2011年10月10日

10/10神奈川・鎌倉 books moblo

books_moblo.jpg
紺と銀の横須賀線で南へ。だが、初期目標のお店は残念ながら臨時休業日…良くあることではあるが、何となく諦め切れずにお店の周囲をウロチョロ…。それにしてもこのお店の立地条件は、血を騒がせるものがある!私の魂の火を、ガソリンをぶっ掛けたように燃え上がらせるっ!これは早めに再チャレンジすることにしよう。と言うことで駅へ素早く戻り、横須賀線に再乗車。ならばと、タレコミのあった鎌倉の新店を訪ねることにする。東口を出ると、連休最終日の人波が襲い掛かる。ロータリーを突っ切り『若宮大路』へ抜けて、『鎌倉駅入口交差点』を渡って、東側の歩道を由比ガ浜方面へ南下する。250mほど進むと、歩道が車道に向かって傾斜し始め、行く先には横須賀線のガード橋が立ちはだかる。そのままバンクする歩道を歩き続け、線路沿いに南東に曲がり込む脇道に入る。すぐに滑川を越え、さらに進むと、左側に新しく出来た小さなショッピングモール。ここで建物二階を見上げると、角の縦長ガラス窓に、店名の入った本を読む人のイラストが目に入る。不規則な石畳の小洒落た路地を奥へ進むと、建物の腹に二階への階段があり、上がり口には数え駒やアルファベット表が付いた黒板が置かれ、営業時間や営業日が書かれている。左回りで狭い階段をカクカクと上がると、吹き抜けの短い廊下があって、左へ進むと開け放しのドアから自然とお店の中へ…。細長く、白壁に木材のアクセントが洒落たお店である。右壁は簡素な木のラックがあり、奥に木材の板棚が続く。フロア真ん中には大きなテーブルが平台として置かれ、入口左横には小さなテーブルと子供用の机、左壁には板が長く架けられた壁棚が積み重なり、奥には小さな本棚がチョコン。正面奥が帳場となっており、古い木製レジスターが鎮座する横で、強くなさそうな花木九里虎(by「WORST」)風店主がパソコン操作中。壁ラックにはカラーブックスなどと共に、様々なチラシ・リーフレット・ショップカードなどが並んでいる。奥の棚は一段ごとにジャンル分けされいるが、このジャンル分けは一般的なものではなく、店主の発想&アイデアによる観念的な括りでセレクトされた本が並んで行く。そのジャンルについては、名称と説明がしっかりと明記されている。一応私の見た目で判り易いジャンルに変換してみると、歴史&世界&宇宙・食・アイデア&リセット・和洋芸術家図録・旅・装丁の美しい本・デザイン・言葉・詩・男子本・女子本・自然・推理&オカルト・民芸・工芸と言った感じであろうか。大テーブルには雑貨やミニコミ・ヴィジュアル本・花森安治装丁本・「暮らしの手帖」などが飾られている。入口横のテーブルには雑貨、机には上に絵本がドサッと置かれ、引き出しには「ドラえもん」や手塚漫画が押し込まれている。左壁は、『雨の日に読む本』『秋の日の本』『眠る前に読む本』『少年の日・夏休み最後の日』などの一般ジャンル分け不可な思い入れセレクトと共に、絵本・動物物語・写真・日々の暮らし・古本・登山・文学復刻本・エッセイ・サブカル・歩く・住むと言う様相。小さな本棚は105円文庫が並んでいる。店主の思いがドバッと棚に溢れ出た、男女嗜好&思考が平等で危険分子の少ない、バランスの良いお店である。本を探しに来ると言うよりは、フラッと入って波長の合った本を買うのが楽しいだろう。値段は普通〜ちょい高。しっかりと動作して大きな音を出す木製レジに、感動しながら精算。一階に下りて、路地に立ち、電車の音を聞きながら二階を見上げる。そこには青い空を切り取るような、新しい古本屋さんの姿が!開店おめでとうございます。中公文庫「胡堂百話/野村胡堂」を購入。
posted by tokusan at 18:39| Comment(2) | TrackBack(0) | 関東 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月09日

10/9東京・三軒茶屋 MOON FACTORY

まずは荻窪からバスに乗って『世田谷文学館』へ。昨日から始まった『萩原朔太郎展』を観覧する。『猫』と『殺人事件』の推敲の跡が光り輝く生原稿に、魂がブルブル震えっ放し!ムットーニ作の『猫町』も、身を乗り出しながら手に汗握り締めて鑑賞し、図録とオルゴール(萩原朔太郎作曲)を購入する。それにしても展示物のほとんどが『前橋文学館蔵』となっているのだが、前橋は果たして大丈夫なのだろうか…。

moon_factory.jpg
続いて高井戸まで移動し、世田谷線の車窓を堪能して三軒茶屋。『世田谷通り』と『玉川通り』に挟まれた三角地帯を目指してテクテク。私は『世田谷通り』からアプローチし、サミット脇の『なかみち街』を歩いて行くと、『三軒茶屋中央劇場』のワンダフルな建物が、心を激しく乱打する。呆けたように、ファサードのカッパイラストパネルを眺めてから、東西に走る『なかみち通り』。ちょっと西に向かうと、右に古い矩形のビルが現れ、二階に三日月の看板を発見。最近出来た古本も販売するカフェなのである。建物を回り込むように脇道に入ると、壁面に二階入口へと続く急階段がへばりついている。階段下に置かれた三日月に挨拶をして、45度のひび割れた外階段を慎重に慎重に…。木の扉をカチャリと開けると、グレーの天井と木の床に挟まれた、お洒落シンプルなカフェ空間。「いらっしゃいませ」と迎えてくれたのは、カウンター内の眉目秀麗な女性店主である。しかし!私の目的はおいしい珈琲でも女性店主でもないっ!古本なのだ!店内に素早く視線を走らせながら少しずつ奥へ。所々に稲垣足穂本が飾られているので、タルホと店名は密接な関係にあることが想像出来る。最奥に進むと右側の窓下に、『ON SALE』の木札と共に並ぶ古本たちを確認。テーブル席に腰を落ち着け、ハートランドを注文する。身体を斜めにして、窓下足元のレンガと木板で造られた簡素な本棚を注視。上下二段に120冊ほどのハードカバーが並び、ブローディガン・バロウズ・音楽・中上健次・殿山泰司・赤瀬川原平・松山猛・出版&本・映画・和洋セレクト文学・和田誠装丁本・カウンターカルチャー・ビートニクス・山口瞳…感性鋭く血の通った並びである。特に音楽本は動脈ドクドク!しかし値段は高めとなっている。ビールを飲みながら、三冊の欲しい本を一冊に絞り込む。しばらく、窓から入るそよ風に吹かれながらボケ〜ッとし、顔をアルコールで赤くしたまま精算。扶桑社「ハートランドからの手紙/佐野元春」を購入。蹴躓いて大惨事にならぬよう注意して階下へ。

続いて渋谷に向かい、『PARCO PART1』B1の『LIBRO渋谷店』へ。目的はお店の一角に作られた、市川春子の本棚「25時書房」(新刊)である。一体どんな本を読んで、あの切ない形而上生物的物語を生み出しているのか…?うむむむ、並ぶ本は、変身譚や削ぎ落とし洗練された絵画の本たち…自分の中で読んだものをしっかりと噛み砕き、そこから自分の表現を汲み出しほとばしらせると言うことに、何と真摯に向き合っていることか!そんなことをまざまざと思い知らされた、『25時書房』のひとときであった。自分への戒めのために岩波文庫「地獄の季節/ランボオ」を購入する。
25hour_shobou.jpg
posted by tokusan at 21:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月08日

10/8群馬・前橋で祭と古道具と老舗書店!

9/23の仕切り直しで前橋へ!駅に着いて、味の薄い悲しい立ち喰いそばを啜ってから、『前橋駅西側自転車駐輪場』でレンタサイクル『No.613』を借り、まずは駅南側五キロほどにあるはずの古本屋さんを目指す!えっちらおっちら車に脅かされながらたどり着いてみると、見事にお休み中…いつもは営業してるのだろうか…要再訪かぁ…と再び駅へえっちらおっちら。今度は北側に出てみると、あちこちから祭囃子が聞こえ、街中なんだか秋祭。

doukonbou.jpg
●前橋「道根房」
大きいが寂しさの漂う北口ロータリーから、欅並木の『駅前通り』を北進。『国道50号』と合流する前に西へ曲がり込み、お祭で賑やかな八幡宮を横目に『恵比須通り』へ進入。再び北へズンズン進んで、さらに再び『国道50号』に合流する手前で、東へ向かう優しいカーブの脇道へ入り込む。すると左手に、高く棕櫚が聳え立つ、前面が植物に覆われてしまった和風の建物が出現。切妻屋根で、軒には瓦の庇が架かる堂々たる姿である。サッシの入口周辺にはもはや植物と融合し、風の谷のナウシカのようになってしまった古道具たち…しかしサッシの向こうには、積み重なった本の姿が見えているのだ!勇気を奮って峡谷のように狭まったステップを上がり、ガラリと店内へ。ぐむぅ、何と時間が停まり積み重なった空間であることか…しかもほとんど古道具屋さんではないか。ふと左に視線を投げると、薄暗く小さな空間におかれた机にへばり付く、薄いダニー・デビート風店主の姿…原稿用紙に一心不乱にペンを走らせている…。挨拶をして店内回遊の許可を求めると、顔を上げつつ目をギョロつかせる…緊張の一瞬…「あぁ、どうぞ」。「ありがとうございます」と努めて爽やかに返答すると、「大した物はないけどね」と相好を崩した。おぉ、最初は周りの空間も含めちょっと恐い印象だったが、中々フレンドリーな方ではないか!「崩れて巻き込まれないように気を付けてね。へへ。でもここ、地震の時はほとんど物が倒れなかったんだよ。まぁ俺は外に逃げたけどね」…ハッキリ言って店内は不安定の嵐である。棚に収まった物たちはまだしも、床から地層のように積み上がる、額・皿・古本・人形・箱・盆・雑誌…本当だとしたら驚異である。そのカオスな店内の構造は、中央通路を軸に、右に行き止まりの通路が二本、左に帳場と袋小路の通路が一本。中央通路はそのまま奥へと延びて行き、重厚な蔵の中にも入れるようになっている。おぉ、蔵!スゴイぞ!そして蔵の中には一本、手前には二本の梯子階段が架かっている。これらはほとんど物品棚となっており、使用不可の状態。薄暗くホコリが積もった店内には、茶碗・皿・壷・人形・置物・壜・時計・ライター・おもちゃ・汁碗類・漆器・絵画・看板・白墨・マネキン・ランプ・カバン・トランク・レコード・装身具・ガラクタなどが、所狭しとひしめいている。古本は入口横にボロボロの文庫タワー、右側手前通路に美術ビジュアル本・雑誌附録・コミックなどが混ざり、右側奥の通路に美術・歴史・文学・風土・コミック・落語・全集・囲碁・社会・心理学・科学・文庫少々・絵葉書・グラビア雑誌などが、ゴチャゴチャと棚に並んでいる。一貫性があるようで無く、棚は死んでいるようで死んでいない…蔵には和本が乱雑に積み重なっている。蔵の奥に進み過ぎると、床が“ギシ”ではなく“ミシリ!”と鳴るので、肝を冷やすの必至!途中トイレに席を立った店主に十分ほど放置されるが、しかし逆にその機会を利用して、のびのびと発掘活動に従事し、欲しい本二冊を無事に見つける。が、値段が付けられていない…。戻って来た店主が「最初は古本屋だったんだけど、今はもうほとんど古道具屋だよ」と言いながら、渡した本をチェックする…ドキドキ。そして「二冊で500円です」。う〜ん、安いじゃないですか。「本好きなの?じゃあすぐそこの煥乎堂に行くといいよ。二年くらい前に、三階に大きな古本売場が出来たから。俺もそこに良く買いに行くんだよ。あっ、売り物じゃなくて読む本をね」と大笑い。最後は「近くに来たらまた寄ってよ」と親しげに微笑む。あぁ、何だか心が暖かくなるお店であった。婦人画報社「トラッド歳時記/くろす・としゆき」樹石社「化石風土記/亀井節夫監修」を購入。

kankodo_furuhonya.jpg
●前橋「煥乎堂 ふるほん書店」
このお店は、以前からコメントに情報が寄せられていたので、最初から訪ねようと思っていたのだが、奇しくも「道根房」店主にも薦められるカタチとなった。と言うわけでお店を出て『恵比須通り』を北に向かい、すぐの『国道50号』へ。対岸では『中央通り』のアーケード街に、安っぽい匂いを流す縁日の屋台がズラズラ。その対岸に渡って北西に進むと、『本町一丁目交差点』の手前に、二階吹き抜けの大きな半円形の入口を持つ、新しいビルの老舗大型書店が現れる。ほぉ、入口上部にダイナミックにラテン語(予想)が刻み込まれている。自動ドアから中に入り上を見ると、ビル案内板の三階部分に『Used Book』『中古文芸書 中古文庫 中古新書 中古コミック 中古ビジネス書 中古実用書 買取コーナー』と表記されている。節電のためエスカレーターは停まっているので、奥の階段で三階へ向かう。階上でまず目に入るのは『骨董舎』と言う骨董屋さん。一応本が無いかどうか確認してから逆のフロアを見ると、白く広いリサイクル古書店の姿。主婦達が立読みをし、子供たちが通路を全力疾走している…。壁際はすべて本棚で、奥に四本の背中合わせの棚、手前左側に200均絵本・200均文庫・特価コミックの低い平台がひとつずつ並び、後は背中合わせの棚が三本。壁棚や通路棚は新しい本ばかりで、一般的なリサイクル店的ジャンル&並びを見せている。値段は定価の半額が中心。100均&200均棚もあり。目を惹くのは右奥の全集ゾーンと右壁手前の箱入り文学本棚で、量感のある四角い本たちがズラッと並び、三ケタの値でバラ売りされている。そして面白い本や掘り出し物を探すとしたら、棚下の平台に勝機あり!ここにはちょっと古い本が安値で紛れ込んでいるのだ。さらにレジの後ろにある郷土本コーナーも見逃してはならない。こんなに『みやま文庫』が安く売られているのを初めて見たぞ!ここでは古本は、一律に中古本として扱われるようで、プレミア値などは付いていない。新刊書店の中のリサイクル古書店…最近良く出会う、書店が生き残って行くためのビジネス的選択肢…まぁどんなカタチであれ、古本が売られているのにはニンマリしてしまう。幻冬舎「THE GEISHA GIRLS SHOW 炎のおっさんアワー」草思社「大人の女が美しい/長沢節」煥乎堂「萩原恭次郎の世界/伊藤信吉・川浦三四郎編」を購入。

これで前橋は、表面上残すところ三店か…などと考え、祭の人波に揉まれつつアーケードを進んで行くと、あっ「満月文庫」(2010/04/04参照)が元気に営業中だ!美容院の中にある不思議なお店だったので、ちゃんと続いているかどうか、気になっていたのだ。何だか本棚が増えているようだが…むっ?こっちには「鈴木文庫」の小さい札が…すっかり様子が変わっているようなので、ここも要再訪で再ツアーしなければ…。
posted by tokusan at 20:36| Comment(4) | TrackBack(0) | 関東 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月06日

10/6東京・上野 ANGERS bureau

angers_bureau.jpg
仕事をちょっとほっぽらかして、上野駅構内の雑踏の中。北側の『入谷&公園改札』に向かい、階段をトントン駆け上がる。目指すはJRの大型駅に造られる、金太郎飴の如き小奇麗な商業施設のひとつ、『エキュート上野』である。こうゆう所は、改札を出ずに駅構内で買物を出来るのが売りなのだが、移動の過程ではなく、ただここだけを目標に来るのは、何やら妙な感じである…。構内の案内地図を注視して、『入谷改札』北側に展開する商店群を見つける。改札前から延びる東側の通路を進むと、最初の十字路北東際に目指すお店を発見。ここは『書斎』をテーマにした文具と書籍のショップで、マニア向けに古書も置かれていると聞きつけたのである…嬉しい話だが、盲信しているわけではない。果たしてどれだけの量が置かれているのか…棚を目にするまで安心出来ん!ちょっと薄暗く、高級感を装ったシックな空間に、いざ突撃!店内は八割方が、セレクトされた世界の文房具で埋められており、『書斎』をイメージしているためか、全体的に黒光りした重厚感が演出されている。多く造られた店内通路を、文房具を吟味する若者たちが、静かに物欲を滲ませながら回遊中。ブックコーナーは南側入口横の右角に設置されている。新刊が平積みされた平台が二つ、右壁と入口横壁に本棚の姿…新刊がほとんどで、『旅の時間』『自由へのメソッド』『文字と言葉』『色と形』などの観念的ジャンル分けがなされ、小さなセレクトブックの色合いを見せている。むっ、『伯父さんから学ぶ』のコーナーには、古本に関する本が集められている。ではその肝心の古本たちは…入口側の棚に縦に一列に、余裕のあるディスプレイをされている。ジャンルは『OLD BOOK』だが、コーナーの値付けの説明書きには『ヴィンテージ古書』とある。洋写真集・焼物関連・ポケットサイズ「宝島」・カラーブックス・網野菊・4WD・梶山季之・荒木経惟・デザイン・カンディンスキー…う〜ん、果たしてここでこれらの古本を買う人はいるのだろうか?新刊の並びが良いだけに(平台には花森安治特集や夏葉社の本が!)非常にもったいない感じがする。値段は高く、ほとんどの本にプレミア値。それでも踏ん張ってカラーブックス「やきもの風土記/崎川範行」を購入する。ちなみにこのお店は、京都・滋賀の本屋さん「ふたば書房」が母体とのことである。そしてこのままでは古本魂が燻るばかりなので、『公園改札』から外に飛び出し、「上野古書のまち」(2008/12/09参照)へダイビング!秋の虫のような異音を発している空調の下で、本の中をササッと彷徨い平凡社カラー新書「コイン百話/松本章」を購入。よし、帰ろう。
posted by tokusan at 20:11| Comment(2) | TrackBack(0) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月05日

10/5磯子の近接古本屋遺跡『痕跡と幻影』

isogo_iseki.jpg
根岸湾の形をなぞる『国道16号』を、磯子駅から北に向かって600mほど進むと『磯子旧道入口交差点』に到る。ここに二種の古本屋遺跡の姿。ひとつめの「池田書店」は交差点手前の16号沿い、時間の停まった古い商店建築群の中に沈んでいる。閉ざされっ放しの錆びたブリキの雨戸。その表面は丹念に育てられているのか、繁茂したほおずきに覆われてしまっている。小さな店頭が、在りし日の古本屋稼業の様子を伝えることはもはや無さそうだ。唯一の痕跡は、軒のモルタル壁に染み残る、看板文字だけ…。目を凝らして、その古代壁画のような白と灰色の模様を解読すると、『池 田 書 店』の四文字が浮かび上がった。2005年あたりまでは確実に営業されていたようだが、今はその役目を終え、静かにほおずきを育てている…。そして二つめは、交差点を北に越えると左手に賑やかに現れる闇市の名残り『浜マーケット』。この中にあった「磯子文庫」と言う名のお店である。光文社文庫「ミステリファンのための古書店ガイド/野村宏平」によると、元は貸本屋さんで昭和二十〜四十年代の小説や漫画が、かつては並んでいたと言う。こんな出会った瞬間に気絶してもおかしくない状況で、2007年まで現存していた。しかし!2007年4月にマーケットが火災に見舞われ、その後は仮店舗で営業されていたようだったのが、いつかお店を畳んでしまったのである。よってこの場には痕跡すら残っていないのだ。しかし、賑やかな入口から、狭く少し坂になって左右に角度を付ける、そのマーケット内を遡上して行くと、『あぁ、この先にはまだ古本屋さんがあるのではないか…』と心の中の幻影に繰り返し幻惑される。およそ200mほどのアーケードを抜けると、今度は『私は隙間にあったお店を見逃しているのではないだろうか…』の疑惑に捉われ逆戻り…。永遠に古本屋さんを求めて行きつ戻りつ…しかしいくら歩いても、その幻にたどり着くことは出来ない。今その痕跡を確認出来るのは、『浜マーケット』公式HP内の『店舗紹介』で、『2007年4月頃』のマップにある「磯子文庫/折紙」の文字。そこをクリックして、歩いてたどり着けなかった、在りし日の店内と店主の姿を、モニターに浮かび上げることだけなのである…。
posted by tokusan at 18:56| Comment(2) | TrackBack(0) | 古本屋遺跡 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

10/5神奈川・黄金町 バイアップ

by_up.jpg
磯子から飛び乗った横浜市営バスが本牧方面へ向かうと思ったら、思いっ切り見当違いで、掘割川に沿って北進し続け、いつの間にやら黄金町。バスをサッと飛び降りて、手近な未踏のお店にスルスルと近付く。駅からは、太田橋を渡って『伊勢佐木町モール』に入って北東へ。『イセザキ6モール』の二ブロック目で、歩道に大きな日除けを張り出したお店に出会える。店名は何処にも無く(このお店の名は「童草学舎」(2011/04/14参照)で入手した『横濱下町古書店マップ』で確認した)、軒に以前のお店の『立花屋』の文字がうっすら残っている。店頭左に四本の本棚と四台のワゴンが並び、棚には100均文庫、ワゴンには100均単行本…雑本的だが、古い本から新しい本までの、冒険しがいのある荒海となっている。一冊抜き取り、店舗右側にペタペタ貼られた、地元映画館『ジャック&ベティ』のポスターを眺めてから、多少ごちゃついた店内へ。外から見ると横長なお店であったが、左半分が広いアダルトゾーン、入口のある右半分が古本ゾーンとなっていた。その右半分は、ほとんどがコミック&コミック揃い&廉価コミックで、左端通路の左壁に古本が集められている。社会・ノンフィクション・サブカル・実用・日本文学文庫(岩波&講談社学術も少量ながら一列占領)・時代劇文庫・ビジュアル本…店内は新しめの本がメインだが、値段は安めとなっている。奥にある帳場兼作業場で、若者に本を抜き取った場所を説明しながら精算する。気がつけば、横浜の未踏のお店も残り少なくなってきたな…。文藝春秋「されどわれらが日々/柴田翔」新潮文庫「いつかX橋で/熊谷達也」を購入。
posted by tokusan at 18:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 関東 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月03日

10/3東京・中目黒 本とギャラリー デッサン

dessin.jpg
駅の暗いガード下から『山手通り』へ飛び出す。無心に北西へズカズカ歩く。『東山一丁目交差点』を越え、駅から600mほどの信号で、南西の脇道へ曲がり込む。右手二番目のブロックの、フランス菓子店の隣に、何処かで見たことのある分厚い本を軽く開いて立てたような、特徴のある立看板…ここは渋谷「東塔堂」(2009/06/18参照)の姉妹店!九月にオープンしたばかりなのである!あちらは美術関連書が中心で、こちらは絵本や写真集が中心とのこと。それにしてもこの発展ぶりは素晴らしいことである。黒い板材に縁取られた店頭は、ギャラリーも併設するお洒落で緊張感ある琥珀色の空間を、惜しげもなく覗かせている。入口横には安売り絵本と文庫&カラーブックスの入った箱が二つ。白枠のドアを通り抜けて、木の床を踏む。静かな、木と絵本と写真の空間である。右側のウィンドウ裏には絵本ディスプレイ用の椅子が一脚、壁沿いに本棚が一本、机&小本棚の組み合わせがひとつに、もうひとつテーブルが。真ん中には小さな木馬と、本の入った木箱の一群。左側は入口横に背の高い本棚が置かれ、後は壁沿いに大きな棚が凸凹と続いて行く。奥は一段高くなったギャラリー空間で、現在は写真展が開かれている。その空間の左側奥に、背の高いカウンターの受付的帳場があり、若い女性がおっとりと店番中。ここにはガラスケースもあり。右壁には児童文学・日本作家絵本・「こどものとも」・海外作家絵本…結構古いものもあり、堀内誠一が良く目に入る。真ん中の箱には、洋絵本やここにも「こどものとも」の薄い姿。入口左横には、岡本太郎・ムナーリ・谷川俊太郎・ビートルズ・料理・ヨーロッパ・詩・デザイン・ファッション・大橋歩・写真家など。左壁は大判本の領域で、美術図録・洋画集・洋写真集・古い洋ビジュアル本・和田誠&堀内誠一絵本・デザイン&装丁が並んで行く。ギャラリーのガラスケースには、真鍋博「寝台と十字架」やホンマタカシ「TOKYO SUBURBIA」などのプレミア本が飾られている。広く静かな、絵本&写真集&画集&ギャラリーのお店で、確かな選択眼により棚が造られている。値段は普通〜高めで、プレミア値も普通に付けられている。そして奥で、緊張しながら絵本の代金を払っている男は、二日連続で絵本を購入しているのであった…。福音館書店「かがくのとも4 かげ/中川正文・ぶん 堀内誠一・え」を購入。

昨日に引き続き、またもや告知です。先日お伝えしました、神奈川県古書会館での『古本屋入門講座』の詳細が決定いたしました。…改めて見てみて、果たして私は下記の場所に収まっていていいのだろうか、と激しく不安に駆られます…。

●●「古本屋入門講座・あなたも古本屋になれる!」
1 理事長挨拶 萬葉堂 相原純
2 特別講座 古本屋ツアー・イン・ジャパン 小山力也
“古本屋ツアー・イン・ジャパン、横浜に現る”
http://blogs.dion.ne.jp/tokusan/  
全国の古書店を駆けめぐり紹介して、古本ファンに人気沸騰のウェブサイト「古本屋ツアー・イン・ジャパン」の主宰者・小山力也さんが、横浜の古本屋案内をはじめとして、古本屋のさまざまな姿と、古本屋巡りの楽しみを語ります。※当日会場にお越し下さった方に、「植草甚一の足跡をたどって〜古本屋ツアー・イン・ヨコハマ feat.J・J」なる、A4表裏の自主制作ペラ一枚チラシを配布する予定。J・J氏の横浜古本屋巡りをトレースして、現在の本牧から野毛までをヨタヨタウロウロします…あぁ、早く作らねばっ!
3 個性的な古書店のつくり方 聖智文庫 有馬卓也
あまたある古本屋のなかで特色ある店、個性的な店をつくるには、どうすればいいのか。文芸書専門店として際立つ聖智文庫の有馬卓也さんが、その経営術を語ります。
4 ネット販売と即売展について あさひ書店・山口友人 文雅新泉堂・野崎正幸
店舗販売の他に、古本の売り方としてインターネット販売と即売展があります。自店サイトの作り方や、「日本の古本屋」、アマゾン・マーケットプレイス、ヤフー・オークションなどに出品する方法、さらにデパートや古書会館などでの即売展について解説します。
5 組合加入のご案内
神奈川古書組合に加入する際の資格や条件について、簡単にご説明致します。
★★参加ご希望の方は、下記までお申し込みください。
先着順ですので希望者は電話かFAX、またはメールにてご予約をどうぞ。
■10月29日(土) 13:00〜
■神奈川県古書会館 二階
■無料・要予約
■お問い合わせ・予約は神奈川県古書会館
tel:045-322-4060(月曜と金曜のみ)
FAX 045-322-4122
メールアドレス  kanagawa_kosho@bg.wakwak.com
■定員50名となり次第、締切となります。
posted by tokusan at 21:08| Comment(2) | TrackBack(0) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月02日

10/2千葉・柏の葉キャンパス 古書絵本スズキブックス

suzuki_books.jpg
秋葉原から『つくばエクスプレス』に乗り換えて千葉北部へ。長い駅名が連続する路線の中程で降車し、改札を抜けて『国道16号線方面東口』へ出る。ららぽーとと高層マンションがランドマークで、駅を離れると後は広大な空地と住宅街が広がっている。ロータリーから東へ向かい、突き当たりを南へ進むと、やがて交通量の多い『県道47号』。ここから北東へ進んで行けば、『国道16号』と交差する『若柴交差点』にたどり着く。そこをそのまま突っ切りちょっと坂を下ると、左手に『柏市公設市場』が現れるので、その前を東南に曲がり込んで『けやき通り』をトボトボ進む。通りには名前の通り欅が連続し、脇にはコンクリで固められた小さな川が流れている。道が緩やかに曲がり、ひとつ目の信号を過ぎると待望のお店に到着。駅からは1.5キロ強の距離。白いお店の右側側壁には手作り銅板の小さな看板があり、サッシとガラスの店頭は少し奥に引っ込んでいる。その前には様々なお知らせの案内や、何故だかディスカウントチケットショップの立看板もある。明かり窓裏のダンボール紙には、『すぐれた古書絵本専門店』の手書き文字が輝き、ここまで来た甲斐をまずは軽く味あわせてくれた。自動ドアから中に入ると、広くガランとした簡素で余裕のある店内で、所々に子供のための木製遊具の置かれた、寛ぎ&遊びスペースが設けられている。壁一面は本棚、フロアには左端に短めの棚が一本あり、後は長い平台付きのラックが二列並んでいる。入口左横には横長の低いラック、右にチケットショップを兼ねた帳場があり、ご婦人が伸び上がるような声で「いらっしゃいませ」。このお店は、すべてが絵本を見せるために出来ている。壁棚の絵本はすべてが面出しして飾られ、ラックや平台もすべて絵本の表紙が見える状態。そして本に挟んだり、棚に貼られたりした手書きのポップ…シンプル過ぎて、おしゃれ感や装飾性は無いのだが、とにかく静かに絵本への愛が込められているようだ…。入口左横には福音館書店の月刊絵本「こどものとも」「かがくのとも」がズラリ。左壁にはまずは特集棚があり、今は秋に因んだ絵本、星座・夜・月・虫の鳴声などが並ぶ。さらに200円均一絵本&児童文学が続き、最後に絵本以外の日本文学単行本・問題集・100均岩波新書・趣味のビジュアル本が集まる。向かいはちょっと空白の多い育児・教育。左から二番目の通路は、左側に児童本・ミニゲーム・カルタなどが並び、右は読物絵本と児童文学が対象年齢順に飾られている。グッと目玉を惹き付けるケストナーコーナーもあり。三番目の通路は、左が海外作家絵本、右が日本作家絵本となっている。堀内誠一ゾーンあり。奥壁は作家別ディスプレイとなっており、まずは驚きの小松崎茂額装イラスト&評伝本、そしていわさきちひろ・谷川俊太郎・宮澤賢治・かこさとし・長新太・五味太郎・エンデ・リンドグレーンなどが説明付きで並んでいる。未知の作家もあり、非常に興味深い棚となっている。右端通路は、左に自然・科学・知識の絵本…おぅ、安野光雅ゾーンあり。右壁は奥からアンデルセン童話&グリム童話の絵本対決から始まり、自然・科学・知識の棚が続き、帳場前に英語絵本が集まる構成となっている。70年代を中心に良質な絵本と児童文学が集まる良いお店である。古書的な視点とはまた違った、この時代にしかなしえなかった、絵と話で子供の想像力を羽ばたかせたい!そんな思いがヒシヒシと伝わる棚造りなのである。値段は定価の半額前後で、プレミア価格はほとんど付けられていない。帳場で少女の心を保つご婦人に精算していただく。千葉県北部に、こんなお店が潜んでいたとは…。冨山房「セロひきのゴーシュ/宮沢賢治・文 司修・画」福音館書店「月刊かがくのとも ぶぶんぶんぶんしんぶんし/織田道代・文 古川タク・絵」を購入。

そして千葉つながりで、明日10/3に『古本屋ツアー・イン・チバ』が掲載された、京阪神エルマガジン社「千葉の本2」が発売されます。『感じるリラックス【よむ】×古本』と言うコラム2Pですが、リラックスとは程遠い慌ただしいコーナーになっております。この本を携え、みなさん千葉へレッツ・ゴー!※ブログやtwitterで『古本屋ツアー・イン・チバ』に言及していただいた、岡崎武志氏と向井透史氏に多謝!
posted by tokusan at 19:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 関東 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月01日

10/1東京・早稲田 第26回早稲田青空古本市

aozora_furuhon_matsuri.jpg
午前中の秋晴れの下、髪を乾かすついでに自転車で早稲田まで疾走!ほぉ、早稲田古本街にはすでに古本祭のフラッグと古書店名の入った紅白提灯が、秋の風に揺れている。『西早稲田交差点』を過ぎ、穴八幡宮の崖下で自転車を停めると、髪はすでに乾き切っていた。良し、準備完了!と『馬場下町交差点』に立ち、西の空へ駆け上がる神社の急階段をグッと見上げる!『早稲田通り』と『諏訪通り』が合流する岬にある、『穴八幡宮』の境内で開催される古本市!私は来たのは初めてである。古本祭の看板を眺めてから(26回目とは!)第一の石階段を駆け上がると、幟と長机が並ぶ地帯。さらに第二の急階段を必死に駆け上がると、目の前に丹塗りの楼門がデンと現れ、参道左側の広場に古本が集まる祭の現場を確認!神社の境内で祭!ただでさえ血が騒ぐ出来事なのに、縁日とはまた違った興奮が、体内の血をさらにたぎらせて行く!そしてそこには、すでに血をグツグツとたぎらせ活動中の古本修羅たちの姿が…。まずは楼門側に長机で造られた五つの島があり、続いて大きな白いテントが二連結し、下に平台机と棚で形作られた古本棚が二列で奥までずずいと続いて行く。そして最後に小さなテントと二つの机島があり、本殿側の最奥に、古書店主が忙しく働く帳場がある。テント下は蒸し暑くもなくほど良い明度で本が見えるが、外は日が照るとキラキラ輝き、少し本の背が見難い状態になる。『雪目』ならぬ『本目』にご注意!コンパクトにまとまっているが、見応えはたっぷり。軟らかめの本は映画&芸能関連&一部文庫くらいで、社会科学・文学評論・歴史・戦争関連・岩波文庫・中公文庫が幅を利かせている。何とハイブロウな古本祭なのか!?私にとって幸せだったのは、「虹書店」(2010/08/24参照)と「赤いドリル」(2010/06/23参照)の強力コンボが見られたこと!これはもう、旧一号ライダーの本郷猛が、突然ブラジルから帰って来て、二号と共に闘うような衝撃!フフ、楽しいな…私はいつの間にか、抑制しながらも七冊を脇に抱えていた。それにしても皆、恐ろしくなるくらい古本を抱え込んでいる。まるで帰ったら古本屋を開きそうな勢い…。途中、「古書現世」(2009/04/04参照)の向井氏に声を掛けていただき、ちょっとだけお話し。彼は両手には古本の山を抱えたままだ…私はいつも、向井氏が古本を運んでいる所を見ている気がする。お忙しいのにありがとうございました。奥の帳場では、肉塊のように立体的に本を包んでもらう。この物質感がたまらない!これもまた古本市の醍醐味であろう!「古書 現世」にて理論社「プロレタリア文学史 上/山田清三郎」(赤木健介への献呈署名入りが500円とはっ!)を、「鶴本書店」にて現代教養文庫「明治の東京/馬場孤蝶」ハヤカワ文庫「ミステリ・ハンドブック」を、「金峯堂書店」にて岩波文庫「ツアンポー峡谷の謎/F・キングトン・ウォード」を、「古書 赤いドリル」にて梅田書房「小林一三翁に教えられるもの/清水雅」を、「渥美書房」にて創元社「九州文學散歩/野田宇太郎」を、「立石書店」にてヨシモトブックス「中川家礼二×原武史 鉄塾」を購入する。この祭は10/6まで。この様子だと本はガッツリ入れ替わりそう…開催中にもう一度来てみたいな…。
posted by tokusan at 16:13| Comment(6) | TrackBack(0) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする