2016年01月31日

1/31東武スカイツリーラインの旅と恥ずべき自作探偵小説詩発掘!

昼飯を済ませてから、西荻窪で「盛林堂書房」(2012/01/06参照)の、元気に継続中のフェア棚に古本を補充する。二三打ち合わせをしてから、楽しくブラブラと古本を買いに行くことに決め、まずは武蔵小山の「九曜書房」(2009/03/26参照)に向かう。実はここ最近、この大事な定点観測店に、タイミングが悪いのか、まったく入れていないのだ。何時行ってもシャッターが下りているので、曖昧な危機感を感じてしまっている。今日も高校野球練習音が間近に聞こえる小道に入り、お店の前にたどり着くと、大変残念ながらシャッターが、シャッターが…。寂しく来た道を引き返し、地下鉄で都心の地下をグングン進み、都営浅草線で押上駅に至る。

華やかなスカイツリーの足元から離れるようにして、北側の地上に出る。目指すのは道路拡張工事がジワリジワリと進みつつある道路際の、リフォーム屋+古本屋の「イセ屋」(2014/07/13参照)である。良かった、開いている。これでようやく古本と向き合うことが出来る。小さな店内の本棚に目を凝らし、あっという間に五冊を掴み取る。東都書房「ベトナムの魔術師 ホー・チ・ミン/小山房二」改造社「鬼火の踊り/ジョルジュ・サンド」(裸本)講談社「バパ・ジャンゴ/井上哲郎」(裸本)三一書房「夢野一族 杉山家三代の軌跡/多田茂治」筑摩書房「わが推理小説零年/山田風太郎」を計500円で購入する。…相変わらず本に付けられた値札に関係なく、50円100円になるんだな…。素晴らしいお店に大いに感謝し、曳舟駅方面へ。複雑な下町の路地を勘でヘロヘロ歩き、どうにかして「古書肆 右左見堂」(2015/11/16参照)にたどり着く。ウィンドウのジュニアミステリ付録本や、相変わらず量の多い店内100均棚と古書の群れを楽しみ、主婦の友社「薔薇いくたびか/小山いと子」を1500円で購入する。買物帰りと言ったお客さんが、フラリと立ち寄っている。お店が鳩の街に馴染み始めているようで、なによりである。

最後にスカイツリーラインで宵闇の高架を進み、蒲生で「プラハ書房」(2010/12/22参照)に駆け付ける。だが、お休み!今日は古本は買えたが、肝心な己の定点観測店を観測出来ずに、不甲斐ない思いを抱きつつ家へと戻る。

そしてここからは、古本屋さんとはまったく関係ない話。
必要があって、本の山の中に埋もれた、もう何年も開けていないキャビネットを掘り出し、引き出しを苦労してガラリと開ける。目的の物は無事に見つかったが、ついでに恐ろしいものを掘り出してしまう。それは今から二十年以上前に、コセコセと手作りした小冊子であった。タイトルは『人格の平面』。中身はなんと探偵小説詩!自分が昔から、どれだけ探偵小説が好きだったか、過去に突然突きつけられたかのような驚きと恐怖!ブルブルと怖気をふるいながら頁を開いてみると、ぎゃぉ。それは読むに耐えない、稚拙で空っぽで雰囲気だけの、顔から火が出続けっ放しになり、鳥肌が立ちまくりの駄文の集まり。当時、美大に通っていた友人の作品作りに影響され、自分も何か創り出したくて、詩集だか何だか分からない小冊子を何冊も作っていたのである。それがいつしか脱線して捻じくれ、大好きだった探偵小説と絡み合い、こんな奇怪で歪で愚かな作品を生み出していたとは、今の今まで忘れていた!…あぁ、本当に恥ずかしい。近代建築好きと探偵小説好きをこんな形に昇華させてしまうとは…だが、パラパラと顔を赤くしながら読み進めてみると、これは明らかに『古本屋ツーリスト』たる、私の原点のひとつなのではと、思い至る。冊子内で使われている、現代建築と近代建築と廃墟の写真は、フィールドワーク命の、片鱗を感じさせる。う〜ん、この小さい冊子の最後に載っている『名探偵依頼者に再び会う』という疑似脚本はいったい…自分で書いておいて呆れているが、これは結構楽しく読めたのが、ちょっと嬉しい。良し!というわけで、たった一部ですが、恥を忍んで面白がってもらうために、これを「盛林堂」のフォニャルフ棚で販売しようと思います。A5横とB5縦の二冊組で、値段は………1200円で!来週の火曜か水曜に入荷しに行きますので、気になったり悶絶したい方は、ぜひとも西荻窪へ!参考までにA5判のあらすじである【事件概要】を下記に掲載。
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【事件概要】
区役所建築ラッシュの中一人の男が消えた。期せずして妻の許に脅迫電話が入るようになり、怯えた妻は夫の消失と併せ、事件解決を都内随一の名探偵に依頼する。明晰な頭脳と神速な機動力で犯人を追い詰める名探偵。しかし運命の悪戯か、犯人捕縛に向かう途中、赤屋根の電話ボックス『丹頂鶴』で一人の男に出会ってしまう。その男は、かつて名探偵が死闘の末に捕え、中野刑務所(旧豊多摩監獄)にいるはずの宿敵であった。鮮やかな微笑みを残し男は消える。新たな対決の予感に心を躍らせる名探偵。いつしか、その宿敵が事件の背後に見え隠れし始め、捜査は困難を窮める。痺れをきらした世論は、名探偵の進まぬ捜査に叱責を浴びせ始めた。追討ちをかけるように奇怪な行動を取る助手。
四人は都内各地で錯綜する。偶然とは思えない事件の重なり、紙の表と裏…。そして難解なパズルの解答を推理のみで確信した名探偵は、探偵生命を賭け三人を一つの場所に誘き出す。空中エスカレーター・通称『スカイリボン』で繰り広げられる深夜の追跡劇。焦燥する四人に投げかけられる店内放送のアナウンス
『山の手台地と下町低地のせめぎあい、その下を古東京川がたおやかに流れる。重箱天気の下を潜り抜け、うつろいの視線を鼓吹者に向けろ。神の文字の図案化はすでに行われているのだから』
暗号を解くのは誰だ!

……むちゃくちゃだ…打っていて、恥ずかしさの極みを感じてしまった…。偉大な三島由紀夫戯曲の「黒蜥蜴」の影響が大き過ぎる…。しかしまぁ、これも考えようによっちゃ、古本ということになるのかな…。
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2016年01月30日

1/30「古書モール 竜ヶ崎」は本日休業!

寒い朝の布団の中で、なかなか起き上がれず目をパチクリさせていると、もう一年以上足を延ばしていない、興奮&疲れ目必至の「古書モール 竜ヶ崎」(2009/12/26参照)にどうしても行きたくなってしまった。寂れた郊外ショッピングセンターのフロアに盛大に広がる、雑本とボロい本の海に、どうしても身を踊らせたくなってしまった。そんなわけで午前のうちに、常磐線でグングン北東に向かい、佐貫駅で高揚している鉄道マニアの一団と共に関東鉄道に乗車し、寒さが都心より一層厳しい竜ヶ崎駅に午前十一時半に到着。冷気を服の中に沁み入らせながら、ちょっと歩いて『Ribra』の中に逃げ込む。だが、外ほどではないにしろ、中も暖房が節約されているためか、だいぶ寒い。鼻をすすりながら奥に進んで行くと、フロアに蔓延る古本棚が早速地味にカオスに出迎えてくれた…おや?いつも一階での古本精算を担当していた駄菓子屋ゾーンが、まるごとなくなってしまっている…注意して辺りに目を配ると、『本の精算は婦人服のピッコロへ』と貼紙されていることに気付く。そういえば、さらに奥のフロアを見透かすと、空きテナントや幔幕に囲われた未使用スペースが増殖している。どうやら一年の間に色々な変化が、このショッピングセンターに起こっているようだ。古本ゾーンにそれほど変化が見られないのは、もっけの幸いである。少し明度の低い蛍光灯を頼りに、各通路を丁寧に探索して行く。古い裸本や絶版漫画が、以前より増えた気がする。そして相変わらず安い。だからと言ってあまりバカな買い方はせぬよう気をつけながら、四十分かけてすべての棚に目を通し、四冊を手にする。初めてなので、ちょっとドキドキしながら隣りの精算場所である婦人服店に向かうが、誰もいない。「すいませ〜ん!」と声を何度か上げても、何のレスポンスもない…しばらく古本を抱えて、ゆったりサイズ婦人服の多い店内をウロウロして時間を潰す。すると五分ほど経ってから通路からご婦人が現れ、「すいませ〜ん。いらっしゃいませ〜」と慌ててレジ内に駆け込み、丁寧に精算してくれた。錦城出版「故郷を求めて/下村千秋」(裸本)浪速書房「好色党奮迅録 緑雨の巻/宮本幹也」(函ナシ)婦人画報社「ジャズ・タンゴ・シャンソン/河野隆次・服部龍太郎・高橋忠雄・松本太郎」(裸本)けいせい出版「活劇少女探偵/川崎ゆきお」を計900円で購入し、幸先良いスタートを切ったつもりになる。さて、これからが本番だ!と気合いを入れて二階に上がれば、奥には夢にまで見た古本の海。逸りながら早足で近付くと、どうも様子がおかしい。あっ!広いゾーンの通路際の所々に『本日休業』の貼紙が出されている!何てこった!お休みのほぼないショッピングセンターの中にあるお店だから、古書モールも当然営業しているものと思っていたのだが…。それにしても、この本がほぼ放置された、ただ通路がロープで封鎖されただけの大胆な休業っぷりには、呆れながらも恐れ入る。ある意味、とても長閑な光景である。しばし大量の、今日は買うことの叶わぬ古本に囲まれながら、営業スケジュールカレンダーに目を落とす。そこに付けられた赤いバッテンが休業日だとすると、月の半分程は閉まっているようだ。恐らく店番を確保するのが大変なのだろう。仕方ない、今日は一階で古本が買えただけでも、良しとしておかなければ。
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がっつり掘り出し&購入するつもりだったので、拍子抜けしながら表に出ると、こんなに寒いのに野良猫が身体を丸く膨らませて座り込み、近付くと『ニャア』と一鳴き。ひとしきり撫でまくって駅に戻り、引き返して柏駅で途中下車する。繁華な西口に出てスタスタ歩き「太平書林」(2010/06/03参照)の安定して楽しめる店内を目をギラギラと光らせてウロウロ。講談社ロマンブックス「都会の白鳥/藤沢桓夫」ハヤカワポケミス「恐怖への旅/エリック・アンブラー」を計400円で購入する。

あまりの寒さに帰巣本能を激しく刺激され、たちまち高円寺駅着。高架下の「藍書店」(2014/01/14参照。もう新規開店して二年になるのか)外壁棚から、講談社昭和三十二年たのしい二年生9月号付録「しゃかいかブック」(馬場のぼる表紙&まんが)山手書房新社「鴉 誰でも一度は鴉だった/渡辺啓助」を計600円で購入し、結局寒さにやり込められてしまったので、早々に家に逃げ帰る。
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2016年01月28日

1/28バイトに身をやつし「岡崎武志堂」に再度潜入する。

本日は夕方から、岡崎武志邸の地下室である仕事場が古本に埋もれて、にっちもさっちもいかなくなった「岡崎武志堂・本店」(2012/10/19参照)の偵察に、「盛林堂書房」さん(2012/01/06参照)と向かうことになっていた。まずは西荻窪で盛林堂さんと待ち合わせするために、電車に乗らずにエッチラオッチラ歩いて向かいつつ、途中「ささま書店」(2008/08/23参照)に当然の如く惹き付けられ、前週の映画本放出に続いて今週は推理小説関連本が店頭に出されているのに興奮し、講談社「ミステリイ・カクテル/渡辺剣次」東京創元社「推理小説の歴史/フレイドン・ホヴェイダ」高文社「推理小説の謎/村田宏雄」第三文明社「推理小説の世界 宿命の美学/権田萬治」東都書房「黄金の殺人/ヴァン・グーリック」小学館「きみはカメラマン/斉藤政明」双葉文庫「推理文壇戦後史1/山村正夫」を計1180円で購入し、結構満足して西荻窪着。そこから改めて国立に向かい、列車トラブルに巻込まれながらも、午後五時過ぎに岡崎邸着。すぐさま地下の書庫に潜入し、岡崎氏の「本踏んでそのまま入って〜」の恒例の声に迎えられつつ色々見積もりながら、三人の力を合わせてまずは作業の第一歩として、本の積み上がった各通路の開通に努める。作業開始から一時間強経過…どうにか人間が通れるように仕立て上げ、今後の古本整理計画を三人の頭脳を寄せ集め立案。そんな風にして本日の任務を手を埃だらけにして終えつつ、嬉しい労働の報酬として小学館小学六年生昭和44年2月号付録「最新SF大事典/大伴昌司・斎藤守弘・南山宏」(円谷プロTVドラマ「怪奇大作戦」のあれこれや、大伴によるSF本の書評や、パチもん妄想怪獣が掲載されたクレイジーに楽しい一冊!)を拝受する。…あぁ、古本を買うのは生き甲斐で本当に楽しいが、度を越すと人間ひとりの手には負えなくなるんだなと改めて認識した、古本神を反面教師として直視した一日であった。
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2016年01月27日

1/27記憶に埋もれていた古本屋さんを訪ねる

多額の費用がかかる事務的手続きをするため、新宿の家電量販店に赴く。パパパパッと素早く済ませて、気分をどんよりさせながら、西口から地下に潜り丸ノ内線新宿駅直上の通路を進む。この地下通路片側に並ぶ小商店群に、古本屋さんの一軒でもあれば良いのだが…などと妄想していると、ふと以前は『ALTA』の一階裏口付近で、時折小さな古本市が開かれていたのを思い出す。もう十年以上前のことだが、いつ頃からやめてしまったのだろうか。そんな昔の思い出に囚われながら『サブナード』まで潜り、明日までの「古本浪漫洲Part5 全品300円均一」をブラブラ眺めて行く。大和花の画房「怪物画人 飯塚羚児」晶文社「輸入レコード商売往来/岩永正敏」を計600円で購入し、そのまま地下街を通り抜けて西武新宿駅方面へ。この地下街の特徴である急階段をハァハァ上り詰めて地上に顔を出し、大ガードを潜ると、左手には「天下堂書店」(2013/06/26参照)のあった『思い出横丁』がゴチャゴチャと存在している。もはやその中に古本屋さんがないことを嘆息し、『小滝橋通り』に入り、北に向かって歩き続ける。途中大久保近くで横丁の「修文書房」(2010/06/08参照)に立ち寄り、一人きりの静まり返った店内に執念深く留まり、新感線文庫「金田真一耕助之介の冒険」を500円で購入する。

ここから先は中野辺りまで行かなければ古本屋さんは現れないが、そのまま『小滝橋通り』を北上し続ける。トボトボ中央線の高架下を潜ると、左には静かにクルクルとフォークリフトが働く『淀橋市場』。その先はいつの間にか巨大建築群が通りを見下ろしており、昔とはすっかり街の雰囲気を変えてしまっている。だが『小滝橋交差点』にたどり着くと、そこからは以前の街の雰囲気が保たれており、ホッと一安心。冬の陽が反射する川面に左目を射られながら、神田川を渡る。やがて右に『水再生センター』の気配を感じると、通りは坂となり西にグッと曲がり始める。『上落合一丁目交差点』で北に足を向け、『上落中通り』の緩やかな坂を下って行くと、左手にもうずっとシャッターを下ろしっ放しの古本屋さんが、懐かしい姿を見せてくれる。「文学堂書店」である。日本古書通信社「21世紀版全国古本屋地図」によると大正四年創業の老舗で、文学書・国文・美術・趣味・歴史・郷土誌・錦筆・肉筆ものに強いお店とある。その外観はモルタルの看板建築で、最上部に『趣味の古本屋』と店名の看板文字が掲げられ、軒下に『古書専門』とある店名プラ看板が設置されている。うむ、美しく、かなり店内に何かありそうな佇まいだ。実は私は二十年ほど前、このお店の向かいにあるマンション半地下の事務所に、勤めていたことがある。その時は何故だか古本沈滞期だったので、目の前に古本屋さんがあるのに、ほとんど興味を示したことはなかった…今から考えると、タイムマシンに乗って『お前、あそこ古本屋だぞ!何故入らないんだ!何かあるかもしれないぞ!』と叱りたいような情けない事態である。それでも薄ぼんやりと、一度くらいは気まぐれに入ってみた記憶があり、木枠ガラス戸の向こうに縦に棚が並び、棚の上に車雑誌が積み重なっていた印象がある…いや、これはまったく確信の持てぬ、ねつ造された記憶なのかもしれない。そしてきっと何も買ったことはない。だが、このお店のことを思い出すと、そんな棚の印象が、何故だかいつも引き出されて来るのだ。目の前には、昔と変わらぬ店舗の姿。変わったのは最上部の看板文字の『書』の上の部分が剥落しているところくらいか。しばらくシャッターの前で、二十年前の感傷に耽り、東中野方面に歩き始める。今となっては入れないお店について、そんな記憶が少しでもあるのは幸せなことなのかもしれない。戻った交差点際で、これも昔からある和洋菓子『アンドロワ』でクッキーを何枚か買い、長い懐かしい商店街を、歳月を越えてトボトボたどる。
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2016年01月26日

1/26神奈川・金沢文庫 古本小屋 金沢文庫店

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京急快特で、速やかに三浦半島のとば口へ。東口に出て、溜まりのような駅前から抜け出して、商店や家やビルが建て込み、排ガスの吹き荒れる『国道16号』に出る。東側歩道に身体を預け、スタスタと南に向かう。やがて『君ヶ崎交差点』の歩道橋を潜れば、行く手のビル群の袖看板の重なりの中に、『本』の文字を容易く発見。主に神奈川圏東南部に進出していた、マイナーリサイクル古書店チェーンの一支店である。藤沢に本店(2013/08/09参照)が現存しているが、他の支店はまだ残っているのだろうか…。表にワゴンなどは出ていないので、旧式の古めなガチャガチャを眺めながら、比較的新しそうな看板下を潜り、白っぽい店内へ。横長でちょい広めの空間である。右奥に帳場兼作業場があり、入口付近のフロア手前側には、ゲームやコミック(絶版漫画コーナーあり)・79円均一本が集められ、古本は奥のフロアと左端通路にまとめられている。入口左横のウィンドウ沿いにはビジュアルムック類のラックが連なり、左壁棚にガイドブック・美術図録・日本文学文庫・時代劇文庫…おっ!最上段列に古書のコーナーが設けられているじゃないか!さすがに冊数は少ないのだが、それだけでも古本心は、たちまち油紙のようにメラメラと燃え上がる!そのまま上段には教科書類が続き、向かいのフロア棚にはラノベ・雑学文庫・新書・海外文学文庫・絶版文庫(少々)が並んでいる。奥のフロアは、横向きに平台付きの背中合わせの棚が二本縦列で計四本並んでいる。ムッ、柱の上にはさいとうたかをの『ゴルゴ13』色紙が飾られている…。一番手前には、海外文学・実用・言葉・映画・サブカルなど。次の通路には、ドイツ・ヒトラー・戦争・スポーツ・ペット・自然・オカルト・旅・ノンフィクション・ミステリ&エンタメ&日本文学(文遊社の野呂本が1400円均一で三冊も!)・資格・ビジネスが集合。その裏側は100均文庫と100均単行本で、奥壁棚には歴史・郷土・横浜・アイドル写真集が並んでいる。基本はリサイクル系古書店だが、小さいながらも古書コーナーがあり、所々に安値の古い本も紛れ込んでいるので、それがちょっと嬉しくてたまらない。値段はちょい安〜普通。農山漁村文化協会「農村演劇 やり方と脚本集/村山知義編」を購入する。こうなると他の支店の消息が気になって来るな…。

お店を出たらさらに南に歩き、ビル内型ショッピングモール『サニーマートB館』二階の「INFINITYぶっくす」(2011/06/05参照)を訪ねてみるが、哀れ『ダイソー』に取って代わられ、かつて、見捨てられたような古本ばかりが集まっていたほの暗い知の淀みは、明るい100均の物品に一掃されてしまっていた…誠に残念なり。
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2016年01月24日

1/24東京・千駄木 古書OLD SCHOOL仮オープン中!

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そろそろ頃合いかと、南陀楼綾繁氏にタレ込まれた『COMING SOON』の札を下げていたお店を見に行くことにする。『団子坂改札口』から地上に出て、南陀楼氏にお店の場所をプロットしてもらった、『不忍ブックストリートMAP』をバサリと広げる。『団子坂』を背にして、北の『三崎坂』方面へ西側の歩道を歩き始める。ひとつ目の信号を過ぎ、道が角度を持ち始める『台東区』一歩手前で、西の小道にクイッと分け入る。軒先が近接するニメート幅ほどの小道に、ズンズン入り込んで行く。一旦T字路に行き着くが、北に進んで、すぐにまたブロック塀に挟まれた小道を西へ。行く手には小さな公園が見え、やがて広めの静かな通りに出ると、すぐ右手の古いモルタル建築一階前に、小さな立看板が出されていた。そこには『本日仮オープン よかったらのぞいて見て下さい』と書かれている。ガラス戸を引き開けて中に入ると、暖房がてきめんに効いており、先客がおひとり…。両壁にはスチール棚、真ん中にも背中合わせのスチール棚が一本、正面棚脇に小さな棚が一本、奥右側に帳場がある。現在“仮オープン”中ということは、店内構成も棚並びも大いに変わる可能性があるのだが、なにはともあれそのかりそめの姿も記録しておこう。右壁にはほぼすっかり空いている美術書・大判本棚、そして大量の100均本が、ミステリ&エンタメ・参考書・時代小説・海外文学・ノンフィクションとバラエティに富んだ充実さを見せている。向かいには同じく100均本の日本文学文庫・中公文庫・ノベルス。正面棚には、ジャズ・平岡正明・音楽・植草甚一が収まっている。フロア棚の左側には、海外文学文庫・海外ミステリ&SF文庫・新書・ハヤカワポケミス。そして左壁棚に、決して“仮”ではない“真”のお店が垣間見える、海外文学・和洋幻想文学・日本文学・文学評論・映画・芸能・丸山健二が重厚に並んでいる。海外文学が特に良質な並びを見せており、勝手にワクワクと『真オープン』時が楽しみになって来る。値段は安め。先客の方が精算しながら、静かなる白熊のような店主と話し始めたが、話を聞いているとなんと「ひるねこBOOKS」さん(2016/01/11参照)で、ご近所&新開店古本屋さんの仁義を交わしに来たところであった。その後、当然私もひるねこさんに気づかれ言葉を交わす。番町書房「シャーロック・ホームズ健在なり/長沼弘毅」河出書房新社「ビッグ・サーの南軍将軍/リチャード・ブローディガン」荒地出版社「ワイアット・ワープ伝/スチュアート・レーク」(裸本)を購入する。聞けば『真オープン』は二月初旬を目指しているとのこと。その時にお店はどんな形になっているのか、この多過ぎる100均棚は続いているのか、新ジャンルたちはどんな並びを見せてくれるのか、もっと良い本が出て来るのではないかなど、自分勝手に期待を大きくして、新たな古本屋さんの出現を心から歓迎する。また見に来ます!帰りは丘の上に出て、日暮里駅から帰路に着く。
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2016年01月23日

1/23神奈川・伊勢佐木長者町 野球古書店 咲良本屋

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日ノ出町駅前から『横浜駅根岸道路』を南南東に下って行く。繁華で猥雑なビル街は、まるで新しい平成が、古い昭和に飲み込まれようとしているかのような、独特な土地の雰囲気を、昼間でも精力的に発揮している。大岡川を越え、『イセザキモール』を越え、『国道16号』を越え、大通り公園に至ると、そこには市営地下鉄『伊勢佐木長者町駅』の地上口。ここからさらに南南東に300mほど歩き、『長者町一丁目交差点』で西北西へ足を向ける。しばらくすると右手に、ロケットと着陸ポッドのイカした遊具が設置された『千歳公園』が現れるので、公園をナナメにザクザク横断して、一本北の裏通りに抜け出る。さらに西北西に進めば、左手大きなビルの一階に、明るい緑のテント看板を張り出した、野球古書専門店に出会うことが出来る。コメントタレコミで知ったお店である。寂しい裏道に古本屋さんの唐突感、そして野球古書という専門性が、微妙に足を竦ませる。だが、ガラスに貼られた長嶋のバッティングフォームに勇気を貰い、ガラス戸を引き開けて店内に入る…小さい。気持ちの良い、小ささだ。壁際に本棚、そして棚前にはラックや箱や小ワゴンが置かれ、通路スペースを不規則な形にしている。左奥に小さく狭いカウンター帳場があり、物静かな現役引退した野茂英雄風青年が座っている。それにしても本当に野球本ばっかりだ!入口左横の100均野球本二段ワゴンを見てから、そこに立ったまま奥の野球特集グラフ誌ラックと、セパ各球団広報誌がズラッと並ぶ棚を、ほへ〜っと臨む。帳場横のプロ野球選手名鑑と野球雑誌に視線を走らせ、奥の棚前にちょっぴり近付く。ジャンル外50均100均箱の向こうには、高校野球・大学野球・プロ野球・小関順二(スポーツライター)・メジャーリーグ・野茂英雄が収まっている。右壁には「number」などの野球を特集したスポーツ誌、それに野球関連の文庫と新書・長嶋茂雄・王貞治・野球漫画が並んで行く。入口右横の棚には、星野仙一・野村克也・原辰徳・落合博満・松坂大輔・イチローなどが勢揃い。小さなお店だが、それでも全部を野球本で埋め尽くされると、清々しいほどの意志の強さと野球愛が、遠慮呵責なく伝わって来る。古い本はほとんどなく、九十年代以降の本が中心だが、専門店なのに値段が安め〜普通なのは魅力的である。値段は本に書かれたり貼られたりしているのではなく、スリップ形式で挟まっている。講談社「早慶戦百年 激闘と熱狂の記憶/富永俊治」を購入する。

この後は『イセザキモール』に戻り、愛しの「なぎさ書房」(2016/01/10参照)を再度訪れる。閉店セール中の店内は、相変わらず賑わっており、棚はブランクなく補充がこまめに行われているようだ。恐らくここに来られるのは、これが最後となるであろう。…ならば、何を買うべきか…。店内をじっくり一巡して選んだのは、美術本棚最上段に場違いに挟まっていた、小山書店の少年少女世界文庫第十編「街の少年/豊島與志雄」であった。50%オフの2250円で購入する。三十年間、今まで本当にお世話になりました!

日ノ出町駅にいくばくかの寂しさを抱えトボトボ戻っていると、大岡川の手前で横浜市の公共掲示板に何気なく目が留まる。あっ!そこには、さっき訪れたばかりの野球古書専門店の宣伝ビラが、ルールを守って張り出されていた…渋い!なんと渋く奥ゆかしい宣伝方法なんだ。
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2016年01月22日

1/22東京・立川南 BOOKBOOK立川店

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JR立川駅から南に歩いて一分ほどの多摩都市モノレールの駅下から、ビル街の中の『立川南通り』を西に進むと、『諏訪通り』とクロスする『柴崎二丁目交差点』際に、埼玉と西東京に根を下ろすマイナー新古書店チェーンの一店が、ビル一階に入っていた。…こんな所に…知らなかった…とコメントタレコミに感謝して店内へ。するとそこはすぐに驚くほど狭い通路。右にどうやら細長い帳場兼作業場があり、向かいのラノベ・コミック棚と共に圧縮通路を造り出しているのだ。奥まで進んでさらに中へ入り込んで行くと、もはやそこから広がっているのは狭く細かいアダルト通路のみ。これはマズい!と、必死にラノベに救いを求めるも、やたらと長いタイトル、読むのに苦労する作家名、十巻以上続くシリーズ物の攻勢に、手も足も出ない。た、立川は、もはや北側の「地球堂書店」(2008/08/30参照)だけが、旧世界の古本屋界を伝える一店となってしまった…。何も買えずに表に出て、ビルの谷間を駅へと虚しく引き返す。

西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)に、本日分の古本不足を切に感じながらたどり着き、まだまだ懸命に継続中の「古ツアフェア@盛林堂三たび!」に補充しつつ、追加入荷の「古本屋ツアー・イン・首都圏沿線」に識語署名捺印する。そこにこれまた再入荷した「ミステリ編集道」に識語署名を入れるため登場した新保博久教授と挨拶を交わし、場を譲る。盛林堂・小野氏からは、今度出る盛林ミステリアス文庫「犯罪都市〈補遺〉/國枝史郎」の表紙デザインギャラを、雄山閣出版「仮面紳士/日影丈吉」(カバー貼付)岩谷書店「捕物帳傑作選/城昌幸編」(表紙一部欠損)の二冊で物納される…うむむ…だが、これは心を見透かされたように嬉しいぞ!ハイカラ右京を昔の本で読めるんだ!さらに店頭棚から見つけた四季社「山窩は生きている/三角寛」を100円で購入。この本、見返しにイタズラ書きはあるが、カバー画が茂田井武なのが、ジワジワと寂しかった古本心に幸福をもたらす。しかも内容が前に読んだ、NHKラジオアナウンサー・藤倉修一「マイクとともに」(2014/09/11参照)の一章『ターザン部落』(三角の案内により山窩の棲処を取材する探訪記事)と呼応しているのを発見し、ただの均一本からそのグレードが、己の中でグググンとアップしてしまう。
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2016年01月21日

1/21高津の「ブックセンターいとう」は30%OFF閉店セール中

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またもや閉店情報のタレコミがあり、田園都市線で高津へ向かい、店頭がもはや古着屋のような「ブックンセンターいとう 高津店」(2013/01/21参照)へ駆け付ける。古着は50%OFF、古本は30%OFFの閉店セール中である。だがここは、キレイな新古書中心の、古い本はあまり見られない店舗。一応ほとんどの書籍棚に目を通してみるが、やはり古さがないので心があまり弾まない。結局有隣新書「都市横浜の半世紀/高村直助」を420円で購入し、お店にあっさりとお別れを告げる。今年もまだまだ『いとうグループ』の淘汰は続くのだろうか。お店は2/14まで。

駅に戻りつつ裏通りに入り、「小松屋書店」(2009/08/15参照)を覗きに行くも、残念ながらお休み。ちょっと楽しみにしていたので臍を噛み、おとなしく渋谷行きの電車に乗り込む。この後夕方から西荻窪で打ち合わせがあるので、素直に向かわなければならないのだが、こうなると古本が買いたくてどうしようもなくなって、渋谷で寄り道し『宮益坂』をダッシュして「中村書店」(2008/07/24参照)にハァハァとたどり着く。大好きな店頭箱を漁るも、何も発見出来ずに落胆。すぐさま「巽堂書店」(2008/07/24参照)に移動すると、ようやく店頭棚から朋文堂「リプレーの世界奇談集2/庄司浅水訳編」を100円で購入する。またもや坂を駆け下りて電車に乗り込み、どうにか時間通りに西荻窪に到着する。

打ち合わせを終えてすっかり暗くなった夜道を歩き、それでもやはりまだまだ古本が買いたくて仕方ないので、夜が覆い被さる荻窪「ささま書店」(2008/08/23参照)へ。すると店頭棚は、映画関連本がいやに多い状態。何かありそうだと鵜の目鷹の目で寒さに震えながら、JICC「怪獣学入門」光画荘「8ミリ映画の特殊技法」ジャスト出版「8ミリ特撮の楽しみ/青木寿一郎」日本映画テレビ技術協会「映画の特殊効果 SPECIAL EFFECTS in Motion Pictures/フランク・クラーク」(裸本)と、映画を撮る予定など一切ないのに、面白そうな特撮技術書を抱え込む。計630円で購入し、ようやく人心地がつく。

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今日の収穫は訳書で昭和四十三年刊の「映画の特殊効果」。大気現象・ミニチュアワーク・爆発・射撃・特殊小道具・光学効果など、ハリウッドの特殊撮影技術の技法(1920〜50年代のもの)が、当時の貴重なスチール&スナップも載せ、詳細に紹介されているのだ。幼い時の目と心を虜にした、特撮の秘密の数々が、これで白日の下に!CGがなんだ!『くもの巣かけ機』最高!
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2016年01月20日

1/20銀座で薄っぺらい脚本に魅せられる

天国のような布団の暖気から身体を引き剥がし、今日から始まる「第32回銀座古書の市」へ古本を買いに行くことに決める。大股に冷たい街を急ぎ、丸ノ内線で銀座に着いたのが午前十時十一分…開店に立ち会えれば面白かったのだが…効果覿面な布団の魔力に遅刻の責任をなすりつけつつ、迷路の如き銀座地下通路を攻略し、地下から『松屋銀座』に突入する。まだお客のそう多くない、高級感に満ち満ちた食料品フロアでエスカレーターを探し出し、後はひたすら八階を目指して上昇する。そうして会場に到着したのが午前十時二十分。フロアの一角である、陶器市と領地を分け合う小ホールほどのスペースには、すでに多数の人が犇めいていた…それは、もはや平日などという社会常識は通用しない、午前中の古本祭りの空間!
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四十近いワゴンと、四十近いガラスケースと、十台ほどのラックが、古書・古本・雑本・稀本・和本・洋書・文庫本・小冊子・パンフレット・附録本・地図・掛軸・刷り物・古雑誌・肉筆を並べ、各棚前は満遍なく混み合っている。主に黒と灰色の古本修羅たちが、古本を両腕に抱えたり、積上げたり、陳列本の上に確保した本を積み重ねたり、買物かごを一杯にしていたり、すでに休憩していたり、床にしゃがみ込んで吟味していたり、今日はスーツを着て粧しこんでいる古本屋さんと話したりしながら、本を出し入れする音と衣擦れの音を発し、静かな闘いを繰り広げている…頭上からは何故かマイケル・ジャクソンの歌が降り注ぎ、購買意欲を煽り立てている…。嗚呼、爽やかな冬の青空が広がる屋上庭園の直下には、古本を求める修羅がワシャワシャと血眼で蠢く煉獄が広がっているのだ!そんな愚かな妄想に耽りながら、負けじと素敵な煉獄に身を踊らせる。「五十嵐書店」(2009/07/13参照)と「古書明日」の古書群が魅力的だが、会場で一番異彩を放っていたのは、奥の掛軸コーナー前にある「徳尾書店」ゾーン。人が二重に鈴なりになっているのだが、その塊は入れ替わることなく根を下ろしたように強固にセメントされてしまっている。なんたって棚の半分が、貸本漫画・漫画雑誌・附録類がドッサリなのである。反対にも絶版漫画・音楽・小説・児童書などが並んでいるが、こちらも人が多くしかも隙あらば裏側に食い入ろうとする猛者が食らいついている状態。遠巻きに塊を眺めながら、明弦書房「喜劇放談 エノケンの青春/榎本健一」(800円)ベストセラーシリーズ「意地悪な本/テディ片岡・しとうきねお」(200円)だけを手にして、早々に離脱する。負け犬は負け犬らしく、他で何かを漁るか…と会場をしつこくグルグル。やがて「丸三文庫」(2010/05/31参照)が大量に出していた映画脚本に狙いを定め、腰を落ち着けて一冊一冊を丁寧に見て行く。その結果、島田一男原作の「事件記者 第七話 時限爆弾」(2000円。TVシリーズではなく日活で映画化した一時間物の脚本である)と「夜の狼」(1500円。原作は古本値がド高い忘れ去られた推理小説作家・下村明の「夜の顔役」(浪速書房)で、監督は牛原陽一)を掘り出すのに成功する。共に手書きのガリ版刷りで、三段組で二十ページほどの薄さ。表紙には『松竹大船撮影所脚本部』のハンコが捺されている。うむうむとそれなりに満足し、奥の特設会計所で精算する。市は1/25まで。集中した一時間の祭りを過ごし、銀座を後にする。
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そしてお昼過ぎに家に戻ると、日本古書通信社を経由して、稲垣書店「一頁の中の劇場 「日本古書通信」誌上映画文献資料目録全一〇七回集成」が、映画古書専門店の「稲垣書店」さん(2009/10/26参照)より謹呈され、届いていた。どの頁からも、映画への愛と探究心と資料の価値作りと古本屋の矜持がダダ漏れになっている、愛すべき執念と狂気あふれる一冊である。なんたって、すべての特集に対してコラム記事が設けられ、売り上げ金額までもが掲載されているのだ。お店を訪れるだけでは知ることの出来ない、古本屋さんの一面がここにある。あぁ!第107回に掲載の「探偵小説ジゴマ」と「悪魔バトラ」が欲しい!
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2016年01月18日

1/18雪解けの歩道を歩いて入江たか子の写真を手に入れる

朝から雨の音を聞きながら、古本屋のデータとモニター上で格闘していると、いつの間にか雨が上がり陽まで射し始めた午後三時。こういう雪の日は、直近の古本屋さんを見に行くに限ると、雪が積もると恒例のように見に行く「古本ブック流通センター」(2008/08/09参照)へ向かう。歩道にシャーベット状に残る雪をベシャベシャと踏み締め、水気の多い雪玉をぶつけ合う小学生軍団の中を擦り抜け、転ばずにお店に到着。
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中に入ると通路に自転車が二台も置かれてしまっている。気にせず奥から出て来たご婦人店主に「本を見せてください」と挨拶をし、相変わらず代り映えのしない棚に挑んで行く。しかし、やはり少しだけ、前には見たことのなかった本が補充されている。角川文庫「魔の首飾/高木彬光」講談社世界伝記全集「樋口一葉/和田芳恵」を計600円で購入すると、「あなた、古本屋の本を書いている人?」と突然正体を見破られてしまう…何故だ?一番バレなさそうなお店なのに…。聞けば、お店に来たお客さんに本に載っていることを教えてもらい、尚且つどんな風貌か伝えられていたとのこと。その風貌とは『髪の毛を縛っている人』…なのである。「私の店に髪を縛って来る人なんて、アナタしかいないわ」…極々単純な消去法で、犯人にたどり着いたわけである…お見それいたしました。

思わぬ恥ずかしさに足を早めて、『早稲田通り』を今度は東へ向かう。途中小学生と同じようにベシャベシャの雪玉をぶつけ合う、中学生男子軍団の戦火の中を潜り抜けつつ十五分ほど行進して、高円寺の「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)に到着…そういえば開店してもうすぐ一年になるのか。そんな風に感心しながら、店頭で一冊店内で一冊。えくらん社「秘帖/入江たか子」鱒書房「ホロンバイルの荒鷲/入江徳郎」(昭和十六年刊。装画装幀と扉絵は藤田嗣治で、荒野の空港に待機する戦闘機とドラム缶の上に立つ歩哨兵を、水彩で描いている。これも仕事とは言え、戦争画ということになるのだろうか…。巻末の広告を見ると、他の戦記物も藤田が装幀を手掛けている)を計600円で購入する。
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店頭で見つけた、赤い函入りの和紙で出来た軽い本は、化け猫女優・入江たか子の著書(昭和三十六年刊)である。中身はお色気エッセイ集。こんな本を出していたとは…見返しに貼付けられた妖艶な本人のモノクロ写真が、なんとなく秘密出版めいた雰囲気を醸し出している。こんな本が店頭で買える古本屋さんは、やはり素敵だ。
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2016年01月17日

1/17東京・浅草 浅草エキミセ古本市一階ver.

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ちょっとした取材を兼ねて浅草へ乗り込む。いつものように『浅草地下街』から表現主義的急階段を駆け上がると、背後には巨大船のような、東武線浅草駅を二階に内蔵した『松屋』が堂々と聳えていた。その舳先のような南端から内部に入り込むと、駅へと続く青い大階段前の二本の柱に、四台の立体ワゴンがくっつけられ、小さな古本市が開催されていた。同『松屋』の屋上で開かれる古本市(2014/11/19参照)と同じ名だが、その規模は遥かに小さい。流れ続ける人波から抜け出て足を停め、歴史・浅草・江戸・文学・昭和・「赤い鳥」&「少年倶楽部」復刻版・伝統&大衆芸能・一般文庫・古雑誌・ブロマイド・絵葉書と、喧噪の中の古本世界をしばし楽しむ。好みは「志賀書店」の戦前〜戦後周辺の文学本だが、値段がピシッとしているので、手を出したり引っ込めたりを繰り返す。だが意を決して、和田堀書店「いまはむかし/久保田万太郎」を千円で購入する。市は19日までだが、毎月定期的に開催される模様。

『松屋』から離れて、観光客がギッシリ詰まった街路を避けて歩き、途中一度も入ることの出来なかった「白鳳書院」の看板などが撤去されているのを目撃し、『千束通り』の「おもしろ文庫」(2010/04/04参照)で新日鉄「夢みる街の新・モノ語り」(広告に使っていた特集記事をまとめたもので、鉄鋼業を啓蒙するための非売品A6判SF風絵本である)を100円で購入しつつ、浅草北部を念入りに自己流に探索する。最近、「エンコの六/サトウハチロー」(内外社)「浅草寺界隈/武田麟太郎」(春陽堂)「陰獣/江戸川乱歩」(博文社)と、浅草を舞台にした話を昭和初期の古い本で読み込んでいた。そのせいか、街の風情が激変しているとは言えども、街の形や道の形、標識に残された地名や古い建物から、活字で読んだ物語の面影と残り香と幻影を、足裏と過去を見通すモノマニヤックな目で掴み取り、八十年前の浅草に精神を半分潜り込ませるのに成功する…こんな行為もまた、古本を読む醍醐味のひとつであると、文章と重なる街に出る度、いつもぼんやり思っている。街路を縦横に歩き倒した後、名ばかり知っていた『待乳山聖天』を初めて訪れる。浅草に、本当にこんな小高い丘があったのかと感激し、広重が描いたという古い築地塀にうっとりと魅せられ、さらに時代を遡り、束の間江戸を垣間見てしまう。
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2016年01月16日

1/16一月いっぱいで閉店する「篠村書店」は大繁盛中!

去年の12/4にNHK『ドキュメント72時間 神保町特集』で取り上げられ、今年の1/13に朝日新聞朝刊社会面で『鉄道古書の聖地 終着駅』のタイトル記事で、お店の歴史と閉店の顛末が綴られた「篠村書店」(2013/06/13参照)の様子を、神保町パトロールを兼ねてに見に行くことにする。

水道橋駅から歩き出し、まずは「丸沼書店」(2009/12/17参照)で仏蘭西シュルレアリスム系詩人の彌生書房「デスノス詩集/堀口大學訳」を500円で購入する。その後は何も買えずに『靖国通り』まで出てしまい、あっけなく「篠村書店」前。表の棚と台は本も少なく無惨なことになっているが、青い店名が入ったガラス越しに店内を透かし見ると、ギョッ!大混雑!店内に十人ほどの黒や灰色の男性がひしめいている。ガラスの端には『本月末日で閉店致します』の小さな貼紙がある。
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右側から店内に入ると、社会科学と鉄道の通路で、もはや棚のあらゆる所にブランクが生じている。そして、鉄道雑誌のバックナンバーを、懸命に繰る男たちの姿がそこにあった。軍事や兵器関連が集まる左側通路も、もはや似たような状況である。棚の所々には『店内の本3割引です』のビラが下がっている。お客さんは、別れを惜しみに来ている人が大半で、みな精算時に帳場の老婦人と楽し気に会話を交わして行く。「お金ないのに買いに来たよ」「四国から来ました」「お店誰かが継がないんですか?」「探してた本が見つかりました」「昔良く買いに来てたんです」…老婦人はそのひとりひとりに丁寧に応対し、むしろお客さんより長く喋り、常にハイテンションである。そして「こんなにお客が来たことなんてなかったわ。こんなに本が売れることなんてなかったわ。いつもは二人くらいしか買わないのよ〜。こんなの初めてよ〜」と嬉しい悲鳴を上げている。確かに入店した人は、皆何かしら買って行く状態が、見事なまでに続いている。本を一冊掴み、精算とお喋りの列に並び、順番が来て「ひとりなのですみませんね」と優しくことわられ、久保書店「世界拳銃百科/大藪春彦監修」を890円で購入する。机の上には、動かぬレジと計算機、それに枠が壊れて玉の取れたソロバン…。お店には、まだまだ次々とお客さんが飛び込んで来る。入れ替わりに表に出て、平台やラックを掴み、少し力を入れてみる…それはやはり、思いの外、重かった。こんなものを、毎日九十歳の老婦人が出し入れしているとは、信じられない重さなのである…。後半月で、神保町で渋く輝いていたひとつの灯りが、またフッと消えてしまう。しかしこの大繁盛ぶりは、とても華やかな幕引きで、まるでちょっとしたお祭りのようであった。

さらに平日より歩道に淀む人の塊が多い神保町をうろつき、「一誠堂書店」(2010/03/27参照)で100円の新潮文庫「海岸公園/山川方夫」を買うと、いつものように二人掛かりで丁重に接客していただき、ミニカレンダーまでいただいてしまう。「村山書店」(2012/07/08参照)では資料用の岩波文庫「濹東綺譚/永井荷風」を150円で購入し、一月中は休業と貼紙のある「文庫川村」(2008/11/20参照)の前を通り、土曜日の本の街から離脱する。

※お知らせ
『図書新聞 3239号 2016年1月23(土)』に荻原魚雷氏の「閑な読書人」(晶文社)の書評を寄稿しました。書評を書くのは初めてに近く、書き上げたらちょっと奇怪な『荻原魚雷人間考察』みたいになってしまいました…魚雷さん、スミマセン!ちなみに「閑な読書人」には「古本屋ツアー・イン・ジャパン(原書房)」の嬉しく光栄で面映い魚雷さんの書評が掲載されていますので、併せてお楽しみ下さい!
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2016年01月14日

1/14千葉・市川真間 移転開店!春花堂

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そろそろ頃合いだろうと、すでに移転済みのはずの元通路古本屋さん「春花堂」(2008/09/20参照)を見に行くことにする。駅から南に出て『真間駅前通り』を南に下ると、左手の「春花堂」の入っていたビルは、まさに取り壊しの真っ最中である。さらに南に50mも進めば、右手に一階が通り抜けられる小さな商店街になったビル『プラザピコ』が見えて来る。すかさずその通路に入り込むと、左手に古雑誌のラックが!ここに移転したのか…近付くとやはりそれは「春花堂」であった…だが看板に『古書・古本』と共に『レンタルスペース』とあるのだが、これはいったい?引戸を開けて中に入ると、フロアは前後に二分されており、手前が古本屋さん、奥が引戸で仕切られたレンタルスペースらしい。戸の向こうから、賑やかに麻雀牌をかき回す音が聞こえて来る…。お店は少し横長で、左右の壁沿いに本棚、真ん中に背中合わせのスチール棚が二本置かれた構成である。そして突然足元に忍び寄って来たのは、首輪をしたアジ虎猫!か、可愛い!「アウ〜ン。アウ〜ン」と鳴き、もはや離れようとせず足にソフトアタックを繰り返し、何処までも付いて来るので、その天鵞絨のような毛並を撫でまくりながら、古本を眺め始める。あまり夢中になって触り過ぎると、猫が興奮状態に陥り鳴き止まなくなるので、ほどほどに、ほどほどに…。左端通路は壁棚に、旧店舗では奥の部屋にあった古書・日本純文学・随筆・全集・海外文学評論・文明がズラリと並び、向かいに新書・選書・詩集・戦争が収まる。中央通路は、左に児童文学・海外文学・登山・映画・音楽・レコード・日本文学、右に絶版文庫・海外文学文庫・一般文庫。右端通路は手前が広くなっており、そこに100均文庫・ミステリ&エンタメ・廉価コミック・時代劇文庫が集まり、奥でコミックと一般文庫が向かい合っている。当然の如く以前より本は少なくなったが、俄然その分明るく見易くなっている。カオス感も霧消しているので、今のところ猫のいる普通の古本屋さんとして楽しむのが良いだろう。本に巻かれた白帯に書かれた、独特な書体は健在である。店主に猫と共に近付き精算をお願いすると、足元から離れぬ猫を見て「すみません」と一言。角川文庫「ビュビュ・ド・モンパルナッス/フィリップ」四季新書「酒徒交傳/永井達男」を計800円で購入し、猫に涙の別れを告げる。

お店を出た後は「智新堂書店」(2008/09/20参照)を見に行くが、タイミング悪くお休み。なので線路際からぐるっと回り込んで「即興堂」(2011/11/23参照)へ。古書棚に出物はないかと漁り、ジリジリ帳場方面に近付くと、店主さんから優しく話しかけられ、哀れ正体が見破られていたことを知る。その後も所々に潜む古書に心を奪われ、モダニズム写真家・堀野正雄の作例たっぷりな技法書にうっとりするが、結局ウィンドウ際の児童文学列に挿さっていた、講談社「空中都市008 アオゾラ市ものがたり/小松左京・作 和田誠・絵」に惹き付けられ、函から本体を引き出すと、24版だが3000円とちょっと安値だったので、ええい!欲しかった本だ。この際買ってしまえ!と購入する。
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2016年01月13日

1/13早稲田古本街の店頭にしがみついてみる

午後にゆるっと外出し、早稲田古本街の新年パトロールに向かう。せっかくなので何か縛りを設けようと思い、店頭だけで本を買って行くことを決意する。『馬場口交差点』から北側の歩道を、東へ東へ歩いて行く。谷底の信号前にある「一心堂」はすでにお店ではないのだが、看板や日除けはそっくりそのまま残っており、今は宅急便の荷物サテライトとして使われている…そして「文英堂書店」(2012/08/20参照)は今日はお休みか…などとだいぶ進んで、道路工事のために目の前の歩道が袋小路と化し、お客の流れを断ち切られた「虹書店」(2010/08/24参照)まで来てしまう。20均ワゴンに挟まれた50均ワゴンから、ちゃんと函付きの造形社「木村荘八 人と芸術/倉田三郎」を54円で購入する。こんな立派な本がこれだけ安く、ちゃんと包装までしていただくと、何だか逆に申し訳なくなってくる…。さらに先に進むと「畸人堂 ガレージ店」(2012/10/17参照)がすでに消滅していることに今更気づき、『西早稲田交差点』を南側歩道に渡る。さらに東に進んで、結局最後を見ることが出来なかった「ブックスアルト」(2010/11/17参照)跡地。シャッターは閉まり、『名曲を聴きながら 古本買って下さい。』の名キャッチコピーが分かれて書かれた看板は、未だ残されたままである。
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今度は通りを西に進み、最近店頭に古書文学本を放出する傾向にある「渥美書房」(2015/04/24参照)の店頭を吟味。中央公論社「伊豆の旅」角川小説新書「たまゆら」共に川端康成を計200円で購入する。ちょっと先の「飯島書店」(2010/04/14参照)では、教養文庫「ミステリー食事学/日影丈吉」宝書房「京阪神叢書2 淀川/北尾鐐之助」を計200円で購入。店主と京阪神叢書を見ながら「これ、ちょっとあっ!て思ったよ。もうちょっと高い本だね、これは。掘り出し物かもしれない」「確かに見たことのない文庫です」と会話を交わす。例え本当は大した掘り出し物ではなくとも、こんな風に言われると、素直に口元が緩んでしまう…。昭和二十一年刊の粗悪な紙の文庫だが本自体はキレイで、叢書とあるからには、京阪神の地理や風俗をまとめたシリーズ文庫なのであろう。地方出版の文庫は、何故か独特の愛おしさを醸し出している。店頭台でバッタリこういう本に出会えるのは、なかなか喜ばしい体験である。
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最後は脇道の「古書現世」(2009/04/04参照)へ。店頭台がやけに古書で賑わっているので、とにかく今日の縛りである店頭の一冊を手にして、店内へ。すると案の定、安売棚も常設棚もなかなかの古書率である。ここで縛りは終りだと、店内でも二冊掴む。向井氏はおらず、帳場には父上。四季書房「虹/川端康成」(函ナシ)を100円で。さらに隆文堂「宿場の二っ火/國枝史郎」雄鶏社「新聞太平記/赤沼三郎」を計1300円で購入する。早稲田古本街よ、今年もよろしくお願いいたします!
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2016年01月11日

1/11東京・根津 ひるねこBOOKS

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本日1月11日午前11時、『不忍ブックストリート』の新たな一員に加わる、古本と新刊と雑貨のお店が、根津の静かな一角に誕生した。『出口1』から地上に出て、谷根千の動脈である『不忍通り』を北西へ進む。信号をひとつふたつとやり過ごし、『根津神社入口交差点』で北東に足を向けると、歩道にレンガタイルが敷かれた『藍染め大通り』。その遥か行く手では、『明治坂』がジャンプ台のような急角度を誇っている。その坂下までテクテク真っ直ぐ歩き、旅館のある角を東南に曲がり込むと、左手前方の空色の立看板と漂う派手な風船が目に入った。近付くと案の定そこがお店である。ガレージ風で少し奥まった場所に店舗があり、50%オフのバーゲン絵本と100〜300円文庫&単行本を収めた棚が置かれている。そこに古本屋らしさを感じ取りながら、木枠のガラス戸を引き開ける。奥では初々しい店主として働く若いカップルが、お祝いに駆け付けた人と言葉を交わし、棚に気を配り、接客し、入って来た人に「いらっしゃいませ」と声をかけるなど、忙しいながらもお店が開店した喜びを、その笑顔ににじませている。木材で化粧された、こじんまりとした店内は縦長で、左に中ほどが高くなった棚が奥に向かって伸び、最奥に横向きの帳場が控えている。入口右横ウィンドウ際から右壁前半にも棚が続き、奥はテーブルカウンターとなり、右角隅にも棚が設置されている。フロア中央には新刊を面陳した大きなテーブルが据えられている。店内は刻々と混み合う感じなので、他のお客さんと譲り合いながら棚に視線を注いで行く。左側の棚には、児童文学・美術・図録・建築・花森安治・「暮しの手帖」・暮らし・食・民俗学が並び、奥の棚の上にはモダンな柄の手ぬぐいが飾られている。入口右横には絵本と店名に相応しい猫の本が集まり、右壁の文学文庫・ちくま文庫・カラーブックス・竹久夢二・浅生ハルミン・谷根千・東京・セレクト日本文学&海外文学。さらに北欧雑貨コーナーを経て、角の棚には北欧関連とムーミン関連が仲良く集まる。若々しく柔らかでバランスのとれた新世代のお店である。古い本はあまりなくジャンルは女性寄りと言えるが、目指しているであろう宇宙観は、棚にチラホラと発芽し始めている。そしてそれらがいずれは、昼寝している可愛い猫でも、爪を突然ニョキッと煌めかせるような、もっともっと研ぎ澄ました独自の棚に成長することを想像して帳場に向かい、精算をお願いする。値段は普通である。桃源社「明治の東京/岡田章雄」を購入すると、「古ツアさんですね」と何故かすでに正体が露見してしまっていた。聞けば何人かの方に「来るぞ、絶対来るぞ」と予告されていたらしい…この姿形も何となく伝えられていたのだろうか…何はともあれ、開店おめでとうございます!
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2016年01月10日

1/10ついに「なぎさ書房」にお別れを!

ついに関内の「なぎさ書房」(2010/04/21&2015/12/17参照)が、一月から閉店セールを20%オフから50%オフに繰り上げ、閉店速度を加速させてしまっているらしい。ただならぬ気配を感じ取り、改めてお店の偵察へと出向く。その前に腹ごしらえをしなければと、『横浜橋商店街』を南に抜けた所にある庶民中華の名店『廣東料理 酔来軒』で、酔来丼(メンマとチャーシューと目玉焼きとモヤシ炒めが乗ったゴハンに魔法のタレをかけて混ぜて食べる400円の丼モノ)とシューマイを、ビールで胃の腑に流し込む。戦闘準備完了!と『イセザキモール』に向かいお店に近付いて行くと、閉店セールのビラが増し、多くのお客さんで賑わう店頭と店内が視界に飛び込んで来た。
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『閉店セール1月中書籍全品50%OFF』とあるが、もしや以前聞き込んだ閉店時期(二〜三月)が、その時計を早めてしまったのではないだろうか…となると、今日はもうこの思い出のお店に、別れる覚悟で臨まなければ…。ちょっとだけセンチになりながら、人の多い店内に分け入る。通路に在庫なのか市場に運び出す本なのか分からないが、結束された本や、雑誌類が積み上がっている。棚下の平台も、今までとは違い多くは古雑誌の山が占めているようだ。棚にほとんどブランクは見られないが、注意すると棚構成が変化している部分があり、どうやら売れたら引き出して来た在庫の本を補充している感がある。特に所々に古書が紛れ込むようになっているのが、古本修羅の心をグッと魅了して離さない。帳場向かいの左壁棚に、古いサトウハチローや昆虫本、それにラジオ脚本類が出現している!何度も言うようだが、この「なぎさ書房」は実家のある横浜で暮らしていた時代に、古本と古本屋の楽しさを教えてくれたお店なのである。そのお店の最期が近いのならば、敬意を表して心に残る一冊を買うべきではないだろうか…。そうして真摯に選んだのは、今まで一度も見たことなかった、内外社「エンコの六/サトウ・ハチロー」である。函ナシで7350円と高値の本だが、セールで半額になるし、これは真に読みたいと感じた一冊なのである。帳場で順番待ちし、マスクをしたオヤジさんに精算してもらいながら改めて閉店時期について聞いてみると「一応一月末ってことなんだけど、事情によっては少し早まるかもしれません。ちょっと私の体調と相談しつつみたいなとこがあるんで…すいません」とのことであった。あぁ!やっぱり閉店は早まったのだ。本を半額の端数カットの3670円で購入する。さらば、なぎさ書房!その閉店日まで、後およそ20日!…しかしあんな風に見たことのない本が棚に出されるなら、また再びお別れに来てみようか…そしてさらなる思い出の一冊を…。
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「エンコの六」は浅草公園(“エンコ”とは“公園”のことである)と六区の映画館を根城にする『地下鉄サム』的な掏摸の話である。目次のサブタイトルにある『風流快盗』という言葉にトキメキ、読んでみたくて仕方なくなってしまった。昭和六年刊の初版で、本の背は『サトウ・ハチロー』だが、本扉や奥付は『佐藤八郎』の漢字名義になっている。
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2016年01月09日

1/9二つの店頭古本市をハシゴする

今日は二つのお店の店先で行われる古本市に向かうことにして、まずはテクテク歩いて西荻窪へ向かう。一時間弱でたどりついた『平和通り』の小さな「にわとり文庫」(2009/07/25参照)には、すでに古本神&古本修羅だかり…一年前(2015/01/03参照)にも確かに見た光景である。今日明日と開かれる「100円均一大会」の開始を、皆今か今かと待ち構え、通りを行き交う人の耳目を集めてしまっているのだ。
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そんな緊張感あふれる列の横を、お店のマスコット猫(隣りの八百屋さんの白黒猫なのである)デコポンが、人がいるのを意識するからこそ完全無視し、憎らしいほど悠然と歩いて行く。ほどなくして午前十一時となり、本棚や箱に掛けられていたシートが剥ぎ取られると、ゾザッと蠢く音がして、全員が古本に礼儀正しく殺到した。列の後ろに位置していた関係上、まずは文庫箱を覗き、その後に本棚ゾーンに突入する。様々な方々と新年の挨拶を交わしながら、本を漁りまくる。祭ゾーンは、左右のお店前にも少し広がっているので、わりと見応えあり。そしてこれらが全品100円なのは、やはり嬉しい楽しい。ソノラマ文庫「アンドロボット'99」「氷河0年」共に今日泊亜蘭「怪盗ラレロ/加納一朗」学研高一フレッシュシリーズ「青春を泣かせるな/嶋岡晨」(こんな青春小説を書いてたのか)平凡社世界探偵小説全集19「カナリヤ殺人事件/バンダイン」(裸本)日本小説文庫「生活線ABC 前篇/細田民樹」東京文化本社「活殺自在 護身秘術全書/川口忠」(護身術から携行品の使い方、不思議な『護身ストーリー』まで掲載)第一書房「朝食前のレセプション/戸川秋骨」を計800円で購入し、みかんをひとついただく。この祭は明日も行われ、補充もガシガシされるとのこと。そして早々とみなさんに別れを告げて西荻窪を発ち、正午にはすでに西日暮里の切り通しをトボトボ歩いている。道灌山下まで出て、信号待ちの間に「古書ほうろう」(2009/05/10参照)の方に目をやると、広い店頭は物品や古本があふれている模様。信号が変わるのをもどかしく待ち、早足に近付くと「ほうろう青空バザール」はすでに始まり賑わっていた。左に古道具や古着やレコードゾーン、右の新調したテントの下に古本が広がっている。
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100均文庫台やその周りの絵本箱雑誌箱と眺め、入口左横の本棚に集められた奇人変人(多!)・山之口獏・金子光晴棚にピタッと張り付き、二冊を引き出す。内外出版協會「明治畸人傳/阪井辨」(明治三十六年刊で外骨・子規・左千夫・魯文など四十八人を掲載。まさかこんな明治本を800円の安値で買えるとは、予想外のどひゃっほうである)読売新聞社週刊読売臨時増刊「現代奇人怪物読本」を計1300円で購入する。店内では南陀楼綾繁氏と邂逅し、新年の挨拶を交わす。岩谷書店「別冊宝石27号 探偵小説全書」(グラビアに乱歩の蔵書を紹介する『探偵小説稀覯本』と探偵小説作家十四人の自宅を訪ねる『探偵作家入門』が掲載)「別冊宝石38号 探偵小説全書」(こちらのグラビアは四ページのホームズ絵物語『まだらの紐』で、文は氷川朧である)を計900円で購入し、サービスの手作りしょうが湯をいただき、冷えた身体を温める。このバザールは明日も開催される。それにしても「ほうろう」店内がだいぶ以前のツアー時より変化している。特に帳場周りや、奥のスペース…これは改めてツアーしなければイカンな…。
posted by tokusan at 16:34| Comment(2) | TrackBack(0) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年01月08日

1/8香山滋展を観て神保町をパトロールする

昨日外から戻った時に、一階の集合ポストから郵便物と共に投函されていた、無料配布のタウン誌を家に持ち帰る。いつもは一瞥しただけで持ち帰らず、横にあるゴミ箱にバサッと捨ててしまうのだが、何故かこの時は結局捨てると分かっていて、気まぐれに持ち帰ったのである。そのタブロイド新聞型の冊子を何気なく開いた時、信じられない文字が目の隅を掠めて行った。それは“香山滋”の三文字!何故探偵小説作家の名が、こんな地元日常的冊子に?驚き慌てて、その文字のあった場所を探し出すと、小さな十行ほどの記事で『展示「異形の作家 香山滋〜古代・浪漫・奇譚〜」』とあった。『中野区立中央図書館』で、中野所縁の作家である香山を取り上げ、経歴・作品・交流のあった作家について展示しているとのことである。なんだ、この嬉しいマニアックで小さそうな展示は!見に行かなければ!というわけで本日、中野駅南口から線路沿いに東に歩いている訳である。スクラッチタイルと同様の模様を壁にあしらった、古い公団団地群を右に眺め、やがて小さな商店街に突入して行く。そういえば一昨年、吉祥寺の「よみた屋」さん(2014/08/29参照)とトークした時に「今お店を出すとしたら何処が良いですか?」と聞くと、まさにこの道沿いをあげられたことを思い出した。確かにここは一日中人通りが多い。そして道の先に『なかのZEROホール』があるため、しょっちゅう文化に触れに来る人も行き来している。商店街も寂れていないし…などと澄田氏の説に今更うなずきながら、歩き続ける。左に『中野電車区』を見ながら、やがて地下へと下る『中野区立中央図書館』に到着する。中に入り、カウンターを回り込むようにして左に進んで行くと、奥の棚と壁とガラスケースによる、こじんまりとして手作り的だが力の入った展示が待ち受けていた。天井近くには墨痕鮮やかな展示タイトルが張り出され、壁に当時の町内地図や、香山の写真、香山が答えたアンケート類や作家による香山の印象などが張り出されている。下の棚には図書館に架蔵された香山の著作や交流作家の本が集められている。そしてガラスケースには、著書現物(古本である)、直筆原稿、短歌ノート、『遊星人M』台本、直筆葉書(山名文夫宛が多い)、そして東方社の「獣人雪男」の帯付きが飾られている!ふぉおお!と興奮し、『東宝映画化!』の文字に落ち着きを失い、ケースの周りをグルグルグルグル…これが見られただけでも来た甲斐があったと満足する。展示は1/28まで。

中野駅に戻って東西線に乗り込み九段下駅下車。新年最初の神保町パトロールへ出発する。東に向かって一店一店覗き込んで行くが、今日はやたらと寒いし久々なので、なかなか調子が出ない。しかし「Vintage」(2014/03/18参照)店頭の地べたで奇想天外社「SFゴタゴタ資料大全集」を見つけて500円で購入してからは、心も落ち着き順調に購買を重ねて行く。「東京古書店」(2014/12/17参照)で光書房「ミステリィのための法医学/平島侃一」を200円で購入。「田村書店」(2010/12/21参照)店頭木製ワゴンでは金星堂出版「藝術一家言/谷崎潤一郎」を1300円で購入(大正十三年刊の随筆叢書の一冊。後ろ見返しに名古屋の古本屋さん「三松堂書店」(2008/06/15参照)の古い古書店ラベルが貼られている)。「小宮山書店ガレージセール」(2013/07/12参照)では、古本修羅ごみの中で血眼になってめぼしい本を探していると。足元に置かれたカゴの中に、昭和三十年代の大衆雑誌が積み重なっている。むぅ、と一冊一冊目次検分し「面白倶楽部」はめっけものだなと思っていると、突然目の前に人が立ち「それ、私のです」と言われる。ああ!これは売り物のカゴではなく、カゴを一ヶ所に留め置いて自分は棚を飛び回り、舞い戻ってそこに本を放り込む人のカゴであったのか…「す、すいません」と顔を赤らめて謝り、すっかり気が削がれて何も買わずに表に出てしまう。「日本書房」(2011/08/24参照)ではちくま文庫「チリ交列伝/伊藤昭久」東京社「コドモノクニ12月号」(表紙が外れているため出版時期不明)を計600円で購入する。最後に「丸沼書店」(2009/12/17参照)にてダヴィッド社「ジャン・マレエ/コクトオ著」を400円で購入し、パトロール終了。
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今日の嬉しい収穫。やはり表紙が外れているとはいえ「コドモノクニ」は嬉しい(一ページ目に『12月号』とあるだけで、最初は何の絵本だかまったく分からなかったが、一枚の絵の電柱に書かれた『コドモノクニ 東京社』から、この絵本が「コドモノクニ」であることが判明)。中の四色イラストは美しく深みがあり、その物質感に脱帽してしまう。写真の絵は西條八十とその子供を描いたイラストである。
posted by tokusan at 16:53| Comment(8) | TrackBack(0) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年01月07日

1/7プラプラ鬼安古本を買いに行く

遠い所に行った次の日は、どうにも気が抜けてしまい、なかなか腰が上がらない。ふと「なごやか文庫」(2012/01/10参照)の文庫一冊10円単行本一冊30円の棚卸しセールがそろそろだなと気付き、気の抜けたまま外出する。鷺ノ宮駅から、武蔵野の大地を猛スピードで駆け抜ける急行に乗り、東村山駅で下車。諏訪神社前の『福祉センター』一階にあるお店に、気の抜けたままたどり着く。今は有人タイムか…そのせいか、色んな人に「こんにちは〜」と笑顔で挨拶されるので、こちらも古本を抱えたまま笑みを顔面に張り付けペコリ。結構入れ替わった感のある棚を見ている間も、二人三人とお客さんが訪れる。噂発行所梶山季之責任編集「月刊 噂 昭和四十七年九月号」(竹中労のインタビュー記事や江戸川乱歩が“夜の女(実は全員男である…)”座談会の司会を務めた『夜の男の生態』などが掲載されている)徳間書店「謎のバミューダ海域/チャールズ・バーリッツ」平凡社新書「明治犯科帳/中嶋繁雄」文庫クセジュ「薔薇十字団/R・エディゴフェル」新潮選書「都市の庭、森の庭/海野弘」新潮社「小説に書けなかった自伝/新田次郎」マール社「100年前のパリ1」の計七冊を210円で購入する。セールは1/31まで。気の抜けたまま帰宅する。
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※お知らせ
そろそろ神保町辺りに置かれ始めている、神田の老舗リトルプレス「かんだ221号」に連載中の『神田を小さく冒険する』は今回で最終回。雨の日に神田の地下を彷徨い、小さな愚にもつかない発見を繰り返し、小さなフィナーレに漕ぎ着けておりますので、お見かけの際はお手に取ってご笑覧ください。季刊とは言え、連載前の記事も合わせて一年以上続けた連載が終わるのは、どうにも寂しいものです。神田の裏町、神田古書センター、神田駅高架下、神田川沿い、神田地下と小さく冒険をして来た場所が、今走馬灯の如く頭の中にキラキラグルグル…。なので、この寂しいエネルギーをぶつけられる、虫のいい新しい連載の話などございましたら、ぜひともご連絡ください。何とぞよろしくお願いいたします!
posted by tokusan at 17:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする