2016年02月29日

2/29「古書現世」に逃げ込む

午後遅くに外出。西武新宿線で高田馬場まで出て、南東谷底の古本も販売しているお店を目指すが、ようやく見つけたと思ったら、あれ?閉まってる。ドア横に掲げられた営業時間を見ると、午前11時〜午後16時まで…今は午後16時11分…遅かったというわけか…。再チャレンジをお店に勝手に堅く誓い、渋々と丘をひとつ越えて、戸が開け放しの「古書現世」(2009/04/04参照)に逃げ込む。通路的店内で1000円以下本に熱い視線を注ぎ、右側の重厚で柔軟な棚造りに注意深く挑み、東方社版新編現代日本文学全集「香山滋集」(昭和三十三年出版の全集17巻。402pもあるのに何だか紙がとても軽い。『火星への道』と、秘境探検家・人見十吉シリーズの『悪霊島』を収録)を1500円で購入し、後は店主・向井氏と古本にはまったく関係のない他愛もないことを、ペチャリクチャリとおよそ一時間話しまくる。愉快愉快。幸い誰もいなかったので、何度も店内で爆笑してしまう。その話の中で生まれた、ひとつの思い付きを向井氏に話すと、快く快諾してくれたので、近々実行に移すことを約束する。生産性は皆無な思い付きだが、古本&古本屋好きにはたまらないことなのである…と思う。長い長い無駄話を終えて表に出ると、すっかり暗くなり風も強くなり始めている。『早稲田通り』から、地蔵尊の奥に「現世」の灯りが輝く路地の写真を一枚。早いもので、今日で二月もおしまいである。
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2016年02月28日

2/28「古本屋写真集」制作進行中

今日は我慢して家に閉じこもり、「古本屋写真集」制作作業をビシバシ詰めて行く。もはや細かい作業の連続を残すのみだが、これを乗り越えれば色んなことが見えて来る!と、懸命に根を詰めまくる。おかげで夕方には作業が一段落し、大きな山をひとつ越えた気分になる。それにしても、「野呂邦暢古本屋写真集」の時も楽しかったが、今回、岡崎武志氏と己の古本屋写真を編集することも、何と同様に楽しいことか!古本屋馬鹿なのは重々承知しているが、それでも何度も日本全国の古本屋の勇姿を見ることが、こんなにも飽きずに興奮出来ることなのか!と我ながら呆れ喜ぶ。だが、いつしか微妙に疲れ果ていたので、息抜きにご近所にちょっとだけ古本を買いに行くことにする。

まずは「ゆたか。書房」(2008/10/19参照)に飛び込み、オヤジさんと挨拶のようであり挨拶でないような交流を交わして、深夜叢書社「島尾敏雄詩集」を千円で購入する。そのまま駅方面にツラツラ下り、いつもお世話になっている古本屋さんたちをすっ飛ばし、久しぶりの「穂高書房」(2009/02/15参照)店頭台に取り憑く。ここは山岳書の魔窟的専門店なのだが、ほんの時たま店頭台に場違いな面白い本が出ていることがあるのだ。よっ!今回は福音館の「かがくのとも」がドバッと置かれているではないか。三十冊ほどだがじっくり選び込み、福音館書店かがくのとも「91号 わたし/谷川俊太郎ぶん 長新太え」「129号 ゆげ/大沼鉄郎文 小川忠博写真」「150号 つき/山田和」の三冊を手にして、古本山脈がそびえる小さな店内に入るのではなく、建物の横にぐるっと回り込み、開け放たれた鉄扉の向こうに座っている店主に声をかける。即座に店主は笑顔と共に立ち上がり本を受け取り、さらに笑みを強めて「500円でいい?このままでいい?」とニッコリ。「ありがとうね〜」の声を背に受けて、写真集制作作業をさらに進めるために、さっさと家に戻ることにする。
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写真は「ゆげ」の一ページ。「かがくのとも」と「こどものとも」には、絵ではなく写真で構成したものが存在する。名作「よるのびょういん/谷川俊太郎+長野重一」が好例だが、この「ゆげ」と「つき」も写真絵本で、独特の暗い昭和四十年代な世界観が、ぐいっと心を惹き付けた上に、きゅんとする切なさを造り出す。
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2016年02月27日

2/27東京・御茶ノ水 YWCAロビー古本棚

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メールタレコミを基に、のんびりと行動を開始する。中央線で崖中腹のホームに滑り込み、鉄骨の足場がそそり立つ神田川の緑色の淀みを目にしてから崖上へ。駅舎の塗り重ねられた白い漆喰壁や、改めて気付いたタイル張りの柱をうっとり眺めて、『新御茶ノ水橋口』から出札。『明大通り』東側歩道を人波に乗りながら南に坂を下り、四本目の直線脇道『甲賀通り』に入り込む。すると東にそれほど進まずとも、『東京YWCA会館』がドンと現れる。ロビーに古本棚があるとのことだが、果たして…。ビル内に奥まる車寄せに進入し、自動ドアとガラスドアを通り抜けると、そこは天井の高い現代的な円形ロビーであった。弧を描く壁に沿って、受付や待合所や読書コーナーや通路や部屋への入口が連なって行く。フロア中央には、円形吹き抜けの地下への階段…だが、古本の影はまだ視界に入らない…どこだ?取りあえず古本と親和性の高そうな、左側の読書コーナーに足を向けると、そこの柱の裏に隠れるようにして100均の古本棚が張り付いていた。並んでいるのはすべて文庫で、ちょっと古めの日本文学・時代劇・海外ミステリ・海外文学と普遍的な並びを見せる。創元推理文庫「最後の審判/ウィリアム・P・マッギヴァーン」ハヤカワポケミス「黄金の十二/トーマス・パーク他」の二冊を選び、お金の準備をする。ここは無人販売で、料金は棚上に置かれた、小さなプラスチック製ポスト型貯金箱に投入する仕組みとなっている。二冊で200円だが、あいにくと100円玉が一枚しかなく、後は50円玉一枚+10円玉五枚で支払わなければならない。お金を一枚一枚入れて行くと、その軽い貯金箱はブルンと震え、大きな金属音を静かなロビーに高らかに響かせてしまう。するとちょうど地下から上がって来たご婦人が、その音を聞き付け、こちらの顔を見てニヤリと笑う。取りあえず照れ笑いを返すことにして、ロビーをそそくさと後にする。

そのまま久々の神保町パトロールに突入。「三茶書房」(2010/10/26参照)では筑摩書房「春の坂/上林暁」を500円で。「田村書店」(2010/12/21参照)ではアルス「雲母集/北原白秋」(函ナシ。犬の歌『水の面に白きむく犬姿うつし口には燃ゆる紅の肉』の格好良さに電撃走る!)中央公論社「小さな町/小牧近江」(函ナシ)を計400円で購入。『神保町交差点』を越えて「原書房」(2014/05/15参照)では学風書院「中国怪談集 怪力乱神/安成三郎訳」(裸本)人文閣「支那古今奇聞/烏有山人」(背補修。だが、後見返しに書かれた『昭和十八年五月於北京』とあるのが感慨深い)を計400円で購入し、満足して巡回を終える。
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2016年02月26日

2/26夢に見た古本屋と「孤島の鬼」

昨日、古本屋写真集の制作作業を放っぽり出してツアーに行った後ろめたさからか、妙な夢を見てしまう。まぁ人の夢の話と言うものは、話す本人以外にとっては退屈なものだったりするが、それでも古本屋の夢だったので、ここに一応記しておく。

それは岡崎武志氏が古本屋を開店したという夢で、ビジョンは一日目にすでに訪れているのに、次の日に再び訪れるところから始まる。重い荷物(恐らく古本である)を持ちながらお店に入ると、店内は女子客だらけで、いつの間にか古本は隅に追いやられてしまっている。店主たる氏の姿はなく、スタッフはエプロンをした若者たちである。そして和風な店内の棚に飾られているのは、猫グッズやおもちゃアンティークばかり。ずいぶん様子が変わったんだなと感じつつ、昭和アニメ&特撮キャラがプリントされた弁当箱を吟味する女子の間を擦り抜けて奥へ進むと、小さな文庫本棚がようやく姿を見せる…しかしめぼしいものは見つからない、ところが、一日目には気付かなかった、二階への螺旋階段が視界に入り、そこをくるくると上ることにする。上階は何部屋かに分かれており、畳部屋には古本箱がたくさん置かれ、奥樣方が覗き込んでいる。小さな池のあるホールのような場所は、一箱古本市のような雰囲気で、多くの人で賑わっている。そこでは古本修羅的壮年の男性に『サガワさん』と声をかけられ、自分の別名が『サガワ』であることを思い出したりする。さらには「陽明堂」という古本屋が古本を仕入れたお店が、潰れたはずなのに線路脇に残っていることをタレコまれたり…。とまぁ、そんな無邪気な夢であった。岡崎さま、申し訳ありません!古本屋写真集、作業進めます!

というわけで、本日は写真集制作にたっぷりと従事し、作業の九割方を終える。よし、後一息だ!夕方になって外出し、西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)へ。店頭でおっ!橋爪彦七じゃないか!と一冊掴んで店内でフェア棚に補充。奥川書房「富吉捕物帖/橋爪彦七」を100円で購入し、明日より発売の、出来上がりを一日千秋の思いで楽しみにしていた書肆盛林堂「孤島の鬼/江戸川乱歩」を献呈していただく。いつもデザインは全力でしているのだが、およそ三十年になるデザイン人生の中で、この函入り上製大乱歩本の造本を担当出来たことは、最大級の喜びでもあるのだ!改造社版復刻「孤島の鬼」、誕生おめでとう!ずっしりした手応えのミッドナイトブルーの函を抱き、明日からショウウィンドウで始まる《【幻影城 終刊号】展》(仮)の準備に大わらわの盛林堂を後にする。これを読み撫でさすりながら、今夜は一献傾けよう。
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2016年02月25日

2/25茨城・つくば 女子系古書部

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色々放っぽり出して、つくばエクスプレスで終点までの小旅行。月に数回しか不定期営業しない、現役なのにすでに幻であるかのようなお店を目指す。まずは駅南側のインフォメーションセンターでレンタサイクルを調達し、サドルをしっかり調整して、広く無機質で寒い街中へ漕ぎ出す。『県道244号』である『学園西大通り』をひたすら南下し始め、中心街を離れるとすぐに、小ビルと商業建築と集合住宅が余裕を持って建ち並ぶ景色が、ダラダラダラと続いて行く。漕いで漕いで、やがて左手に大きな『洞峰公園』が見える交差点に差し掛かる。そこを越えると、公園の向こうのビルの屋上に、天文台と球形の気象レーダーが見え始めたので、気分が高揚する。交差点から二つ目の信号手前で細い脇道に入り込んで南西に進むと、嘘のように開けた畑の中の一本道となり、またもや高揚。目の前には『産業技術総合研究所』の、低い金属柵に囲まれた恐ろしく大きな敷地が広がっていた。ここからはひたすらに、敷地沿いに西へ西南へとなぞるように進み続ける。ちょっと広めな道路と合流した所で、広大な畑を右にしてまだまだ先を目指すと、その右手に『小野川児童公園』が現れるので、すかさず西に入り込む。公園を過ぎるとそこは住宅街の端っこで、やがて右手の畑の間に、赤屋根の平屋で小さく可愛い山小屋風のお店を、無事発見する。駅からの所要時間は二十分強。それにしても、このお店の在り方はとても素敵だ。店前の植栽を回り込むようにして、ウッドデッキへの数段を上がる。木のドアとガラス窓、『GOOD BOOK GOOD LIFE』の立看板、台の上に置かれた店名看板。嬉しいことに軒からは『古本』の小さな吊看板も下がっている。金属製のドアレバーを下げて中に入る。暗い色調の木造空間で、軋む床板がわずかに明るい。入った所が小さな古本屋空間で、左右と奥に木製本棚やラックが展開して行く。右側の棚の向こうは『ミウコネアン』という器類を並べた空間になっている。入店の気配を察知したのか、奥の部屋へのカーテンが揺らぎ、木村多江風女性が「いらっしゃいませ」と顔を見せた。ホニャホニャと軟らかい音楽が流れている。入ってすぐ左には文庫・美術図録・エッセイ&ルポ系単行本が並び、その周囲や奥の壁ラックには絵本が飾られている。右には新書・図録・食・犬が並び、単行本やアート本がそれに続いて行く。奥の棚には、食・民俗学・思想・清貧・歴史・アート・詩・暮らし・地理などが集められている。新しめの本がメインで、冊数はそう多くないが、女子的に硬めな並びが、意外なところまで手を伸ばす感があり、一筋縄ではゆかぬ棚造りが面白い。その棚はそれほど好みではないのだが、自転車で見知らぬ土地を駆け抜けて、こんな意表を突く空間に出会うことになるとは、ツアー冥利に尽きる体験であった。値段は普通。「すみません」とカーテンの向こうに声をかけて精算すると、店主が勇気を持っておずおずという感じで、「普段あまりお店を開けていないのですが、こんなイベントに参加します。色んなお店も、出ます!」と、三月末に参加するという『御殿まるごとマーケット』のちらしをいただく。光文社知恵の森文庫「幻の時刻表/曽田英夫」を購入する。

表に出て、お店を振り返り、改めて畑の中の素敵なロケーションを堪能する。駅にエッチラオッチラ引き返し、せっかくなので北側に突き抜けて、学術的に硬い「学園都市古書センター」(2010/05/26参照)を訪問。朝日文芸文庫「十字街/久生十蘭」冬樹社現代作家入門叢書「埴谷雄高」福山書店「美術大講座 圖案科 5 装飾美術史」(今和次郎も執筆しており、函付美品で100円!)を計650円で購入する。
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2016年02月24日

2/24東京・調布 第1回 調布の古本市

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昨日に続き今日も京王線に乗り込んでいる。地下駅に着いたのはちょうど午前十時で、地上に上がって北口にある『調布パルコ』入口にあったすべての文字が浅生ハルミンフォントで構成されたシンプルプリティーな古本市のポスターを眺め、わりとこじんまりとした五階催事場に着いたのは、五分後であった。嗚呼、当然の如く会場では、元気一杯の古本修羅勢力が全通路で猛威を振るい始めている…。以前同じパルコのエスカレーター周りで行われた「本の楽市at調布」(2015/09/26参照)が拡大発展したものであろうか。なんたって催事場を使い、参加店を増やして、さらなる若くお洒落な新鋭店や北関東のお店を招き込んでいるのである。つまりは、新たな時代のうねりを感じさせるデパート系古本市なのである。会場内は、左側の通路は縦に造られ、右側は横向きに造られている。色とりどりの三角旗や星に飾り立てられ、什器もただワゴンや木箱が実用的に積み重なるだけではなく、クロスの掛かった箱やテーブルやラックも使い、ディスプレイが立体的で華やかになるよう工夫されている。絵本・ファッション・映画・児童文学&児童書・鉄道・紙物が目立つが、文庫や一般古書もしっかり存在している。今日買うのは千円以下の本!と決めて目を光らせ、本を抜き出し続けて吟味を繰り返し、ガラスケースの上や中に嫉妬の炎をメラメラ燃やし、込み入る会場の通路をおよそ二周。「丸三文庫」(2010/05/31参照)で光文社に本童話名作選「金の目銀の目/豊島與志雄」を800円で見つけて喜び、「にわとり文庫」(2009/07/25参照)で春陽堂「戀愛曲線/小酒井不木」を函ナシで見返し・奥付・最終ページが破りとられているが500円なので買うことにする。市は3/8(火)までと、およそ二週間の長さで開催される。
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2016年02月23日

2/23東京・つつじヶ丘 mater

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以前チャレンジしたが入れなかった、古本神のひとり野村宏平氏タレコミのお店を目指す。やっていないことを警戒し、ホームの西端まで走って、そこからすでに見えているお店の様子をうかがう…天井に明かりが灯っている。営業中だ。ホームを足取り軽く逆戻りし、安心して改札を抜けて北口に出て、線路沿いに西に歩いて行く。停車中の電車のモーター音を耳にしている間に、すぐに踏切前に到達。向かいの白いビル一階の、二階の不動産屋への入口に並ぶようにして、そのお店は地味に簡素に存在していた。壁に立て掛けられた『open』とある底の浅いブリキ箱を一瞥し、サッシを開けて店内へ上がり込むと、質素で女子的に抑制の効いた清楚な空間である。大きな窓から飛び込む外光と景色は、ブラインドにより柔らげられている。右奥にガラスケースをナナメに置いた帳場があり、物憂げに女性が座っていたが、「いらっしゃいませ」と囁くように立ち上がり、店内BGMを流し始めてくれた。窓際・中央テーブル・壁棚にシンプルに余裕を持って、陶器・雑貨・ニット帽・手袋・長靴などが飾られている。そして確かに古本も十冊前後の単位で、テーブル周りと壁棚の上下に点在している。食の本・絵本・松浦弥太郎・大橋歩・石田千・平松洋子・谷川俊太郎・岡本太郎・向田邦子・高峰秀子・萩尾望都・ベニシアなどの本である。値段はだいたい定価の半額。集英社文庫「カスバの男/大竹伸朗」を購入する。

この後は府中まで足を延ばし、「木内書店仮設店舗」(2014/03/10参照)を楽しみに見に行くも、タイミング悪く定休日。おとなしく阿佐ヶ谷まで戻り「銀星舎」(2008/10/19参照)にて創元推理文庫「その子を殺すな/ノエル・カレフ」を400円で購入してから家に戻り、後はひたすら新・古本屋写真集の制作作業に没入する。
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2016年02月21日

2/21谷中で控え目に取りあえず当たって砕けてみる。

有力なタレコミに基づき谷中へ急行する。観光客とデート客の人ごみと行列を擦り抜け、件のお店の前に到着すると、立派な門は厳めしく閉じられていた。定休日は水曜で、営業時間はお昼頃から日暮れ時まで…今日は日曜日で、今は頭上に午後の太陽が燦々と輝いている…。ウムムムと唸りながら、門扉の横に掛けられた小さな文字のある額に目を凝らす。『現在店内改装中につき、しばらくお休みさせていただきます。開店は3月10日を予定しております』とあり、アンティークショップ名と共に、異様な古書店の名が併記されている。ある意味情報の少ないタレコミだったので、これで詳細が分かったことにひとまず満足する。だが、このままでは今日という日が途方に暮れてしまう。すぐさま谷中霊園を抜けて駅に取って返し、常磐線で一駅の三河島へ。先日献呈していただいた、大変スリリングな目録回顧本「一頁のなかの劇場」のお礼を伝えに「稲垣書店」(2009/10/26参照)を表敬訪問するつもりなのである。だが、テクテク歩いてお店が近付いて来ると、シャッターが下りている。そのシャッターに一枚の白い貼紙が…。
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あぁ、そういうこともあるさ。仕方ない。途方に暮れるのを避けるためにここまで来たのだが、やはり途方に暮れつつあるようだ。重くなり始めた足に鞭を入れ『尾竹橋通り』南下して行く。そして「峯尾文泉堂」(2009/05/30参照)…閉まっている。昔ながらの木戸に新聞を挟んだ姿で閉まっている…。あぁ、こんなことなら、素直に谷根千の古本屋さんを巡っているんだった。一冊の古本も買わずに、そのまま一旦帰宅する。

夜になって歩いて高円寺まで向かい、やはり古本は買いたいので「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)に立ち寄る。ほるぷ出版「都會スケッチ」朝日ソノラマ「光速エスパー3/松本零士」ハヤカワポケミス「恐怖が這いよる/カーター・ブラウン」を計700円で購入する。そして超裏路地の沖縄料理店にて岡崎武志氏と密会。別に楽しくキャッキャと古本屋の話をしながら飲むのではなく、実は現在制作進行中の「古本屋写真集」の取材なのである。まぁ、結局話すのは古本屋のことなので、ただ飲むのとあまり変わらないと言えば変わらないのだが…。この写真集は去年に出した「野呂邦暢古本屋写真集」に続けとばかり、二人の今までに撮りためた古本屋写真を持ち寄り(岡崎氏はおよそ二十年、私は八年分である)、一冊にまとめようという計画なのである。きっかけは昨年末のトーク『オカタケVS古ツア 『古本屋写真集』スライドトークショー』。全国津々浦々の、お互い行ったことのない古本屋、すでに消滅したお店、素晴らしい佇まいのお店、思い出のお店などを時代の底に流れ落ちる前に、この世界にて定着させておこうという、狂信的であるが崇高な試みなのである。というような仕事を終えて、後は「コクテイル」(2010/04/25参照)に河岸を変え、店主・狩野氏も交えて、古本屋話。そしてすっかり酔っ払ってしまう。取りあえずは三月末〜四月初めあたりに「盛林堂書房」より発売予定なので、乞うご期待!詳細は追ってお知らせいたします!
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二ヶ月後の新装開店時には、さり気なく貴重になっているかもしれない「コクテイル」の店内写真。どんなお店になるのか、今から非常に楽しみにしつつ、今日はとことん酔っ払ってしまいました!おかげで店内カウンターにデジカメを忘れ、狩野氏にわざわざ自転車で追いかけてもらう一幕も…。それではまた明日!
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2016年02月20日

2/20千葉の雨中で「両國の秋」に心蕩ける

昼前に家を出ようとすると、自転車置場の屋根を雨がバタバタ叩いており、本格的な雨降りであることを知る。まずは西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)に赴き、棚に補充をしつつ、盛林堂さんより大事なプリントアウトを受け取る。店内では古本神・岡崎武志氏にも遭遇。駅前で立食い蕎麦を啜り込み、相変わらず強めな雨を眺めつつ、今日は何処へ行こうかと思案する。無目的に改札を抜け、ホームにボ〜ッと立っていると、目の前に銀色ボディに水色ラインの東西線が滑り込んで来た。ではこれに乗り込んで、千葉の名店を訪ねることにするか。そうきっぱりと決めて、そのまま一時間弱乗車して、終点の西船橋へ。さらに京成線の駅までびちゃびちゃ歩き、京成津田沼で成田方面に乗り換えて、京成大久保駅下車。雨に濡れた長〜い地元商店街『ゆうろーど』を歩きに歩き、終りの方にある狂い無しの名店「キー・ラーゴ」(2009/11/25参照)に到着。店頭棚で面白そうなカンニング研究本を一冊引っ掴んで店内に入ると、おっ!すぐ右の壁棚に、茶色く怪し気な古書100均棚が出現しているじゃないか!戦前&戦中本が大好物な者としては、見栄も外聞もかなぐり捨ててむしゃぶりつかねばならない。その甲斐あって、あっという間に腕の間に本の山が築かれる。やはりこのお店は、良いっ!続いて左の壁棚に接すると、そこにも麗しの古書が肩を寄せ合っている。その中の一冊に、背が補修された函ナシ本…作者名は岡本綺堂のようだが…スッと棚から抜き出すと、ほわっ!超高値本、昭和四年初版の「両國の秋」!値段はなんと300円!古本的興奮度、マックス!何度も確認してしまうが、やはりここはスゴいお店だと、心の中で随喜の涙を流し、細めの瀧口修造風店主に精算していただく。資文堂書店「讀物集 両國の秋/岡本綺堂」(函ナシで背補修アリ)新潮社 日本童話名作選集「銀河鐵道の夜/宮澤賢治」(元パラ、昭和十九年二刷。これもまたどひゃっほうである)新潮社「夜の光/志賀直哉」(バーナード・リーチ装幀。大正八年五刷。函ナシで背補修アリ)春陽堂書店「花は偽らず/藤澤桓夫」(裸本)講談社「人生は七〇%/佐々木邦」萬里閣書房「阿片室/後藤朝太郎」(函ナシ。見返しに「なないろ文庫ふしぎ堂」の値札あり)光文社カッパブックス「カンニングの研究/徳永清」(試験監督側から見たカンニングの歴史・手口・防ぎ方・事後処理など。詳しく写真解説される、カンニングの手口と道具が面白い)を計1100円で購入する。駅まで戻り、電車を待ちながら「両國の秋」を撫でさすり、ニヤニヤと嬉しい収穫を味わう。続いて八千代台の名店「雄気堂」(2009/05/30参照)に向かうも、残念ながらお休みであった。たっぷりと買い込む覚悟で来たのだが、仕方ない。すぐに駅に戻って、またもや「両國の秋」を取り出して愛玩して心を蕩かし、この綺堂なのに可愛いアールデコ調のタイトル文字!などと昭和四年当時のギャップにうつつを抜かし、読み始めながら帰路に着く。
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2016年02月19日

2/19東京・荻窪 絵本タイム猫タイム

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A級情報屋「やまがら文庫」からの久々のタレコミである。地下の中央改札に比べ、比較的ひっそりとした橋上の西口改札を通り抜けて、駅南側に出る。ビルと線路に挟まれた広い道を、西に200m強進めば、そこはもう『環八通り』の上。陸橋らしからぬ陸橋を渡り切り、西への脇道にさらに入り込んで行く。しばらく墓場を隠す長い塀沿いに歩き続ければ、高架になり始めた中央線線路と再び合流。さらに歩を進め、次の十字路で北に足を向け、高架下を潜り抜ける。短い坂の上は三叉路交差点になっており、高架沿いの左手に建つ白いマンション一階の横っ腹に、本当に絵本古本屋さんの入口が存在していた…一年以上前に自転車という足を失ってから、まったくこちらを通ることはなくなっていたのだが、いったいいつからこのお店はあったのだろうか…?短い階段を上がり、二面ガラス戸の前に立つと、左には安売絵本お洒落ラックが立て掛けられている。引戸を滑らせて中に入ると、足裏を迎えてくれたのは敷き詰められた緑の人工芝である!昨日の「月世界」(2013/10/24参照)に続き、連日の人工芝体験!入った所は狭く、右に開ける通路状。左には料理&手芸関連の絵本や実用ムック類が集まり、正面には幼児向け絵本が色鮮やかに大小取り混ぜ集合している。この棚の裏が、帳場兼作業場になっているようだ。右に進むとやはり狭い店内。入口右横の棚には、日本作家児童文学&絵本・猫絵本&猫本・村上春樹・寺山修司・詩集が並ぶ。右奥にはほぼデッドスペースのような、人間一人がようやく入れる空間があるのだが、そこには200均文庫棚が設置されている。何とこの棚、猫関連文庫やタイトルに『猫』の名の付く文庫が、執拗に大量に集められているのだ。上から下まで、『猫』をキーワードにオールジャンルをつなげてしまう強引さは、なんとも素敵な剛腕である。極狭猫文庫空間から脱出すると、右壁に日本作家絵本・佐々木マキと動物&自然絵本。奥壁棚には海外児童文学・海外作家絵本・洋書絵本が並んでいる。ここで左を見ると、小さな猫本棚の向こうに帳場があり、現代的に上品なスプーンおばさんのようなご婦人がお仕事中である。絵本と児童文学と猫本のお店で、狭いが量はしっかりしている。古いものも混ざり込み、棚に深みと味わいあり。値段は普通。大日本図書「どんぐりと山ねこ/宮沢賢治 画・谷内六郎」同盟通信社「キンタマニー湖の魔女/吉田昇平」(南洋群島の奇習・性風俗エピソード集。このお店にあってはならない本と判定し、引き取ることにする)を購入する。それにしてもこのお店、いったいいつからここに…。
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2016年02月18日

2/18消息確認と人工芝の「月世界」に遊ぶ

お気に入りの一店である、高津の「小松屋書店」(2009/08/15参照)について気になる情報を耳にしたので、押っ取り刀で消息確認に駆け付ける。…しかし、裏通りのお店には、無情にも小さなシャッターがガッチリ下ろされていた…ついこの間も入れなくて、これで二連続アウト。今度は土日に来てみることにしよう。要確認要注意店であることを古本頭脳に刻み込み、高津滞在時間約五分で再び電車の人となる。そしてすぐさま、ここまで来たならあのお店に久々に入ってみたい!と即座に決めて用賀駅下車。『環八通り』をテクテク歩き、『瀬田中学校交差点』脇にある「古書 月世界」(2013/10/24参照)に到着。環八越しの西日を浴びて、ギラギラと輝いている。以前はなかった入口両脇の店名看板と取り扱い品目が、誠に誇らし気である。
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開店間もない頃に飛び込んでから、もはや二年の月日が経過した。さぞかし店内は変貌を遂げているに違いない…と思って入ったら、床の人工芝変わらず!棚の配置変わらず!だが、棚のそこかしこに、何だか古い本が増えており、魂が無闇にざわついてしまう。多少興奮気味に人工芝を踏み付け店内を動き回り、創元社「続筆をかついで 月は東に日は西に/清水崑」小学館昭和52年小学四年生3月号付録「ドリフのお笑いばかうけ大集合 パート2」昭和51年小学六年生11月号付録「チャンピオン推理ブック」昭和47年小学四年生8月号付録「世界の珍獣奇獣」を計950円で購入する。なかなか愉快なものが買えてしまった。これからも時々見に来ることにしよう。

そのまま渋谷に出て、宮益坂を上りながらここ一両日中のニュースで話題になっていた、今月中に取り壊しが始まる『宮益坂ビルディング』(1953年竣工の日本初の分譲型マンション)をグッと見上げる。モダンなエントランスを持つ古い大きなビルくらいに認識していたが、まさか戦後復興のエポックメイキングな建物だったとは…。しかし見上げた上階部分は、まるで味気なく上に延びて行く学校建築のようである。一階ではすでに閉店撤退済みの店舗群が、取り壊しを静かに待ち構えている…。坂の上に出て古本屋さん二店を訪ねるが、残念ながら食指が動かずに今日は何も買えず。帰りももうすぐ消滅するビルディングを眺めながら、駅のある谷底へダラダラと下って行く。
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2016年02月17日

2/17明大前で当たって砕けろ!

大学校の最寄り駅だというのに、「古本大学」(2008/07/31参照)が消えて以来“古本屋砂漠”と化していた明大前。最近その悲しい地に、古本屋さんの芽生えを感じ取ったので、コソコソ偵察に行くことにする。細い裏路地に面したその場所は、お店というより事務所である。道から少し奥まっていて、足を踏み入れ難いのだが、入口周りに本棚があるようなので、ソッと接近を試みる。それは様々な国の原書や、『ご自由にお持ち下さい』と書かれた無料本たち。ついでにドアのガラスから、事務所内の様子をコソ泥のように盗み見る。受付カウンターのあるスペースだが、両壁脇に本棚が設えられ、狭いながらもなんとなくお店っぽい。しばらく、ガラスの向こうに誰もいないのを良いことに盗み見続けながら、『これは事務所なのか?お店なのか?』と逡巡する。しかしここで考えていても、何一つ解決はしない。当たって砕けようと、ドアをソッと開けて中に滑り込む。ドアベルがリリンと鳴る。すると奥から青年が出て来たので「あの、ここはお店なんでしょうか?」と聞いてみると「あっ、今はまだ違うんですけど、四月から古本屋をここで始めます」「あっ、そうなんですか。じゃあ今この本は…」「まだお売りすることは出来ないんですが、どうぞご覧になって下さい。ウチは出版社なんですが、今度社内にたくさんある本を売ってしまおうと決めて、今開店準備中なんです。営業開始したら、表に古本屋の看板を出しますので」「あぁっ、そうなんですか。じゃあ四月に開店したら、改めて見に来ますね。楽しみにしていますんで。突然入って来たのに、ご丁寧にありがとうございました」「いえいえ。またいらしてください」…そういうわけなのであった。後一月半経った麗らかな春の明大前に、小さいながらも古本屋さんが誕生するのを、今から心待ちにしていよう!そして改めてツアーを敢行しようではいか!

古本は買えなかったが、フレッシュな情報入手を喜び、上機嫌に線路沿いに歩き始めて、やがて下高井戸。激渋の昭和的ミニ市場アーケードを通り抜け、同様に激渋な「豊川堂」(2008/09/09参照)のガラス戸をスラリと開けて滑り込む。ガラス戸の風に揺れる音と店主の咳をBGMに、岩波新書「隅田川の文学/久保田淳」を250円で購入する。駅に戻って世田谷線のシートに尻をしばらく落とし込む。すぐに小田急線豪徳寺駅近くの山下駅にガタゴト到着。商店街を抜けて「靖文堂書店」(2011/09/06参照)の薄暗がりへ。手袋をはめて大量の本の山とくんずほぐれつしているオヤジさんの邪魔にならぬよう、細心の注意を払って本棚に張り付く。新光社「星座行脚 初めて星を見る人の手引 一九三二年版」尚文館「軟式野球ルール解説/小川正太郎」キャノンカメラ株式会社「写真の話」(伊奈信男・影山光洋・林忠彦・濱谷浩・入江泰吉・秋山庄太郎などが執筆する写真エッセイ集)を計600円で購入する。安値で古めかしい本が買えるのは、何とも言えない心ときめく素敵な行為である。
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写真は「豊川堂」の年季の入ったガラス木戸。その摩擦係数の低い滑りは、官能的な快感をもたらす。
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2016年02月15日

2/15東京・高円寺 店名不明の古道具屋

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朝からずっと古本屋の写真と格闘し続け、頭の中で日本各地のお店を訪問。最初は楽しかったのだが、次第に、そのお店に今は入れないことがストレスとなり、尻が落ち着かなくなってしまう。夕方になって、息抜きにと寒い表にようやく飛び出し、手をかじかませながら高円寺へ。高架沿いを東に東に歩いて、『環七』とぶつかる暗く武骨で大きなガード下に立つ。横断歩道で長い車線を東に横断し、南にちょっと下ると、そこに古本屋さんではないのだが、怪しい一軒のお店が存在している。どうにもアウトローな雰囲気を纏っている、古道具屋さんなのである。表には釣り竿やゴルフバッグやテニスラケットや古着などが出されている…雨が降っているのに、晴れの日と寸分変わらぬ光景が、そこにある…。狭い入り口から店内が少しだけ見えているが、アダルトDVD棚&箱が目立ち、健全さが微量なのである。だが、注意して目を凝らすと、奥は物品溢れる古道具屋さんで、アダルト棚の下には、本も少量並んでいるではないか。これなら!と躊躇しながらも心を奮い立たせて中に入る。古本は…「海辺のカフカ」「皇居の植物」「湾岸戦争」「独裁者」……何も買えそうにない。内部空間は奥行きがなく、横に歪に広がっている。中央には何が入っているのか良く視認出来ないガラスケースが置かれ、狭い通路を造り出している。左側は細かい物品がてんこ盛りになっており、その中に店主が潜んでいるらしい。古物のジャングルに漂う、奇妙な緊張感…。他に本はないのかと、入口右横のブリキのおもちゃや駄玩具が並ぶ棚前を通過する。おぉ、この天井から下がるおもちゃの太鼓は、昭和四十年代的でプリティー!右奥は細くなり、大きな物品が長らく放置されたようなゾーンになるので、おいそれとは進めない。ガラスケースの向こう側にもCD箱などが置かれ、入ることは出来ない。後は店主ゾーンに行くだけか…と思っていると、奥壁棚の下段に、コミックスの括りが放り込まれているのを発見する。小さな希望を抱き、その横の額を退けてみると、どうにか買えそうな古漫画雑誌の姿が!値段はないが、このお店を生きて出るにはこれを買わねば!と一冊掴んで帳場方面へ。周りに素早く視線を走らせながら前進するが、古本の影は見られない。そうこうしている間に奥に座った店主の前。それは、短髪金髪の、尖ったナイフのようなオヤジさんであった。一瞬その視線に射竦められて硬直するが、慌てて「こ、これを下さい」と雑誌を差し出す。眉根に皺が寄り、視線がさらに鋭くなる。そして「500円」と一言。「い、いただきます」と完全に飲まれながら精算を済ませ、どこにもない店名など聞き出すことも出来ず、奇妙な緊張感から早々に逃走する。朝日ソノラマ「マンガ少年 1980年10月号」を購入。

帰りに『あづま通り』の「古書十五時の犬」(2011/11/22参照)に立ち寄ると、店内が微妙&巧妙に改装されていることに気付いてしまう。以前は通れなかった場所が通れるようになっていたり、新たな通路が捻出されていたり…これはまたツアーする必要がありそうだ。まったくここは色んな意味で、定期的に楽しませてくれるお店じゃないか。そんな風に古本心をメラメラ燃やし、徳間文庫「犯罪交叉点/鮎川哲也編」希林館「小説 猟奇王/川崎ゆきお」を計600円で購入する。
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2016年02月14日

2/14「東京図鑑」は週末営業中

春になる季節の変わり目は、生活環境がその時期に大変化(卒業・入学・クラス替え・進級・入社などなど)することを心に刷り込まれてしまっているので、例え大人になっていても、この突然の春のような暖かさに妙に焦りながら西荻窪。「盛林堂書房」(2012/01/06参照)内「フォニャルフ」に補充し、棚をギチギチにする。本日からついに予約開始の乱歩稀覯本復刻「孤島の鬼」の予約状況に、やきもきしまくっている小野氏と色々お話し。健闘を祈りながらお店と西荻窪から離脱し、中野へと向かう。そして駅南口に出て、五叉路近くの雑居ビル二階に久々に足を踏み入れる。ここにはデザインやアートや70年代雑誌に強い「東京図鑑」(2011/06/24参照)があるのだが、二年ほど前に、いつの間にかその営業を休止していることを知り、非常に残念に思っていたのである。だが、またもやいつの間にか店舗が復活を遂げ、金土日の週末営業を再開してくれていたのである。
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結局開店日以来足を向けたことはなかったので、詫びるように白い階段をつんのめり上がって、ドアを開けると静かな以前とそう変わらぬ店内。…窓際に文庫棚が出現し、第二通路から奥は、窓際では行き来出来ないのが、変化したところだろうか。相変わらず研ぎ澄まされた感のある棚を真剣に見ながら、店内を一巡。一人いた先客さんも、時間を掛けてすべての通路を制覇して行く…。株式会社INAX「わが町のモダン建築/監修・山口廣」を1000円で購入し、お店の復活を遅ればせながら密かに祝う。

陽気に誘われて高円寺まで歩き、「西部古書会館」の「杉並書友会」を覗いてみることに。帳場に座る「古書 赤いドリル」那須氏と久々の再会を果たす。すでに多数の人々の鋭い目と手に精査された棚ばかりであるが、洛陽堂「ラインの傳説/松山淳譯」(函ナシ)南雲堂「対訳ウェルズ」(H・G・ウェルズの「盲人国」「ダイヤモンド作り」「盗まれた細菌」「赤い部屋」「塀についた扉」を収録)旺文社「夏休みポケット・ノベルズ」(青春・推理・ユーモア小説などの他に、石津嵐による私立探偵講座やコント55号のお笑い教室など、分厚く盛りだくさんな昭和44年の付録本)日本交響楽協會出版部「山田耕作童謡百曲集 普及版 第三巻」を計800円で購入する。
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2016年02月13日

2/13東京・根津 弥生坂 緑の本棚

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南陀楼綾繁氏よりタレコミされた、「狐白堂」(2014/10/23参照)跡地に誕生した新たな古本屋さんへと向かう。『A1』から地上に出て、『言問通り』の『弥生坂』を西に駆け上がる。すると坂の第一段階を上がり切った所にある、青い陶製タイルで化粧されたビルの一階に、爽やかなお店がドアを気持ちよく開け放して、営業開始していた。入口右横には、多肉植物と鉢植えとコーヒーミルと本棚をデザインに盛り込んだ店名ロゴが、小さな吊り看板と即席看板に誇らし気に浮かび上がっている。植物の間を抜けて店内に進むと、中央のテーブルに植物と本…内装はほとんど「狐白堂」のままである。通り側が広く、奥に向かうほど狭まる空間で、左右の壁に本棚が張り付き、途中から右は帳場&厨房になり、左はカウンターカフェ席となり、奥にさらなるカフェ席が設置されている。植物に水をやったり、棚に本を挿し込んだりして忙しく働くのは、長身でエプロン姿の高橋源一郎風男性である。右壁には硬い日本文学文庫&海外文学文庫、それにビジネス・300均新書・趣味・旅文庫・コミックが続く。帳場下にはミステリ文庫が固まっている。左壁は時代劇文庫・海外SF&ミステリ文庫・詩集・日本エンタメ系文学文庫・言葉・歴史文庫・本関連・ファンタジー&オカルト文庫(狐白堂の名残だろうか?)・自然・宇宙・動植物・芸能文庫・三浦綾子文庫・植物栽培関連と並んで行く。ほぼ文庫で構成されており、値段は特別な本以外は概ね安め。文学&歴史文庫と植物に強いお店であろうか。選んだ本を帳場に差し出しすと、何と開店記念として外に置かれた250円の多肉植物をプレゼントすると言われる。少々面食らいつつも、せっかくなので表へと出て、四種類の中から小さなポットに入ったひとつを、そっとつかみ上げる。店内に戻り「これをいただきます」と告げ、植物の名を聞いてみる。『クラッスラ』という種類で、『金のなる木』として知られているらしい。そんなこんなでようやく精算を済ませると、店主が「ひとつお試しになってみませんか?」と多肉植物の試食を薦めて来た。おぉ!このお店は、あらゆる手段で多肉植物を推して来るのだ!苦笑しつつ、これもせっかくなので、細くスティック状にスライスされた生の一片を口に放り込み、パリポリと咀嚼する。甘味のない林檎のようで、後味はさやいんげんであった。読売新聞社「映画あそび人/阪田英一」を購入する。これで今年に入ってから、谷中&根津には「ひるねこBOOKS」(2016/01/11参照)「古書OLD SCHOOL」(2016/01/24参照)と合わせて三軒の古本屋さんが開店したことになった。これぞ奇跡の古本屋開店ラッシュ!

さて、奇妙な相棒が出来てしまったが、小さな生命の重みを右手に感じつつも、古本屋さんへの旅を続けることにしよう。電車で街を離れてちょっと北へ向かい、五反野駅で下車。『駅前通り』から脇道に入って「四季書房」(2009/07/30参照)へ。ザリザリのコンクリ土間と狭い通路と老店主の勇姿を楽しみ、ポケット文春「海の弔鐘/高橋泰邦」を700円で購入。続いて西側の住宅街に沈む「秀画堂」(2011/02/03参照)。平均的に棚の所々に存在する古書に魂を吸い取られ、近代文庫「毒藥を飲む女/岩野泡鳴」玄林社「どん底の人達/草間八十雄」(函ナシだが、昭和十一年刊の東京市細民窟調査研究本。1500円なのでどひゃっほうである)を計1600円で購入し、多肉植物の相棒と嬉しい収穫と共に帰路に着く。
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2016年02月11日

2/11「孤島の鬼」デザイン思考過程

遅く動き出し、まずは西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)フェア棚に補充(ちょっと付録本も並べてみました)しつつ、大事な打ち合わせをひとつ。それからツアーに出かけようと思っていたが、何と相棒のカメラを忘れていることに気が付く。もちろん写真など携帯で撮ればいいのだが、これだけは愛用しているメモ帳と同じで、どうもそれらがないと心が挫けてしまうのだ。考えるに、同じカメラ・同じメモ帳に、自分の行動観察が日々連続して記録されていることが大事らしい。挫けると同時に、サボり心も頭をもたげて来たので、そのままダラダラ歩き続けて、荻窪をウロウロ。「竹陽書房」(2008/08/23参照)で創元SF文庫「鋼鉄の黙示録/チャーリー・ヒューマン」を400円で購入。「竹中書店」(2009/01/23参照)では新潮社「作家の周辺/相田昭」(主に八十年代の作家・美術家肖像写真集。小沼丹・澁澤龍彦・土方巽・埴谷雄高・田村隆一・草野心平・庄野潤三・色川武大・小島信夫・後藤明生・星新一・吉岡実なども含んだなかなか素敵な一冊)を300円で購入。最後に「ささま書店」(2008/08/23参照)にて文春文庫「トリック交響曲/泡坂妻夫」慶應義塾大学教養研究センター選書6「ジュール・ベルヌが描いた横浜/新島進編」を計525円で購入し、さっさと家に戻ってしまう。

さて、これだけで今日を終えてしまうのはどうにも忍びないので、お知らせ+それにまつわる与太話をひとつ。先ほど「盛林堂」さんでした打ち合わせというのは、本のデザインのことであった。その本とは、何と江戸川乱歩「孤島の鬼」!これはただの復刊ではなく、昭和五年に出版された改造社版(恐ろしいことに古書価は三十万ほど…ブルブル…)の復刊!現在の文庫や全集で読める「孤島の鬼」は、実は表現にだいぶ加筆訂正が加えられたもので、多少なりともソフトになっているものである。その長らく眠らされていた、クレイジーな話に相応しいクレイジーな表現で書かれた単行本初出テキストを、可能な限り復活させる大プロジェクトなのである。何たって古書価がバカ高なので、おいそれと読むことは出来ない。だからこの話を聞いただけで、早速読みたくて読みたくてたまらなかったのだが、何と読むどころか光栄なことに、本の装幀を依頼されてしまったのである。あぁ!こんな俺が、大乱歩の本を装幀出来る日が来るなんて。去年の旧乱歩邸取材以来の『生きていて良かった』と思えるビッグな喜びである。しかし喜んだのは一瞬で、たちまち大いなるプレッシャーが、襲い掛かって来た。いったいどんな本にすれば?大乱歩の本だぞ。絶対にヘタは打てない。だからと言って、ただ文字だけで取り澄ましてシンプルに作るのは避けたいものだ。作品はクレイジーでぶっ飛んでるし、昭和初期の探偵小説の雰囲気は、どうにかして出したい。元の改造社の装幀は竹中英太郎で、あのイラストに加え、独特な竹中フォントが不気味にのたくっている素晴らしさ…とうていこれには及ぶべくもない…う〜ん、どうしたらいいんだ…。そんな風に散々悩んで思い至ったのが、写真家・猪瀬光の作品「ドグラマグラ」であった。強烈な被写体を捉えたモノクロ写真で表現された、夢野久作作品に拮抗するおどろおどろしくも清々しい世界。作品をそのままを直接表現しなくとも、あんな風に力強ければ「孤島の鬼」をうまく包み込めるのでは…だがそれには、力を持った写真が必要となる。最初は自分で、昭和初期に建てられた近代建築や、海の写真などを撮り、加工して使ってみようとも思ったが、これは考えただけで実行には移さなかった。いくら加工しても、恐らくごまかせない新しさが出てしまう気がする…どう取り繕おうが、所詮は偽物に過ぎないのだ……では本物を使えば良いのだろうか?本物とは…そうか、同時代の写真を使えば、作品とうまくシンクロしてくれる気がする。では何の写真を…あれは、あれはどうだろうか?資料として保存してある、昭和初期の発禁本「犯罪現場寫真集」(警察の科学捜査を進展させるための写真集で、主に1900年代初頭の欧羅巴の犯罪現場が多く収められている)を素材として上手く使えば、出来そうな気がする!…いや、これはピッタリじゃないか。乱歩と犯罪!と、この突如閃いたアイデアにトンネルをようやく抜けた気持ちになる。しかし二三日経つと、どうも違和感を覚え始めてしまった…やはり、本物はいかんのじゃないか。いかに乱歩が猟奇的とは言っても、それは違うのではないか。上手く加工やトリミングをしたとしても、どうにも拭えない忌まわしい感じが出てしまうのではないだろうか。うぅん、ダメか…そんな風に、また思考の袋小路…。だが、突破口は、やはり昭和初期にあるはずだ。こうなったら神保町にでも行って、使えそうな絵葉書でも漁って来るか………絵葉書?そうか、確か松江で昭和初期の組絵葉書を買っていたはずだな。慌てて探し出したのは「鎌倉江之島拾六景」である。ボロボロの袋に入った十六枚組のモノクロ観光絵葉書である(版権は切れているので素材として使うことに問題はない)。一枚一枚見て行くと、突如電撃が背中に走った!何とそのうちの一枚に、作品中の第二の犯罪現場である鎌倉の海岸をスナップしたものが存在していたのである!これだ!これだ!これしかない!と躍り上がるほど喜び、それを素材にして早速デザインに取りかかった。出来上がったものは、単なる海水浴風景を地に敷いた本。だが、どうだこの乱歩的雰囲気は!思わずニヤニヤしてしまう。何度見ても、ニヤニヤしてしまう。これは間違いなく乱歩世界と地下水脈でつながっている!そんな風に狂信し満足しながらも、物凄く突飛なモノを作ってしまったことは、自分でもすでに理解していた。だからデザイナーの性として、洞窟をモチーフにした安全案と、洞窟+海岸風景を使った折衷案を作り、計三種でプレゼンにかけることにした…すると見事にというか、やはり選ばれたのは、折衷案であった。くそぅ、愛すべき安全主義者共めっ!残念也!
ちなみにこれが、分かる人は分かって思わずニヤリとしてしまう、幻の全面海岸風景バージョンである。
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(クリックすると大きくなります)

とまぁ、そんな面白い本が月末に発売されますので、ご興味を抱いた方は、下記の盛林堂サイトをご覧下さい。
http://d.hatena.ne.jp/seirindou_syobou/
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2016年02月10日

2/10古書棚バンザイ!

今日も早起きして開始直前の古本市待ちの列に取り憑く。とはいっても昨日と場所は異なり、東村山「なごやか文庫」(2012/01/10参照)の「初売り大古本市」に突撃するのである。
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思えば年一回のこの市に参戦するのも、もう五回目(2012/02/05・2013/02/12・2014/02/09・2015/02/11参照)になるのか…。大好きな古書棚に限って言えば、去年は不作だったが、今年は果たして…。ソワソワしながら開場を待っていると、元音羽館店員さんで、今度熊本に古本屋さんを開業予定の佐藤氏に声を掛けられる。今日は古本というよりは、二階のレコード狙いとのこと。お互いの武運を祈りつつ、ほどなくして開場となる。列は、児童書・コミック・CDコーナー、古本市会場、二階中古レコード・雑貨コーナーに分離。良し、今日は買うぞ!としゃかりきになって迷わず古本市会場に進入して行く。入った途端に、合板寄せ木細工床の上で右九十度にターンし、そこにあるはずの200均古書棚を確認。やった!今年は三本も出ている!しかも良さげな茶色い本がズラズラズラズラ!三人ほどの古書棚ライバルと競い合いつつ、たちまち腕の中に十冊以上の山が築かれる。全部見終わっても、もう一度始めに戻って再確認。ド集中し、見たことのない古本たちに興奮し過ぎたので、最初の十分弱でほとんど燃え尽き、大いに満足してしまう。というわけで、脱け殻のような幽的のようなものになり、後は会場をゆっくりと流し、手にしたのは一冊だけ。和平書房「女王の愛人/大佛次郎」三啓社「藤十郎狸武勇傳/藤原審爾」開文社「ジーキル博士とハイド氏の奇談/ロバート・ルイース・スチーヴンスン」春秋社「ホーソン奇譚集」(函ナシ)新興亞社「飛行家族/ジョーヂ・R・ハッチンソン」(訳者献呈署名入り)まひる書房「少年感激小説 この友情/佐藤紅緑」柳香書院「世界探偵名作全集3 赤色館の秘密/A・A・ミルン」(函ナシ)小學館「ガーラムの冒險/松田伊之介」(裸本)白鳳社「欧米女見物/道家齊一郎」(函ナシ)岡倉書房「伯林-東京/秦豊吉」北海出版社「無人島の孤兒/フレデリック・マリアット」紫書房「パリの青髯事件/ドラモンド・ラ・デイユ」積善館「南窓里見八犬士傳 花魁莟八總/山田案山子」創文社「詩集 夜の扉/串田孫一」(署名入り)を計2700円で購入する。「本がぁ〜、みんな〜、壊れそうだぁ〜」と歌うようにつぶやくオジさんに紙袋に本を詰めてもらった後、一応児童書コーナーも眺めてみる。その後入口横の雑誌&ビデオ棚も眺めていると、背後から強い力で突然ホールドされる。何が起こったんだ!と泡を食って首を捻ると、口髭の古本神・岡崎武志氏が額に玉のような汗を浮かべて微笑んでいた。自転車で三十分かけてたどり着いたそうである。少し言葉を交わすと氏はCDコーナーに進んだが、何とその後に向かったのは、二階の中古レコードゾーン!まずは古本には目もくれず、フォーク関連レコードを掘り出し始めたのである。古本神とは思えぬ意外な行動!おぉ、明日は雪でも降るのではないだろうか…。市は2/14(日)まで。
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2016年02月09日

2/9東京・池袋 三省堂書店池袋本店 第一回古本まつり

いそいそと起き出すと、今までよりちょっと暖かい朝。身支度を済ませて早くも家を飛び出し、ラッシュアワーでなかなか扉の閉まらぬ電車に飛び乗り、午前九時四十八分に池袋駅南口改札から吐き出される。今日から、以前は『リブロ』が主催であった古本市が、『三省堂』主催となり開かれるのである。その記念すべき第一回の、初めの始まりを、この目で目にして体験したい!と開店前に気合いを入れて駆け付けたのである。果たして市の開催を待ちかねる行列は、何処に出来ているのであろうか?地下から西武デパートにアプローチしてみると、そこには普通にデパートの開店を待つ、疎らなおば様の姿ばかり…ここではない。慌てて地上への階段を駆け上がると『明治通り』。やはり、会場である別館の『西武ギャラリー』に一番近いと目される、この通り沿いの出入口に整列しているのであろうか?勤めに向かう人波の中を擦り抜け南に向かっていると、すぐにデパートの壁面に貼られた白い紙に気が付いた。『古本まつりご入場ご希望のお客さまへ』とあり、大変な混雑が予想されるので、客の安全・安心確保のため入場口を限定し、係員が誘導するとのことである。待機場所は、やはり明治通り側別館一階『無印良品入口前』であった。
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すべてを把握してさらに南に向かうと、おぉ!すでに五十人以上の着膨れした年配中心の列が形成されているではないか。素早く列の最後尾に取り憑くと、すぐに列は誘導され始め、まだ開店前の建物内に吸い込まれて行く。たちまち私の後にも平日の午前に市に駆け付ける古本修羅が連なって行く。警備員さんから店内案内図を受け取り、階段を上がり、開店準備中の店員さんにお辞儀され、ギャラリーの壁沿いに列が落ち着き、『三省堂書店』のリーフレットを店員さんから受け取り、我々は別館から弾き出された立体駐車場の廊下にスタンバイ。やがて、館内アナウンスで開店三分前から、一分ごとに午前十時の開店をカウントダウンし始めた。いよいよ一分前になると、列がひとつの生き物のようになり、やる気と殺気が鳥肌が立つように伝播して行く。そして頭上から妙なる音楽が降り注ぎ始め、午前十時開店!列が会場に遅滞なく迅速に入り込んで行く。「危ないですから走らないで下さい」の言いつけをみな守り、戦場へと行儀よく身を踊らせて行く。案内図を参照し、思い思いの方向に散らばって行くが、「にわとり文庫」ゾーンが蹂躙大混雑状態なのを遠目に目撃し、少しの間恐怖する。会場内の構成は、『リブロ』時代の「古本まつり」(2011/08/03参照)とそう変わらない。大きく違うのは出入口が一ヶ所で、ガラスケースの並んでいた小さなロビーは使われず、すべてギャラリー内に集約されているところだろうか。出店は二十二店で、ワゴン数はそれぞれ四台〜八台と様々だが、それにしても一店分の量が多く素敵である。次第にすべての通路が混雑に見舞われ、気付けば大盛況である。だが、様々な人と言葉を交わし、たくさんの小さな古本交差点を通り過ぎたものの、初めての勢いに気圧されたのか、まだ一冊の本も手に出来ていない。やがて狂乱狩猟後の「にわとり文庫」棚を呆然と見ていると、背後に突然出現した「古書いろどり」(2015/12/12参照)彩古氏が「これ、棚に戻しに来た本だけど、よかったらどうぞ」と二冊のジュニアミステリを差し出してくれた。その内の一冊が、見事に読みたかった本だったので有り難く受け継がせていただき、一冊は棚へと戻す。この時ばかりは、厳かな古本神が素敵な古本天使に見えてしまった…。これでいくらか気が楽になったので、余裕を持って会場内を徘徊。するとほぼ一軒の古本屋さんのような四方ぐるり棚(一部に小さな行き止まり通路あり)の「ハーフノート・ブックス」ゾーンで、カバー無しだが、非常に読みたかった東京ライフ社「地底の美肉/橘外男」を発見し、値段を見ると千円!鬼畜迷妄小説「青白き裸女群像」鬼畜迷妄少女小説「双面の舞姫」とほぼ同じ内容だが、これは新東宝映画の『女吸血鬼』の原作だ!天知茂が、逆回転で華麗に格好良く岩から岩へ飛び移るんだ!と喜び抱え込む。結局一時間ほど滞在し、光文社 少女昭和三十一年11月号ふろく「探偵小説 きりの中の顔/島守俊夫」(水ヌレ跡あり)と共に計3000円で購入する。市は2/15(月)まで。

まだ午前中だと言うのに、すっかり古本に精気を吸い取られ、心地良い疲労を抱えながら阿佐ヶ谷へと戻る。すると、お店の改装を終えて、先週土曜日に本格開店したアンティーク古道具屋「J-ハウス」(2015/12/26参照)の店先に、古雑誌を発見する。あの大物を掘り当てて以来、週末開店するたびにまめにチェックしていたのだが、残念ながら古本が現れることはほとんどなかった。だからこの久々の出会いを喜び早速手にしてみると、二冊とも昭和初期の少女雑誌!800円だが状態はそれほど悪くないので、喜んで買わせていただくことにする。大日本雄辯會講談社「少女倶楽部」昭和三年十月号・昭和五年三月號を購入する。
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数は少ないが本日の粒よりな収穫である。
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2016年02月07日

2/7激烈な赤城おろしに身も古本心も凍り付く

過去に二度チャレンジし、入れなかった古本屋さんが、実は午後五時から営業していることを知る。三度目の正直とばかり、東武線で北関東の冬枯れした平野を驀進。すでに陽は落ち始め、水のない田んぼに嘘のように幅広く大きな電車の影が広がり、何処までも並走し続けてくる。行程三時間の車中では、先日手に入れたばかりの篠原有司男「前衛の道」を読了し、『読売アンデパンダン』や『ネオダダイズム』の激しい前衛美術(前衛どころか、もはや切り込み隊長の鉄砲玉の域である…)のうねりを活字で疑似体験し、興奮して無闇に血気を盛んにしながら到着したのは、群馬県の赤城駅。赤城と言えば漫画『頭文字D』の峠の走り屋、高橋涼介・啓介兄弟のホームグラウンドであるわけだが、ちょうど駅前の国道をけたたましいエンジン音を響かせながら、街の向こうに見える山塊に向かって、そんなような車が走り去って行くのを目撃する。こちらは徒歩で、同じ国道を北上して行く。街中に強く冷たい風が吹き荒れている。あの遠くの山肌から滑り降りて来る、上州名物の『赤城颪(おろし)』である。たちまち顔はこわばり、耳はちぎれそうになり、手はかじかんでしまう。車はひっきりなしに行き交うが、生身の人は誰も歩いていない。たった一人で赤城おろしと車の巻き起こす冷酷な風に弄ばれながら、トボトボとお店を目指し、かなり寂れた緩い上り坂の商店街を歩いて行く。やがて交差点際にあるお店の前に到着する。時刻はちょうど午後五時だが、開いていない…お店の周囲はチェーンで囲まれ、シャッターはガッチリ下りてしまっている…つまりは開店する気配ゼロなわけである。もしかしたら、ちょっとお店の人が遅れているのかもしれない。うん、これから開くんだ、これから。そんな風に己に言い聞かせ、ちょっとの間街を探索し、望みの薄い開店を待つことに決める。街と言っても、道沿いに続く商店街らしきものを、ただたどるだけである。ほとんどのお店は閉まり、廃墟のような貸店舗もあり、実際に廃墟となったお店もあり、寂しいことこのうえない。だが、そんな商店の並びは、どこまでもどこまでも山に向かって続いている。和菓子屋・八百屋・おもちゃ屋・床屋・美容院・鮮魚屋・醤油屋・薬屋・駄菓子屋などが時たま開いており、ホッと心を和ませてくれるが、寂しさが圧倒的優位を誇っていることに変わりはない。二十分ほど歩いただろうか、ふと道の横の小山に神社を見つけたので、そろそろ古本屋さんが開いていることを願うように参拝。ようやく先ほどより遥かに明度の落ちた道を引き返し始める。すると往路では営業中だったお店が、次々と閉店しているので、突然見知らぬ土地での心細さが、ズズンと背中に圧しかかってくる。寂しさと赤城おろしに身を縮こまらせて、ようやく戻って来た古本屋さんは、先ほどの姿のまま、もはや夜の闇の中に没しようとしていた。
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…くくぅ、神様なんて、あてにならないじゃないか…そんな不遜な考えさえ起こし、さらにトボトボ駅へと戻る。だが、まだ諦め切れないので、自動販売機で暖かいココアを買い、ゆっくり飲み干してから、しつこくお店に戻ってみる。…もちろん開いていなかった…くやしいが仕方ない、暖かくなったら、また見に来ることにするか。そんな風にすっかり身体と心を凍るほどに冷やしただけで、再び駅に戻る。西に延びる上毛電鉄の線路を渡っていると、美しい色彩のトワイライトだけが、赤城にまで来た愚かな古本屋ツーリストを、一瞬祝福してくれたような気がした。
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だが、すっかり古本が買えると思っていたので、帰りの車中で読む本がないのは、大いなる誤算であった。何かないかとカバンの中を漁ってみると、昨年末に京都を訪れた折り「善行堂」さん(2012/01/16参照)より献呈された、恵文社「古本屋がえらぶ気ままにオールタイムベストテン」が放り込まれたままなのを発見!むさぼるように読み始めると、たちまち古本屋さんに入れなかった身体と心に、千差万別の古本話が染み渡って行く。中でも一番心を揺さぶられたのは、六甲「口笛文庫」さんのエピソード。『いつだったか戦前の映画館のチラシや探偵雑誌などがまとまって資源ごみ回収場に捨てられてありドキリとしたことがあった。』…うぎゃぁ!そんな夢のようなことが!「新青年」か?「ぷろふぃる」か?「LOCK」なのか?…嫉妬してしまうほどのうらやましい出来事である。電車は、すっかり暗くなった関東平野の北端を、力強く切り裂いて行く…。
posted by tokusan at 23:14| Comment(2) | TrackBack(0) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年02月06日

2/6東京・国分寺 古書 七七舎

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店売りを辞めた「ら・ぶかにすと」(2008/07/17参照)跡地を引き継ぎ、本日新しい古本屋さんがオープンしたので見に行くことにする。改札を出て、現代的大伽藍下の南北通路に立ち、北側を見る。すると、今まで正面階段のあった場所は塞がれてしまい、新たに通路が左右に振り分けられている。右側の仮設通路をズンズン進み、大規模工事真っ最中の駅前をぐるっと回り込んで、北へと延びる『駅前通り』に吐き出される。真っ直ぐ通りに入り込み、信号のある交差点を二つ過ぎれば、ほどなくして左手にお店を発見…いやに人だかりがしているが…と思ったら、それはちょうど出発しようとしていた、開店宣伝を請け負ったチンドン屋さんの一団であった。ほほぅ、懐かしく華やかに古本屋さんが開店している!五人編成の彼らと入れ替わるようにして、真新しい赤い日除けが四角張っている下の、小さな店頭に進み入る。路上には『本』のシンプルな立看板があり、左に安売ムック&雑誌ラックが二つ、渋めの100均単行本と一般100均文庫の収まる棚付きワゴンが一台。ワゴンは「ら・ぶかにすと」時代から引き続き使われている。ウッディな内装の店内に入ると、入口横に小さく低めのカウンター帳場があり、壁際にはぐるっと本棚が巡らされ、真ん中に背の高い背中合わせの棚が一本の構成である。基本構造は前店舗とそう変わらぬはずだが、ディスプレイや本の並べ方に丁寧さが行き届き、見易い情報量がなんだか楽で心地良い。帳場にはメガネの女性が座っているが、店主と思しきジーザス・クライスト的風貌の男性は、次々と訪れる知り合いやお客さんの対応に大わらわである。混み合う通路で、ジリジリと棚を観察し始める。右壁棚は、幻想&怪奇&探偵小説類(70年代出版物中心)・アングラ・古書・児童文学・絵本・自然・山岳・落語・伝統芸能・民俗学・宗教・歴史が、キモの良書を面陳しながら並んで行く。向かいの通路棚には、セレクトコミック・サブカル・音楽・映画・アート・建築・写真。奥壁には辞書・言葉・猫本・海外文学。お客さんと譲り合いながら左側通路へ。壁棚には70年代を基本としたセレクト日本文学・セレクト文庫・日本文学文庫・出版社別文庫・時代劇文庫。通路棚には、新書・本&古本関連・世界史・バッドテイスト・性愛・隠秘学・科学・宇宙・哲学・思想と並ぶ。小さなお店だが、むしろそれを生かすように削ぎ落とした、なかなか鋭い棚の連続が特徴となっている。所々に顔を出す古書も魅力的。値段はビタッとジャストな感じである。理論社「煙突屋ペロー」(昭和五年に日本で制作された反戦影絵無声アニメ再録本。イナガキタルホに通ずるような表現主義的影絵が全画面に展開!)を購入すると、開店セールなのか一割引にしていただく。本を受け取り、まだまだ賑わう店前から離れて駅に近付いて行くと、独特なチンドン屋さんのメロディーが、風に乗って聞こえて来る。クラリネットと鐘と太鼓の音と、先頭に立つ白塗り丁髷姿の男の口から流れ出す宣伝口上…「♪ハイラッシャイラッシャイ。本日開店の、古本屋。この道真っ直ぐ左側。ハイラッシャイラッシャイ…」。開店おめでとうございます!
posted by tokusan at 16:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする