2013年01月31日

1/31埼玉・大宮 more records+nostos books 期間限定古本棚

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東口(南)に出ると、巨大なビル群が迫り来る西口とは異なり、少し古ぼけた感じの街並。ロータリーを突っ切って『大宮中央通り』を東に向かってテクテク。スクランブル交差点を通過し、次の『大宮区役所入口交差点』で南に入る。するとすぐに左に『大宮区役所』が現れるが、右手ブロックでは街の裏通りが魅力的に看板を重層させている。そんな道を300m弱進むと、二階までの外階段を緑のテントシートで覆った建物が目に入る。路上と二階踊り場部分には『more records』の看板…ここは紛れも無くCD屋さんなのだが、1/27から期間限定の古本棚が設置されているのだ。そしてその棚を構成しているのが、オンライン古書店の「nostos books」さん…未知の古本屋さん情報を求め、私は日々飽くなきネット検索をしているのだが、そんな情報の海の中で突然目に止まったお店なのである。オンライン古書店は数あれど、何故このお店がそんなにも心を捉えたのか?その理由は、『いずれ実店舗を開くつもり』と宣言してあったのと、ロゴマークのとてつもない可愛さにある!と言うわけで、薄いカーペットの敷かれた急な鉄階段を、ソロソロと上がって行く。二階で銀の扉を開くと、そこは広いワンフロアのCDショップであった。右側にレジとテーブル席があり、壁際にぐるっとCDラック。フロアにも両面のCDラックやテーブルが並ぶが、見通しは良く広々としており、すべてがセンス良く磨き上げられている…なのでやたらと緊張…それにしても、この試聴機の多さはただ事じゃないぞ。しかし私の目標はあくまでも古本なのである。CDを見るフリをして、アナログな本の姿を探し求める。そしてすぐに、窓際白い机の上にスマートにディスプレイされた、小さな「nostos books」にたどり着いた。映画・音楽・演劇を核に、70年代前後のポップ&カウンター&アングラカルチャーで形作られている。スパイク=ジョーンズ・田名網敬一・横尾忠則・キューブリック・ルーカス・和田誠・三島由紀夫・寺山修司・滝本誠・ジョン=レノンなどなど。冊数は四十冊ほどだろうか。値段はしっかりなちょい高〜高め。一冊を選ぶと共に、嬉しいショップカードを入手する。またもやCDを見るフリをしながら、ジリジリとレジへ移動。ミュージシャン然としたビジュアルの男性に精算していただく。そして「お店、初めてですよね?」と問われたので、正直に古本を見に来たことを告げ「CD買わなくてすいません」と勝手に謝罪。すると彼は笑いながら「いや、いいんですよ。そういう風にお店に来てもらえるのは嬉しいんで。ノストスさんとはこれからも色々やる予定なんですよ。二月下旬からまた、テーマを買えて本を並べてもらおうかと…」おぉ、それは素晴らしい!本来この古本棚は二月中旬までなので、再開されるのは非常に喜ばしいことである。もういっそのこと常設にしてもらえれば…そして「nostos books」さん、早く実店舗を!河出書房新社「アンダーグラウンド・フィルム・アーカイブス/平沢剛編」を購入。

この後は東口の「橋本書店」(2008/11/21参照)にも足を延ばし、大胆に店内に射し込む西日を浴びながら、角川文庫「飛田ホテル/黒岩重吾」中公新書「昆虫学五十年/岩田久二雄」を計300円で購入する。
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2013年01月30日

1/30東京・拝島 エコランド 拝島店

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中央線で西に向かい、立川駅で青梅線に乗り換えようとすると、西国分寺駅付近で車両事故が発生。長いホームの両端に見える信号機がすべて赤に変わり、列車の運行が停止する。ほどなくして構内放送が、錯綜した情報を垂れ流し始めた…。あぁ、いやな始まり方だ。しばらくホームで待ったり、分離運転を開始する電車に乗り込んだりして、二十分後に立川からの下り電車のみが動き出した。電車に乗ってしまえばすぐに目的駅着。まずは以前タレコミのあった、古本棚を出す床屋さんを見に行ってみるが、残念ながら古本の影はナシ。すぐさま駅南口に戻り、東南に延びて行く小さな駅前商店街を進む。やがてバスターミナルが脇にある『松原町4丁目交差点』にぶつかるが、線路沿いに進む道を選んでさらにそのまま東南へ。400mも進めば大きな『イトーヨーカドー』にたどり着くので、信号にぶつかったら進路を南へ。すると左手に巨大な倉庫建築のリサイクルショップが建っていた。その大きさに驚きながら中に入ると、横は広いが奥行きはあまり無く、売場も一階のみで、ちょっと拍子抜け。古本は何処にあるんだ!と、まずは中央通路左手前方にあるCD・DVD棚付近をクサいと睨んで猟犬のようにうろつく。すると中央通路に背を向けた、ガラス戸付き本棚の中に、古本がまばらに並んでいるのを発見した。『BOOK 本』とあり、三冊200円…しかしそのほとんどはコミックである。名作「幕張」1〜8巻に心がピクッと動くが、こんなものを買っている場合ではないのである。他には菊地秀行・笠井潔・群ようこの文庫が二段分、それに児童文学が半段分ほど並ぶのみである。ハヤカワ文庫「女には向かない職業/P・D・ジェイムズ」文化出版局「ふくろうくん/アーノルド・ローベル」をレジへ差し出すと、「三冊で200円ですが、二冊でよろしいのですか?」と申し訳無さそうに言われる。よろしいんです!

しかしこのままでは“古本魂”に蓄積する“古本エネルギー”がエンプティ!中央線が分断された今、西武線に乗ればスムーズに帰れるのだが、“古本エネルギー”補給の方が遥かに重要なので、青梅線上りに乗って東中神駅下車。陽光が洞窟のような店内に美しく射し込む「中神書林」(2009/02/27参照)に駆け付ける。
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古本棚からエネルギーを存分に補給して、ハヤカワ・ファンタジィ「吸血鬼/リチャード・マティスン」角川文庫「ザ・スパイ/ジョン・バカン」(「三十九階段」の別訳)春陽文庫「高木家の惨劇/角田喜久雄」アニメージュ文庫「映画、この指とまれ/大林宣彦」を合計600円で購入。帰りは立川駅で多摩モノレールに乗り換え、玉川上水駅で西武新宿線に落ち着き、どうにか帰宅する。

※お知らせ1 古本界の特異点『古本ざしきわらしが行く』で、緩〜い新春座談会後編が、ユルさを増して掲載中。もはや流れ出すほど柔らかです!

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2013年01月29日

1/29東京・石神井公園 エコキーパーズ

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ちょっと暖かな午後に、自転車に乗って『旧早稲田通り』を遡って行く。やがてたどり着いた練馬区民の憩いの場、池に浮かぶアヒルボートが寒そうな『石神井公園』を回り込んで駅南口へ。賑やかでごちゃつく商店街を西に向かい、高架下を貫いて東北・西南に延びる『富士街道』に出る。狭苦しいが車の行き交いが多いこの道を西南に向かうと、100mほどで右手に『古本』の幟が目に入る。リサイクル屋さんが多角経営として、新たに始めた古本屋さんなのである。道路に向かって開け放たれたお店は、右側だけにオレンジ色の日除けが突き出している。店頭右側には100均コミック棚大小、左には100均文庫棚大小と共に、安値の雑貨や生活家電が並べられている。店内は小さな八畳ほどの空間で、全体にD.I.Y色が漂っている。壁際は白い本棚、真ん中には白い背中合わせの本棚が二本。奥には防寒のためか、ビニールカーテンで仕切られた無菌室のような帳場兼作業場が見えている。中にはマスクをして、モコモコと重ね着した若い男女が蠢いている。棚のジャンル分けは非常にシンプルで、右端通路が少年&青年コミック(絶版少々)・美少女コミック・実用。中央通路が200均文庫と300均単行本、それにDVDとCDも縦に一列並ぶ。左端通路が少女コミック・300均単行本・200均文庫&新書・ビジュアルムックとなっている。安く集めた本を、棚にドカドカ一律に並べて行く…非常に原初的な古本屋さんの姿がここにある!雑本的で新しい本が中心で、ビジネスと何故か特撮関連書が多い。特撮書はマニアの蔵書を一括して引き取ったものであろうか?中公文庫「ポー名作集/丸谷才一訳」岩波新書「日本庭園/小野健吉」双葉社「怪獣魂vsメカ怪獣魂」ペヨトル工房「夜想10 怪物・畸形」河出書房新社「円谷英二」筑摩書房「ゴジラのなかみ/薩摩剣八郎」と、結構購入してしまった…。
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2013年01月27日

1/27武蔵野線で流れ落ちてパチモノのメンコを

ウィークエンドパス二日目は、完全に宝の持ち腐れとなる、都内近郊の移動に使用。財布に収めた磁気切符にすまなく思いながら、まずは埼玉・岩槻へと向かう。ここでは毎月第四日曜に大規模な骨董市が開かれ、古本も並べられると言うのだ。もはやお茶の子さいさいな一時間ほどの電車の旅で改札を抜けると、左手奥のビルの間で開かれている市がすぐに目に入った。近付いてみると、そこは綺麗な通りだがビルに陽光を遮られ、切れ目無く強風が襲い掛かる最悪の環境!
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私も身を縮めながら、露店の間を擦り抜けて行ったのだが、古本は何処にも見当たらない…しかしここは『第二会場』で、旧区役所を利用した『第一会場』もあるのだ。古本はそちらなのだろうと、気分も軽く南東に向かう。がっ、たどり着いてみると、人気が一切感じられない巨大な区役所と駐車場が待っていただけであった…。どうやら今日は『第二会場』のみの開催らしい…と言うことは、古本はナシ…何てこった。涙がこぼれそうな展開に、『暖かくなったらまた来てみよう』と克己心を奮い立たせてから、岩槻を早々と後にする。大宮から武蔵浦和を経由して、西に大回りして武蔵野台地を列車が疾走して行く。

そして国立駅。未だ改装中の位置が変わった南側改札を出て、線路沿いに西に向かって「国立本店」(2010/08/04参照)。
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大幅にリニューアルして、『ほんの団地』と言う楽しそうなシステムも始まったとのことなのだが…。非常に開け難い、元は自動ドアの手動ドアを開けて中に入ると、左壁には以前と変わらぬ五×八のボックス棚。現在はワンボックスを一つの部屋と設定し、地上三階・地下二階の団地として見立てられている。それぞれに好き好きに本が収まり、左上に部屋番号・世帯主名・部屋のキャッチフレーズ・肩書きが明示してある。出店者は編集者やデザイナーが多い。…それにしても、どの本にも値段は書かれていない…不安がグングンと大きくなる。スタッフさんに恐る恐る「この本はもしかしたら閲覧用ですか?」といつものように聞いてみると、「そうです。読むだけです」といつもの答え…あぁ!以前は販売もしていたが、中心メンバーが入れ替わり、より地域に根ざしたイベントスペース(本を中心とした)としての機能を強化したようだ。温かいお茶を一杯ご馳走になりながら、成り行きでその辺を詳しく聞いてしまう。…しかしこれからも古本棚を血眼で求めて行く限り、ブックカフェや本棚を備えたスペースで、この『販売はしていません』に出会ってしまうのは、もはや宿命なんだろうなぁ…。

「お茶ご馳走さまでした」と続いて駅近くのギャラリー『BIBLIO』(2012/07/14参照)に向かい、「岡崎武志とその仲間たち 新春古本市」に突撃する。
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おぉ、今日初めて、古本に触れることが出来たぞ!左の部屋にコタツと共に、「あり小屋」(2010/05/02参照)「岡崎武志堂」(2012/10/19参照)「桐壷屋」(2009/11/23参照※現在店舗無)が、廊下を伝った右奥の部屋に「にわとり文庫」(2009/07/25参照)「ゆず虎嘯」(2012/12/30参照)が展開している。久々の「あり小屋」の文庫本気モードが秀逸。思わずたくさん抱え込みそうになるが、激しく自制してどうにか耐える。「岡崎武志堂」で幻戯書房「ツェッペリン飛行船と黙想/上林暁」を、「あり小屋」でウェッジ文庫「蘆江怪談集/平山蘆江」河出文庫「久生十蘭ジュラネスク」を、「ゆず虎嘯」で角川文庫「野球は格闘技だ/長嶋茂雄編」を、「にわとり文庫」でパチモノの怪獣メンコシート一枚を購入する。合計3100円也。右奥部屋の片隅で、棚の本を店番を任された子供のように読みふける岡崎武志氏にご挨拶。「今からツアー行くの?」「いえ、空振り続きで、ここに流れ着いたんです」…と言うことで、どうにも冴えなかった日曜が、少しキラッと光って日が暮れる…。

そして夜、阿佐ヶ谷に食事に出た帰り、ほろ酔いで「銀星舎」(2008/10/19参照)の灯りに吸い寄せられる。どうして酔っ払って眺める本棚は、こんなにも魅力的なんだ!とニヤけながら思いつつ、長々と店内に居座り、福武文庫「ニューヨークの詩人/ロルカ」講談社現代新書「船旅を楽しむ本/柳原良平」を購入することに。合計で1080円なのだが、あまりにもここで本を買い過ぎているためか、店主が「800円!」と言う、耳を疑う値を告げて来た。瞬間的に背筋が伸び、「ありがとうございます」と全身で感謝を捧げる。日曜が、さらにピカッと光った瞬間であった。

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購入したメンコシートの一部分。これはヒドい!ヒド過ぎる!
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2013年01月26日

1/26新潟・新発田 古本いと本

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早起きして『ウィークエンドパス』で遠出。ガタゴト列車の旅を嫌になるほど繰り返して、新潟。ここから白新線に乗り換えて、越後平野・下越方面を目指す。雪はほとんど降っておらず、積雪もそれほど無いが、強風と気温の低さはいかんともし難い。列車も警戒して特定の区間で速度を落としたりしながら、雪煙を巻き上げ、風紋が刻々と変化する雪まみれの大地を走って行く。それでもおよそ四十五分で新発田着…無事に着けて良かった。このまま帰りまで、天候が保ってくれれば良いのだが…。駅前は綺麗に整備されているが、雪と広く白い空のために寂しげなロータリー。客待ちのタクシーが多く停まっている。ロータリーから抜け出て、融水でびしょ濡れて赤くなったスクランブル交差点を渡り、『駅前通り』西側の歩道を北西に歩んで行く。屋根があっても、サラサラと雪が舞い込む歩道を300mも進むと、凍った街に古本屋さんの姿が見えて来た。三枚のサッシ扉の向こうには、長い縄のれんのような目隠しと、壁際に並ぶ本棚。店頭には『古本あります』のメッセージボード、本の交換箱、それに雑誌類の並ぶ小さなラックが一つ置かれている。メッセージボードには、このお店が『お茶を飲んでゆったり』『何かを始めるキッカケ』『面白い人に出会える』サロン的な場であることが掲示されている。カラリと中に入ると、おぉ、オーブンのように暖かい!小さな空間で、右壁に本棚、その奥に小さな帳場、左には大きなテーブル。そして市民提供の古本箱が一つ。奥には和室が続いており、さらにそこから何か施設につながっている喧噪が聞こえて来る…。店主は若い眼鏡を掛けたほっそりした女性…むむ、何処か見たこのある感じだ…彼女は帳場ではなくテーブルに着き、何やらインタビュー取材を受けている。本はあまり多くなく、セレクト&綺麗にディスプレイされているパターン。『勤めないでくらすには』『心地良い休日を過ごすために』などのテーマ棚の他に、暮し・目隠しメッセージ本販売・童話・絵本・文庫・教育・冒険・スローライフ&スローフード・カルチャー雑誌・勝手に取り置き棚・旅などなど。察するに、発信力のあるお店を目指しているようで、ただ棚から本を買うだけではなく、店主とコミュニケーションを取ることにより、その機能を十分に発揮するのではないだろうか…つまり古本は“コミュケーションツール”のひとつと言うことか。静かに棚を見ていたい私にとっては苦手なパターンであるが、それでもこう言うお店があるのは素晴らしいことなので、ぜひとも地域に根付いて発展を続けていただきたい!値段は普通。店主はインタビュー中だが、申し訳なく声を掛け、精算していただく。「おっ、これは良い本を」と一言発し、何故かとても嬉しそう…あっ、そうか。誰かに似ていると思ったら、豆本×古本の「暢気文庫」さんにそっくりなんだ!それは、お互いに“替え玉”、もしくはアリバイ工作に使えるほどの相似性!いつの日かお二人には顔を合わせてもらいたいものだ、と訳の判らないことを考えつつ、お店を出て駅に引き返す。ところが駅では、強風と雪のために列車が130分遅れと言う悲惨な事態に!風がビュッと強く吹くと、視界が一瞬で真っ白に染まり、足下を妖精のような粉雪がクルクル駆け回る…これは、一体どうなってしまうのか…。
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2013年01月24日

1/24静岡・静岡 水曜文庫

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今日一日は自由(多分)!早めに色々済ませて、ガタゴト静岡に向かう。つい先日訪れたばかりであるが、構わず向かわねばならぬ。何故ならつい最近、新しい古本屋さんが誕生したからである!徐々に近付きつつある真新しい古本屋さんの、まだ見ぬ造作をあれこれ想像しながら車中を過ごし、北口に出る。ロータリー突端から地下道に入り、まずは静岡鉄道『新静岡駅』方面を目指して北に進んで行く。地上に出て『御幸通り』をそのまま進んで行けば。やがて『江川町交差点』。ここから北東に延びる『北街道』に入って、『新静岡駅』の入った複合ビルを右に見てから、先へ先へ…。300mほどで『鷹匠二丁目交差点』。ここからさらに進めば、右手細いビルの一階前に『古本』とある白と水色の立看板!さらには壁看板の最下段に、表裏の図柄が違う店名看板!勝手にもっと小さいお店を想像していたが、薄暗い店内は中々広く奥深いようだ…。奥まった入口の左側に、50均文庫と100均単行本の箱が載った台がある。切り文字書体のような店名を見上げてから中へ。すると右手中ほどにある帳場部分で、年配のオヤジさんが振り返って、野太い声で「いらっしゃいませ」。隣りにはダッフルコートを着た岸部一徳風青年もおり、聞こえる会話から察すると、どうやら彼もお店の人のようだ。店内は手前と奥に分かれる感じで、手前の方が少し横幅が広くなっている。装飾は少なめでストイック。入ってすぐ右に絵本・児童文学棚があり、古い本が良く目立って…うあぁぁぁぁあっ!いきなり佐藤暁(現・佐藤さとる)名義の「だれも知らない小さな国」を発見してしまった!函無しで状態はあまり良くないが、何と300円!どひゃっほう!と心の中で喝采し『ぜひウチへいらして下さい』と胸に掻き抱く。静岡で“佐藤暁”の本を見つけたのは二度目(2012/12/27参照)…スゴいぞ、静岡!もはやウキウキが止まらない。右壁棚の向こうには帳場ゾーン。フロアにはミニコミやリトルプレスを置く棚があり、開店祝いの花も飾られている。左壁には、料理・食・古い児童書(少々)・洲之内徹・村山槐多・骨董・芸術・建築、そして気合いの入った棚二本分のケルト&アイルランド本。さらに奥へ進むと、ちょっと狭まる奥のフロアーに突入。左の壁沿いにはまずは机棚が置かれ、島尾敏雄一家VS武田泰淳一家の、ファミリー対決が開催されている。続く高い壁棚には、女性史・女性運動・反戦・社会運動・学生運動・近代史・静岡郷土本と並んで行く。フロアには在庫僅少新刊本が並ぶテーブルと、奥に小さな文庫箱を載せた長テーブル。その右隣りには強固な大きいスチール棚が立ち、左面には映画・落語・音楽・写真集・末井昭・南伸坊・赤瀬川原平・漫画評論・セレクト漫画・ポップカルチャー・歴史小説・時代劇が並び、右面は文芸雑誌・海外文学・パリとなっている。棚を見ている間に、お客さんが次々と入って来る。どうやら新しいお店が出来ているので、様子を探っているようだ。右端は前述のスチール棚と壁棚に挟まれた、人ひとりが通るのがやっとの細い通路になっており、壁棚にアナキズム関連、日本文学・田中小実昌・幻想文学・文学評論・本&古本&書店・現代思想・民俗学・宗教・吉本隆明・平岡正明・竹中労などが収まる。これから進むべき方向をしっかり見据えた、良いお店である。硬軟が趣味性高く融合しているが、硬の割合の方が大きい。老舗店的街の古本屋さんがほとんどの静岡では、あまり見掛けないタイプのお店なので、これから市民に重宝されて行くのではないだろうか。値段は普通。講談社「長編童話 だれも知らない小さな国/佐藤暁」PHP ESSAY BOOKS「おい、友よ/平岡正明」知恵の森文庫「ふらふら/田中小実昌」を購入。このように探し求めていた本を見つけた古本屋さんは、よほどのことが無い限り、自分にとって特別な良いお店として記憶にガリッと刻み込まれる。静岡に来たらまた寄ることにしよう、開店おめでとうございます。
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[現在の村上勉描くコロボックルとは違い、アイヌ的イメージが漂う。表紙の絵は、変装用のカエルの皮を脱ぎ捨てたシーン。何と本文のレイアウトは安野光雅である]

※お知らせ1 古本界の特異点『古本ざしきわらしが行く』で、緩〜い新春座談会が掲載中。
※お知らせ2 『新刊屋ツアー・イン・ジャパン』連載中のトマソン社「BOOK5 第五号」が1/25に発売。今回は開店前にニョロニョロが出現する本屋さん……お楽しみに!
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2013年01月23日

1/23押し入れツアー・イン・ジャパン!

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待ちの仕事が重なり、家から一歩も出られない状況。これでは今日は、とても古本屋さんに行けそうにないと、悲嘆に暮れる…。しかし、家から離れられなくとも、空き時間がやたらと多いのが、またやるせない。…仕方無い。いたずらにフラストレーションを溜め込んでしまうより、暇つぶしに本&古本をたくさん詰め込んだ、我が家の押入れをツアーすることにしよう!my古本屋擬き「フォニャルフ」に補充したい本があり、それは押入れの何処かに潜んでいるはずなので、丁度良い!望むところだ!と押入れの前に立つ。襖三枚分の上下に分かれた押入れで、本は主に下段に詰め込んである。下段の構成は、下部に本を詰め込んだダンボールがびっしりと十ほど置かれ、その上に無造作に読了した本やコミックスが隙間無く積み上がる状況なのだ。ダンボール上の本にはさほど用は無いので、まずはこれらを退かす作業に専念する。手前からタワーを引きずり出し、奥へ奥へと手を伸ばして行く。上半身を押入れ内部に突っ込み、ひたすら本を掻き出す作業…重量のある本を、上半身の力だけで動かすのは、かなり難儀な作業である。部屋に飛び出した下半身の周りには、早々と堆い本の山々が形成されて行く…恐ろしい…そして片付けることを考えると、やはりかなりブルーになる…いやしかし、それでも本を掘り出さねばならぬのだ!と決意を迷い無く強固にして、一時間ほどかけてダンボール群の上蓋を晒す事に成功する。ここからは非常に楽しい時間が流れて行く。蓋を開ければ、十年ほど前に引っ越してきてから、そのまま死蔵していた本ばかりなので、新刊もすでに立派な古本に熟成されている!それにしても探偵小説と詩集が多い…牧逸馬&谷譲次&林不忘を必死に収集しているなぁ…あっ、探してた藏原伸二郎の詩集を発見!河崎実のB級本や、山田誠二の映画本も、改めて再読したくなってきた。読みたかった「日本幻想作家名鑑」も無事発見。おっ、この稲垣足穂の本、こんな内容だったのか…これも改めてちゃんと読まなければ。古い「落穂舎」(探偵小説や日本近代文学で有名な古本屋さん。今は事務所営業のみだが、昔は江古田に実店舗があった)の初期の目録が次々と発掘される…これは見ているだけで楽しい。ヤバい。昔の自分に『お願いだからこれを買っといてくれ!』と土下座しに行きたくなって来たぞ!と、作業の手を止めて、過去に埋没してしまう行為を何度も繰り返しながら、すべてのダンボールを覗き込むことに成功する。非常に楽しい時間であったが、その作業態勢は、さながら立つことも出来ぬ坑道で作業する坑夫のようで、気付いたら身体中の筋肉に乳酸が溜まり、ブルブル震え出している始末。もはやこれまでと、とりあえず必要な本だけを取り出し、背後に積み上がった本の山に絶望しながら、心を殺してそれらを押入れの中に戻し続ける。作業開始から三時間後、どうにか押入れの扉を閉めることに成功する。…疲労困憊。取り出した本は全部で十六冊。このうちの何冊かは、「フォニャルフ」に補充する予定である。
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曲がって固まった腰を伸ばしながら放置していたメールを見てみると、うぎゃあ!返事がたくさん戻って来てる!くそぅ、負けるもんか。素早くこれらをスパッと片付けて、明日こそは古本屋さんに、ツアーに行ってやるぞ!絶対に!

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2013年01月22日

1/22東横線で敗走しながら分厚い詩集を!

都立大学にある事務所店が、実はフラッと入れるらしいと言う耳寄りな情報を手に入れ、物は試しと駆け付けてみる。駅西側の『八雲通り』に入って、つい先日訪れたばかりの「博文堂書店」(2012/11/16参照)の前を通り過ぎてしばらくすると、美容院の側壁に掛けられた一枚の看板を発見する…「古書 明日」…
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しかし表は完全な美容院のみで、脇道の奥にシャッターの閉まった店舗を思わせる部分があるが…あぁ、こりゃダメなのか。看板には、御用の時には隣りの人家の呼び鈴を押すよう書かれているが、私にはどだい無理な蛮行!次回来た時にはお店が開いていることを願い、情けなくコソコソ敗走する。

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敗走しながら駅前の、すっかりこの街に定着した感のある「ROOTS BOOKS」(2010/03/25参照)に飛び込み、リーダーズダイジェスト「プレイボーイ帝国の内幕/スティーヴン・バイヤー」を300円で購入し、都立大学から即時撤退する。

東横線で敗走を続けながら、祐天寺で下車。まずは『駒沢通り』まで敗走して、ミステリー充実の「古本 赤い鰊」(2008/12/28参照)へ。
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緊張感漲る薄暗い店内で本に顔を近付け続け、角川文庫「真説 金田一耕助/横溝正史」講談社文芸文庫「月下の一群/堀口大学」(やった!)を合計900円で購入。ホクホクしながら敗走を続け、駅前『栄通り商店街』にある「北上書房」(2009/02/21参照)へ。
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古書市では棚に良くお目にかかるが、店舗は久しぶりの訪問である。相変わらず古い本が目白押しの店内を、ギョロギョロ眺め回していると、棚前に積み上がる本の山の一番上に置かれた、ドカベンの弁当箱の如き厚みと重量を持つ、永井出版企画「天野忠詩集」を発見!これはっ!…欲しいが高いのだろうな、と優しく函を振るって本を取り出す。値段を見る。2500円!帯も挟まってる!買います!買わさせていただきます!町村元官房長官似の店主に精算していただく。

二冊の分厚い詩集をカバンにギュッと詰め込んで、いつの間にか幸せな敗走。
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2013年01月21日

1/21神奈川・高津 ブックセンターいとう 高津店

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今年二回目の「いとう」巡り。高架下の西口改札を出て、『府中街道』を真っ直ぐ東南へ。300mも進めば『サイエンスパーク交差点』左手に、空手道場を二階に搭載した、中規模のお店を発見出来る。入口にはCDワゴンや古着と共に、100均の文庫棚・新書棚・単行本棚・西村京太郎&赤川次郎棚が固まっている。この様子から見ると、“古本+”のハイブリッド化が進んだお店なのであろう。中に入ると、やはり左には古着ゾーン、そして右にゲーム・トレカ・ソフトゾーンが広がり、奥の方にコミックゾーンが見えている。まだ見えない古本を求めて、右奥へズンズン進む。おどろおどろしい『青林工藝舎』特集棚に目を奪われると、その右奥のコミック棚が途切れた所から、古本ゾーンが始まっていた。そう広くはないのだが構成が複雑なので、迷い込むような感じが楽しかったりする。左手前にはアダルト通路と共に、スポーツ・鉄道・車・アニメ・映画・サブカル・食・美術・建築・デザイン・写真・性愛・ドラッグ・TATOO・犯罪・アウトローなどが、縦横計三本の短い通路にまとまっている。また右側手前には、女性実用・暮し・旅・児童文学・絵本・東野圭吾などが集まっている。最奥は三方の壁棚に囲まれた、三本の背中合わせの棚を持つ空間で、壁際は右壁から自然・科学・オカルト・新書・ビジネス・経済。奥壁は政治・歴史・宗教・教養&雑学文庫・ノベルス・海外文学・海外文学文庫。左壁はミステリ&エンタメ・エッセイ・エッセイ系文庫となっている。通路棚には、右からビジネス・自己啓発、真ん中が時代劇文庫と日本文学文庫、左が日本文学文庫となっている。各ジャンルは単行本以外にも文庫や新書が取り込まれ、丁寧な棚造りを見せている。小さな特集コーナーも非常に多く、狭さをバラエティさで補っているようだ。しかし古い本はあまり無く、値段も割と高め。大体が定価の三割引〜五割引。この値段設定は、『いとうグループ』では珍しい部類に入るのではないだろうか。ちくま文庫「ブロンソンならこう言うね/田口トモロヲ+みうらじゅん」岩崎書店「こんや円盤がやってくる/福島正美・文 中山正美 絵」を購入。

駅方向にトコトコ戻り、裏道に入って久方ぶりの「小松屋書店」(2009/08/15参照)へ。
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中に入って深呼吸し、古本の薫りを臓腑に行き渡らせる。ここは相変わらず良いお店である。括られ通路に置かれた文庫の中に、野呂邦暢や久生十蘭があるのを気にしながら、ちくま文庫「ゴジラ/香山滋」春陽文庫「殺人鬼/浜尾四郎」朝日ソノラマアニメ文庫「とみとみトーク いつも青春/富山敬・富田耕正」を合計1030円で購入する。…この「とみとみトーク」は凄い本だ。表紙とグラビアの破壊力がとてつもない!企画を通した朝日ソノラマの懐の深さに、ただただ感心するしかないのだが、オッサン二人が駒沢公園でたわむれる姿は、二人の声優キャリアを台無しにしてしまっているのでは、と余計な心配をしてしまう…。
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2013年01月20日

1/20東京・馬喰横山 CEDOK zakka store

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夕方から日本橋で拘束仕事なので、ツアー経由で現場入りすることにする。北側の改札を出て、古い神殿のように列柱が建つ地下道を抜け、『出口1』から地上に出ると、そこは『馬喰町交差点』。『清洲橋通り』を北西に進む。そして二本目の脇道で西南へ。冷たいビル風が、息を詰まらせるほどの勢いで吹き抜けて行く。右手二軒目のどっしりした昭和なビルの入口に、『C』の文字が印象的なオレンジ色の看板が出されている。チェコの雑貨を扱う、ビル内のオシャレショップなのである。そして大量のビンテージチェコ絵本を扱っているのである。暗い、石とコンクリの通路を奥まで進み、エレベーターで四階へ上昇。箱を出ると、階段を正面にした横長な廊下である。右奥にはオシャレな洋服屋さん、左に行けば目的のお店である。半開きのドアの上には、チェコの国旗が大使館のように翻り、左脇にオレンジの看板とカード台が置かれている。中は、小さなマンションor事務所の一世帯をぶち抜いて一間にしたお店で、入ってすぐ左にお姉さんのいる帳場があり、左奥は小さなギャラリースペースになっている。現在はテキスタイルの展示が開催中。入って右のスペースが、机や棚を並べた雑貨・文具売場で、奥には有名なモグラキャラのゾーンも見えている。そして、手前の壁際に白く大きな壁棚が設置され、薄手で大判な本たちが大量に並んでいる!七×八のボックス棚は、上二段がストック棚、下の六段に作家アルファベット順で絵本類が並んで行く。しかし絵本と言っても、文字がしっかり入った絵物語的なものも多いようだ…それにしても読めねぇ。何も判らねぇ…絵も非常に独特なものが多く、ミステリアス!さすが東欧だ!間には有名作家がカタカナで書かれた分類札も飛び出ているが、チンプンカンプンは決して揺るがない。…作家で知ってるのはカレル・チャペックぐらいか…。それと日本語のジプシー関連本。本はほとんどがビンテージ物のようで、値段は3000円〜4000円代が中心となっている。こりゃ買わなくてもいいか、と雑貨でも買って誤摩化そうと思っていたのだが、チャペックのプリティ過ぎる猫本を見つけてしまい、悩んだ末に散財してしまう…。挙げ句精算時に、「来月こちらのスペースで、チェコの猫グッズを集めたフェアをやりますので、よろしかったらいらしてください」と満面の笑みで伝えられる。あぁ、どんだけ猫に目がないオッサンと思われてしまったのか…。ALBATROS/PRAHA「PUDLENKA/KAREL CAPEK」を購入して、リュックの中に潜ませながら仕事場に急行する。
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2013年01月19日

1/19東京・五反田 第100回 五反田遊古会

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「古書赤いドリル」(2010/06/23参照)店主・那須氏に「ぜひ一度見に来て下さい」とお誘いいただいたので、めったに下車せぬ五反田へ。東口に出てロータリー北寄り端の横断歩道を渡って行くと、東京にしては見事な空がパノラマに広がる、驚くほど開けた駅前。渡り切って東北に進み、都営浅草線・五反田駅の『A6出口』がお尻を見せている所で、東にグッと入り込む。ビルの谷間の入口には、『五反田』『有楽街』と二つに分かれた侘しいネオンゲートが立っていた。信号を一つ過ぎてさらに奥へ進むと、小さな五叉路に行き当たるので、そこで北へ。すると左手奥に、特殊な熱気を孕んでいる建物の気配…初めて目にする『南部古書会館』の姿であった。今でも、古本修羅の上位クラスが集まる戦場(“古書会館”は何処もそうであるが…)と認識しており、どうにも近寄り難いイメージを持っていたのだ。しかし!お呼ばれされたからには、堂々と突撃しようではないか!そんな風に思いながら、一階ガレージの横長な空間に踏み込んでみる。壁際には頭くらいまでの本棚が並べられ、真ん中には左に大きな平台、右に背中合わせの本棚。入口足下には横長の和本台が出され、路上にも少々古本が流れ出している。学術本・資料本・社会科学・民俗学・児童書・風俗・歴史・横浜・古雑誌・芸術・ペーパーバック・明治・時代小説・社史・文学・評伝などなど。古い単行本が中心である。割と硬めで文庫は少なめ。値段は100〜500円と安く、大体が2・300円のようだ。そんな中、平台の一角を大いに占める「月の輪書林」(2012/03/29参照)の、ダンボール箱(小)括り売りに驚愕する…もはや見える福袋とも言える斬新な販売形式!記念に一箱買いたくなってしまうが、ここは我慢しておこう。改造社「ポー、ホフマン集/江戸川乱歩」桃源社「明治の東京/岡田章雄」を右奥の帳場で、交代時間を今か今かと待ちかねている古本屋さんに精算してもらう。

続いて一旦路上に出て、右端の階段入口に改めて入る。階段脇に積み重なる美術図録や大判本に視線を落としながら、少し高めの一階フロアでバッグを預け、手ぶらで二階への階段を上がって行く。途中には激安のデッドストック『オセロゲーム』や、永井荷風・吉行淳之介などの文学全集パンフレットが。広く明るいフロアに入ると、会期二日目の午後と言うのに、たくさんの古本修羅が本棚とにらめっこをしている、血湧き肉踊る光景!すぐさまその中に身を投じ、古本との出会いに全身全霊を傾けて行く…しかし今日は買い過ぎないように、欲しい読みたい本だけを買うべし!と肝に銘じて。フロアは縦長で、右上角に帳場&集計スペース、右下角に古本屋さん待機スペースが出っ張っている。手前窓際・左壁・奥壁に平台付きの本棚が張り付き、フロアには横向きにこれも平台付きの背中合わせの棚が四本並んでいる。棚はどれも上部が斜めになっており、見易く安定感が抜群。右壁には映画ポスターなどが飾られ、プレミア物を収めたガラスケースも置かれている。戦争・満州・民俗学・歴史・労働&社会運動・美術・工芸・映画・風俗・文学・探偵小説・幻想文学・資料類・和本・古雑誌・一編集者の個人蔵書…戦前本やセロハン袋に入った紙物が存在感を放ち、古本オーラが充溢!欲しい本が次々と見つかり、安値のものからそれなりのお値段まで…全部買ったら大変な事になってしまう…皮算用のスピードをアップしながら、大いに悩みつつ改めて本棚を再度眺めて行く。おぁっ!あまりここに似つかわしくない、港雄一の本を発見!しかも安い!安過ぎるっ!ぬわっ!続いて伊藤雄之介の本を発見!これも安い!…不思議だ。さっきは全く気付かなかったのに…よくぞ残っていてくれました。古本の神の粋な計らいに感謝を捧げつつ、先ほどまでの皮算用をかなぐり捨てて、この二冊に気持ちを集中させる。KKベストブック「犯し屋ブルース/港雄一」(大和屋竺監督『荒野のダッチワイフ』についても記述あり(不穏当な単語が連続し、誠に申し訳ございません)。しかしこれが1260円とは!)朝日書院「大根役者・初代文句いうの助/伊藤雄之助」(500円なんて!)、さらに薔薇十字社「ポトマック/ジャン・コクトオ」(これも500円!)を購入。「古書赤いドリル」さん、「古書一路」さん、「月の輪書林」さんと少しお話しさせていただき、満足して会場を後にする。次回開催は3/15・16の二ヶ月後。今度は早めに行ってみるべきか…。
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2013年01月18日

1/18東京・神保町 神田古書センター 出入口古本販売

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仕事の混線はダラダラと続いている。そんな中でも打ち合わせがあったりするので、外に出たついでに間隙を突いて神保町の店頭を猛スピードで撫でて行く…一番いけない古本屋さんの見方である。急ぎ足で進みながら、100均文庫をちょいちょい購入して行く。いつの間にか『神保町交差点』から西に50mほどの「神田古書センター」前。一階の左右両出入口、外が見えるエレベーターシャフトの周りで開かれている、安売り古本販売を覗き込む。ここは、ほぼ常設と言って良いほど頻繁に出店しており、複数のお店が持ち回りで回転させているようだ。値札やエレベーターのガラスに貼られた紙を見ると、本日の出店は五階の「みわ書房」(2010/08/03参照)である。入口左側にあるのは文庫ワゴンとプラケースで、ワゴン下にも文庫箱が並んでいる。奥には文庫揃いもあり。正面には木箱を上に積み重ねたワゴンが二つ並び、右側入口にはプラケースが七つと低めの本棚が二本。脇の螺旋階段下スペースにもプラケースが六つ並び、本棚の帳場と右側入口横にもうひとつのワゴン…隣りの「原書房」と境目が微妙なことに…。専門であるはずの児童書は皆無で、日本文学・文学評論・歴史・風俗・美術・詩集・詩論・映画などで硬めに構成されている。光を放つように時々並ぶ古い本が気持ちを引き寄せ、何か何か…とひたすら心に響く古本を求めながら、青いプラケースの中を丁寧に見て行くと、ウホッ!藏原伸二郎の本がある!詩集ではないのだが、こう言う所でその名を目にすることがまずないので、喜んで買わせていただくことにする。帳場に立つ細身のオヤジさんに精算をお願いすると、「おぅ、これはクラハラ…やられたなぁ。良く見つけましたね」と褒められる。例えお世辞であったとしても、嬉しくニヤついてしまう瞬間である!ところが「小泉進次郎じゃないよ。藏原だよ」…突然おかしなギャグを飛ばし始めたオヤジさんに、「それだったら買ってませんよ」と冷静にスパッと切り返してしまう。いや、とにかく嬉しいのです!梧桐書院「詩人の歩いた道/蔵原伸二郎」を840円で購入。読むのが非常に楽しみな一冊である。
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装幀は恩地孝四郎。
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2013年01月17日

1/17雪道と人造

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何本かの仕事が、ほぼ同スケジュールで進行してしまい、混線。脳内のこんがらがった事象を整理するため、西荻に「フォニャルフ」の補充に向かい、現実逃避。自転車でガシャガシャ西へ向かうと、路上にはまだまだ雪が残っており、中々に走り難い。そして歩道にも車道にも、端に除雪した雪が山と積み上げられているので、自転車の走り易いスペースが完全に潰されてしまっている。そんな風に苦労しながら「盛林堂書房」(2012/01/07参照)着。十冊ほどをドカドカ補充すると、探偵小説棚に傾いてしまい、『ニセ盛林堂書房』らしさが増したんだか濁ったんだか…。店主とあれやこれや話しながら、十三舎「人造人間小説傑作選/国枝史郎・平林初之輔・直木三十五・蘭郁二郎・海野十三・高田義一郎」(新刊)を購入する。大正〜昭和初期の人造人間譚祭り!これは今すぐ読み始めなければいけない!…それにしても本が板のように堅いな…。他にも表の均一台から創元推理文庫「完全殺人事件/クリストファ・ブッシュ」角川文庫「デルス・ウザーラ/アルセニエフ」を購入し、さらに来週また補充に来たら、あれを買おうと心に決めて、お店を後にする。

途中「ささま書店」(2008/08/23参照)に寄り道し、ケイブンシャ文庫「ムービーランドの子守唄/大林宣彦」知恵の森文庫「日本ミステリーの100年/山前譲」を計630円で購入。

家にエッチラオッチラ帰り着くと、素晴らしいハガキが私を出迎えてくれた。2013/01/10に訪れた足利の「秀文堂書店」(2009/06/14参照)で、購入本の中に紛れ込んでいた、読みさしの西村京太郎文庫本。結末が宙ブラリのままでは、店番にも身が入らぬだろうと思い、すぐさま郵送したのである。ハガキはそれに対する丁寧なお礼状であった。文面には感謝の言葉と共に、『お陰様で最後まで読む事が出来ました』とあった!良かった。思いがけない古本屋さんとの小さな交流に、古本修羅の心にも、ポッと暖かい火が灯る…。

※『ミニ古本屋レクイエム』
1. 下高井戸「篠原書店」(2009/09/29参照)がついにお店を閉じられたとのこと。京王線車窓に流れる古本屋さんが、流れ星のようにひとつ消えてしまった。おばあさん、お疲れさまでした。
2. 吉祥寺「風鈴堂」(2012/01/20参照)が開店から一年で、一帯再開発のためビルから撤退となってしまった。ただし現在は移転先を探している最中とのこと。早期復活を希望いたします!
3. 松本「細田書店」が一月十四日に閉店。ウカウカしていたら、取り返しのつかない大遅刻をしてしまった…無念である。
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2013年01月16日

1/16埼玉・浦和 んぐう堂

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さいたま市の方からの貴重なタレコミである。湘南新宿ラインが止まっているので、地獄の刑罰のように混み合った埼京線・高崎線と乗り継ぎ、夜の浦和駅東口。夜七時以降の営業と言うことで、晩ご飯を済ませての出撃となった。交番前を通過して、すぐに線路と平行して北に延びる、飲み屋商店街に入って行く。ズンズン先へと進んで行けば、やがて道が二股に分かれ、片方は化粧ブロックが敷き詰められた北東に延びて行く『東仲町商店会』。今度はこちらをズンズン歩んで行くと、途中の横道に先日訪れたばかりの「askatasuna」(2012/11/12参照)の明かりが見えた。こちらも随分遅くまで営業しているんだな。商店会を抜け出ると、蛸の如き形状の六叉路『浦和駅東口(北)交差点』に到着。ここからは、西の高架下から続く大通りを、北東に道なりに。通りは少し坂になるが、200mも進まぬうちに、右手におぉ!古本屋さんが!歩道はいやに暗いので、『古書』とある立看板と、店内から漏れ出す明かりが、ことの外輝きを放っている。…それにしてもけったいな店名だ…。大きな窓の前には安売りワゴンがしっかり出されているが、手元を照らしてくれる明かりが無いので、本は極めて見難い状態。店内は変型五角形で、入口左横の角が面取りされている。入口左横から、左壁・奥壁(中間に小部屋的空間あり)・右壁はしっかりした壁棚が設置され、窓際には大きなラックがひとつ置かれている。木床のフロアには背中合わせの本棚が横向きに二本。入口左横には、ムックラックと共に、50〜100円の安売り本山が拵えてある。帳場は左奥の本の山に囲まれたスペースで、ニット帽に丸眼鏡の、古本屋が天職と言わんばかりのルックスを持つオヤジさんが店番中。通路には本が多数積み上がるが、全体的に余裕があり店内での自由度はかなり高い。入口左横の安売り本の山の向こうには、50円&100円単行本とビデオ&スポーツ。その奥の棚は帳場に取り込まれており、文学&美術の本が多く並んで行く。手前第一通路は、窓際に雑誌類・音楽CD・地図。通路棚に日本文学・サブカル・80年代本・絶版漫画(70〜90年代)。右壁は窓際から自然・タレント・音楽・旅・エッセイ・都市・文化・スポーツ・文庫・新書・文学評論・全集・古代・オカルト・古典文学・大判ビジュアル本各種。真ん中通路は、手前側にコミック・コミック文庫・分厚い文庫、奥側にミステリ&エンタメ・日本文学・ビデオ・青年コミック。棚脇に博物学と小型ビジュアルムック棚あり。最奥通路は、通路棚にアダルト(上半分)・海外文学・句集・詩集。壁棚には民俗学・映画・役者・美術・経済・映画パンフ・映画ちらしファイルが並び、真ん中の凹んだ小空間には壁一面にアダルトDVDが収まり、中心には古本の山がこんもりと。単行本中心主義で、何処の棚を見ても発見がある、楽しいお店である。各ジャンル70〜90年代が輝いているのだが、特に80年代は後ろめたい光芒を放ちまくっている!う〜ん、面白い!値段も安め!とても私ひとりの力ではたどり着けなかったお店である…。タレコミに大いに感謝しつつ、本を抱え込んで山の向こうの帳場に声を掛ける。オヤジさんは軽快に計算し、少しサービスもしてくれた。文藝春秋「ウッツ男爵/ブルース・チャトウィン」早川書房「ミス・リグビーの幸福/片岡義男」マガジンハウス「オシャレ泥棒/中森明夫」双葉社「帰ってきた怪獣魂」「南回帰線 1/中上健次・たなか亜希夫」を購入し、暗い街の片隅で楽しいひと時を過ごした、夜の浦和に別れを告げる。
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2013年01月15日

1/15東京・世田谷 世田谷ボロ市

雪の大分残る道を急ぎ、ギュウギュウの世田谷線で、一月のボロ市会場へ駆け付ける。雪のせいで中止になるかと思いきや、堂々の開催!一昨年同様、上町駅では降りずに、一つ先の世田谷駅まで進み、市の東端から進入する。
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もう開始時間の午前九時はとっくに過ぎているのに、設営途中のお店がやたらと多い…そこに「本日は雪のため、午前十時からの開催となりました。花火が上がると同時にスタートです」のアナウンス。それでもすでに開けているお店もあるので、会場を流しながら十時を待つことにする。雪に足を取られぬよう注意を払いながら、通りの左右に並ぶお店を危なっかしく覗いて進む。…古本がほとんど見当たらないが、焦らずじっくり歩み続ける。同じ場所で記憶に残っているお店もあるので、これならばあの兵隊服のオッチャンのお店(2011/12/16参照)も出ているかも…。『世田谷通り』側の南端へ着くと、倉庫のような元店舗の中に二本の本棚を発見!
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300均百科事典・150均文学全集・100均単行本&コミック・50均単行本&文庫が並んでいる。大陸書房「現代怪火考/角田義治」コンパクトコミックス「シートン動物記 1/白土三平」プレイブックス「眠ったままの埋蔵金/畠山清行」を合計150円で購入。午前十時の花火が上がり、市が正式にスタートしたので、来た道を逆にたどり始める。途中の「林書店」は設営に時間が掛かっているようで、中々古本が並んでくれない。結局スタート地点まで戻り、前回も出ていた和本のお店に突入する。
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並ぶのは、ほとんどが戦前の教科書類で、その中に「家の光」や「中一時代」・学年誌付録などが混ざり込む。おばさんが「みんなこんな古いの買ってどうするの?」と、店主に激しく食い下がっている。大日本雄弁會講談社「キング二月号附録 笑の缶詰」を300円で購入していると、「マニタ書房」(2012/10/27参照)店主・とみさわ氏とバッタリ。やはり古本狙いで来られた模様。お互いの健闘を祈りつつ、続いてアンティークショップの軒先に並んだ、色紙の詰め込まれたダンボール箱に食らい付く。三島由紀夫関連の演劇パンフが紛れ込んでいるが…おおおおっ!昭和43年東横劇場の「若きハイデルベルヒ/黒蜥蜴」のパンフレットだ!『黒蜥蜴』は天地茂と丸山明宏主演で、後ろ半分の15Pほどにまとめられている!素敵過ぎる!
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どひゃっほう!と飛び上がり、500円で購入。思わぬ成果に魂が抜け、ほとんど今日と言う日が完結してしまう。後はフワフワと漂流し、小川芋銭・熊谷守一・宮本三郎の戦前の美術絵葉書を三枚100円で購入し、さらにようやく形になり始めた「林書店」で、集英社文庫「州崎パラダイス/芝木好子」創元推理文庫「勇将ジェラールの冒険/コナン・ドイル」扶桑社文庫「かっこいいスキヤキ/泉昌之」を計200円で購入。
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楽しみにしていた兵隊服の男のお店は、結局見つからず仕舞い(代わりにお客として来ている、日本陸軍兵二名を見かけた)。そして気を付けていたのに、見事に人前でスッ転んでしまったので、顔を赤くして退散することに。市は明日十六日も開催される。

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2013年01月14日

1/14吹雪モドキの近所で古本を!

朝から仕事をしていたら、外では雪が刻々と激しくなり、次々と電車が止まり、“東京積雪狂想曲”が開始されていた。遠出は早々に断念して、それならば軟弱に、一番近所の古本屋さんでも行ってみるかと、傘を差して外に出る。予想以上の積雪と風。雪はシャーベットのように水気を含んで重く、傘にベチャベチャとへばりつく。『中杉通り』と『早稲田通り』が交差する『阿佐谷北六丁目交差点』から、西に100m弱。2008/08/09にツアーした、タイムカプセル古本屋さん「古本 ブック流通センター」である。当時から、いつお店を畳んでもおかしくないほどの淀んだ状態ではあったが、現在も力弱く営業を続けているのだ。ちょっと歩いただけなのに、息を弾ませ近付くと、むむっ!こんな日でもちゃんとお店を開けているとは予想外!
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傘を閉じて雪を払って中に入ると、誰もいない冷え冷えとした店内。文庫棚をしばらく見ていると、奥からご婦人が登場し「あら、いらっしゃい」と言うや否や、ガラス戸越しの表の風景を見て「雪が大変!大変!」と驚いている。わざわざストーブを点けていただいたので、感謝しながらゆっくりと棚を眺めて行く。あれ?相変わらず中途半端に古く汚れた本が多いのだが、棚の一部にはしっかり動いている気配も…掴みどころの無いお店だ。その分ちゃんと本探しのスリルを味わえるのだが(まぁ、ここでその労が報われることはほとんどない)。でも今日は割と面白い本が見つかって行く。やっぱり時々は来てみるものだな。結果、このお店での最高冊数・五冊を手にして煙草屋も兼ねた帳場へ。本は棚に並んでいる時は完全放置なのだが、買う段になると丁寧に汚れを取ってもらえる。「古い本ですから読み難いですよ」「この本の情報は古いんですけど、それでもよろしいんですか?」などと様々に古本のマイナス要素を説明されるが、笑顔でサラッと受け流してサンリオSF文庫「マーシャン・インカ/イアン・ワトスン」文春文庫「食味歳時記/獅子文六」新声社「プレイタウン東京・横浜・川崎/石川テルオ」集英社「おれたちザ・コミットメンツ/ロディ・ドイル」冬樹社「ダンディズムの肖像/出石尚三」を合計900円で購入。「あら、雪なのにそんな靴で」とスニーカーを見咎められながら、お店を後にする。
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しばらく表通り裏通りをめちゃくちゃに歩き、日常の見知った風景が一変した萩原朔太郎の『猫町』的感覚を楽しんで、ザクザクベシャベシャブラブラ。強い風に傘が壊れ、手がかじかんで痛くなってきたところで帰宅する。
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2013年01月13日

1/13栃木・日光 霧降文庫

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ウィークエンドパス二日目。今日もガタゴト宇都宮まで出て、ホームも電車もクラシックスタイルに統一された、肌色+小豆色の日光線に揺られて四十分。近代建築駅舎から抜け出ると、男体山や帝釈山の豪壮な山々が、こちらをジッと見下ろしている。駅前では熟年カップルたちが旅の始まりにトキメキを見せており、ちょっとセレブな大人の休日感が辺りに拡散中。しかし私はひとり古本を求め、世界遺産に背を向けて歩き始める。西に進むとすぐに『東武日光駅』があり、こちらの方がワールドワイドに賑やかで、日光の表玄関と言った趣き。人混みの中を擦り抜けて、北に大きく回り込んで大谷川を『霧降大橋』で渡る。行く手には、上に美しく伸び上がって行く県道……やはり坂道、いや峠道か。目指すは三キロほど先の、『霧降高原』にあるはずのお店なのである!山の角度を足裏と足首に感じ取りながら、道なりに淡々と北へ進み、少しずつ高度を上げて行く。およそ一キロも歩けば『丸美バス停』のある交差点に着く。ここで県道とはお別れし、あくまで直線に北へ進んで行く。道はほぼ直線道のまま、進めば進むほど勾配がキツくなって行く。やがて辺りはペンション&別荘地帯となり、人影は皆無となる…何故こんな所で古本屋さんを…くじけずに歩き続ける。繁茂し始める熊笹に高原の気配を感じながら、ハードな道のりに汗が噴き出し始める。およそ四十分歩き詰めて、東武の別荘地である『きりふり からまつ平』に突入。道路際に注意しながら進んで行くと、ペンション『PocoAPoco』の看板が現れるので、それを目印に右手別荘地帯に突入する。雑貨屋さんとペンションの前の坂道を上がり切り、右にカーブして行く。左手二軒目の、熊笹に囲まれた広いウッドデッキを持つ別荘が、実は金・土・日営業の古本屋さんなのである。しかしその外観にお店の素振りは全く見えず、あくまで普通の人の家…実は見つけるのにかなり手間取り、日影が多く気温の低い別荘地を、不審人物よろしく長時間徘徊する羽目に…。一旦はあきらめて帰ろうとまで思ったのだが、ええぃ!それらしき人の気配がする家に、『近くに古本屋さんがあるそうですが』と一か八か聞いてみてからだ!と決心し、敷地内に入って階段を上がると、そこにはうつ伏せ気味の手書きの看板…ホッ、やはりここで良かったのか。綺麗に積み上がった薪の山を横目に、ウッドデッキにズイッと進み、こちらに向いたサッシ戸に近寄ると、おぉ!中は本棚に囲まれた応接間!ソロッと戸を開けて、ソファーに座り込む作務衣に帽子を被った大沢親分風店主に「こちらは古本屋さんでよろしいでしょうか?」と間の抜けた質問を放つ。「そうですよ。あぁ、いらっしゃいいらっしゃい」と、心安く迎え入れていただく。笑顔と部屋の隅でバチバチ音を立てている、薪ストーブの暖かさに安堵する。「ここはどうして知ったんですか?」の質問に、「栃木ひとはこ古本市」(2011/09/04参照)出店時に本を買ったことがあること(その時の店名は「砂時計主義」)、ネットでたまたま店舗の開店を知ったことを告げる。「そうですか〜。いや〜覚えてないなぁ…あっ!その時何の本買いました?」「確か平田弘史の漫画を…」「あっ!本なら覚えてますよ。確かそうだ、街道の家の中で売ったんですよね」と記憶の蔓をグイグイと引っぱり始めている、店主はとてもフレンドリーな方で、先客の長野の電機屋さんと、西荻窪から来た絵本作家さんを紹介され、場は徐々に不思議なワールドに突入して行く…。しかし私は古本を買いに来たのである。お話ししつつ、失礼ながらも本棚に注意を向けて、目欲しい本を探って行く。入って来た十畳ほどの部屋には、右壁と奥壁に十本の棚が並び、後は応接セットと壁の浅川マキのポスターが異彩を放っている。さらに左隣には八畳部屋があり、腰高の本棚が二十本並んでいる。割と最近の本が中心で、日本文学・現代思想・思想&社会問題新書・言葉・日本語・詩集・歴史・現代社会・心理学・団塊世代・歴史小説・カルトコミック・筒井康隆・藤沢周平・つげ義春・星野宣之・狩撫麻礼・金子光晴・吉本隆明・岡崎京子・松浦弥太郎・上村一夫・花輪和一・勢古浩爾・小林信彦・宮沢賢治・寺山修司・北村薫などなど。己の興味を突き詰めた思想系の本の間に、セレクトコミックが目立つ不思議な構成。並びにあまり規則性は無いが、全体的には硬派な統一感とこだわりを持っている。値段は安め〜普通。八畳には未整理本棚や、特集貸本コーナー(この時のテーマは“原発”である)。本を懸命に選んでいると、「カレーが出来ましたよ」と不可解な声が掛かる。何とお客には、店主手作りのカレーライスが振る舞われるのだ!面食らいながらも、喜んで美味しくいただき、解放出版社「近代の奈落/宮崎学」中公文庫「年譜 宮澤賢治伝/堀尾青史」ちくま文庫「寺島町奇譚(全)/滝田ゆう」を購入。お店を訪れる際はお腹を減らして、尚かつ車で行くのがベストであろう。帰りの電車があるので早々と失礼し、長い長い長い下り坂をテクテク下っていると、横にピタッと車が停まり、二カッと笑いながら「乗って行きませんか」と先ほどの絵本作家さんに声を掛けていただく。一本道なのでこうなるんじゃないかと予想していたので、遠慮せずに乗り込ませていただき、電機屋さんの運転であっという間に麓の駅へ。おかげさまで、時間を大幅に短縮することが出来ました。
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2013年01月12日

1/12山形・米沢 羽陽書房

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JR東日本の『ウィークエンドパス』を購い、二日間の東日本管内(北限・宮城まで)乗り降り自由の身分となる。早朝五時半に電車に乗り始め、八度も車内が寒過ぎる普通列車を乗り継ぎ乗り継ぎ、ヒィヒィ言いながら福島に到達。ここで奥羽本線にさらに乗り換え、山間地帯をゆるゆると突破し、キラキラと光る雪の米沢盆地に入り込んで行く…七時間半の、長く寒い旅路であった。西口ロータリーに出ると、雪は積もっているが日射しがあるので、意外に暖かな北の街である。ロータリー西側中央から、二本の道が西に延びているが、南寄りの『八谷街道』を選んで歩き始める。車道の雪は融かされているが、歩道はほぼ雪の塹壕状態。歩いたり走ったりを交互に繰り返し、慎重に雪の上を西に向かい続ける。水鳥が浮かぶ最上川を、白い息を吐き出しながら越え、ひたすら直線的に進撃し、たくさんの小さな交差点をやり過ごして行く。駅からおよそ二キロの地点、右に素敵な丸窓を持つ表現主義建築の『岡崎写真館』が現れ、左手奥に『松が岬公園』が見えた所で北へ。50mも進むと、右手に雪国の古本屋さんが、ようやく姿を見せてくれた。当然の如く雪に囲まれたお店は、ガレージのように奥まっており、右壁に105均文庫棚が設えられ、その前から左の出入口までを、乱雑な本とダンボールの山が覆ってしまっている。文庫はSFが多いようだ。積雪とむき出しの本の距離感が、非常にスリリングである。店内に踏み込むと、あらゆる通路にバランスの悪そうな本タワー(腰高)が立つ乱雑な光景(梶原の「ろここ書店」(2008/08/31参照)に似ている)。入口右横に本に囲まれた帳場があり、ご婦人が「いらっしゃいませ〜」と高貴な声音で迎えてくれる。お店は広く、ぐるっと壁棚に囲まれた空間に、手前に短めの背中合わせの棚&奥に長めの背中合わせの棚のコンビが三本置かれている。棚に目をやると、何だかとてもカオスな状態…あらゆる所でジャンルの越境が行われてしまっているようだ。それでもどうにか領域らしきものを読み取って行くと、左壁は雑本(古めの本多し)から始まり、文庫少々・新書・カラーブックス・歴史・民俗学・建築・日本文化・芸術など。向かいには山形&東北郷土本&研究資料本・戦争・文化・演劇・日本近代文学・文学評論・文学復刻本。第二通路は、棚の本はほとんどが横積みされ、規則性を把握するのはかなり困難な状態になっている。市に出したものなのか、木箱が棚のように積み上がり、棚の下半分を隠していたりもする。木村東介・歴史・全集類・「あまとりあ」などが特徴か。第三通路は、左に絶版漫画・大量のハーレクイン、右に時代劇文庫と日本文学文庫となっている。絶版も多いが、ほとんどの本に値段が書かれていないので、少し不安が押し寄せて来る。奥壁はガラスケース内に高そうな和本が飾られ、壁棚には詩集・書関連・自然・山岳など。右端通路は、左側にSF文庫・ジュブナイル文庫・ラノベ・海外文学文庫・ハヤカワポケミス・教養系文庫・絶版文庫。壁棚には、美少女コミック・絶版漫画文庫.古い本・和本・古雑誌・日本文学・歴史小説・ノンフィクション・社会・選書…とにかく乱雑で読み取り難く、床から積み上がる本や古い本がやたらと気になってしまう。なので『何かあるんじゃないか、この下に!』と常に思えてしまったりする、捜索意欲の湧き上がるお店である。値段の明記されているものは普通な値段だが、付いていないものは果たして…。単行本を避けるように文庫ばかりを選んでしまい、「お幾らでしょうか…」と帳場に手渡すと、三冊が100円で一冊だけ200円…安かった。どうやら文庫はほぼ100均のようである。創元推理文庫「矢の家/A・E・W・メイスン」「ドウエル教授の首/A・ベリャーエフ」春陽堂文庫「犀星随筆/室生犀星」春陽文庫「ゆっくり雨太郎捕物控/多岐川恭」を購入。

ふぅ、私は長い時間をかけて、四冊の文庫を雪国に買いに来たのであった。あぁ、慣れぬ積雪に、もう足がワナワナ…。明日は果たして何処に何冊買いに行くのだろうか?雪を踏み締めながら、とにかく今は必死に帰ることにする。
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2013年01月11日

1/11東京・新馬場 古書わらべ

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高架ホームから地上に下りると、道の対岸に、昔は海を臨むことが出来た小山の上に建つ品川神社がある。その前の『北品川三丁目交差点』から、ガード下を潜って東に向かうと、宿場町の雰囲気をどうにか留めた『北馬場参道通り』。道なりに東へ300mも進むと、『北品川商店街』のお尻に到達する。続いてそこに入り込んで北に進むと、100mほどで左手に『菅沼書店』と言う大きな看板が派手に錆び付き、出桁造りの二階屋も歪んだ本屋さんの成れの果てが出現する。その隣りの古いマンション一階に、街の片隅にしゃがみ込んだような目立たぬ小さな古本屋さんが開店していた。うっかりしていると、高確率で見逃すこととなりそうだ。大きな水色と白の日除けの下には、板壁・オレンジの戸・四段の壁棚。並んでいるのは上一段に文庫、後の三段に新書が揃い、歴史系を中心としている。一冊手にして、オレンジの軽い板戸を押して中に入ると、お世辞にもお店と言えないような、雑然とした倉庫的店内。日本刀・古い秤やレジスターなどもあり、どうやら古道具屋も兼ねているようだ。しかし古本はしっかりとある!右壁上部に品川関連・歴史・風俗などの単行本が一列。入口右横に未整理の結束本の山と共に、コミック・新書・ノベルス。入口左横に大判本の棚があり、左壁には二列ほどの文庫。そして左奥のスチール棚には考古学資料&研究本がワンサカ詰まっている。おっ、右壁下に全国都道府県別に分けられ置かれているのは、古い写真絵葉書だ。冊数は多くないが、歴史・考古学の本と絵葉書が充実。それ以外は雑本的で、値段は書かれていないので不明である。奥の机に陣取る、横にどデカイ青年に精算をお願いすると、二冊で200円…安いな…。丸善ライブラリー「横浜・大正・洋楽ロマン/斎藤龍」洋泉社MOOK「活字秘宝 この本は怪しい」を購入。

そしてとても至近距離な「街道文庫」(2011/12/20参照)にも立ち寄る。お店のレイアウトが少し変わり、真ん中に本棚に囲まれた小部屋が造られ、そこにも帳場も移動している。新人物往来社「秘境歴史の旅/柞木田龍善」を購入。二軒の古本屋さんがある『旧東海道』。長い旅の始まりには、余裕を持って北品川に立ち寄り、ぜひこの二店で旅のお供を入手すべし!

ゴーイングマガジンのweb連載、「古本屋ツアー・イン・ジャパンの『均一台三段目の三番目の古本』」第十冊目が更新されました。今回は犬山・五っ葉文庫で購入した、創作の深淵を覗き込む文庫本!…難しかった…。
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2013年01月10日

1/10群馬・赤城で落胆し、栃木・足利で腹いせを

先日の「第12回ベイシア伊勢崎 大古本市」(2013/01/03参照)で手に入れた「群馬の古本屋案内」。2012年3月の発行で、それより以前に訪れて入れなかった赤城の「ふじみ書房」が、しっかり営業中であることが書かれている。あの時は何か急用でもあったのだろう。そんな楽天的思考に我が身を浸し、東武伊勢崎線&桐生線で、生涯二度目の赤城へ。ペンキ絵のような青空の下、駅前から緩い坂道を北上し、日光・足尾方面へ。文字通りのシャッター商店街を、今度こそ!と期待に胸を膨らませ歩み続ける。あの交差点際に妙な三階建てのお店が…ほわぁ〜、シャッターが閉まってるじゃないか…やっぱりもう、営業していないのだろうか?それとも、営業日と営業時間が、何か特殊なことになっているのだろうか?
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そして、早速本日のツアーが頓挫してしまったのである。この近くに未踏のお店は存在しない。あるとすれば、上毛電鉄に乗って夜の前橋を目指すか、遠い沼田まで二時間かけて行かねばならぬ…ムリだ。あぁ、もはや空振りと言うより、遅刻して試合会場に駆け付けたら、試合はすでに終わっていた…そんなやるせない気分に襲われ、赤城駅ホームのベンチにへたり込む。よし、こうなったらツアーは早々に諦めて、現状が気になるお店でも見に行くことにするか。

と言うわけで、足利市駅で下車。緑の鉄骨が美しく長い橋の上で、強風に身体を嬲られ、同じような目に遭っている無数の高校生と擦れ違いながら、渡良瀬川を渡る。JR足利駅近くで、うろ覚えの町内地図を頼りにお店に接近して行く。すると、街の古本屋さん「秀文堂書店」(2009/06/14参照)は、今も時間を停めて営業し続けていた!良かった!
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三冊100円の店頭台を漁り、見事に三冊引き当てて、床の荒れた通路の狭い店内へ。相変わらずやたらと豊富なノベルス・タレントノベルスもしっかり見ながら、埃だらけの本を抜き差しして獲物を見定めて行く。赤城での敵を討つように、腹いせに本を抱え込んで行く…。指先を黒く染めて、集英社「海底二万里/ベルヌ作 今西祐行」新潮社「野の墓標/水上勉」スポーツ新書「ボクシング奇談/中村金雄」エニックス文庫「ピースランド殺人事件/野村宏平」(「ミステリーファンのための古書店ガイド」作者の小説!)桃園書房「女名刺殺人事件/梶龍雄」(「古書いろどり」彩古氏に梶龍雄は高くなりつつあると聞いてから、見かけたら買うようになってしまった…)ロマンブックス「孤独なアスファルト/藤村正太」講談社文庫「レミは生きている/平野威馬雄」つばさ新書「刑事の手記」ワニの本「所ジョージさんの頭がパァ〜。/所ジョージ」実業之日本社「武者修行世界をゆく/早川雪州」(「キントト文庫」の書店シールが貼られていた)を合計2500円で購入。紙袋にドサドサ詰め込んでもらい、お店を後にする。もう一軒、未知のお店を駅北側に探してみたが、該当住所には何もナシ…あぁ、もう日が沈む。「古書 尚古堂」(2009/06/14参照)のワンちゃんたちに会って行きたいが、泣く泣くパスすることに。
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帰りの電車で紙袋の中を覗いていると、そこには一冊の見覚えの無い文庫本が…あ、これ!お店のおばさんが読んでたやつだ。間違えて一緒に入れてしまったのだろう。西村京太郎のミステリーで、残り四十ページ。絶対に結末が気になっているはずだから、近日中に郵送して返却することにしよう。ちょっと待ってて、秀文堂さん!
posted by tokusan at 21:54| Comment(2) | TrackBack(0) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする