことは本読みとして、真に嬉しい出来事のひとつである…。そんなマニアックな年越しをしながら、もはや昭和に子供時代を送った者としては、未来世界としか思えない2019年…まさかこんな時代を生きることになろうとは…古本好き・古本屋のみなさま、本年もよろしくお願いいたします。などと言うそばから、お屠蘇が過ぎて盛大に酔っ払ってしまう。いやぁ、心地良い。いやぁ、何もする気が起きない…だが、だが、古本屋ツーリストとしては古本好きとしては、何か新年早々アクションを起こさねば!と緩やかに臍を固め、そうだ!『海鰻荘』跡地に、初詣に行くことにしよう!と愚かに閃いてしまう。『海鰻荘』とは、怪奇探偵小説作家・香山滋が、昭和十二年〜昭和二十八年まで暮した、中野区大和町『蓮華寺』裏にあった、住まいの通称である。香山滋は映画『ゴジラ』の原作者として有名であるが、やはり生物学・古生物学・考古学・地学などの知識を生かしたルビが巧みに施された疑似学術小説に、いつ何時でも読み始めた瞬間に、決して触れぬことの出来ぬ憧憬を覚えてしまうのである。これは、決して大げさではなく、大真面目の告白である。と言うわけで、『海鰻荘』時代に出版した本、岩谷書店の「木乃伊の恋」と、平成二十七年に『中野区立図書館』で催された『異能の作家 香山滋』の少部数パンフを携え、千鳥足で家を後にする。表は意外に暖かで、普段より濃度の深い青空が、果てしなく頭上に広がっている。酒精の酔いに任せながら、いつの間にか泉水のある『蓮華寺』裏。クランクする裏道は『海鰻荘』があった時の当時のままで、墓場を囲むコンクリ塀は、そこで生み出された作品の湿度を継承するように、奇妙にジメジメとしているのだ。『海鰻荘』があったであろう場所は、すでに現代的な住宅が建っているので、そこに向かい合っていた墓場をバックにして、七十年ぶりに勝手に里帰りした「木乃伊の恋」を記念撮影する。こんな風に愚かに馬鹿らしく、だが楽しく、古本で遊び始めた2019年ですが、本年もよろしくお願いいたします。
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2018年12月31日

12/31東京・新宿 詩歌系古書店が選ぶ「わたしの5冊」

ついに大晦日である。さすがにこの日になると、開いている古本屋さんは、グンとその数を減らす。おまけに一年の疲れが身体に淀んでいるのか、どうも身体が重い。なので近場で一年の締めくくりをキメることにする。向かったのは古本屋さんではなく、老舗の有名新刊書店『紀伊國屋書店新宿本店』である。ここで現在『詩歌系古書店が選ぶ「わたしの5冊」』という、選書フェアが行われているのだ。古本屋さんが絡んでいることならば、何でも味わい尽くさなければならない。そういつも通り盲信し、普通に賑わっている地下道をずいずいと進んで行く。『創業116年の中村屋でございます』と重々しい呼び込みをする『中村屋』地下入口前を通過し、前川國男のトレードマークとも言える陶タイルで覆われた壁沿いに、書店へのエスカレーターを上がる。地下一階からは階段を右に巻上がり、多種多様な手帳を店頭販売中の正面入口に出て、さらにエスカレータを上がって二階店内へ。入ってしまえば場所はすぐにわかるだろうと高をくくっていたら、何処でそのフェアをやっているのかまったくわからず、しばらく店内を彷徨いまくる。結局エスカレータを上がってすぐ右に進み、奥に詩歌句がある通路の一番手前の通路棚で、そのフェアはこじんまりと行われていた。立ち上がる棚と平台に詩歌句新刊の二十五冊が並び、それぞれの解説が掲載されたフリーペーパーも置かれている。参加店は「古書ソオダ水」(2018/01/28参照)「葉ね文庫」(「古本屋ツアー・イン・京阪神」134ページ参照)「水中書店」(2014/01/18参照)「七月堂」(2018/01/18参照)「りんてん舎(仮。2019年上旬に三鷹にオープン予定)」である。この新鋭中心で斬新なラインナップは、しっかりと古本屋さんに通い、その目で見極めていなければ決められないセレクトである。新刊書店で古本屋絡みのフェアをすることと、これらのお店を選んだ担当者さんの英断と慧眼に、まずは頭を垂れる。フリーペーパーを手にすると、並べられている本+オススメの絶版本も掲載されている。だが、これを最初に読んで、楽をしてはいけない気がする。もうすでに目の前に本が並んでいるのだ。まずは先入観なしに、己のフィーリングに合った本との出会いを、楽しむべきではないだろうか。通常、古本屋さんでは、専門店以外は様々なジャンルの本を並べている。そこには、店主の個性や営業意志が反映され、独特な棚造りが為されている。その棚は、ある種地図のようなものである。知識や思想や未来や過去や異世界や妄想などに踏み込むための、誰もが読み慣れた地図である。そこにあるのは答えではなく、ただ進む方向の指針となる古本の並びで、完成度の高い良い地図に古本屋さんで出会えた時は、身体に電気が走るほどの、素晴らしい装置なのだ。だが詩歌句は、通常の棚とは少し異なり、聞き慣れない出版社や作家が連続し、多少取っ付き難くマイナーな面を持っている。その取っ付き難い棚は、大抵のお店では片隅に追いやられ、小さくうずくまっているのだが、ここに並んだ四店+一(仮)は、大きく詩歌句に棚を割いているお店ばかりである。例えて言えばその地図は、通常の地図ではなく、海図や星図みたいなものではないだろうか。何処か大きな世界を予感させる、馴染みの無い地図たち。だがそれは、接することにより、ルールを把握することにより、いずれは馴染み深く、そして興味深くなるものである。この今目の前に展開している小さくささやかな棚も、そんな見慣れない地図の一枚である。だが、何処かに地図と親しむ手掛かりは含まれているはずである。まずは装幀を眺め、一冊一冊手に取り、ページを捲って行く。詩集・詩論・詩人エッセイ・歌集・句集………しばらくフェア棚の前に佇み、迷いまくる。ちょっと高値の本も多いので、そこもしっかり吟味する。結果、一編二編、三首四首、五句六句さらりと読んで、心にピリッと引っ掛かったものを買うことにする。思潮社「リリ毛/小縞山いう」2200円+税である。アカシックレコードから無作為に選んだ言葉の羅列のようで(作者の名前もそうだ)、リズム感が密やかにこなれて弾む文字列が、何か妙に引っ掛かってしまう。読んで意味は即座に掴みかねるが(まぁ大抵の現代詩はそうだ)、読み込むと脳内がキレイに掃除され、そこに予想外の一言がポツンと残されてしまっているような想像をしてしまう。フリーペーパーを繙くと、選書は「水中書店」さんであった。ゆっくりと、読み進めていくことにしよう。
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帰りに大晦日も絶賛営業中の「千章堂書店」(2009/12/29参照)に立ち寄り、岩波文庫「銀座復興 他三編/水上滝太郎」を350円で購入し、本年の古本買い納めとする。今年もたくさん古本を買いました。みなさま、来年もまたよろしくお願いいたします。それではよいお年を!
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2018年12月30日

12/30昨日のトークと今日の古本屋さん挨拶回り。

昨日は朝から静かに件の「室内」を読み耽り、改めてその作品群から受けるイメージが、受容器官の違いはあるのだが、清宮質文の版画作品に肌触りが似ているな、などと勝手に気付く。午後四時に家を出て、まずは12/29日からお休みに突入する「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)へ。取り扱っていただいている「青春18きっぷ古本屋への旅」が何冊か売れているようなので、少しホッとしながら東京三世社「少年少女SFマンガ競作大全集2」ポプラ社「お化けの愛し方/荒俣宏」を計463円で購入し、今年も一年お世話になりましたと、天野氏に挨拶をする。コンコ堂の年始営業開始は1/5から。駅から都心より気温の明らかに低い八王子にガタゴト向かい、街の賑わいと裏腹な冷たさに脅かされながら「佐藤書房」(2009/08/26参照)に飛び込む。岩谷選書「私刑(リンチ)/大坪砂男」を千円で購入する。さらに夜道を切り開き、すでにトークの準備のために閉店し、会場を整え中の「古書むしくい堂」(2018/01/03参照)に到達。一人で汗を流す店主の高橋氏に挨拶をした後、すでに会場入りしていた岡崎武志氏と近所の喫茶店に移動して少し打ち合わせる。お店に戻ると、すでにキャスター付きの通路棚を二隅に動かし、丸椅子が並べられ、会場の準備は万全となっていた。
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そしてトーク開始までの一瞬の隙を突き、NHK札幌放送局「NHK特集 網走刑務所〜鉄鎖と更生と〜(打合稿)」(1981年放送のドキュメンタr−番組の台本であるを500円で購入する。トークにはこの二〇一八年が後二日半で終わろうとする忙しい時に、十三人の古本勇者にお集りいただき、感謝感激雨霰!おかげさまでおよそ二時間を、岡崎氏と楽しくおかしく古本屋さんや古本について喋りまくる。先日の古本市裏話、鉄道旅と古本屋、最近の古本屋トピック、今年の古本二冊(私は銅線に凶悪に縢られた橘外男「ルーレット紛擾記」と松本竣介装幀挿絵の「海から来た使」を紹介。岡崎氏は学年誌付録の森山良子のギター教室と雑誌「フォークリポート」であった)、「むしくい堂」さんを交えお店のことなど色々、そしてプレゼント大会。やはり、岡崎氏と話すのはとても楽しい。人前関係なく、自然に素直に好きなことや思いが、ポロポロと口をついて出て来るのだ。そんな愉快な年末を迎えられたことに、岡崎氏、会場の十三人、そして「古書むしくい堂」さんに大いなる感謝を捧げたい。本当にありがとうございました。

そして本日は午後から自主的に古本屋さんへの挨拶回りを決行する。私にしては珍しく言葉を交わせる、日頃からお世話になっているお店を巡り、古本を買って感謝の意を表すためである(いや、実はそんな大層なことではない。要するに、ただ古本が欲しいのである…)。まずは高田馬場駅に降り立ち、トコトコ歩いて早稲田を目指す。谷底の陽の当たらぬ神田川沿いを、冷たい水のせせらぎを聞きながら歩き続けるが、何故かそれほど寒くはない。『明治通り』から『高田馬場口交差点』を経由して、「古書現世」(2009/04/04参照)に至る。サッシをカラリと開けると、いつもは手元に視線を落とし、帳場に近付くまで来訪には気付かぬ向井氏が、珍しくこちらに視線を寄越し「今日は入って来た途端に気付きました」と笑顔で誇らしく宣言する。函ナシの實業之日本社「素顔のハリウッド/上山草人」(口絵写真の神山が扮したチャアリイ・チヤンが不気味で格好良い!)を4500円で購入しつつ、向井氏といつものように楽しく無駄話する。「あれ?今日コト(店猫の名である。2018/08/29参照)はいるんですか?」「そこで寝てますよ」と指差された本棚裏を見ると、屋根のないクッションの置かれたダンボールハウスの中で丸くなっている…か、可愛い!
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「でも店猫ですよね。お正月休みの間はどうするんですか?」「家はすぐ近くなんで、エサやりとトイレの片付けに店に来ることにします」とのことである。無事に年を越すんだよ、と願いお店を後にする。高田馬場駅まで戻り、新大久保駅の身動きままならぬ殺人的混雑に目を丸くしながら西荻窪駅へ。まずは「盛林堂書房」(2012/01/06参照)に向かい、先日の古本市残り本の買取金を受け取る。店主・小野氏の「欲しい本あったらショーケースの鍵開けるよ。安くしとくよ」という悪魔の誘惑を振り切り(盛林堂では最近高い本をちゃんと買っているので…)、一年お世話になった挨拶を交わし、再び街路へ飛び出す。駅北側に赴き、「古書音羽館」(2009/06/04参照)でヤマケイ文庫「ビヨンド・リスク/ニコラス・オコネル」を700円で購入しつつ、広瀬氏と布由さんと、来年辺りご近所に出来るはずの古本屋さんについてあれこれお話しする。『西荻ブックマーク100回記念』のポストカードをいただき、お店を後にして、駅への近道に『西友』内を歩いていると「忘日舎」さん(2015/09/28参照)とバッタリ出会い、慌てて年越しの挨拶を交わす。続いては高円寺に移動。ここでも『庚申通り』でバッタリbar『ペリカン時代』のお二人にお会いし、慌てて年越しの挨拶を交わす。よくバッタリ人と会う日だなぁ。心臓をドキドキさせながら、そのまま歩き続けて「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)着。三省堂「那須の植物/生物科学研究所編」番町書房「葦の髄から/檀一雄」を計600円で購入し、表の均一棚でダッカンダッカン棚の整理をしていた粟生田さんと「来年もよろしく」「よいお年を」とニッコリ挨拶を交わす。
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2018年12月28日

12/28年末年始はモダニズム小説に溺れよう。

ゴウゴウと、地の底から吹き上げて来たような、冷たい風に痛めつけられ、夕方の千歳烏山に流れ着く。治まる気配のない風に逆らいながら、駅北側に出て久しぶりの「イカシェ天国」(2008/09/23参照)を覗いてみる。相変わらず無人である。そして万引防止の警句が、派手に増殖してしまっている…無人故の疑心暗鬼が、外の強風のように吹き荒れているのだ。しかし本にはちょっと動きがあるようで、面白い古書がチラホラ目立っている。真剣に目を凝らして駿河台書房「動物園日記/福田三郎」中央公論社「七つの蕾/松田瓊子」を選ぶ。合計で千八百円だが、半額セールが常時行われているので、九百円になるはずである。そう信じて、本を携え一旦表に出て、斜向いの黄色い派手な不動産屋へ向かう。扉をカラリと開けて「すみません、本を」と言うと、座っていたメガネのオヤジさんが近付き値札を確認し「九百円」と一言。ホッとしながら精算する。

そして寒さに震えながら家に帰り着くと、待望の古本が到着していた。沙羅書房「室内 山下三郎短篇集」である。EDI叢書「山下三郎 四編」を読んだことにより、本物への渇望という厄介な古本心に火が点いてしまい(2018/12/23参照)、打ち上げの酔いに任せて古本市の売り上げをつぎ込み、注文してしまったのである。「室内」は相場がだいたい五万円ほどのビックリ値なのだが、これは破格の一万五千円であった。なので相当な瑕疵があることを覚悟していたのだが、包みを開封してみると、函に汚れやイタミはあるが比較的しっかりしており、本体も背文字の掠れ以外はわりとキレイなものである。やった!こりゃぁラッキーだ!昭和十三年刊。本は菊判。本文紙はちょっと厚めのアート紙で、本文は青と墨の二色刷り。限定三百部のうちのNo.298。装幀は堀辰雄で、表紙に使われているネクタイ地(それぞれの本で異なるという)は緑である。後見返しには、渋谷「玄誠堂」の古書店ラベルあり(だが最後に営業していた『宮益坂上』ではなく、『渋谷 道玄坂』と記されている。古い時代には道玄坂で営業していたと言うことか?)。…う、嬉しい。しみじみと嬉しい。年末は年始はこれを読み、清新な昭和モダニズム小説に耽溺することにしよう。
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そして皆様、明日の八王子でのトークを、よろしくお願いいたします!恐らく予約なしでも当日飛び入り可能だと思いますので、気が向きましたら、午後六時前に「古書むしくい堂」(2018/01/03参照)にお越しください。「室内」読みながらお待ちしております!
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2018年12月27日

12/27『旅と古本』まで後二日!

意外に暖かな本日は、上連雀の奥地に漂着してしまったので、ツラツラ歩いて三鷹駅まで出て電車に乗り、ちょっとだけガタゴト揺られて西荻窪駅下車。北口に出てまたツラツラ歩き始め、『青梅街道』に出て『荻窪警察署』のインコと文鳥が囀る巨大鳥小屋『ピーポーハウス』をしばし眺めて心を癒した後、ようやく本屋「Title」に到着。店内に上がり込み、左中ほどの急階段を手摺を頼りに上がり、今日が初日の「Title 2Fの古本市」(2016/12/27参照)を堪能する。すでにこの小さな古本市も三年目。五人も入ればいっぱいになってしまう二階には、ひっきりなしに人が上がって来る。平日で、駅から遠いのに、スゴいな。「ハナメガネ商会」(2014/04/26参照)の“鳥”へのフィーチャーっぷりと、「一角文庫」の今和次郎仙花紙本ミニコーナーが何とも好ましい。相模書房「働く人の家/今和次郎」(『北海道の勞務者の住宅を見る旅』『北九州八幡製鐡所の社宅を見る』など、考現学者・ジャンパー先生の旅+住宅フィールドワーク!)を800円で購入する。市は年を跨ぎ、二〇一九年の一月八日まで行われる。

さて、あと二日後に迫った、八王子「古書むしくい堂」での、岡崎武志氏との古本トークですが、まだまだまだお席が余っておりますので、お時間ある方捻出出来る方々は、ぜひとも今年最後の濃厚古本トークを聴きに来ていただければ、もっけの幸いです!何とぞよろしくお願いいたします!「むしくい堂」さんが、『前のチラシはディーゼル車が主役で鉄道のイベントみたいだったので、作り直しました!』と新しいチラシを送ってくれました。素晴らしき悪あがきに、乾杯!
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【日時】12月29日(土)18:00スタート
【参加費】1,000円
【場所】八王子「古書むしくい堂」東京都八王子市横山町10-17グエルスクエア八王子102
【ご予約・お問い合わせ】info@mushikuido.com tel:042-698-3994 http://www.mushikuido.com/contact/
※二人のプレゼントが当たる抽選会あり
※終了後、有志で忘年会へ
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2018年12月26日

12/26今年最後の“盛林堂・イレギュラーズ”!

午前十一時前の西荻窪に赴き、今年最後の“盛林堂・イレギュラーズ”に変身する。「盛林堂書房」(2012/01/06参照)前にたどり着くと、開店作業を進めているのは小野氏の細君とお母様である。今日のミッションは、市場でたくさん買ってしまった本の上げ下ろし搬入なのである。すでに古書を満載したルート便が『銀盛会館』で荷下ろししている旨を告げられ、慌ててそちらに駆け付ける。すると会館内の一角には、すでに文庫本束の山が築かれ、後はカーゴ一本半分を下ろすのみとなっている。その下ろし&積み上げを、ルート便の運転手さんと小野氏とリレー形式で行い、あっという間に下ろし完了。運びながら文庫束に視線を走らせると、古い角川文庫や創元推理文庫の良いところが忍び込んでいる、涎の出そうな塊たちであった。しかしこれで終わりかと多少拍子抜けしていると、「じゃあ店に戻って運びましょう」と小野氏が言う。あれ?まだ何か運ぶ本があるのかな?…まぁいい、これだけで終わってしまっては“盛林堂・イレギュラーズ”の名が廃ると、気合い充分にお店に乗り込む。するとそこで待っていたのは、店内二本の通路に積み上がる、大量の単行本束であった…おぉ、普段はビシッと整然としている盛林堂では、なかなかに珍しい光景である。
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この本束を台車に満載し、お店正面口から出てぐるっと裏に回り込み、倉庫で控えているお母様に届けるのが、申し渡されたお仕事なのである。「本は絶対に崩しちゃダメだよ」とプレッシャーをかけられ(小野氏は古本屋活動に関しては超スパルタである…)、程よい緊張感をキープしつつ、重い台車を苦労して押して行く。だが、都会の舗装道路でも道は平坦ではなく、凸凹も多い。さらには車に追い立てられたり、車に前後を挟まれたり、路上駐車の車を回り込んだりと、路上には危険がいっぱい!ンゴロンゴロと力を振り絞って六往復ほどすれば、いつの間にか一時間が経過していた。…ハァハァ…古本屋さんって、やっぱり大変だ…。そんな感じで無事にミッションを遂行し、労働のギャラ&お歳暮として、二冊の古本を拝受する。東京大學館「世界怪奇譚第五編 魔島の奇跡/押川春浪」啓徳出版部「防諜讀物 スパイ小説集/北村小松編」。わ〜い!ありがとうございます!とたちまち歓喜の渦に巻込まれる。忙しい年の瀬に、労働の対価として古本を受け取り大喜びする、五十一歳の男の2018年が、後五日で暮れようとしている。
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家に戻っでからは、大阪に少数精鋭の古本たちを送り出す。西の方々、「梅田蔦屋書店」『4thラウンジ』壁面の古ツア古書棚を、来年もよろしくお願いいたします!
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2018年12月24日

12/24東京・荻窪 藍書店

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昨日の古本狂乱は過ぎ去り、すでに強風のクリスマス・イブである。舞い飛ぶ大量の枯れ葉に非日常を感じながら、いつもの月曜日のように、荻窪「ささま書店」(2018/08/20参照)へ定点観測に向かう。だが珍しく店頭では何もつかまず、店内で欲しい本は見つかるが購入にまでは至らなかった。大量の古本を売ったことに起因する放心状態だろうか。…そうだ、移転した「藍書店」を、いい加減に見に行かなければ!と思いつき、クリスマスに賑わう『南口仲通り』に入り、最初の脇道を東へ…あっ、「おぎくぼ古本市」(2018/05/02参照)をまたやってるのか。営業は12時から…後で見に来よう。そのまま道を抜けると『電話局前交差点』である。大通りを鋭角に南西に進み、こちらも最初の脇道を南へ入り込む。すると50mほど進めば右手にビル一階のお店が…営業しているぞ。看板が以前の選挙事務所からすっかり新調されており、『藍書店 Indigo Books 古書買取』の文字が輝いている。店頭には頭上にプラ箱を載せた三つの小棚が出されており、上部には映画・芸術関連、下には美術系の大判本を収めている。細長く小さめな店内に進むと、壁はほとんどが本棚で覆われ、奥へと伸びて行く通路棚が二本の狭い通路を造り出してる。本棚には古本がびっしりと収まっているが、良く見ると通路入口側の合わせて十五本ほどの棚には、背をこちらに向け整然と本が並んでいるが、奥に進むと結束本束や横積み本となり、バックヤード的に変化する。どうやら今のところ、奥のレジ近くの部分は、フロントなのだがバックヤード的な役割を果たしているようだ。と言うわけで、店舗として機能しているのは、前部分だけなのである。そこには、文庫・映画(これが目立っている)・芸術・文学・思想・社会・歴史・新書・洋書などが、大体100〜500円の値付で混ぜこぜに並んでいる。だが、質はかなり高めで、古書も混じっているのが何とも嬉しい。筑摩書房「カツドウヤ水路/山本嘉次郎」講談社少年版江戸川乱歩選集「三角館の恐怖」アスベスト館「アスベスト館通信第3号」が、合わせて千円!これから月曜日は、「ささま」とともに定点観測することにししょう。

そういえば昨日、古本市で残った良書を「フォニャルフ」に補充しておいたので、来られなかった方はぜひご覧あれ!家に帰った後は(ハッツ!「おぎくぼ古本市」に寄るの忘れた…)、大阪へ送る古本集めと、土曜の岡崎武志氏とのトーク来場者に配布するプレゼントセレクトを行う。貰って嬉しいもの、貰って困るものアリ!…フフフフ。そんな歳末ギリギリ限界の古本トークですが、お時間ある方はぜひ八王子にお越しください。「佐藤書房」(2009/08/26参照)の濃厚さと「まつおか書房」(2010/01/05&2016/08/29参照)の大外棚を楽しんだ後に、「古書むしくい堂」(2018/01/03参照)と『旅と古本』の世界(多くは古本屋さんと古本のことになると思いますが…)をお楽しみいただければ幸いです。よろしくお願いいたします!

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旅について、古本屋について、古本について、青春18きっぷと鉄道について、縦横無尽に話しまくる予定です。八王子への小旅行を満喫した後、古本屋さんでのトークを、ぜひともお楽しみ下されば幸いです!冬の八王子でお会いいたしましょう!
【日時】12月29日(土)18:00スタート
【参加費】1,000円
【場所】八王子「古書むしくい堂」東京都八王子市横山町10-17グエルスクエア八王子102
【ご予約・お問い合わせ】info@mushikuido.com tel:042-698-3994 http://www.mushikuido.com/contact/
※二人のプレゼントが当たる抽選会あり
※終了後、有志で忘年会へ
posted by tokusan at 14:25| Comment(0) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月23日

12/23山下三郎に始まり、山下三郎に終わった一日。

古本市が楽しみなのか、午前五時前に子供のように目を覚ましてしまう。夜明け前の暗闇と暖かな布団の中でしばらく粘ってみたが、どうにも再び眠れそうにない。仕方なく布団を抜け出し、お湯を沸かして、お茶を一杯入れる。それを啜りながら、先日買ったEDI叢書「山下三郎 四編」を読み耽る。未知の作家であるが、清新で爽やかで魘されるようで視覚的で衛生的な修辞と形容が散りばめられたモダニズム小説を書いている。川端康成・竜胆寺雄・横光利一・稲垣足穂・浅原六朗・堀辰雄などと通底するものを感じ取りながら、このような優れた物語が、復刻されるまですっかり埋もれていたことを不憫に思ったりする。いや、遥か昔から今の今まで、優れた物語は無数に生み出され続けているのだが、その中で脈々と残って行くのは、ほんの一握りなのである。この幽霊のような物語も、二〇〇一年には、読まれなくなった夥しい文字の集積の中から、こうして掬い出されたのだ。何はともあれ幸福である。午前七時にはこの薄い本を読了してしまったので、古本市に持って行くことにする。…そして思ってしまう。この物語を、本物で読みたい…。山下三郎は一冊の短篇集しか出していない。しかもそれは、恐ろしい程の古書価が付けられている。この本は手放しても、まだしばらくは、いつでも手に入れることが出来るだろう。だからそれに付けても、昭和十三年刊の沙羅書店「室内」を、俄然手に入れたくなってしまった。こんな風に、朝っぱらから一冊の本を読んでしまったために、古書熱に取り憑かれながら、忙しい一日が始まろうとしている…。

西荻窪、午前十一時。シャッターの表には、すでに多数の古本修羅&古本神が、シャッターを打つほどに集まっている。そして会場開放とともに雪崩れ込み、たちまち本棚たちが、嬉しく蹂躙されていく。
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そんな嵐が、いつもと違い二時間も続き、あっという間に私も岡崎氏も小野氏も消耗してしまう。しかしその後も、微妙な雨降りなのに、お客さんが途切れずに、例年より調子良く売り上げてしまう。結果、私は143冊を旅立たせることに成功する。会場にお越しの皆々様、本当にありがとうございました!また来年もよろしくお願いいたします。しかし実は古本を売るだけではなく、ちゃっかり盛林堂コーナーから古本も買わせていただきました。ともにカバー&外装なしだが、ポプラ社「白蝋の鬼/高木彬光」春陽堂「新空気/江見水蔭」(東京は奥多摩の洞窟探検もの!)を計五千円で購入する。
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冒頭に書いた山下三郎は夕方まで売れ残っていたので、『家に持って帰ってもう一度読もう』と思っていたのだが、フラリと折り畳み傘とともに現れた文庫善哉さんに「こんなのがまだ残ってるなんて!」と、喜んでお買い上げいただきました。良い所に嫁いだので、本望であります。だから、つい家に帰った後、『日本の古本屋』で山下のオリジナルの短篇集を検索し、最安値の本を注文してしまった…古本を売って新たな古本を買う…愚かな行為であるが、これもまた本望である。
posted by tokusan at 22:34| Comment(2) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする