2015年07月31日

7/31青春の行く末を目撃して明日に向かう

笹塚で仕事を素早く終えて、京王線に飛び乗り、西東京に垂れ下がって行く。満々と青黒い水をたたえる多摩川を越えて、京王稲田堤駅で下車。京王線駅とJR駅をつなぐ、半商店街な裏道にある「古書 青春堂」(2009/10/22参照)の姿をキョロキョロと探すが、すでに影も形もない…またひとつの古本屋さんが、時代の波にガバリと飲み込まれてしまったか…。

このやり切れぬ思いを、何処に吐き出してしまおうか…そう考えたら、自然と足は京王永山駅に向かっていた。小田急線と連絡した駅コンコースを南の丘の上に抜け、『古い公園を新しくしています』と書かれ工事真っ最中の『永山北公園』を抜け、やはり夏になると緑の勢いが猛々しく、草いきれに包まれた団地内を進んで「あしたやみどり」(2013/05/28参照)。時間の停まった団地の中の、さらなる異空間に身を沈め、古書300円・単行本200円・文庫100円ワールドを楽しんで行く。それにしてもお店の左壁とテーブル、それに奥の作業場空間は、機織製品&作業にすっかり侵略されてしまっている…これ以上古本空間が、脅かされませんように。それでも小粒な良い古本をセレクト。東都書房「コタンの口笛 第一部あらしの歌 第二部光の歌/石森延男」筑摩書房「ドガに就いて/ヴァレリィ 吉田健一譯」浪漫「ペンギン記/壇一雄」集英社「夜会服/三島由紀夫」を計1300円で購入し、無事にやりきれぬ思いを吐き出す。やはりここは、時々来ておかなければいけないな。
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お店の前で、夕日を浴びて記念撮影。

そして夜、急遽下北沢で半仕事に駆り出される。街には若者が雲霞の如く集まり、そこかしこに大集団を作り出しているので、なかなか駅前や商店街を普通に歩くことが出来ない。午後十時前に半仕事を終え、街に吐き出される。明るい街の中から夜空を見上げると、そこにはゾッとするほど冴えた満月が浮かんでいる。思わず古本が恋しくなり、暗い路地から路地へ…。すると「ほん吉」(2008/06/01参照)が頼もしく、お店を開けて待ってくれていた。上から光が落ちて来る店頭棚に目を凝らし、角川文庫「犬神博士/夢野久作」春陽堂文庫「地獄の季節/ラムボオ」を計200円で購入。さぁ、古本への恋い焦がれは、これで満たされた。お腹がすいたから、早く家に帰ろう。
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2015年07月29日

7/29日暮里〜三河島間に消息を尋ねる

いつ来ても方向感覚に加え、進むべき道を見失ってしまう、奇怪な日暮里駅東口でマゴマゴしてから、通りの入口にキュビズム等身大女性像が建つ『日暮里中央通り』を進む。ここは通り沿いに布や洋服を扱うハギレ屋や、革関連のお店が多く並んでいるので、『布の街』『布の道』を自称している。そんな柔らかな通りを踏破し、洋食屋と牛乳屋と肉屋が見事な古い景色を紡ぎ出す『日暮里中央通り交差点』を南に曲がり込むと、おぉ!健やかに健在な「峯尾文泉堂」(2009/05/30参照)の姿が見えて来た。六年前とほぼ変わらぬ姿であるが、日除けが新しくなり、そこにはしっかりと店名が入っている。相変わらず安売り週刊誌類は主力商品なのだな。コンクリ土間の店内に進むと、奥は乱雑だが手前はわりとスッキリしており、棚前の横積み本の山を我慢すれば、ある程度本をちゃんと見られる状況である。ちょっと古い本が増えた気が…と思いながら小さな店内を行ったり来たりして、光文社文庫「「少年」傑作集 小説・絵物語篇」日東書院「カバゴンの紙工作/阿部進監修」を計800円で購入する。帳場の奥では、奥様が料理の真っ最中なのだが、あのたくさんいた子猫たちは、いったいどうなってしまったのだろうか…。

見られなかった子猫に思いを馳せながらも頼もしく営業していたなと感心しつつ、『尾竹橋通り』をグングン北進して行く。「TOKIOブックチェーン」(2010/07/21参照)が元気なことを確認して素通りし、三河島駅ガード横にあった開かずの古本屋だった「横山書店」の消滅を確認し、平日なので開いているはずのない「稲垣書店」(2009/10/26参照)の焦げ茶の日除けを横目にさらに進み、渡るのに時間がかかり苦労する七叉路を越え、久しぶりの「丹青通商」(2012/08/22参照)に無事到達。実は昨年店主が重傷を負い、この古書と電子部品のお店はしばらく閉まっていたそうなのだが、今は無事に開いている!営業している!と喜び飛び込み、本がドドドと増えながらも、電子部品と共に面白い本の並ぶ店内を静かに彷徨い、函ナシだが実業之日本社「大東京遊覧地誌/白石實三」を千円で購入し、元気になられた店主と再会を喜び、しばしの古本屋話。そして実は店主のお父様が、清瀬の孤高の闘う古本屋さん「臨河堂」(2014/06/12参照)であることを告白され、大いに驚く。お父様は残念ながら亡くなられたそうで、今は弟さんがお店を継いでいるとのこと。むぅ〜、これはまさに知られざる古本屋一族…それはまたいつか、見に行かなければ…。とにかく今日は二店とも健在で、よかったよかった。

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写真は「東京遊覧地誌」の後ろ見返し。東京近郊の地図になっており、左上には『東京松屋呉服店』のラベルが貼付けられている。ちなみに前の見返しは、新小岩・金町・竹ノ塚・赤羽・成増・東大泉・西荻窪・経堂・用賀・蒲田が辺端となった、大東京地図になっている。
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2015年07月28日

7/28上石神井にエーワンの消息を尋ねる

昨日今日と家に閉じこもり、先日の旧江戸川乱歩邸取材を、単行本用の原稿に早くもまとめ上げる。すると書くことが多過ぎ楽し過ぎ、いつまで書いても終わらないので、かなりの大作になってしまった…どうやらあの興奮は、まだまだ自分の中にフツフツと持続しているようだ。やはり乱歩パワーは絶大なり!激写した写真も含め、早くお見せしたいところなのだが、単行本の発売はまだまだ先なので、今回は取りあえず、取材後に焼き鳥屋で酔っ払いながらサラッと書いた、土蔵一階の見取り図を掲げておくことにする…。
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色々終えて午後に外出。最後の「エーワンブック」チェーンの消息確認に、上石神井に向かう。北口に出て、裏通りの小さな飲み屋通りを西に抜けて『上小通り』に出る。ところがマンション一階に並ぶ店舗の中にあるはずの「エーワンブック 上石神井店」(2011/09/27参照)は、すでに表舞台から退場し、代わりに店舗はバイクの有料駐車場となっていた。そのお店が面していた『上小通り』の外灯下部には、古本屋遺跡として「エーワンブックス」の名が、小さく小さく残されていた…。
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ということで現存するエーワンチェーンは、西武柳沢と永福町の二店のみとなっていることが判明。何とも寂しい限りであるが、この二店にはまだまだこれからも、大衆の欲望を受け止め続けていただきたい!そしてこれで上石神井の古本屋さんは消滅し、残るは「ブックオフ上石神井駅南口店」一店のみとなる。フラフラと炎天下をお店まで移動し、高いステップを上がって涼しい店内へ。奥の安売り単行本棚から、文學の森「海鼠の日 角川春樹 獄中俳句」を200円で購入し、おとなしくそのまま家へと戻る。
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2015年07月26日

7/26東京書房半額セールと古本屋トライアングル

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コメントタレコミで知った、自由が丘「東京書房」(2009/03/23参照)の改装一時閉店。駅南口を出て、お洒落な『マリクレール通り』に立つと、ここにも強烈な陽光は平等に容赦無く降り注いでいる。お店の前で目を細めて、『SALE』『全品半額』と共に大きく右側に掲出されている『建築計画のお知らせ』に注目する。新しい建物は五階建てで、完成は平成二十八年四月十五日の予定。二階建て建物の前面を見ると、一瞬コンクリ打ちっ放しの丈夫そうな建築に見えるのだが、左側面を覗き込むと、これが見事なまでの古アパートのような、昭和モルタル建築なのであった。そうかそうかと、改装の決心を納得しながら、床板が黒光りする店内に進むと、多くのお客さんが本棚に真剣な視線を発射していた。すでにブランクのある棚もあり。もっと早く来るべきであったなと思いながら、絵本・暮らしや料理、映画や音楽などのカルチャー、少女文化や現代思想に強い店内を久々に楽しむ。ランダム出版「昭和の珍事件集/監修・タモリ(森田一義)」平凡社ライブラリー「辻まことセレクション1 山と森」を計725円で購入する。ひとまずお店は明日7/27まで。ということは、来年春の新オープンまで、自由が丘の古本屋さんは「西村文生堂」(2013/09/10参照)一軒となってしまうわけか。それまでどうにか自由が丘の古本文化を支えていただき、東京書房の華麗なる復活を待ち望むことにしよう。

炎天下のアスファルトの上をヒイハア奥沢まで歩き、「PINNANCE BOOKS」(2012/06/11参照)と孤高のキリスト教古本屋さん「ふづき書店」(2011/02/21参照)を見てみるが、どちらも今日はお休みのようだ。しかし営業感満点の手応え(PINNANCEは店頭放置100均棚があり、ふづきは半開きのシャッターから仕入れた本が覗いていた)はあるので、ホッと一安心する。そこからさらに西にヒイハア歩き詰め、九品仏の「木鶏堂書店」(2009/12/07参照)に到着。いつもながら夏は冷房がビシッと効いた店内で涼みながら、キネマ旬報社「キネマ旬報別冊 日本映画作品大鑑2」を300円で購入する。このちょっと距離はあるのだが、自由が丘→奥沢→九品仏と三角形に巡れる『古本屋トライアングル』は、今後も大事にして行きたいルートのひとつである。もちろん帰りも、自由が丘までヒイハア歩き、トライアングルをしっかりと完成させるのです。
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2015年07月25日

7/25実家に帰りながら二店の消息を尋ねる

野暮用で横浜方面の実家へ帰る。そしてその帰省時間のほとんどを、甥っ子の人間椅子として過ごす。夕方に脱出し。今や古本屋不毛地帯の横浜線で東へ。

最初に大口駅で下車し、『相鉄ローゼン』前にある「ナカトミ書房」(2009/08/03参照)へ。しかし銀色のシャッターは下り、四つの店頭台も所在なく傾き、その下には雑草まで生え出している…これはもう、営業していないのだろうなと考え、閉店の可能性大と判断する。しかしそれでもいつの日か、また見に来てみよう…。

駅に戻って根岸線→京浜東北線と乗り換え、次は山手駅で下車する。すると駅前がすっかり明るく現代的に変化していたので、間違って石川町で下りてしまったのかと大いに戸惑う。それでも道の先へ進むと、見慣れた東への直線道商店街を発見出来たので、テクテク歩き、まずは確実に古本を確保しておこうと「古書 自然林」(2009/05/10参照)にお邪魔する。中公文庫「赤道南下/海野十三」ハヤカワポケミス「コナン・ドイル/ジョン・ディクスン・カー」を計850円で購入。安心と古本を胸に『本牧通り』に出て、本日の最大目標である「一寒堂書店」(2011/10/29参照)の前。あれから四年…果たして、あの夜から営業を始める、昭和丸出しなお店は、今でも健在なのだろうか。まだ時刻は午後四時半。お店のシャッターは下りているが、右端のシャッターが半開きじゃないか!これは期待出来るぞ!と興奮し、まずは道を南に南に進み、「BOOK STAR」(2012/07/04参照)や「古本 池田屋」(2009/05/10参照)を覗き込んで時間を潰す。

午後五時過ぎ、ちょっと見に行ってみるかと、道を北に引き返すと、バス停前の「一寒堂書店」は、早くも見事にお店を開けてくれていたのだった。動悸を早めつつ、狭く短いコンクリ土間の通路に飛び込み、アダルト・コミック・週刊誌以外は時間の停まった棚に、手を埃だらけにして真剣に挑みかかる。棚が二重になっている部分が多いので、ちょっと勇気を出して時間もかけて、発掘作業を進めて行く。すると四年前には気付かなかった、小物を掘り出すことに成功。講談社ノベルス「奥信濃鬼女伝説殺人事件/梶龍雄」サンケイ・ノベルス「浮気探偵エリ子 女はベッドで推理する/梶龍雄」(帯付き!)桃源社「若さま侍殺生剣/城昌幸」偕成社「地下牢の貴婦人/モーリス=ルブラン作 久米元一」少年少女講談社文庫「透明人間/ウェルズ 福島正美訳」青樹社「迷路の剣/佐竹申伍」を帳場にドバッと差し出す。丸っとしたおばあさんはお元気で、「あらあら、手がだいぶ汚れたでしょう。はい、これでキレイにして」とウェットティッシュを差し出す。そして「こっちは本を拭いてるわね」と帳場の中と外で、本と手を拭き拭き。「暗算では1100円だったわ。合ってるかしら?」と計算機で計算すると「やった、ちゃんと1100円よ。合ってるから100円サービスするわね」と計1000円で購入。あぁ、1940年生まれのお店は、今日も健在で、御歳七十五歳なのである!
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※お知らせ
7/27(月)に、以前岡崎武志氏との古本屋対談を収録していただいた、北條一浩氏の「わたしのブックストア」がアスペクトから文庫になって発売されます。なりは小さくなりましたが、内容は増補してパワーアップし、嬉しいことに対談も再録していただいてます。書店でお見かけの際は、どうぞ手に取ってお楽しみ下さい!
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2015年07月23日

7/23東京・上野 うえの夏祭り 夜の骨董市

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2015/07/21に行って空振りした骨董市であるが、追加情報によると夕方から夜が、どうやらメインの営業時間となるらしい。よって本日は午後四時に『上野公園 不忍池』の蓮池南東畔『弁天堂』〜『下町風俗資料館』の間に並ぶ、十店ほどの白テントにたどり着くと、やった!ちゃんと全部開いている。テンションを上げ、足を早めてザクザクと砂利を踏み締め、左に蓮の林、右に骨董&古道具の小さな林を眺めて弁天堂方向へ。すると終りの方に、明らかに異質な露店が、存在感強く目の前に現れた。こ、これは、間違いなく古本屋さんだ。戦後の銀座にたくさんあった、露店の古本屋さんだ!ここは、骨董屋の片隅に古本を並べているのではない。テントもない、ただ横に桜の木が立つ大きな平台の上に、古本だけがドバドバと、古くボロ目な姿を大量に晒しているのだ!感動しながら近寄り、平台に熱い視線を注ぎながら、その周りをグルグルグルグル回る。各本の束の上には、風対策の錘りとして文鎮が執拗に置かれているので、気になる本を見る時は、まずそれを退かさねばならない。「少年倶楽部」・漫画雑誌・コミックス・ボロボロの講談社「リボンの騎士」・戦記・風俗ビジュアルムック・児童文学・絵本・和本・婦人雑誌・「キング」・「スタイル」・付録本・古新聞・地図・歌本・落語本・洋裁・スポーツ…おぉ、「武侠世界」まであるのか。そんな風に、大正〜昭和四十年代までの世界にガボガボと溺れる。これは、最高の露店である。しかし値札が付いている本には、かなりの油断のないしっかり値が表示されている。モノによっては、『値切り不可』と書かれたのもあるので、交渉次第によっては、安くなるのかもしれない。もちろん臆病者の私には、そんなことをする度胸はないので、値段ナシの獲物ばかりに狙いをつけ、店主に「いくらですか?」と聞いて行く。その結果、大日本雄辯會社講談社「少女倶楽部」昭和十二年三月號附録「萬寿姫/太田黒克彦・文 高畠華宵・絵」と野球界社「野球界」昭和十六年五月號附録「野球便覧」を計800円で購入出来、大いに喜ぶ。あぁ、なにもかも素敵に奇跡だな。余裕があったら8/9までの会期中に、夜店になった姿を見に来るとしよう。もしかしたら、アセチレンランプの下に、古本が浮かび上がる、涙溢れる光景が…。
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2015年07月22日

7/22幻影城に攻め入る!

二千十五年七月二十二日(水)午後三時十三分、晴天、風強し。古本屋ツアーは、取材を名目にして、ついに日本探偵小説界の本丸に到達した。そこは立教大学内にある江戸川乱歩の蔵、『幻影城』!!!!!!!!!!!!ついにここまで来ましたよ、オトッツァン、オッカサン!何故ここに突然たどり着けたかというと、今秋に発売予定の単行本の取材にかこつけて、強引に関係各方面に頼み込み、永年の夢が実現してしまったのである。舞い上がりながら、声をうわずらせながら、邸内と蔵内をギクシャクと徘徊!しかしそこは古本屋ツアーで、『幻影城』にもいつもの調査手法を用いて、徒手空拳で体当たり!魂の震えまくる、およそ一時間を、大乱歩の懐に抱かれて過ごす。その憧れの土蔵はもちろんだが、興奮の極みに達し、叫び声を連発してしまったのは、実は本邸内に設置された書庫。こちらには様々なダブり本など共に、昭和初期から昭和四十年代まで献呈された探偵小説がズラリ!本を手に取り見返しを開くと、そこには大乱歩への献呈署名が、一般人をあざ笑うかのように入りまくっているのである!………いや、今はまだすべてを書く時ではない。詳しくは単行本でと宣伝しつつ、ここに今一番読みまくりたい作家、九鬼紫郎の棚の写真を掲げておく(はぁ、恋い焦がれている白井青児シリーズがこんなにも!)。もちろん献呈署名入りハート(トランプ)…あぁ、泥棒になりたい…あの泥棒がうらやましい…。
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そしてここでは、「旧江戸川乱歩邸ガイドブック」を500円で購入する。

興奮の取材を終えた後、まだ夕方なのだが、池袋西一番街に編集さんと共に身を沈め、大衆焼き鳥屋にて取材の完遂を祝って痛飲。したたか酔っぱらい、乱歩所縁の和菓子屋『三原堂』で『乱歩の蔵』という名の二種のブッセを購い、そのまま西にテクテク歩いて「古書 ますく堂」(2014/07/20参照)まで遠征。さんざんスゴい本たちを眺めお腹一杯なのだが、それでも古本は買いたかったのである。酔っぱらいつつ、店内のお客さんと嬉しいコミュニケーションしつつ、小学館てんとう虫コミックス「オバケのQ太郎 第1巻/藤子不二雄」(29刷)を200円で購入。

あぁ…今日は本当に、一生忘れられない日となった。今までどうにか生きて来て、良かったと思える日であった。別に本は手に入っていないのだが、この黄金体験を、やはり一言で表しておこう。どっひゃっほうっ!!!!!!!!!

※記事内で旧江戸川乱歩邸の土蔵を「幻影城」と呼称していますが、本来はただ「土蔵」「蔵(くら)」と呼ばれていたそうです。「幻影城」の名は後付であり、正式の呼称ではありません。
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2015年07月21日

7/21午前中に空振りして平凡な一日を過ごす

古本神・森英俊氏より骨董市情報をいただき、慌てて8/9までの期間中の開始時間である午前十一時に上野・不忍池に駆け付けるが、日射しばかりが強く、何だか活気がない。それもそのはず、並ぶお店のうち開いているのは三店ほどで、しかもそこに古本の姿はない。…まぁそうだよな。掻き入れ時はやはり週末や祝日で、普通の平日の火曜日の午前中だもんな…週末の賑わう時に出直すことにするか…。不忍池には蓮が隙間なく繁茂し、池の上を渡る風と共にその上を歩けそうなほど、水面を美しく埋め尽くしている。。池の中に飛び出した『蓮の観察道』に入り、蓮越しに骨董市の閉まったままの白いテント群を、多少恨みながら写真に抑える。
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テクテク湯島から神保町まで歩き、各店頭台や棚を覗き込んで行くが、妙に臆病になっている自分がそこにいて、何も買えない。ようやく『白山通り』の「日本書房」(2011/08/24参照)で青蛙房「電力の鬼 松永安左ェ門喧嘩控/宇佐見省吾」を100円で購入する。この本、財界の風雲児・日本の電力王と呼ばれた男の評伝なのだが、何故か電気自体を『エレキ姫』と擬人化してあったり、財界人を動物や妖怪として登場させており、所々半おとぎ話SFのような、けったいな構成をとっている。…どうしてこんなことに…。

一旦家に戻り、夕方から阿佐ヶ谷駅近くで一時間ほど打ち合わせ。帰りに「ゆたか。書房」(2008/10/09参照)に立ち寄り、涼みながら講談社文庫「絹と明察/三島由紀夫」河出新書「夜の時間/福永武彦」を計600円で購入する。そんな、なんだか平凡な、夏の一日。
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2015年07月20日

7/20埼玉・高麗川 R市場 日高店

行き先は郊外のリサイクルショップなので、今日くらいは空振りしてもまぁいいだろうと、優雅な心持ちで灼熱の秩父山脈の足元を、八高線に乗り高麗川駅下車。小さな改札を抜けると広々とした駅前。高い建物は見当たらない。線路沿いに北に進んで、最初の踏切で四本のレールを跨いで東へ。スナックや飲み屋が目立つ住宅街をウネウネと進み、鮮やかな緑のイガが防御力高めな栗林を眺めて、やがて『市役所通り』。そこを北に300mほど進むと、大きな『R』の文字が目立つ妙な形状の建物が見えて来た…果たして古本は…。緩いスロープになった駐車場を横切り、洗車をするお店の人らしき女性を横目に、昼なお暗い店内へ。すると目の前にいたのは、暑さにうだり通路に横たわった白&アジ虎のスマートな猫!うぉっ、かぁいいな、としゃがみ込んで、逃げない人なつこい猫を撫でまくる…むっ?お前、サマーカットされているな?感触が妙に肉っぽいぞ!「ニャァァァァァァァ〜」とさんざんコミュニケーションし、ようやく店内の探索に移る。中央の空っぽの帳場を中心にして、左右に縦の通路が配置されているが、奥行きは意外にない。右側に家電・家具・ペット関連が集まり、左に文房具・雑貨・道具・玩具・懐かし系玩具が集まり、中央に古道具やアンティークが固められている。そしてその奥に四畳半ほどの小部屋があり、レコード(LP&EP)・ビデオ・アダルトビデオ・カセットテープ・CD・DVDが集まっている。レコード棚の下に、外タレツアーパンフや文庫セットなどの古本をようやく発見するが、レコードなどに比べあまりに貧弱な品揃えに、がっくりと肩を落とし、最後に猫をひと撫でふた撫でして、まだ洗車中の女性に会釈して、表に逃げ出す。…やはり冴えない結果になってしまったか…これではただ。猫を撫でに遥々来ただけではないか。
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というわけで、お店の写真より猫の写真を掲げておきます。

獲物なく寂しく帰り道をたどっていると、往きには気付かなかった『ポッポ道』という名の、アスファルトに二本のレールが埋め込まれた直線道の脇道を発見する。入口にある案内板を読むと、『太平洋セメント』が石灰石を運び出すために使っていた、引込み線跡地らしい。ならばこれを素直にたどれば、当然高麗川駅に苦もなく着けるはずだなと、テクテク歩き始める。すると道沿いには、鉄道の遺構や踏切までもが残されているので、ちょっとだけ己が鉄道自身になった気分を味わう。秩父山脈から、ゴロゴロと遠雷が響いて来る。
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帰りに飯能で、恐ろしく連続で光る稲妻と豪雨に襲われつつ、古本ナシの無聊を慰めるため、「文祥堂」(2009/12/28参照)に立ち寄り、扶桑社文庫「加田玲太郎全集/福永武彦」宝文館「植物学九十年/牧野富太郎」(裸本)を計800円で購入する。
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2015年07月19日

7/19東京・東京 大江戸骨董市in国際フォーラム

東京駅を歩いている。東京大空襲により燃え落ちた大屋根を復元し、ピカピカに輝く駅構内とその周囲を。しかし目的の『東京ステーションギャラリー』が見つからない。以前の場所に入口も見当たらない…。ガイドマップを手に入れ、その場所を探すと、北側のドーム下二〜三階に移動していたことを知る。慌てて先ほど抜けたばかりの改札がある『丸の内北口』のドーム下に向かうと、そこに確かに入口があった。『鴨居玲展 踊り候え』が開かれているギャラリー内へ入り込む。この画家を知ったのは飛鳥部勝則の、初期の美術系ミステリー小説からである。自分の書いた絵を冒頭に口絵として載せ、現実と虚構を混在させる手法に、ずいぶんとやり込められ、入れ込んだ覚えがある。だから、小説のあとがきなどに出て来た、『鴨居玲』という画家についても、すっかり虚構の画家だと思っていたのだ。ところが「ヴェロニカの鍵」という作品で、鴨居の大作油絵『1982年 私』が装幀に使われているのを見て、その格好良さに『実在したのか!』と驚くことよりも、絵の鬼気迫る素晴らしさに、たちまち魅入られてしまったのである。まだ古本屋ツアーを始める前、地方に仕事に行った時にしていたのは、ライブハウスの近辺にある土地の博物館や美術館を見に行くことであった。金沢に行った時に必ずしていたのは、『石川県立美術館』にリハーサルを抜け出して駆け込み、いつ訪れても誰もいないホールのような美術館で、『1982年 私』の前に佇むこと。金沢が故郷の鴨居玲が、墓として残したこの絵を、少しの時間だけ独り占めするためである。しかしいつしか古本屋に人生を賭けるようになってからは、美術館からは足がすっかり遠退き、絵の前に駆け付けることもなくなった。その思い出の絵と再会するために、ドーム内に複雑に配置された部屋部屋を、人垣の後ろから絵を覗き込み、足早に擦り抜けて行く。そうしてたどり着いた『1982年 私』は、やはり巨大で暗く厳しく、観る者の心を遠慮なくえぐってくる。今まで自分の絵に登場して来た人物たちが、何も描けない鴨居の周りに集まる、手塚治虫スターシステム的切羽詰まった群像図!絵の前のベンチに腰掛け、心ゆくまで心をえぐられまくり、満足してギャラリーを後にする。それにしてもこのギャラリー、フロアから出る扉が斬新過ぎてまるで壁のようで、戸惑うことしきり。

暗過ぎるレンガ壁の室内から出て、梅雨明けの明る過ぎる都会を進む。『八重洲口』に出て、夏の陽を照り返す春陽堂ビル(2014/01/19参照)に暑中見舞いを告げて、八丁堀の「書肆 逆光」(2014/07/22参照)をテクテク目指す。ところが裏町のビル二階を見上げると、部屋に灯りが点いていない。狭い階段をタンタン上がると、ドアは閉ざされガラスの向こうにはカーテンが下げられている…くぅっ、お休みなのか。ところが視線を下に落とすと、そこには小さな黒板が立て掛けられており、『7/19(日)大江戸骨董市に出ています!』と、白と黄とピンクのチョークで書かれている。即座にビルから飛び出し、ビル街を駆け抜け、レンガ造りのガード下を西に抜け、東京駅の南にある『東京国際フォーラム』へ急行する。
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巨大客船のような現代建築の谷間には、三日月型の地上広場が南北に広がり、たくさんの骨董屋・アンティーク屋がひしめいている。月に二回、第一週&三週に開かれているそうだ。終了時間の午後四時まで後一時間だが、もう撤収作業に入っているお店も多い。もはやこの時点で「逆光」さんのことは頭から消え、とにかく古本の影を求めて、露店により造られた通路を縦横に巡って行く。両側に十店ほどが並ぶ通路が十本、五十メートル強の長い通路の両側に露店が続くゾーン、そしてその周囲にへばりつくように露店が固まるゾーンが組み合わさり、およそ二百店ほどが出店しているらしい。紙物を集めたお店、和本を千円前後で販売するお店、古雑誌専門店など、結構紙が目につくのが嬉しい。そんな中で、薄手の古雑誌をまとめて無造作に並べた古道具やさんで手にしたのは、リファイン社「赤と黒 第一巻二號 愛恋感触號」。城昌幸の読んだことがない短編小説が載っていたので、千円だが買うことにする。続いてわりと古本を平台の上に横積みしたお店にも取り憑き、まるで古本屋にでもいるようにしっかりと漁り、朝日新聞社「魔の宴/木村艸太」(裸本)を300円で購入する。こんなことをしていたら、あっという間にタイムリミットとなり、もはや市は終了ムード。しかしなし崩しにだが、古本が買えたことに満足し、一息ついて忘れていた水分補給をする。
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B5判の雑誌に、三段四ページと結構な分量で読み応えあり。すべてはラストの一行のために!痺れる!
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2015年07月18日

7/18東京・本蓮沼 クリーニング綜合センター 三和サービス

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くるくる変わる空模様の下を、メールタレコミを基に外出。『A2』から蒸し暑い地上に駆け上がり、すぐ南の『蓮沼アスリート通り』南側歩道を西に進む。左手に「ゆうけい堂」(2011/03/23参照)跡地を切なく見て、信号のある小さな交差点を越えると、わりと無個性な古い商店建築が連なり、そのうちの一軒に桃色の地味なクリーニング屋さんを発見する。古びたアルミサッシが時代を感じさせ、左端にはめ込まれたブロックガラスが、そんな印象を強めている。ガラス戸にはクリーニング値段表…本当にここに古本が?多少疑いながら接近し、店内をそうっと覗き込む。そこには間違いなくクリーニング屋さんのカウンター。だがその左側では、サンダルなどが安値で売られている。さらに覗き込み、入口右側に注目すると、そこにぞんざいに乱雑に古本が集まり、一冊100円の札が出されていた。確かにこれは、古本が売られている!と大いに喜び、完全にクリーニング屋である店内に無意識に遠慮してしまったのか、入口から上半身だけを中にねじ込んだ奇妙なポーズで、素早く本の背を盗み見て行く。コミック・漫画雑誌・ハーレクイン・ミステリ&エンタメ文庫…見事なまでの雑本天国である。何か買いたいとは思いながら、買うべき本がなかなか見つからない…そんな風にマゴマゴしていると、奥からおばさまが出て来てしまった。焦って昭文社「文庫判 神奈川都市図」を掴んで購入する…まぁ、いつか役に立つ日も来るだろう…。それにしても、このクリーニング屋+古本屋ではなく、クリーニング屋で古本を売っている状況は、口元を緩ませる愉快なビジュアルだな。

板橋区役所前駅まで移動して、近場の古本屋消息確認作業に入る。まずは「坪井書店」(2010/01/09参照)。おっ、盤石に健在。シンプルな店内を一周して、ハヤカワSFシリーズJコレクション「赤い星/高野史緒」を360円で購入。続いて『中山道』をダラダラと北に遡り、板橋を渡って「さくらBOOKS」(2009/08/07参照)を見に行くと、ここは見事に消滅していた。土曜の地元民の人波に洗われながら駅まで戻り、『板橋ジャンクション』下を通り抜け、「いのいち」(2010/01/09参照)の灯が輝いているのを確認する。半地下への階段を下り、床を五年ぶりにギシギシ軋ませ、ちくま文庫「禁演落語/小島貞二編著」を帳場に差し出すと、坂上二郎風店主がボソリ「400円でいいよ」と、気前よく負けてくれた。ありがとうございます!
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2015年07月17日

7/17邪な思いを胸に西八王子近辺で消息を尋ねる

発端は昨日の夕方、西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)に古本の補充に行った時である。帳場で店主・小野氏と果てしない古本話に花を咲かせていると、左壁の幻想文学棚に挿さった、一冊の分厚い本が目に留まった。第二書房「葬儀のあとの寝室/秋山正美」である。ついこの間、西八王子「一歩堂」(2010/02/23参照)の消息を尋ねた時に(2015/05/11参照)、この本を棚に見付け、相場より遥かに安い1500円で売られていたことと、中に帯が挟まっていたことを告げると、「帯は見たことないな。本当にあるのかな?」という話になった。そう言われると、もしかしたら広告や別の本の帯だったような気もして来る。その疑問は次第に心の中で大きく膨らみ、家に戻った後もますます強くなる。ならば確認するしかない!と本日、西八王子に向かってしまったわけである。あの本を見たのは二ヶ月前…もしかしたら売れてしまっているかもしれない…。そんなありえる空振りも覚悟しながら店頭に立ち、まずは強烈な日射しがガンガン当たっている100均店頭棚を、目を細めて見詰める。上段で中央公論社「幾歳月/川崎長太郎」が日干しの刑を受けていたので救出し、熱を帯びた本を携えて店内へ。早速左側の通路棚を見に行くと、おぉ、売れずに残っていた。そして懸案の帯をページを繰って探すと、やった、あった!群青色の帯が『週刊現代が特集!忽ちベスト・セラーの本格的、恐怖小説集!』などの安っぽいコピーを踊らせている。帳場で川崎長太郎と共に精算。実はこのお店には、可愛いくスマートな白黒猫がいる。店主の背後の生活空間にその姿を探すと、窓際の棚の上に行儀よく座り、こちらを黒いまんまるな目で見つめていた。おぉ、とってもかぁいいな。とアイコンタクトを密かに交わし、再びかんかん照りの路上に飛び出る。

そして西八王子の最近とんと開いていないお店、「散田書房」(2012/12/14参照)を見に行くが、今日も見事にシャッターを下ろしてしまっている…う〜ん、もはやこのお店に入れる機会は失われてしまったのか…それでもまだ諦め切れない気持ちが微かにつながり、また、また、もう一度、と思いながら駅方面へと戻る。

さらに続いて、駅南口から南に向かい、丘のような低山を越え、高校野球で盛り上がる八王子市民球場を掠め、谷底に長々と下って、山田の「池畑書店」(2009/10/17参照)。ロッジのような姿は相変わらずだが、今日は残念ながら店を閉めているようだ。一階の入口を取り巻く店頭棚をビニールカーテンで囲い、大きな板でガードし塞いでいる…しかし現役感は満点!とその健在っぷりを確信し、バスに乗って八王子経由で帰路に着く。

西荻窪で途中下車し、「葬儀のあとの寝室」について「盛林堂書房」に結果報告に向かう。小野氏が、私より上位の古本修羅のオーラを放つ青年と談笑中のところに割り込み、帯の現物を披露。すると二人で「帯あったんだ!」と喜び、大いに珍しがってくれる。最初は単純にセドリして売るつもりだったのだが、そう喜ばれ珍しがられると、何だか手放したくなくなって来た。というわけで思い邪に、しばらくは己のものとすることに決める。その代わりと言ってはなんだが、帯のカラーコピーを喜んで承諾。現在お店に並ぶ帯ナシの「葬儀のあとの寝室」に巻いて販売(もちろんカラーコピーであることは明記し、それによって値段が上がるわけでもない。簡単に言えばマニアックなオマケである)するつもり…と言うことだったのだが、それを見た件の古本修羅青年が、たちまちその本を購入することになった! おぉ、何だか面白い現場を見てしまった。そして買取してもらわなかった分、帯がたちまち役立って良かったと、素直に思う。それにしてもカラーコピーとは言え、帯一枚がこれほどの劇的な効果を生み出すとは…。
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写真は本物の帯とカバー。帯、おび、オビ!…あぁ、古本にとって“帯”がこれほど重要な位置を占めるとは、帯の開発者は考えたことあっただろうか…絶対にないはずだ!
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2015年07月16日

7/16エーワンの行方とドエルの変化

八年間使った携帯が突然破損し、うんともすんとも言わなくなる。仕方なく機種変更をするが、データの移行がまったく出来なかったので、暗澹たる気持ちになる。頭の上に不安の黒雲を渦巻かせ、南阿佐ヶ谷駅から『青梅街道』南側歩道を西進。この先にチェーン展開が風前の灯火と思える「エーワンブック」(2009/11/09参照)の一店があるはずなのだが…だが、かつて黄色い看板を掲げていたお店があった場所には、新しいマンションが建てられており、お店の痕跡は何一つ残っていなかった。

南阿佐ヶ谷まで戻り、住宅街を南北に切り裂き永福町方面へ。途中ついでといった感じで、中間地点辺りの松ノ木住宅近くにある「AMANAYA AI2」の、ちゃんとビニールで雨対策が施された店頭棚を覗き込む。潮文社「念力入門/田宮馨」(“超能力”ではなく“念力”というのがたまらない!)偕成社「黒い矢/柴田錬三郎」(カバーなしだが、こんなところでこんな本が買えるとは…)を計600円で購入し、頭上の黒雲を少し吹き飛ばす。

さらに現れたり消えたりする風雨の中をテクテク歩いて、『井の頭通り』沿いにある「エーワンブック永福町店」(2011/01/21参照)に到着。おっ!ここは健在!営業が午後二時からなのでシャッター半開き状態だが、しっかりと現役なのである。…これで残るは上石神井のお店だけか…。

というわけでお店には入らずに駅方面へ戻り、ここまで来たなら最近の「ドエル書房」(2010/10/23&2011/06/19参照)もしくは「ドエル堂」(2013/08/20参照)の様子も偵察しておこうと、なんだかキレイになった『永福町北口商店街』を北へ進む。すると高圧電線鉄塔下の「ドエル堂」は、またも想像のナナメ上を行く変貌を遂げていた!料理屋感は少し無くなり、新たな白い日除けが、「ドエル書房」の看板文字下から飛び出している。そこには『タバコ』『ドエル書房』『ドエル堂(写真・不動産・割烹・生花)』と書かれていた…最後の業種の組み合わせは凄まじいものがあるな…。店頭を見ると、不動産物件を張り出す大きな立看板が置かれ、ドアには『只今準備中』の札が下がっているが、入口ドアの向こうは事務所然としており、何人かの人がパソコンを開いて働いている。そして奥の店舗部分には、まだちゃんと古本棚があるのを確認する…あれは、まだ買えるのだろうか?あぁ、いつの日かまた、この想像を超える空間に飛び込まなければ…。
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そして話は昨夜に戻る。それは打ち合わせ飲みの帰り道。酔っ払って「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)の店頭棚に張り付き、未練がましく仙花紙本の残りを漁る。そしてフラフラ引き込まれるように店内にも入り、またもや仙花紙本棚に食らいつく。するとアルコールに負けずに、そこから素晴らしい一冊を掴み出すのに成功する。改造社の新鋭文学叢書「労働市場/橋本英吉」である。難ありで515円となっているが、扉に蔵印と裏表紙見返しに記名と蔵印の半消しがあるだけなのである。古賀春江装幀の表紙を撫で、家に持ち帰る。気付けばこの『新鋭文学叢書』が、段々と集まり始めている。まだ全二十八冊のうちの、たった六冊(内一冊はダブりである)だが、それでも同じ表紙を畳の上に並べてみると、収集欲がチクリと刺激され、なんだか夢が広がるのだ。上田で600円で買った「放浪時代/龍胆寺雄」、龍ヶ崎で100円で見つけた貸本の「辻馬車時代/藤沢桓夫」が、特に愛おしい二冊であるが、もはやこの表紙を見ただけで、この新感覚派文学&プロレタリア文学の多い叢書を、無条件で受け入れてしまう自分がいつしか出来上がっていた。長い道のりになると思うが、これからも安値のものを見つけて、地道にコツコツ収集して行くことにしよう。
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2015年07月14日

7/14神奈川・西横浜 三田商店

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昼食を摂って表に出ると、強過ぎるコントラストが、街を残酷に切り刻んでいる。しかしその光による区分が、街の異なる表情を浮かび上げ、正反対だがほんの少しだけ雪の日のような驚きを、与えてくれている。相鉄線の現代的な駅舎から外に出ても、そんな印象は変わらない。剥き出しの跨線橋を渡って、線路の向こうの南口。『西横浜交差点』から街をナナメに切り裂く直線道『水道道』を南東に進む。途中信号を通過して、そこから二本目の角に雑草生い茂る空地のある脇道を西へ。するとすぐに開けた三叉路があり、南に入ってすぐのモルタル建築一階に、大倉山から移転して来た元「BOOK APART」(2013/11/26参照)が新規開店していた。『7月11日オープン』の立看板があり、大きな黒い矢印が入口であるサッシ扉を示している。前店舗が入っていた妹島和世設計の建物に比べると、えらく庶民的な店構えになった。まぁこっちの方が遥かに好みだなと思い、カチャリと中に入る。するとそこは白く四面を塗装し、白木の棚が設けられた充分なお洒落空間。正面右奥のカウンター帳場で、「BOOK TRUCK」(2012/05/26参照)で名を馳せる店主・三田氏がユラリと立ち上がり、「いらっしゃいませ」と迎えてくれる。入ってすぐ右側には白い大判のファッション&カルチャー雑誌が集まり、帳場上のカルチャー・食を経由して、奥壁の「暮しの手帖」など再びの雑誌棚に到る。左壁には六段×八列の棚が控え、海外文学・日本文学・絵本・児童文学・現代思想・セレクトコミック・旅・紀行・建築・写真・アートをこだわって揃えている。値段は普通〜ちょい高。今は古本だけが販売されているが、ゆくゆくは“商店”の名に相応しく、食品や雑貨も扱うらしい。而立書房「シュールレアリスム宣言/加藤直」を購入。しかしこの相鉄線沿線は、古本屋さんが消失する一方だったのだが、ついにそれに抗うように新たな古本屋さんが出現した!西横浜の裏路地というなかなかシブいロケーションだが、切なる繁盛を願いたい。
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2015年07月13日

7/13品川区で商店街の蜘蛛の巣に捕らわれる

下神明にいつの間にか出来ていた、午後三時くらいから開くらしい、漫画本の古本屋さんを見に行くことにする。『三間通り』の「星野書店」(2009/06/11参照)でうだりながら本を眺めてから、件のお店の前。しかし開いていない。その上以前はあった、新しいお店の小さな看板もなくなっている…これはいったいどうしたことか。俺は誰かに、からかわれてでもいるのだろうか。釈然としない思いを抱えながらも、まだ、もう一度、見に来てみよう。と希望は捨てずに、脳内の再調査キャビネットに放り込んでおく。そこからテクテク歩き始め、動向の気になる戸越公園駅から北に進むと見えて来る「いづみ書店」(2008/11/24参照)にたどり着くが、2015/06/10訪問時と同じ状態で、これはもう、営業していない雰囲気が満ち満ちてしまっている。街の小さな古本屋さんの灯が、いつの間にかまたひとつ、フッと消えてしまっていた…。

ここからは、戸越公園駅と戸越銀座駅を勘違いしてしまい、歩いて武蔵小山まで行こうとズンズン西に進んで行ったら、見たこともない商店街の奥地へ奥地へと入り込んでしまう。この辺りは、長く巨大な地元商店街が、網の目のように、蜘蛛の巣のように、つながり合っているのだ。ちょっと焦りはしたが、まぁ最終的には何処かの駅にたどり着くだろうと、楽観して歩き続ける。二十分ほど歩くと、見覚えのある商店街に差し掛かるより前に、「源氏書房」(2009/04/16参照)を発見し、己の位置をようやく把握する。中に入って古本の匂いを嗅ぎながら少し涼み、日本文芸社「幽玄と怪異の奇譚18話/福馬謙造」白鳳社「西條八十詩集」を計500円で購入する。

暑さが体力と思考を削り取って行く。しかしまだまだそのまま商店街を西進して行くと、旗の台駅近くの「みやこ書房」(2009/04/17&2013/10/03参照)がさらに古本屋さんから離脱し、リサイクルショップだけでは飽き足らず、何でも屋まで始めていることを知る。…このお店は、いったい何処に向かっているのだろうか。その迷走性は、「ドエル堂」(2013/08/20参照)に比肩する気が…。
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電車を乗り継いで武蔵小山で下車。もちろん向かうは「九曜書房」(2009/03/26参照)なのだが、ついこの間読了した田中小実昌「イザベラね」で、今歩いているこの高校のグラウンド脇の細道が、コミさんも通ったこの先にかつてあったストリップ劇場への道のりであることを知り、多少興奮しながテクテク。しかし「九曜書房」はお休みで、せっかくの興奮も急速に醒めてしまう。

疲れた足を引き摺って阿佐ヶ谷に帰り着き、帰り道途中の「銀星舎」(2008/10/19参照)で小休止。創元推理文庫「人生の阿呆/木々高太郎」を800円で購入しつつ、ダンナさんと坂戸の古本屋話。何とあの「BOOK ONN」(2009/07/19参照)を知っていたので「あのお店、『坂戸店』てありましたが、他もお店はあったんですかね」と聞くと「ないでしょ」と即答。スッキリしました!

お知らせひとつ
京都の老舗リトルプレス「ぎをん No.223夏期号」に『祇園の路地奥の古本屋』なる一文を寄稿しました。祇園の街をさまよいながら、最終的に深部の古本屋さんをツアーしています。祇園のお茶屋さんに置かれているそうなので、どうにかしてお手に取っていただければ幸いです!
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2015年07月12日

7/12埼玉・坂戸 蔦文庫

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濃緑の稲の葉が、剣山のように尖るのを車窓に見ながら、東武東上線で北上。駅北口に出て、よさこい祭のゲートから始まる欅並木の『坂戸駅東通り』をちょっと北へ。二本目の広い脇道『あけぼの通り』に入り、東に真っ直ぐ進んで行くと、護岸された飯盛川にぶつかる。かつてその対岸には「BOOK ONN 坂戸店」(2009/07/19参照)があったはずなのだが、今はコンビニに成り果てている…誠に残念である。そのまま交通量の多い県道に合流し、南東へと歩を進める。『坂戸陸橋』の下を潜ると、左手に天文台ドームのような屋根を持つ体育館が現れ、中学校や高等学校が道沿いに続く。その対岸である、中学校の正門斜向いに、メールタレコミで知ったお店が、置き忘れられたように、時の淀みを作り出していた。軒の古びた看板、くたびれた緑の日除け、文房具の看板、窓ガラスに貼られた騒音への抗議…だがしかし、何よりもこの目を惹き付けたのは、サッシの向こうに見える、キッチリと古本の並ぶ棚であった。興奮を抑えて戸を開けると、電子メロディがピロピロリ。即座に奥に人の蠢く気配が生まれ、和菓子職人のような白衣を着た、川端康成的オヤジさんが団扇片手に姿を現す。会釈してコンクリ土間の小さな店内を探索する。壁際にはスチール棚が置かれ、中央に上部が棚で下部がラック&平台の棚。これが店内を縦に二分し、右が新刊&文房具雑貨ゾーン、左が古本ゾーンの構成となっている。左壁棚には実用ノベルス・児童書・日本文学文庫・海外文学文庫・新書が並び、奥壁に学術系古書が集まる。中央棚には大衆小説・推理小説・時代小説・官能小説・漫画・雑誌が集まる。店内は古びているが荒れてはおらず、本は昭和四十年〜五十年代が中心で、時間の停まり具合が“何かあるのではないか?”という予感を絶え間なく走らせる。実際は本の数はそれほど多くなく、冷静に見るとそれほどでもないのだが、昭和タイムカプセルの魔法はとかく甘美なのである。裏表紙見返し下部に書かれた値段は激安。本を二冊抜き取り、右側ゾーンに入って、オヤジさんの視線に晒されながら棚を見て行く。古ぼけた新刊書・絵本・新潮文庫・岩波文庫、それに蔦文庫が出した新刊も並ぶ。こちらで特に目を惹くのは、棚の所々に横積みされたプラモデルであろうか。青樹社「屈辱の太陽/高村暢児」番町書房「愛猫記/吉行淳之介・伊丹十三ほか」を購入。包装はかなり劣化した文庫カバー(店名入り)で、のり巻き方式。こういうお店が残っていたことも、そしてタレコミにより出会えたことも幸せな、日射しの強い日曜の午後。部活に勤しむ子供たちの声が、高いフェンスと道路を越えて届いて来る。
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2015年07月10日

7/10神奈川・白楽 Tweed Books 真店!

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崖下のホームから跨線橋を渡り、裏路地然とした小さな西口に出る。緩い坂道の駅前通りに出て、この街の古本屋さんを目指すのなら、いつもは南西の商店街を下るのだが、今日は北東に足を向け、緩くカーブし緩く上る商店街を進む。商店街はどこまでも続く。坂の頂上に達すると、遥か妙蓮寺まで続いているようにも見える。結局駅から300m弱も歩くと、左手集合住宅一階に連なる店舗群の右端に、本日オープンした古本屋さんが、午前中の強い日射しの中に輝いていた。同じ白楽にあった期間限定仮店舗(2014/12/11参照)を脱ぎ捨て、堂々と再びこの地に、真店舗として覚悟を決めて、腰を据えたのである。表には立看板と小さな100均雑誌ワゴンが二つ、それに100均文庫ワゴンがひとつ置かれている。隣りで身代り地蔵の幟が、明るくはためくのを目の隅に捉えながらお店の中へ。するとそこは広々として見通しの良い、何かの居抜き空間!…元は呉服屋だろうか?入口左には函入り文学本が目立つ300均単行本棚があり、シンプルな左壁面はギャラリーとして使用されている。その下の低めで妙に落ち着いた長い平台には、内外新旧のファッション雑誌がどっさりと並ぶ。フロア中央には、ちょっと野暮ったいほど立派な逆L字型平台が鎮座し、ファッション雑誌・紙物・ファッション実用ムック・ビジュアルムック・美術図録が飾られ面陳され、棚にも収められている。右の壁棚には日本文学・詩集・海外文学・幻想文学・オカルト・ミステリー・郷土・片岡義男・世界各国・本&古本と並び、奥の本棚二本にこのお店の魂であるメンズファッション・イギリス・レディスファッション・少女ファッションが、レア本を含め固められている。また左奥にはコの字型の小空間があり、音楽・映画・セレクト文庫・哲学・思想・建築・写真がピッチリ収まっている。以前のお店と比べると、雑誌や通常の古本屋部分が増えた印象。値段は普通である。そして奥にはオープンな六畳床の間付きの畳空間が存在し、そこを帳場と決めた、クルクルパーマでトラッドスタイルの店主・細川氏が座っていた。聞けばここは元は器屋さんとのこと。どおりで棚が丈夫で重厚で和風なわけだ。新開店の祝い酒を振る舞われながら、電光石火の早業移転や、このちょっと変わったお店の生かし方未来予想図などを、お互い思うがままに語り合い、気が付けば小紙コップの祝い酒が二杯目に。午前中の古本屋さんで、俺は何を酔っ払っているんだ!と己を曖昧に戒め、春陽文庫「わが恋やまず/北条誠」未来社「詩はいかにつくるべきか/マヤコフスキー」を計1000円で購入する。それにしてもかつてここに売りに来た「くろす・としゆき資料」(2015/01/14参照)がちゃんと販売されていて、しかもしっかり売れていて、ちょっと安心した。やっぱりこの『BROOKS BROTHERS』の広告は、こういう場所にこそ良く似合うものである。
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2015年07月08日

7/8東京・目白 新エスケースタンプ

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ホームドアに囲まれた島式ホームは、何だか大きく長いボートの底を連想させる。『目白通り』を前にする改札を抜けると、ちょうど遠くの鉄橋を、西武池袋線が雨に霞みながら、ノロノロと渡って行く。視線を右に移すと、そこにはレンガで化粧された新しい商業ビル『TRAD MEJIRO』の姿。学習院前の信号まで行くのがもどかしくて、『目白駅前地下道』を潜って、通りの対岸へ渡る。するとそこはもうビルの前。通り側から、かなり低速なエスカレーターに乗って二階に着くと、右奥に目指して来た切手&古銭屋を発見する。以前この地に建っていた古い駅前デパート『ショッピングプラザ コマース』の中にあった時は、まるで“紙物釣り堀天国”的な様相を呈していた、楽しい楽しいお店であった(2012/04/15参照)。だが現在のお店に近付くと、それはまるで高級店。ウィンドウやガラスドア越しに店内の様子をうかがうと、以前より遥かに小さくなり、猥雑&雑然さは影を潜め、ファイリングされた切手や古銭のみが棚に並んでいる状況…あのパンフやポスターや古本やスチールなどが混ざり込んでいたのは、広さ故であったのか。結局お店には入らず、下りの低速エスカレーターにたたらを踏んで、再び雨の路上に出る。

線路の上を越えて裏通りに入り、しんと静かで薄暗い「貝の小鳥」(2009/06/14参照)へ。ポプラ社新日本文学少年少女全集「宇野浩二集」(函ナシ)を300円で購入。そしてさらに、雨中の行軍を決意して、洋服をジトジト濡らしながら東へ東へ歩き続け、この間の「サンシャイン古本まつり」(2015/06/26参照)で棚造りを見て以来、気になっていた「青聲社」(2011/10/17参照)に到着する。おぉ、ちゃんと開いている!と喜び中に入ると、遠くの帳場に座る店主に早速発見され、ご挨拶する。良く市やイベントでは顔を合わせていたのだが、実はお店に来たのは開店日以来の不義理っぷり。しかしこの四年の間に、いつの間にか店内の半分に置かれていた古道具は隅に追いやられ、代わりに古本棚と古本が蔓延っているではないか!そんな古本カオスな状況に喜びつつ、入口近く以外は結構雑本的な並びを見せ、さらに古書が多く混ざり込む棚を冒険して行く。BGMはクラシック+それに合わせた店主の口笛である。未整理本の山や店内に引き込まれた自転車をものともせずに、光文社「山窩物語 鷲の唄/椋鳩十」全國書房「アヴェマリア/谷崎潤一郎」都市出版社「都市No.4」(中平卓馬のグラビア、ほぼベタの都市写真にビリビリ痺れる)を探し出し、計1100円で購入する。やっぱり探し甲斐があって、所々に意外な本が挟まっていて楽しめた。ここはこれから、ちゃんと定点観測することにしよう。そうしよう。帰りももちろん『目白通り』を歩いて進む。止みそうにもない雨をビニール傘で受け止めながら、時折南に延びる急角度坂道から見通せる、早稲田方面に落ち込む谷底の光景を唖然と見詰め、東京という都市の恐るべき高低差を、改めて実感する。
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2015年07月07日

7/7「イナズマ娘。」に哀悼の意を

最近懸命に尋ね回っている、気になる古本屋さんの消息であるが、中でも一際気になっているお店の消息を確かめに、武蔵小金井に向かう。北口に出てユリノキ並木の『北大通り』を西に歩き続け、あの三叉路を右に入れば「イナズマ娘。」(2014/11/18参照)が見えるはず。去年訪れた時はすでに休店中で、店内に入ることは叶わず、衝撃的な貼紙がされていたのだ。『休店のお知らせ 先日、癌告知をうけました。入院して手術して、元気になり、開店して皆様の笑顔を見られるように努力します。それまで少しの間、さよならです。』とあったのだ。あれから九ヶ月。果たして店主は病を克服し、元気にお店を開けているのだろうか………。だが、店前で、いや元店前で、呆然としてしまう。そこにあったのは、濡れた赤土が剥き出しになった、分譲地。恐ろしいほどにポカッと、何も無くなってしまっている、寒々しい事態。
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あのお店は、店内の棚に入っていた古本は、こつ然と消え去ってしまった。目の前には、あまりに残酷な現実が、ただ静かに広がっていた。いや、お店に戻ることは叶わなかったが、まだ店主は、闘病の最中なのかもしれない。一度も入ることの出来なかったお店だが、一瞬でも擦れ違えたことを感謝し、哀悼の意を捧げ、来た道を足取り重く、駅の方に引き返す。

ショックは受けつつも、他の古本屋さんを見ながら歩き続ける。「中央書房」(2009/03/11参照)は定休日で残念ながらシャッターアウト。通販専門古書店になった「伊東書房(2013/12/17参照)は、いつの間にか『小金井通り』に面したシャッター前に大きく厚い板を打ち付け、『学術系専門書ネット通販』とある看板を掲げていた。そのまま道をさらに下って「古本ジャンゴ」(2008/12/13参照)。たくさんいる立ち読み客の間を擦り抜け、筑摩書房「ある迷宮物語/種村季弘」を600円で購入する。

※お知らせ
エッセイもどき『神田を小さく冒険する』を連載中の「かんだ・夏・219号」が、そろそろ神田の街に並び始めています。今回の冒険の舞台は神田駅高架下!南口近くのミニ九龍城のような飲み屋&スナック魔窟を、勇気を振り絞って冒険!どうか、手に汗握ってご笑覧下さい。
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2015年07月06日

7/6『わんぱく探偵団』に昭和の東京を見る

昨日「たけうま書房」(2013/03/29参照)にて購入した絶版VHSビデオ「わんぱく探偵団」(原作・江戸川乱歩、虫プロ製作、昭和四十三年放映のモノクロアニメ。現在は日本コロンビアからDVD BOXが発売中)を、ビデオデッキにガチャコンと飲み込ませる。モニターに、ノイズの散らつく灰色の画面が浮かび上がり、カウンターが数を増やして行く。特に異音もしない。よし、ちゃんと見られるようだ。しかし何しろほぼ五十年前のアニメだ、そうたいしたことはなかろう。最初から、高を括ってギクシャクした白黒画面を注視する。だが、そこに流れたのは、予想以上の乱歩少年探偵感あふれる未知の世界!その再現性の高さに、唖然としながらたちまち心を奪われてしまう。元々子供向けアニメなので、わんぱく探偵団(少年探偵団)が活躍するところは、当時の子供感丸出しなのだが、怪人が様々に暗躍・活動するシーンはすこぶるクオリティが高い。ちょっと荒く精緻に描かれた東京の街と夜、特定出来る建物たち、スタイリッシュな明智小五郎(声は江角英明)と予告文の読上げやレコーダーに吹き込まれた声が異様にローテンションな二十面相(声は若山弦蔵)の対決、その場面を盛り上げる山下毅雄のサスペンス音楽…常に恋い焦がれている、名探偵と怪盗のいる“昭和の都市”が確かにここにはある!と興奮。乱歩の映像化作品だからと言って、手放しに喜んでいるわけではない。二次制作物が、原作の世界観をガッチリと捉えていることに、感心しているのだ。そしてそれは、第2話「生きていた死神」の代わりに何故か収録されていた「青銅の魔人」で決定的となる。夜のネオン煌めく銀座の交差点で立番する警察官。しかしそこは午前四時ともなると、人影は絶え、警官は「まるで墓場だな」とつぶやくほどの静寂に包まれる。すると大時計台を持つ『中尾時計店(もちろんモデルは服部時計店)』一階の暗闇から、妙な動きの男が現れる。ギクギクと動き、キイキイと軋んだ音を出し、目の前を通り過ぎて行く。しばらくするとお店の方から泥棒騒ぎの声が上がったので、警官は「もしもし、待って下さい」と職務質問。たちまち体中から時計がジャラジャラとあふれ出し、怪人の顔は鎧のようなマスクであることが分かる。追われると同時に怪人は、四つん這いになって真夜中の銀座を、ガチャガチャと疾走するのだ。これは完璧だ!あいつは青銅の魔人だ!都市の中で物語が輝いている!と今まで見たことのなかった乱歩世界と東京に、断然陶酔しのめり込んで行く。あぁ、まだこんな風に未知の世界への扉が開かれることがあるとは、ビデオを仕入れた「たけうま書房」さんに大感謝である。
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※左がポプラ文庫表紙の青銅の魔人で、右がパッケージ裏のアニメ青銅の魔人。

と言うようなことばかりをして一日を過ごしていたわけではない。今日は仕事の都合上家からあまり離れられなかった。だからこういう時は、家に一番近い古本屋さんに行くに限ると、雨の中をいそいそと「古本ブック流通センター」(2008/08/09参照)へ。相変わらずこのお店に古本を買いに来ているのは、私だけなのではないかと半ば確信し、誰もいない本の傾いた店内を彷徨う。しかし間をあけて訪ねると、新しい本らしきものが少し入っていたり、通路がキレイになっていたりと、微妙な変化がちゃんとあることに気付く。だがそれでも、この棚のほとんど動かぬ古本屋で本を買い続けることは、訳の分からぬ自分への挑戦でもある気がしている…。出版協同社「艨艟の名を語る/斎藤忠」を500円で購入しつつ、店番の奥様に、ちょっとお店の秘密を聞いてみる。お店は三十年ほど前からここで営業しており、父上が始められたとのこと。店内所々にある古い本は、父の代から引き継いだもので、こだわりのある父の高い値が付いたままになっている(彼女はそれをビシバシ値引きしてくれる)。というようなことを、ちょっとだけ教えていただく。この街の外れにある小さなお店も、大事な歴史を持っているのだなと気付かされた、長い雨の降り続く午後四時。
posted by tokusan at 20:59| Comment(10) | TrackBack(0) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする