2016年06月30日

6/30東武東上線の充実したつながりに気付く

下板橋に「水たま書店」(2016/05/26参照)が出来たことにより、東武東上線の古本屋巡りが、より充実したラインになったのではないか。そんなことにはたと気付いたので、「水たま書店」を振り出しに実践してみることにする。というわけでいつの間にか下板橋駅。ひと月前とは違い、今日は下りホームの臨時改札口が開いている。だが自動改札機が、ヴゥ〜ンと殊更大きな異音を立てているではないか…これは、大丈夫なのだろうか…?線路沿いに西へ進んで行く。あれ、前通った時もオジさんが路上で虎猫にエサを上げていたが、今回もまるで時間など経っていないかのように、同じ場所で同じ光景が繰り広げられている。もしや私は、タイムリープしてしまったのでは、ないだろうか。ちょっと自分に、夢のある嘘を押し付けながらお店に着くと、おっ、フロア中央手前側に新書&岩波文庫(青)&ペーパーバックの小さな棚が出現している。フムフムと感心しながらたちまち三冊。龍星閣「夢二画譜」(函ナシ)ちくま文庫「クリント・イーストウッド/中条省平」朝日ソノラマ「サヨナラ サヨナラ サヨナラ 淀川長治の日曜洋画劇場」を計1000円で購入すると、精算してくれたのは前回のお兄さんお姉さんと違い、エプロンを着けた安田顕風の青年。「ウチは初めてですか?」「いえ、二度目です」「そうなんですか!ありがとうございます!」と大喜び。「いらない本があれば、ぜひお売り下さい。ウチは本以外にも古い紙類も扱ってますので、そんなのもあればぜひ」ということである。

さて、ここからは隣駅の大山までテクリテクリ。『環八通り』の下を潜り、住宅街を取りあえず右に見え隠れする線路沿いに西進。そうすると勘所がよかったのか、いつの間にか黄色い看板が美味しそうな「ぶっくめいと」(2009/08/05参照)前に到着。店頭棚で早速一冊引っ掴み、静かできめ細かく濃厚な棚造りの名店に身を委ねる。いつ来ても、ここはスゴいな…いつものように感心しつつ、左奥のミステリー棚を息を詰めて食いつくように眺めていると、帳場から「あの、もしかしたら、小山さんですか?」とご婦人に声を掛けられる。ヒィっ!とっくに正体が露見していたのか! 旦那さんとは何故かいつも外で出会いお話ししたことはあるのだが、奥さまとお話しするのは初めて。恐縮しつつ棚を眺めつつ、色々とボソリボソリ。…あぁ、話していても、見たこのない本が見つかってしまう…。葛城書店「科學随筆 毒/伊澤凡人」英宝社「ふたたび宝島へ/ジョン・コネル」河出文庫「鷲尾三郎名作選 文殊の罠/日下三蔵編」を計2100円で購入する。

東武線の下をトンネルで潜り、続いて「銀装堂書店」(2014/07/19参照)へ。店頭で一冊掴んで、存在感が大き過ぎるコケシワゴンに面食らいつつ店内へ進むと、何だかとても古書率が上がっている。左壁面はほとんど古書&紙物棚と化しており、レア本がボロボロ紛れ込んでいる。右端通路の足元にも古書を含有したあぜ道的盛り上がりが出現している。興奮してかなりガサゴソしてしまったが、しっかり値に太刀打ち出来ず、結局買ったのは100均一冊だけ…すみません。新潮文庫「これが映畫だ/エレンブルグ」を購入。

後は再び電車に乗って、一気に下赤塚へ。しばらく来ない間に、ちょっと様子の変わった『川越街道』の景色に目を瞠りつつ、もはやリサイクルショップなのか古本屋なのか分からぬ「司書房」(2009/06/07参照)。右側通路手前にいつの間にか山を成した映画パンフレット群。そこかしこに置かれた箱内に蔓延る、妙な紙物たち。そして左側中間を侵食しつつある古道具たち…旺文社文庫「芳兵衛物語/尾崎一雄」読売新書「危機一髪 その時あなたは?/読売新聞社編」を計300円で購入し、正統派古本客として振る舞う。

この他にも上板橋の「林家書店」(2010/02/03参照)「BOOK STYLE」(2013/09/18参照)も回れば、よりこの古本屋ルートは豊潤なものとなるだろう。それぞれお店の性格がだいぶ違うので、かなり楽しめるはずである。そんなことを認識した本日の嬉しい収穫はこちら。
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左は「宝島」に続きがあったんだ!と驚きの別人による続編。ジョン・シルバーは?島に残った宝は?何とあれから二十五年後の物語…なんだか『エヴァンゲリヲンQ』みたいな展開だ…。そして右は1920〜30年代のパラマウント映画とその業界の物語。話自体が珍妙なのか、訳が珍妙なのか、物凄く尖鋭的な文体で書かれているが、これが100円は嬉しいめっけものである。
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2016年06月28日

6/28東京・渋谷 LOFT9 shibuya

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西口に出ると、『東急プラザ』はすでに消失し、ついでに隣の道に架かっていた印象的な飲食店街ゲートも姿を消し、何だか寂しいことこの上ない。裏通りの「渋谷古書センター」(2008/07/24参照)店頭を流してから、『道玄坂』に出る。坂を上がり、道が左に曲がり始めたところで『しぶや百軒店』に曲がり込む。いつの間にか新調され、高さを増した細めの鳥居のようなゲートを潜り、さらに急坂となる赤い道をエッチラオッチラ北に上がる。左に陽気なアダルトショップ、右にストリップ劇場の入口を見ながら、そのまま正面の小路に突入する。風俗店と、古風な姿を保ち続ける『名曲喫茶ライオン』を過ぎると、道は渋谷の丘の上に到達している。小路の猥雑さを存分に楽しみつつ、角地に『千代田稲荷神社』を臨んでから南へぐるっと回り込み、百軒店ゲートの坂を下る。するとそこはラブホテル街円山町のド真ん中。北に坂を下って行くと、すぐ左手に映画館『ユーロスペース』を内蔵したビル『キノハウス』。上下から押しつぶされたような一階を見ると、そこに新たなカフェがオープンしていた。ライブハウスとトークイベントの『LOFT』が、その名を冠する九番目の拠点として送り出したカフェ+イベントスペースである。そのカフェの一角に、「古書現世」(2009/04/04参照)と「JUNGLE BOOKS」(2010/08/20参照)が古本を置いているというので、駆け付けた次第である。巨大な二つの映画看板が頭上から圧し掛かるような空間にはテラス席があり、手前にワイヤーで『9』を象った植栽が、未だ緑少ない姿を晒している。奥のカフェに近付くと、右手に『BOOK』の文字が見えたので、迷わずそちらに足を向ける。中に入ると広く落ち着いた感のあるカフェである。左側にレジと厨房カウンターがあり、さらに左奥はガガガガガガガと現在進行形で工事中。右手前角に木のボックス棚が設置され、現在はその七つに古本が収まっている。性・アングラ・映画・オカルト・アウトロー・演芸・思想・前衛美術・悪趣味・サブカル…今後繰り広げられるであろうトークを予見したような、セレクトしまくった尖った並びである。明らかに女子が書いたと思われる小さな店名看板が、あまりにポップなので苦笑い。他のボックスはまだまだ空いていおり、入居予定者の付箋がペタペタ貼られている。様々な尖った団体・お店・アーティストの名がそこに…すべて揃った暁には、楽しく過激な景色が誕生するのだろう。願わくば、細かく手を掛け目を配り、常にラブホテル街に新鮮な風の吹き抜ける棚を維持し続けて欲しいものである。オークラ出版「ホビーパソコン興亡史/前田尋之」を購入しようと、レジのメガネっ娘に差し出すと、そのレジ処理に盛大に戸惑い、初々しいことこの上ない。恐らくここで古本が売れたのは、初めてのことなのだろう。このお店は7/1(金)にグランドオープンする。
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2016年06月26日

6/26東京・立川 多摩骨董市

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起きた時間で、立川(午前七時〜)か石神井(午前十時半〜)の骨董市に行こうと決めて寝る。目覚めたのは午前七時過ぎ…まぁ、まだ早い方かと、ボヤボヤしながら身支度を整え、立川にガタゴト向かう。南口のビル街の足元を擦り抜け、『諏訪通り』をなぞって次第に西南へ進んで行く。やがてビル街は住宅街に姿を変え、道幅が狭くなって『スワ通り商店街』とある銀色のゲートが現れる。ただしこの先の商店はと言えば、鄙びた模型屋さんぐらいしか見当たらない。十分ほどで、学校向かいの、鎮守の杜を繁茂させた『諏訪神社』東参道に到着。骨董市の幟は立っているが、お店の姿は何処にもない。スタスタコンクリ敷きの参道を伝って、石畳の表参道に出ると、樹影濃く土の匂いも漂う武蔵野的風景の中に、二十店弱のお店が連なっていた。少し緩い空気に身を馴染ませながら、後ろ手のポーズで手近なお店から覗き込んで行く。すると二店目の長テーブル上に、四つの絵本と教科書と楽譜&パンフの山を発見する。慌てて取り憑くと、みな戦後昭和二十年代近辺のものばかり。フムフム高揚しながら絵本を中心にチェックする。乗物関連も多くて嬉しいのだが、その時代の風俗を色濃く伝える「おみせやさん」と「ゆうえんち」に心さらわれる。値段を聞こうと思ったが、何故だか店主の姿が何処にも見えない。仕方なく一旦奥まで進んで時間稼ぎ。他店には、高値の満州関連や100均の手塚漫画全集などを発見するが、心ときめかず。ゆっくり件のお店まで戻ると、店主が帰還されていたので、早速値段を聞いてみると、一冊千円とのことである。まぁ、適価であろうか。「こういうのはね、紙物専門の市があって、そこにドバッと出るんだよ。本も少しは出るけどね。でもそこに神保町とかから、古本屋さんが買いに来るんだ。そうすると、どうしても値が上がっちゃうんだよ。だからどうしても、この値段になっちゃうの」とのことである。ウムムム、骨董屋VS古本屋ということか…。というわけで小学館の育児絵本「おみせやさん」(昭和28年。『おかしやさんとぱんやさん』『やおやさん』『にくやさん』『おもちゃやさん』『さかなやさん』『まあけっと』『よみせ』『でんきやさん』『たばこやさん』『ほんやさん』を掲載。「三丁目の夕日」とは異なる、甘く懐かしい時代が見事に厚紙に定着している。街に野良犬率高し。『よみせ』のページに古本屋屋台がチラリ。)「ゆうえんち」(昭和29年)を購入する。
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これは最終ページの『ほんやさん』。小学館特約店のようなお店である。背後の本棚に目を凝らすと、『新田園』『隅田川』『東京男』などのタイトルが確認出来る。
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2016年06月25日

6/25一店目で満足し雷蔵の眼鏡姿に心浮き立つ

どんよりとした曇り空、じめっとまとわりつく空気。家に散在する本の山も、心なしかその堆積を増やしているのではないだろうか。そんな季節環境から来る憂さを晴らすべく、良い出物が高確率で棚に出現する、お気に入りのお店をハシゴしようと画策する。最初は当然武蔵小山の「九曜書房」(2009/03/26参照)にして、その後は京成大久保の「キー・ラーゴ」(2009/11/25参照)経由で八千代台の「雄気堂」(2009/05/30参照)にするか、それとも押上「イセ屋」(2014/07/13参照)から久々の蒲生「プラハ書房」(2010/12/22参照)にするか……と、大いに悩みながら「九曜書房」。通りかかった一団が、「雨が降ったら、これ片付けるの大変だぞ」と蜂の巣のような店頭均一棚を指差すのを尻目に、その棚にまずは取り憑き、続いて愛しの店内500均棚に熱い視線と思いを投げ掛ける。…おぉ!やはりここは、私の貪欲な古本心を決して裏切らないっ!と改めて確信しながら、あっという間にいつもより多めな五冊を抱え込んでしまう。さらに抱え込むことも出来たのだが、まぁそこは自制して落ち着いて、落ち着いて…。アトリエ社「戀愛三十年/川口松太郎」(函ナシだがどひゃっほうである。新鋭大衆小説第一巻で、装幀は藤田嗣治)光風社「零号租界/島田一男」改造社「蟹工船 太陽のない街 鐵の話/小林多喜二 徳永直 中野重治」(装幀・柳瀬正夢)三和図書「かみがた演藝 漫才太平記/吉田留三郎」昭和書房「民藝叢書第一篇 民藝とは何か/柳宗理」(函ナシ)を計2500円で購入し、何だか『古本買いたい〜。古本欲しい〜。面白い本見つけたい〜。』というような欲望の憑物が、ボロリと呆気なく落ちてしまう。「大きい袋ですみません」と大きなポリ袋に五冊を入れてもらい、何もかもスッキリして表に出る。こうなると、何だか遠出はもういいかと思ってしまい、ゆったりした気分でテクテク西小山に向かって歩き出す。まだ午後二時過ぎなのに、酔客で溢れ返る『牛太郎』の酒精天国っぷりに垂涎しながら通り過ぎ、十分ほどで商店街とば口の「ハイカラ横丁まるや」(2015/02/18参照)に到着。店頭に置かれた、綿菓子製造機にエキサイトしながら挑みかかる子供たちの横を通り過ぎ、店内を探索。う〜ん、あの明治本を取りあえず手に入れておくか…などと悩みつつ、入口近くに戻ってふと棚の上を見上げる。するとそこには一枚の額装された写真が、燦然と輝いていた。私服で眼鏡姿の市川雷蔵が、森一生監督と何やら打ち合わせている、大映映画「ある殺し屋の鍵」のスナップだったのである。即座に一目惚れし、1620円という手頃な値段も相まって購入することを決める。タイミング良く入口近くに出て来たハミングまじりのオヤジさんに差し出すと、「おっ、これいいよね」「もともと額装されてたんですか」「いいや、ボクがしたの。だって、紙一枚でペラッと売ってるより、遥かにいいでしょ。だからこの値段は、ほとんど額だけの値段なんだよ」と言いつつ、何だかとても嬉しそう。さらに重くなったポリ袋を下げ、もはや他のお店に足を運ぶ事なく帰宅する。
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写真の雷蔵に、とにかくうっとり。「監督、ここで素早く美しく、畳針ですよ」とでも言っているかのようである。
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2016年06月24日

6/24東京・新橋 ヴァニラ画廊

野暮用で横浜方面の実家に戻りつつ、帰りに東横線→日比谷線と乗り換えて恵比寿駅下車。線路沿いの、嬉しくなるほどの急坂をグイグイ上がって、車用の丸い滑り止めを踏み続けて、頂上付近に『本買います』の小さな電灯看板を臨む。ほぼ一年ぶりの「トップ書房」(2015/04/27参照)である。変わらずに今日もこの高みから、恵比寿の街を慎ましく見下ろしていた。狭い通路の店内に入ると、棚の所々に『1000円以上半額』と貼り出されている。…何かのセールなのだろうか?訝しがりながらも、せっかくの制度を利用させてもらうことにして、北書房「アイヌ民話集(増補改訂版)/更科源藏」を半値の1000円で購入する。

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急坂を下り、そのまま地下鉄駅まで転がり潜り、さらに続いて銀座へ向かう。地上に出ると平日だというのに観光客と買い物客が入り乱れ、過剰な華やかさと高級感が、居並ぶビルの大きな出入口から、間断なく垂れ流されている。そんな晴れやかな街路を、脇目も振らず早足に歩む。目指す場所は、本来は新橋駅の方が近いので、そちらからの行程を…東口に出たら、銀座方面に歩を進め、まずは首都高の高架を潜る。するとそこは『銀座の柳二世』が植えられた『御門通り』である。『銀座中央通り』を首都高沿いに東南に進み、通りの名の由来である『芝口御門跡』を通り過ぎたら、北東への脇道に入り込む。そして蔦が絡まり過ぎた古ビル手前のビルの通路に入り込み、奥の階段を地下二階へ下る。行き着いた最下階は二部屋を持つ画廊になっており、現在ここでは『シリアルキラー展』(7/10まで)という名の、アメリカやイギリスに跳梁跋扈した連続殺人鬼のアート作品や悪戯書きや手紙や所有物などの展示が行われているのである。それは、ひとりの人間が集めた、連続殺人鬼のスーベニールコレクション…欲望という情熱は、やはり底無しで恐ろしい…。パンフレット付きの入廊料1900円を支払い、白い二部屋の壁に展示された殺人鬼の手から生まれた物たちを眺めて行く。空間が明るく、BGMにロックが流れているせいか、それほど展示物から禍々しさは感じない。禁忌を犯した重さではなく、バランスの悪さのようなものが、纏い付き漂っている。ただ、展示の仕方が透明プラスチック板に、手紙や絵を裏側から貼付けた簡易さなので、それがアート作品とは異なる妙なリアルさを醸し出し、何だか気味が悪いのである。それにしても、この画廊内に溢れる女の子たちは、いったいなんなんだ!今時の娘は、そんなに連蔵殺人鬼に興味があるのか!と叫びたくなるくらい、若い女の子たちが息を詰めて夢中になっている。展示物と観覧者のギャップに戸惑いながら一巡。それでもゲイシーのピエロの絵や、殺人鬼の名を失念したが、写真に刺繍を施す超絶詩的なオブジェは、一瞥しただけでゾッとしてしまった…。わりと短い滞在時間でブラブラ階段室に出ようとすると、左側部屋にはレジがあるのだが、その正面に本棚があるのが今さら目についた。視線を送ると、そこには中井英夫・稲垣足穂・澁澤龍彦などの幻想系著作が並べられているのだ。手に取るとこれが古本で、見返しの値段札により「東京くりから堂」(2009/10/29参照)の出品物であることを知る。さらに右側の部屋の奥側には小さな画廊ショップがあり、江戸川乱歩・寺山修司・フォアレディースシリーズ・幻想系写真集・アート写真集などが塊となって散在している。まさか、たまたま観に来た画廊に、古本が売っているとは…。予想外の古本との出会いにちょっとウキウキしながら、春陽文庫「空中紳士/耽奇社同人」を抜き出し、左側の部屋に戻り、卓上ベルをチリンチリン鳴らし、サスペンダー姿の女性に精算してもらう。
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2016年06月23日

6/22本郷台地辺りで古本を買う

午後三時過ぎにブラッと家を出て、総武線で水道橋駅下車。まずは南に向かい「有文堂書店」(2010/09/03参照)や「日本書房」(2011/08/24参照)の店頭を眺めてから、進路をひたすら北へ採る。幅広な『白山通り』をテクテクテクテク。「白木書店」(2011/01/20参照)は、相変わらず小さなお店の中でオヤジさんが腕組みして通りを注視している。さらに北へ歩み、地下鉄なのに地上の高架線となっている丸の内線の下を潜り、左に嘉納治五郎像の建つ『講道館ビル』を臨み、さらに北へ。そして春日駅北端で西に曲がり込み、『こんにゃくえんま』横の「大亞堂書店」(2009/01/24参照)に立ち寄る。
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スクラッチタイルで化粧されたお店は、時を停めたように劇的に古めかしく棚はほぼ動いていないようだが、本と棚以外の店内はキレイ。帳場にはキャップを被った翁長沖縄県知事風男性が陣取り、パチンパチンと何かの製造に従事している。己をじらすかのように、じっくり棚に視線を注ぎ、結局右側通路の貸本ゾーンから朝日ソノラマ サンコミックス「怪奇死人帳/水木しげる」(最終ページに貸本表が貼付けられているが、わりとキレイ。第一話の「怪奇死人帳」は、江戸時代の古本屋さんの店頭からスタート!)を2000円で購入する。シャッターが閉まり気味の短い商店街を東に通り抜け、『菊坂』の下り出口へ。坂に足を掛けるや否や、すぐさま東への脇道に入り込むと、道の角度が急激に増す『胸突坂』。アキレス腱に負担をかけながらハァハァ登り切ると、右手に老舗旅館の『鳳明館』が和風の美しい翼を曇り空の下に広げている。後を振り返ると、街がぐぐんと落ち込んでいる立体的な風景。生物関連専門古本屋さん『木村書店』(2011/05/18参照))の本に溢れた店内を盗み見て『本郷通り』。本郷古本屋街を流しながら北へ歩き続けると、「第一書房」(2011/08/16参照)の店頭棚に引っ掛かる。天文関連の古い本が多いな…中ほどの棚には古い日本文学が…ぬぉっ!何とこんな知的な古本屋さんで、昭和三十年代明朗&大衆&探偵&時代小説の“3M”の一人、宮本幹也の本を発見!ひ〜やっほうっ!と早速小脇に抱え、他の本と合わせて店内で精算する。
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桃源社「白い突風(上)(下)/宮本幹也」角川小説新書「殺人契約/青山光二」恒星社「星の宇宙/山本一清」を計2000円で購入する。…あぁ、これで今日のブックハントに、堂々と幕が引ける…。そんな風に満足&放心しながら通りをさらに北上。次第に並木の樹影が濃くなり、通り沿いのビル群と身を寄せ合い、まるで歩道は緑のトンネルと化している。途中で『団子坂』方面に折れ曲がり、乱歩「三人書房」跡地を左に見て、千駄木の谷間に到着する。「往来堂書店」で南陀楼綾繁氏と盛林堂・小野氏と落ち合い、本日の『不忍ブックストリーム』出演前に、アルコールで燃料補給。その後は白山の中継場所に移動して、引き続き酔い痴れながら、小野氏のサポートと言う役目をどうにか果たしたつもりになる。共演ののむみちさんと遠藤倫子さんに多謝。スタッフのみなさんもお疲れさまでした。
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2016年06月21日

6/21またもや古本屋さんでバイトする

2016/05/24に続き、今日も「盛林堂書房」(2012/01/06参照)の買取に同行し、アルバイトする。このバイトに、特に深い意味はない。つまり別に古本屋修行をしているわけでもなく、近くで古本屋さんの仕事を見たいのと、腱鞘炎が完治しない店主・小野氏の補佐役を務めるのと、様々な書庫と本を見たいのと、単純に身体を動かしたいのと、労働代が貰えることに大いなる喜びを感じての、至って単純な同行なのである。というわけで都内某所に午後一時過ぎに入り、六畳の立派な書庫内で、本の仕分けと運び出しに従事する。手を真っ黒にして、四十本強の本の束を作り出し、エッチラオッチラ運び出す。スチール棚で出来た回遊型通路が狭いので、本を抱え込みつつも身体を細くして、入口ドア近くでは左肩・右肩と交互にスイングするように隙間を通り抜け、玄関前へ。たちまち出来上がる古本の軍艦島。この作業の繰り返しが、次第に鈍い疲れとなって、肩と腕と背中に溜まり始める。だが今回は一軒家なので、玄関からドアの外に運び出し、その後車に積み込むだけと、ほとんど高さに関するエネルギー移動は発生しなかったので、全体の作業行程自体はとてもスムーズであった。そして雨がすっかり上がったのも、積み込みには実にラッキーであった。およそ四時間弱で、ひとまずの作業が終了。だが、すべてを運び出し&整理出来たわけではないので、来週再び訪れることを約束し、依頼者宅を辞去する。身体にはどっしりとした疲れが残り、頭の中には今回整理せぬ棚にあった貴重な日本のミイラ文献の数々が鮮明に残っていた。本は集まるととても重いが、たくさんの表紙を見るのは、刺激的で楽しいものだ。そしてよくも人間は、これほどたくさんの本を書き、世に出し続けているものだ…。夏至の夕陽に目を細めながら、サスペンションが極限まで沈んだ車が、少し混み始めた幹線道路を、ゆっくりと走って行く。大量の古本が、スルスルとアスファルトの上を移動して行く。本が、人の手から手へ、渡って行く……そんな夢を見ながら、今夜はグースカよく寝られそうだ…。
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今日の写真は「盛林堂」帳場背後の壁に密かに残る、ブリキ製の古い『本の買取』説明板。
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2016年06月20日

6/20今日も古本を買って別れを惜しむ

冷房が牙をむき始めた地下鉄に乗って門前仲町を目指す。車中で思っていたことは、今日6/20に閉店してしまう、新潟は大形の「ブックス・バザール」(2013/04/21参照)について。三年前に初めて訪れ、廃墟寸前のアダルト店のような外観と本が大量に充実しまくる店内のギャップにガツンとやられ、以来新潟方面に足を延ばした時は必ず立ち寄っていた良店である。閉店セールにも駆け付けたかったのだが、残念ながら叶わず、東京の地下鉄内で在りし日のお店を偲んでいるわけである。たくさんの本をありがとう。城昌幸や楠田匡介や乾信一郎を買えた時の喜びは、今でも脳内にフラッシュバックするのです。東京から遠いとは言え、行けば必ず掘出し物が買えた古本屋さんが消えてしまうとは…寂しくなるなぁ…。そして『2番出口』を上がって東へ少し歩き「朝日書店」(2008/12/08参照)前。コメントタレコミにて、この江東区の貴重な一店が店舗閉店することになり、7/11(月)まで半額セールを行っていることを知ったのである。あぁ、「昭友堂書店」(2016/06/18参照)に続く閉店悲劇! まだ新しさを充分に残すモダンな店内の所々に、『古本半値』と大書された緑の紙が貼り出されている。ちょっと蒸し暑い店内を真剣に精査して行く。そしてやはり豊潤な棚造りが為されていることを、とっくりと再確認する。古書が棚のアクセントとなり、古本修羅の心と目を、店の奥へ奥へゆるゆると導いて行く。入口前のお薦め台から一冊、通路棚手前から一冊、左壁棚下部から一冊、さらに左奥のミニ回遊路で一冊を抜き取り、帳場に差し出す。春陽堂書店「創作探偵小説選集 復刻版」小学館「中学生の友」昭和三十三年12月号付録「中学生 続パズル読本/大矢真一」學藝社「旅窓讀本/小杉放庵」立花書房「入墨の犯罪學的研究/井上泰宏」を半値の計2000円で購入する。函本以外は、すべて丁寧に書皮を巻いていただく。閉店の説明には、創業六十五年になることや、今後は通信販売での営業になることなどが書かれていた。歴史あるこのお店が閉まるまで、後二十日余り…七月に、チクッと寂しさを感じることになるなんて、まったく賑やかな夏らしくないなぁ…。
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2016年06月19日

6/19駄菓子漫画と聖智文庫

携帯の着信履歴が、古本屋さんからの連絡で埋め尽くされている…俺は何がしたくて、いったい何処へ向かっているのだろうか…。と言いつつもその内の一本、「聖智文庫」さん(2013/05/16参照)からの「フフフフ、面白い本、入って来たよ。明治の、珍しい探偵小説とか、あるよ。ギーガーのスゴいのも入って来たよ。ウフフフフフ……」という相変わらずの悪魔の囁きに誘われ、藤沢へと向かうことに。その前に昨日も訪れた「帰って来たJ-ハウス」(2015/12/26参照)店頭を覗き込むと、ふぅむ、今日は何だか面白そうな紙物カゴが出ているじゃないかと、薄く積み重なるぬりえや紙の着せ替え人形、それに面子やミニ凧などを入念に混ぜっ返してみる。すると、興味ある物体が次々と出現。大正〜昭和キューピーブーム時の絵葉書・ぬりえ紙芝居「黄金の谷」・カゴメ玩具出版社の駄菓子漫画「海底の宝庫」「まほうのつぼ」・豆本蛇腹漫画「MUTT&JEFF 豆自動車」など。しかし一番の珍品は「きいちのぬりえ」のヘリコプター・パトロールカー・ジェットせんとうき・じどうしゃレース・キングタイガー(戦車)であろうか。きいち先生が、こんなにも男らしいぬりえの図柄を描いていたとは!…しかし確かに『きいち』の署名があるのだが、果たしてこれは本当に本物なのだろうか…。いや、とにかく面白く愉快痛快と、まとめて300円で購入する。

車中で暢気で能天気な駄菓子漫画を読破して藤沢。「聖智文庫」を訪れると、店主・有馬氏は手ぐすね引いて待ってくれていた。早速眼福な見たこともない本たちを見せていただき、古本心が荒波の中の小舟のように揺れてしまう。だが残念ながら目的の明治探偵小説は、二足も三足も遅く、すでにすべてが売約済みであった。くぅぅぅぅぅぅぅぅ。その代わりに傷みはあるが榮泉堂「松の操美人の生埋/三遊亭圓朝口述」と、こちらはキレイな憧れの博文館文庫「鐵車王国/押川春浪」を計5000円で買えたので、大いに満足する。お土産に裾花書院「野球小説 栄冠涙多し 日本の本塁打王川上選手物語/春日俊吉」までいただき、恐縮する。また面白いものが入ったら即連絡をお願いし、一時間ほどでお店を辞去する。帰りの車中では、早速「鐵車王国」に首っ引き。うわっ、あっという間に、東京じゃないか。
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上部が毒々しい色彩の駄菓子漫画類。「海底の宝庫」は空海両用の飛行機で難破船の宝を探す物語。ただし敵は、喋る鮫と喋る巨大蛸である。昭和二十五年発行。
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2016年06月18日

6/18新宿の純粋古本屋の灯は七月二日まで!

心地良い疲労が、身体を粘液のように覆っている。だが午前なのにすでに強い陽光の中外へ出て、近所の「帰って来たJ-ハウス」(2015/12/26参照)をぼんやり偵察する。土日市の100均箱を覗き込んで行くと、ふむふむ、今日は映画パンフが出ているじゃないか。しかも60〜80年代中心。しっかりと眠い目を光らせて、東宝映画「犬神家の一族」「悪魔の手鞠唄」松竹配給「チャイナタウン」東宝配給「Tommy」(「チャイナタウン」以外は半券付き!)を計400円で購入する。横溝映画のパンフには、必ず横溝正史のコメントと、『横溝作品はやはり推理小説とは呼びたくない。探偵小説だ』というような論考が載っているので、読み甲斐がある。
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午後ペタペタと外出して新宿へ。すでに閉店半額セールを開催中の、新宿にただ一軒残っていた純粋な古本屋さん「昭友社書店」(2008/07/10参照)を目指す。ついに、ついにこの日が来てしまったかと、泣きそうになりながら『新宿通り』を東へ進む。いや、もはや何も言うまい。ただただ、古本を買おうではないか。店前に到着すると、店頭にも店内にも人が蠢く普段は見かけぬ光景。愛おしみ名残惜しみながら店頭棚に注目して行くと、創元文庫のソログーブを発見し、こんな文庫もあったのかと(本扉の次には肖像写真も)閉店間近の古本屋さんに教えられ、不必要に感激する。刺青本ばかりが並んでいたイメージのショウウィンドウには、今は絵葉書類が飾られている。ふと気付くと、ウィンドウ上部内側には古い店名看板が張り付いていた。もう何十年も通っているのに、この看板にはまったく気付いていなかった。どうやら革か紙で出来ているようで、店名や住所電話番号以外にも、下部に『←新宿駅方面』『面方谷四→』の表示があり、遥か昔から道案内版の役目も果たしていた模様。
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サッシ戸を開けて店内に入ると、この暑さなのに冷房は入っておらず、少しムッとしている。棚は普段とほとんど変わっていないが、映画スチール・ロビーカード・映画ポスター・戦前絵葉書類が多く棚下に引き出され、少しだけ景色を変えていた。一通り見渡した後、主に右部屋のアダルトゾーン手前の漫画&古書コーナーを掘り起こすのに集中する。閉店セールということで普段より大胆になり、帳場の店主の目の前で、積み重なった本をガサリゴソリ。というわけで、創元文庫「毒の園/ソログーブ」集英社昭和三十年りぼん10月号ふろく「ぴぴちゃん/手塚治虫・え」春陽堂「一讀一驚 明治奇談/久永廉三」を計2250円で購入する。こりゃ、スゴいものが買えました。「ぴぴちゃん」は裏表紙がなく表紙も外れた状態だったが(店主がそれに気付かず「なんでこんなに安いんだ?」と訝る一幕も。あんたが付けたんでしょうが〜!)、昭和三十年の手塚付録漫画なら万々歳。「明治奇談」も明治二十年のオリジナル版なので完全なるどひゃっほうである。こりゃあまた偵察に来なければ!セールは7/2まで行われる。
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そのまま西荻窪に向かい「盛林堂書房」(2012/01/06参照)「フォニャルフ」棚に補充。早速「ぴぴちゃん」の修繕を店主にお願いし、表紙だけは見事に再生する。あぁ、それにしてもこの手塚治虫の描く、半陰陽で母性本能をくすぐるエロティックなキャラクター…まったく罪作りな大先生だ…。その後は『第92回西荻ブックマーク 鎌倉幸子×南陀楼綾繁トークイベント「本と街と○○と」〜本で地域に何ができるか〜』を観覧。本と言う身近でアナログなツールを武器に、様々な地域の風土に合った自発的システムの構築を促すため移動し続ける、男と女の物語。アプローチも目指すところも違うけれど、お互いに走っている姿を見て交わす笑顔は、何だかとても神々しい。
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2016年06月17日

6/17大阪・恵美須町 文庫櫂

昨日の、土砂降りの大阪でのことである。
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『1−B』から地上に出ると、『日本橋筋商店街』の歩道アーケードの下。すぐ北側の通りを、西へトボトボ歩き始める。少し離れただけで繁華さと喧噪はたちまち遠ざかり、行く手に見えるのは巨大高層集合住宅群である。100mも進むと、そんな集合住宅の一階で、小さなお店が営業しているのに、はたと気づく。接近して様子をうかがうと、ウィンドウには陶器類が並んでいるが、簡素なガラスサッシ扉の向こうには、古そうな本を並べた棚がすでに見えている…店名は何処にもなく、扉には『防犯カメラ設置』『開放厳禁』『全古書連加盟店』などのステッカーがあるのみ。丹田に力を集めて店内へカチャリ。すると奥のパソコンの向こうに座る、ゴルゴ松本+少しの安部譲二的エッセンスを纏った強面店主と視線が絡み合ってしまったので、まずはしっかりとお辞儀する。店内は壁際に白い本棚、左棚下にガラスケース、そして中央に作業机と背中合わせの棚が一本。そして私はすでに興奮してしまっている。お店の虜になってしまっている。なんたって並んでいるのが、古書ばかりなのだ。それも闇雲な古書ではなく、文学や風俗中心。しかも大好物の昭和初期周辺。入口左横から早速文学・風俗のその手の本が輝き、詩集が波のように押し寄せる。ぐむっ、城左門「近世無頼」の献呈書名入がぁ…。通路には本のはいったダンボールが置かれているので、蹴飛ばさぬよう気をつけて通路棚前。おぉぅ、日本近代文学!近代文学!文学! 次々と見たことのない本が迫ってくる。それに、田村隆一の「四千の日と夜」が! 奥に進んで行くと、帳場机が迫り出して狭くなっているので、「奥も見ていいですか」と店主に聞くと、意外に可愛い声で「いいですよ」とニッコリ許可していただく。ぎゃお! そこに待っていたのは、性愛関連と思想(共産・社会・無政府)の稀覯本だらけの棚であった。さらに日本近代文学も続き、詩歌句・海外文学・署名入の純文系小説本などなど。あっ、見たことない仙花紙本の國枝史郎なんてのも…。古本屋さんに来たと言うより、本に触れる文学館に迷い込んだようである。とにかく貴重な古書の海(またその背後に想像出来るさらに貴重な海溝!)に溺れ続けるのは、もはや幸福以外の何ものでもない。ただし当然値段がちゃんとしているので、金のない者は正当な不幸に見舞われてしまうのである。それでも手が出せる一冊を手にして、店主に精算をお願いするとともに、思い切って名乗りを上げる。実は二ヶ月ほど前、偶然に櫂さんから一冊の本をヤフオクで落札した際、正体を言い当てられやり取りを交わしていたのである。店主は仰け反り喜び大笑い。たちまちそこから大波瀾万丈の古本屋半生譚劇場が、賑々しく幕を開けてしまう。十五の時から古本屋を志し、何と野菜仲売人との二足のわらじスタイルで古本屋になったこと。幼少時は父が古書マニアだったことから、天牛新一郎氏と関わりを持ち可愛がってもらったこと。お店に全国セドリ行脚中の「上野文庫」さんがやって来たこと。めくるめく発禁本の世界や遥か高みの古書世界のこと。西成の何でも300円の古本屋のことなどなど、多くの豊穣なエピソードを交えながら、一時間半が瞬く間に過ぎてしまった。いやぁ、これは楽しい。とてもじゃないが、書き切れない。まだまだお話盛りだくさんなので、古本にヨダレを垂らしがてら、続きを聞きに参ります。東盛堂書店「山水紀行文範」を購入する。
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2016年06月15日

6/15大阪・新今宮 パーク書店

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『東改札口』を出ると、目の前には神殿のような巨大パチンコ屋が聳えている。気圧されずに、『堺筋』西側の歩道を北に歩いて行く。場末感を醸す飲食店が並ぶ地帯だが、50mほど進むと、緑色の日除けを張り出した古本屋さんに行き当たる。ちょっと荒れた感じのある大衆的なお店である。店頭には、ビニールカーテンの掛かった背を向けたアダルト雑誌ラック、それに傷んだ本が多めの単行本ワゴンがひとつと、木製台自体が傷んだアダルト雑誌ワゴンが二台置かれている。そこには道行くオヤジさんが次々と惹き付けられ、吟味に吟味を重ねて二冊三冊と満足そうに購入して行く。丁度店舗中央に昔の事務机で形作られた帳場があり、クールなご婦人がゲームをプレイする手を休め、アダルト雑誌を丁寧に梱包して行く。それにしてもこのお店、超絶的な薄さを誇っている。入ってすぐの所と言っても過言ではない壁に棚が巡らされているのだが、そこにはコンビニコミック・動きの感じられない文学本・ちょっと動きの見えない一般単行本・あまり動きのない一般文庫本が、ブランクを所々に作りながら収まっている。一旦表に出てみる。そして北側からお店を眺めてみる。ゲッ!やはりとても薄い! 南側は隣の建物が建て込んでいるので、建物の横幅が見えないのだが、北側は駐車場になっており、そのモルタル建築の側面が恥ずかしいほど曝け出されてしまっているのだ。その幅はおよそ一メートル五十センチほどだろうか。真横から見ると、建物ではなくただの灰色の柱にしか見えない…。さらに裏側が駐車場であるのをいいことに、好奇心丸出しでお店の背後を取りに行ってしまう。そこにあったのは、見事なまでのトマソン物件! 平屋建築の屋根と母屋の形が、トタン板で塞がれきっちりと残っているのであった。ということは、昔は母屋に今と変わらぬ薄い店舗が付属していたのだろうか。奇跡の店舗建築に興奮しながら、再び表に回る。ここで新たに気付いたのは、二階の存在である。窓が左右に二つあり、エアコンの室外機や、換気口も確認出来る。上には人が住んでいるのだろうか…それにしても、出入りする所など何処にも見当たらないが…もはや古本屋そっちのけで、不思議建築の謎解きに必死になってしまっている。再び店舗に突入し、その左右共を注意深く眺めてみると、おっ!左側の天井に穴が空いており、上部に収納されている木製ハシゴが見えているじゃないか。二階に上がる時はこれを引き摺り下ろし、グイグイと身体を持ち上げるのだろう。上階は、板敷きなのだろうか、畳敷きなのだろうか。畳だったら、縦に四五枚並び、まるで廊下のようになっているのだろう。本が安めだが、結局何も買わずに、このお店の在り方に激しく心動かされてしまう。みんな冷静に普通に本を買い、店主も冷静に仕事をこなしているが、ひとり異質な視点で店舗そのものを観察し、大興奮しまくってしまう。以前、東京の曳舟に、似たようなバラック建築の押入れのようなお店が存在していたが、ここはそれと同等の、現代に残ったエアポケット的奇跡の店舗建築なのである。大阪のみなさま、どうか古本を買いまくって、これからもこのお店を大事にして下さいね。
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これがその奇跡の側面と、背面にクッキリと残るトマソン物件である。
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2016年06月14日

6/14大阪・肥後橋 柳々堂書店

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『6番出口』を出ると、目の前には『四ツ橋筋』の、人と車の大きな流れ。車の流れを横断して西側歩道に渡り、南へビルの足下を歩いて行く。信号のある交差点をひとつふたつとやり過ごし、次の信号のない脇道を西へ入る。角には『京町ビル』という近代建築が建っていたので、思わずうっとりと見上げてしまう。今思えばこのビルが、これから訪ねるお店への案内をしてくれた気がして、ならないのだ。道は裏町だが、飲食店やお洒落なお店もチラホラ。だがこんな所で古本屋さんが営業しているのだろうか…前方に『西船場公園』の緑が見えて来たところで、今度は南に曲がり込む。すると左手に、町の新刊書店的お店が控え目に姿を現わす。二階の袖看板には『彰国社特約店』の文字が黒々と輝いている。彰国社…建築本専門の出版社ではないか。そこの特約店ということは、やはりここは新刊書店なのであろうか?日除けの下に近付くと、その下に隠れていた『文藝春秋』『文春文庫』の看板が見える。中央のラックには、見事に新刊雑誌が華やかに並び、左にはフリーペーパーのラックが置かれている。だが!右側に何と100均の文庫箱が二つ置かれているのだ。おまけにそこには、店内にも古本があることが書かれているではないか。新刊書店と古本屋さんのハイブリッド店か。そう確信して中に入ると、中央入口側帳場のTシャツ姿のご婦人から「いらっしゃいませ」と声がかかる。そしてその瞬間に、驚愕の店内に思わず目を瞠ってしまう。基本はリノリウム敷き通路の中央に柱が立っているような、昔ながらの新刊書店なのだが、そこに並んでいたのは建築関連本&雑誌ばかりなのである。しかも、まるでリブロやジュンクや紀伊國屋の建築書コーナーに負けず劣らず、丁寧に美しく専門的花園を造り出しているのである。そんな不意打ちに感動すると同時に、何故ここにこのようなお店があるのだろうか?近くに建築会社や建築学校でも存在するのであろうか?そして彰国社の特約店とは言っても、もちろん他社の本も盛りだくさんなのである…なんというミステリアスな、街の新刊書店風建築書専門店! 完全に魂消つつ度肝を抜かれながら左側通路に回ると、本当に古本が登場してくれた。まずは入口左横の棚二本に、文学全集・日本文学・児童文学・大阪本・一般書・文庫・建築関連・雑誌(「大阪人」「太陽」など)が並んでいる。また向かいの通路棚にも、新書・時代小説・映画パンフと、ここはそれなりに古本屋さんっぽい並びを見せてくれる。そして左奥の棚一本に、建築古書がドドンと集められている。各古本コーナーは。小さな看板が貼付けられたり飛び出したりしており、新刊とは異なることをしっかりとアピールしている。だがさすがに建築書にそこまでの古い本はなく、品切れ本や新古書と言った感じである。文学や大阪本にはちょっと古い本あり。値段は安め〜高めと様々。とてもその店名からは想像出来なかった、珍妙で高尚な裏町のハイブリッド店に甚く感銘を受けながら、ROKKO出版「ロンドン塔は残った 震災を超えた歴史的校舎保存の記録/神戸高校の校舎を考える会編」(まるで城塞のような建築様式の神戸高校の保存と解体を巡る闘いの記録である)を購入する。その感銘を胸に秘めつつ、先ほどの京町ビルに挨拶して帰路に着く。
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2016年06月12日

6/12書簡とビールと少女小説

昨日早朝、夜行バスにて大阪より一時帰還。色々些事を片付けてから夕方、「ひるねこBOOKS」さん(2016/01/11参照。ちょうど開店五ヶ月目だ!)にて開かれる「ひな菊の古本」さん主催の、古本屋さんでクラフトビールの会に、睡魔に襲われながら向かう。とにかく、古本屋さんでお酒が飲めるのは、目出度いことだ! 移動中の読み物は久作の「暗黒公使」。実は一昨日「ジグソーハウス」(2016/06/11参照)で買った「夢野久作宛、佐左木俊郎書簡」が、読んでみるまで気付かなかったが、まさにこの「暗黒公使」出版編集のやり取りを伝える資料だったのである。昭和六〜七年当時、佐左木は新潮社社員で作家であり、『新作探偵小説全集』(企画は甲賀三郎)の編集を担当。当初は「ドグラ・マグラ」の原型でもある「キチガイ地獄」が収録作の候補に挙がっていたが、六百枚の予定枚数を遥かにオーバーしていたので、代わりに「暗黒公使」が刊行された云々。装幀や挿絵に関してのやり取りや、タイトルの「暗黒公使」が広告で「暗黒大使」と度々間違われることへの謝罪など、とても興味深い翻刻&解題なのであった。新たに加わった知識を使いながら、大正時代の帝都・東京で巻き起こる国際的陰謀にうつつを抜かしているうちに、根津着。スタスタと夕暮れ迫るお店に向かうが、もう五歩でお店というところで、可愛い虎猫に遭遇してしまう。チチッと声をかけるとニャーゴと鳴き、目の前にドデンと横になった。撫でさせてもらうと、これがどこまでもいつまでも撫でさせてくる可愛いヤツ。思わず夢中になり、本当に十分ほど無我夢中で猫を撫で続けてしまう。まるで楽器でも演奏するようにニャゴニャゴ蠢く猫を、一心不乱にストローク!俺の心は、真っ白く空っぽになって行く…。
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とそんな姿を、ちょうどお店から出て来たひな菊さんとマネージャー(妹)さんに発見され、盛況を呈しているお店の中へ。一本五百円のクラフト瓶ビールに舌鼓を打ちつつ、本棚を見る間もなく、古本屋話!古本屋話!古本屋話!世の中にこれほど古本屋に興味を持つ人がいるのかと驚きつつ、程よく酔っ払う。
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理論社「なぞなぞライオン/佐々木マキ」を300円で購入しつつ、しばらく表でひな菊姉妹お二人と、ファンとしての古本屋さんへのアプローチなどについて熱く語り合い、日が暮れかけた頃に辞去する。

明けて本日、早く目が覚めてしまったので、先日富岡八幡宮の骨董市において「もっと早く来なきゃ」とある店主さんに言われたのを思い出し、駆け付けてみることにする。だが到着時刻は午前八時半で、午前六時の開始時間を思えば、これでも十分遅い方だと言えるだろう。それでもワクワクしながら境内に進入して行くと、なるほど、だいぶ様相が違っており、お店の数がずいぶん多いのである。奥やさらなる脇道、はたまたお店の裏の裏にまでお店が広がっており、早朝から来るべきということを、この目で見て実感する。つまり馴染みのお店以外にも(と言ってもまだ二回しか来たことがないひよっ子なのだが…)、古本を売っているお店が存在しているのだ。一番スゴかったのは御神輿倉庫の横に出ていた古本屋さん。衣装ケースの中にどっさり古い本が詰め込まれ、それがいくつも並んでいる。覗き込むとそのほとんどが日本近代文学。おっ、改造社の新鋭文學叢書まであるじゃないかと度肝を抜かれるが、なんと驚くことにすでに多数の箱が売約済み…恐ろしいほどのまとめ買いが行われたそうである…なるほど、もっともっと早く来なければいけないわけだな…。落胆しながらも境内を歩き続け、参道脇のシートの上にビッシリと紙物を面陳したお店に目を留める。ちょうど近付けぬ中央辺りにあるあの本は…根性を出し、横の柵に飛びついて中央付近まで移動。そこからぐいっと手を伸ばして確認してみると、東光出版社「少女小説 嵐に咲く花/山中峯太郎」であった。ほっほぅ、峯太郎の少女探偵小説ではないか。表紙の絵に落書きがされているが、二千円なので頂くことにする。大きなシートを挟んでオヤジさんに声をかけると、「キミはスゴいな、そんな所から」と苦笑いされながら精算する。その後は普請中の表門鳥居近くのお店で誠文堂 少年技師ハンドブック第七編「軍艦汽船モーターボートの作り方/佐々木民部」(もちろん模型製作の本で、模型造船學・熱力學・軍艦汽船モーターボートの作り方の三章に別れている。潜水艦の作り方も載っており、その模型は皆一メートル級の巨大な物である)を嬉しい値引の500円で購入する。
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午後は「盛林堂書房」(2012/01/06参照)「フォニャルフ」棚の補充に向かう。いつもの無駄話や岡崎氏と動かす古本屋本プロジェクトのことや盛林堂ミステリアス文庫デザインのことなどを、お仕事を邪魔しながらぺちゃりくちゃり。ついでに眼福に値する素晴らしき本もたくさん見せていただく。ありがたや。こういものを見ておくと、脳の何処かに本の姿がメモリーされて、万が一の出会いの時に役立つのである…まぁ、万が一があればの話だが…。
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2016年06月11日

6/11大阪・天満 ジグソーハウス

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昨日の大阪四日目である。駅を出て『天神橋筋商店街』に入り、南に遠慮呵責なく進み続ける。四丁目が終り、欄干の残る地上の橋の名残を渡り、三丁目に突入する。1ブロック過ぎた所で、人と関西弁の流れとアーケード屋根にお別れして、東へ。途端に新しく高いマンションが建ち並ぶ、味気ない街路となる。300mほど歩き運動場前の十字路を過ぎると、左手の小さなビルの前に、厚い洋書の上に乗った小さな黒い看板があるのが目に留まる。『週末ふるほんや』とあり、探偵小説・ミステリ・SF幻想・絵本・アート・綺想系・サブカルチャーと、あまりにマニアックな取扱品目が書き出されている。ビルのドアを開けて階段を上がり、小さな『営業中』の札の貼り付いた青く重い扉を開けると、明るく細長く本がたくさん並ぶ空間が広がっていた。右奥の帳場には誰の姿もなかったが、奥から女性が出て来て「いらっしゃませ」と緊張を解きほぐす一言。床はカーペット敷きで、中央に背の低い背中合わせの棚が、左に長いものが一本、右に短いものが一本置かれている。入口左横からは本棚が続き、右は帳場前まで続く形である。奥側は一面が長い壁棚となっており、右奥は棚に囲まれた細長い行き止まり空間になっている。入口左横はポケミスから始まり、創元推理文庫・ハヤカワミステリ文庫・ポケSF・創元SF文庫・付録ジュニア小説などが続く。窓際には期間限定の100均文庫箱と絵本棚(佐々木マキコーナーあり)。フロア棚左には上部に「金星文庫」の本が並べられ、日本作家ミステリ文庫・SF文庫・一般セレクト文庫・ペーパーバック・春陽文庫を収めている。入口右横には鮎川哲也文庫・ミステリ&探偵小説アンソロ文庫・絶版ミステリ&探偵小説文庫が揃っている。その前の棚には、日本作家ミステリ文庫が収まっている。奥の壁棚には、店名故か最上段にジグソーパズルの大きな箱がドバッと並び、その下に絵本・幻想系絵本・アートブック・オカルト・占い・幻想文学・海外ミステリ&探偵小説、そして作家50音順日本ミステリ&推理&探偵小説が行き止まり通路をぐるっと囲んでいる。ここのオリジナル本は、大体昭和三十年代以降で構成されている(岡田鯱彦・新章文子・宮本幹也・三橋一夫などあり)。面食らったのは最下段に置かれた紙物箱で、これがミステリ・探偵推理小説・幻想文学関連の紙物ばかりなのだから、たまらない! 全集目録・新聞切抜・日本推理作家協会報・広告チラシ・存在さえ知らないマイナー資料類など。とにかく視点が斬新なのである。斯様に探偵小説〜ミステリの世界を、中級〜上級の扉半開きくらいまで楽しめるお店。値段はちゃんと付いているが、相場より安めでお手頃感あり。途中、くせっ毛の仲谷昇風男性が外から帰還し、「いらっしゃいませ」と囁きつつ帳場奥に座る。彼がこの頼もしいお店の店主なのだろう。神保町の「三省堂古書館」(2012/12/11参照)ではいつもお世話になってますと、心の中で頭を下げる。青樹社「あなたは名探偵/中島河太郎編」岡大国文論稿「夢野久作宛 佐左木俊郎書簡/大鷹涼子」(何でこんなものが売っているのか!そしてなんというものを研究しているのか!)を購入する。またここで、周辺の古本屋さんをまとめた小冊子「南森町古本ガイド2016」を入手出来、ニヤリ。
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2016年06月09日

6/9大阪・寝屋川市 金箔書房

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京橋駅で京阪本線に乗り換え、京都方面へガタゴト。繁華街から離脱すると、高架の両側に広がるのは、低い家並みの無限にも見えるベッドタウンである。やがて目的駅に着き、南口の南側へ出ると、小さな駅前空中広場である。右側の階段を下り、すぐにはアーケード商店街の『寝屋川一番街』には入らずに、大きな駅前ショッピングセンター『アドバンス』沿いに南東へ進む。すると右手に『ねやがわいちばんがい』と平仮名で書かれたゲートが現れるので、そちらへ曲がり込むと、自転車置場の隣りに、明るいオレンジ色の古本屋さんを発見する。とてもイカした店名である。建物は新しく、スペイン風な陽気さを獲得している。黄色いテント看板の下にはビニールカーテンが展開し、店頭は雨仕様となっている。ここで気になるのは左に掲げられた古いブリキ看板…『ご不用の本誠実に買います』とあるのだが、とても年季が入っている。旧店舗の物を大切に使い続けているのであろうか…。店頭左側は安売コミックで、右には50均文庫と安売本がドッサリと展開している。一段高い中に入ると、なんだかお店も本も新しく、リサイクル系な雰囲気。壁際はぐるっと本棚で。真ん中に長めの背中合わせの棚が二本横たわっている。右奥に帳場があり、母子のような年の差のある女性二人が、ほんわか華やかに働いている。入口右側の文庫棚に張り付くと、新しめの一般文庫が整然としているが無秩序に並んでいる。う〜むと視線を巡らしていると、古い文庫である新小説文庫を発見。しかも安値なので早速引っ掴むことにする。第一通路は、壁際にハーレクインとコミックが並び、通路棚には趣味・サブカル・タレント・辞書・実用・などが並び、後の半分は100均単行本コーナーとなっている…ところが、ここに何だか古い本が混ざり込んでいる。嬉しい予感に身を震わせ、左壁のコミックをスルーしながら第二通路へ。おぉ!60〜70年代セレクト日本文学がとても麗しい。下部には新書と相撲関連、それにミステリ&エンタメが続いて行く。そしてやはり古書が所々に紛れ込んでいるではないか。しかも激安なのである。文学研究・伝統芸能・文化・性・美術を確認した後、最奥の通路に回り込む、通路棚には何の因果か仏教とアダルトが隣り合い、壁棚には大阪・郷土・社会・建築・政治・服飾・生物・自然などが続き、やはりそこかしこに古書の姿を確認する。ただのリサイクル系のお店ではなかった!大正〜昭和初期の本が、一般本と平等な扱いで、それなりの安値で並んでいるのは、とにかく衝撃的である。主だった本には手書き白帯や紙カバーが巻かれ、値段と刊行年が記入されている。興奮しながら、あっちへウロウロこっちへウロウロ…ようやく三冊に決めて、文庫揃いやレコード&古雑誌が前に集まる帳場に差し出す。新小説文庫「大阪百話 千日前/長谷川幸延」日本評論社「思ひ出草(一白の巻)/下村宏」(函ナシ)保育社の学習絵文庫23「虫あつめ」を購入する。そして『100円』と印のある栞を渡され「次回来た時にこれを見せると、100円引きになります。おおきに」「おおきに、またどうぞ〜」とお二人に、にこやかに優しくほんわか見送られる。ここは安くて大満足の良いお店であった!
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2016年06月08日

6/8大阪・天神橋筋六丁目 路地奥の青空書房

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「青空書房」(2008/12/31&2013/12/26参照)は、以前は『天五中崎通商店街』にあり、店内に貼り出される箴言や名言や独特なイラストで人気を博した小さなお店である。しかし惜しまれながら2014年に閉店し、その後は店主が自宅でブックカフェの開店を希望していたはずであった。果たしてどうなっているのだろうか。『天満橋5交差点』の西側歩道に立ち、『天神橋筋』の南側を見ると、路上に立看板が置かれているのが目に留まる。『大阪で一番高齢の文学青年です』『ホッとする路地の中の古書店』『あなたを待っている人が居る 一冊がある』などと早速青空書房節が唸りを上げている。まずはその健在っぷりに、ホッと胸を撫で下ろす。ふと角のハンコ屋さんに目をやると、柱に『青空書房さんは司研堂(ハンコ屋)の隣でこの奥です』と書かれた貼紙が三枚も貼られている…よほど人にお店の場所を聞かれたのだろう…。路地に入ると細く狭い裏通りだが、前方にすでに扉が開けっ放しの家が見えており、そこには通天閣の絵が描かれた、紙の店名看板が貼付けられ、営業中の札が下がっている。近付くと折り畳まれた車椅子の置かれた小さな玄関があり、壁には店主の作品でもある様々な過去のお店のポスターが貼られている。中に入り靴を脱ぎ、玄関横の四畳半に上がり込む。そこは、古本カフェではなく、完全なる自宅古本屋であった。畳の上にはござが敷かれ、中央には小さな文庫&ノベルス棚が置かれている。右壁と奥壁には、前のお店から運んで来たと思しき棚が張り付き、最近のミステリ&エンタメ本に混ざり、歴史・人文の硬めな本がしっかりと幅を利かせている。棚下にも本が背を受けて並び、棚と同じようなカオスっぷりを発揮している。ちなみに棚の中でちょっと飛び出している本は、すべて店主のお薦め本である。所々に大きめの付箋に書かれた箴言&名言たちが、本と古本の素晴らしき効能を語りまくっている。左壁には細長い歴史文庫の棚があり、その横の壁には店主の言葉がミニ色紙や封筒や反古に書かれたものが、400〜500円で販売されている。奥の間には帳場と本棚が一本あり、そこには歴史系の本が多く並んでいる。さらに隣りにはベッドが置かれた部屋があるが、ここは完全に生活空間となっている。店主は先客と膝突き詰め合い、とても嬉しそうに話をしている。先客はお店で本を買うのと、店主と話すのを楽しみにして来たようで、たくさんの本を買い、目の前の店主から滔々と溢れてくる人生訓や生きる楽しみと苦しみ、古本屋としての矜持などについて相槌を打ちながら拝聴している。こちらも本を選びながら、もらい拝聴してしまう。93という歳を感じさせない聡明さで、毎日感じて考え続けているのが、ふわりふわりと伝わって来る。話を勝手に聞いているうちに、この人はまさに古本屋として生き続け、そして生涯現役のまま、古本屋として死ぬことを決意しているのだと気付き、恥ずかしながら勝手に感動してしまう。感動したまま話に割り込み、西成区民クラブ「西成区民誌」(函ナシ)を差し出すと、「いい本を買ってくれてありがとう。これ、飛田のことが載ってますやろ。前に原稿書く時に使ったんですわ。いや、おおきに」と破顔一笑。こちらこそありがとうございます。必ず読んで大事にします。
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購入した「西成区政誌」。店主手書きの帯がセロテープで貼付けられたまま付属してきた。これはこれで、嬉しかったりする。
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2016年06月07日

6/7兵庫・阪神西宮 アテネ書店

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駅から南に出て大きな通りの『札場線』(この辺りの通りの名はほとんどが都市計画的で、あまり風情がないものが多い)を南へ。信号をひとつ過ぎ、脇道を一本やり過ごし、次の脇道を西へ入る。最初はただの裏町的なのだが、十字路をひとつ過ぎるとキレイに化粧直しされた商店街となり、外灯には『西宮神社』の御神燈が提がっていたりする。奥に入り込んで行くとお茶屋さんの隣りに、長屋式商店建築をパネルで覆った、それでも古い本屋さんが現れる。軒上には極太明朝体で書かれた『小学館の学習雑誌』の古い看板。その下にはオレンジ色の日除けが張り出し、さらにその下には昭和四十年代あたりの本屋さんの姿が、そのままボオッと浮かび上がっている。中央には低めの新刊雑誌ラックと、木製新刊雑誌平台が置かれているが、それには目もくれず、右側からズイッと店内に入り込む。即座に左手前の木製カウンターに座るご婦人から「いらっしゃいませ」と声がかかる。コンクリ土間がざらついている。土間中央にはトタン板や棚やコピー機や実用的自転車が固まっているが、これもスルー。さらに奥には新たな自転車も置かれているが、気にしない。ぐるんと壁際に巡らされた、年季たっぷりの木製造り付け本棚に視線と思いを集中させる。下段六段は、七十〜八十年代の少年・少女・青年・コミックばかりなのだが、これらは50円で販売されている。だがそれだけではなく、これらは貸し出されてもいるのである。上段三段の単行本やノベルスも同様で、手に取ると後見返しには貸出カードが収納されているのだ。右側のビニールコーティングされた単行本群は、松本清張・西村寿行・森村誠一・内田康夫・平岩弓枝・瀬戸内寂聴・吉川英治・梶山季之・丹羽文雄などなどである…。こんなに燃えないラインナップなのだが、何故か心は弾んでいる。それはこの現代から取り残され、それでも保存され続けている奇跡的な空間に、首尾よく出会えたからであろう。大量のノベルスと、少しの比較的近刊なミステリ&エンタメに目を通した後、ちょっと高いカウンター付属の木製椅子に、まるでバーの止まり木にちょこなんと腰掛けているようなご婦人に「これはみんな貸本なんですか?」と聞いてみると「そうですけど、もうあんまり借りに来ないんですよ。なので、お売りしますよ」とのこと。ではせっかくなので、ケイブンシャノベルス「信州・小諸殺人行/中町信」をセレクト。ご婦人に「これを」と手渡すと、「ちょっとお待ち下さい」と奥に消え、誰かに値付けして貰っている模様。結局300円で購入する。その時「なんで貸本って分かったんですか?」と聞かれたので、やたらと厚みのある貸出票が付いていたことを告げると「そうでしたか。この商売ももう少なくなったので、貸本を知ってる方も少ないんですよ」とニッコリ。確かに、この壁棚に巡らされた本を、借りる人も買う人もいなさそうだ。恐らくこのお店の主力は、店頭に出された新刊雑誌と本の注文なのだろう。「おおきに。またどうぞ〜」の声に送られ、こんな動かぬ貸本の成れの果てを備えた、ギリシア的店名を持つ古い書店が、阪神間にひっそりと佇んでいることを、ふいに愛しく思ってしまう。
posted by tokusan at 18:58| Comment(4) | TrackBack(0) | 近畿 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月06日

6/6「古本屋ツアー・イン・神保町」

一日旅の準備に追われていたところに、一本のメールタレコミが舞い込む。だがそれは、未知の古本屋さんについてではなく、今夕発表された、舛添都知事の調査報告書の書籍購入リストに「古本屋ツアー・イン・神保町」が含まれているというものであった。添付されていた報告書pdf(関係各所で公開されている)を確認してみると、確かに拙著の名がそこに並んでいるではないか。思わずカラカラと笑ってしまう。いやぁこの本は、どこをどう開いてみても古本屋のことばかりで、完全に政治活動とは無関係と断言出来る。まさか、一軒一軒訪ね歩いて「夜八時まで営業を延長して下さい」とお願いに回っていたのでは…。それにしてもこんな本まで買っていたとは、都知事はやはり相当の古本好きと言わねばなるまい。次回は、ぜひとも自腹での購入をお願いいたします!

そんなことが起こっていた今夕には阿佐ヶ谷「ネオ書房」(2010/02/09参照)で一冊の薄いパンフを50円で購入。美術研究藝林「陽咸二彫刻展 昭和初期光彩を放って消えた天才彫刻家の回顧展」1986年発行でモノクロ全14ページ。まったく未知の彫刻家であるが、何の気なしに手に取り、何の気なしに開いたページから、たちまち創作欲の炎をゴォッと浴びてしまう。なんだ、この未来派で構成主義的な作品たちは!掲載されているのはたった十枚ほどの写真だが、どの作品からも異世界の造形を盗み見て掴み取って来たような、削ぎ落とされた原始感が満ち満ちている。巻末のプロフィールによると、陽咸二(ようかんじ 1898〜1935)は大正中期に文展や帝展で入選&特選し、昭和に入ってからは彫塑団体『構造社』を中心に活躍とある。うーん、知らなかった。いや、作者名は知らないが、作品自体は何処かで目にしていたのかもしれない。ここ最近、店頭に愉快な本が登場する「ネオ書房」に、とにかく感謝!
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これは1928年制作の『支那人の皿廻し』。身体がまるでイカ焼きみたいに!
posted by tokusan at 21:24| Comment(2) | TrackBack(0) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月05日

6/5すべてのズボンに穴が開いていた…

気付けばすべてのズボンに、何らかの穴が開いている。膝に、裾に、後ポケットに、前ポケットの中に…。すべては服飾に気を配らずに、全精力を古本屋通いと古本買いに傾注し過ぎた結果と言えよう。耐用年数を超え、穴を開けまくって今更なのだが、あまりにみっともないので、何はともあれズボンを買いに行くことにする。前ポケットに穴の開いたズボンを履き、テクテク歩いて高円寺に向かい、ショップに恐る恐る入店して速攻で二本を入手…これで明日からの旅にも、充分対処できるだろう…。面倒な用事は無事に済ませたのでホッとする。さぁ、古本屋さんでも見て行こうか。だがいつも高円寺ばかりでは能がないので、中野までさらにテクテク歩き通す。フラフラと大賑わいの『中野ブロードウェイ』に取り込まれ、四階の「まんだらけ海馬」(2015/02/06参照)で新日本社「若き日の夢/西條八十」(函ナシ)を1500円で購入。ジュブナイルコーナーにあったので、確認せずにセロファンに包まれたままを、少女小説と思って購入したのだが、読んでみると、あぁ、中身は『詩話(詩にまつわる研究エッセイ)』『感想(超ロマンチックエッセイ)』『散文詩』『物語詩』の四章からなる、詩の本であった。裸本だからこそ安値で読めるクレイジーな八十節小説を楽しみにしていたのだが、これは銀座の通りを歩けばビルディングから嬌声が降り注いだと言う、ロマンチック詩人・西條八十の方のお仕事。いや、せっかく手に入れたのだ。諦めて、ゆっくり読んでみることにしよう。そのまま四階廊下を南奥に進み、最近全然入れていない「古書ワタナベ」(2008/08/28参照)のある通路を覗き込んでみると、おっ!何だか開店している兆しが!近付くと、実に久しぶりの光景に再開する。
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「西部古書会館」即売会の棚では良く見かけていたが、やっぱりこの小さなお店はとても良いなぁ。狭く短い通路に、じんわり喜びを振りまきながら入り込み、至近な本棚をつぶさに観察して行く…久々の再会記念は…よし、これを買おう!と、あかね書房「地底世界ペルシダー/バローズ作・野田昌宏訳」を1200円で購入する。おや?斜向いに、やたらとエロ本関連を箱やショウケースに並べている、妙な屋台的ドリンク屋さんが出来ている…ちょっと気になるな…。そんな風にいつまでもどこまでも賑わうブロードウェイを脱出したら、最後に「古本案内処」にも飛び込み、保たれている棚の質の高さを楽しみながら、角川文庫「銃器店へ/中井英夫」を300円で購入する。
posted by tokusan at 18:03| Comment(4) | TrackBack(0) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする