2015年01月30日

1/30東京・吉祥寺 本屋の二人vol.4

昨日は夕方に「盛林堂書房」(2012/01/06参照)を訪れ、しぶとく続く「古ツアフェア@盛林堂再び!」に古本を補充し、店主・小野氏とあるプロジェクトの打ち合わせをする。まだ海のものとも山のものとも知れない感じで、出せるかどうかも分からないのだが、とにかくこれに関しては、ここ最近熱血的に驀進している。色々細かく決め、本日は岡崎武志氏とも打ち合わせ予定である。お店を出て北にテクテク歩いて久しぶりの「モンガ堂」(2012/09/15参照)へ。古本市出店のダンボール箱がそのまま花開いている、ちょっと雑然とし始めた店内を彷徨い、モンガさんとたっぷりお話しし、東都書房「首/山田風太郎」を1000円で購入する。

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本日はカーテンを開けると雪!午前十時前にフラフラと外に出る。早速微妙にダイヤが乱れる中、吉祥寺駅に着き『中央改札』を抜けて『北口』一階に下りる。そこは『南北自由通路』という何だか国境線みたいな名称の通路。両側にはガラスウィンドウに囲まれた『アトレ吉祥寺』が広がっている。東側のガラス内に入り込み、『2番街』をグイグイ奥に進むと、北側にお洒落な雑貨屋さん『日本百貨店』が現れる。ここで以前も訪れたことのあるイベント「本屋の二人」(2013/10/11参照)の第四回が開かれているのだが…。通路に面したデスクの端に、古本の並ぶ小さな棚を発見し、接近。「菊と刀」「日本風景論」「日本写真史を歩く」「日本の喜劇人」…壁のポスターを見上げると、選書テーマは“日本”となっている。ここには文庫・単行本・新書・ムックなどが三十冊ほど集まっている…そうか、お店の名と方向性に合わせた選書なのか…と思っていると、女子店員さんがスススと近寄り「どうぞ手に取ってご覧下さい。店内にも、色んなところに飾ってありますので、探してみて下さい」とニッコリ。言われるままに店内を彷徨うと、玩具コーナーにはいきもの図鑑や少年小説、布雑貨のコーナーには布関連の本、紙雑貨のコーナーには紙関連の本など、各雑貨に対応した古本が紛れ込んでいる。天井の低いレジ前には東京コーナーも。折目正しい本で構成され、古い本はあまりなく、冊数もそれほど多いわけではない。文庫以外は1000円前後の値付け(例外あり)。冬至書房新社「哈爾濱詩集/室生犀星」を購入。この本の題名は旧字の連続である。店員さんが売れた本をメモして行くのだが『哈爾』と書いた時点で、そのあまりの煩わしさに断念。大丈夫。それだけでも伝わると思います!展示は2/8までで、それまでに入替も行われるとのことである。
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2015年01月28日

1/28埼玉・大宮 フタバ図書 GIGA大宮店

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西口に出ると、大都会の趣きの空中広場。南に回り込んで地上に下りて、後は『三橋中央通り』を愚直に西進して行く。ビルの足下で冷たい強風に巻かれながら300mも歩くと、途端に空の大きい地方都市の光景が広がり始める。さらにセカセカと西に歩き続け、静電気を体内に着々とチャージし、八つの信号をやり過ごして駅から一キロ強。道路沿いの住宅街の中に、ドカンと大きな工場のような店舗が姿を見せる。「南砂町店」(2013/09/06参照)などもある、リサイクル本も扱う大型新刊書店である。中に入ると、一階は広い新刊書店。ボコボコ足音を階段に響かせて二階へ上がると、メインは新刊コミック売場だが、奥にしっかりとリサイクル本ゾーンが設けられている。そこでも中古コミックが幅を利かせているが、古本の流れは右側中ほどのレジ前から、右奥のスペースへと大きく続く。レジ前には100〜150円文庫ワゴンが置かれ、奥に向かってさらにコミックセット棚・300均単行本ワゴン・100〜150円文庫ワゴンが続き、壁棚には月ごとの近刊単行本が並ぶ。奥に進んで四本の古本通路を持つ空間の前。特価本ラックや、ここにも100〜150円文庫ワゴンが三つ…結構ワゴンの多いお店である(しかもワゴンは大抵が二階建て)。右の第一通路からタレント・サブカル・実用・映画・スポーツ・ノンフィクション・児童本・ミステリ&エンタメ・海外文学・ケータイ小説・ライトファンタジー、そして心理学・文芸・歴史など硬いものが少しだけ。奥壁は学参・雑学文庫・ノベルス・新書・100〜150児童本が並ぶ。第二通路は日本文学文庫、第三通路は時代劇文庫・海外文学文庫・ビジネス、そして左端の通路は100〜150円文庫・オールジャンル特価本が壁棚に収まっている。新しい本ばかりで、見た目はまるっきり新刊書店。値段は定価の半額である。ワゴン・特価棚・100〜150円文庫に少しだけ古い本も含まれるが、それでも本はピカピカツヤツヤである。う〜むう〜むと唸りつつ、何も買えないかもと危惧していると、ややっ!100円ノベルスの端に、ツヤツヤの梶龍雄を二冊発見して大喜び!桃園書房「野天風呂殺人事件」サンケイ出版「浅草殺人ラプソディ」共に梶龍雄、ちくま文庫「クマにあったらどうするか/姉崎等」を購入。

冷風にまたもや巻かれて駅方面に引き返し、せっかくなので「橋本書店」(2008/11/22参照)に立ち寄ることにする。店頭から店内まで、さっきまでとは打って変わった、古い本満載のうらぶれた空間に身を落ち着かせ、文春文庫「ホシは誰だ?」集英社文庫「谷崎潤一郎マゾヒズム小説集」講談社カラーテレビ版ムーミン名作絵ばなし「さよならガオガオ」(函ナシ)を計400円で購入する。やっぱり街の古本屋さんは、こうモヒャッとしてて、いいなぁ。
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2015年01月27日

1/27マーケットの暗がりで悶え「二笑亭」と出会い微笑む

メールタレコミによって知ったお店に急行する。しかしそのお店は『最近はシャッターを上げておらず、望み薄』とのことである。しかし、もしかしたら開いているかもしれない!そう愚かに思考を一点突破させ、都営三田線で志村坂上。その駅近くに、煉瓦色の三階建てで、大きく長く、一階に目立たぬマーケット通路を貫かせた建物がある。恐る恐る昭和な暗がりに入り込むと、二十店ほどの小さなお店が通路の両側に続いている。三分の一はシャッターを下ろしているようだが、微妙な活気と他人のテリトリーに入り込んでいる感じが、ちょっとした緊張感を生み出している。そんなタイムスリップするに充分なロケーションの中を、キョロキョロしながらズンズン進むと…目的のお店はやはり閉まっていた。残念である。このロケーションの中で、古本が売られていることを目に出来なくて、残念である!と、暗い通路に立ち尽くし、悶え苦しむ。
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気持ちを切り換えて本蓮沼に向かい、「ゆうけい堂」(2011/03/23参照)で古本を、と訪れてみるが、ががぁん!跡形も無くなってしまっている!そこに目の前のバス停から降りて来たおじさんが「あっ、古本屋なくなっちゃった」と叫び、突然の悲しみに拍車を掛ける。なんてことだ。都営三田線沿い板橋ゾーンが、どんどん寂しくなって行く…。

新板橋まで戻り、JR板橋駅に向かう途中の「板橋書店」(2009/07/18参照)で傷付いた古本心を癒すことにする。ここはいつまでもその姿形を変えず、どっしりと、ごちゃついた昔ながらの古本屋さんとして、頼もしく営業してくれている。四本ある通路の棚前すべてが、腰高〜胸高に複雑に立体的に本が積み上がり、整頓はされているのだが、店内の混迷さに一役買っている様子。そんな中を分け入り覗き込み、最初に學藝書林「幻想博物誌/日影丈吉」を400円で発見。続いてさらに奥に入り込んで行くと、古書が背を見せて並ぶ中に、昭森社「二笑亭綺譚/式場隆三郎」(再版B版)を見つけ、動悸を早める。元本は初めて見たぞ…た、高いのか?と函から本体を引き出して値段を見ると、安値の千円だったので即購入することに。計1400円を支払って外に出て、早速本を袋から取り出して眺める。長らく探していた本であるが、こんな可愛い芹沢_介による意匠だったとは。特に本体表紙の“石”という字から作った、巴のような紋様(二笑亭内のホールにはこのレリーフがある)を配したデザインは最高である。これは、まるで狂建築・二笑亭の一部のようではないか!思わぬ所で旧友に出会ったような驚きと喜びを胸にして、初っ端の失策を忘れてウキウキと帰宅する。
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2015年01月25日

1/25第31回銀座古書の市とセドリ師たちの夕べ

重役出勤的に、すっかり出遅れた感のある銀座松屋の古本市へ。普段見る古本市よりガラスケースが多めで、高級感漂う通路を歩きながら、古書ばかりに血眼になる。刮目したのは「五十嵐書店」(2009/07/13参照)「藝林荘」(2013/02/17参照)「えびな書店」であった。一時間ほどじっくり滞在しながらも、財布の紐を締めることを心がけていたので、掴み取ったのは三冊きり。朝日新聞社「こども風土記/柳田國男」(初山滋のさしえがプリティー過ぎ!)イブニングスター社「花の巴里の橘や/渡辺紳一郎」(河野鷹思の扉・カットが悪魔的で素敵!)東都書房「松本清張選集・張込み」を計1350円で購入する。市は26日まで。
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銀座の喧噪を離れた後は、六本木に移動して新たな喧噪に突入する。『六本木交差点』脇にあった「かじ川書店誠志堂」(2008/12/16参照)の跡地を見に行くと、店舗はパイプショップになっていたが、ビル名に「かじ川誠志堂」の名をしっかりと留めてくれていた。これは立派な古本屋遺跡ではないか!
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そして午後五時から、ひょんなことから招かれた、六本木での現代セドリ師たちの会合に迷い込む。彼らは至極真面目で理系技術屋の雰囲気を纏い、ひたすら「ブックオフ」とデータの話に終始。様々な現代セドリ師の隠語が飛び交い、チンプンカンプンで、不思議な国のアリス状態!あまりにも想像では補えない言葉が頻出するので、そのたびに隣りの方に解説をお願いする始末!それでも、それぞれの縄張りの話、「ブックオフ」に入ったらまず棚を見るのではなく上司と店員の動きに注目すること、そして帳場近くに集まる買取本の動き、補充の時間帯、『赤カート』の動静など、特殊専門的な話が大変興味深かった。世の中には裏があり秘密があり、知らない世界がまだまだ広がり、学ぶべきことはたくさんあるのだと実感する。
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2015年01月24日

1/24千葉・我孫子 本のさんぽ道

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常磐線で手賀沼の畔に広がる街へ。ウルトラスタンプラリーの『ガラモン』への列を横目に北口へ下りる。小さなロータリーを東寄りに北に抜けると『西原地下歩道』の入口が出現するので、素直に入り込んで、北側の窪地に広がる住宅街へ進む。そのまま道なりに北に200m強進むと、目線の上に『水戸街道』の激しい流れ。しかしそこには合流せずに、またも現れた地下道を潜って北側歩道に顔を出す。後は街道沿いに東に歩いて行けば、『久寺家交差点』手前に建つ、大きく細長く黄緑色の古本屋さんにたどり着く。入口は目立たず、何だか閉じた函のようなお店である。中に進むと、まずはゲームコミックゾーンが見通し悪く広がり、奥に入り込んで行くと左に細長い帳場を確認する。そこには新入荷の単行本と文庫本の並ぶ棚が、一本ずつ置かれている。さらに奥に入り込むと、そこにはまたもやコミック売場が広がって行くのだが、透かし見た右壁に六本の110均単行本棚を発見。ビジネスやエッセイが多いが、古い文学や人文書も混ざり、ちょっと油断の出来ない感じ。横向きの雑誌&ムック・海外文学文庫棚を過ぎると、壁棚はさらに古本で埋まり続け、雑学文庫&翻訳文庫・スポーツ・芸能・映画・美術・句集・哲学思想・ノンフィクション・海外文学・ミステリ&エンタメとつながって行く。この辺りにはセロファン梱包された本のゾーンがあり、ネット販売と共用の模様。中にはプレミア値の付けられた本もチラリ。向かいの通路棚には、児童文学・女性実用・資格・語学・ビジネス・政治社会・旅・雑学が並ぶ。奥のハーレクイン棚を回り込み、左隣の通路に滑り込むと、そこは平台も含めた十一本の棚が対になる十メートル余の日本文学文庫通路であった。しっかりとしたリサイクル古書店である。新しめの本がメインだが、110均棚に希望があり、プレミア本にちょっとだけ光あり。値段は普通。新潮社「随筆集 遠くのこだま/福永武彦」光文社文庫「眼/水上勉」を購入。しかしこの収穫では、最近とみに貪欲な古本魂が到底満足出来るわけはないので、常磐線で一下りして柏の「太平書林」(2010/06/03参照)へ。何だか古い本がいやに目につくので、ついつい気になっていちいち見てしまう。たっぷりと細い通路を回遊し、春陽堂文庫「日和下駄/永井荷風」光文社 少年1964年6月号ふろく「鉄人28号/横山光輝」(極美で400円なので焦って買ったら、本文の最初の三ページが破られていた…くくぅ)隆文館圖書「奇物凡物/鵜崎鷺城」(裸本だが300円とはどひゃっほう!大正四年刊。華族・政治家・軍人・博士について書かれた人物評論だが、酒乱の大博物学者・南方熊楠の項には殊更爽快感を覚える)盛文館書店「山の伝説と情話」(大阪朝日新聞が読者より募集した、山に関わる隠れた怪奇なる伝説情話集。大正十三年七版。姉妹編に「海の伝説と情話」もあり、こっちも欲しい!)を計1350円で購入する。カッコ内でこれだけ語ってしまうほど、大満足す。今日の「太平書林」は物凄く良かった…。

そのまま勢いに駆られるようにして、新松戸で武蔵野線に乗り換えて南に向かい、さらに総武線で昨日来たばかりの新小岩。心残りをやはりどうにかしたいと「誓和堂」(2015/01/24参照)に二日連続で駆け付けると、今日は開いていた!早速中に飛び込み店主に挨拶し、奥の棚から心残りをズイッと掴み出す!それは、東宝映画「獣人雪男」の海賊版ビデオ!本多猪四郎監督・岡本喜八監督助手・香山滋原作で、様々な表現問題から封印されてしまった作品である(名画座では上映されることあり)。4500円という値段に最初は臆し、そっと棚に戻してしまったのであるが、一度気になってしまうとどうしても欲しくて見たくなり、結局悶え苦しむ心残りの一週間を過ごす羽目に陥ったのであった。これでめでたしめでたしなのだが、憑き物が落ちたところで、ここ最近の散財を反省し、しばらくの間財布の紐をギュッと締めることを、己に課すことに決める…果たして守れるかどうか…あぁ…。
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期せずして“山の伝説”コンボになった気が。右は「奇物凡物」。
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2015年01月23日

1/23東京・新小岩 Old Book Zeusで丸木砂土を!

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総武線でゴトゴト東に向かい、心残りをやはり買っておこうと、先週訪れたばかりの「誓和堂」(2015/01/17参照)の前に意気込んで駆け付けるが、シャッターはガラガラ下ろされており、見事に意気消沈。そのまま線路下を潜って南口に出て、駅から東にちょっと離れた「栄和堂」(2009/04/10参照)に足を向ける。お店は開いていなかったが、とりあえず現存を確認。踵を返して駅へと戻り、古本屋的に進化を遂げた「Old Book Zeus」(2010/02/15参照)の静かな店内に突入する。棚構成は以前とそれほど変わりはないのだが、絵本箱+「東京人」箱が足元に置かれ、入口右には図録が並び人文系の単行本が横積みされた棚が出現。真ん中通路は絶版漫画と少女漫画通路となっている。右側の本棚“コ”の字ゾーンには、奥に向かってスチール棚が一本連結され、この辺りが古本屋的進化のキモとなっている。コの字棚には100均文庫・時代劇文庫・官能文庫・生物・新書・写真関連。そして奥に向かって、オカルト・哲学・古書・鉄道・映画・性愛・江戸・歴史が続き、向かいには古雑誌・廉価オカルト本・中公文庫・ちくま文庫・岩波文庫(カバー無し時代)・昭和初期新潮文庫・落語・乱歩・風俗が並ぶ。とにかく所々にヒョコッと古書が紛れ込んでいるのが魅力(そのほとんどにパラフィンではなくトレーシングペーパーが掛けられている)で、値段が安めなこともその魅力に拍車を掛ける。今日は春陽堂「禁じられたフィルム 映倫日記/小林勝」四六書院「風変りな人々/丸木砂土」(裸本。だが、ひゃっほう!)を計2000円で購入。また、心残りを買いに来た時は、ここにもちゃんと寄ることにしよう。

帰りは高円寺で途中下車し、「藍書店」(2014/01/14参照…ということはすでに一周年。おめでとうございます)の外壁棚で青英舎版「古書巡礼/品川力」を300円で。店内では、わりとキレイな砂子屋書房「暢気眼鏡/尾崎一雄」を1000円で見つけ、ウフウフと喜ぶ。新装版第二刷だが、欲しかったんだ、これ!
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2015年01月21日

1/21中野書店に最後に大物を買いに行ってみる

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白砂糖のような雪が傘にパラパラサラサラ降り掛かる中、まだ午前中の神保町へ向かう。地下ホームから、計149段の階段を踏み抜き『A5』から地上に顔を出す。凍り付いたように寒い『神保町交差点』を、信号の変わるに任せ南西へと渡る。すると直ぐ先には、スケルトンのエレーベータシャフトを内蔵した『神田古書センター』がある。ここの二階にある、神保町で三十七年の歴史を築いて来た「中野書店」(2008/11/15(三階時代)& 2013/12/25(二階時代)参照)が、一月三十一日に閉店(今後は西荻窪で事務所営業とのこと)を迎えてしまうのである。遥か昔、神保町での冒険をこのお店から始めた私にとっては、衝撃的に悲しい出来事である。揺るがぬはずの神保町が、またひとつ大きく揺らぐのか…。しかし私も何時しかいっぱしの古本修羅になっていたのだ。悲しむより先に、古本を!と、閉店はまだ十日後と先の話なのだが、お店との最後の思い出作りに古本を買いに来たのである。しかも、ちょっと大物を…別に何を買おうと決めているわけではないのだが、あの二十五年前の、一生懸命貯めたお金を懐に隠し、谷譲次・牧逸馬・林不忘を追いかけていた時のように、純粋にここで、また古本を買ってみたかったのである。だから他のお店には目もくれずに、一階ワゴンの秋波も振り切り、黄土色の階段をカクカク上がって、ちょっと緊張しながらお店のガラス自動ドア前。中に入れば、ゴチャゴチャ配置された安売りプラ箱の向こうに、二つの空間が広がっている。右が『漫画部』で左がお目当ての『古書部』である。一応箱の中にも真剣に目を落として行くと、漫画部方の箱内に108円の探偵推理小説の『中学生名作文庫』『中学生ワールド文庫』を見つけてしまったので、鷲掴んで引きずり出す。漫画部の帳場で計八冊をまとめ買いすると『中野書店 ご愛顧感謝 一割引セール(一部対象外あり)』が開催されていたので、計778円で購入。包装は全冊をのり巻き包みにした上で、丁寧に袋に入れていただく…何だか満足。しかしこれでは思い出が作れたとはいえないので、奥の『ボンディ』のざわめきを感じながら漫画部を取りあえず一周し、ようやく古書部に進入する。相変わらずいつ来ても緊張してしまう…これは初期の訪問を引き摺る、トラウマの一種なのだろうか?珍しい昭和初期の本や、乱歩の激高草稿を眺めたりするが、やはり昔も今も変わらず、一番の興味は昭和初期の探偵小説棚なのである。左奥の壁棚に当然の如く引き寄せられ、隣りのジュブナイル棚と共に、穴の開くほど見つめてしまう。…う〜む、欲しい本、読みたい本…う〜ん…。買っても良い本は確かにあるのだが、どうも心が動かない…偕成社仙花紙本の「海底大陸/海野十三」3980円にしてしまおうか…いやいや、やはりちょっと違う。何かがしっくり来ない…。そう感じて、固執していた探偵小説棚から身を引き剥がし、隣に広がる日本近代文学棚に目を凝らす。そこで見つけ、即座に購入を決心させたのは、改造社新鋭文學叢書「十九の夏/龍膽寺雄」であった。探していたが、見たことのない本!値段は8400円で、決心して買いに来た愚かしい行為に値する本!と優しく掌中に包み込む。すぐに奥の帳場に向かい、一割引の7560円で購入する。レジの男性は聴き取れぬほどの小さな声で、釣り銭を、古本を、まるで瞑目するようにして手渡してくる。包装を断り、漫画部購入時の袋に入れた本を抱え、お店を出て階段を下る。今度来る時は、ここは隣りの漫画部が独立し、1フロアを占めているはずである。二十五年間楽しませてくれたお店に感謝を捧げ、サラサラ雪の神保町から、『白山通り』を北上して離れて行く。途端に手はかじかみ始め、ポリ袋を引っかけ古本の重さを支えた指が、徐々に感覚を失って行く。
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2015年01月20日

1/20墨田と江東の境で鬼平と古本

都営新宿線で東に向かい、森下の最近入れていない「文雅堂書店」(2012/06/24参照)にアタックするが、あえなくシャッターアウト。こうなると棚に対する想像を逞しくしてしまい、無性に入りたくて入りたくてしょうがなくなって来る。また来るぞ!と半ば意地になって再チャレンジを誓い、菊川までトボトボ歩く。ところが目指して来た古本も扱う古道具店は、こちらも無惨にシャッターを下ろしていたのだった。気付けば、ピカピカメタリックな『長谷川平蔵 遠山金四郎 屋敷跡』の碑に、打ちひしがれた愚かな男の姿がくっきりと映り込んでいた…。よし、南に下ろう!江東区で、古本を買おう!

大江戸線で門前仲町まで移動して、およそ六年ぶりの「古書 朝日書店」(2008/12/08参照)。安定感のある端正な店内は、今も昔もまったく変わらぬようだ。BGMのジャズに身を浸しながら、再会した記憶の彼方の棚に細かく挨拶をして行く。春陽文庫「奇蹟の扉/大下宇陀児」サンケイ新書「白い大陸 南極探検物語/加納一郎」(亀倉雄策の氷海原装幀デザインがプリティー!)を計250円で購入し、まるで未知のお店を楽しんだような古本陶酔感を得る。
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※写真は横丁の出入口である。

続いて東西線で東陽町まで移動し、巨大公団商店街の写真屋さん「写真屋さんホックス」(2014/02/06参照)店頭の古本箱と棚に挑む…しかし、箱の方は積み重なったまんまで、何だかすっかりやる気ナシ。それでもこちらはやる気満々で、すべての箱もチェックして、ナニワ・ブックス「夕日を背にして立つ男/城戸禮」(裸本)日本図書館協会「ブック・モビルと貸出文庫 図書館の仕事15」(車を利用した移動図書館の運営方法について書かれた本で、昭和四十二年時点の様々なタイプの移動図書館が写真付きで紹介されている。特殊だが素敵な本だ)を計200円で購入する。
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このように目的が果たせなかった気持ちを古本購入の応急処置でごまかし、夕暮れの阿佐ヶ谷に敗走。「ゆたか。書房」(2008/10/19参照)に飛び込み、帳場でガクッと『あしたのジョー』ラストシーンのように居眠りをしていた店主を起こしてしまいながら、河出書房新社「挟み撃ち/後藤明生」桃源社「青白き裸女群像・他 橘外男傑作集」山渓新書「山の地学入門/石山尚」を計1300円で購入し、さらなる気持ちのすり替えに成功する。
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2015年01月19日

1/19東京・新宿三丁目 珈琲貴族エジンバラ

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文庫善哉さんより、端正な報告書の如きタレコミメールが届く。恐れ入りながら感謝して、今日はその情報のひとつに向かう。『C4』から地上に上がると、ビルの日陰の『新宿通り』が目の前に横たわる。通りを西に向かい、『バルト9』向かいの雑居ビルの二階へエレベーターで。以前は歌舞伎町にあった、24時間営業の高級喫茶店が、場所を移してリニューアルオープンしたのである。尚且つ新たな試みとして古書販売も始めるとのことなので、それはぜひとも確認しなければ…とここまでが文庫善哉さんのネタを元にした行動なのだが、実は昨日の「わめぞ初売り」にて、さらに強力なネタが飛び込んで来ていたのである。そのとき先に会場にいて古本を買っていたのは、「古書いろどり」(2012/12/22参照)店主の古本神・彩古氏であった。氏は精算を済ませると、スルスルとこちらに近寄り「明日新宿にエジンバラが再オープンするんです」「ええ、知ってますよ。何だか古本も販売するとかしないとか…」「本並べるの、私なんです」「えええっ!」と、ちょっと衝撃なやり取りを交わす。それならば、本が並ぶのは確実!しかもいろどり棚!と喜んで、開店と同時の突入になったわけである。エレベーターを出て『要通り』を見下ろすウィンドウ沿いに奥へ進もうとすると、そこにはやはり彩古氏の姿があって、目の前の白壁には一本の本棚が張り付いている。氏と挨拶を交わすと、「せっかく来てもらったんですが、色々あってまだ二本しか棚が出来てないんですよ。後二本、ここに増やす予定なんですが…」と、今は寂し気な白壁を指し示す。取りあえず奥の店内に進むと、床は板張りで、梁や柱が粗い煉瓦で化粧されている。そしてお客さんはいないが、従業員全員てんてこ舞いの様子…。禁煙フロアのベランダ脇の隅っこに腰を下ろし、カプチーノを注文する。入口近くの棚には、落語・映画・海外ミステリ・「ミステリマガジン」・「SFマガジン」。ぬぼ〜っと眺めているとウェイターさんが近寄り、「古書の販売もしておりますので、ごゆっくりご覧下さい。お飲物が出来ましたら、声をお掛けしますので」とのこと。…と思ったらすぐに彼が銀盆を捧げて現れ「お飲物が…」と微笑まれたので、席に戻ってカプチーノを啜る。頃を見て、カウンター奥の横にある、従業員があたふたと行き交う、ちょっと見に行くのに気後れする棚も観察する。ハヤカワポケミス・ポケSF・メグレ警部シリーズ。値段はちょい安〜普通。それにしてもなぜこのお店は、古本棚を置くことにしたのだろうか?もしや向かいビル地下の「Brooklyn Parlor」(2010/02/25参照)を大いに意識しての、チャレンジではあるまいか…。葦書房「バック・トゥ・ザ・ムービーズ 福岡市の映画と映画館100年の歩み」を購入する(あっ、値段札が取られずにくっついたままだ。彩古さ〜ん、この本500円で買いましたからね〜)。それしてもカプチーノが900円か…。でも棚が増えたら、また見に来ることにしよう。

『新宿通り』を西に進んで「昭友社書店」(2008/07/10参照)店頭の一冊100円四冊200円棚で、福武文庫「古本屋四十年/青木正美」新潮文庫「加田伶太郎全集/福永武彦」春陽堂文庫「春服/芥川龍之介」集英社UJ文庫「バイオーク・トリニティ掌篇集/舞城王太郎」モービル文庫「デザインの源泉」を計250円で購入…って50円サービス!ありがとうございます。
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2015年01月18日

1/18東京・鬼子母神前 わめぞ初売り

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都電荒川線・鬼子母神前駅前の踏切から北側を眺めると、右側参道のケヤキ並木が見下ろすY字路前の小広場に、古本棚の影が。ササササと近付くと、奥には背の低いスチール棚が三本並び、文学全集・文学復刻本・古書・女性実用・エッセイ・日本文学・文学研究・カルチャー・本&古本関連が収まっている。その前には緩い傾斜に流れ出したような、全長三メートルほどの平台が二本並列して、文庫(ちくま率高し)・紙物・雑誌・雑貨を並べている。わめぞの一部が出店した一日限りの小さな古本市で、値段は安め〜普通。石碑の横に設置された帳場には、「古書現世」(2009/04/04参照)向井氏と「JUNGLE BOOKS」(2010/08/20参照)さんがデデンと陣取り、直射する日光に目を細めている。買い過ぎに注意し、絞って三冊を手にする。そのうちの一冊は2版3刷だが、帯付きの芳賀書店「書を捨てよ、町に出よう/寺山修司」で、精算時に向井氏が「安いな」と笑いつぶやいてしまう500円!小さくひゃっほうとこちらもつぶやく。新潮社「冬眠居閑談/尾崎一雄」清流出版「日本の喜劇王/斎藤寅次郎」と共に購入する。

みなさんに別れを告げてから、とっとと『目白通り』を西にテクテク歩き、実に五年半ぶりの、日曜午前中の裏通りでもしっかりお店を開けてくれている「貝の小鳥」(2009/06/14参照)を静かに楽しみ、理論社少年少女長編シリーズ「ぬすまれた町/古田足日」(1961年の初版で装釘は堀内誠一!嬉しい!)を540円で購入する。おっ、まだ午前11時57分なのか。では新宿まで行って『ベルグ』でチリドッグでも食べながらビールグラスを傾けることにしようか。

※本日の朝日新聞読書欄のおすすめコーナーで、本の雑誌社「古本屋ツアー・イン・神保町」を紹介していただいております。まぁそのこと自体も嬉しいのですが、一番喜び驚いたのは、本文内に“古本修羅”の四字が刻まれていること!うぉぉぉ!社会の公器である新聞に“古本修羅”の字が紛れ込む日が来るなんて!というわけで、この小さな一歩を記念して、本日一月十八日を、勝手に“古本修羅の日”として制定いたします。立て、全国の古本修羅たちよ!すぐに座ってもいいから、取りあえず古本を手に立ち上がるのだ!
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2015年01月17日

1/17東京・新小岩 誓和堂

750円の都区内パスを買って、まずは西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)。フェア棚にどっちゃり古本を投入した後、ついにここでは65冊目の販売に到達した「古本屋ツアー・イン・神保町」に識語署名捺印。そして古本神・森英俊氏と落ち合い、その長身に肩を並べて総武線で東へ東へ。今日は氏に、迂闊にも未知だったお店に同行させてもらいつつ、周辺のお店もついでに巡り倒そうと考えているのである。まずは亀戸で下車して「Book Pirates 亀戸」(2011/08/26参照)。相変わらず人文系の棚が重厚だと思いつつ角川書店「文士料理入門/狩野かおり・狩野俊」を300円で購入し、続いてさらに東に向かい、新小岩駅。
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昨年ゲリラ豪雨で冠水した地下通路から北口に出て、繁華街の中を東にカクカク抜けると『新平和通り』。真っ直ぐ北に進むと、水色の首都高橋脚が巨大で爽やかな『たつみ橋交差点』に到達。ここを北に渡り、『蔵前橋通り』を東へ。水音が今は寒々しい角地の『せせらぎパーク』を左に見て、さらに前進。するとすぐに、マンション一階に並ぶ商店の左端が、目指して来たお店であることにハッと気付く。ウィンドウには『懐かしの漫画』と書かれた黒板看板が寄りかかり、店内のコミック棚と古いアニメ&特撮ポスターが目にしみる。中に入ると右手はガラスケースが奥まで延びて、その上に山と積まれたコミックの整理を進めるシャッキリした左卜全風オヤジさんが「いらっしゃいませ。ごゆっくりご覧下さい」と優しく迎え入れてくれた。壁際にはスチール棚が連続して張り付き、奥は少しゴチャッとしている。フロアには横向きに背の低い背中合わせの白い棚が連続し、五本の短い通路を造り出している。並ぶのは、そのほとんどが漫画とコミックである。第一・二通路は最近のコミックが主に集まり、その上には煉瓦の如きセットがドカドカ積み上がっている。第三通路は手前がコミックで、奥側が古本棚となっている。時代劇文庫・時代小説・推理伝奇文庫が並んでいるが、ぬぉっ!香山滋「魔女のいる街」が3500円!と目を丸くしたら、これが見事なまでの『T蔵書』(2014/01/29参照)だったので、驚きつつ古本心はしゅんと萎れてしまう。第四通路は藤子不二雄・石森章太郎・水木しげる・白土三平などのビッグネーム絶版漫画がそろい踏みし、上には『巨人の星』筆箱や鉄人28号グッズなどが置かれている。最後の通路に屈み込むと、貴重な絶版漫画や貸本漫画が堂々並び、特撮ビデオなどが後に続いている。奥はフィギュアやキャラクター玩具の集まる棚となり(久松文雄のゴジラ絵色紙が!)、脇に復刻漫画棚や資料本棚、それに未整理ダンボールの山と、未整理かと思ったらちゃんと値段の付けられた紙袋入り漫画セットもドサリドサリ。左壁は入口横から最近刊コミックスに始まり、カルトコミック・朝日ソノラマ・美少女コミック・劇画・永井豪・「冒険王」などの古い漫画雑誌、そして手塚治虫棚へとつながって行く。右奥はちょっとしたスペースになっており、サンコミックスコレクション・復刻漫画・雑誌切抜製本漫画(質量共に圧巻!)・付録漫画の並ぶ濃厚な空間となっている。森氏はここに最初から張り付きっ放しで、お店が復刻している『アップルBOX』レーベルの漫画を、ガンガン積上げている…お。恐ろしい!うしおそうじ・杉浦茂(いいな、いいな!)・手塚治虫・桑田次郎らの素晴らしい絵入りサインに見下ろされたカタチのガラスケースには、宝物レベルのプレミア漫画たちが飾られ、小松崎茂の「モゲラ」や少年画報社「ビリーパック」シリーズが悪魔のように『買ってくれぇ〜』と囁きかけて来る…あぁっ、もう!見たことのない懐かしい絶版漫画や付録漫画や復刻漫画と切抜製本漫画に、ただただ圧倒される。値段はもちろんしっかりな傾向だが、あの輝かしい少年の日をこの手に取り戻せるのなら、納得出来るのではないだろうか。案の定大人買いに走った古本神を横目に、ソノラマ文庫「白蝋の鬼/高木彬光」少年画報社「少年画報大全」附録付きを購入。これらは相場より遥かに安値であった。…そしてとても気になるビデオが一本。買うべきか買わざるべきか。しばらくじっくり悩んでみよう…。

すっかりバッグを重くした森氏と共にお店を出たら、駅南側にそのまま移動し、久々の「Old Book Zeus」(2010/02/15参照)へ。店頭の過剰なニャンコ除けは相変わらずだが、店内は森氏に教えられていた通り、ちょっと様子が変わっている。そんな店内で氏が棚から抜き取り手渡されたのは、苦楽社苦楽探偵叢書「ルルージュ事件/ガボリオ」で、これがお手頃の1000円!むぅ、ここは改めてツアーすべきかなと考えつつ、迷わず購入する。さらに東の小岩駅まで移動して、最後に「高橋書店」(2009/05/19参照)でガサリゴソリ。河出文庫「文豪ミステリー傑作選 第2集」を250円で購入し、いつの間にか冷たさを増した風に吹き付けられながら、今日の東東京ツアーに終止符を打つ。
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2015年01月15日

1/15たなおろしとモールス通信

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強い雨が街を叩いている。こんな時にこそ古本を買いに行くのも一興と、西武新宿線下りに乗り込んで、東村山の「なごやか文庫 新春たなおろしセール」を見に行くことにする。雨音がどどうと響き渡る中を移動して、静かで咳き込む老人しかいない店内。例年通りに文庫は10円でその他の本は30円。結束された本は値札の半額となっている。まぁ棚おろしなので、言わば余り物なのである。それでも棚から棚へ飛び移って行くと、計八冊が手の中に。講談社文庫「告別/福永武彦」「ブルース 心の旅/日暮泰文」文春新書「岩佐又兵衛/辻惟雄」集英社「名馬スモーキー/中尾明」(裸本)サイマル出版会「税関異聞/谷川寛三」本の雑誌社「本屋さん読本」冬樹社「クロスオーバー・メッセージ/太田克彦」無線従事者教育協会「モールス通信術独習法/吉田春雄」を計180円で購入する。安い!このセールは2/1まで。

本をビニール袋で梱包し、濡れないよう抱えて表を歩く。せっかくなので東口まで出て、初めて入る「ブックオフ 東村山店」にも行ってみると、二階は豪雨のために一部雨漏りしており、店員さんが忙しく動き回っている。うひゃあ、こりゃ大変だな。学研M文庫「魔導書ネクロノミコン/ジョージ・ヘイ編」を108円で購入する。

帰りの車中で、手にしていた時から気になっていた「モールス通信術独習法」を紐解いてみる。単純にモールス信号への憧れからの購入であったが、書かれていたのは想像を絶する、とても厳しいモールス信号技術会得への道であった。信号の暗記法・受信&送信のための頭のてっぺんから足先までのフォーム・鉛筆の持ち方走らせ方・機器の正確な使用方法…すべての項目が、まるで、武道のような厳しさに満ち溢れているのである。そして頻出する言葉が『毎日の練習が第一の必要条件で、途中で1日でも練習を中断すればそれだけ技能は低下するのである』…き、厳しい。なんてハードな世界なんだ。映画で船の通信員がトンツーやっていたり、軍人やスパイがトンツーしていたりするが、こんな厳しい試練を乗り越えて会得した技術なのかと思うと、大いに恐れ入ってしまう。『一般に短点はトン、長点はツーといっているが、実際に音響受信の機器から聞こえるのは短点がピで長点はピーと聞こえるから、実際の音はピ ピーである。しかし最初暗記するにはトンツーでもさしつかえない』の詳し過ぎる記述に、少しニヤついてしまう。
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2015年01月14日

1/14 Tweed Booksにくろす・としゆき資料を売りに行った後どひゃっほう二連発?

去年の夏に安房鴨川「あんちっく具里夢」(2014/08/13参照)で手に入れた、くろす・としゆき資料の残り半分を(半分は「コンコ堂」さんに売却済(2014/10/20参照))、トラッド&アイビー&モードが核のメンズファッションに強い古本屋さん「Tweed Books」(2014/12/11参照)まで売りに行く。実はこの資料を手に入れたとき、一番最初に手を挙げてくれたのは、このお店だったのである。100枚ほどのB4ケント紙がごっそり入ったポリ袋を両手で抱え、東横線で白楽へ。坂を下りお店に入り「買取をお願いします」と店主に紙束をドサリと手渡すと、彼は即座に喜悦の表情を浮かべ、ブルックス・ブラザーズ広告の一枚一枚を嬉しそうに眺め始める。その間にこちらは棚を吟味し、桃源社「暗黒星/黒岩涙香」晶文社「アメリカの鱒釣り/リチャード・ブローディガン」ちくま文庫「美食倶楽部/谷崎潤一郎」を計1100円で購入。彼の出した買取金額を一発OKで受け入れ、商談成立。楽しみつつ、どうかうまく売りさばき、ファッション&アイビー命の方々に、行き渡らせていただければ本望である!お互いに落ち着いたところで、古本屋さんとして過ごした一か月や、この限定期間店舗で出来ることややるべきことなどについて、あれこれお話しする。やはりこの商店街で、ファッションに強いお店を営むということは大変みたいだけれど、古本屋さんになった手応えと、次の本格店舗へのステップを確実に上がっている彼は、とても楽しそうである。そうしていると、いつの間にか店内にお客さんが何人か入って来たので、辞去して再び東横線に乗り込む。このまま久々に関内の古本屋さんを巡ってしまおうと、目論んだのである。
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もう本当に夢中なツイードさんの図。

みなとみらい線に入って馬車道駅で下車すると、地上に出たら『県立歴史博物館』の真ん前。ならばと直ぐ横の「誠文堂書店」(2010/02/28参照)の階段を駆け上がる。敏感な自動ドアをウィンウィン開け閉めさせてしまいながら店頭棚をチェックしていると、横に積まれた山が妙に気になってしまう。そこから抜き出した一冊が、鴻盟社「飢餓線上を行く-浮浪者の種々相-/高木武三郎」(昭和九年刊の復刻版)である。しかし他のものは鉛筆で値段が書かれていたり札が貼り付けてあるのだが、これは何処にも値段がない。店内に入って帳場まで進み、ご婦人に本の値段を聞いてみる。「まぁ、定価が3000円。高いわね〜。後こういう本は結構高いのよね。大抵定価より高かったりするの」…ドキドキするようなことをいうなぁ…「う〜ん、1000円でいいわ」「いただきます!」と購入決定。この本、オリジナルは恐ろしく高いのだが、復刻版もまた高値なのである。どひゃっほう!これで心と財布の紐がフワフワと緩くなり、馬車道からイセザキモールへと直線的に突入し、点在する古本屋さんに阿呆のように飛び込んで行く。
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オリジナルは昭和九年新興出版社刊。流行した下層社会のルポ本である。

最終的には両手に袋を持たねばならぬほど古本を買ってしまったので、印象的な買物を記して行く。「活刻堂」(2009/10/12参照)では石書房「東洋武侠團/押川春浪」を500円。昭和十九年の表紙がボール紙の仙花紙本である。「バイアップ」(2011/10/05参照)では店頭100均ワゴンの底から、とてもキレイな東都書房 現代長編推理小説13「水上勉集」を掘り出してニヤニヤ。ちょっとモールから離れて、『国道16号』に面した「紅葉堂長倉屋書店」(2010/09/26参照)にもこっそり入って古本を漁る。文藝春秋「シャーロック・ホームズの世界」「シャーロック・ホームズの紫烟」共に長沼弘毅を計1900円で見つけて、ちょっと安いのにムフムフと喜び、調子に乗って購入してしまう。

そして最後に「たけうま書房」(2013/03/29参照)にようやくたどり着く。思えば一昨年末の『ヨコハマツアー』(2013/12/23参照)以来かもしれない…大変ご無沙汰しております。本がびっしりと収まった100均棚に取り憑くと、これが見応えのある並びで、たちまち二冊を掴み取る。印象としては庄野潤三プチ祭り開催中!ビニールカーテンを潜って中に入り、ご無沙汰の挨拶と新年の挨拶を一度に済ます。相変わらず広く見通しの良い店内だが、所々に未整理本の山が出現している。久々の棚を見て回ると、各ジャンルがそれそれ果実が実ったように豊潤な棚造りを見せ、古本修羅たる私の心を捉えて離さない!そんな中で見出した素晴らしき一冊は、入口右横の棚にある探偵推理小説群。結構昭和三十〜四十年代の本がさり気なく固まっている。一際光っているのは、宝石社「殺意という名の家畜/河野典生」!帯ナシだが初版で本はしっかりキレイで、真鍋博のカットも最高!とヨダレを垂らしそうになりながらページを繰ると、わわっ!値段が1500円!こんなチャンスを逃したら古本修羅失格!どひゃっほう!と喜び勇んで精算する(でもこの本、アマゾンでは結構安いんだな…)。ありがとう、たけうまさん!精算を終えて落ち着いた後は、昨年末の盛況だった『ポータブルレコードプレーヤー展』の苦労話や、神奈川古本屋事情などについてお話しし、楽しい時間を過ごす。思えばたけうまさんも開店してもう二年。あの開店時に訪れて、日本酒とおこわをいただいたのが、つい昨日のようで、そのがんばりと粘りに、密かに尊敬の念を抱く。これからも黄金町を、よろしくお願いいたします!
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よし、読むぞ〜!やはりオリジナル本で読むという行為は、その本が出版された時代と直結出来るようで、古本の大いなる魅力のひとつに、数えられるのではないだろうか。
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2015年01月12日

1/12長野・下諏訪 正午の庭

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どうしてか遠くに行きたい虫が、腹の底でモゾモゾと這い回っているようなので、中央本線でグングン信州へと向かう。四時間近くを車中で過ごすと、鏡のような冬の諏訪湖の輝きに目を射られて、万次の石仏のレプリカと御柱が二本屹立する氷結した駅前に立つこととなる。下諏訪で下車したのは初めてだが、上諏訪より神域感の強い街となっている。足を滑らせぬように、シャッターの下りた古い商店が並ぶ駅前通りを北へ真っ直ぐ。『下諏訪駅前交差点』で東に向かい、次の『大社通り交差点』で再び北に入る。街道は一層古くなり、昔の道幅と古い商店群が、身と心をちょっとした異空間に滑り込ませてくれる。小さな『御田町交差点』を過ぎると、左手に目標として来た『cafe Tac』を発見…ここの二階に古本とレコードのお店があるはずなのだが、何処にもお店の出入口は見当たらない…こりゃカフェの中に入口が?そう考え、暖かなカフェの中に突入するが、それらしき二階への階段は発見出来ない。途方に暮れて店員さんに助けを求めると、表通りに面した、まんま普通の家の玄関がお店の入口だという。お礼を言って表に回り、どう見てもただの民家の玄関にしか見えぬ引戸を半信半疑に引き開けると、そこはまさに靴を脱いで上がり込む玄関なのだが、手書きの紙看板が多数壁に飾られ、面妖な洋楽がデロデロ流れ落ちて来る左の階段上を指し示しているのであった。スリッパを履いてミシミシと二階に上がれば、トランクに詰められた100均文庫&単行本が廊下にあり、右に不気味なイラストで飾り立てられたお店らしきものが姿を見せる。入口を潜ると、六畳ほどの空間は主に赤と黒で装飾され、天井ではガレ風電灯が存在感。中央にDJブースとコックピット的帳場があり、その周囲と壁際を棚が埋め尽くしている。主である長髪眼鏡のお洒落な好青年が「いらっしゃいませ」と席に着く…まるで彼のエキセントリックな自室に入ったみたいだ…。入って直ぐ左には、文庫・ムック・サブカルの棚があり、右にはエロ漫画や怪奇漫画を含むカルトコミック棚。左奥には澁澤龍彦・「夜想」・映画・ペヨトル工房・「ガロ」、それに山本直樹一列や「血と薔薇」なども続く。中央部分にはブローディガン・人食い人種・音楽・アングラ&ディープサブカル・音楽雑誌・特殊同人誌新刊などが揃う。右奥スペースは、CD・レコード・DVD・VHSが多くを占めるが、最下段の隅に丸尾末広などのイラスト作品集やアート作品集もあり。特殊に偏重した、サブカルメインのカルト&マニアックなお店である。このこだわりの品揃えは、店主にとっての不純物は一切含まれていないはず!志向としては「パックレコードとしょしつ」(2011/07/30参照)「凸っと凹っと」(2014/08/16参照)「五っ葉文庫」(2012/12/09参照)「マニタ書房」(2012/10/27参照)などが親類と言えよう。値段はしっかりと隙がない。ニューミュージック・マガジン社「死者のカタログ ミュージシャンの死とその時代」を購入する。

一駅上って上諏訪に向かい、次の電車までの待ち時間を利用して、古本と古道具を置いている喫茶店「石の花」(2012/04/10参照)に腰を据える。
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ロイヤルミルクティーを優雅に啜りながら、入口部分左に移動した古本棚を漁り、富永興文堂「面白い歴史偉人のお話 織田信長と明智光秀/瀧霧州」刀江書院「趣味の昆蟲記/関屋牧」を計1500円で購入。うむ、やはりここは定期的に見なければならぬお店であることを、再確認する。
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2015年01月11日

1/11テクテク歩いてたどり着くBCいとう豊田店は18日でお別れ!

相変わらず寒い午後に、西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)を訪れ「古ツアフェア@盛林堂再び!」に最近入手の古本も含め、ガッツリと補充。そして最近読み込んでいる「紙上殺人現場/大井廣介」の影響をモロに受け、桃源社「こわい女/新章文子」を2000円で購入する。

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西荻窪を離れ、新宿駅での人身事故によるダイヤの乱れに翻弄されつつ、豊田駅にどうにかたどり着く。北口への階段を上がり、河岸段丘の上をテクテクテクテク歩き詰めて、「ブックセンターいとう 豊田店」(2013/05/21参照)の前。店頭には『閉店SALE売りつくし』の幟が翻り、ウィンドウには『さよなら豊田店 閉店特別最終セール 30%オフ』のポスターがびっしりと貼りまくられている。一週間後の1/18に、この駅から遠く離れた豊田店は、新年早々残念ながら閉店してしまうのである。入口近くで騒ぐ中学生たちを尻目に中に入ると、たくさんの人で賑わう店内!一階はゲームやコミックやカード類を求める人で、大変に賑わっている。それらをさらに尻目にして古本の集まる二階へ上がると、おぉ!こちらも一階ほどではないが、なかなかの盛況を見せている。一本一本通路を偵察した上で、主に文学棚と文庫棚をを攻めることにする。じっくりジリジリと見続けて、およそ五十分。十冊を手に抱えて階段を下ったところで、踊り場壁面上部の古書棚にハッと気付く。懸命にビニールカバーを透かし見て、おっと思った北村小松を手にして一階のレジへ。するとそこには大行列が出来ており、コミック・ゲーム・DVD・トレカのお客に紛れ、ミニ古本タワーを両手に抱えて順番待ちをする。文藝春秋「草のつるぎ/野呂邦暢」河出書房新社「夢の書 わが教育/ウィリアム・バロウズ」パロル舎「乱歩 夜の夢こそまこと/石塚公昭」風塵社「ぼくはオンライン古本屋のおやじさん/北尾トロ」筑摩書房「文士風狂録/大川渉」光風社書店「大阪の人/藤澤桓夫」出版協同社「現代の怪奇/北村小松」光文社文庫「牧逸馬の世界怪奇実話/島田荘司編」「暗闇の殺意/中町信」講談社文芸文庫「光と風と夢 わが西遊記/中島敦」扶桑社文庫「わたしはスポック/L・ニモイ」を30%オフの計3255円で購入する。このラインナップで一冊295円平均なら、大いに満足出来る成果である。まだ上林暁や藤澤桓夫や復刻版の「オフェリア殺し」「幻影城」などが残っているので、食指の動く方々は河岸段丘を駆け抜けて、訪ねてみて下さい。閉店の悲しみとセールの浅ましき恩恵にこの身を浸しながら、本を詰め込んだポリ袋を指に食い込ませて駅へと戻る。帰りの電車のシートに身を沈めていると、中野駅で人身事故が発生し、列車はピクリとも動かなくなってしまった。う〜む、寒い…。

※お知らせふたつ
1. 1/16(金)にBS11で放送予定の『宮崎美子のすずらん本屋堂』(22:00〜)に『日本全国古本散歩 岡山編後編』のスタジオコメンテーターとして、岡崎武志氏・近代ナリコ氏と共に出演いたします。とは言ってもこの日の私は、元日に手に入れたあの超レアなブツを紹介し、『古本屋さんの店先には、まだこんな風に夢が転がっているのだ!』と啓蒙することに全力を注ぎました。ビバ古本屋さん!というわけでご覧いただければ光栄です。
2. 昨年末に盛林堂ミステリアス文庫より発売された「本の探偵1 偕成社ジュニア探偵小説資料集」のトークショーが「まんだらけ中野店 海馬」で開かれることが決定しました。そこに何故かゲストとして登壇する羽目に陥りましたので、ニコニコしながら二人の古本神の神々しいトークを、間近で楽しもうと思っております。
■「本の探偵1 偕成社ジュニア探偵小説資料集」発売記念サイン会&トークショー
■日時:2015年2月8日(日) 14時〜
■出演者:森英俊、野村宏平
 ゲスト:小野純一(盛林堂書房)、小山力也(古本屋ツアー・イン・ジャパン)
■参加方法:偕成社ジュニア探偵小説資料集を所有(購入)されていて、まんだらけ中野店の「海馬」までご予約のご連絡された方
詳しくは下記サイトをご覧ください。
http://www.mandarake.co.jp/information/sale/junior_tantei/
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2015年01月10日

1/10神奈川・鴨宮 古書店 楽々堂

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青春18きっぷのラストで、東海道線に乗車。神奈川県の湾岸沿いを流れ落ちるように進み、湘南や別荘地帯を駆け抜け、観光地・小田原の一歩手前で下車する。駅の周囲には低層の住宅が建て込み、南には西湘バイパス越しの相模湾のきらめきがチラリと見え、北と西には迫り来る丹沢山系の勇姿。北口に出ると小さなロータリーで、そこから雰囲気は古いが現役な『鴨宮北口商店街』を北進する。途中に、横尾忠則が喜びそうなY字路が見事に向かい合ったX型の部分が現れるので、そのまま北へ東寄りの道を選び、殺風景な東海道新幹線高架にぶつかったらそれをなぞるように一直線に北東へ。やがて車通りの多い『巡礼街道』の『菊川ガード下信号』に出る。街道を松の木の生えた『美濃里橋交差点』まで東に進み、橋は渡らず酒匂堰の左岸を北に進んで高架を潜り、後はひたすらまっしぐら。するとおよそ駅から1.5キロ。左側に『本・CD・DVD』『古本市』などの幟を翻す、広い敷地が現れる。奥を見ると倉庫然とした巨大な建物があり、その中央の一部が、小さな古本屋さんとして胸襟を開いてくれていた。ここは、本体の買取専門店『ネットショップGAKU』が倉庫の一角を利用して、週末だけ開けている100均のお店なのである。存在だけでもはや嬉しい、ひゃっほうなお店!もしかしたら、良い出物がしれっと並んでいるかもしれない…いつものようにそんな都合の良い期待に勝手に震え、ちょっと薄暗くうすら寒い、棚で仕切られ造られた八畳ほどの空間に潜り込む。すると目に入った貼紙により、ここが無人販売店であることを知る。入ってすぐ右に文庫棚があり、下には廉価コミックの列。そして奥の下部に、無人店の要である料金箱が取付けられている。左にはムック&雑誌ラックがあり、裏には同様に100均のCD棚が立っている。中に進むと左にフロアが広がっており、正面の五本の棚には旅・ガイド・児童文学・実用全般・ミステリ&エンタメが収まり、下には括られた安値の全集やお香が端正に並べられている。フロア中央には、コミック・辞書・写真集・DVD・VHSを並べた棚やラックが固まる。入口側にはCD棚と共に、絵本・パンフ類・ビジュアルムック・図録の並ぶ大型ラックがあり、下には絵本やムックの詰まったプラ箱が二つ置かれている。そして左壁は、ニンマリと嬉しい『古書・なつかし本』棚となっており、ここまでキレイで新しめの本が多かったのが、まるで嘘のように茶色く長い時を潜り抜けて来た本ばかりを揃えている。美術・詩集・復刻本・児童文学・野球・日本文学・仙花紙本・学術本・文化・ハヤカワポケSF・政治社会など、少し硬めな傾向である。だが、おぉ100円!と貪るように本を積み重ねて行く。ロマン・ブックス「誰も知らない/藤沢桓夫」小山書店「詩學敍説/ヴァレリー」三瀬商店「現代婦人手藝全集 欧風刺繍篇」荒地出版社「ポケット続冗談辞典/関保義編」学研「六つのナポレオン像/コナン・ドイル」文禄堂書店「筆の雫/大町桂月」サン企画「サンえかきうたテレビえほん バビル2世」中央公論社「マイアミ沖殺人事件/デニス・ホイートリー」文藝春秋「明治・大正・昭和 日本の作家一〇〇人」。そして本日一番の獲物は、大阪の出版社・巧人社の「ヴェルレームの詩/松山敏訳」。函から本を抜き出すと、表紙に立体的なレリーフ装が施されているのだ!その立派な存在感は、まるで映画『死霊のはらわた』のネクロノミコンのようである!おまけに“ヴェルレーム”が誰のことかと思えば、ポール・ヴェルレーヌのことなのである。扉や本文は“ヴェルレーヌ”なので、函や表紙の“ヴェルレーム”はやはり誤植なのでは…。
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と、これでぴったり千円!定点観測をしなければならぬお店が、また新たに出現してしまった。そう確信して、本を詰めた袋を抱えて駅へスタコラ。

せっかくなので小田原まで出て、コインロッカーに本を預けて「高野書店」(2010/03/13参照)。郷土色が増大した小さな店内を一周し、夢工房「トーマス栗原/服部博」を700円で購入する。続いて「お壕端古書店」(2009/05/03参照)にも足を延ばすが、電光掲示板はキラキラしているのにシャッターダウン…最近何だか入れていないので非常に残念。その憂さを晴らすために『守谷製パン店』に急行して甘食を買おうとするが、まだ午後二時なのにもう売り切れ。悄然として、代わりにおはぎのような形状のピーナッツとレーズンのクッキーを買うことにする。帰りの電車でむしゃぶりついてみると、ザクザクポロポロで、これがちゃんと美味しいのであった。
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2015年01月09日

1/8岡山で「万歩書店」全店スピードツアー!

昨日本日と、本の雑誌『おじさん三人組が行く』の新企画『岡山・万歩書店ツアー』に便乗して、三時間半の新幹線移動で、およそ二年ぶりの岡山へ向かい、観光など一切せずに二日間を「万歩書店」内のみに蠢く!端折って書いたつもりが、やはり大作になってしまったので、心してお読み下さい…。

一月七日午前十一時。岡山駅改札で同行して来た編集M氏と共に、昨日から別件で前乗りしていた編集長H氏と営業S氏と合流し、すぐさまレンタカーで津山へと旅立つ。津山…三十人殺し…八つ墓村…横溝センセイ!と連想しながら、昭和なドライブイン文化が花開き続ける山間の街道を、ウネウネと走って二時間。いつの間にか雨が降り出した陰鬱な空の下に、津山の城下町が吉井川沿いに栄えていた。風情ある横溝ワールドな町中を進んでアプローチした、憧れの「万歩書店」への第一歩は、訳も分からず地下駐車場に進入してしまい、その全貌がなかなか判然としない。車が停まると同時に車外に飛び出し、スロープを駆け上がって川沿いの街道に顔を出すと、平屋に見えるが実は土手の高低差を利用した、二階建て三角屋根の大きなお店が出迎えてくれていた。

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●東津山「万歩書店 津山中之町店」
限られた時間の中、正式なツアーは望むべくもないが、とにかくこれが、記念すべき万歩への第一歩なのだ!と大きな喜びを携え、『業者・マニア大歓迎』とある広大な店内に突入する。入口は二階に通じており、そこにはコミックやゲーム類が並んでいる。それらには目もくれずに、レトロな映画ポスターや雑誌創刊号に飾られた中央大階段を下ると、そこは見事なまでの古本世界。およそ六本の通路が切れ切れに全フロアに広がり、多ジャンルが棚や床上に並ぶ中、目を惹き付けるのはやはり茶色い古書群!中戸川吉二のボロボロの本を発見したり、ショウケースに飾られた下村千秋「天国の記録」の竹中英太郎装に目を奪われたりする。全体的に良い本の値は手強いスキ無しの構え。しかしこれが万歩!とこちらも積極的に介入し、春陽文庫「三角館の恐怖/江戸川乱歩」六興出版「神州纐纈城/国枝史郎」金沢文庫「失われた世界へ/デビッド・ノット」朝日ソノラマ「海外旅行撮影のすべて/渡部雄吉」(最近『張り込み日記』で名を馳せたカメラマンのハウツー本!)を購入し、景気を付けて気合いを入れる。この二日間で、古本をたくさん買うぞ!続いて川沿いに西に引き返して、街中街道沿いの二店目へ。

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●津山「万歩書店 津山小田中店」
赤く滑り易い地面に囲まれた平屋のお店である。とは言え通常の古本屋さんよりは、やはり遥かに広い。二十メートルほどの通路を九本備え、コミックやラノベを中心に、わりと通常寄りなリサイクル店の様相。それでも文学や郷土本の棚は存在するので、しっかりとそこに食らいつき、また50円文庫を愛でたりしながら講談社「自伝 わたくしの少年時代/田中角栄」記録文化社「武林無想庵盲目日記」(後妻・武林朝子の識語署名入)を購入する。ここでは店員さんに声優で同姓同名の小山力也氏と間違われ、恥ずかしいやら申し訳ないやら…。赤面しながら東に一時間弱移動して、道に迷いながらもどうにか日の暮れる前に美作のお店に到着する。

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●林野「万歩書店 美作店」
平成二十一年に出来た一番新しい支店で、自称“一番小さな万歩書店”。外観から察するに、元はパチンコ屋ではないだろうか。先の二店から比べたら確かにコンパクトだが、十本の通路は偉大である。ここでは隙間的な本を目ざとく見出し、秋田書店「若さま侍捕物手帖/城昌幸」徳間文庫「古墳殺人事件/島田一男」日本文教出版社「岡山文学アルバム」(地元でこういう本を買うのは特別な喜びあり)を購入。外灯の少ない横溝ワールド夜道を疾走し、命からがら岡山市街に逃げ帰る。目まぐるしかった第一日目の総括をする前に、ちょっと本店にも一瞬寄ってみようということになり、夜の帳に包まれた、待望の「万歩書店」総本山に、ロッカーに荷物を預けて突入。その瞬間、すべての古本屋既成概念と知識と経験がホワイトアウトし、次元の捩じれたような超現実のような長大な通路に、たちまちノックアウトされてしまう。今までの三店を見て、確かにスゴいが「ブックセンターいとう」や「ほんだらけ」に似ているなと思っていたのだが、これは想像を遥かに越えまくる光景!とてもじゃないけれど、体調がどれだけ良くても、時間がたっぷりあっても、ツアーで太刀打ち出来る代物ではない。古本を探すにしても、的を絞りに絞らなければ、集中力と精神がひたすら肥大し薄まってしまう!ならば俺は、茶色い古書に、この瞬間のすべてを賭けよう!中央通路に連なる300均古書ワゴンや、恐るべき中央右寄りの古書棚にべったりとマンツーマンマークを施していると、浦島太郎的にあっという間に現実の世界では二時間が経過してしまった。見たことのない本のオンパレードに魂を奪われっ放しで、取りあえず角川文庫「監禁/小林信彦」東方社「僕は会社員/北町一郎」ポプラ社世界小説推理文庫「第三の恐怖/江戸川乱歩」日本圖書出版株式會社「地と人/早坂一郎」牧書店「砂漠の国ジャングルの国/高村暢児」(以上すべて裸本)日本音楽雑誌株式会社「音楽は愉し/野村あらえびす」を怒濤のように購入してしまう。一通り買ったところで、後ろ髪を引かれまくりながらお店を後にする…しかし、とても気になる本が、高値なのだが気になる本が、いやそれでも買ってしまおうと心に誓った本が一冊…あぁ、あれを早く我が物にしなければ…。

明けて一月十八日。午前九時にホテルを発って、ほぼ隣町の倉敷へと向かう。しかし一時間ぴったりで到着した場所は、いわゆる倉敷感はゼロの、市民球場の隣にある2フロアの広いお店であった。

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●倉敷「万歩書店 倉敷店」
まだお店の前を掃除している店員さんを尻目に、一番乗りに店内に雪崩れ込む。一階はコミックやフィギュアやアダルトがメインなのだが、入口右横奥にある古漫画雑誌・貸本漫画・雑誌附録漫画が異彩を放ちまくっている。1000円〜10万円の値段幅にも度肝を抜かれる。そこで古本魂を吸い取られてしまったのか、二階の「ブックセンターいとう」的古本フロアに向かうも、全員が何を見て何を買うべきか分からぬ状況に陥り、絶望的に広いフロアを右往左往し、時間だけがいたずらに流れて行ってしまう。ここでもやはり古書に注目するが、狙いが定められず値段との折り合いもつかず、結局ロマンブックス「幽霊男/横溝正史」光風書店「幽霊紳士/柴田錬三郎」東方社「ぜいたくなホテル/黒岩重吾」を購入。ここに来て、岡山でようやく横溝本が買えたことに安堵する。柴錬の本と合わせ、謎の“幽霊”コンボになったのも微妙に嬉しかったりする。続いて少し北上し、「悪魔の手鞠唄」の舞台でもある、山に囲まれた盆地の総社に向かう。

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●総社「万歩書店 総社店」
交通量の激しい交差点近くにある、窓のない倉庫的なお店は、万歩にしては小振りな部類である。店内は2フロアだが、二階からは一階の棚が所々見下ろせるほど、ちょっとワイルドな空間となっている。コミック・ゲーム・玩具類がメインで、一階に100均本と一般本が少々と、二階のコミック空間の端に文庫通路が一本あるのみ。その規模の小ささに、何故かちょっとだけホッとしてしまう。角川文庫「戦国残酷物語/南條範夫」を購入。ロッカーにカバンを忘れる愚かなアクシデントを乗り越え、午後二時。この旅のラスボスである、憧れの「万歩書店 本店」に満を持して再突入する。

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●岡山「万歩書店 本店」
書店首脳メンバーと挨拶を交わし、取材を終えた後(詳しくは「本の雑誌四月号」に一文書かせていただく予定。それにしても、ここでは事務所ぐるみで声優・小山力也氏と勘違いされており、その釈明に必死にならざるをえなかったのが、哀れなピエロ的でどうにもこうにも…)いよいよ本腰を入れて、再度古書棚に挑みかかる。そして昨夜から目をつけていた一冊を、勇気を持って誇り高く抜き取り、昨日は足を踏み入れる暇もなかった二階へ。そこでは奥の壁棚にドババッと揃う、仙花紙文学本にただただ垂涎!祈るように棚の前に跪き、戦中戦後の世界に耽溺!値段は800〜2500円で、大変にジャストな値付が為されている。やはりとても時間が足りぬ焦燥感に囚われながらの一時間半。民友社「新疆探險記/橘瑞超師著」報知新聞社「飛燕合気道/牧野吉晴」山ノ手書房「たぬき尼僧/宮下幻一郎」を購入。一番感激したのは橘瑞超の大正元年オリジナル本!まさかこんな物に出会えるなんて!値段は四千円と高値ではあったが(県外訪問者割引で10%オフの3600円となった)これは絶対にそれ以上の価値がある!そう信じて手に入れた大満足の一冊なのである。
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今回の万歩ツアーは、本を買うことに眼目を置いた、普段とは精度の異なるものであるが、感じとしてはとにかく古書がスゴい!の一言に尽きる。文庫などは量も膨大で絶版も混ざり込むが、それほど色めき立つ発見はなかった。全体的な値段もわりとしっかり付けられているので、所々でブレーキが掛かり、欲しい本は次々と見つかるが“バカ買い”という域には達しなかったのである(それでも初日に作ったスタンプカードは見事にいっぱいに…)。しかし見たこともない古本に多数出会えたのもまた事実で、非常に激しく興奮しっ放しの、スピードツアーとなった。この旅を提供してくれた本の雑誌社に感謝しつつ、岡山の地で巨大でアナクロな古本屋さんとして根付き奮闘する「万歩書店」全店に、さらに大いなる感謝を!
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※二日で溜まったスタンプカード。古本屋ツーリストとしては、買った本も嬉しいが、この旅の軌跡は何ものにも代え難い勲章である。
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2015年01月06日

1/6爾保布に陶然とし雨砂に全身を叩かれる

今日は早くから動き出し、気にかかっているお店を連続で見て行くことに決め、小田急江ノ島線で神奈川県を南下する。藤沢駅で降りた途端に風が強くなり、天気雨がしぶくように空から飛び散って来る。そんな中最初に向かったのは「太虚堂書店 藤沢北口店」(2011/07/22参照…しかしもはや二階は閉鎖された上に店内の様子もちょっと変わっているので、再ツアーが必要なのかもしれない)へ。
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ここは昨年末に、古本神のひとり・森英俊氏が訪ねた折り、中央棚の一列に仙花紙ジュブナイル本が渋く輝かしく並んでいるのを発見し、驚喜購買したとの報告を受けていたのである。早く見に来たかったのだが、年明けになってしまった…。まずは強風に嬲られる老人と共に店頭台をチェックしていると、東京堂「硝子張の中の人/南雄三」という八千代生命その他もろもろの経営者の本を発見する。大正十三年刊で、函と本体の装釘が共に素晴らしい。見返しの値段は1080円で、鉛筆で『前川千帆』と書かれている。これは千帆の装釘なのか?と目次部分を目で追うと、おぉ!装釘は水島爾保布ではないか!と大いに喜ぶ。前川千帆は挿画の数枚をポンチ絵のような軽いタッチで担当しているだけであった。爾保布装釘本を手にして店内に進むと、ほほぅ。確かに壮観な仙花紙ジュブナイルの群れが、強力に古本心を誘惑している!南洋一郎・高垣眸・海野十三・野村胡堂・久米元一・小山勝清…これは確かにスゴい!しかし値段は普通に良い感じに付けられているので、おいそれと手が出るものではないのだ。だがやはり、見ているうちにとても欲しくなってしまい、悩んだ末に値段下層クラスの偕成社「古城の怪寶/久米元一」(初版蔵印あり)を選び取る。いざ精算と思ったら、雨風が強くなって来たため、帳場のご婦人が店頭棚や台を店内に一生懸命引き入れいている…ビニールシートを掛けたりせずに、完全避難なんだな。こりゃ大変だ。その大変な作業が落ち着いたところで精算をお願いする。前述の二冊を計4320円で購入。「これは初版よ。いい買物したわね」と何故か褒められつつ、店頭台で一杯になった通路を擦り抜けて表に出る。

続いてさらに南に向かい、こちらが本日のメインイベントである、その消息が気になっていた本鵠沼の「古南文庫」(2011/04/27参照)を訪れてみるが、残念ながら一心同体の酒屋と共にシャッターを下ろしていた。雨がひどくなる中を駅まで戻り、さらに一駅下って鵠沼海岸の「太虚堂書店」(2009/09/23参照)にも焦りつつ向かうが、ドアは堅く閉ざされ、その向こうに積み上がるダンボールなどがうっすらと見え、窓には藤沢のお店の地図が貼り出されている…もう営業していないのだろうか?
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この辺りは週末に活気あふれるはずなので、再びいつかの土日あたりに「古南文庫」と共に再チェックしに来ることにするか。

雨風は強いが潮の匂いに誘われ、街中を通り抜けて海にフラフラと近付いて行く。しかし海岸に近付くと、とてつもない強風が襲い掛かり、雨が貫くように体を撃つ。砂浜に出ると、強風と雨粒と砂粒が一斉に襲い掛かり、前に進むのも目を開けているのも厳しい状況に陥る。痛い!色んな粒が痛い!体を風に持って行かれないよう注意しながら大荒れの海岸線まで近付き、写真を撮って引き返す。
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…これが今年初の海とのコンタクトであった。帰りの車内で砂混じりの体を暖めながら、今日の収穫も写真に収めてみる。この爾保布描くところのスタンドのシェードはどうだ!カーテンはどうだ!夜の闇は、どうだ!
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2015年01月05日

1/5金町と亀有を彷徨い電子の古本屋遺跡に虚無を見る

早起きして、去年から持ち越しの仕事に決着をつける。ふぅ、間に合ったと肩の荷を下ろした気分で、午後になって外出する。ではさらに気楽に、気にかかる古本屋さんを見に行くことに決め、頭の中の古本屋データドラムをグルグル回す。そうだ、久々に金町の「書肆久遠」(2009/12/04参照)に行って棚に溺れ、同時に近隣のお店の消息を確かめておこうと、千代田線から常磐線。

まずは北口に出て「三宅書店」(2009/04/06参照)を目指してみるが、すでにお店は煙のように消え失せていた。かなり長い間見に来なかったからなと、パトロールしなかったのを軽く反省し、そのまま以前と変わらぬ泰然自若な「五一書房」(2009/04/06参照)に入る。
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店主とお客さんの『船橋の方で古本市があった…』などの地元情報に、ついつい耳をそばだててしまいながら、鶴書房「新奇術/千田松緑」を600円で購入。続いて裏通りの「文福」(2011/02/09参照)が健在なのも喜び、凍るような寒さの店内を眺め回して、ちくま文庫「文豪怪談傑作選 柳田國男集/東雅夫編」を430円で購入。
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そのままさらに東に足を延ばし「一草洞」(2013/04/12参照)との再開も目論むが、あえなくシャッターに弾かれてしまう。続いて線路下を潜って南側に出て、本日のメイベントである「書肆久遠」に向かうが、こちらでは残念ながらカーテンに弾かれてしまう…定休日か。一月四日から営業する旨の貼紙が出されたままなので、しっかりと営業していることだけは確認。…よし、こうなったら隣りの亀有の古本屋さん事情も探って行くか。

結果からいえば、以前ツアーした亀有のお店は壊滅状態であった。北口のビルディング一階にあった「古書アーバンブックス」(2009/06/09参照)はカフェと化しており、「ブックセンター亀有」は消滅。学校前のクリーニング屋兼業の「ブックセンター亀兎」のあった場所にも、なにやら事務所が入ってしまっていた。ふぅとため息をつきながら、道の先に視線を飛ばすと、ビルの壁から電光掲示板が飛び出し、ピロピロと文字を映し出し流し出している。どうやらこの通りの『亀四商店会』の宣伝掲示板らしく、次々と通りに並ぶお店がスピーディーに宣伝されて行く。そこに突然「ブックセンター亀兎」もピロピロと出現!『年中無休』『名作 古本』『クリーニング』『カメトウ』(マニトウみたいだ…)などの言葉が、俺の心を惑わせる!
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お店、あるのか?移転しただけなのか?そう掲示板に思わされ、通りと脇道を行ったり来たりするが、店舗の姿は影も形もない…これはどうやら、無くなったお店の広告も、そのまま流しっ放しにしているのであろう。現役感満点の電子の世界の古本屋遺跡に、砂上の楼閣のような虚無を感じ取る…。

最後に駅北口の古本も扱う特殊新刊書店「栄眞堂書店」(2013/12/10参照)にヨロヨロとたどり着き、至文堂「人身売買 海外出稼ぎ女/森克己」旺文社中一文庫「わんぱく中学生/原作トーマ」を計1200円で購入し、本日の彷徨にどうにか決着をつける。
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posted by tokusan at 21:26| Comment(6) | TrackBack(0) | 古本屋遺跡 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年01月04日

1/4補修と幻滅城

今日一日は仕事日ということで、ツアーはとうにあきらめている。しかしその代わりに、昼食後西荻窪へ。今日から始動の「盛林堂書房」(2012/01/06参照)に向かい、店頭両翼に一本ずつ100均棚が増えているのに驚きつつ、店内で2015年もまだまだ続く「古ツアフェア@盛林堂再び!」に新鮮な古本をダバダバ補充する。そして一日千秋の思いで楽しみにしていた噴飯文庫「戦前「科学画報」小説傑作選2」とアントニイ・バークリー書評集製作委員会「アントニイ・バークリー書評集」(共に新刊)を購入。さらに店主・小野氏に下心ありのお年賀どら焼きを渡し、間髪入れずに元日に手に入れた恐るべき大物、椎の木社「随筆/井伏鱒二」(三好達治宛献呈署名入)の補修を厚かましくお願いする。氏は快諾してくれながらも、500円の値札を見て口を尖らせ「おかしいよ。なんだよこれ」と小さくプリプリしている。しかしその手は正確に動き、本の状態を確かめながら分解&補修作業に入って行く。背をしっかりと和紙やボンドで固め、本の強度をアップ。表紙も出来るだけ奇麗に復元され、傷んでいた本が、見違えるように本としての機能を取り戻して行く。暖房の温風を利用してボンドを急速乾燥させ、
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最後にパラフィンを掛けてもらって、おぉぉぉ!美しく完成!思わず帳場背後の井伏鱒二コレクション棚(三段分)をバックにして記念撮影。
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本は恐らく棚に一緒に収まりたいのだろうが、それはダメだ。お前は俺のものなのだ!と優しくカバンに収め、小野氏に感謝を捧げる。そこに昨日もお会いした新保博久氏が姿を見せ、三人でしばらく談笑。話の流れで、新保さんの蔵書は散逸せぬよう将来立教大学に引き取ってもらい、乱歩土蔵の隣に新しく蔵を建て、そこに収蔵しておけばいいのではと提案する。すると新保氏は「名前は、幻滅城だな」とボソリ。思わず大笑いしながら、じゃあ蔵はプレハブにしておきましょうと、さらに失礼な提案をしてしまう。幻影城と幻滅城が並んでいたら、何かのトリックにでも使えそうだななどと、やくたいもないことをついつい考えながらお店を辞去。いかん、楽しく長居してしまった。
posted by tokusan at 17:56| Comment(2) | TrackBack(0) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする