2017年03月30日

3/30「浩仁堂」で科学絵本に目尻を下げる。

道を歩いていると、擦れ違った老人が引き返して来て「突然すみません。不躾ですみません。その頭で結んであるのは、髪の毛ですか?」(私は長過ぎる髪を常日頃から頭の上に丸く結び上げているのである)と突然聞かれて面食らうが、素直に「はい」と答えると「では相当長いんですな。いや、髪を大事にするのは良いことです。昔の人も、髪を大事にしたもんです。いやいや、ありがとう。これからも切らずに大事にして下さい」と笑いながら去って行った…なんだ、この昔話のようなひと時は…そんなことがありながら、今日は夕方の武蔵境に流れ着く。昔話の余韻を引き摺りつつ、午後六時前の「浩仁堂」(2011/02/15参照)。ビル越しの薄く儚い夕陽を、店頭の絵本ラックが浴びている。
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今日は果たして100円で何が買えるのか、期待しながら絵本の列をギロリと眺める。新刊系に対抗するように、大好きな絶版絵本も個性豊かに自己主張している。五冊ほど欲しいものが見つかるが、セコく三冊に絞って店内へ。小さな店内の棚と足元の箱を一巡し、さらに古書を二冊。福音館書店「くうきはどこにも/ブランリー文・ガルスター画」「うみのがくたい/大塚勇三さく・丸木俊え」「月刊たくさんのふしぎ79号 ノラネコの研究/伊澤雅子 文・平出衛 絵」矢貴書店「愛染かつら/川口松太郎」警醒社書店「星座の親しみ/山本一清」(函ナシ。大正十五年五版。見返し裏に鉛筆で『昭和二年九月上旬、城志堂ニテ買フ』と記述あり)を計500円で購入する。帰りの中央線の中でシートに腰を下ろし、五十歳のオッサンが絵本のページを次々紐解いて行く。「うみのがくたい」は、おはなしも絵も珠玉の名品。船乗りの楽隊に感化され、ついに楽器を口にして演奏する魚類の未知のシンフォニーシーンは、紙面から音が湧き上がって来る臨場感!そして「くうきはどこにも」は、独特の六十年代センスを発揮する児童用翻訳科学絵本である。イラスト・色彩・デザインがとにかくスタイリッシュ!帯の見返しを見ると、シリーズは他に二十二冊出ており、中でも「地球はまるい」「たねのりょこう」「ダーウィンの世界一周」「つきのせかい」などが特に気になってしまう。
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2017年03月29日

3/29「比良木屋」で古本を買って最後の挨拶を。

「フォニャルフ」補充入替用の本を携え、夕方の陽光が眩しい西荻窪へ。そのまま「盛林堂書房」(2012/01/06参照)に向かえば、ズッシリ重い古本からすぐさま解放されるのだが、バッグを提げる腕に力を込めたまま、北口東方にテクテク歩を進める。やがてビル一階ミニミニ商店街の古本屋さん「古書 比良木屋」(2008/09/12参照)にたどり着く。三月一杯でお店を閉めてネット店に移行するため、現在閉店セール中なのである。店頭には古本屋さんにあるまじき派手な黄色の『大売出し』幟が翻り、扉には『全品2割引セール』が『全品5割引セール』に書き換えられた貼紙が、哀しく白く輝いている。
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店頭に溢れ出たボロい古書を、ついつい慈しんでしまう。大正12年とある、本革の手帖はキリスト教信者の使っていたもので、ページは敬虔な事象や事柄の記録にあふれている。文庫も改造文庫や戦前新潮文庫が出されているので、かなり夢中になってしまう。そして入口横の本棚から、とても喜ぶべき大判の一冊を掴み取り、本を詰めたバッグを扉横に放置し、重い扉をスライドさせて店内へ。即座に奥でダウンコートを着込んだ店主が、明るく「いらっしゃいませ」と声をかけてくれる。ぺこりと会釈して、直ぐ横の漫画カルチャー棚に熱い視線を注ぎ、そのままの熱さを維持しつつ、向かいの文学棚にも集中する。それにしても、店内はこんなに魔窟の如き本の山だったろうか。左の詩集や音楽棚は深く健在。その棚には『値段のない本は千円』の貼紙あり。時々山や棚から本を取り落とし、奥の店主に謝罪しながら、最終的に右側通路の古い文庫棚に食らいついて一冊を抜き取る。春陽堂少年文庫「家庭用兒童劇/坪内逍遥」THE JUNIOR LITERARY GUILD and THE JOHN DAY COMPANY「SKYSCRAPER」を計1100円で購入し、あっけなくお店に別れを告げる。十七年間、西荻窪で古本を売って下さり、ありがとうございました。そのうちの九年間で、時々店頭を眺めて、時々安い本を買うたいしたことないお客でありましたが、それでも感謝に堪えません。今中央線沿線で、古本屋さん集合地帯として一番ホットとも言える西荻窪から、ひとつの古本屋さんの灯が消えてしまうとは…。だがそんな悲しみをグッと飲み込めるほど嬉しかった収穫は、店頭棚から100円で買った大判の洋書「SKYSCRAPER」。1934年出版の、ニューヨーク『エンパイア・ステート・ビル』の建設を克明に追った写真集なのである。しかもこの本は見返しに貼られたラベルから推察すると、1938年の9月に、ミセス・カーティスから日本のアメリカンスクールに送られたものらしい。よくもまぁ、こんな本が遥々アメリカから昭和十三年に日本に送られた後、二十一世紀の西荻窪にたどり着いていたものである…。
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お店を出て「盛林堂書房」に向かい、「フォニャルフ」棚をどうにか三分の一ほど入れ替える。少し目新しくなりましたので、お近くにお寄りの際は、ぜひとも覗きに来ていただければ。帳場前ではでは北原尚彦氏や横田順彌氏に謁見しつつ、店主・小野氏と色々打ち合わせる。
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2017年03月28日

3/28原稿の合間の空振りを年季の入った回転ラックに癒してもらう

本日は「中央線古本屋地図(仮)」のレイアウトではなく、原稿書きに腰を据えて挑みかかる。一気にドバッと書き上げたいところだが、集中力が途中で途切れ、心が古本屋を欲してしまう。と言うわけで午後に発作的に外出し、前回空振りした大崎広小路の古本を売る電機製品小工場(2017/03/01参照)を見に行くことにする。今回は東急池上線には乗らずに、五反田駅から歩いて目指すことにする。良く考えれば、わざわざ電車に乗らずとも良いほどの短い距離なのだ。暗緑色の目黒川を越えながら、池上線の高架が普通より高いことに目を瞠る。あっという間に件の工場の前に到着するが、あっけなく空振りしてしまう。今日も扉は閉じられ、ガラス戸の向こうに本棚を見せているだけなのだ…これは、もしかしたら案内を乞うてから、買わなければならないのだろうか。それとも古本販売は、すでに辞めてしまっているのだろうか。いつまでも坂の途中で考えていてもしょうがないので、トボトボ歩いて五反田駅へ戻る。そのまま山手線外回りに乗って、渋谷駅で途中下車。宮益坂に足を掛け、ついに『宮益坂ビルディング』の巨体が姿を消したことを改めて寂しく感じ、坂の上の「中村書店」(2008/07/24参照)。空振りの虚しさとビルが消えた悲しさを紛らわすために、今、どさくさに紛れて告白しよう。実は俺は、このお店の金属製回転ラックを、心から愛しているのだ。思いっきり人様の物なのだが、愛して止まないのだ。
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年季が入って傷んで歪み、アルミニウム合金と思われる表面には白サビさえ浮かんでいる。軽やかなフォルムだが、装飾性など皆無なシンプル過ぎる姿形。機能性重視のはずなのに、ラック部分全面中心に太いフレームパイプが縦に走る残念さ。中心のパイプを軸にして、上下それぞれ二段ずつで四面に分かれたラックは、重心がすでに不安定になりながらも、キィキィと細かな軋みを立て、わりとスムーズに回ってくれるのだ。このラックから100均文庫を買ったことは一度もないが、いつでも店先で、もしくは店内でしっかりと回し、数多の古本を搭載して、長い年月を回転しながら飛び越えて来たその偉大さを味わうことに、腐心してしまうのだ。今日も上段をくるくる回し、見覚えのある文庫で一周を判断し、続いてしゃがんで下段も一回し。まるで、公園にあった『回転ジャングルジム』を、巨人になって手の中で回しているようだ。人間は何故こうも、回転する物が好きなのだろう…。それから隣の100均台と箱をゆっくりと漁るのが、いつもの流れなのである。俺だけかと思ったら、次にラックの前に立ったオジさんも、上下共しっかりクルクル回している。やはり楽しいのだろう。世の中に回転ラックは数あれど、俺にとってはこのラックが、この世で一番の物なのだ。と、そこまで思考を暴走させ満足したところで、中央公論社「忘れられた日本〈沖縄文化論〉/岡本太郎」(裸本)を100円で購入する。見返しに『沖縄観光協會之印』があるのが感慨深い。昭和三十六年の初版なので、復帰前の沖縄にあった本なのだろう。それを東京で手に入れる、この不思議さ!そんな風に色々満足した後、家に戻って原稿を無事に書き上げる。これが終わったなら、さぁ、再びレイアウトだ。
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2017年03月27日

3/27まだまだ古本準備中。

雨上がりの夕方に流れ着いたのは永福町である。七色の職種に新たに『プリントハウス』というのが加わっており、もう完全に古本屋の原型を留めていない「ドエル書房」(2015/07/16参照)をバスの車窓に眺め、高円寺駅まで移動する。昨日来たばかりなのだが、永福町から杉並区を家の近くまで縦に切り裂いてくれるのだ。一駅離れているが致し方ない…。そのまま西側の高架下に吸い込まれ、「藍書店」(2014/01/14参照)の外壁棚と対峙する。
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思えば、この外にある壁棚とは不思議なもので、本来は商品を内蔵する店舗の一部なのだが、店舗空間を拡張するために裏返り、まるでゴシック建築のように内部が露出してしまっているのだ。店内に入ればそこは、古本と向かい合いつつも、店主の視線や存在が加味される、独特な緊張感の漂う空間である。だがこの外壁棚(外に出されている棚やワゴンもそうだ)は、これから始まる店主との関係を心の中で準備し意識しながらも、まだ今だけは、ただただ古本とだけ向き合える開放感に包まれた、淡い境界なのである。開放感があるということは、店主の視線が届き難いということである(時に監視カメラというテクノロジーを通して、視線を感じることはままあるが)。だからリリースされたように境界に大量の本が並んでいると、開放感とともにお得感が倍増するのであろう。とりとめもなくそんなことを思考しながら、二冊を掴んで店内へ。中央通路の文学棚を観測した後、女性店員さんに精算していただく。有斐閣「物語の迷宮 ミステリーの詩学/山路龍夫・松島征・原田邦夫」新潮社「絵のなかの散歩/洲之内徹」を計500円で購入する。

夜道を歩いて家まで帰り、夕飯を食べる。その後は腹ごなしに、いつか見た光景のような古本の準備に取りかかる。近日中に「フォニャルフ」棚を大幅入替するためと、月末までに(もう月末だ!)大阪「梅田蔦屋書店」のフェア用追加本を大量に準備しなければならないのである。必死に山を掘り起こしてソファーに積み上げて行くが、道はまだまだ半ば…今年はもしかしたら、古本を売って売って売りまくる年なのだろうか…。
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2017年03月26日

3/26三庫文色!

寒く冷たい雨降りの日曜日なので、終日机に齧りついて仕事を進めるのが今日の主な予定。だが、古本を買って心の安定を図っておきたいので、細かい雨に傘を差しかけ、ヒタヒタ濡れた路面を踏み締め踏み締め、午前十時二十分に高円寺の「西部古書会館」へ。
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昨日今日と開催されているのは「中央線古書展」(2014/01/25参照)である。ガレージに古本修羅の影はなく、静かに古本が集まり、雨垂れの音と古本屋さんの話し声だけが聞こえてくる。たったひとりで、白い息を吐きながら、畳んだ傘を杖として、足元に並ぶ古本を眺めて行く。途中「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)さんと挨拶を交わし、続いて館内へ。こちらには修羅影がチラホラ。そして、二日目ということと、雨が腰を重くしていたのか、時間の経過とともに館内は通常の賑わいを取り戻し始める。だがそれでも各棚を、じっくり時間を掛けてみることが出来たので、いつもより長時間滞留してしまう。選びに選んだ計六冊を1600円で購入。春陽堂「科學探偵/小酒井不木」(函ナシ)武侠社「犯罪科学 1931 五月號」西荻書店三色文庫「野球の科学(上)ピッチングの手引/三石巖」日本出版協同株式會社「よしわら/大河内昌子編」書肆ユリイカ「鋼鉄の足 滝口雅子詩集」(カバーナシ)文書堂「最新手工 趣味の厚紙建築/岡山秀吉」(函ナシ)。嬉しかったのは「趣味の厚紙建築」で、大正十五年出版の、タイトル通り厚紙で簡易住宅・小學校假校舎(何故“假”なのだろうか。その理由は本文にも書かれてはいない)・食料雑貨店・三階建大商店・或る學者の住宅・某実業家の別荘・消防署・旅館兼洋食店・停車場・瓦斯製造所などなどの模型の作り方が、展開図と作例と完成図で丁寧に解説されているのだ。住宅に付属する犬小舎なんか、可愛くてもう!元々は小学校の教材として作られたものらしいが、その細工はなかなか精緻で大掛かりである。もう一冊の収穫は、西荻窪にあった出版社「西荻書店」が出していた子ども用の文庫・三色文庫である。
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昭和二十六年の出版で、住所が西荻窪2-69とあるから、北口を出てすぐの辺りにあったのだろうか。レーベル名通り、赤・青・スミの三色(もしかしたらスミは赤と青の掛け合わせかもしれないが)で刷られた、恩地孝四郎デザインの表紙が愛らしい。だが、巻末の広告を見ると、何だかとんでもないことが起こっていた!
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ああっ!すごい誤植だ。間違っていないようで盛大に間違っていて、もはや芸術性すら感じてしまう…。
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2017年03月25日

3/25「第19回チャリティ古本市」と「古書 むしくい堂」はプレプレオープン中!

早起きして西武新宿線に乗り込み、拝島線→国分寺線と乗り換え、青梅街道駅で下車。今日明日と激安「チャリティ古本市」(2011/07/10参照)が開かれる『小平中央図書館』に午前九時半に到着し、会場入口で整理券を受け取ると、自分ではなかなか頑張った感のある、36番であった。ロビー食堂で野菜ジュースを飲みながら英気を養い、市への闘志を徐々に高めて行く。
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午前九時五十分に整列開始。ほどなくして岡崎武志氏も姿を見せ、ちょうど100番の整理券を見せながら「何かもらえるんちゃうかなぁ〜」と笑いながら、明るい中庭を囲んで半周した、列の最後尾へ姿を消した。午前九時五十八分、「そろそろ始まります。みなさん、心の準備をお願いします」とのボランティアスタッフのアナウンスに、忍び笑いがさざ波のように列に広がる。だが開始時間を迎えると、そこは瞬く間に熾烈な古本戦場と化し、老いも若きも男も女も古本を抱えて入り乱れ、場内が酸欠気味になるほどの、いつ果てるともしれない古本バトルロイヤルが展開してしまう。少しでも気を緩ませたら、何も掴めないぞ!と己に言い聞かせつつ、文庫島→単行本島→児童文学&絵本島→古書列→新書列を二周半。小粒な収穫である二十八冊を抱え込み、長い精算の列についた後、計1080円で購入する。一番の掘出し物は情けないことに、田中角栄の「日本列島改造論」であった…。這々の体で会場から脱出し、岡崎武志氏と市仲間の表具屋さんと合流。ロビー食堂で歓談しながら、「中央線古本屋地図(仮)」の大詰め打ち合わせをする。段々形を成して来ましたが、予想以上に面白い本になりそうです。引き続き編集制作作業に勤しみますので、四月後半の発売を、どうぞ楽しみにしていて下さい!

『新潮講座』に向かう岡崎氏と別れ、重い古本を両手に提げて駅に向かい国分寺へ。ホームの立食い蕎麦屋で腹ごしらえを済ませ、続いて八王子へと向かう。北口に出て、モザイクタイルが敷き詰められた『西放射線ユーロード』を北西に踏破し、東に鋭角に折れ込んで『甲州街道』を進むと、ほどなくして粗いレンガで化粧されたマンション一階に、本日オープンしたての古本屋さんが姿を現した。真新しく眩しい真っ赤なテント日除けの下には三本の100均棚が並び、文庫・新書・単行本を質高く収めている。右には開店祝いの立花が並んでおり、おっ!ひとつは「音羽館」さん(2009/06/04参照)からじゃないか!熱く義理堅いなぁ、と感じ入る。縦に広い店内は木材を基調にしており、現在東京の新興古本屋さんの内装&什器を多く手掛ける中村敦夫氏の仕事であることが、容易に見て取れる。そこに奥の帳場からおずおずと現れたのは、噺家の雰囲気を常に纏う「むしくい堂」さんである。何故かとても恐縮の態…その理由は、寝ずに本を運んで値付をし、棚に並べても並べても棚は一向に埋まらない状況のまま、ついに開店の日を迎えてしまったことを、大真面目に悔やんでいたのである。いや、もう開店したからには、そこはもう目をつぶりましょう。後はじっくり粘り強く棚を造り埋めて行けば、どうとでもなるはずなのだ。何はともあれ走り出したことが、この際とても重要なのである。その証拠に、明らかに地元のお客さんが物珍しさからチラホラと飛び込み、ちゃんと本を購入して行く。すでに「むしくい堂」さんは、この地でここに住む人たちと、縁を結び始めたのである。後はいかにその人たちに再び足を運んでもらい、また本を買ってもらえるかということであろう。ファイト、「むしくい堂」!現在プレプレオープンの状況は、前半右壁に文庫や新書が集まり、左に絵本・生活・暮らし、中央にアートや夏葉社&本関連に岡崎武志コーナー、そして奥に日本文学&海外文学棚がある。だがこれらは、今後も本が増えることによって、大いに変化する可能性あり。ただ現状で芯が太く厚く堂々存在しているのは、左端通路の鉄道と切手、それに音楽関連(ソフトだけではなく楽器についても集められている)である。ここには強い意志が感じられ、今後お店の柱となるであろう雰囲気が、すでに漂っている。とまぁ、そんなプレプレオープン状態なので、詳しいツアーレポートは後日に譲ることにする。「むしくい堂」さんは「後一ヶ月位でもっとちゃんとしたい!」と血を吐くような叫びでお店の完成を宣言。恐らくその頃には「八王子古本まつり」(2011/05/02参照)が『西放射線ユーロード』で開かれるはずなので、グッドなタイミングであると言えよう。晶文社「踊る地平線/室謙二」朝日新聞社「常紋トンネル/小池喜孝」を計900円で購入する。
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写真は祝いの立花がある店頭と、その影に顔を隠し恥じ入る店主の姿…再びファイト!「むしくい堂」!

帰りに西荻窪で途中下車し、「盛林堂書房」で表紙デザインを担当した盛林堂ミステリアス文庫最新刊「怪星の秘密/森下雨村」(ベタベタでイカした喜国雅彦氏のイラストが目印!)を受け取り、色々打ち合わせる。みなさま、4/7(金)の開催の、「怪書探訪」著者・古書山たかし×「盛林堂書房」小野氏×古本屋ツアー・イン・ジャパンの、三つ巴の三竦み古本トークも、何とぞよろしくお願いいたします!

「ある怪書好き会社員の軌跡」 トークイベントvol.1
■『怪書探訪』著者 古書山たかしさん、古本屋ツアーインジャパンの小山力也さん、盛林堂書房店主 小野純一さんによるトークイベントを開催!
http://www.kosho.ne.jp/news/news_info170213.html
■日時:2017年4月7日(金)開場18:00 開始18:30〜20:00
■場所:東京古書会館 7階会議室
〒101-0052 東京都千代田区神田小川町3丁目 東京古書会館
■入場料1000円(現金のみ) 事前申込 先着100名様
■3月6日(月) 午前10時 予約開始! http://www.kosho.ne.jp/event/2017/s/page2.html

あの天下の奇書「醗酵人間」が欲しいあまり、コピーをを手作り製本してしまった伝説の男が語る古本愛!…まぁ恐らく私は、古書山氏と小野氏の濃厚な話には、何光年も置いてけぼりを食らうと思うので、暴走する二人を御する司会的役目に徹する覚悟で臨みます。楽しそうだけど、疲れそうだなぁ…また、帯の話とか、カバー異装版の話とか、ず〜っとするのかなぁ…。トークと同時に、古書山氏の貴重なコレクションも展示されていますので、どうかみなさま、展示ケースに涎を垂らしにおいで下さいませ!
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2017年03月23日

3/23「死人の掌」の到着を歓迎する。

色々終えて流れ着いたのは、三鷹『禅林寺』の塀の前。この長く白い塀の向こうの何処かに、太宰治が眠っているのかと想像しつつも、足は自然と『中央通り』へ向かい、夕方の「古書上々堂」(2008/07/17参照)に滑り込む。100・300・500均一本とネット管理本(ビニールに包まれ値はほぼ書かれていないが販売中である)と「岡崎武志堂」の三ゾーンに大きく分かれる静かな店内を、静かに静かにうろつき回る。日本エディタースクール出版部「書店ほどたのしい商売はない/上村卓夫」(「書原」社長の本!)桃源社「東洋武侠団/押川春浪」を計600円で購入する。
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阿佐ヶ谷に帰り着き「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)に立ち寄り、店頭では購入&読了メモが扉に書かれているため103円のフィルムアート社「天使のまなざし ヴィム・ヴェンダース映画を語る」を。店内ではこちらは裏表紙裏に日付け記入アリだが激安とも言える講談社青い鳥文庫「消えたおじさん/仁木悦子」を309円で購入する。

気持ち良く古本を買って帰宅すると、二冊の本が届いている。一冊は「散歩の達人」4月号『大特集:東京ディープ案内』である。屋敷直子さんと楽しく対談しておりますので、書店でお見かけの際はぜひ手に取っていただければ。そしてもう一冊は、待ちに待ったヤフオク落札本!今古堂分店「探偵文庫 死人の掌/丸亭素人譯」(明治三十二年六版)である。明治探偵小説本にしては安値の三千円スタートだったのだが、入札すると結局ライバルは一人も現れず、そのままラッキーにも落札してしまったのである。そして出品者と取引連絡を取ってみると、何とお相手は旧知の「聖智文庫」さん(2013/05/16参照)であった…。うわっ!と思い、早速こちらの正体を明かし、恐縮しつつ取引を進めると、昨日携帯に店主・有馬氏から「発送したよ」の連絡をわざわざいただきつつ、「なんであれが三千円なんだよ〜」とボヤかれ「表紙に“こんちくしょう”って書いといたから」と毒舌を吐かれてしまう。いや、もう本当にありがとうございます!憧れのひとつである丸亭素人の探偵小説を読める日を迎えることが出来たのは、紛うことなき「聖智文庫」のおかげです!…というようなことがあり、本日夕方、「死人の掌」到着を大歓迎しているわけである。本はザラ紙A5変型の、まるで漫画雑誌のような分厚さで、私にとっては初めて見るタイプの明治本である。それにしてもこの色刷り鮮やかな表紙が素敵!『探偵文庫』の文字も素敵!下に小さく描かれた大変な事件の様子も素敵!巻末の今古堂(恐らく「コンコ堂」なのである!)広告を見ると、他に九冊の『探偵文庫』が出ている。くぅ、読みたいなぁ〜手に入れたいなぁ〜どこかで三千円で売ってないかなぁ〜………。
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2017年03月22日

3/22深く静かにデザイン潜航中…

早起きして、必死に「中央線古本屋地図(仮)」のデザイン作業を進める。これをちゃんと完遂しなければ、本当の春はやって来ないのだ!とばかりに、家に閉じこもって地味な作業をチクチクと。お昼前にちょっと気晴らしに、荻窪までタッタカ歩き、開いたばかりの「ささま書店」(2008/08/23参照)店頭を楽しむ。手にしたのは一冊だけだったが、実はこれが満足に値する一冊なのであった。サッポロビール株式会社「サッポロ納涼特集号」(昭和四十三年八月刊)を105円で購入する。名前の通り、サッポロビールのPR小冊子である。五十人ほどのビールやお酒にまつわるエッセイを掲載しているが、驚くほど文学度が高いのである。しかも、城昌幸・鹿島孝二・城戸禮・萩原秀夫・大林清・宮本幹也などが、堂々と紛れ込んでいるのだ。特に城の「哀れ」は、かつての恋人を巡るエッセイとも怪談ともつかぬ佳品である。編集後記にも和服でビヤホールに出入りする城のエピソードが登場している。うむ、この表紙だけ見ると、なんだか札幌の郷土冊子みたいだが、騙されずに中を開いてみて、本当に良かった。
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帰りは北口に出て、ビルの間から小さな『教会通り』をたどる。かつてこの通りには何軒かの古本屋さんがあったはずなのだが、残念ながら私はすべて未見なのである。頭の中に作った地図を立ち上げ、あったはずの小さなお店たちを幻視しながらの、帰り道。家に戻って再びデザイン作業に従事。そして夕方に再び気晴らしに外出。高円寺までタッタカ歩き、「越後屋書店」(2009/05/16参照)で草思社「ビートルズ/ハンター・デヴィス」を100円で購入する。この『あづま通り』でも、出現しては消えて行った、数々のお店たちを幻視してしまう。なんだ、中央線沿線は、古本屋さんの亡霊だらけじゃないか。だから今、岡崎武志氏と、お店の魂を慰め記憶に留めるために、本を作っているのではないだろうか。では、早く帰って作業の続きに取りかかるとするか。
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2017年03月20日

3/20東京・曙橋 古本 おふね舎

昨日は「みちくさ市」で楽しい古本販売の一日を過ごし、喜びの五十二冊を売り上げる。お買い上げのみなさま、フリーペーパーを貰って下さったみなさま、わめぞのみなさま、いつもながらにありがとうございました!そして本日、久しぶりに少し遠出をしようと思い、そういえば下妻の名店「ピノキオ」(2009/11/15参照)が閉店間近なはずなので、ぜひとも古本を買いに行かなければ!と早起きして前のめりに意気込むが、なんと閉店セールは3/15で終わっていた…ぐむぅ、不覚&無念…。そこで方針を転換し、明日3/21に閉店を迎えてしまう南武線・中野島の「ブックセンターいとう 中野島店」(2013/12/12参照)を見に行くことにする。駅から車通りは多いが、長閑な春の『中野島商店街』を南にゆるゆる下って、交差点際の黄色とオレンジのお店にたどり着く。閉店セールは『中古全品30オフ』である。扉を潜り、即座に二階へ上がり、最初に右奥の古書コーナーへ向かう。お客さんはかなり多く、店員さんと惜別の言葉を熱く交わす老夫婦がいるほどである。古書を丹念に見終わった後は、は文庫ゾーン→単行本ゾーンと巡り、二階階段脇のレジで、書肆山田「これからのねじめ民芸店ヒント/ねじめ正一」新春社「娯楽雑誌ユーモア 春季特別號 昭和二十四年四月」講談社「日本SF・原点への招待U」草友出版「反核でゼッケン/金子徳好」を三割引の計1449円で購入する。この最後の「反核でゼッケン」は、不朽の迷著「ゼッケン八年」(ベトナム戦争反戦に、日常生活でゼッケンを、なし崩しに着け続けることで挑むサラリーマンの熱いノンフィクション)の続編とも言える、八年後に反核運動のために禁断のゼッケンを装着することを決意した、再び立ち上がる男の物語である。…こんな続編的単行本が存在していたとは…(「ゼッケン八年」について詳しく取り上げた洋泉社MOOK「この本は怪しい」にも、この本については言及されていない)。ちょっと読み始めたら、冒頭は奥さんにゼッケンの縫製をなんとか受け入れて欲しいお願いの手紙から始まり、その真面目で心を打つ目的意識からずれたところに、期せずして生まれるユーモアが、相変わらず最高なのである。日常生活(つまり通勤や会社での就業中にもである)でのゼッケン装着に関する心の機微と葛藤を綴らせたら、この人の右に出る者はいない、無類の面白さなのである。あぁ、こんな本を最後に手渡してくれた「ブックセンターいとう 中野島店」に感謝いたします!
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駅に戻って南武線から小田急線に乗り継ぎ新宿へ。南口の大階段を下りて、何故か満開の桜の樹の下を通り抜け、かつての猥雑な南口ヘアピン坂道の残滓とも言える『食堂 長野屋』に腰を据え、カレーライスとビール小ビンで昼食とする。満腹した後は、人ごみを擦り抜け擦り抜け『靖国通り』まで出て、曙橋方面にプラプラと向かう…。駅からのルートは以下。ちょっと陰気な都営新宿線ホームから地上に出ると、大きな『靖国通り』。右に『あけぼのばし通り』の商店街アーチを見て、『住吉町交差点』を横切り、北側歩道を西進して行く。振り返れば、東京全域を監視しているような、巨大過ぎる防衛省のタワーがそそり立っている。その機械的視線を振り切るようにしてさらに西に歩き続ける。スーパー『丸正』創業者の胸像が建つ石造りの小広場前を通り過ぎ、やがて三本の杉が立つ三角形の『富久町遊び場』にたどり着くので、ここで一本北側の通りに目をやると、白い二階建て低層古ビルの端に、『古本』と書かれた縦長の白い暖簾が、風に揺れているではないか。コメントタレコミで知ったのだが、日月限定営業のためになかなか訪れることが出来なかったお店なのである。暖簾を潜って引戸を開けると、四畳半ほどの狭い店内。壁際には白い本棚が巡り、真ん中には平台と棚が合体した什器が置かれ、右にすぐ窮屈な帳場がある。そこには大工の棟梁のような短髪白髪でマスク姿の壮年男性がキュッと収まっており、「いらっしゃいませ」と渋く一声。入ってすぐの平台棚には、岡本太郎・美術系文庫&新書・アート関連書がビッチリと収まっている。左壁の少し低めのボックス棚には、美術図録・作品集/写真集・デザイン・民藝などが並び、上部には堀内誠一・荒木経惟などが飾られている。正面の高い壁棚には、サブカル・アート・写真関連・現代美術・前衛美術・デザイン・建築・文字・測量・色彩・日本美術・植物・舞踏・土方巽・ファッションと、容量はそれほどないはずなのに、緻密に綿密に並んで行く。右壁にはカルトコミック・セレクト日本文学・再びの建築・再びの民藝が続き、バックヤードの扉と帳場の上にさらに一枚の板が渡され、漫画評論・カルト漫画・岡本太郎などが、映画『宇宙人東京に現わる』のパイラ人(岡本太郎デザイン)フィギュアとともに並んでいる…根っからの岡本太郎好きだな。帳場下には美術系文庫&新書・都市・詩集などが収まっている。美術を背骨に、建築・写真・漫画を太い枝とし、細やかで見たこともない本も飛び出す、レベルの高いお店である。値段には幅があり、安い値付が多いのがとても嬉しい。欲しい本がたくさん見つかり、すぐさま掌の中に本が溜まって行くので、一旦冷静になって買うべき本を改めて吟味する。ニトリア書房「戦後前衛所縁荒事十八番/ヨシダ・ヨシエ」三笠書房「不純異性友遊録」読売新聞社「また横道にそれますが」ともに田中小実昌、弘南堂「炉辺詞曲 アイヌ神謡集/知里幸恵編」を購入する。満足して扉を開けようとすると、その扉が帳場で屈んだ店主のお尻に激突してしまう。「す、すみません!」「いえ、狭くて、すみません!」などとやりとり。いつの間にか曙橋に、日月だけ営業する、素晴らしいお店が誕生していました。
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2017年03月18日

3/18東京・九段下 第3回 昭和レトロ市

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『北の丸公園』の『科学技術館』で、面白そうな玩具系骨董市が開催される情報をキャッチし、地下鉄東西線で九段下駅下車。『4番出口』から地上に出て、日本武道館で開かれる卒業式の混雑を避けるようにして、『牛ヶ淵』沿いを南に向かう。閉鎖され、人気の感じられない典型的帝冠様式の『九段会館』前を通過して、お濠の上を『清水門』へと向かう。二つの門を鍵型に潜り、階段とも坂ともつかない斜面を上がり、やがて『北の丸公園』の端っこに上がり込む。そして白いイスラム的ファサードを持つ『科学技術館』に到着する。正面玄関からエントランスホールに入ると、袴姿の女学生の群れに混じり、短い列が右のイベントホールから延びているではないか。その列の最後尾に付くと、ほどなくして午前十一時の開場となり、入場料500円を支払ってから、二十店ほどの臨時店舗が並ぶ空間に突入する。長テーブルや持ち込んだ棚を使い、アンティーク店・プラモデル店・駄玩具店・ソフビ店・紙物店・レコード店・ペナント店・女子向けアンティーク店・女子向けファンシーアンティーク店・女子向け駄玩具店・玩具武器店・古道具店が連なる、懐かしさが高揚に火を点ける、楽しい空間となっている。隅には駄菓子バーもアリ。もちろん狙うは古本なのだが、紙物は多いが古本は案外に少ない。一店が雑誌や漫画雑誌や児童書&児童入門書を扱っていたが、欲しいものは見つからず。ぐるっと回った左隅のお店で、ようやく古い絵本の山などを見付け、じっくりと挑みかかる。二冊を選んで精算しようと店主に近づくと、おっ!付録漫画が並んでいるではないか。だが、それほどめぼしいものは、結局見つからなかった…ただ一冊、付録本の分厚い「トニー谷の名たんてい」が気になるが、八千円か…とあっさり見送ってしまう。講談社のディズニー絵本「ドナルドの名たんてい/絵ウォルト=ディズニー・文大木雄二」(収録された五話は、すべてドナルドを主役にした他愛もない探偵物である。ディアストーカーに天眼鏡にパイプが揃っているので、完全なる北原尚彦氏ホームズ案件であろう…だが、氏はすでに所持している可能性大である)Golden Book「A Rocket Trip to the Moon/Geraldine Russell」(人形とミニチュアを使った洋書写真絵本。1970年発行の犬も連れた月旅行を描くSFである。その出来は悪夢のようにエクセレント!だがクレジットを良く見てみると、日本の凸版印刷がプリントしており、版権も『Shiba production』となっている…もしかしたら日本語版が存在するかもしれない)を計1500円で購入する。この市は明日も開催される予定。

そして家に帰って、明日の「みちくさ市」参戦の準備に奮闘する。久々にフリーペーパー『五十歳になって思うこと(主に古本屋について)』など作成しましたので、明日お時間ある方は、ぜひとも雑司が谷でお会いいたしましょう!待ってます!
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2017年03月17日

3/17『気まぐれプレゼント』を受け取る。

本日夕方の漂着地は、千歳船橋と用賀の間にある桜丘。見たこともない住宅街から脱出を試み、いつの間にか経堂駅へと向かう『農大通り』の学生の流れに便乗している。と言うことはこのまま真っ直ぐ北に進んで行けば…おぉ!やはり学生が流れる河の途中には、「大河堂書店」(2009/03/26参照)という名の古本屋が、暗くなり始めた商店街に存在していた。店頭を入念に探った後、まずは右側通路に潜入し、新入荷本や古い単行本に集中する。ロシアの綺譚&妖怪譚を集めた資料本に激しく心が揺さぶられてしまうが、結局は中央通路の超充実文庫棚にしがみつく結果となり、あっという間に六冊が手の中に収まってしまう。講談社文庫「グリーン車の子供/戸板康二」文春文庫「諫早菖蒲日記/野呂邦暢」「原色スポーツ図鑑/浅井慎平」角川文庫「美女の青い影/平井和正」八重洲ブックセンター「ティファニーのテーブルマナー」酣燈社「詩人全書 東西古今集/日夏耿之介」(これが本日一番の掘出し物。帯付きで300円にニンマリ)を計1230円で購入すると。白髪ソバージュのご婦人が、笑みを浮かべながら帳場横の小箱を指差し、「千円以上お買い上げの方にプレゼントです」と宣う。見れば箱の中には、袋に入れられた文庫本が並んでいる。その表には『気まぐれプレゼント 謎の文庫本』のハンコが捺されている…。「何が入ってるか分からないんですか?」「分からないんですよ〜」と再びニヤリ。せっかくなのでちょと迷いつつ、薄手の一冊をいただくことにする。さほど興味も喜びもなかったのだが、貰ったとなると中に何の文庫が入っているのかとても気になってしまう。駅にたどり着き、電車のシートに腰を下ろして、ペリペリと開封してみる。袋の中に入っていたのは、原稿用紙に包まれた新潮文庫「津軽/太宰治」であった…も、持っている文庫だな…脱力しながら、ダブりの文庫本を手にして、夜の電車にガタゴト揺られている…。
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2017年03月16日

3/16「江口書店」で夜の始まりに安らぎを得る。

色々こなして本日漂着したのは、すでに暗くなってしまった『世田谷公園』。薄闇の中で憩う人々が集う、擂り鉢状の噴水広場を抜けて『三宿通り』に脱出する。ここまで来たなら、向かうところはただひとつ!「雜本 雜書 江口書店」(2010/03/29参照)だっ!いそいそと早足で北に向かえば、交差点近くで、歩道に店内蛍光灯の明かりを投げ掛ける、ホッとする古本屋さんの姿が見えて来た。
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その店内の明かりで可愛い店頭台を漁り、何冊か選り抜き出す。左側扉から入店し、コンクリ土間の上をゆっくり滑りながら、古本の間で古本を見て行く。それに何だかとても古本に溺れたくて、普段はあまり手を伸ばさない、中央棚を珊瑚礁のように囲む古本山や、右側通路の床に置かれた、ビジュアル本ラックまでを探る。静かな古い店内でしゃがみ込み、一冊一冊薄い冊子を確かめる…時間と空間が温いゼリーのように凝り、それらに包まれるようにして、次第に心が安らいで行く。そんなお店の雰囲気に乗せられたのか、多めの六冊を帳場の老婦人に差し出す。大学書林「巷のフランス語(1)(2)」共に松尾邦之助、講談社文庫「細い赤い糸/飛鳥高」みやま書院「わたしたちの北海道史/蒲田順一」主婦と生活社「にっぽん芸人図鑑/神津友好」ぴあ株式会社「ぴあ FILM FESTIVAL 1981 OFFICIAL CATALOG」日本評論社「陸軍讀本/大久保弘一」(裸本。昭和十三年刊で、兵器写真が驚くほど豊富に掲載されている)を計1200円で購入する。

幸せな重さを腕に感じて家に帰り着くと、一冊の献本が届いていた。先日の『本のフェス』で先行販売されていた、本の雑誌社最新刊「おじさん三人組が行く!」である。以前販売された簡素な本ではなく、A5版でカバーも掛けられて、本誌連載六年分をすべて収録している。ということは、私が参加した日下三蔵邸訪問(この記事に対応するブログ記事は2014/12/10参照)や、万歩書店ツアー(対応するブログ記事は2015/01/09参照)の記事も収録されているのだ。うひゃっ!うれしいことに冒頭の『登場人物紹介』で、錚々たるメンバーに混じって、私も紹介されているではないか!嬉しや嬉しや。だがやっぱり、この「万歩書店」で何度も声優の小山力也に間違われるくだりは、面白いのだが、小っ恥ずかしいなぁ…。
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2017年03月15日

3/15「中央線古本屋地図(仮)」は微速前進中

突然冷蔵庫に押し込められた水曜日。午前十一時過ぎに古本を抱えて家を出て、震えながら荻窪「ささま書店」(2008/08/23参照)に向かう。表に出たばかりの店頭棚を、寒さと闘いながら血眼チェック。すると、隣り合った老古本修羅が「ここは、寒いねぇ〜。本当に、寒いねぇ〜」と話しかけて来た。確かに常時冷風が容赦なく吹き付けて来るので、「今日は、格別な寒さですよね」と、その寒さに顔をこわばらせながら答えると、「寒い寒い。おぉ〜寒い」と歌うように再びぼやき、古本をしっかりと手にして行く。おまけに、棚の整理までして行く。次第に右にジリジリ移動する彼と、素早く場所を入れ替えて、こちらも負けじと古本を手にして行く。早く店内に逃げ込みたいが、もちろん最後の最後まで棚を見ないと気が済まない。おまけにすでに見終わったゾーンに、店員さんが新しい本をドカドカと並べ始めたりする。もう一度補充本を見るために元の場所に戻ったりして、結局三冊を手にする。暖かい店内で、人心地つきながら精算。albatros「Kretek a podzim」(黒いモグラが主役の、チェコの蛇腹型絵本)筑摩書房「退屈なパラダイス/山崎浩一」東京國民書院「詩集 旅と涙/勝田春月」(函ナシ。昭和二年十四刷。表紙に金で箔押しされた『TRAVEL AND TEARS』にグッと来て中を開くと、旅情と哀愁と寂寥を漂わせる読みやすい大正時代の詩が、小さな本からこぼれ落ちてくる)を計315円で購入する。この後は本来ならそのまま西荻窪まで歩くべきなのだが、寒さに敗走して電車に乗ってしまう。「盛林堂書房」(2012/01/06参照)では店頭100均文庫台から創元推理文庫「暗黒大陸の怪異/ジェームズ・ブリッシュ」旺文社文庫「高島忠夫の洋食劇場」を計200円で購入しつつ「フォニャルフ」にひとまず補充するが、そろそろ大幅な入替時期に来ている予感が、ヒシヒシと背中を走る。一山超えたら、また家の古本山と、がっぷり四つに組み合わなければ…。そして店主・小野氏と色々打ち合わせつつ、「中央線古本屋地図(仮)」用の重い資料を受け取る。編集制作作業は、ちょっと微速前進状態ですが、どうにか四月には発売に漕ぎ着ける予定で、これから遮二無二働きます!岡崎武志氏も、フットワーク軽く筆も軽やかに、様々な企画を文章化中であります!どんな本になるのか楽しみにしていただいているみなさま、もうしばらくお待ち下さい。

寒さと重い荷物を抱えているせいで、古本屋ツーリストの矜持などは軽く折れてしまい、遠くの古本屋に行く気が失せてしまう。駅前で暖かい立食い蕎麦を啜った後、ガード下を潜ってかなり久しぶりの「忘日舎」(2015/09/28参照)に足を踏み入れる。変わらぬ硬派な店内は、まるで欧州田舎の小さな教会のようである。入口左横の円弧棚の上に乗った本の列から、法政大学出版局「海の歳時記/宇田道隆」を350円で購入する。海の蘊蓄エッセイをまとめた一冊なのに、何故か表紙には河童が描かれている。だが、よくよく調べてみると、海に河童が出没する地域もあるらしい。勝手に河童は川に出るものと思っていたが、妖怪には柔軟な多様性があることを、一冊の本の表紙から改めて知る。
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2017年03月14日

3/14ついにトム・ブラウン・ジュニアを捕まえる!

午前六時に起床し、確定申告書類の、最後の仕上げに奔走する。神経をすり減らして午前九時半過ぎに家を出て、税務署の列に並び、どうにか滑り込みで申告を済ませる。すっかり現代的な集合住宅群になってしまった『阿佐ヶ谷住宅』跡地を切なく横目にして、阿佐ヶ谷駅までトコトコ戻り、そのままの足で高田馬場へ向かう。「ブックオフ高田馬場北店」(2012/11/15参照)の入口付近に、古い漫画が集まっているとのコメント情報にそそられての行動である。坂道を下ってコンクリで固められた神田川を渡り、石のステップを上がってお店の中へ。むっ、確かに正面右側の本棚脇ラックに、古い漫画本と漫画雑誌が一棚集められている。「ヤングコミック」・70年代劇画・手塚治虫・少年漫画・復刻漫画・漫画研究&評論・週刊誌の漫画特集…ビニールに包まれた雑誌以外は、古びたパラフィンが掛かったままなので、異様に古書店的雰囲気を醸し出してしまっている。確かに面白い光景ではあるが…とレジ脇の新入荷棚に何気なく視線を移すと、おっ!そこにも同様な古びたパラフィン本の壁が出来ているではないか。近づくとこれが映画本ばかりで、単行本・ムック・雑誌が結構な量で並んでいる。パラフィンの古び方がみな一様なので、恐らく漫画もこちらも一人の方の蔵書だったのだろう。それにしても、ピンク映画・成人映画・ロマンポルノ関連の本が大充実しているではないか!当時本がほとんどなので、恐ろしく貴重な資料と言えよう。ちなみにこの高田馬場北店は古書も扱う変わり種店舗なので、どれも値段はしっかりと付けられている。だが熱心に探すと、割安な本も見つけられるので、決して諦めない方が良いだろう。レジ前の平台には少量だが、貸本漫画系のコーナーまで出来ている。こんなにたくさんの買取…これは奥の古書コーナーにも同一の蔵書が紛れ込んでいるのでは…と足早に向かってみると、梶山季之・川上宗薫・青森郷土本などがパラフィンに包まれ紛れ込んでいた。しかしこの蔵書群、まだ出していないのかもう売れてしまったのかは分からぬが、かなり筋の良い本が含まれていたのではないだろうか…。一番最初に棚を見られなかったことが、返す返すも残念である。それでも熟考して、櫂書房「甦る名優たち 戦後映画史 新東宝編」津軽書房「北津軽郡東京村/三上寛」を計3120円で購入する、映画史の方はジャスト値だが、三上寛の方は安めで嬉しかった。
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そして映画史の方には、大河内常平原作の『九十九本目の生娘』や大坪砂男『私刑』橘外男『女吸血鬼』『亡霊怪猫屋敷』『怪猫お玉が池』などを筆頭に、妖しい貸本小説や時代小説を原作にした、キメキメで刺激的なスチール写真が満載なので、もう辛抱たまりません。写真は『九十九本目の生娘』の、若き日の菅原文太の勇姿。

家に戻って昼食を摂った後、日曜の「みちくさ市」に備えて、箱にイレギュラー的要素も加えておきたいので、東村山の激安福祉系古本屋「なごやか文庫」(2012/01/10参照)を偵察に行く。結果としては十一冊を計960円で購入し、まぁまぁの成果。だがそんなことより驚いたのは、本日気まぐれにここに来たおかげで、長年探していた本と出会う感激を味わうことになったのである。それは、徳間書店「ハンテッド/トム・ブラウン・ジュニア」!トム・ブラウン・ジュニアはアパッチ族の古老から、サバイバルやトラッキング(足跡を観察してたどることにより、何処へ向かっているのかということから、その動物や人間の心理状態や体調までを見通すを技術)を伝授され、時に行方不明者や犯罪者の捜索に携わることもある“トラッカー”である。この人が書いたトラッキングの本は、他に同じ徳間書店の「トラッカー」があるが、これらが読みたくて探し続けていても、ずっとずっと見つからず仕舞いで、探書リスト・ベストテンに常にランクインし続けて早六年…(他にスピリチュアルな本も出しているのだが、そちらにはまったく興味がない)。2000年代初めの新しめの本なのだが、ネットではわりと高値で取引されており、とにかく常日頃から注意していても、一度も古本屋で見かけることはなかったのである。つまり自分的には古本心の中で、次第にレア度が上昇してしまった本なのである。それが今日、150円の安値で手に入ったのだ!こちらは映画原案本で、トラッキングで扱った事件を、五編収録したものである。これは、蕨の「春日書店」(2010/06/19参照)外棚で、ブルース・チャトウィン「ソングライン」を見つけた時の感激と、似たものがあるな。古本屋さんに足を運び、本を掘り出す喜び、ここにあり!生きていると色々なことがあるが、私は今日、とても幸福である。
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2017年03月13日

3/13夕暮れ前の古本屋に立ち寄る。

本日色々こなした後に漂着したのは東松原。完全に曇っているのだが、まだ夕暮れには間がある時間帯である。踏切の音が聞こえてくる「古書瀧堂」(2014/05/01参照)前から、本を熱心に立ち読み座り読みしている地元のおば様たちに紛れ込む。外から来た身には暖房が効き過ぎているためか、たちまち古本棚の前で上気。だが顔をほてらせながらも、熱心で力のある棚造りに、次第に見蕩れて行く…ヒロシマ・ナガサキ・原爆棚は、他店では余り見かけぬ独特な光と重さをたたえている。昭和風俗棚も古書が時代の証言者となっており、ツボをひたと押さえている。文学棚も日本文学〜海外文学幅広く通路一面を占拠。その文学棚からわりと美本な一冊を選び、帳場に声を掛け差し出す。新潮社「空に浮かぶ騎士/吉田甲子太郎」を500円で購入する。レシートを受け取り、「そのままでいいですよ」と袋を辞退。だが店主が本を手にした瞬間、背から表紙にかけて元セロファンが少し剥がれているのに気付き、「あっ…」と声を上げて動きを止めてしまった…このままカバンに入れると破れが広がる、悲しい可能性を感じているのだろう。そんな気持ちを勝手に察し「やっぱり袋に入れて下さい」とこちらから改めてお願いする。すると店主は爆発物でも扱うように、指先で本を掴み、ゆっくり丁寧に袋の中に本を差し入れてくれた。…分かりました、これからも同様に丁寧に扱い、破れをこれ以上広げないよう、保護に努めます…。
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さて、来週3/20(月)に発売になる、交通新聞社「散歩の達人」4月号の特集『東京ディープ観光入門』で、二月に本屋ルポ連載をまとめた著書「東京こだわりブックショップ地図」を上梓した屋敷直子さんと、古本屋や本屋や本について対談させていただきました。全3ページを、予告編的にパパッと分かり易く紹介すれば、お店や本に対する欲望や役割を話し合い、初対面なのに当然の如く意気投合してしまう、楽しく奇妙な時間が流れております。そしてこの対談で、私はもはや未来には目を向けずに、古いものや過去に向かってひたすら突き進んでいることを認識してしまいました…。こんな私をご指名いただき、感謝であります。『個性派書店の深みにハマる』を、どうぞお楽しみに。
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2017年03月12日

3/12第2回『本のフェス』をどうにか完走する。

本日は神楽坂での第2回「本のフェス」内「本の雑誌商店街」に参加するため、早朝から準備OK…と思っていたら、ピックアップしてくれる盛林堂号が、思いの外早く午前八時前に到着し、本を木箱からダバダバこぼしながら、泡を食って車に乗り込む羽目になる。同乗者は北原尚彦氏と善渡爾宗衛氏である。すると神楽坂へ向かう三十分弱の間、トップギアで古本について声高に話し合うことになり、早速貴重なエネルギーを無駄遣いしてしまう。ほどなくして神楽坂の裏町といった場所に建つ『日本出版クラブ会館』に到着し、重い木箱をエッチラオッチラ二階の一室に運び込み、売場を設営する。「本の雑誌」のみなさまや、荻原魚雷氏や「古書いろどり」(2015/12/12/参照)彩古氏や「ますく堂」さん(2014/07/20参照)や「古本と手製本」のヨンネさん等と挨拶を交わした後は、しばし会場内の売場を偵察。「盛林堂書房」(2012/01/06参照)は壁の如き売場を築き上げ、古本長者としての地位を盤石なものにしている。さらに森英俊氏は、あまりに大量の本を搬入してしまったため、無人売場が二つに分かれる結果となってしまっている。…加減を知らぬ、恐るべき古本神たちよ!午前十時の開始とともに、その恐れ&畏れは現実のものとなり、ただただ神たちの古本だけが売れて行く時間が吹き荒れて行く…唯一それに対抗出来ているのは、自著である新刊文庫を先行販売している北原尚彦氏くらいのものか…。しかしそんな神たちの超ハイペースを見て見ぬフリすれば、自ずから選んだアウェイジャンル(アニメ&特撮中心)ではあったが、ボチボチっと売れてくれていて、途中からビールを飲みながらも長丁場の午後七時を迎えた時点で、なんとか計39冊を売り上げることとなったのである。…まずは形になって、よかった。お買い上げのみなさま、おかしなジャンルに懊悩し手を出せなかったみなさま、そして通りかかって下さったみなさまに感謝である。特に印象的なお客さんを挙げると、コミック「装甲騎兵ボトムズ」を買ってくれたうら若き女性、SF映画パンフ三冊を歓声を上げながら購入したフランス人、怪談本&ゾンビ本&怪奇まんがを悉く立ち読み読破し去って行った小学生女子、「ぬいぐるみとの暮らし方」を存分に吟味して買って行ったお嬢様、「古本屋写真集」が改めて売れたこと、そして寄せては返す波の如く本を手に取り戻し手に取り戻しを繰り返した挙げ句(ボヤき付き)購入してくれた彩古氏に拍手喝采を送りたい。また、最後の最後に金沢から参戦していた古本カフェ「あうん堂」さんと挨拶を交わし、まだお店に行けていないことを詫びつつ、いつかは必ずうかがうことを約束する。そんな楽しい一日であったが、もちろん古本を買うことを忘れてはいなかった。次第に売れる古本で得られる懐具合に合わせ、会場内の古本を少しずつ時間差で、購入してしまっていたのである。北原尚彦氏からは大日本雄辯會講談社「怪奇境探検記/小山荘一郎」(裸本)、「盛林堂書房」では学風書院「劇書ノート/古川緑波」、森英俊氏からは光風社「童貞先生青春記/宮下幻一郎」東京ジュニヤー協会「火事の百科 東京文庫1」を……たくさんの古本を売ってまたもや古本を買う…なんて清々しくも馬鹿らしい行為なんだ…あぁだが、俺はこのために、きっと生きているのだな。そんな感慨に耽りながら愚かな私は、来週日曜にも「みちくさ市」に参戦いたします。こちらは今回の変態的並びではなく、いつものほどよい文学&ミステリ&変な本に戻る予定なので、何とぞ引き続きよろしくお願いいたします。今宵はこれにて、おやすみなさい…。
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ちなみにこれは、ほぼ終了間近の私のブースである。本以外はほとんどが売れ残り、シャプレー星人も仮面ライダーも、無事に家に出戻ることになりました…。
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2017年03月11日

3/11明日の準備を進めたらやはりヘンテコなことになる。

朝から明日の「本のフェス」参戦の準備を進めるが、やればやるほどヘンテコになって行く…なんだか全然売れない気がして来た…いや、どうせ明日は神楽坂中が本まみれになるのだ。ならば変態的性格を持つ俺は、変態的に猛進して、構わないだろう…でも売れないのはなぁ…。などと思考の隘路に嵌ってしまった感があるので、息抜きに午後に外出し、今月末でお店を閉店してしまうという下北沢の「オムライス」(2013/09/19参照)を偵察に行くことにする。深過ぎる地下ホームからようやく南口に出て、ガード前の明るい陽光に目を細め、まずは肩ならしに裏路地の「ほん吉」(2008/06/01参照)へと向かう。店頭棚を熱心に見ていると、左斜め後ろでガゴガゴと不穏な音が響き渡る。うぉっ!店頭の木箱を停車しようとした乗用車が、バンパーの下に巻込んでいる。不注意だなぁ…すぐさま車から助手席の人が出て来て、木箱を下から引きずり出し、元の位置に戻す。そんな出来事に気を取られながらも、金剛社「逆進化/辻野勤」(前にも買ったことがある、ダーウィンの進化論を逆にたどる珍SF小説である)朝日ソノラマ「狼少年ケン」(ソノシートナシ。だがやはり、森やすじの狼は、身悶えするほど可愛過ぎるのだ…)を計300円で購入する。お店を出て、気になっていたので轢かれた木箱を確認すると、おぉっ!何ともない!その武骨なタフネスさに拍手喝采しながら、テクテク若者だらけの商店街を抜けて、街の端にある「オムライス」に到着。ドアには3/26閉店のお知らせが貼り出されてしまっている。
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中に入れば、そこはいつもと変わらぬ懐かしい玩具だらけの光景。基本的に膝下に集まる、古本・漫画・紙物を丁寧に繰って行く。先客が一人おり、古本棚の前に立ち尽くし、懸命にカードを選り分ける作業に没頭しているので、なかなか棚を見ることが出来ない。それでも左右から回り込んでのぞき込み、結局博文館「少年少女譚海 昭和十一年十一月號」(裏表紙トレ)学習研究社「中をのぞいたら」を閉店セール価格の計500円で購入する。これからまだまだ面白そうなモノが出てくる予感がするので、26日までにまたどうにか訪ねることを決意する。

家に戻ったら、フェス準備のラストスパート。本はいつもとは大幅に異なり、特撮アニメ関連&変な本と粋な本を揃えつつ、その他には本以外のブツを掻き集めてしまう。ファミコンカセット・仮面ライダーソフビ・シャプレー星人ソフビ・成田亨フィギュア・パンナムトランプ・柳原良平団扇・ジャングル大帝紙芝居・キャプテンスカーレット小旗・王貞治&森永コラボ下敷き・駅馬車カセット教材・とびだす絵本・堀内誠一カレンダー・etcetc……。本を見るのに疲れたら、どうか『本の雑誌商店街』の当ブースをお訪ね下さい!古本屋+古道具屋の様相で、お待ちしております!
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『本のフェス2017 本の雑誌商店街』
■日時:2017年3月12日(日)10時〜19時
■場所:日本出版クラブ会館
〒162-0828 東京都新宿区袋町6
http://www.shuppan-club.jp/
■主催:本のフェス実行委員会/読売新聞社
https://ja-jp.facebook.com/honnofes/
http://www.cpfine.com/honnofes.html
昨年、京都造形芸術大学外苑キャンパスで初開催した「本のフェス」ですが、今年もパワーアップして開催決定! 時は3月、場所は神楽坂に移し、街全体を本のイベントにする予定です。そして今回も会場の一室を「本の雑誌商店街」として、著者、古本屋さん、古本者さん、出版社などなど、本好きみんなが集まり、売りたい本を並べ、その場でコミニュケーションを取りながら販売いたします。
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2017年03月10日

3/10天金と粘菌!

色々あって夕暮れ時に、阿佐ヶ谷と荻窪の間に流れ着く。陽が落ちるとともに、月の光が輝きを増すのを見上げながら、家とは逆方向の荻窪方面に寄ってしまい、「ささま書店」(2008/08/23参照)に古本を求める。
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昼間とは打って変わった、強く冷たい風に嬲られながら、百均棚から二冊、三百均棚から一冊。朝日新聞社「やさしさを教えてほしい/谷川俊太郎」講談社「日本の作家60人 太鼓判!のお取り寄せ/小説現代編集部編」岡書院「南方随筆/南方熊楠」を計525円で購入する。

本日の驚きの収穫は「南方随筆」である。大正十五年刊のオリジナル版で、蔵書印アリ&函補修アリなのだが、天金は美しく輝き、口絵写真に南方と写る、大正八年高野山への粘菌採集同行者である、小畔四郎の献呈署名アリ。ちゃんと柳田國男の、巻末の中山四郎による『私の知っている南方熊楠氏』への『事實に反し居り候』チラシも挟まっている!嗚呼、こんな風に憧れの博覧強記の天才奇人・南方熊楠氏に、本を触媒として近付ける日が来るなんて!などと喜びつつ、さらに後の見返しを見ると、薄紙に覆われた古書店ラベルがあるのに気付く、ペリペリペリペリ懸命に丁寧に剥がしてみると、大岡山工大前(つまり今の東京工業大学前)にあった「娯楽堂書店」と判明する。…学校の前にあるのに“娯楽堂”とは、良い度胸をしている素晴らしき古書店である。ちょっと手持ちの本で調べても何も分からない…いったいいつ頃のお店で、どんな本を得意としていたのだろうか…。とまぁこんな風に、一冊の本で色々楽しませてくれる「ささま書店」よ、今日も本当にありがとうございます!
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剥がしている途中の写真。まるで火山灰の中からポンペイの壁画が現れたように、次第に古書店名がっ!
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2017年03月08日

3/8東京・御茶ノ水 エスパス・ビブリオ 第一回蔵出し古本市

早起きして地図作りを東小金井まで進める。作業の手を止め、身支度を整えて外出すると、午前十時半。総武線で水道橋に向かい、そのまま久しぶりの神保町パトロールに突入する。初っ端の「丸沼書店」(2009/12/17参照)で中公文庫「ダンディズム/生田耕作」国書刊行会「ク・リトル・リトル神話集H.P.ラヴクラフト他」を計500円で購入し、先陣を切る。そこからしばらく南に下った、いつでも店頭を楽しみにしている「日本書房」(2011/08/24参照)では、中央柔々和本タワーの間から、郷土研究社「爐辺叢書 越後三條南郷談/外山暦郎」を抜き出して500円で購入する。大正十五年刊、文庫サイズ167ページの民俗学調査的聞取り話集である。地名や方言や民話や農事などの項目もあるが、『化物のこと』『怪火』『天狗』『河童』『動物』『神』『變つた人々』などの妖怪や怪談奇談関連についても採集されている。自身の体験談や近しい人の聞取りが多く、主に明治〜大正と刊行時に近接した生々しい話が多い。特に『怪火』には、いわゆる火の玉以上の大きさや活動をする、UFO的な目撃体験談が多く含まれ、興味深い。よし、良いものが手に入ったぞ!と小さく喜びながら、「神田書房」(2012/02/16参照)では福武文庫「香港読本/山口文憲編」ちくま文庫「尾崎翠集成(上)/中野翠編」を計200円で購入する。だがその後は、「山本書店」(2012/04/25参照)にてハヤカワ文庫「幻想と怪奇 ポオ蒐集家/仁賀克雄編」を100円で購入するに留まる。残念ながらつい先頃閉店してしまった絵本のお店「BOOK HOUSE」が撤収中なのと、二階の「北沢書店」(2014/05/26参照)が必死に営業中であることをアピールしている巨大な貼紙を目撃する(だってお店への入口階段が、閉店した店内一階にあるんだもんな)。

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パトロールを終えて、駿河台崖下の『猿楽通』を北上している。途中脇道に入って『男坂』の石段を懸命に上がると、そこは『とちの木通』である。石段東南脇ビルの、地下にあるブックカフェ「エスパス・ビブリオ」への階段前に立つ。今日から3/17(金)まで、改装のための古本市が開かれているのである。このカフェに架蔵されているのは、主にアート・デザイン・建築・映画・写真集などであるが、果たしてどんな本が蔵出しされているのだろうか…。豪奢な階段を下り、ガラス張りの店内に滑り込むと、カフェは女性客で満杯である。もちろんそちらには目もくれずに、左の市が開かれている純白のギャラリースペースに足を向ける。右の壁際に長テーブルが二つ付けられ、100円の本が背を上にして置かれている。中央には大きなテーブルがあり、そこにも背を上にして、ぐるりと本の列が一周している、左にはセレクトされたバーゲン本アートブックが、500円と1000円の値で並んでいる。当然の如く100円のワンコイン本に己の耳目を集めてしまう。…なんだかわりと家庭的な古本市である。読み古された本や読み終えた本が多く、持ち寄った人の趣味嗜好がダイレクトに透かし見えているのだ。食や美術や旅行にカルチャー&美術雑誌、それに小さな展覧会の図録類も多い。クルクル回って三冊選び、レジで精算しようとするとそこには誰もいない。そのまま左奥の戦場のような厨房カウンターに声を掛け、忙しい中精算していただく。青土社「現代アメリカ映画談義/黒沢清+蓮實重彦」夏葉社「冬の本」新人物往来社「衝撃の絵師 月岡芳年」を計300円で購入する。帰りは『とちの木通』を北西に進み、『アテネフランセ』前を通過して、水道橋駅近辺のパノラマが楽しめる坂の上に脱出。さて、さっさと帰って机の前に座り、眼下の鉄路をさらに西へ向かうとするか…。
posted by tokusan at 15:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月07日

3/7地図、地図、地図、古本屋地図!

今日は昨日と打って変わって家に閉じこもり、ひたすら岡崎武志氏との共著「中央線古本屋地図(仮)」の、大事な古本屋地図作成に勤しみまくる。早朝から紙とモニターを行き来して、様々な時代に潜り込み、ひとつの平面にお店をコレクションして行く…それがすべて古本屋ばかりなのである。それにしてもこのお店の数…中央線はやはり偉大で豊穣で過剰である…。…楽しい…細かい…ツライ…前代未聞なものを作ってる感じが…だが頭がどうにかなりそうだ…。どうにか高円寺まで終えたところで一休みし、息抜きに日曜に参戦する「本のフェス」の準備に軽く取りかかってみる。今回参加店はプロが多いので、ちゃんとした古本はそちらに任せ、思いっきり逸脱する感じで各部屋から色々集めてみる……ぬぅ、分かってはいたが、何だか大変なことになってしまった。もうちょっと精査吟味が必要なのか。まぁ、まだ少し時間はあるんだ。ゆるやかに楽しく準備して行こう。というわけで、詳しい異常なラインナップは前日の土曜にでもお知らせいたします。さて、もうちょっと、頭の中の中央線に乗って、西を目指して行くとするか。
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posted by tokusan at 20:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする