2015年11月30日

11/30東京・荒川車庫前 リサイクルSHOP

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午後にゆるゆると外出。JR大塚駅で懐かしい黄色いボディバージョンの都電荒川線に乗り換え、東京の高低をゴトゴト走り抜けて行く。停留所である降車専用ホームに降り立ち、北側の線路沿いの道へ出る。東西直線線路を中心に、北にも南にも道が沿っているので、線路上の見通しがすこぶる良い。東に向かって歩き始めると、すぐに『荒川車庫』が視界に入り、線路から延びたレールが、道路の上に美しい弧と鉄の輝きを描き、車庫内に消えて行く。歴代の都電が野外展示された『都電おもいで広場』を柵越しに目を細めて眺め、さらに東へ。すると行く手には信号のある交差点踏切が現れる。その北西角地に、白い二階建ての元クリーニング屋さんがある。だがその窓には『リサイクルSHOP』の赤い文字が。タレコミで知り、以前も訪れたお店なのだが、そのときは残念ながら閉まっていた(2015/10/30参照)。しかし今日は開いている!黄色い日除けの店名は塗り潰され、その下の店頭を見回してみても、店名らしきものは『リサイクルSHOP』の文字しか見当たらない。だが確かに、居並ぶ物品の中に古本は紛れ込んでいる。500均暮らし系ムック棚、それに200均新書カゴ。カゴの隣りには石鹸が集められ、爽やかな芳香を放っている。本を漁りながら中の様子をうかがうと、お店と言うよりはほとんど倉庫か作業場のようである。一冊を店内へのパスポートとして掴み、失礼にも開くとは思わなかった自動ドアで中へ。物品や古道具類や電気製品などが、雑然と混ざり合い積み上がり、恐らくは商品なのだが、もはやそうは思えぬ光景を生み出している。その物品の山で近寄れぬ三本の本棚が左壁際に置かれている。遠くから眺めると、歴史・郷土・古銭・日本刀・産業の本が多いようだ。山の中には社史・歴史・コミックなどが散在している。結局そんな状況なので店内では何も手が出せずに、真空管の組み込まれた古い家電と格闘する、丸刈り黒ブチ眼鏡の男性に精算していただく。ちくま学芸文庫「マクルーハン/W・テレンス・ゴードン」を購入する。そして隣接する下町のパン屋さん然とした『鈴や製パン店』で、あんぱんとあげクリームパンを購入。歩きながら齧り始め、しっとりとした優しい生地の感触を口中で味わいながら、帰路に着く。

寄り道して高円寺で途中下車。「都丸書店」(2010/09/21参照)『中通り』側外棚から大正四年十五版の警醒社書店「順禮紀行/徳富健次郎」(裸本。徳富が伊香保で、ふと聖地(エルサレム)にキリストの足跡をたどりたくなり、ついでにトルストイの顔を見たくなり、“ザ・思い立ったが吉日”的に旅立つ四ヶ月の記録である。明治時代にこの発想はかなりスゴい気が…)を300円で購入し、そのまま店内を通り抜けガード下通路に出る。「藍書店」(2014/01/14参照)では大壁棚・中壁棚からポンポン抜き出し、講談社文庫「人外境通信/中井英夫」新潮小説文庫「秘書/山田風太郎」みすず書房「ゲルマン,ケルトの神話/トンヌラ、ロート、ギラン」駸々堂書店「小鳥の飼ひ方と巣引の秘訣/浪華飼鳥倶楽部編」を計400円で購入する。ガード下から脱出し、そのまま賑わう夕方の『庚申通り』を北上して「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)に到着。双葉文庫「怪談ミステリー集/中島河太郎編」日本出版協同株式会社「柔道千疊敷/石黒敬七」を計550円で購入し、ウキウキ楽しい古本寄り道を終える。
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2015年11月29日

11/29東京・梅ヶ丘 tenonaru

昨日の岡崎武志氏&「盛林堂書房」(2012/01/06参照)との古本市は、開始と同時に、引くほどの盛況!以降もブラブラとお客さんがひっきりなしに現れてくれたので、楽しく忙しくにわか古本屋さんとして日中を過ごす。夜は二階に上がり、集まっていただいた愛すべき酔狂な三十人弱を前に、ひたすら古本屋の写真を披露!最後には『古本屋クイズ』まで飛び出し、奇妙な疲労と静かなる熱狂に取り巻かれ、愉快な古本屋まみれの一日を終える。古本をお買い求めのみなさま、新刊をお買い求めのみなさま、スタンプ全捺しを求めるみなさま、トークを静聴していただいたみなさま、ありがとうございました!…さぁ、古本が売れたとは言え、売れた量より遥かに売れ残ったこの古本たちをどうするかな…。
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古本市開始五秒前。シャッターを突き破って飛び込みかねない古本神&古本修羅の足が、シャッターの向こうに見え始める。あぁ、まるで映画『裏切りのサーカス』で、開くシャッターの向こうで睨みを効かすベネディクト・カンバーバッジが、大勢いるような素敵な光景!
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古本屋クイズの景品として配られた色紙の中の一枚(画・岡崎武志)。ホームズをモチーフに描いていただいたので、正直私が一番欲しかったです!

明けて本日は、午前中からブラリブラリと歩いて荻窪へ向かい、「ささま書店」(2008/08/23参照)にて宝文館ラジオ・ドラマ新書「青いひとで」京北書房「駒鳥夫人」共に菊田一夫、誠文堂新光社「思い出の三十年/原田三夫」を計735円で購入する。店頭にはすでに大量の古本が詰まった袋を持った古本修羅がチラホラ…どうやら本日限りの盛林堂の驚異の『100均祭り』をすでに経由して来たらしい、とにかく重そうな勇姿である。こちらはすでに出遅れているので、余裕綽々とさらにブラリ歩いて西荻窪「銀盛会館」へ。完全に『兵どもが夢の跡』だったのだが、100冊を購入している古本神の新たなる精算伝説を、幸いにも目撃したりする。こちらはかなり細々と、桃源社「巷の王様/宮本幹也」(裸本)岩波書店「歴史的現実/田邊元」河出文庫「天体嗜好症」「弥勒」共に稲垣足穂を計四百円で購入し、夢の跡でもそれでもまだ戦場と化している会館を後にする。続いて電車を乗り継ぎ小田急線・梅ヶ丘駅へ。

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南口に出ると、端に地蔵尊のある細長い駅前広場。まずは東に「梅丘商店街」を進み、不動産屋や家具店のある四つ角でガクッと南へ。大きな『梅丘商店振興組合』の看板が外灯から下がる商店街を、真っ直ぐ南に進んで行く。二つの十字路をやり過ごし、商店街から住宅街の圏内に移り始めたと感じる右手に、目指すお店らしきものが見えて来た。白い二階建てアパートの一階端にある、通路のように慎ましく、洒落た週末営業の中古レコード&古本店である。小さな入口デッキに近付くと、100均単行本箱と100均カゴが早速お目見え。一冊掴んで木床の店内に入り込むと、左の明かり窓から、白い陽光が降り注ぐ通路的空間。右にレコード箱や古着が集まり、左壁沿いに古本の入ったラックと本棚が置かれている。女性客がひとりいるのだが、奥の梅酒の置かれたカウンターの向こうには、誰の姿もない…と思っていたら、表からニット帽&丸眼鏡のホンワカした女子がスススと姿を現し、カウンターの向こうに収まった。本は新しいものばかりだが、量はなかなかしっかりとある。エッセイ・ノンフィクション・暮らし・本&本屋関連・音楽・サブカル・コミック・映画・写真・食・旅・日本文学・海外文学・ルポ・思想などが、趣味性高く並んでいる。値段は安め〜普通。ボイジャー「木で軍艦を作った男/近藤司」集英社「メモワール 写真家・古屋誠一との二〇年/小林紀晴」を購入する。梅ヶ丘は「ツヅキ堂書店」(2008/10/08参照)が無くなって以来、長らく古本屋不毛の地だったと思われるので、小さく洒落ていながらも、このようなお店がいつのまにか出現していたのは、大変に喜ばしいことである。

せっかくここまで来たので、沿線沿いの近場をちょっとパトロールして行くことにする。祖師ヶ谷大蔵では「祖師谷書房」(2009/03/05参照)までズンズン歩き、改造文庫「短歌集/石川啄木」ポプラ社文庫「名探偵ホームズ 怪盗の宝/ドイル作 山中峯太郎訳」を計600円で購入。そのまま駅の南側に出て「文成堂書店」(2012/09/11参照)を偵察に行くが、サッシの向こうにカーテンを厚く閉ざし、敢然とお休み中。思えば長らくここが営業している姿を見ていない。サッシに古本市のポスターなどが貼られているが、いつの間にか日除けが消失してしまっている。そしてこの微妙な営業感の無さ…これは、もしかしたらもしかするかもしれない…要経過観察だな。続いて経堂に向かい、舐めるように「大河堂書店」(2009/03/26参照)の店頭と店内を精査する。すると壁の如く店内中央にそそり立つ文庫棚で、佐左木俊郎の農民文学文庫を発見し、古本血流をシュンシュンと早める。新潮文庫「熊の出る開墾地/佐左木俊郎」東出版「院曲撒羅米/オスカア・ワイルド原作 オオブリ・ビアズレイ挿画 日夏耿之介翻訳」を計1300円で購入する。楽しく気ままに古本を買った一日であった。
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2015年11月27日

11/27二度手間三度手間の体たらく

午後に「盛林堂書房」号に迎えに来てもらい、明日の古本市&スライドショー会場である西荻窪『銀盛会館(JR西荻窪南口徒歩5分 杉並区西荻南2-18-4)』一階のガレージに古本をドドッと搬入。…ところが、案の定古本が足りない!去年も似たような状況を体験しているのに、また繰り返してしまった!俺は、何という進歩のない、馬鹿者なのかっ!慌てて家に舞い戻り、またもや家内各所から古本を掻き集め、申し訳ないことに、もう一度「盛林堂書房」号に迎えに来ていただき、本日二度目の愚かな搬入。シャッターを半分下ろし、冷たい風がひゅーひゅー吹き込む中で、値付をして、棚に並べて行く。どうにか作業が終わったのは午後七時半。だが、まだ少し棚が開いているので、またもや家に戻ってから、正真正銘最後の古本準備…つ、疲れた。これを明日の朝棚に収めれば、向かいのちゃんと本が全部の棚にピッチリ収まっていた「岡崎武志堂」や、真ん中に設営予定の「盛林堂」ゾーンに、どうにか対抗出来るはずだ。というわけでみなさま、明日は陽気もまずまずなようなので、ぜひとも駅からテクテク歩き、古本市に遊びに来て下さい!首をググンと長くしてお待ちしていますので、よろしくお願いいたします!

そんな風に一日古本に振り回され、精も根も尽き果てたので、もう後は、表紙の外れている淺原六朗の仙花紙本少女小説を修理してから、最近ひょんなことから安値でこの胸に飛び込んで来た博文館「恐怖の歯型/大下宇陀児」(裸本。しかし竹中英太郎の装幀は、何度観ても飽きないほど極上!)を、ビールを飲みながら読みふけることにする。ただいま昭和初期の新宿通りの雑踏の中で、二重尾行が行われている緊迫した場面。そして明治通りとクロスする所で、一悶着!あぁ、昭和初期に、一度でいいから行ってみたい…。
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2015年11月26日

11/26結束とメルマガ

起床して布団を上げるや否や、今まで横臥していた場所に大量の古本を運び込み、古本市の値付作業に従事する。本の背を上にして並べてから、自家製の短冊を取り上げ、値段を次々書き入れて行く…付けどもやれども終わらないのだが、地道に真摯に値を書き続ければ、いずれはゴールにたどり着くはず。そんな風に、値付けマシーンと化して四時間。昼食を間に挟んで作業終了。続いて本をある程度の大きさに揃え、十本の束を作る作業に…あっ、紐がもう二メートルくらいしか残ってないじゃないか。渋々固まった身体をほぐしながら外出し、紐を求めるとともに、ふとこのままだと三日連続で古本屋に足を踏み入れぬ、恐ろしい事態に陥りそうなことに気付く。そこで「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)にフラリ。店頭で鱒書房の城昌幸を見付けて喜び、店内で前から欲しかった&読みたかった藤子不二雄の「トキワ荘青春日記」が安値で売られているのを見付けて、さらに喜ぶ。鱒書房「五月雨ごろし/城昌幸」カッパノベルス「トキワ荘青春日記/藤子不二雄」青蛙房「しみのすみか/長谷川研三」講談社「Q&American Life/吉成伸幸・後藤健夫」を計1854円で購入する。店主と先日店仕舞いをした「FEEVER BUG」(2015/11/17参照)の話をひとしきり。家に帰って、不器用なので大の苦手な本の結束作業。悪戦苦闘しながら一時間弱で作業終了。よし、これで明日搬入するだけだ〜!終わったぁ〜っ!
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※お知らせ
実は先月今月と『日本の古本屋』のメールマガジンに、連続で新刊二冊のことを書いております。お手すきの時にでもご覧いただければ!
『鉄道路線から捉えた首都圏の古本屋』→https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=2466
『古本屋ツアー・イン・ジャパン ビヨンド』→https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=2523
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2015年11月25日

11/25家中から古本を掻き集める

今日は終日家で仕事を片付けつつ、28日(土)の古本市の準備に邁進する。夜の部のトークの仕込みは昨日真面目に終えたので、後はただただ古本の準備をするだけなのである。しかしこれが尋常ではない量を用意しないといけないので、玄関・台所・居間・仕事場に繁殖している古本山脈に、ひとつひとつアタックし、丁寧にそして大量に本を選んで行く。およそ三時間を費やし、いつもの一箱系や単独フェスより、だいぶ多いだろうと思える量を、早くもうんざりしながらひとつの新たな山にして、作業第一段階終了。…やはり古本は、売るより買うに限るな…そして玄関の古本山脈の高度がかなり下がったようだ…。続いて作業第二段階、値札剥がしや軽いクリーニング作業に入る。…古本屋さんて大変だな。そう改めてしみじみ実感しながら、またもや三時間が経過。あっという間に身体がガチガチに凝り固まってしまったので、第三段階の値付は思いっきり日和って、明日作業することに決める。何、28日に間に合えば良いのだ。28日に。

とまぁこんな風に、着々ノロノロ準備を進めております。当日、昼の部の古本市は、終日レジに張り付いております。「首都圏沿線」&「それから」の新刊販売もありますので、ぜひとも気軽に遊びに来ていただければ。サインやスタンプ捺印(追加の全種捺印も可)などのご用命も喜んで承ります。夜の部の岡崎武志氏とのトークは、お互いに撮りためた古本屋の写真を見ながら進める予定(つまりはトークはほぼ暗闇で全編進行して行くのか?)。昨日その写真の準備を進めていると、自然とテーマが分裂し、『心に残るお店たち』『とても入りたかったお店たち』『古本屋に見える新刊書店』それに『旧江戸川乱歩邸』などとなる。しかしこれが果たして岡崎氏の分も合わせ、二時間で収まるだろうか?と大いに不安になってくるが、まぁ結局古本屋に塗れる夜になるならそれで良いかと、三日後を楽観する。
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〔昼の部〕オカタケ&古ツアのガレージ古本市
■日時:2015年11月28日(土)
■時間:11時〜17時
■場所:西荻窪・銀盛会館1階
〔夜の部〕オカタケVS古ツア 『古本屋写真集』スライドトークショー
■日時:2015年11月28日(土)
■開場:17時30分
■開演:18時
■終演:20時(予定)
■場所:銀盛会館2階
■参加費:1,000円(要予約。下記の『西荻ブックマーク』アドレスからどうぞ)
■定員:25名
■出演:岡崎武志・小山力也
http://nishiogi-bookmark.org/2015/
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2015年11月23日

11/23「お濠端古書店」を弔った後、文学館をツアーする。

ひょんなことから、小田原にある「お濠端古書店」(2009/05/03参照)店主が急逝したことを知り、小田急線に乗ってお店の様子を偵察に行く。まずは『守谷のパン』で甘食を補給して…と思ったら、日曜以外に祝日もお休みらしい。仕方なく手ぶらで「お濠端古書店」の前に出ると、電光掲示板は輝きを失い、シャッターはガッチリと下ろされていた。う…む…、もう一度このお店には入ってみたかった。そして思う存分古本を漁ってみたかった。オカルトと神奈川郷土本と地震本と品切れ文庫の多い、ナナメに奥まる古本洞窟空間を!シャッターの向こうを、目力を込めて透視すれば、古本の奥の奥に理系研究者然とした店主の姿が立ち現れる。恐らくこのお店には十回も入れていないと思いますが、神奈川の南西端で古本をありがとうございました!と、感謝の念を込めて、シャッターに向かって頭を垂れる。
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そのままフラフラと古い街の中に入り込み、「高野書店」(2010/03/13参照)で鳴澤文庫「半峯・春城・逍遥三翁 熱海漫談/薄田斬雲」(昭和四年本の覆刻版)を、古地図の解読に熱中している店主から1500円で購入する。

さらに小田原城と海の方に歩いて『小田原文学館』へトコトコ向かう。屋敷町の中にある、スパニッシュ様式の洋館のドアをガチャリと開けると、三階建ての文学館になっており、現在『川崎長太郎の歩いた路』展が開かれている。美しい近代建築洋館内で、豊富過ぎる写真(『あらくれ会』集合写真に写る岡田三郎の姿に興奮!)と展示の古本に興奮(一番興奮したのは手帖文庫「賣笑婦」!)しながら、上階へ移動して行く。そして三階の一部屋に静かに復元された、物置小屋室内にたどり着く。さらに興奮!一見するだけで、夏は蒸すように厚く、冬は冷蔵庫のように寒くなる代物であることが見て取れる。実物モドキを見られて感動するが、だがそれでも、この展示はやはりキレイ過ぎる気がする。なんだかそれなりに快適な空間に見えてしまうのだ。なるべく実物に近い資材を現地で調達して、見事に再現しているのだが、作家の生活した気配は感じられず、まるでディズニーランドのアトラクションのような、清潔さが漂っているのだ。きっとこんなもんじゃないはずだ、小屋暮らしの厳しさは!ん?…そうか。一番良いのは、現地である海岸沿いに復元して、さらに一泊出来るようにすると、様々なことがリアルに迫って来るんじゃないだろうか。などと学芸員さんの苦労も知らず偉そうに天の邪鬼に思考しながら、表の移築された尾崎一雄書斎も外から眺めた後に、小田原を離れる。
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左が十分の一の小屋模型(二階展示)。右が再現部屋。この二つは写真撮影OKなのである。

続いて町田に降り立ち、『町田市民文学館』で開かれている『日影丈吉と雑誌宝石の作家たち』展を観に行く。中規模の展示だが、資料・生原稿・古本多めで、探偵小説〜推理小説〜幻想小説の世界が混ざり合った、独特な世界を大いに楽しめる。日影の展示も貴重だが、後半の城昌幸の展示(2ケース)もなかなかお目にかかれないものではないだろうか。それにしても、昭和三十年代の毒々しい単行本は、何故これほどに血をざわつかせるのだ!それに人形作家・石塚公昭氏の新作である日影丈吉像!とウキウキしながらたちまち観終わり、所持して来た講談社文庫「狐の鶏」の『ねずみ』の扉に、日影丈吉が描いた挿絵『ねずみ』で作ったスタンプを捺し、文庫を特別な物にバージョンアップさせる。階下で図録も購い、満足して館を後にする。
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図録とねずみスタンプを捺した文庫本。

※再びのお知らせ
いよいよ古本市とトークの日時が迫って参りました。恐らく私は公の場に出るのは、今年はこれが最後となります。なので全力で当たらせていただき、古本屋について熱くしつこく語らさせていただきます。岡崎氏は恐らく私小説的に写真解説し、私の方は閉店したお店や素晴らしい外観のお店について解説することになると思います。他にもお互いの新刊話や、この日限りの『江戸川乱歩邸スライドショー』もあり。十一月の終りに、古本屋のことを頭にいっぱい詰め込んで、十二月を勇ましく駆け抜けて行こうではありませんか!

〔昼の部〕オカタケ&古ツアのガレージ古本市
■日時:2015年11月28日(土)
■時間:11時〜17時
■場所:西荻窪・銀盛会館1階
〔夜の部〕オカタケVS古ツア 『古本屋写真集』スライドトークショー
■日時:2015年11月28日(土)
■開場:17時30分
■開演:18時
■終演:20時(予定)
■場所:銀盛会館2階
■参加費:1,000円(要予約。下記の『西荻ブックマーク』アドレスからどうぞ)
■定員:25名
■出演:岡崎武志・小山力也
岡崎武志氏、古本屋ツアー・イン・ジャパン小山力也氏のこれまで撮りためた日本全国の古本屋写真を大公開。お互いの古本屋写真を見ながらトークバトルを繰り広げます。いまはもう閉店してしまった幻の秘蔵古書店写真も多く飛び出します。
http://nishiogi-bookmark.org/2015/
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2015年11月22日

11/22神奈川・日本大通り ZOU-SUN-MARCHE BOOK PICNIC

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電車からホームに降り立つと、鴎の鳴き声がスピーカーから聞こえる、横浜ベイスターズ色に染まった地下世界。『1番出口』から冷たい地上に顔を出すと、すぐ目の前に『横浜市開港記念会館』ジャックの塔がスマートに建っている。『みなと大通り』で東の海方面に向かえば、右手にスクラッチタイルで覆われた重厚な『神奈川県庁本庁舎』がキングの塔を冠し、海が近くなった交差点の向こうには、つるんとしたイスラム様式の『横浜税関本関庁舎』が、海に向かってクィーンの塔を誇っている。50m強歩く合間に、異国情緒的な横浜っぷりを思いっきり堪能する。横断歩道を渡り、今や遊歩道となった『山下臨港線プロムナード』の高架を潜ると、巡視船や遊覧船の集まる船溜りの先に、明治中期の姿に復元された防波堤、通称『象の鼻』が海の中に横たわっている。昔はこの辺りは荒廃した感じで、猫の死骸が浮かんでいたり、錆びたレールの残った引込み線も草ぼうぼうで、臨港線高架も不気味な鍾乳石が出来るほど老朽化が甚だしく、赤レンガ倉庫方面に渡る鉄橋下にはダルマ船がギュウギュウに詰まって浮かんでいたものだが(そんな当時の姿は、TVドラマ『あぶない刑事』や往年の日活アクション映画で見ることが出来る)、今は完璧に整備され、観光地ヨコハマの一部と化している。そんなゾーンの左手に、屋根に盛土をして展望テラスにした、ガラス張りの洒落た休憩施設『象の鼻テラス』があった。ここでは毎週日曜に『ZOU-SUN-MARCHE』という市が開かれているのだが、今回東京と神奈川の新鋭古本屋さんが集まり、明日までの二日間、古本を並べているのである。施設内は親子連れ・カップル・女子グループで賑わい、右手海側に主に飲食ブースが並び、フロア中央ではライブパフォーマンスが進行中。入ってすぐのガラス際に「Tweed Books」(2015/07/10参照)と「タナカホンヤ」(2012/05/29参照)が仲良く肩を並べ、大きな平台を前にニコニコとしている。左奥では「たけうま書房」(2013/03/29参照)「books moblo」(2011/11/10参照)「SUNNY BOY BOOKS」(2013/06/03参照)+ZINEのお店が稲妻型に台を並べて、景気よく古本を販売中である。並ぶ本はキレイな本が多く、絵本・ビジュアルブック・詩集・ファッション・アート・音楽・自然などを軸に、女子寄り&子供寄りになりながらも、それぞれのお店を連想させるような本が数冊紛れ込んでいるカタチ。このマルシェに来た人と本との良い出会いを、願っているかのようである。表の芝生の丘には放浪中の古本屋さん「MAME BOOKS」(2014/11/08参照)も棚を組み上げている。この出店メンバーは明日になると一部が入れ替わるが、そちらも含めて充分注目に値する店選である。2010年以降に登場したこれらのお店が目指す店造り&棚造りが、恐らくこれから新しく誕生する古本屋さんの、スタンダードとしての、大きなひとつの流れとなることが予想されるからである…いや、もうなっているのだ。それは今までの古本屋界にはあまりなかった、風であり、良い香りであり、若さと新しさなのである。結局店主全員に面が割れているので、緊張しながらも楽しくお話しさせていただき古本を買い、そんなことを考えてしまう。古本だけ買ってテラスを離れ、冷たい潮風にほてった頬を冷やされながら、ぐるっと回り込んで象の鼻の突端まで歩く。そこで取り出したのは、今日一番の収穫である「books moblo」で千円で購入した、岩崎書店「ネコちゃんの花 ネコの童話集/安泰・絵」である。とにかく安泰の猫の絵が、すべてど真ん中ストライクのプリティーさで、ページをめくる度に目尻を下げ、激しく身悶えしてしまう…。
posted by tokusan at 18:39| Comment(7) | TrackBack(0) | 関東 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年11月21日

11/21山の上で手応えある空振りをする

きっかけは、ちょっと前のテレビ番組に映った、元土産物店を改造したお店であった。高崎観音の足下にある参道商店街の一軒であるそのお店は、ある若者がそこを引き継ぎ、清貧な毎日を過ごしながら、妙な古道具的物品を販売しているのであった。最初はただボ〜ッと寝転んで眺めていたのだが、店内の小さな棚に古本らしき影を認めた瞬間、ガバッと跳ね起き、真剣に画面を注視する…これは見に行く価値がありそうだな…。とにかく詳しいことは分からぬが、行ってみればどうにかなるだろうと、久々の湘南新宿ラインに身を任せ、北関東群馬県入りを果たす。すでに銀杏は黄色い葉を盛大に落とし、街にはちょっと冷たい砂まじりの赤城おろしが吹き荒れている。高崎観音は、駅西方三キロほどの山頂に建っているので、レンタサイクルを借りて向かうことにするが、あいにく今日は街をあげてのお祭らしく、全車出払ってしまっていた。しかたなくバスで向かおうとするも、今現在の午後十二時台には、一本の便もないではないか!ちょっと憤然としながら、二本の足を動かして向かうことにする。だが祭りで賑わう街中で、ヤクルト色に赤い水玉が散りばめられたコミュニティレンタサイクル『高チャリ』を発見したので、改めてこれで巨大観音様を目指すことにする。市街地を離れ、石ころとススキがざわめく烏川を越えて、低山山頂からすっくと立ち上がる白い観音様を目指して、ペダルを踏み締める。やがて『観音山公園』を含む山の麓に到着し、一気に山道を駆け上がる!…と言うわけにはいかず、低くともやはりそこは山なので、結構な斜度にすぐさま屈服し、ひたすら落ち葉の積もったワインディングロードを、自転車を押して進むことになる…あぁ、「Kiji Books」(2011/05/14参照)に行った時以来の、自転車苦役!しかしこの小さな山には、一般住宅・高級住宅・神社・ラブホテル・石垣・廃墟・風車のあるレストラン・墓地などが寄り添い集まり、非常に味のある区画が誕生してしまっている。それに時折一望出来る、高崎市街がまた素晴らしい!おかげで息を切らしながらも、非日常にグイグイ入り込む感触を楽しみながら、上へ上へ。そんな風にようやくたどり着いた参道商店街は、山の尾根に取り残されたような、昭和的に鄙びた、さらなる非日常の空間であった。崖地から建ち上がった古い土産物屋は、ダルマや民芸品を並べ、時には骨董品まで置きながら、人影の少ないウネウネとした参道にすがりついている。そんな品物たちに好奇の視線を向けながら、やがて参道の終りが見えてくると、いつの間にか道の先の大観音に、穏やかに睥睨されている。そして参道最後の土産物屋が、目指して来たお店であった。しかし閉まっている!なんで?土曜日なのに!人影は確かに少ないが、掻き入れ時じゃないの?と激しく脳内でお店に質問しながらも、シャッターの前に放置された古本やシングルCDに、やはりここには古本があるんだ!と確信する。「山愛ネフェル」とあるお店の看板には、『本』の文字もちゃんとある。側面の窓から中の様子をうかがうと、現役感のある店内が見えている。今日は下界がお祭だから、開いていないのだろうか?それとも開店時間が、少し遅めなのだろうか?なんにせよ、もう一度来る価値はあることが判明した。その小さな収穫を胸に仕舞い込んで、帰りは時速四十キロのスピードで、山道を爽快にぶっ飛ばして行く。
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写真が件のお店。参道のお店はみなこのような立地である。

市街に戻り、とにかく古本は買って行こうと、まずは「文京堂」(2014/05/25参照)に飛び込む。生ける仏像と言っても過言ではない、帳場で微動だにせぬ老店主と六ヶ月ぶりの沈黙の再会を果たし、国書刊行会「ロシア・アヴァンギャルド7 レフ芸術左翼戦線」ワニブックス「散りぎわ 死にぎわ/横浜銀蝿・嵐」を差し出すと、老店主が「今日はお祭だから、少しサービスいたします」と100円引きに!ありがたや!と計1500円で購入する。さらに「みやま書店」(2009/02/08参照)にも当然立ち寄り、おっ、それなりの値段は付いているが安めの角川文庫初版白背の「悪魔が来りて笛を吹く/横溝正史」を見つけ、福音館書店「ポイヤウベン物語/安藤美紀夫」と共に計800円で購入する。久々の自転車苦役に早くも身体を軋ませながら、観音様に再訪を誓い、湘南新宿ラインで帰路に着く。

車中で先ほど購入した横浜銀蝿・嵐の本を読みふける。一文ごとに改行されている、非常に読みやすい本である。横浜駅の雑踏の中で、1対5でケンカする杉本哲太の武勇伝(当然1が杉本である。しかも優勢)に隔世の感を覚えるが、島田紳介の友達『バッタ屋浜田』の話が面白い。この男、ちょっと時間さえもらえれば、それが深夜だろうが早朝だろうが、たちどころにあらゆる物(ラーメンから飛行機のチケットまで)を、約束の時間に調達してくる特技を持っている。嵐も知り合ってから重宝するのだが、アイツはいつも笑顔で悠々飄々としているが、視界から離れたら、全力で走っているに違いない。手をたたいたって、何か出てくるわけじゃないんだ。様々な人に身体が折れ曲がるほど頭を下げているのに違いない。と洞察しているのだ。うん、そうだよな。その通りだよな、と妙に感心してしまう。
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2015年11月20日

11/20風光書房がついに店内全品20%OFF閉店セール中!

恐ろしいことに、もはや年が押し迫りつつあるので、もしやこちらも閉店日が押し迫っているのではないかと、神保町「風光書房」(2015/08/18参照)の様子を見に行くことにする。街には水道橋駅からアプローチし、「日本書房」(2011/08/24参照)で100均から三冊買い込み、「神田書房」(2012/02/16参照)店頭ワゴンでせっかく色背の創元推理文庫ルパンシリーズ(レア)なのに、背が焼けて文字が見えなくなった誠に残念な一冊を買い、「田村書店」(2010/12/21参照)木製安売ワゴンの前。緑色の裸本の背に、新宋体の金文字が輝く本を発見する。おぉ!春秋社の「折蘆/木々高太郎」!少しボロくて、ワゴン内なのに1800円と高めだが、俺が買わずに誰が買う!(だから残っていたのか…)と掴み取り、さらに明治二十六年刊行のアフリカ探検記「闇黒阿弗利加 第壱編&第四編/博文館」を共に300円で見つけ出して、俄然興奮!その勢いで他にも何冊か買い込んでしまう。

興奮を持続させながら『駿河台下交差点』を渡り、『池田坂』下の「風光書房」にたどり着くと、雑居ビル入口の前に置かれた立看板に、ついに『閉店セール20%OFF』の貼紙が付属してしまっていた。あぁ、あぁ、と嘆息しながら階段を四階まで上がると、入口ドアにも同様の閉店セールのお知らせが貼り出されている。息を詰めて、静かに店内に入る。おっ、先客が二人もいるじゃないか。先ほどまでの、はしゃぐような興奮を鎮め、カーペットを優しく踏み締め、まずは日本近代文学文庫と海外文学文庫の壁を眺める。そして露西亜から独逸、仏蘭西、英吉利、西班牙、北米大陸南米大陸、さらには小さな島国・日本の近代文学を集めた通路を見て回る。ゆっくりと一周して、帳場の小さな戸棚の中も見せてもらって、結局中公文庫「海辺の生と死/島尾ミホ」を20%OFFの1440円で購入する。その際「お店はいつまでですか?」と聞くと「来週いっぱい(つまり11/28(土)まで)」「他の場所で再開したりするんですか」「いいや、完全に閉めちゃう。だから、またいらしてください」とニヤリ。ではまだお別れはせずに、来週もう一度、世界の古い文学の風を浴びに来ることにするか。
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そのまま西荻窪に向かい、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)でフェア棚に補充。あっ!「どひゃっほう本祭り」から、「少年」の付録漫画「モスラ/吉田きみまろ」が旅立っているじゃないか!くくぅ、大事にされるんだぞ。そんな大事な古本の門出に随喜の涙を流し、11/28(土)古本市&トークの打ち合わせを軽くする。
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2015年11月19日

11/19ふたつの古本市の変化

昨日は忙しくツアーは出来なかったが、それでも打ち合わせ飲みの前に、雨の夜の下北沢「ほん吉」(2008/06/01参照)の店頭棚に瞬間張り付き、面白い本を引き当てるのに成功する。昭和二年刊の三元社「天啓/金井俊英」。
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文庫サイズで104ページの粗末な本であるが、何と交霊術実験をテーマにした本で、コナン・ドイル夫妻が参加した実験エピソードも載っているではないか!と喜び100円で購入する。

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そして本日、午前中から社会人としての背徳感を感じながら、それでも大手を振るって本川越に向かう。駅前のペペ広場で古本市が開かれているのだが、何故か今回から「本川越ペペ古本まつり」(2012年04月05日参照)という名称だったのが「小江戸川越 ペペ古本まつり」と微妙に変わって開催されているのである。名称以外にも、何か明確な変化が起こっているのであろうか?ホーム北端の改札を抜けて、駅ビル東沿いの広場に出ると、そこにはいつもと変わらぬ、白テントの下に組み合わさったワゴン島が並ぶ光景が、静かに広がっていた。別にそれほど大なる変化を期待していたわけでもないが、それでも多少拍子抜けする。しかしまぁ、古本が売っているなら、それでいいじゃないかと、十三のテントを集中力を高めて次々に訪って行く。調子良く本を抱え込みながら、隅のワゴンが少し変わっていることに気付く。それは「ばおばぶ文庫」と「古本選堂」というネット書店の台頭である。おぉ、なんだか埼玉にも、新しい風がひゅっと吹き始めているみたいだ。そんな風にちょっと感心しながら、一時間弱で計八冊を手にする。一番の収穫は婦人画報社「いつ・どこで・なにを着る?男のTPO事典/石津謙介」である。これを100円で買えるとは!どひゃっほう!他に協立書店「ラジオドラマ書き方と演出/堀江史郎・中川忠彦」日本出版協同株式会社「チャッカリ夫人とウッカリ夫人/ラジオ東京文芸部編」旺文社文庫「落穂拾い・雪の宿/小山清」集英社母と子の名作文学46「奇がん城/えぐちきよし ルブラン作」桃源社「地獄横丁/渡辺啓助」ブロンズ社「あたしは天使じゃない/鈴木いづみ」福音館書店「まじょのかんづめ/佐々木マキ」を石津本も合わせて計3700円で購入する。市は11/28(土)まで。

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帰宅して仕事を済ませ、もう一度外出してもうひとつ古本市を見に行くことにする。早稲田駅で降りて、『早稲田大学』正門方面に歩いて行くと、正門左脇の坂道の小さな入口の向こうに、「第20回青空古本掘出市」(2012/05/19参照)の白いテントが見えていた。あれ?いつもの場所は、こんな所じゃなかったはずでは?と近付いて行くと、長い白テントの下に二列縦隊で収まるワゴン島は、どれも学生が鈴なりになっている!こりゃスゴい!大人気じゃないか!驚きながらふとワゴン脇のポスターに目をやると、場所が『早稲田大学十号館前』から『早稲田大学3号館前』に書き直されている。なるほど、場所が変更になっていたのか。納得して中に滑り込み、若い雑踏(所々に講師連・古本修羅ゾーンあり)に紛れ込む。ピチピチの学生たちが、男女問わず留学生問わず、真剣な眼差しを放つ者や、お喋りしながらウィンドウショッピング的に見ている者や、すでに本をたくさん抱えている者を交え、とにかく古本を求めている。そんな意外な風景を楽しみながら、各島に取り憑いて行く。すると、ある男子学生の興奮した会話が耳に飛び込んでくる。「いや、これスゴいな。ナメてたな。今まで早稲田の古本屋さんって、入ったことなかったけど、ちょっと真剣に見て回らないとな」。おぉ、おぉ!オジさんはとても嬉しいぞ!ぜひとも有言実行してくれることを願いつつ、東宝株式会社「墨東綺譚/豊田四郎監督作品」(非売品シナリオ)講談社文庫「人形たちの夜」「黒鳥譚・青髯公の城」角川文庫「銃器店へ」中井英夫、角川文庫「魔法入門/W・E・バトラー」(カバーなし)を計1300円で購入する。市は11/21(土)まで。
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2015年11月17日

11/17 FEEVER BUG CLOSING SALE

今年の十一月は、悲しい報せがやけに多い気がする。すでに何軒かの古本屋さん閉店情報を報告して来たが、それ以外にも新小岩「オールドブックゼウス」(2015/01/23参照)や牛込柳町「十二月書店」(2015/02/13参照)も、すでに閉店したとの情報が。噫々、なんという秋、なんという十一月。そして今日もまた、23日には閉店してしまう、一軒の古本屋さんを惜しみに、東横線に乗っているのだ。綱島駅西口に出ると、垂れ込めて来た雨雲のために薄暗くなっており、そのわりには気温が高い狂った秋の日の午後。スタスタと歩道の狭い繁華な街路を歩き続け、巨大集合住宅一階の奥まった場所にある「FEEVER BUG」(2011/03/27参照)にたどり着く。このお店は、オーソドックスな従来の古本屋さんか、リサイクル系のお店しかなかった神奈川県に、初めて登場した、若者による若者のための男子的古本屋さんであった。開店から時を経るごとに、棚はマニアックに掘り下げられ、各ジャンルに猥雑でちょっと危険な小道に踏み込むような楽しさがあった。だが、それも閉店してしまうっ!悲しみながらお店に近寄ると、電気は煌煌と点いているが、ドアには『備品を買うために少しの間外出中』しているとの札が下がっている。タイミングが悪かったなと思いつつ、『Used Items All 30%Off』とある、デザインが突っ走ったチラシを眺める。そして左側の100均台にピタリと張り付き、本を見ながら店主の帰還を待つことにする。すると十分ほどの間に、私だけでなく四〜五人のお客さんが訪れる。結構お客さんが来るなと感心しつつ、二冊を掴んだ所で店主が戻って来た。ドアが開けられると共に広い店内へ進み、流れる珍妙な音楽を耳にしながら、後ろ手にじっくりと棚をチェックして行く。やはりドロドロと濃い棚だ。とくに左端通路の壁棚が好きだ。そんな店内では二冊を掴み、奥のレジにて精算。理論社「あしたの海/松下竜一」王国社「七つの人形の恋物語/ポール・ギャリコ」河出書房新社「サセックスのフランケンシュタイン/H・C・アルトマン」講談社江戸川乱歩推理文庫「奇譚/獏の言葉」を計1400円で購入する。いつの日かまた、神奈川県で復活してくれると嬉しいのだが…。
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2015年11月16日

11/16東京・曳舟 古書肆 右左見堂

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開店前から『鳩の街』に新たに出来る古本屋さんとして話題になり、ついに昨日オープンしたばかりのお店である。駅西口を出て、目の前から続く下町的小飲食街小道に分け入って行く。地面の高い公園に行き当たったら、北側からガクリと回り込んで、さらに南西へ真っ直ぐ。やがて細長くまたまた下町的な商店街にぶつかるので、カクッと曲がって北西へゆるゆると歩む。やがて『水戸街道』へ出ると『東向島1丁目交差点』で、対岸にはすでに目的地である『鳩の街』のゲートがあり、道幅が狭く寂し気だが愛くるしい商店街が始まっている。しばらく信号待ちして、車がそのスピードで揺らす通り沿いのシャッターの音を聞く。街道を渡り、そのまま鳩の街に踏み込み、たったの50m。通りで一番大きなお店である100円ショップ『たじま』の向かいに、開店祝の立花が咲き乱れる新しい古本屋さんの姿があった。濃淡緑だんだら模様日除けの下には、店名が貼られたガラスウィンドウがあり、右に100均棚と入口。北杜夫と古い文庫と古いノベルスを眺めて店内へ。通路は広く、割合と奥深く、左右の壁にスチール棚が並び、真ん中には背中合わせにスチール棚が組み合わされ、奥へと向かっている。右側通路には通路棚に接続した平台あり。奥には足の高い椅子も備えた重厚な木製カウンターがあり、その向こうの帳場兼作業場では、ハンチングに丸眼鏡のトラッドフォーマルな兎の如き青年が働いている。開店二日目のためか、棚の下部はブランクになっているところが多く、左壁の本はまだ値付も済んでいない模様。しかし店主に気になる本を差し出してみれば、懇切丁寧に教えてもらえる。右の壁棚は100均文庫棚二本から始まり、漫画・文庫(付録小説・絶版文庫・ミステリ&SFあり)・新書・筑波書林新書と続く。向かいには茨城・郷土本・図書館・古本・南洋・人物評伝・風俗・性愛・近代など。平台には古雑誌・風俗雑誌・面子・古ガイドブックなどが飾られている。左側通路は、通路棚に思想・宗教・政治・経済・社会主義・戦争・月刊「GUN」(大量)。向かいの壁際には、専門書・外国文学・詩歌句・日本近代文学・吉行淳之介・古書・仙花紙本・大判美術本・豆本・小型本・付録本など。本の数はまだ少なめだが、何処のジャンルにも古書が紛れ込んでいるのが大変好ましいので、早速先が楽しみになってくる。値段はちょい安〜普通で、プレミア本にはしっかり値が付けられている。値段のない二冊を手にして、チャレンジする気持ちで帳場へ。すると一冊を前に置き「これはネットで3000円くらいの値が付いています。だから2000円くらいにしようかと…あぁ、高いですよね。そうですよね。ええぃ、では1000円でどうですか!」驚くことに悩みながら勝手に値切ってくれたので「ええっ!いいんですか?もちろん買いますよ」と面食らいながら答えると「本当ですか。ありがとうございます。何だか押し売りみたいになっちゃってすみません」とニコリ。いや、嬉しくて恐縮なのだが、これでお店は大丈夫なのかと、ちょっと心配になってしまう。利根屋書店「捕物道中双六/額田六福」偕成社文庫「おかあさんの手/大石真」を購入する。粗品のブックカバーもいただき、墨東方面に来る新たな楽しみを手に入れた思いに浸る。開店おめでとうございます!また古い本を買いに来ます!
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2015年11月15日

11/15雨上がりのみちくさ市と狐白堂閉店50円セール

本日まだ雨が降っておりますが、「みちくさ市」開催です!午後に雨が上がるのを祈りながら、古本携え向かいますので、どうかみなさま、雨ニモ負ケズ、古本目指シテ、雑司が谷にお越し下さい。お待ちしております!
http://kmstreet.exblog.jp/

というわけで、始まる頃には雨が無事に上がり、午後は日射しまで降り注ぐ麗らかな秋の一日となる。しかし客足なかなか鈍く、結局古本24冊、「それから」&「首都圏沿線」新刊6冊(嬉しい!)をどうにか販売。何故かみちくさ市に降臨したGOING UNDER GROUND・松本素生氏は、CDを中心に満足ゆく売り上げを確保した模様。今日、この日にこの場で出会ったみなさま、本当にありがとうございました!
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右が本を値付け中の松本氏と販売スペース、左が私のスペース。松本氏はすぐフラフラと何処かに行ってしまうかと思いきや、ちゃんとほぼ五時間の店番を完遂。熱心なファンも訪れ、いや、とにかくありがたいことです。

市終了後、打ち上げを固辞して、結構売れ残った古本カートをンゴロンゴロ引き摺って、夕闇に包まれた根津へと向かう。『弥生坂』を必死に上がり、坂の途中の妖かしの古書カフェ「狐白堂」(2014/10/23参照)に到着する。何と、まだ開店から一年しか経っていないのに、残念ながら閉店との情報をキャッチしたのである。なのでお店では今日から店内全品50円セールを22日の日曜まで開催中。表に古本カートを停めて、店内に入るとすでに先客の女性が二人。まだピカピカに新しい店内を惜しみながら、ちょっと薄暗い照明の中で、ファンタジー・伝奇・SF・幻想・ホラー・怪談・オカルトの森にグイグイ分け入って行く。何たって全品50円なのだ。遠慮なんてするものかと、ハイエナの如くあっという間に講談社文芸文庫「遠景 雀 復活/色川武大」河出文庫「怪異な話/志村有弘編」光文社古典新訳文庫「箱船の航海日誌/ウォーカー」岩波文庫「江戸怪談集(上下)/高田衛編・校注」を計250円で購入する。もっと長く、この根津と本郷の狭間の坂で、妖しい本をずっと販売していて欲しかった。残念ですが、大いなる感謝を。お疲れさまでした!
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2015年11月13日

11/13東京・赤羽 復活!紅谷書店!

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コメントタレコミに導かれ、東口に駆け出て北の横断歩道を渡り『赤羽1番街』に突入。確かに今日は花の金曜日だが、時刻はまだ午後四時前である。アルコールに溺れるには早過ぎる時間のはずだが、恐ろしいことにこの街は、すでに飲み浮かれ始めている。そのまま、古く大きな商業ビルと小さな雑居ビルに挟まれたアーケード小道『1番街シルクロード』に入り込むと、酒精の気配と喧噪がますます濃厚となる。誘惑されぬよう警戒しながら奥に進んで行くと、殊更明るい一角が右手に出現する。おぉ、確かに長らくリニューアル休業していた「紅谷書店」(2009/01/29参照)が復活を遂げている。新しい小ビルの二階には、ピカーッと輝く照明店名看板。その下には少し奥まった、パチンコ景品交換所的な帳場カウンターがあり、その入口周りとアーケード通路に均一本を展開している。通路右には三段の100均新しめ文庫ワゴンがあり、左には100均廉価コミック三段ワゴン。中央には100均漫画雑誌と、さらにその奥に雑誌台が続く。入口両壁にはそれぞれ同型のスチール棚がはめ込まれ、右に一冊200均二冊300均本が並び、新書・「裏モノJAPAN」・実用・ビジネス・人文・ミステリ&エンタメを雑本的に揃えている。左には一冊300均二冊500均の実用&趣味&アートのビジュアルムック類が収まっている。つまりお店は、見事なまでの入口付近安値均一店として生まれ変わったのである。小さな窓の向こうは、もはや完全なる事務所状態。コツコツ窓をノックしてご婦人に声を掛け、池田書店「ウイスキー党入門/ニッカウィスキー株式会社編」「日曜大工創作と修理/木村鉄雄」を300円で購入する。赤羽に来たのなら当然駅西側の「平岩書店」(2009/05/11参照)にも足を延ばし、大和書房「傷だらけの天使/市川森一」文春文庫「私の東京物語/吉行淳之介」ニュー・サイエンス社「食虫植物」を計300円で購入。

そのまま西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)に直行し、フェア棚に補充し、『どひゃっほう本祭り』から「みだれ街道/島久平」(裸本)が売れたのを驚き喜び、追加分の「それから」と「首都圏沿線」にオリジナル識語署名捺印す。するとその間に、盛林堂ミステリアス文庫チーム、北原尚彦氏、諫早より帰還した岡崎武志氏が現れ、帳場付近が無闇に活気あふれる場と化してしまう。するとそこにカバーデザインを担当させていただいた盛林堂ミステリアス文庫新刊「浮ぶ魔島 甲賀三郎 少年探偵遊戯」が印刷所から大量に届き、帳場周りはさらにしっちゃかめっちゃかに。あぁ、それにしても、本棚探偵・喜国雅彦氏のイラストでデザイン出来た幸せよ…。
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左が「浮ぶ魔島」。帯文をお願いした「それから」と共に、本棚探偵とご一緒出来た喜びを一枚の写真に収めてみる。

※お知らせ
11/15(日)の鬼子母神通りみちくさ市に九月に続いて出店いたします。相変わらず変な本おかしな本面白い本を持って行きますので。お時間ある方はぜひ覗きに来て下さい。少量の新刊販売もするつもりです。そして今回何と私のブースに、GOING UNDER GROUNDボーカル松本素生氏の蔵書の一部と蔵CD箱が出品されますので、こちらもぜひ興味津々に手に取りに来て下さい。本人もいたりいなかったりする予定。しかし今のところ日曜日が雨予報なので、それが大いなる憂鬱であります。雨天中止の場合は11/22(日)に順延。だが、雨よ、頼むから、どっか行ってくれ!
http://kmstreet.exblog.jp/
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2015年11月12日

11/12神奈川・みなとみらい 書籍バーゲンセール

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病み上がりの身体をふらつかせながら、横浜へ向かう。『第17回図書館総合展』の下北沢の本屋さん『B&B』のブースで南陀楼綾繁氏と、平日の午前中から一時間ほどトークするためである。地下駅から東に向かい、横浜港に向かって帆を開いたイメージの『パシフィコ横浜』へ、冷たい潮風になぶられながら、現代的な通路をトボトボ進む。大きな展示場の端で開かれている会場に到着すると、すでに場内は静かなる熱気を発していた。今は開場したばかりの午前十時。トークは午前十一時半からなのだが、何故こんなに早く会場入りしたかというと、古本が会場の片隅で販売されているからである。勇猛果敢な神奈川古書組合の十五店が、かなりアウェーな雰囲気に抗いつつ、毎年古本を運び込み並べているのである。まぁ図書館に関する展示がメインの催しなので、きっと小規模な販売なのだろうと、ちょっと高を括って販売スペースに向かうと、おぉ!物凄く本格的ではないか!およそ五十のワゴンが集まり、三本の通路を造り出している。今日が展覧会の最終日なのだが、慌ててワゴンに飛びついてみると、まだまだいい感じの並びを保っている雰囲気。これは何か買えそうだと、真剣に血眼に本の背に集中しながらジリジリと移動して行く。「橘書房」(2010年11月08日参照)と「古書リネン堂」には特に心躍らされ、待ち合わせ時間を経過しているのに、本の吟味を優先させて、ガシガシ抱え込む。法藏館「お伽詩集 光り草/柏樹玲花」(本願寺系の出版社が大正十三年に出したモダンな少女系詩集。函ナシ)和同出版社「花のオランダ坂/菊田一夫」(裸本)犬の研究社「作業犬の研究/エリオット・ハムフリイ」海洋文化社「少年船長第一巻 錨/関谷健哉」日本書房「鉄仮面/ボアゴベー原作」時事新報社「大正五年四月 少年」(江見水蔭の「怪車と怪人」他にも覆面冠者「一等室の秘密」松美佐雄「巨獅子像」「三百年目に孵った卵」など、探偵小説・冒険小説が!)を計3500円で購入する。すっかり今日の任務を果たし終えた態で、ブース入り。様々なざわめきが広い空間を支配する中、こんな日にあつまっていただいたお客さんを前に、南陀楼氏と古本&古本屋話に終始する。後半に展開した、最近の獲物見せ合い合戦が、自分たちも楽しく会場にも受けが良かった。集まっていただいたみなさま、本を買っていただいたみなさま、南陀楼さん、そして『B&B』のみなさま、ありがとうございました!
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2015年11月10日

11/10古本屋ツアー・イン・ヤフオク

悪い風邪をひいてしまったようなので、昨日から家に閉じこもり、フラフラしながらせせこまと仕事をこなしている。こういう時、古本屋に行けないのがとにかく心残りで、ブログをアップ出来ないことには罪悪感すら感じてしまう。なので今日は、日常的に中毒性高く利用している巨大な疑似古本屋的電脳商空間『ヤフーオークション』、通称「ヤフオク」について書いてみることにする。

オークションというのは簡単に言えば、ひとつの品物があり、それを欲しいと思う人々が、己の財力と相談しながら入札を繰り返し、最終的に最高値を提示した者に、その品物をその値段で購入出来る権利が手に入るというシステムである。つまり、ライバルがいなければ入札開始時の安値で手に入ることもあるし、ライバルが多ければ熱く競り合ってしまい、結局相場より高値で落札などということもありえるのだ。そこがオークションの大きな魅力でもあり、やっかいな部分でもある。それをネットを介しモニター上だけで行うのが『ネットオークション』であり、YAHOO!JAPANが主催する「ヤフオク」も、そのひとつである。とにかく一旦アクセスすれば、あらゆる物品の画像が底無し沼のように広がり、人間の欲望が火花を散らし鎬を削る電脳空間に入り込める。これは刺激的で楽しいことだが、逆に大変恐ろしいことでもある…。

最初は探していた本が安く出ており購入したのが、何気ない「ヤフオク」との出会いであった。確かその時は、野呂邦暢のエッセイ集を、ライバルもなく安く落札した覚えがある。以降は探している古本屋関連本などを見付けては安値で落札する程度で、それほど熱狂して毎日出品や入札の動向を眺めることはなく、ある一定の距離を置き、単なる古本入手の手段のひとつくらいの認識を保っていた。それがいつしか加速してしまい、毎日チェックせずにはいられなくなった原因のひとつは、恐らく探偵小説や春陽文庫ではないかと推測される。お店ではあまり見かけぬ、稀少な探偵小説関連や珍しい文庫を手に入れたく(調べると欲しい本や見たこともない本が、ちゃんと次々に浮上してくるのだ。これは大変に目の毒である上に、時すでに遅く、この瞬間欲望に確実に着火してしまうのだ!)、『春陽文庫』『春陽堂文庫』『日本小説文庫』『探偵小説』で検索し、入札開始値が安い憧れの本を探し出しては入札するのに、ハマり始めたのではなかったか。

ちなみに私はプレミアム会員になっていないので、入札金額は五千円までとなっている。これは自分に対する枷であり、やはり良い本をなるべく安値で手にしたいという気持ちの表れでもある。オークションは楽しいが恐ろしい。オークション終了時間が迫り、姿の見えぬライバルと間髪入れず入札し合う状況になると、頭にカ〜ッと血が上り、負けてたまるか、この本を自分以外の人間の手に渡してなるものか、などという気持ちがやたらと強くなり、勝てると思う数字をキーボードで打ち込んでしまう(特に酔っ払っている時は気が大きくなっていていけない。上限五千円に設定していてさえも、時々『なんでこんな値段まで入札してしまったのか…』と後悔することがある)。だが、五千円までの枷があるならば、強制的にその争いを己に諦めさせることが出来るのだ。これは、自分がその買いたい本にコレクション性を求めているのではなく(でも多少はある)、その本を読みたいという気持ちが勝っているため、設定による諦めが可能となっているのかもしれない。

だから、手強いライバルが多いヤフオク『探偵小説』界隈で、人気の稀少な本が落とせることはほとんどなかった。それは瞬く間に値が五千円以上に高騰するからである(元々五千円以上の値からスタートしている品も少なくない)。そうなれば手も足も出せずに、ただ指をくわえて「いいなぁ」と羨ましがるしかなかったのである。プレミアム会員になれば、あんな本やこんな本も入札出来て、もしかしたら相場より安値で手に入るかもしれない。しかしお金は湯水のようにあるわけではないのだ。そんなに楽しく物欲に身を任せていたら、いずれ生活に破綻をきたすだろう。ならば強力な財力にどう対抗するのか?ここで役立つのが、地味な執念やしつこさである。それは隙間に落ち込んだ良い本や、検索からはみ出たような良い本を探す根気である。キーワード検索では引っ掛からないような、入力データ不足の本を必死に見つけ出し、入札するのである。オークションの出品者は、古本に限って言えば、古本屋・ネット古書店・古道具屋・古本マニア・一般人などが混在しているが、やはり一般人や他業種になるほどデータの入力が甘くなる場合がままあるのだ。そこが狙い目で、検索ではなく『この商品も注目されています』『このカテゴリの人気商品』(このあたりのシステムは、古本屋での棚並びを見るようで、通常の目録や通販を見るよりは、世界が広がる魅力と可能性を持っている。それでも、やはり実際の商品を手に取って見られないのは、大きなハンデであるが…)から潜って行き、気になる気配の出品を見つけたら『出品者のその他オークションを見る』でさらに潜り込み、探って行くのだ(時に『古本』『古い本』などというアバウトなキーワードで検索し、膨大な本をチェックしながら、安値で気になる本を出品しているところをさらにチェックする、なんだかもはや捜査のような作業も行ったりする…バカだ)。時間と根気を使う作業であるが、鉱脈に行き当たった時の喜びは大きい。だがそれでも、ライバルたちを決してナメては行けない。自分がそこにたどり着けるのなら、他人もまたたどり着けるのだ。『この商品を見つけたのが、俺だけであってくれ!』と真剣に祈りつつ、最後の最後で新たな入札がバタバタと入る絶望の瞬間を、何度味わったことだろうか。めげずに探して入札し、大体五回に一回落札出来れば、良い方であろう。(今のところ大体平均して月に三〜四冊である)。

そんな風に、安値でいい本を入札して、無事に落札出来れば、ネットであろうとも“どひゃっほう!”となるわけである。まぁ日々の古本屋ツアーの世界と同じで、そうそうあるわけでもないが、皆無というわけでもないのだ。最近のどひゃっほう本は、上限ギリギリ4800円で落札した(つまりはライバルがいたのだ)、明治四十一年発行の文禄堂「黄金蟲/エドガー、アラン、ポー 本間久四郎訳」(蔵印はあるが状態はかなり良く、出版当時の麻の葉紋様の丈夫なパラフィンが掛かっている。何故か後半にドイルのホームズ物『窓の顔』も収録)である。そして、このような明治〜大正の本が出回ることもあるから、日々のチェックを怠るわけにはいかないと、改めて強く思ってしまい、さらに深みにはまって行くのである…。
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写真はパラフィンの掛かった「黄金蟲」表紙。サイズは110mm×185mm。左の口絵は本編『黄金蟲』の一場面を描いたものだが、一幅の掛軸のような意表を突く縦長なので、これは新たにこの本のために描き起こしたものなのであろうか。

熱にうかされながら、ボヤボヤと意外に長く書き連ねて来たが、現実世界でも電脳世界でも、今や旧世界の遺物となり初めているような古本に執着しているのは、なんだか皮肉なことである。しかし好きなのだから、こればっかりは一生止められそうにない。さて、そろそろあの本のオークション終了時間が迫っているが、無事に開始時の値段そのままの安値で落札出来るだろうか…心配心配…いや、頼む、どうか我が手に落ちてくれ。
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2015年11月08日

11/8本の探求者は後一週間でネットの海に潜行す。

雨の中を地下鉄で神田へ向かう。老舗リトルプレス「かんだ」連載の取材のためであるが、その連載も次号でついに終了となる。神田の裏路地、神田古書センター、神田駅高架下飲屋街、神田川遡上と、小さく小さな一帯を冒険して来た、なかなか小さく刺激的な一年であった。最後は神田の地下を小さく冒険するつもりなのだが、その前に四谷三丁目で途中下車して『神保町Triangle』という神保町をテーマにした三人写真展を『100photoGallery』に観に行く。雑居ビル三階の小さな白い空間は、最終日とあって賑わっている。人の肩越しに、時に肩を並べて、路地と古本屋と古本と看板と、そこに漂う人の気配を、モノクロの世界に眺めて行く。今はない『九段下ビルディング』や「書肆ひぐらし」(2010/07/12参照)店主の街に溶け込む後姿(ランニング姿)がことさら印象に残る。もし自分が神保町の写真を撮るとしたら、やはり古本屋さんの写真ばかりになりそうだなとぼんやり考えつつ、神田に向かう。

長く孤独な取材を終えて地上に出ると、すでに夕闇で雨降りの神保町。『神保町交差点』から裏路地に入り込み、閉店するという噂の「ブック・ダイバー(本の探求者)」(2010/03/01参照)の様子を偵察に行く。古い事務所的モルタル建築のお店は、スポットライトとデコレーションライトの輝きを、濡れたアスファルトに映しながら、しっかりと営業中。しかしお店右側の玄関安売ゾーンに近付くと、黄色い貼紙がペタペタと貼られており、そこにはやはり『大感謝まつり ★単行本・文庫・新書も2割引★玄関の本と大型本5割引 11月15日閉店』と書かれているのであった。…あぁ、やはり。神保町で少し特異であった、この孤高なお店が閉店とは…。本の街からひとつの多様性が失われるのを惜しみながら、『2割引』の文字を脳内に灯して、浅ましく棚を注視して行く。静かな店内で、キャップ&作業着ジャンパー姿のオヤジさんと、二人きりの時間が流れて行く。そして最奥の文庫棚に集英社文庫「壺中庵異聞/富岡多恵子」を発見して、小さく喜ぶ。最近になって、江戸川乱歩実弟の平井蒼太をモデルにした小説と知り、かなり真剣に探していたのである(そして読み込むと豆本地獄が綾織り成している!)。2割引の480円で購入しつつ「お店閉められちゃうんですね」と声をかける。すると「あ?」と耳に手を当て問い返されたので、今度は少し大きな声で同じ質問を放つと「そうなんですよ。もうお店はね…ちょっと。だからネットの方で販売して行きます」とのこと。長い間、神保町の裏路地を古本で支えて下さり、ありがとうございました。『本の探求者』実店舗閉店まで、もう後一週間…。
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2015年11月07日

11/7神奈川・反町 APT#207

昼食を摂ってから外出し、東横線の車窓から空を覆う雲がどんどん厚くなるのを見ながら、タレコミのあったお店を目指す。深い地下ホームからどうにか地上に出ると、目指すお店より先に、閉店した「ひだ文庫」(2015/09/18参照)のことがどうしても気になってしまう。それならば見に行くべきだろうと、まずは『国道一号』を西に向かう。やがて遠くにお店だった建物が見えてくる…建物はちゃんと残っている。看板も残っている。しかしシャッターが重く閉ざされ…あれ?軽やかに開いている!店頭に本が並んでいる!営業しているぞっ!何故だっ?色めきたち、お店に詰め寄るように近付くと、閉店の幟が立ち、閉店SALEはいつの間にか『全品50%OFF』となっている。そして『11/23(月・祝)閉店』とある貼紙を発見する。
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そうか、閉店日が延長したのか。ならば見に来て良かった!と、予想もしなかった閉店したはずのお店との再会に小さくはしゃぎ、本棚を次々と見て回る。リブリオ出版大活字オールルビ版くらしっくミステリーワールド「第6巻 小酒井不木集」「第9巻 大下宇陀児集」番町書房「平賀源内捕物帖/八切止夫」(帯が付いており、それによりNHKドラマ『天下御免』の原作であることを知る)を計1500円で購入。最後の最後まで何かが出て来そうだなぁ…また見にこうようかなぁ…。

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「ひだ文庫」を出てからすっかり見失っていた本来の目的を思い出し、再度駅頭に立つ。目の前の歩道橋を渡って、高架線の跡地である『東横フラワー緑道』を電車気分でガタゴト北に歩いて行く。かつての軌道そのままに優雅な弧を描いており、レールも一部モニュメントとして残されていたりする。およそ100m強進み、地下を失踪する電車の音が漏れ聞こえる通気口を三本やり過ごすと、左手の家並に立看板を表に出した住宅が一軒。玄関ドアが通りに向けて開け放たれ、内部は古本と雑貨を扱うシンプルなお洒落ショップになっている。入ってすぐ、目線の下に小さな棚があり、村上春樹やほしよりこが並んでいる。目線を上げるとそこは小さなカウンターレジの側面で、ニット帽を被ったハンサム・ガイが「いらっしぃませ」と迎えてくれる。「土足でいいんですか?」と一段高くなった焦げ茶の板の間に、恐る恐る上がり込む。窓際壁際に腰高の棚や台が据えられ、様々な雑貨が置かれているが、脇目もふらず奥のボックス棚に向かって一直線。何故ならそこに古本が集まっているからである。食・料理・旅・冒険・紀行・滞在記・セレクト日本文学・松浦弥太郎・谷川俊太郎・辛酸なめこ・アート・カルチャー・サブカル・書店・暮し系ムックなどのキレイな本が、白く輝いている。値段は普通〜ちょい高。古本修羅たる私の突破口は“冒険”辺りにしかねぇ!と、集英社「最後の冒険家/石川直樹」を「お近くですか?」と聞かれながらも、あくまで通りすがりの客を装い購入する。
posted by tokusan at 18:48| Comment(2) | TrackBack(0) | 関東 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年11月05日

11/5十一月のお知らせいろいろ

あっという間に十一月になったことに戦きながら、慌ただしい一日を過ごす。というわけで立ち寄れた古本屋さんは、情けないことに学芸大学「飯島書店」(2009/04/10参照)の一店のみ。至誠堂「絞死刑 大島渚作品集」を500円で購入する。そして代わりと言ってはなんですが、今月も先月に引き続き様々な古本屋に関するイベントやトークがあるので、お知らせいたします。

1. 南陀楼綾繁×小山力也「本の旅歩きツアー フロム図書館総合展2015」『 ほんほん本の旅あるき』(産業編集センター)『古本屋ツアー・イン・ジャパン それから』(原書房)刊行記念トーク
11/10〜12までパシフィコ横浜で開催されている「第17回図書館総合展」で、『本屋B&B』主催のトークに出演いたします。お相手は一箱古本市の王・南陀楼綾繁氏。同じ本を求める旅でも、まったく性質の違う旅が、熱く激しく平日の横浜でぶつかり合う予定!
■日時:11/12(木) 11:30〜12:30
■場所:パシフィコ横浜『B&B』出展ブース
■観覧無料
http://2015.libraryfair.jp/
http://bookandbeer.com/news/tosyokan_2015/

2. 11/14(土)のTOKYO FMラジオ番組『ピートのふしぎなガレージ』の“古書”特集に収録出演いたします。時間はおそらく十分ほどですが、古本には関心のない若い女の子を相手に緊張しながら、もはや暗号のような古書・古本・古本屋の話をしまくっていますので、お時間ある方はぜひ耳をそばだてていただければ!何と犬山「五っ葉文庫」さん(2012/12/09参照)も熱く迸るように出演とのこと。…あ、新刊の宣伝するの忘れてた…。
■11/14(土)『ピートのふしぎなガレージ』TOKYO FM 17:00〜
http://www.tfm.co.jp/garage/top.php

3. そして十一月のメインイベントは、懲りずに飽きずに岡崎武志氏とこれでもか!と『西荻ブックマーク』にて、お互いの古本屋秘蔵写真を披露しながら語り合います。おまけとして新刊「古本屋ツアー・イン・ジャパン それから」で、興奮の坩堝にはまりながら取材した旧江戸川乱歩邸スライドショーも予定しております。古本市との同時開催なので、どうかみなさま、秋の日の大事な一日を古本に捧げていただければ!

〔昼の部〕オカタケ&古ツアのガレージ古本市
■日時:2015年11月28日(土)
■時間:11時〜17時
■場所:西荻窪・銀盛会館1階
〔夜の部〕オカタケVS古ツア 『古本屋写真集』スライドトークショー
■日時:2015年11月28日(土)
■開場:17時30分
■開演:18時
■終演:20時(予定)
■場所:銀盛会館2階
■参加費:1,000円(要予約。下記の『西荻ブックマーク』アドレスからどうぞ)
■定員:25名
■出演:岡崎武志・小山力也
岡崎武志氏、古本屋ツアー・イン・ジャパン小山力也氏のこれまで撮りためた日本全国の古本屋写真を大公開。お互いの古本屋写真を見ながらトークバトルを繰り広げます。いまはもう閉店してしまった幻の秘蔵古書店写真も多く飛び出します。
http://nishiogi-bookmark.org/2015/
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2015年11月04日

11/4東京・中野 Antiqueスピカ一階ver.

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2010/06/26に訪れた『薬師あいロード』南側入口近くにあるお店で、以前は非常に入り難い、別の店内を通り抜けて上がれる二階にあったはずなのだが、いつの間にか一階にその勢力を移し、非常に入り易くなっていた。昭和的物品の咲き乱れる店頭には、古い木製雑誌ラックに入った100均雑誌や安売本、300均文庫&雑誌&単行本が置かれている。中に進むと、以前と同じ通路的店内だが、昭和雑貨度が結構男子寄りにグンとアップしている。その中に集まる、木製引き出しに入った紙物(多種多様)や岩波写真文庫、大量のマッチ箱などを眺めつつ、奥へ奥へ。最奥のショウケース前には川勝正幸風店主が鎮座している。その前までたどり着くと、右に児童書と日本玩具専門書の入った小さなラックがあり、さらに料理・洋装・「暮しの手帖」が並ぶ本棚と、カラーブックス・セレクト日本文学文庫の並ぶ本棚を発見する。この二本の雰囲気は、前店そのままのようなので、現在の「スピカ」は以前一階にあった『橘』と、微妙に融合しているのかもしれない…。古本はやはり物品のひとつとして存在し、あくまで添え物的である。しかしこのタイムカプセル的通路は、昭和の記憶を激しくつつき回し、物欲を無闇に煽り立ててくれる。朝日新聞社「バンビブック スポーツの見方なんでも号」を300円で購入。ちなみに本を入れてもらった紙袋は、1980年代の秋田書店デッドストックで『少年チャンピオン』連載漫画イラストがメイン。…あぁ、古くて恥ずかしくて懐かしい!

『あいロード』から抜け出し、もはや目の前の「古本案内処」(2015/08/23参照)にスルリと入店。丁寧に棚に目を凝らして行くと、おぉ!今日もなかなかの獲物が並んでいるじゃないか!と喜びつつ角川文庫「日本女地図」ちくま文庫「バカな役者め!」共に殿山泰司、筑摩書房「チャペルのある學校/小島信夫」を計1080円で購入し、ウキウキと中野を後にする。
posted by tokusan at 17:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする