2016年10月30日

10/30東京・東高円寺 「女と本のあるふうけい」1day bookstore

今日も『神保町ブックフェスティバル』で新刊を販売するために、午前十一時半に防寒を完璧にして家を出る。ブースに入る前に、昨日の雪辱を果たすため「古本まつり」の東側を見ておこうと、御茶ノ水から神保町に進入して行く。まず足を留められたのは、「田村書店」(2010/12/21参照)まつりワゴンの平台左側である。積み重なった本の下に、古い本が固まっているのだ。瞬時にハヤカワポケミス「殺人鬼/浜尾四郎」羽田書店こども絵文庫「まどからのぞくお月さん/野尻抱影」同光社「花嫁殺人魔/横溝正史」(函付きだが貸本仕様)を抜き取り、横にいるオヤッさんに差し出すと、値段部分を奥に手前に動かし注視しながら「これなんて書いてあるんだ?最近、店主がさすがに手が震えちゃってねぇ。いいや。これ600円にも500円にも見えるんで、500円で。だから、全部で千円でいいよ」と大胆発言。ありがたくその値段で購入する。サンキュー。田村書店!これだけでもすでに満足気味だったのだが、次に足を釘付けにされたのは「みはる書房」(2014/04/17参照)のワゴンで、最初に百円の旺文社文庫「鉄仮面/黒岩涙香」を引っ掴んだと思ったら、次々怪しい本たちが視界の中に飛び込んでくる、素晴らしき棚&台造りが目の前に広がっていたのだ。一冊も見逃すまいと、横に押し込まれた本までも、一冊一冊丁寧に検分していく。ワイズ出版「定本円谷英二随筆評論集成 資料編」出版社不明「南京町/鹿目省三」(大正十三年刊。序文は鈴木善太郎。朝日新聞に大正五年に連載された、横濱・南京町(今の中華街)を舞台にした陋巷探索随筆集である。こんな見た事も聞いたこともない素晴らしい本が買えるのが、古本まつりや古本屋の醍醐味!)青木嵩山堂「小説 何/仰天子」(明治の浅草を舞台にした、作者曰く、恋愛小説でも戦小説でもなく、はたまた探偵小説でも妖怪小説でもない新しい小説。ちょっと読み始めて見ると、死んでいたはずの女が甦ってくる、なんだかただならぬ展開。表紙絵も明らかに化け物のお歯黒女が笑う、不気味なもの。これが、300円!)を計800円で購入する。こんな風に、たった二十分ですっかりまつりを堪能し切ったと思ったら、その先のワゴンに、長年探し求めていた小峰書店日本童話小説文庫2「北斗物語/宮澤賢治」を発見して狂喜。しかも二冊あって、一冊は美本で元セロファン付き!迷わずそちらを千円で購入し、本日の憑物落としは終了。
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即座にブースに向かい、「神保町」「首都圏沿線」「京阪神」と並んだ我が三兄弟を、声を出して力の限り売りまくる。ちなみに私の呼び込みは「いらっしゃいませ、本の雑誌社です」「新刊サイン本多数取り揃えております」「どうぞお手に取ってご覧下さい」が基本パターンで、これに時折「SFの本、古本屋の本、餃子の本、旅の本、読書の本、本の本など色々取り扱っております」を混ぜて絶叫を繰り返した。途中「あれ、あなたは有名な古本屋ツアーさんじゃないですか」と、完全に冷やかしモードの岡崎武志氏が陣中見舞いに訪れたり、夏葉社・島田氏が嬉しいことに本を買ってくれたりする。本日も拙著をお買い上げのみなさま、誠にありがとうございました。二日間、とてもとても楽しいフェスであった。

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およそ三時間で神保町を離脱し、地下鉄を乗り継いで、すっかり夕闇の東高円寺駅下車。『蚕糸の森公園』から流れ出す冷気を、オーバーを着込んだ身体で受け止めながら、『青梅街道』を東に歩いて行く。三百メートルほど弱で現れる二つ目の『セブンイレブン』脇の小道を南に入り、女子学生の人波に逆らいながら歩を進める。すると右手に『喫茶店[ε]』が現れ、白く暖かな店内では、本好きの女子八人がそれぞれ二十〜三十冊ほどの本を持ち寄った、一日限りの古本店がオープンしていた。窓際に、壁棚に、机上に、主に文庫を中心にして少数精鋭の古本が面陳されたり並べられたりしている。お客も本も女子度が高く、オッサンには気恥ずかしい空間となっているが、読み終えた好きな本を並べたような、読書好き原理主義的ピュアさと緩さが、ホワンと心を和ませてくれる。アピエ社「APIED VOL.11 THEME:尾崎翠」評論新社「江戸時代の女たち/柴桂子」を購入。店内にいた出店者の「ひな菊の古本」さんと言葉を交わし、新作の新聞フリーペーパーをいただきつつ、緩やかな冬のイベント(やっぱり古本屋で酒!)開催をお願いしておく。お店を出て、さらに暗くなった路上へ。女子学生の人波に乗り、駅へと戻る。
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2016年10月29日

10/29すずらん通りで売り子として三時間を過ごす。

『神保町ブックフェスティバル』の本の雑誌社ブースで、命を賭けて新刊「古本屋ツアー・イン・京阪神」を売るために、午前十一時過ぎに気合いを入れて家を出る。水道橋から南に下り、お店や「古本まつり」を流しながらブース入りするつもりなのである。いつものようにまずは「丸沼書店」(2009/12/17参照)店頭棚に鋭い視線を走らせる。すると、薄い箱にカード状の論考や写真が入った、愛知芸術文化センター「土方巽を幻視する」が200円で売られているのを発見し、慌てて購入する。パフォーマンスとトークを組み合わせたイベントのパンフレットだが、執筆陣が、石井輝男・宇野亜喜良・大野一雄・種村季弘・赤瀬川原平・加納光於・中西夏之などとにかく豪華。特に石井輝男は映画『恐怖畸形人間』のエピソードを綴っていたので大喜びする。その後は何も買えずに『靖国通り』まで到達すると、まつりは物凄い人波に覆われており、何処のワゴン前にも人垣が密に築かれ、とても本を見られる状態ではなかった。それでもどうにか人の間に身体を差し入れ首を突っ込み、『神保町交差点』西寄りのビルの谷間の会場では集英社りぼん昭和48年6月号ふろく「ゆうれい談/山岸涼子」(もりたじゅん・萩尾望都・大島弓子などの漫画家やアシスタントの不思議体験や怪談話のエッセイ漫画)を500円で購入し、「@ワンダー」(2014/05/22参照)では集英社「宇宙船ビーグル号/ボークト作 保永貞夫」を162円で購入する。おぉ、これで児童文学の『ビーグル号』コレクションが、三冊に増えたぞ!
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※家に帰ってから撮った、勢揃いのミニコレクション。
結局あまりの人の多さにろくろく本も見られずに、『すずらん通り』に西側から進入。夏葉社ブースで新刊ホヤホヤの「神保町/得地直美」(署名入り)を購入しながら、ひとり出版社なのでブースにただひとり立つ島田潤一郎氏と言葉を交わす。そして「キントト文庫」(2009/11/28参照)前のブースに到着すると、「JUST IN SF」の著者・牧眞司氏がサイン中だったので恐縮しながらご挨拶し、隣りに腰を下ろす。後はただただひとりの売り子となり、呼び込みの声を出し、本が売れればサインをしたりお名前を書き入れたりして、暖かいが曇り空の下で三時間を過ごす。お買い上げのみなさま、声をかけて下さったみなさま、ありがとうございました!途中、大森望氏が現れ、差し入れの春巻きや唐揚げを美味しくいただいたり、新保博久氏には本をご購入いただき、北原尚彦氏には手に入れたホームズグッズがなんなのか探りを入れられたりするなど、いつもとはちょっと違う賑やかな楽しい時間を過ごす。う〜ん、これぞまさにフェス!明日も大体午後一時〜午後四時くらいまで在店していますので、お時間ある方は古本を買いがてら遊びに来て下さい!

暗くなり、ちょっと雨がポツポツ落ち始めたところでブースを辞去。落ち着いて夕闇の中の古本まつりを流そうと思ったのだが、強くなる雨足に各ワゴンはシートで防御開始。
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見えなくなった古本群にすっかり気を削がれ、そのまま帰路に着いてしまう。だが「日本書房」(2011/08/24参照)で、木製ワゴンの下段に横に突っ込まれた至誠堂書店「世界を家として/大庭景秋」を見つけ、喜んで500円で購入する。やはりここは、コンスタントに古い面白い本が買える良いお店だ…。帰りの電車の中で紐解いたのは、夏葉社のイラスト集「神保町」。独特でジリジリと引かれた黒い線が、神保町の見覚えのある街頭を、白い紙面にゆるゆると浮かび上げている(もちろん古本屋盛りだくさん!)。まるで幽体離脱して、宙空にフワフワ浮かびながら眺めたような、ちょっとだけ見下ろす視点が新鮮で、街はページの中に封じ込められているのではなく、白い余白がそのまま曖昧に街頭へとつながっているようで、電車に揺られながら少々うっとりしてしまう。個人的にはすでに閉店した、「明文堂書店」(2012/03/14参照)のある街角が、嬉しくてたまらない。僭越ながら、拙著「古本屋ツアー・イン・神保町」と対極を成す一冊と感じ入る。
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2016年10月28日

10/28古本屋ツアー・イン・ヤフオク2

昨日は夜の『不忍ブックストリーム』出演に照準を合わせ、ちょっと早めに外出。高円寺まで歩いて「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)にて河出書房新社「どちらでも/小島信夫」を100円で購入すると同時に、店内の木箱で北原尚彦氏に渡さなければならない(と思われる)ホームズグッズを発見し、50円で購入する…恐らく持っていないだろう…。さらに「都丸書店」(2010/09/21参照)ではガード下壁棚から目黒書店「越後の國 拾遺 雪の傳説/鈴木直」を300円で購入する。

そして本日、仕事の締め切りがあるため、家にじっと閉じこもっている。そこに、雨合羽のオヤジさんが届けてくれた一抱えの小ぶりなダンボール…届いたか…ヤフオクでの落札品で、中身はもちろん古本である。心を逸らせながら、ベリベリバリバリとダンボールを開ける。中に詰まっているのは、一冊一冊プチプチで丁寧に梱包された、五冊ほどの古い児童文学である。ほとんどが裸本で、さして珍しいものでもない。それらには目もくれずに、動悸を早めながら緑色の一冊を抜き出す。偕成社「あらしの白鳩/西條八十」である。ついに、ついに念願の一冊を手に入れたぞ!カバータイトル部分が大胆に破れているのが残念だが、それでもこの稀本が、我が手にスルリと収まってくれたことに、大大大大感激する。去年の十二月に盛林堂ミステリアス文庫で、奇跡的に復刻されたばかりだが、やはり当時の本、当時の活字、当時の挿絵で、時を経た本の匂いを嗅ぎながら、あの奇天烈な少女たちの物語が読めるのは、歓喜の体験となるであろう。あぁっ、八十センセイ!最高!ピジョン!ピジョン!ホワイト・ピジョン!
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最近のヤフオクでは、お目当ての本を落札することが、ほぼ不可能になっていた。基本、目を皿にして探している本や欲しい本が、珍しいものであることが多いからなのだが、それでも姿の見えぬライバルたちの、強気な入札や嗅覚の鋭さに阻まれ、連続的に一敗地に塗れる日々は、砂を噛むように虚しいものであった。だからどうにかして隙や見逃しはないものかと、深く深く潜り込むのだが、それでも振り切れなかった影が、終了時間近くにドドドと現れ、たちまち値段がグングン急上昇し、「俺はやはり大甘だった」と、モニターを前にしてため息を吐くばかり…。

だが、今回は違った。なんたって出品タイトルが『昭和の古い本』だけだったのだ。入札開始値は千円。小さな写真に目を凝らすと、その中の一冊に「あらしの白鳩」が紛れており、ドギンと心臓が跳ね上がる。これは、有望だ。誰にも気付かれていない可能性が、高い。そう確信し、過大な希望を抱きながら、そっと入札する。四日…三日…二日…一日……どうか誰も気づかないでくれと願い、順調に残り少なくなる時間に胸を躍らせながら、千円で「あらしの白鳩」が入手出来た瞬間を夢見て過ごす。しかしその甘い夢は、オークション終了一時間前に、破られたのだ。ライバルが突如出現し、高値を入札して来たのである。カッと頭に血が上り、少しずつ値を上げ入札し、アドバンテージを取り返す。だが、敵も諦めようとはしない。何度かそんなことを繰り返した後、入札の詳細を確認すると、敵はどうやらひとりで、しかも入札は少しずつ金額を上げて行くタイプ…つまりは、我慢比べである。一発ずつ交代で殴り合い、どちらかが降参するまで、それを繰り返すことになりそうだ。金額を大幅に上げて来ないのならば、少しは勝ちが見込める。問題は…私自身の制約である『入札は五千円』までという決まりである。殴り合いを続けるうちに、その限界値が、少しずつ近付いて来てしまっている…よし、ちょっと落ち着いて考えよう。もし、お店でカバーの破れている「あらしの白鳩」を見つけたら、幾らぐらいまでなら出せるだろうか?…いや、お得だと、どひゃっほうだと思えるだろうか?短い時間に一生懸命試算して、七千円くらいまでだったら、そう思えるのではと考え、これっきりだと心に誓い、禁を破ってついに七千円で入札してしまう!案の定パンチが返ってくるが、それは五千八百円で、ピタリと止まった。このままこのまま、入札しないでくれ〜と見えぬ敵に許しを乞いまくり、無事にそのまま終了。その瞬間、やった!という高揚感と、やってしまった…という背徳感が、慌ただしく捩じれ合い、心の中に索漠とした苦い勝利の味が、ジワリと広がる。まぁしかし、結果オーライ。ウチに可愛い白鳩が来たのは喜ぶべきことなのである。ピジョン!ピジョン!ホワイト・ピジョン!

そして明日・明後日は『神保町ブックフェスティバル』の本の雑誌社ブースで、新刊「古本屋ツアー・イン・京阪神」販売に楽しく従事いたします(在店は大体午後一時〜午後四時くらいまで)。声出してますので、冷やかしついでに遊びに来て下さい!
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2016年10月26日

10/26練馬から古本屋が消える日

昨日の短い西荻彷徨で、開いているのにちょっと遠いから行かなかった「モンガ堂」さん(2012/09/15参照)よりタレコミが入る。店に来たお客さんから、練馬の「一信堂書店」(2008/07/08参照)が閉店セールを行っているのを、聞き込んだのである。それは由々しき事態と、本日昼食を食べてから練馬へ急行する。駅南側の警察署近くのお店にたどり着くと、おっ!ビルエントランス横の扉が開き、その前には大量の古本山が放置され、奥には初めて目にするバックヤードの様子が垣間見えていた。…むむ、本当に由々しきことになっているようだ…店頭壁棚を流しながら入口に近付くと、そこにはたくさんの白い『閉店のお知らせ』が貼り出されていた。
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七十二年の営業に十二月十五日に幕を下ろすこと、二割引の閉店セール(除外品あり)を十月十五日より初めていたことなど、が書かれている。ついこの間、講演の調査のために訪れ、その講演でも『練馬に君臨する盤石の古本屋』として紹介したばかりだったのに…盤石じゃなくなってしまった…。それにしても、先ほど目にした表に置かれた古本が、古い大衆小説や児童文学だったので、どうにも気になってしまう。しかしそれらは、すでに仕分けが開始され、縦長のカーゴに積上げられ始めていた…もはや閉店の準備は始まっているということか。あきらめて中に入ると、そこにも閉店のお知らせがペタペタと貼られている。そして今まで見たことがないほど、雑然さが消え、通路がスッキリしている。棚はほとんど通常通り。帳場からどの通路も見通せるようになっている、パノプティコン方式もどきの行き止まりを通路を三本精査し、最後の右奥の広めゾーンに入ると、あっ!真ん中がごっそりと片付けられ、かつてない広さで棚の本をスッキリと見せている…。私にとってここは、それほど相性の良いお店ではなかったが、それでも近くに来たら足を向け、棚をチェックせざるを得ない蔵書量と深さを誇っていた。そして勝手に、何だかいつまでもあるような気がしていたのだが、後一月半で閉店か…途中、玄関マットを換えに来た三十代の営業さんが「閉めちゃうんですか。僕が会社に入った時から、ずっと担当して来たのに…もう十年以上ですよ」などと帳場で話している。私も七十二年の長きに渡る営業を心中で労いながら、イザラ書房「マリリン・モンローはプロパガンダである/平岡正明」新潮文庫「聖ヨハネ病院にて/上林暁」を計720円で購入。と同時に、戦慄の事態に思い至る。このお店が閉店したならば、ついに練馬駅周辺からは、純粋な古本屋さんが一軒も無くなってしまうのだ!なんという恐るべき古本屋エアポケットが誕生してしまうのかっ!こんな大きな街に「ブックオフ」一軒では、古本屋好きはどうにもやり切れない。果たしてこの空虚さが解消される日は、やって来るのだろうか…。
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2016年10月25日

10/25曇天の下、天金は輝く

『四度目の古ツアフェア@盛林堂』+『第二回どひゃっほう本祭り』が週末を乗り越えたので、どひゃっほう本とフェア本の補充に西荻窪へ向かう。雨はまだ降っていないが、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)店頭は雨仕様となり、ビニールカーテンをぐるり巡らせている。薄くジャズが流れてくる店内に入り、補充をチャチャッと済ませる(どひゃっほう本に、宮本幹也と北村小松が新加入。詳しいどひゃっほうの経緯は、表紙側見返しに挟まった直筆メモをご覧下さい)。店主・小野氏は買取外出中らしく、番台には若奥様が座っている。ちょっと色々打ち合わせをしたかったのだが、また日を改めての来店を告げると、何とこれから「古本屋ツアー・イン・京阪神」の追加が届くので、署名捺印をぜひ、とお願いされる。おぉ!入口近くの椅子台を振り返ると、確かに先週の追加分が残り一冊となっているではないか。肝心の本はもうすぐ届くということなので、しばらく外をブラブラしてから、再びお店に戻って来ることにする。だが、今日は火曜日!私を惹き付けて止まない古本屋さんたちは、西荻窪では主に定休日なのである。「にわとり文庫」(2009/07/25参照)も「比良木屋」(2008/09/12参照)も「忘日舎」(2015/09/28参照)も「音羽館」(2009/06/04参照)も見事にグッスリお休み中。途中路地裏の猫にちょっかいを出したら、達人のような素早さで引っ掻かれてしまい、流血……だが、北西奥に歩を進めて行くと、ややや、「花鳥風月」(2009/04/28参照)はしっかり営業中のようだ。店頭ワゴンをじっくり眺めてから、かなり久しぶりの店内に進みすべての通路をゆっくりウロウロ…うむ、良い気になる本が、所々に…だがどうも、本の整理と棚の整理を粛々と進行中の、店主の視線が妙に身体に突き刺さる…まぁ、気にしない気にしない。俺は何も悪いことなどしていないのだ。俺はただ、古本を楽しく見ているだけなのだと、貫く視線を宇宙線のように無自覚にして、本に集中して行く。すると右奥の平台上に面陳された、函ナシだが金色で非常に美しい、第一書房「動物詩集/ギイヨオム・アポリネエル作 ラウル・ヂユツフイ畫 堀口大學譯」が千円だったので、少し迷った末に購入。店主には優しく栞を挟んでいただき、なんだかホッとする。通りに出て、思わず本を取り出し眺めてしまう。大正十四年の一刷で、動物や虫の短い詩が版画と対応して、見開きページで向かい合っている。表紙全体の金塗りも鮮やかだが、天金はさらに掠れもせず美しく、曇天の下でも、キラキラ輝いている。
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金色の本を小脇に抱え、裏通りを伝って盛林堂へ戻ると、小野氏が戻って来ており、ちょうどタイミング良く追加本も届いた。帳場脇に席を作ってもらい、軽く打ち合わせをしながら二十冊に五種の識語を記し署名捺印する。
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2016年10月24日

10/24ささま参りと関西イベント(ささやか)

昨日は石神井公園近くの『練馬区立南田中図書館』にて必死に講演。四十人弱の嬉しい奇特な聴衆を前に一時間半、古本屋&古本の素晴らしさと練馬の古本屋について語りまくる。図書館員さんに時折フォローされながらも、かなりひとりで喋っていたので、様々な話が加速し過ぎたり飛び飛びになったりと、高く浮き足立った部分が多かった気がする。それでも遠路遥々お集りのみなさんに、最後までニコニコ聴いていただき、ただひたすら感謝である。それにしても、普段はブログでお店と言う点を打ち、それを改めて本などにまとめると、わりとグローバルな視点(首都圏や京阪神など)になることが多いのだが、今回のように“練馬”というミニマムな括りで古本屋をまとめると、新しいルートや関係性がフワリと見えて来て、その範囲の狭さと境界線が、とても新鮮であった。しかし気になったのは、練馬には極端に新しいお店や開店するお店が少ない気がすること。「古本喫茶店マルゼン46」(2012/02/27参照)や「エコキーパーズ」(2013/01/29参照)が比較的最近のお店ではあるが、う〜ん、これだけではやはり…ところが、終了後の会場にて、ひとつの希望の光がピカリと眩しく輝いた。挨拶を交わした「ポラン書房」(2009/05/08参照)の若番頭さん・前原氏が、お店からついに独立し「古本 一角文庫」として、いずれ実店舗も開くべく奮闘中だというのである!これは素晴らしいお知らせである。ということは次のこの図書館でのトークショーは、前原氏の「練馬に古本屋を開くまで」というのが、良いのではないだろうか。

本日は講演の妙な疲労を身体にまとわりつかせながら、些事を片付けるのに奔走。隙を見て荻窪「ささま書店」(2008/08/23参照)にタタッと駆け付け、店頭棚の全面を素早く一巡する。それだけで手の中には六冊。何だか七十年〜八十年代文学づいたラインナップである。文藝春秋「草のつるぎ/野呂邦暢」「つゆ草/川崎長太郎」JICC「競馬場で逢おう/寺山修司」冬樹社「私の文学放浪/吉行淳之介」東京創元社現代推理小説全集12「その子を殺すな/ノエル・カレフ」ロマン・ブックス「濡れた心/多岐川恭」を計630円で購入し、阿佐ヶ谷にさっさと戻る。途中「古書 コンコ堂」(2011/06/20参照)にも寄り道し、正進社名作文庫「耳なし芳一のはなし/小泉八雲 平井呈一訳」を、たまたま店頭に補充に出て来た天野氏に、103円を支払い購入する。「古本屋ツアー・イン・京阪神」(識語署名捺印本)取扱開始のお礼を伝えると、「いやぁ、あの本、なんだかスゴいですよ、もう古本屋の本じゃないみたいですよ。まるで考現学とかの本ですよ」と、とても嬉しいことを言われる。ずっと目指しているところに、少しくらいは届き始めたんじゃないかと、薄めの自信が、チュワッと心の中に滲み出た一瞬であった。
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ここでお知らせをいくつか。
■今週10/27(木)に『不忍ブックストリーム』に出演し、「京阪神」についてベラベラと話す予定です。MCの南陀楼綾繁氏は、ついに今秋創刊の一箱古本市雑誌「ヒトハコ」をお披露目予定。お時間ある方は、ぜひとも御試聴下さいませ!
第120回 不忍ブックストリーム「秋の新刊&イベントまつり!」
http://www.ustream.tv/channel/shinobazubookstream
午後九時頃から配信予定。

そして「京阪神」の発売を勝手に記念して、これはもう、ちゃんと向こうで挨拶しないと始まらないと、大阪&京都で小さなイベントを二つ敢行いたします!
■『著者と話そう 古本屋・ツアー・イン・ジャパン 小山 力也さん×古書コンシェルジュ』
2016年11月12日(土)
定員 10名
時間 19:00〜20:00
講師/ゲスト 小山 力也さん
場所 梅田 蔦屋書店 コンシェルジュカウンター 主催 梅田 蔦屋書店 コンシェルジュ
参加費 無料
問い合わせ先 umeda_event@ccc.co.jp
申し込みは下記のHPからどうぞ
http://real.tsite.jp/umeda/event/2016/10/post-209.html
神保町の古本屋を全店制覇した『古本屋ツアー・イン・神保町』、首都圏各所に散らばる古本屋を沿線ごとにたどった『古本屋ツアー・イン・首都圏沿線』と、厖大な数の古本屋をめぐり続けている「古本屋ツアー・イン・ジャパン」こと小山力也氏による、京阪神古本屋ガイド発刊を期に、古書店めぐりの秘話や、古書の魅力を縦横無尽に語り尽していただきます。聞き手は、古書コンシェルジュが務めます。ご期待ください。
■『古本屋ツアー・イン・善行堂』
京都の吉田山ふもとの「古書善行堂」で、古本ソムリエの山本善行氏に一日弟子入りし、店員として必死に労働しておりますので、秋の古都の日曜日に、フラリと遊びに来ていただければ幸いです!古本の話、古本屋の話、署名捺印、なんでもござれ!プラスご来店の方へ何か特典を、などと考え中ですので、詳細は追ってお知らせいたします。
2016年11月13日(日)午後十二時〜午後八時(予定)
古書 善行堂 京都府京都市左京区浄土寺西田町82−2
http://zenkohdo.shop-pro.jp/
http://d.hatena.ne.jp/zenkoh/ 
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2016年10月22日

10/22東京・戸越 リサイクルショップZACK

古本神・田中栞氏に誘われ(命令され)、『戸越八幡一箱古本市』に参戦する。
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多くの人で賑わう『戸越銀座』から、南に200mほど下った住宅街の中に、取り残されたようにぽっかりとある、樹高のある鎮守の杜に守られた、古めかしい神社が会場である。第一回の開催ということで、お客はそれほど多くはなかったが、ロケーションが素晴らしい古本市だったので、今後もぜひとも継続していただきたいと願いながら、まったりと夕刻までゆっくり流れる時を過ごす。結局五時間で、新刊八冊(「京阪神」七冊、「首都圏沿線」一冊)と古本を十五冊売り上げる。終了後は、しばらくの時間を薄暗い情緒漂う参道で、境内猫のミィちゃん(三毛猫メス。ちょっとお腹がダル)と恋人のように過ごし、神社の社務所にて打ち上げ。そこで、とてもさばけた神社の宮司さんと、古本市主催者の真っ直ぐでキラキラした若者たちと、胸衿を開いて色々と話し合う。街や古い神社のために、何かしたい!という初期衝動が若々しく青臭いのだが、だからこそのフレッシュなエネルギーとへこたれない気持ちが、全員ダダ漏れになっているのが、大変に可愛らしい。もはや我々のような年寄りは、それを支え、小言を言って行くだけであることを、切ないが認識してしまう。この一箱古本市、もはやぐるんと巻込まれているので、これからも応援いたします!

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したたかに酔っ払って、ひとりで売れ残った本を引き摺りながら、まだまだ賑わっている『戸越銀座』。前から気になっていたリサイクルショップがまだ営業中だったので、ちょっと冷やかし半分覗いてみると、おお!何だか以前より古本エリアが増大している!駅からは『第二京浜』たる『国道1号』から東の『戸越銀座』に入り込み、ひとつめのゲートを潜った右手にしばらくすると現れる。店頭には、新しめの絵本や児童書が左にちょこっと並び、右の入口横の棚には、最近の実用本が並んでいる。入口入ってすぐ左にわりとしっかりした古本棚があり。小説・実用・文庫・コミックとリサイクル的表情を見せつつも、十分の一程度古書が混ざっているので、少しだけ色めきたってしまう。縦長の、生活雑貨や古道具がひしめく店内には、右側通路中央や、奥の棚の一部に、売れ線から外れた純文学や、ベストセラー本を確認する。本の値段はわりとしっかり目。函ナシで安値のアルス「少年少女日本歴史小説集」を324円で購入する。大して珍しい本ではないが、個人的には明治時代のハレー彗星接近にともなうデマ事件を基にした「空気がなくなる日/岩倉政治」が収録されているのが嬉しかった。オーソン・ウェルズの『火星人襲来』に比肩する、ちょっとSFチックな世界滅亡デマゴーグ。口絵の、五分間の空気を確保するために、ゴムチューブをたくさん身体にかけた金持ち子供のイラストが、情けない悲哀を誘う。
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posted by tokusan at 22:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月21日

10/21小沼丹と田名網敬一と小壺天書房

早くから池袋に出たついでに、西口公園で開催中の「第24回 池袋西口公園古本まつり」(2011/10/25参照)に用事をしっかり済ませてから、たくさん買うつもりで立ち寄る。薄日が差し、爽やかな初秋の風が吹き抜ける円形の広場に、黒い噴水を中庭のように中心にして、たくさんのテントワゴンが並んでいる。いつもは右側からぐるっと回って行くのだが、今日は気分とジンクスを変えて左側から取りかかってみよう。最初のうちは何も引っ掛からず手に出来ず、悶々としてしてしまうが、途中の「文省堂書店」辺りから面白そうな本が目に留まるようになり、次第に古本エンジンがギアと回転数を上げ始め、一冊も見逃すまいと目を凝らし続け、ワゴンに次々真剣に取り憑いて行く。左側ステージ近くの密集ゾーンでだいぶ疲弊しつつも、それほど集中力を切らさずに、およそ二時間をかけて入口への生還に成功する。会場内には幾つも帳場があるが、その入口近くで精算してもらう。筑摩書房「清水町先生/小沼丹」(なにげなく函から取り出し開いてみると、これが嬉しい署名入り!一瞬、もしや印刷では?と疑心暗鬼に囚われるが、良く見ると見返し反対側の巻込んだグラシン紙に、署名のインクが鏡文字になって写り込んでいる。署名後に紙を挟み込まなかったために起きた、嬉しい誤算である。ということで、500円はどひゃっほうである)小壺天書房「三人姉妹/上林暁」(函ナシだが、見返しに小壺天書房社長・山田静郎の献呈署名あり)福音館書店こどものとも「なおみ/谷川俊太郎作・沢渡朔写真」「とぶ/谷川俊太郎作・和田誠絵」日本小説文庫「草に祈る/櫻井忠温」自警会「警察風土記(上)」(古い昭和三十年代の警察署の白黒写真を多数掲載)ルック社「続・日本の妙薬/三橋一夫」光文社「甲賀忍法帖/山田風太郎」小学館女学生の友昭和三十五年2月号付録「月夜にくつが鳴る/宮敏彦」(ビニールに包まれていたので一か八かで買ってみたが、扉を開くと『長編推理小説』の文字が。やった!何と文庫サイズニ段組みで160ページの、本当に長編なのである。そして装幀はなんと田名網敬一なのである!)を計2900円で購入する。たまたま帳場にいた神奈川の船越書房さんと挨拶を交わし、11/5(土)反町古書会館の『古書の日イベント』にも来て下さいと、強面顔に最強の笑顔を浮かべてお願いされる…ハ、ハイ。い、行きます!
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市をバックに嬉しい署名本を記念撮影。この市は10/27(木)まで。

収穫はあったが、かなりエネルギーを使ってしまったので、家に戻って一休み。夕方に再び外出し、昨日訪れたばかりの「盛林堂書房」(2012/01/06参照)にて「京阪神」のサイン本補充に従事する。

そして明日土曜は『戸越八幡一箱古本市』。のんびり古本と新刊を売っていますので(2016/09/12にいただいた古ツア専用木箱をデビューさせる予定)、お時間ある方はフラリと戸越銀座をぶらつきついでに、おいで下さい!待ってます!
■場所:戸越八幡神社 東京都品川区戸越2-6-23 最寄駅:戸越駅・戸越銀座駅・ 戸越公園駅
■開催日:2016年10月22日(土)
■開催時間: 11:00-16:00
■一部屋豆本市◎同時開催!
※雨天の場合は、2016年10月23日(日)に順延します。
詳しくは→http://togoshihachiman.jp/hitohako/
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2016年10月20日

10/20根性で発売日に祭りとフェアをスタートさせる。

ついに発売日を迎えた「古本屋ツアー・イン・京阪神」…様々なことが気になりソワソワと落ち着かず、家でも外でも挙動不審者として過ごしてしまう。だがそれでも気合いを入れまくって、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)で行うと宣言した『四度目の古ツアフェア@盛林堂』+『第二回どひゃっほう本祭り』の準備を根性で終え、夕方遅くに西荻窪に搬入する。二段の本は思い切ってほとんど入れ替え、最上段左側に生木を裂くように持ち出して来たどひゃっほう本を固める。
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「冒險ダン吉 百萬弗のハーモニカ」や皆川博子の児童文学に書肆ユリイカ「吉岡實詩集」と上林暁「三人姉妹」、それに誰が買うんだ仮名垣魯文などなど十冊ほどを並べておく。表紙側の見返しに直筆の『どひゃっほうコレクション』レポートが挟まっているので、お買い上げの際は本とともにお持ち帰りいただければ。また、フェア本もどひゃっほう本も順次補充予定である。どうか頻繁に西荻窪に通い詰め、フェア&祭り棚を冷やかしてやってください。また、ほぼ書き下ろしの「京阪神」は、椎名町「古書ますく堂」(2014/07/20参照)や阿佐ヶ谷「古書 コンコ堂」(2011/06/20参照)、それに京都「古書 善行堂」(2012/01/16参照)でも販売予定。どれも識語署名入りですが、「善行堂」では本作りに惜しみなく協力していただいた、店主の山本善行氏にさらに一筆入れていただければ、より完全な本と化すでしょう。ふぅ、とにかく本の発売日に、祭りを合わせられて、良かった良かった。作業を終えてようやく心落ち着き、小野氏に最近仕入れた本などを見せていただきながら、艱難辛苦を経て刷り上がった目録「盛林堂の本棚2016年10月号」をいただく。66ページに及ぶカラーページ部分には、見たこともない仙花紙本が盛りだくさんで、涎だらけで目を回してしまうこと必至。入手の際は、どうか気をつけてページをお開き下さい。
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2016年10月19日

10/19いよいよ明日あたりに!

まずは無事に土曜の一箱を作り上げ、宅急便で戸越八幡神社に前乗りしてもらう。お昼過ぎに編集さんから連絡が入り、ついに「古本屋ツアー・イン・京阪神」の本隊が仕上がって来たので、サイン本の量産を依頼される。昼飯後に、暑いんだか涼しいんだかよく分からない妙な陽気の表に出て、神保町を目指す。その前に「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)に立ち寄り、鹿島出版会SD選書「ラスベガス/R・ヴェンチューリ他」四六書院「通叢書 古今いかもの通/河原萬吉」を計618円で購入しつつ、開業五年目にして初めて作ったというショップカードを入手する。神保町に着いてからは、急ぎ足で『靖国通り』を闊歩し、「田村書店」木製ワゴンで世田谷文学館「追悼 山田風太郎展」を嬉しい300円で見つけて購入し、満足して『本の雑誌社』へ。時刻は午後二時半。小さな白木の机の前に座り、計九十五冊のサイン本製造に従事する。ハンコを捺し、識語を書き、署名をひたすら繰り返して行く。早速十冊目辺りで、文字を文字として認識出来なくなるゲシュタルト崩壊を引き起こしてしまうが、構わず心を無にして、写経の如く手を静かに動かし続ける。識語は五種類用意し、二十冊ごとに変えて行く………結局すべての作業が終わったのは、午後六時過ぎであった。あまりにも長時間の作業となってしまったため、途中、浜本編集長に「あれ!まだいたの」と驚かれ、取材から帰って来た編集さんにも「あれ!まだサイン書いてたんですか」と言われる始末…というわけで、明日あたりから命と生活を賭けて調査し書き上げた、西の古本屋さんたちの本が店頭に並び始めます。東の方も西の方も、この異常で古本屋のみに集中した愉快な作を、何とぞよろしくお願いいたします。
http://www.webdoku.jp/kanko/page/9784860112929.html
また発売を勝手に祝し、十一月にささやかなイベントを大阪と京都で行う予定である。こちらの詳細はまた後日。

すっかり消耗して家に戻ると、古本神の田中栞氏から、厚みのある封筒が届いていた。開けてみると、何とこれが新作のハンコ!毎度毎度素敵なハンコをありがとうございます。良し「京阪神」に捺して捺して捺しまくるぞ!まずは土曜の一箱で捺し、日曜の講演会でも捺し、月末の神保町ブックフェスでもガンガン捺すことにいたします!
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新作ハンコとコンコ堂ショップカードと風太郎展図録。風太郎展は世田谷文学館で平成十四年に行われたもの。
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2016年10月18日

10/18日暮里で古本屋さんと呑む!

昨日からちょっと時間が空いたのを良いことに、一気に週末の一箱古本市の準備と『四度目の古ツアフェア@盛林堂』+『第二回どひゃっほう本祭り』の準備を着々と進め、自宅の古本の波に飲まれて大いに疲弊してしまう。ちょっとした達成感を味わいつつ本日夕方に外出。「たけうま書房」さん(2016/07/22参照)がセッティングしてくれた、ただ意味もなく楽しく古本屋さんとお酒を呑むという主旨の『たけうま会』に参加するためである。その会合場所である西日暮里〜日暮里間のお店に照準を合わせつつ、わりと至近の古本屋さんである「峯尾文泉堂」(2009/05/30参照)を久しぶりに訪ねてみると、午後六時過ぎなのに、残念ながら閉店作業の真っ最中。早々に古本を買うことを諦め、集合時間まで宵闇の街をブラブラ歩く。夜に歩いたことで、鴬谷〜西日暮里北側ゾーンは、相当横長な歓楽街であることを恥ずかしながら、初めて認識する。そんな明るく終日お祭り模様な路地を歩き続け、常磐線・京成線・舎人ライナーなどが立体的にクロスする踏切脇のお店に入り、たけうまさんと合流。そしてちょっと遅れて現れた「古書ほうろう」(2009/05/10参照)の宮地さんを歓待する。思えばお店や不忍イベントで何度も顔を合わせていたが、同席してお酒を飲むのはこれが初めて。たけうまさんの意外な人選にも驚かされたが、実は二人は同い年で同郷で、現在古本屋人生をまっしぐらな、とても仲良しな関係なのである。
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だが、お互いに古本屋さんとして話しをするのは、これがほぼ初めてということで、初っ端からとても真面目な商売と稼業の話に突入してしまう。なんたって、ほうろうさんは組合には加入せず、買取だけであの大きなお店を経営し続ける、孤高の古本屋さん。かたや人付き合いは苦手と言いつつも、組合に加入し一時は店舗も営業し、現在もその人間関係の中でしっかりと生き抜く古本屋さん。つまりは、お互いにお互いのことが興味津々なのであった。錯綜する独立店の苦悩と組合の苦悩。独立店の自由さと喜びと、組合の支え合うシステムと市場のメリット。八十センチの目の前で繰り広げられる、様々な経営アイデアとその未来…うふぅ、ただただ面白く楽しく、お酒を飲みながらトークイベント的感覚で、三時間聞かさせていただきました。そして、たけうまさんには次の『たけうま会』のセッティングをお願いしつつ、ほうろうさんには臨時の古本屋アルバイトを懇願しておく。もはや古本屋さんをただ巡るだけではなく、ちょっと裏方の仕事を身に染みて味わいたい今日この頃なのである。そんな仲良しの二人をしばし放置し、トレイに入る。すると棚の上にはたくさんのスノードームが飾られていた。ところがその中のひとつに、とてつもない違和感を覚える…何だ?この爽やかさや美しさゼロのおかしなドームは?取り上げると、それは何と永井荷風らしき人物が、『ヌケラレマス』の看板がある玉ノ井の路地に立っているもの!タイトルは『濹東の色町』…うぅむ、痺れる。
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これ何処で売ってるんだろうか。願わくばぜひとも手に入れたい逸品である。などとトレイの中で似非文学的体験。すっかり酔っ払って表に出ると、鉄道三路線が立体的に擦れ違う、わりと幻想的でノスタルジックな都会のパノラマ。ふぅ、本当に古本屋好きとしては刺激的で素敵な夜となりました。
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2016年10月16日

10/16練馬区西側の気になる古本屋さんをたどる

今日は来週日曜の講演の予備調査として、ちょっと消息が気になる練馬西側の古本屋さんを調査。昨日に続く麗らかな陽気に誘われ、中村橋駅までテクテク歩いて、西武池袋線で保谷駅下車。南口に出て車関連に強い「アカシヤ書店」(2008/12/17参照)を訪ねる。実におよそ八年ぶりの訪問である…その八年前の店頭は『廉価コミックや単行本の安売り棚』だったはずがが、いやいやさにあらず、何と古書多めの棚に激しく変貌を遂げたことか!
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思わず真剣に食らいついてしまい、たちまち手の中に四冊。店内へ進むと、記憶の中のお店通りの狭く細長い空間である。先客の、突風のように動く車マニア客の突進をかろうじて躱して擦れ違い、奥の帳場で精算。新樹社ぶらっく選書「Xの悲劇」「Yの悲劇」共にエラリー・クイーン、清流社「随筆 探偵小説/江戸川亂歩」偕成社文庫「みどりいろの童話集 ラング世界童話全集T」を計432円で購入する。再び電車に乗って石神井公園駅下車。『富士街道』の「エコキーパーズ」(2013/01/29参照)を見に行くが、残念ながらお休み。バイト募集の貼紙があるので、ちゃんと営業していると確信。駅近くのお店もついでに覗いたりしながら、次は一番気になっている富士見台の「新井書店」(2010/08/30参照)へ。北口に出て、駅前商店街の坂を下り店前にたどり着くと、自転車が置かれ、右側のシャッターが半開きな状態は相変わらず。
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昔通りならこれでも営業中なはずと、遠慮せずに中に踏み込み、奥の生活空間で座椅子に横になっている店主に「見てもいいですか」と声をかけると即座にOKが出る。ふぅ、良かった!主に右側の児童文学に熱い視線を注ぎ、棚前に積み上がった文庫本束も勇気を出して少しずらしたりしてみて、日の目の当たらぬ棚も楽しむ。講談社児童文学創作シリーズ「霧のむこうのふしぎな町/柏葉幸子」秋田漫画文庫「謀殺のチェスゲーム/山田正紀・田辺節雄」を声をかけて差し出すと「200円でいいよ」とサービスしてくれた。「新井書店」は一見営業していないようだが、シャッター半開きで、今日も元気に営業中なのである。

というわけで、来週日曜の講演を、何とぞよろしくお願いいたします。
『古書の世界』
■第5回 古本屋ツアー・イン・練馬
■日時:平成28年10月23日(日)14時から15時30分
■会場:南田中図書館会議室 定員:40名 参加無料
■申し込み法:お電話または南田中図書館カウンターにてお申し込みください。
練馬区立南田中図書館  TEL:5393-2411
〒177-0035 練馬区南田中5-15-22
http://www.lib.nerima.tokyo.jp/institution/28
■講師:小山力也 氏
『古本屋ツアー・イン・ジャパン』など古本屋巡りの 本を出版されている小山力也氏に、 西武池袋線沿線と
その周辺の古本屋さんを紹介していただきます。 今は亡きあの古本屋が登場するかも!
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2016年10月15日

10/15『海の鉄仮面』異装版

天気が良いので歩いて西荻窪へ向かう。今朝は昨日同様寒かったが、日が照る昼間はポカポカ陽気で、まさに小春日和といった十月中旬である。途中阿佐ヶ谷では「古書 コンコ堂」(2011/06/20参照)の店頭棚に並んでいた、秋田書店「魔太郎がくる!! 2・3・9・10巻/藤子不二雄」に無様に心奪われ、計412円で購入する。う〜ん久しぶりにパラパラと見てみたが、驚くほど濃度高くパワフルだ。魔太郎の使う『うらみ念法』…全然うらやましくない能力だ…9巻の2/3ページで展開される『魔太郎なぐられ名場面集』が酷過ぎる…そして9・10巻の終盤になると、絵も話もメチャクチャになって行く…。荻窪では当然の如く「ささま書店」(2008/08/23参照)に寄り道し、店頭で二冊をつかんで店内に進み、奥側ゾーンの中央通路棚で探偵&推理小説群を定点チェック。すると嬉しいことに、欲しかった浪速書房「海の鉄仮面/牧野吉晴」を発見。ドキドキしながら後見返しの値段札を見ると、さらに嬉しいことにお値打ちの2100円也!迷うことなく購入を即決し、計210円の講談社文庫「真夏の旗/三木卓」高橋福音堂本店「人類の大恩人 ルイパストウル氏の傳/マキシム・プイサン」(函ナシ。後見返しに大阪市南區松坂屋前の「東洋堂書店」の濃緑の古書店ラベルあり)とともに帳場に差し出す。良い本を一冊買えば、その日の憑物は落ちてしまうので、今日のノルマをたちまち果たして解放された気分になりながら、ヒタヒタ歩いて西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)へ。うひゃぁ、なんだかお店が混んでるなぁ。「フォニャルフ」に補充に来たのだが、店内が空くまで少し待つことにして、店主・小野氏と打ち合わせたり無駄話をしたり。特典付きの「古本屋ツアー・イン・京阪神」は、嬉しいことに予約順調らしい。この先の盛林堂ミステリアス文庫のデザイン仕事についてもあれこれ。話しがふと途切れたところで、小野氏が足元に置いた古本袋を見て「ささまで何買って来たの?」。すかさず収穫の「海の鉄仮面」を取り出すと、小野氏の目がキラリと光り「あれ、それ、異装版だよ。そんなの見たことないよ」と帳場から慌てて飛び出し、棚にあった浪速書房と元版である東京文藝社版の「海の鉄仮面」を持って来た。うわ、ホントだ。全然違う。
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※左がお店にあった怪奇冒険ver.で、右が購入した仮面ver.。
お店のはタイトルフォントもおどろおどろしく、イラストも怪奇冒険小説っぽいのに、こちらはおとなしく渋い仮面のイラストだけでタイトルは活字(背も活字である)。聞けば今までにお店で取り扱ったりして来たものは、みんな怪奇冒険小説版だったらしい。う〜ん、これどっちが先なんだろう。本体は両方とも昭和四十四年七月三十一日発行で、本文と広告を含めた中身はまったく同じである。仮面バージョンが先で、おとなしくて売れなかったから派手な怪奇冒険バージョンに替えたのだろうか?それともその逆か……だがその答えは、カバーを捲りとった表紙の背にあった。あ!背の文字が、怪奇冒険版のおどろおどろしバージョンじゃないか。
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ということで、あっという間に疑問が氷解し、後でこちらの仮面バージョンに差し替えたことが判明する。うむ、すっきりした。ちなみに小野氏によると、仮面バージョンの方が珍しいので、ちょっと高値になるらしい。やった!「ささま書店」よ、今日もありがとうございます!
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2016年10月14日

10/14サイン本を作成し神保町の小さな変動を知る

「古本屋ツアー・イン・京阪神」のサイン本作成のため、神保町の『本の雑誌社』へと向かう。だがその前に、午前中の本の街で古本を買いたしと、力の限りお店を巡ることにする。水道橋で下車し、まずは「丸沼書店」(2009/12/17参照)で講談社江戸川乱歩推理文庫「蔵の中から」岩波文庫「子規句集/高浜虚子選」創元ライブラリ「中井英夫全集[3]とらんぷ譚」読売新聞社「鮎川哲也自選傑作短編集」を計500円で購入し、すぐさま隣の「有文堂書店」(2010/09/03参照)にも飛び込み東西文明社「新男女百景/東郷青児」を100円で購入する。初っ端からカバンを重くしつつも、以降の『白山通り』では何も買えずに、あえなく『靖国通り』に到達。西に進路を採って『神田古書センター』二階の「夢野書店」(2015/03/13参照)にソロリと入り込む。入口横の床に置かれた、安売り付録漫画箱を漁ると、いつもは時代劇物やスポーツ物ばかりなのだが、今日は探偵漫画やSF寄りのおとぎ話系が良く紛れ込んでいる。根気よく一冊ずつ確認して、小学館小学四年生昭和三十二年九月号ふろく「冒険まんが 名探偵ガンちゃん/南田はると」小差学三年生昭和三十一年11月号ふろく「ロケットけんちゃん/原やすお」小学二年生昭和三十年6月号ふろく「そらとぶたあちゃん/あびこやまびこ」を計900円で購入する。再び路上に戻り「長島書店神保町店」(2012/06/06参照)でワゴンを凝視していると、横合いから優しい笑みを浮かべた塩山芳明氏の顔がニュッと突き出し「新刊おめでとうございます」と言祝ぎ、風のように「小宮山書店ガレージセール」に向かって行った…ここでは東京都情報連絡室 都市紀要三十五「近代東京の渡船と一銭蒸汽」を300円で購入する。「@ワンダー」(2014/05/22参照)前では店主の鈴木氏に発見され、しばし路上で古本屋の現状について熱い激論を交わしてしまう。そして西端から東へ向かって引き返し、「明倫館書店」(2012/04/04参照)では脇道側の大判本ゾーンから、トモブック社「ディズニー自然科学映画叢書 砂漠は生きている」を発見して600円で購入する。カラー写真が印刷してあるのではなく、各ページに糊付されている不思議な本である。…そうか!基本はモノクロ印刷で、別行程のカラー印刷写真を手作業で貼付けているのか。なんという手間のかかった本!「田村書店」(2010/12/21参照)では講談社文庫「久生十蘭「従軍日記」/久生十蘭」を200円で買ったところでようやく憑きものが落ち、『本の雑誌社』へ向かう。およそ一時間半かけて、四十冊に識語署名捺印する。サイン本をご所望の書店&古本屋さま、いつでも力一杯署名させていただきますので、注文時にご指定ください。嬉しいことに編集部さんからお土産に、金沢より産地直送のサツマイモをいただき、古本とイモでカバンを酷使しながら『靖国通り』北側の裏路地に入り込む。すると「古書たなごころ」(2010/11/24参照)が移転してしまっているのを発見。もぬけの殻になった旧店舗の貼紙に目を走らせると、どうやら三崎町の方に移転し、週末営業で動き出しているらしい。ブラブラと裏町を伝って、もはや水道橋駅も近くなった新店舗を探し出すと、そこはビルの四階で、どうやら『紅茶研究所』の中に間借りしているらしい。ふむ、週末に訪れ、確かめてみなければ…それにしてもビル一階の、サッシの向こうに見える古本の山が麗しい。ビルの案内板を見ると、一階は「古書明日」となっている。どうやら事務所店らしいのだが、都立大学の「古書明日」とは、何か関係があるのだろうか。つい先ほど手に入れた2017年度の『JINBOCHO古書店MAP』には掲載されていない…気になるなぁ…。
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※お知らせ
来る10/22(土)の「戸越八幡神社 一箱古本市」に、古本神の田中栞氏に誘われ急遽参戦することになりました。急ぎ掻き集めた古本とともに、新刊も販売する予定です。ぜひとも古本も新刊も買いに、いや、もう、話に来るだけで結構ですので、みなさまお誘い合わせの上、お越し下さいませ!

■場所:戸越八幡神社 東京都品川区戸越2-6-23 最寄駅:戸越駅・戸越銀座駅・ 戸越公園駅
■開催日:2016年10月22日(土)
■開催時間: 11:00-16:00
■一部屋豆本市◎同時開催!
※雨天の場合は、2016年10月23日(日)に順延します。
詳しくは→http://togoshihachiman.jp/hitohako/
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2016年10月12日

10/12「古本屋ツアー・イン・京阪神」見本出来!

午後九時前に編集さんから連絡があり、待望の「古本屋ツアー・イン・京阪神」の見本が出来上がったとの報告を受ける。仕事に追い詰められていたが、途端に舞い上がり、無理を言って帰宅ついでに持って来ていただくことにする。駅で待ち合わせ、ブツを受け取り、袋の中から288ページの本を、ドキドキしながらそっと取り上げる。それは、まさにカレー風味な装幀の、関西の古本屋さんを力の限り封じ込めた、俺の本!!!!!!やった、ついに出来たぞ!発売はまだ一週間ほど先だが、ついに物質となり本の形となり、この手に収まってくれたのだ!感無量以外の何ものでもない、興奮の瞬間である。ひとしきり駅頭で、これからのことについて色々話した後、本の存在を、暖かく手の中に感じ取りながら、暗い帰り道を歩いている。ふと夜空を見上げると、そこには白い月が小さく懸命に発光していた。新刊を改めて袋から出して掲げ、その月に吠えるようにして、写真を一枚。みなさま、何とぞこの一冊を、よろしくお願いいたします!
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そして家に帰り着き、旧著書&共編著とともに、何はともあれ目出度く記念撮影…あぁ、本当に、古本屋さんの本ばかりだ。これからもこれをひたすら続けて行けば、いずれ夢の「日本古本屋大全集」が完成するのかもしれない……。
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10/12島書店の開店準備をそっと見守る

なんだか仕事に追い詰められ、無惨にも家に釘付けとなるが、夕方に一瞬の隙を突き、大規模停電など歯牙にもかけずに外に飛び出し、バスで練馬方面へ向かう。今月23日と迫って来た『南田中図書館』での講演『古本屋ツアー・イン・練馬』のために、ちょっとした予備調査を少しずつ進めて行かなければならないのだ。家の前から中村橋行きのバスに乗ってしまったので、『中村公園前』でバスを乗り捨て、徒歩でテクテク練馬駅目指して歩き始める。次第に辺りは宵闇に包まれ、明度がグングン下がり始めている。そして月が、白く右斜め上の空に、美しく輝いている。やがて車のヘッドライトに目を射られるようになり、まずたどり着いたのは、ビルの看板が眩しく輝く「一信堂書店」(2008/07/08参照)。店頭壁棚に丁寧に目を凝らして行くと、文庫棚に良い感じの八十年代文庫が、ドシドシと肩を並べいているではないか。その景色に乗せられたように、気分良くスパスパと抜き出してしまい、計七冊を店内帳場に差し出してしまう。講談社文庫「女の顔/新章文子」新潮文庫「アウトドア・ライフ入門/小林泰彦」「街に顔があった頃/開高健・吉行淳之介」「昨日のツヅキです/都筑道夫」「谷内六郎の絵本歳時記/横尾忠則編」角川文庫「デルス・ウザーラ/アルセニエフ」中公文庫「中亜探検/橘瑞超」を計700円で購入。ほどほどに満足した後、さらに足を延ばして、すっかり夜になった桜台駅。北口の隘路に入り込み、ここ最近夕方営業にチェンジした気配の「島書店」(2009/06/30参照)の様子を探りに行く。…おぉ!今まさに、オヤジさんが店頭を展開中ではないか。健在なり、島書店!
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時刻は午後五時四十六分…だが良く見ると、開いた入口には、店内から棚や物品がギュウギュウと押し寄せており、オヤジさんはそれを少しずつ少しずつ取り出し、店頭にゆっくりと丁寧に、作品でも作るように飾り付けて行く…これは、開店に漕ぎ着けるまで、恐ろしく時間がかかる模様…しばらく辺りをウロウロして、作業の様子を頻繁にうかがうが、やはりなかなか進展しない…開店時間は、早くとも午後六時半といったところか…。あまり悠長にはしてられないので、今日のところは営業しているのを確認したことに満足し、急ぎ家へと舞い戻る。その帰りの電車とバスは、停電の影響なのか、何故か女子中学生が溢れまくる、非常にかしましい場と化していた。みなさん一日おつかれさまでした。
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2016年10月11日

10/11日本最高峰のジュニア探偵&ミステリ棚に垂涎する

『本の雑誌』巻頭には『本棚が見たい!』というグラビアページがある。蔵書家や書店の本棚を、それぞれの本の背が確認できるほどの詳細な写真で紹介する、本好きにとっては楽しい楽しいページである。その次号の本棚候補に挙がったのが、ミステリ評論家&翻訳家で古本神の、森英俊氏であった。ところがここで、何故か編集部から私に一報が入る。氏が取材を受ける条件として、私の同行を望んでいるので、ぜひとも取材に参加して欲しいと…なんだか奇妙な依頼である。まるで、誘拐犯から身代金の運び役に指名されたような、立てこもり犯から交渉人役に指名されたような、そんな青天の霹靂気分なのである。だが、前から見たい行きたい入りたい!と思っていた森氏の書庫に潜入出来るのだ。こんな、千載一遇のチャンスを逃してなるものかと、勇んで取材同行を快諾する。かくて本日、浜本編集長とカメラマンの後にくっつき、都内某所の斜面に建つ、四階建て豪邸前に到着する。…す、すげぇ…古本神…いや、俺にとっての古本メフィストフェレスは、こんな所に住んでいるのか…。思いっきり気圧されながらも、外に出て迎えてくれた森氏に案内され、まずは玄関横の応接室に招き入れられる。ぐっ、入口横に、時代劇&恋愛ものの春陽文庫が、ぎっしりと詰まった棚がある…白い背の、古い文庫が、存在感…人を迎えるには、なんとアンバランスな応接室!それに、玄関前の廊下に積み上がる古本入りのダンボールや、まだ控え目に剥き出しで横積みされた古本タワーが、とても気になってしょうがない…。まずは氏から、邸内の古本が置かれている場所のレクチャーを受け、少し打ち合わせた結果、四階の書庫から見始めることに決定。四人連なり階段に向かう途中、本の山から森氏が一冊の本を取り上げ渡してくれた。なんだこれ?うわぁ!小島剛夕が描いた、シャーロック・ホームズだっ!中は漫画なのに意表を突く児童文学全集的な装幀が為されているのと、見たこともない剛夕の上手いホームズに、早々にノックアウトされる。むぅぅと唇を噛みながら、二階三階と上がり、四階への階段に足をかけると、行く手には壁に沿った古本の山が見えて来た。主に付録漫画・貸本漫画たちであるが、テレビや映画や探偵&SF小説のコミカライズが多いのが特徴である。
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あぁ、乱歩ものもそこかしこに…とここで壁面を見上げると、今度は白い貸本小説がズラッと棚に収まっていた。城戸禮・宮下幻一郎・三橋一夫・竹森一男・鹿島孝二などだが、何十冊も白く並ぶ光景に、ただただあっけにとられてしまう…こんな異常な棚、古本屋さんでも見たことがない…。四階まで上がり、天井近くまで昭和三十年代大衆雑誌が積み上がり、本と荷物で屋上への階段が塞がれたゾーンを通過し、奥の書庫へ進む。足元には、東方社本がズラズラ並ぶ横溝正史棚…あ〜う、スゴい…でももう、こんなんじゃ驚かないぞ…。十二畳ほどの室内は、壁際は本棚で覆われているが、所々開いた窓前はちゃんと開けられている。フロアには背中合わせの棚が、一本縦に長く置かれている。壁際の本はそのほとんどがミステリーの原書である。そして通路の奥側は、所々に築かれた本タワーによって通行が困難な状況となっている。
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入口側の通路に入ると、奥には余り進めぬが、そこにはまたもや驚愕の光景が広がっていた。栗田信・宮野叢子・園田てる子・佐川恒彦・渡辺啓助・岡田鯱彦・日影丈吉・九鬼紫郎・鷲尾三郎・楠田匡介・山田風太郎・高木彬光・下村明などの稀覯貸本小説が、嘘みたいに大集合しているのである。作家によっては二十冊以上…あぁ、どうにかなってしまいそうだ。…なんだ、この渡辺啓助の「東京ゴリラ伝」って(森氏曰く、ゴリラが都会で暴れる話です)。
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※これは下村明棚…こんな嘘みたいな光景…。
隣のガラス戸棚には、鮎川哲也の春陽文庫激プレミア「海辺の悲劇」と「夜の疑惑」がしれっと並んでるし、島久作のお色気メチャメチャ本もたくさん並んでるじゃないか。さらには見たこともない聞いたことも貸本小説作家の本がドバリドバリ…原達也・三好彪吉・楢俊介・牧屋善三・江森達也・松浦達郎・西村忠美・近藤竜太郎…いったいこの人達は誰なんだ〜っ?読んでも面白いのか〜っ?それに室内のあらゆる場所に立つ、やわっとした付録本タワーや、カゴに入った付録本漫画束が、気になってしょうがないじゃないか。ぎゃお、窓際に付録本の「ラドンの誕生」がぁ〜…気絶しそう。この書庫には、四畳半のもうひとつの部屋が接続し、壁棚には装幀がみんな格好良いカーの原書がズラズラと並び、奥には創元推理文庫やポケミスなども収まっている。足元のタワーを見ると、少年探偵&冒険ものの仙花紙本がたくさん見つかり、熱血野球小説なども散見。きゃぁ、浅原六朗「怪船の恐怖」発見。知らない見たこともない本もたくさん、そこら中に蔓延っているので、とにかく興奮しっ放しなのである。だが、時々冷静な自分が、ふと戻って来る。何故なら、ここにあるのは、当然ながらすべて他人の本なのである。どうあがいても、人様のコレクションなのである。表紙にうっとりして、慌ててページをめくり、目次を注視し、巻末の広告などに目を血走らせても、ゆっくりと読むことも買うことも出来ないのだ。だから、ちょっとだけ妄想してしまう。こんな古本屋さんが、何処かにあってくれたら、最高なんだがなぁと。そしてそんな風にまで思えてしまう、森氏の蒐集の執念の成果に、心中で頭を垂れる。これだけの質でこれだけの本が。そしてその中にはたくさんの、評価も定かではない、見たこともない本も多々含まれていることに…。長い撮影がひとまず終わったところで、階下へと戻り、応接室にてしばし休憩する。だが、まだ取材は終わっていないのである。最後に玄関横から、ガレージなのに完成以来一度も車を収納したことのない空間へ案内される。パチパチっと電気が点くと、そこは縦長の二十畳ほどの堅牢な空間なのだが。右にはイナバの物置が三棟連なり、左壁には頑丈なスチール棚が連なっている。そこには、さらに目を疑うような光景が、広がっていた。棚にギッシリ並ぶのは、ジュニア探偵小説&ミステリの、揃いの列!もはや悪夢のような、コンプリートの列!
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ポプラ社・偕成社・光文社・講談社・東光出版社・講談社・大蔵出版・朝日ソノラマ・妙義出版・少国民文庫……もういいです。ごめんなさい。もう本当にスゴいです。あっ!大蔵出版の香山滋「科學と冒険」を発見(氏曰く「それは大蔵省が出版したシリーズですよ。恐らく香山が大蔵省にいたために動いた企画でしょう」とのことである)。ひぃっ、カバー付きだ。初めて見た…しかも中身は小説なんだ…てっきり科学学習書だと勘違いしていた…。
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棚前には、お仕事で使っている貸本系時代小説が積み上がっているが、ちょっと退かすと、奥でジュニア本がまだまだピカリと輝いている。本の山には、児童文学の良いところがたくさん含まれ、奥には貸本漫画の山が控えたりしている。物置には、明朗&大衆小説や横溝文庫・梶龍雄・古雑誌・絵物語・児童文学・漫画などが大量に詰まっている。おわっ、ボロボロだが大藪春彦の「火制地帯」が函付きで…。あぁ、分かってはいたのですが、やはりスゴかった。半端じゃなくスゴかった。まさに古本神の名に相応しい、探偵小説とミステリとコミカライズと貸本小説と貸本漫画と探偵漫画と原書に質超高く偏重した、日本指折りの書庫であった。たくさん貴重なものが見られて、叩きのめされると同時に、とても幸せでした。目と手にそれらの古本をジジジと可能な限り焼き付け、いつの日かこの手で何冊かは安値で手にしてやる!と、思わず小さな野望を燃やしてしまう。今日の記念にと、森氏から何冊かの本をいただくが、特に嬉しかったのは東邦のまんがホームランブックス「狼少年ケン 二本足の狼の巻/まんが・石川球太」と小学館昭和三十年中学生の友3月号付録「科学冒険まんが 怪星ガン/原作・海野十三 え・田中久」(補修アリ)であった。長時間に渡って貴重な書庫を見せていただき、お土産までありがとうございました!
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そして、もっと詳しく森氏の本棚を知りたければ、来月号の『本の雑誌』をお楽しみに。ちなみに私はまったく登場しないと思うので、悪しからず。
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2016年10月09日

10/9頭の中に出来た大阪

午前六時前に目が覚めると、外は驚くことに凄絶な赤…まるで世界の終りのような朝焼けが、静かな街を覆っていたのである。やがて赤は次第に薄くなり、雲が厚くなり、土砂降りの雨。三時間ほど続いた激しい雨音が途切れたのを見極め、外に出る。近くの「帰って来たJ-HOUSE」(2015/12/26参照)をのぞくが、昨日に続いて今日も収穫ナシ。そのまま足を高円寺に向け、『西部古書会館』の「杉並書友会」にたどり着く。まだ、激しい雨が上がったばかりだからか、情熱のない緩い空気が、お客の少ない会場を支配している。その雰囲気が伝染したように、こちらも弛緩しつつ冷静に各通路を行き来する。だがそんな状態とは裏腹に、わりと面白い本が、腕の中に飛び込んできてくれる。三省堂「教科摘用 学生の動物學」(函ナシ)出版社名ナシ「奄美大島昔話集/田畑英勝編」(昭和二十九年に奄美大島の名瀬市で出版。後年に再刊される元本である。おとぎ話・怪動物・妖怪・幽霊・怪談など、昭和二十二年当時に地元高校生がフィールドワークで聴き集めた話が盛りだくさん)角川文庫「人間腸詰/夢野久作」講談社「飛田ホテル/黒岩重吾」を計700円で購入する。意外な本との出会いは、心を弾ませ足を軽くさせるもの。そのまま高円寺駅に向かい、キオスクでキャラメルを買うと、なんと新開店セールということで三十円引きに。思わぬところで小さなラッキーにありつき、より心を軽くして、そのまま電車に乗って荻窪駅下車。雨仕様の「ささま書店」(2008/08/23参照)店頭に目を光らせ、平凡社新書「奇想科学の冒険/長山靖生」二見書房「がんばれベアーズ/リチャード・ウッドリー」を計210円で購入する。

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今日の一番嬉しい本は、黒岩重吾の“西成シリーズ”の一冊「飛田ホテル」(昭和三十六年第一刷)。元本を初めてみたが、カバーや見返しや本扉には、当時の飛田近辺のうらぶれた写真が使われ、実にイカした切ない造本となっている。寺島珠雄「釜ヶ崎 旅の宿りの長いまち」のカバー写真(2013/12/28参照)と同じ匂いが、プンプン漂ってくるぞ。最近このような、大阪を舞台にした小説を読むのが、楽しくてたまらない。何故なら、長らく行ってきた関西の取材により、頭の中に自分なりの大阪の地図が構築され、それが小説の舞台を、かなりリアルに補強してくれるようになったからである。従来の、ただ己の脳内にだけあった想像中心の都市や街ががらっと刷新され、他人と情報を共有出来るほどの親しみある情景として、瞬時に浮かび上がってくるのである。もちろん神戸や京都が舞台の本も同様な感覚を味わえ、知識として知っているだけではなく、リアルに見てその場所を歩いてきた経験が、こんなにも物語に力を与え面白くしてくれるのかと、今更ながら感心しているのだ。これも一度読んだ話ではあるが、きっと今は違う感覚で読み込め、のめり込めるはずだ。さぁ、そうと分かっていたら、早く帰ってページの中に飛び込むことにするか。
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2016年10月08日

10/8神奈川・反町 10月古本まつり

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先日の苦汁をなめまくった「ヤミ市一箱古本市」(2016/09/17参照)では、「雲雀洞」さん(2016/07/22参照)が、せっせと本を売りつつも神奈川古書組合員として活動しており、私も青くなっていたところに、一枚のチラシを渡されていた。それは十月の古書会館(2011/09/19参照)の古本まつりで、初の試みに近い200均本販売を行うというものであった。神奈川にちょっとした新たな動きが!と喜びつつ、本日土砂降りの雨が上がったのを見極めて、家を傘なしで飛び出す。深い地下から上がって、『国道1号』から裏通りの『反町公園』沿いに出ると、公園の桜並木が、秋らしく黄色に色づき始めていた。いつも通り薄暗い会館一階のガレージには、大きな平台が二重に設えられ、そこに200均本が、背を上に見せてズラズラと並べられていた。遠目に左奥の帳場にいた「文雅新泉堂」さんと会釈を交わし、「雲雀洞」さんにも発見され言葉を交わす。肝心の200均群は、古い新書サイズ本が充実しており、さらにオカルト・横浜・歴史・文庫&古い文庫・絶版コミック・民俗学を目立たせながら、なかなかの嬉しい質の高さを見せている。何だかライバルも少ないし、これはいいぞ!と平台前でゆっくり蟹移動しながら、好みの本を吟味し続ける。するとたちまち腕の中には七冊の本が抱かれることになった。満足して平台ゾーンを通過して奥に移ると、縦に並ぶ四本の平台付き通路棚は、200均ではない通常値の古本まつりゾーン。そこでも一冊を手にして、帳場にて三人掛かりで精算していただく。大阪屋號書店「東海道中膝栗毛論考/三田村玄龍編」(三田村鳶魚を中心に、八人ほどのメンバーで「東海道中膝栗毛」について座談会風に議論を重ねる妙な本)学研高校生文庫「ステート・フェア/フィリップ・D・ストング作 常磐新平・文」芸文社アルファブックス「あり得ない話がある話/乾信一郎」自費出版「富士塚探訪/福井光治」(八十歳過ぎの老人が、突然火のついたように東京と神奈川の富士塚をフィールドワークしまくる、執念の三年間の記録をまとめたもの)FERNAND HAZAN「DADA 1915-1923」大日本雄辯會講談社「われ等若し戦はば/平田晋策」(函ナシだが、200円でなかなかの美本。そして、前の見返しには伝説のお店『本郷白山上 南天堂書房』のラベルがっ!だから、どひゃっほうと言わせてください!)宝石社「宝石臨時増刊 昭和36年度新人25人集」(蒼社廉三「屍衛兵」小林泰彦「夜はつぶやく」西村京太郎「黒の記憶」広瀬正「殺そうとした」などが目を惹くが、一番のトピックは灰谷健次郎「神々の悪事」…推理小説、書いてたんだ。急ぎ読み進めてみると、故郷神戸を舞台にした、ジメドロした家庭内事件を描いたものであった)を計1700円で購入する。なんだか反町で良質な安売台を見られたのは、新鮮な体験だったので、どうぞこれからもちょいちょいこの企画を実行して下さい。喜んで買いに来ます!この市は明日10/9も開催される。
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かなり嬉しい南天堂ラベル。噫、松岡虎王麿!
posted by tokusan at 18:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 関東 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月06日

10/6いきなり乱歩と朔太郎の手紙を見に行く

秋と夏が組んず解ぐれつしているような日に、突然体内に湧き上がった旅心に促され、湘南新宿ラインで前橋へと向かう。特別快速だったので、合計二時間ほどの短い乗車時間。ゆっくりと走る高架の上で、長い前橋刑務所のレンガ塀を南側の車窓に認めたと思ったら、列車はホームにするりと滑り込んだ。北口に出ると、東京より気温が低く、恐ろしいほどの風が街中に吹き荒れている。だが日射しは、肌を焦がすように強い。それでも雲が散り散りに流れる青空の下をテクテク歩き、低い家並みとビル並みの地方都市を、北に進む。柳並木が続く水量の豊富な広瀬川沿いを歩き続けると、やがて萩原朔太郎像が立つ『前橋文学館』に到着する。現在ここで開かれている「パノラマ ジオラマ グロテスク -江戸川乱歩と萩原朔太郎」展が、朝起きたらどうしても観たくなり、来てしまったのである。ちょっと未来派な朔太郎像に挨拶をして、半円形の自動ドアから館内に滑り込む。
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右手の受付でチケットを購入し、現展示のA4二つ折り二色刷りパンフレットや、プレゼントの萩原朔太郎ハガキセットを受け取り、二階の展示室に向かう。まずは手前の『朔太郎展示室』で、センサーで流れ始める悲しいマンドリンの調べに心の中でハミングしながら、生原稿や遺品や古本群に興奮。続いての『企画展示室』では、朔太郎と乱歩の間に頻繁に交わされた、書簡群に大興奮。そしてそれ以上に興奮したのが(つまりは人っ子一人以内展示室で、興奮しっ放しだったのである…)、改造社版の乱歩「孤島の鬼」(美本!)と、展示室の最奥に飾られた、「新青年」編集者としての渡辺温から朔太郎に送られた、原稿依頼の手紙であった。以前掲載した名作「死なない蛸」のような詩を、という依頼が、東京博文館の新品同様の便箋に、簡素にしたためられているのだ。およそ九十年前の青いインクのあまりの生々しさに、しばらく釘付けとなってしまう。また「殺人事件(九月の探偵)」の生原稿が見られたのも、感激であった。そして一番笑ってしまったのが、乱歩の孫・平井憲太郎と、朔太郎の孫・萩原朔美が、それぞれ自分の祖父に扮して、乱歩の蔵の中で撮った写真であった。ちょっとした悪夢でも見ているような、本物っぽさが実に素晴らしい。とても良いアイデアだなと、大いに感心する。ついでに三階で行われている展示『心の郷愁を撮りたい-100年間の定点観測-朔太郎・朔美写真展』を見ると、朔太郎が写真として残した百年前の風景を、孫の朔美が現代で場所を同定し、同じ場所を同じアングルで撮影した写真がズラリと飾られていた。この同定っぷりが半端ではなく、ほぼ寸分の狂いも無いことに、思わず尊敬の念を覚えてしまう。それにしても、孫どころかひ孫までもが、写真館で撮られた朔太郎夫婦の写真(朔太郎は椅子に座ってギターを爪弾き、その膝元に妹が寄り添う)を、完璧コスプレして真似しているのが、何だかとても恐ろしい。もはや狂気と言うか、まるで朔太郎の呪いとでも言えばいいのか、血でつながれた情念みたいなものが、写真からにじみ出してしまっている…。『パノラマ ジオラマ グロテスク』は12/18まで。『心の郷愁を撮りたい』は10/30までである。

それから川の流れる表に出て、風の吹き抜ける人影のない商店街アーケードを伝って、「煥乎堂 ふるほん書店」(2011/10/08参照)に古本を買いに行く。こちらも店員さん以外誰もいない広いフロアをじっくり歩き、サンリオSF文庫「口に出せない習慣、奇妙な行為/ドナルド・バーセルミ」朝日新聞社「銀座百店座談集 おしゃべりえっせい1」講談社「心を打った男たち/日本経済新聞婦人家庭部編」二見書房「逃げろツチノコ/山本素石」と、なかなか粒の揃った感じを計600円で購入する。さて、旅心を満足させて、東京に戻るとするか。歩きながら、とても青のキレイな北関東の空を見上げると、先ほど見たばかりの渡辺温の青い丸っこい文字が、さらさらと書きなぐるように頭の中を流れ落ちて行く…。
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駅のホームで撮った展示のパンフと、嬉しい収穫「逃げろツチノコ」。カバー裏にはツチノコの詳細な原色生態図入りの懸賞金付き指名手配書が刷られているのだ。
posted by tokusan at 23:02| Comment(2) | TrackBack(0) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする