2017年07月31日

7/31非情の京成本線!

朝早くから色々作業し、すべてが片付いたので大いなる開放感に包み込まれ、午後に外出。久々に千葉の名店「キー・ラーゴ」(2009/11/25参照)だ!と、すでに素晴らしい古本を見つけた気分になり、電車に揺られまくる。だが一時間四十分かけて到着した、午後四時前の長い商店街のお店は、冷たくシャッターを閉ざしていた…うぉぉぉぉぉ、「キー・ラーゴ」では初めてお店を訪ねて以来、一度もシャッターアウトはなかったはずなのに、ついにこの日を迎えてしまったか…。こぼれ落ちそうになる涙を我慢しながら、駅にサッサと引き返し、ならば八千代台の「雄気堂」(2009/05/30参照)だ!と二駅移動する。何事もなかったかのように胸をときめかせながらお店に向かうと、ぐぬぅ、無情のガラス戸アウト…よもや千葉の名店が二店ともお休みとは…考えもしなかった…。まだまだ強い日射しと、暑いアスファルトの照り返しに嬲られながら、これからどうするかを思案する。高根公団の「鷹山堂」(2009/05/17参照)…それともかなり引き返して京成八幡「山本書店」(2010/06/29参照)に…いや、そう言えばまだこの京成本線の先の駅に、古本屋があったはずだな…そうだ、志津の「日置書店」(2014/04/29参照)だ。おばあさんが切り盛りしている、街の小さな激安リサイクル系古書店であるが、その去就が気になるので、ここはひとつ良い本を買うという方針を変えて、消息を尋ねに行くとするか。そう決めて再び京成本線に乗り込み、意外なほど千葉の奥地へ来たのを実感しながら志津駅着。北口に出て、朧げな三年前の記憶と現実の街を縒り合わせ、小さな居酒屋ばかりが集まる鄙びた駅前を進む。すると駅から一本裏通りに、以前と変わらず閉店して自然に取り込まれつつある商店と肩を並べ、元気に立派に営業している黄色いお店が目に飛び込んで来た。正直に言うとその瞬間、閉店していないのが不思議なほど、寂しくちょっと荒れた通りで、よくも健気にお店が続いているものだと、大いに感心してしまったのである。嬉しくなって、コミックと文庫とエロ本ばかりの店内に入り込む。店主のおばあさんは健在で、帳場で大量のコミックの値付中。扇風機が涼風を流し込む、狭い通路にしゃがみ込み、棚を隅から隅までチェックして行く。さらには新しめの文庫の裏に、古く汚れた単行本が横積みになっているのを発見し、本を引き出し背をチェックして行く。集英社文庫「ダメをみがく/津村記久子・深澤真紀」NTT出版「第10回・NTTふれあいトーク大賞100選」ワニの本「恐怖びっくり毒本/ビートたけし編著」ニッポン放送出版「これが噂のヒランヤだ/三宅裕司のヤング・パラダイス編」情報センター出版「いちど尾行をしてみたかった/桝田武宗」を選び出し、おばあさんに差し出すと、たちまち本を仕分けた挙げ句、値段の付いていない四冊を積み重ねて「こっちは上げる!」と宣言。結局「ダメをみがく」の五十円だけを精算することに。う〜ん、たぶんこのお店には、時々来るだけでは分からない、何かが潜んでいそうな気がしてならない。地元民にしか分からぬ、このお店の役割と良さとお店の続く秘訣が、きっと何処かに隠れているのだろう。そんなことを思いつつ、相変わらず人影の無い表に出る。七月最後に訪れた古本屋さんは、まぶしく爽やかなレモン色で、小さな街に密やかに、大衆的雑本を振りまいていた。
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2017年07月30日

7/30復刻「死靈」!

本日は午後三時過ぎに浜田山駅の南に漂着し、緩やかな傾斜の上に広がる『柏の宮公園』の、午前に上がったはずの雨を彷彿とさせる、本当に降るような耳を覆うほどの蝉の多重鳴き声に圧倒され、コミュニティバス・すぎ丸に乗り込み、阿佐ヶ谷にただ逃げ帰る。その阿佐ヶ谷では、「千章堂書店」(2009/12/29参照)でハヤカワ・ミステリ文庫「二壜の調味料/ロード・ダンセイニ」を400円で購入し、表1袖に鉛筆で書かれた値段を消してもらい、いつもの書皮をかけていただく。

家に帰って一息ついてから、ある本の捜索に取りかかる。確か居間の古本山脈の何処かに…と朧げな記憶で当たりを付けて、ひたすら居並ぶ古本タワーを下層へ下層へ…。すると案の定、三つめのタワーを最深部まで退けたところで、捜索対象を無事発見する。やった!と喜びつつ、せっかくここまで久々に上の本を退かしたのだ。この際最深部に何があるのかちゃんと確認しておこうと、さらに底部まで掘り下げると、おおっ!「埴谷雄高全集」の別巻と久方ぶりの対面を果たす。全集最終刊の資料集成本で、値段は高い高い9500円(税別)である。2001年の刊行当時に、他の全集は一冊も買っていなかったが、これだけは何としても手に入れなければならないと、思い切ってちゃんと新刊で購入していたのである。なぜなら、その分厚い函の中には、資料集成本とともに、あの超難解ド級陰鬱探偵小説風形而上実験小説の金字塔「死靈」の「近代文學」掲載時の復刻版が、一冊の本としてまとめられ、挿さっていたからである!
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日本の三大奇想探偵小説「黒死館殺人事件」「ドグラ・マグラ」「虚無への供物」の斜め上に恐らく屹立しているであろう、この世界の真理をとことんしつこく独自の思考で追求しまくる「死靈」!この未完の大小説がなければ、竹本健治の「匣の中の失楽」もこの世には生まれていなかった!その「死靈」のオリジナルを、雑誌を綿密に再現した二色刷りで、挿絵も含み四章までを収録している。単行本収録時には手直しが施されているので、これでしか読めない原初のオリジナル版なのである。いやぁ、またこのバージョンで読みたかったんだ。その難解さ故に、突如強暴に襲い来る睡魔と激しく戦いながら、どんなに脳をフル回転させても、決して百パーセント理解出来ない埴谷雄高の崇高で気高く、人生のすべてを費やした独自の思考の記録。恐らく、こちらが今後の人生すべてを賭けて、何度チャレンジしても、同じ挫折を味わうことになるであろう。だがそれでも、これを読み込んだ後に、何か開けるのか待ち構えているのか、馬鹿故にまったく想像つかないのだが、懸命に読み進めれば、何かが脳髄の何処かに痕跡を残すものと信じて、時々眉間に皺を寄せながら、読み返しているのである。せっかく見つけたんだ。これを機に、久々にチャレンジしてみるか…。
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写真は第四章までをまとめた復刻本と、昭和二十四年発行の眞善美社の単行本「死靈」。こちらは第三章までを収録している。
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2017年07月28日

7/28昭和九年の日本寫眞年鑑!

午前十一時からの『東京古書会館』(2010/03/10参照)での打ち合わせに照準を合わせ、早めに水道橋ルートから神保町入りを目指す。大体古本街が動き出す午前十時過ぎに到着し、店頭を覗き込みながら駿河台下まで移動するつもりなのだが、古本パトロールに身を入れ過ぎると、時間はあっという間に過ぎ去り待ち合わせ時間を迎えてしまうこと必至。なので普段よりピンポイント&スピーディーに気になるところをたどるのだが、それでも古書会館に着いたのは時間ギリギリであった。後は打ち合わせ後にじっくり見て回ろう。午前十時台では、まだ開いていないお店もあるからな。「日本書房」(2011/08/24参照)にて学習研究社 中学生名作文庫「たった一日の事件/R・マクドナルド・原作 水沢伸六・文」中学生傑作文庫3「消えた宝石 /E・クィーン(原作)福島正美(文)」を計千円で購入する。「日本書房」でこんな付録本が買えるとは、思いもよらなかった…。さらに「明倫館書店」(2012/04/04参照)ではオリオン社「動物園日記-これは不思議な物語-/林寿郎」を三百円で購入する。

一時間ほどの打ち合わせ後、再び古本の街に解き放たれる。正午過ぎの神保町は、昼食と古本を求める人間たちの坩堝と化している。『神保町交差点』を西に越えたところで、「南海堂書店」(2012/05/08参照)の木製ワゴンに珍しくつかまる。何たってフト目に飛び込んで来たのが、昭和九年の「日本寫眞年鑑」なのである。あまりにも無造作に本の上に置かれているのに驚きながら、写真作品と論考&名簿が半々の、重く大きな本を開いてみる。野島康三・ハナヤ勘兵衛・中山岩太・福原信三・渕上白陽…あぁ、これは買わなければならない。値段を見ると千円だったのでニンマリしながら買わせていただく。朝日新聞社「日本寫眞年鑑 昭和九年版」を購入する。さらにその後も街をぶらつき、『すずらん通り』で骨董関連に強い「風月洞書店」(2013/03/25参照)のワゴンを雑に流していると、右手から風のようなスピードで「こんにちは〜」と言いながら一人の男が接近して来た。慌ててそちらを向くが、男はすでに背後に回り、さらにそちらに首を捻ると、たちまち左手に移動してしまった。身体を反転させて正対すると、風のような男の正体は、本の雑誌社編集長の浜本茂氏であった。ご無沙汰の挨拶を交わしながら「この時間に出勤とはさすが重役」と冷やかすと「家でちゃんと仕事してから来てるんですよぉ〜」と返される。そして「ここ最近十日分ぐらいのブログを一気に読んだんですが…あぁ、気になったのがなんかあったんだよなぁ〜。なんだったけかなぁ〜思い出せないなぁ〜」と路上でパワフルに懊悩し始めた。相変わらず愉快な編集長さんである。そんな突然の出会いがあったため、氏と別れた後も何故か普段はそれほど用の無い「風月洞」ワゴンを丁寧にチェックしてしまう。すると右手の大判本ワゴンの隙間に、妙な気配を湛えた本を発見する。取り出すと、青林堂「櫻画報永久保存版/赤瀬川原平」であった。ダンボール箱付きでビニールカバーはないが、背に付けられた値段は300円!編集長が与えてくれた嬉しい出会いに感謝しながら、長細い店内奥で購入する。久しぶりのパトロールなのに、なかなかの成果を上げられるとは、さすがさすがの神保町であった。

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「日本寫眞年鑑 昭和九年版」。表紙はアールデコ調で、裏表紙はロシア構成主義風のデザイン。
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2017年07月27日

7/27三鷹の跨線橋に陶然とする。

ようやく一息つけるような、涼しい曇り空の下、三鷹駅近くの上連雀一丁目に流れ着く。目の前のフェンスの向こうには、大きな電車庫が広がり、黄色が輝く総武線や、用途の分からぬ特殊車両が、長い身体を線路の上に横たえている。その線路の上を少し見上げると、およそ百メートルの長さを誇る、古く実用的な跨線橋が美しくシンプルな骨組みを、空の中に浮かび上げている。これが、太宰治も愛したという、古い戦前から架かる陸橋か。靴底に削られ、何だか丸みを帯びた礫を含むコンクリ階段を上がると、古いレールをフレームとして再利用した、長い長い橋が、北と南の街をつなげてくれている。橋の真ん中辺りには家族連れが佇み、行き交う列車を飽きもせず眺め続けている。
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橋の南側に渡ると、その階段上がり口に、階段に太宰が佇む写真のある文学説明板がちゃんとある。思わず時空を飛び越え、昭和四年の創建当時まで心身が大胆にも遡ってしまうが、同時にガイナックスの名作オリジナルアニメ『フリクリ』の、ベスパが駒撮りで動き回る実写エンディングが撮影されたのも、ここら辺りの線路際ではなかったかと、思い至る。文学とアニメをしばしの間堪能し、ツラツラ歩いて「水中書店」(2014/01/18参照)へ。日本放送出版協会「趣味の世界8 奇石珍石」講談社文庫「悦楽王/団鬼六」140B「西加奈子と地元の本屋」を計300円で購入。三鷹駅始発の総武線にゆっくり座って阿佐ヶ谷駅へ。「古書 コンコ堂」(2011/06/20参照)にてサンリオSF文庫「流れよ我が涙、と警官は言った/フィリップ・K・デイック」岩波文庫「春昼・春昼後刻/泉鏡花」虫プロ COM名作コミックス「弁慶/手塚治虫」を計515円で購入し、おとなしく家に帰り着く。
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2017年07月26日

7/26「ますく堂」は引越し予定!

雨の降りしきる正午に西荻窪へ向かい、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)にて「フォニャルフ」に古本を補充する。夏の西荻窪にお寄りの際はぜひとも冷やかしてやってください。早川書房「海外探偵小説作家と作品/江戸川亂歩」を100円で購入しながら店主・小野氏より、ある作業のお礼として新潮社長編文庫「黄金草/岡田三郎」をいただく。「どうせ同じ岡田三郎なら、赤爐閣の「誰が一番馬鹿か?」が良かったなぁ」などと憎まれ口を叩くが、お店を出て移動の電車内でページを紐解くと、銀座のカフェーから始まる大衆的女給悲愁物語にぐんぐん取り込まれてしまう。そんな風に見事なくらいに「黄金草」に夢中になっていたので、あっという間に雨上がりの池袋着。西口に出て道すがらの「夏目書房」(2008/07/05参照)に立ち寄り、店内に引き込まれた安売棚から河出文庫「白骨の処女/森下雨村」を200円で購入。そこから裏町に入り込んで、大きな道路を渡って椎名町方面に向かって住宅街を進んで行く。「古書ますく堂」(2014/07/20参照)が近々三度目の引越しをするらしい噂を耳にしたので、様子を見に来たのである。わりといつでも人の流れがある生活道路から、ひょいと曲がり込むと、おっ!ちゃんと木枠の格子戸が開いているじゃないか。営業中だ。狭く開いた戸を潜り、箱の積み上がる店内に滑り込む。するとますく堂さんがいつも通りの元気な声を出し、先客さんとお喋りをしている。「あ、古ツアさん」と気付かれるや否や、即座にその先客さんを「「おひさまゆうびん舎」さんです」と紹介される。あの姫路の!と驚き挨拶を交わしつつ、まだお店に行けてないことを、思わずお詫びしてしまう…これで店主さんにも挨拶してしまった。いつか、絶対にツアーするぞ。などと秘かに決心しつつ、ますく堂さんに引越しについての探りを入れる。何と引越し先は、同じビルの一軒挟んでのほぼ隣りで、「駅に近くなった」とますく堂さんが虚しく喜ぶ超近距離。そこは普通の事務所状態で、飲み屋を居抜きで古本屋として使用して来た伝統が、ついに途切れてしまうこと。ただし前二軒と同じく住居付きなので、取りあえずますく堂さんは路頭に迷わなくて済むこと。引越し時期はアバウトにお盆前後になりそうなこと。現店舗とそのカウンターを名残惜しむために、8/5(土)に久々に「スナックますく堂」(2012/09/14参照。古本修羅や古本無頼や古本一匹狼たちが、夜の古本屋に酒を持ち寄り、楽しく怪気炎と雄叫びを上げるイベント…ご興味ある方はぜひ!)を開催すること。などを次々聞き出す。すでに店内には、次のお店のために様々な所から拾って来た什器が置かれ、ますく堂さんのやる気がヒシヒシと伝わって来る。もしかしたら、次のお店が「ますく堂」の歴史上、一番古本屋さんらしい古本屋さんになるのかもしれない…。ひばり書房「呪われたふたつの顔/さがみゆき」レモンコミックス「頭脳線甦ったミイラ/好美のぼる」を計400円で購入し、8/5に再び来店することをあやふやに約束し、お店を後にする。
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写真はお店がテレビ撮影に使われた時に使用された小道具を、ますく堂さんがスタッフにねだっていただいた物。これを店先に下げ「古本屋らしくなったでしょ」とご満悦なのである。逞しいというか何というか…いや、これでこそ「ますく堂」!まるで諸星大二郎の「生物都市」のように、様々な物品が融合し、『古本屋』という店舗の体を成しているのだ!なので来店時は、お店に取り込まれないよう、細心の注意が必要なのである!
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2017年07月25日

7/25 190km離れた古本屋さんの閉店を思う。

今日は久我山の北側に流れ着いたので、重く暑苦しい空気を掻き分けるようにして、ヒタヒタオアシスを求めるように歩き続け、荻窪「田中商店」(2013/07/26参照)にたどり着く。よし、今日はここで古本を買って行こう。頭上では不穏な雷鳴が響き始めたので、蒸し暑く薄暗く古道具の並ぶ店内に慌てて飛び込む。以前と変わらぬ左手前隅の暗がりに、50均文庫&単行本棚が潜んでいる。そこに神経を集中し、下がる古着はちょっと退かし、背の読めぬ本は取り出して明るいところで確認したりもする。河出書房「ダルタニャン色ざんげ/小西茂也譯」を50円で購入する。

…本当は、今日はこんなことをしている場合ではなかったのだ。長野・上田の「斉藤書店」(2010/04/24参照)が本日限りで閉店してしまうので、どうしても駆け付けたかったのだが…。清冽な青空の下、ダラダラと続く大きな坂を上がりるとたどり着ける、青く昭和的に古く静かな広い古本屋さん。店頭頭上に掲げられた『入手困難な貴重な本・珍しい本・定価よりぐんとお安く買える本』に心トキメキ、整頓はされているがわりと雑駁な棚造りが、そのトキメキをさらに加速させ、何かに出会えそうな予感を際限なく肥大させて行く…。私はこのお店で初めて、“掘出し物”を探し当てる体験を味わったのである。それまでは、読みたい本や、ちょっと安い本や、面白そうな本を買うだけの初心者的古本修羅であった。だが、いつかは自分もたくさん読んだ古本本の中にあったスゴい話のように、貴重な本を安く掘り当てたいと、常に思い願っていたあの頃の切ない日々。それがこの店を訪れ、右奥のちょっと安い古書が並ぶ棚の中から、大好きな作家・龍胆寺雄の新鋭文學叢書「放浪時代」を600円で見つけ出したのである。経年の汚れなどはあるが、古賀春江装幀の表紙もキレイ。昭和五年出版の、作家が生きた時代のオリジナル本を手に入れることは、とても重要で興奮する事態である。ついに自分にも掘出し物を見つけたぞ!そう感激すると同時に、古本屋に通い一生懸命探せば、いつかは探し求める本と出会えるんだ!という思いが、強く心に刻み込まれたた瞬間であった。つまり、私のある種の原点が、古本をいつでも貪欲に求めてしまう心が、この「斉藤書店」で生まれてしまったのだ。こんな気持ちを体験し、その後のブックハンティング人生を決定付けた古本屋さんが、今日閉店してしまうのである。慚愧の念に耐えない事態であるが、今は遠い190km離れた東京で、買わせていただき大事にしてる「放浪時代」を手にして、感謝の念を送ることしか出来ぬ、愚かな私なのである。「斉藤書店」さん、本当に長い間ありがとうございました!
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2017年07月24日

7/24団地に対する妄想を祓いに行く。

朝から大量の古本を箱詰めして、無事に大阪に送り出す。ひとまず役目を果たして、ホッと一息。仕事も緊急の案件に素早く対処し、ホッと二息目。落ち着いたところで、ここ最近頭の中に渦巻いてしまっている妄想を、軽く検証して実地調査に当たることに決める。その妄想とは、練馬『光が丘』の古本屋事情である。超巨大団地地帯である光が丘には、今やリサイクル系の古本屋さんが二軒あるだけである。ならば、あの超立体的集合密集住宅内にある古本は、主に二店にドバドバと集まっているのではないだろうか。その中には当然古書も含まれているはずで、そうなるとお店では恐らく持て余し、廃棄か安値で販売している可能性があるではないか。もしかしたら通路の片隅に、安値の古書コーナーが設けられているかもしれない…。こんな馬鹿なことを考え始めたら、どうにも止まらなくなってしまい、もはやこの目で確かめるしか、妄想を止める手だてはなくなってしまったのである。と言うわけで鷺ノ宮駅から西武新宿線に乗り込み中井駅で下車。一旦地上に出て商店街を伝った後、名物書店「伊野尾書店」横の大江戸線への地下階段を深く下る。そこからおよそ十六分で、終点の光が丘へ。『A1』出口から蒸し暑い地上に出ると、街に張り巡らされた道路にはすべて街路樹が生い茂り、その緑越しに巨大で横にも長い団地群が胸から上を覗かせている。まるで大友克洋の超能力漫画「童夢」のような光景であるが、ブロックごとに団地のフォルムが異なるのは、統一感のない奇妙な印象を与える。東に向かい『東大通り』を北に進んで行くと、巨大な街の外周をなぞる形になる。道なりにグインと東に曲がり込み、交差点に到達すれば、対岸にもう第一のお店の姿が見えていた。

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●「古本市場 光が丘店」
マンション一階のワンフロアを占める店舗前には、物凄い数の自転車が停まっている。楽しい嬉しい夏休み中の子供たちだな…。中に入ると、倉庫のように広く明るい空間が広がり、華やかなゲームソフトコーナーや、左手前側奥にあるカードデュエルコーナーに、自転車の持ち主である子供たちのほとんどが群がっている。古本を目指し、人気のない左奥にズンズン入り込んで行く。背の高い棚で作られた五本の通路に古本は集められている。新刊のミステリ&エンタメと文庫を中心に、模範的なリサイクル店的並びを見せているが、量がとにかく多い。ちょっと「ブックセンターいとう」っぽい雰囲気である。最新入荷本がプラスチックカゴに詰め込まれて、棚に大量に並んでいるが、これを掘って見ろと言うのか…。そして驚いたのは、驚異の80円コーナーが存在すること。80均の単行本と文庫で、通路が一本成立してしまっているのだ。すでに妄想していた古書がないことは確認済みだが、この80均通路がこのお店の目玉だな、と勝手に決定し、目が痛くなるほど隅から隅まで眺めてしまう。ちくま文庫「七時間半/獅子文六」原書房「カニバルキラーズ/モイラ・マーティンゲイル」を計172円で購入する。

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●「BOOKOFF 練馬光が丘店」
まるで城のない城下町のような団地の外周を伝い、『東大通り』をそのまま下って、歩いて歩いて南端に出る。さらに団地沿いに西に向かい、『公園通り』を越えてからの信号で南の住宅街に入って行くと、なんだかゴルフ用品店のようなブックオフがこつ然と現れた。結果から言うと古書は皆無で、ちょっと大きめワンフロアのスタンダードなブックオフである。なのでじっくり棚を見た割には食指動かずに、何も買えずにお店を後にする。唯一琴線に引っ掛かったのは、通路の奥にあった古いスーファミソフトワゴンであった…。

とこのように現場に当たり、己の目で現状を把握すれば、酷く甘い妄想もあっけなく祓えるものなのである。ふぅ、スッキリした!
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2017年07月23日

7/23東京・吉祥寺 ホホホ座吉祥寺店 1日限定の本屋さん

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京都「ホホホ座」(「古本屋ツアー・イン・京阪神」P45参照)の山下賢二氏が上京し、本日だけの「ホホホ座吉祥寺店」を、ひとり出版社の『夏葉社』で開店するとのこと。古本も売られるらしいので、午後に様子を見に行くことにする。「ホホホ座」は緩くて奇妙なフランチャイズ展開を続け、現在西日本を中心に七店を数えているが、これがもしや東京進出の布石となるのだろうか…(ちなみに今年の二月には、新宿の『BEAMS JAPAN』で限定ショップを開いたことも(2017/02/05参照))。北口の雑踏を擦り抜け、『PARCO』前から『吉祥寺通り』をグングン北北東に進んで行く。雨がポツポツ落ち始めて来たが、本降りになりそうな気配はないので、構わず歩みを進める。『八幡宮』の白壁前に、スマホを操作しながら集まるたくさんの人を目撃し、「昆虫屋台やってま〜す」と呼び掛ける『昆虫食』イベントを開くギャラリー前を通過して、やがて『武蔵野第四小学校バス停』を過ぎると、マンション半地下の店舗ウィンドウに「ホホホ座吉祥寺店」と白い紙が貼り出されているのが目に飛び込んで来た。おぉ!駅前のワンルームマンション(以前の社の様子の一部は2013/08/29参照)から引っ越した夏葉社は路面店…いや、路面社になったのか!とその出世ぶりに感心し、しばし何処から入ったらいいのか逡巡した後、素直に左端の磨りガラス扉を恐る恐る開けてみる。するとそこに立っていたのは笑顔の夏葉社・島田氏で、お客さんが輪になった店内では、なんと世田谷ピンポンズさんがライブの真っ最中…うわ、失礼しました。慌てて右壁に寄り添うように逃げ出して、そのままピンポンズさんの熱唱に耳を傾けながら、壁棚を目力入れて注視する。社に備え付けられた壁棚の、最上段&最下段以外を使って、山下氏の古本が並べられている。文庫と単行本と雑誌が主で、ジャンルはカルチャー&サブカル・純文学・海外文学など、硬さと軟らかさがセンス良く交錯している。値段はかなり安めなので、とても嬉しい。フロア中央には雑誌類やリトルプレスや新刊が面陳され、左端には夏葉社の本も勢揃いしている。ライブ終了と同時に三冊をスパッと選び、奥の社長机で精算をお願いする。山下氏とは別府以来の挨拶を交わし(2011/11/27参照)、「ずいぶん頭が白く…」と言われる。あれからあっという間に六年…色々色々あったので、すっかりブラックジャックみたいな半分白になってしまいましたよ…。小学館入門百科シリーズ9「プロレス入門/監修■ジャイアント馬場」角川文庫「横溝正史読本/小林信彦編」旺文社文庫「アンクル・トリス交遊録/柳原良平」を計800円で購入する。島田氏とは最近の「大河堂書店」(2009/03/26参照)での功績の話をひとしきりしてから、新社屋の案内をしていただく。「前々から、ここで何かやりたいと思っていたんですよ」。確かにほとんどお店のような感じで、イベントを行う広さも充分にある。「ホホホ座吉祥寺店」で、イベント開催に先鞭を付けた夏葉社には、今後は出版物とともに、社屋の動きにも要注目である。
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2017年07月22日

7/22一冊の目録から八年前が甦る。

今日は午後三時過ぎに荻窪北側の天沼に流れ着く。熱風に包まれたまま、すっかり衰えてしまった最後の体力を振り絞り、荻窪駅の南側を目指す。線路際に到達すると、おぉ!遥か彼方に暑くてもお客が店頭に群がる「ささま書店」(2008/08/23参照)の姿が臨めるではないか。
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わりと深い線路下の地下道を潜り、店頭棚前着。学研「愉しき夫婦/小島信夫」光風社「悪魔の系図/島田一男」毎日新聞社「新戦後派 野坂昭如 寺山修司 永六輔 野末陳平」流行通信「Studio Voice vol.132 江戸川乱歩-ミステリアス・フリーク」を計630円で購入する。この1980年代丸出しの江戸川乱歩特集は、目次には男装の甲田益也子がモノクロで登場し、次を開くと見開きで車の中で張り込み中の少年探偵風の戸川純がドン!
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その時代でしか出来なかった乱歩の捉え方が、もはやノスタルジーの域に突入してしまっている。乱歩+八十年代の二重のノスタルジーは、偉大なノスタルジー+消費され失われた時代的ノスタルジーとも言え、素敵に軽薄なのだが、妙な相性の良さも紙面からふうわりと立ち上がって来る…。

そのまま勢いで阿佐ヶ谷まで歩き通し、夏の夕方の「古書 コンコ堂」(2011/06/20参照)。
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するとたちまち店頭左脇の雑誌&ビジュアル本箱の中に、「古本 海ねこ」(2012/12/17参照)の古書目録第一号を発見したので、すぐさま店内に飛び込み「今日はこれだけで」と103円を支払い購入する。2009年七月発行で、最初から図版多めで文字ビッシリの、絵本&児童文学に特化した全98ページの気合いの入った目録である。やはり古書絵本の図版は見ているだけでワクワクしてくる。ところが冒頭のこれまた細かい案内文を読んでいると、目録を出す同時期に、「絵本、そして、本にまつわる人形・雑貨たち 古本 海ねこ 6日間限定ショップ」を開くとあるではないか。その瞬間、熱を持ち鈍った脳髄の奥底で、古い記憶が生意気にもスパークする!…そうか、これは青山の「日月堂」さんの隣の、元「銀鈴堂」で限定ショップを開店した時の目録なのか!行った、これ確か最終日に行ったはずだ!(2009/08/01参照)と、ちょっと興奮してしまう。開催期間は7/21〜8/1の飛び飛びの六日間なのだが、ちょうど八年前のことなのである。奇妙な符号に驚きながらも、八年という月日の経つ早さに、しばし唖然としてしまう。
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2017年07月20日

7/20近所で大量の古本を見られるのは?

今日は仕事でほぼ一日中家の中に雪隠詰め…つまりは古本の山に閉じ込められ過ごしているわけだが、昼食後に一時間ほどの間隙を見出して屋外に脱走。そして近場で短時間にたくさんの古本が見られるのは、「本の楽市」(2010/07/18参照)が24日まで開催中の高円寺!そう決めてJR高架下に向かい、強い陽を避けながら直線に高円寺へと向かう。ガッツリ買うと言うよりは、気晴らしの『古本散歩』気分なのである。だがそれでも、買えるものは見つかった方が良いし、それも安く見つかるなら尚更だ。だからたくさんの古本に接する方が、願いが叶う確率は高くなるだろう。そんなことを考えて、まずは「藍書店」(2014/01/14参照)にたどり着く。外壁棚から、茶と珈琲社「寫眞で見るコーヒーの知識」(昭和三十一年発行の、コロンビアのコーヒーを紹介する小冊子。栽培・品種・運送方法・いれ方・最新式ミル&ロースターなどなど)を100円で購入する。続いて同高架下の「都丸書店」(2010/09/21参照)の外棚にも張り付くが、欲しい本&気になる本はみな500円だったので、今日のところはセコくパスする。そのまま駅前を通り越し『座・高円寺』へ向かう。エントランスホールに入ると、二列に縦列するお洒落な古本島のお馴染みの光景が、薄暗いエントランス内に浮かび上がっていた。たまたま補充に来ていた「古書 コンコ堂」天野氏(2011/06/20参照)と挨拶を交わす。今回は「一角文庫」さんも良いのだが、「rhythm_and_books」(2011/08/10参照)さんがだいぶ好み。古書に奇妙なサブカル本…というわけで駸々堂「冗談/滝大作」を500円で購入する。駅方面に引き返して『あづま通り』に入り込み、今日は開いてる「越後屋書店」(2009/05/16参照)へ。家と家との隙間通路壁棚を、隅から隅までじっくり眺め、博通「現代スパイ論/中薗英助」を見つけて、たたまた表に出て来たオヤジさんに100円を支払う。この本、装幀挿絵が中村宏なのでとても不気味。内容は、日本における国際スパイ小説の開拓者による、スパイを通した現代文明論である。これが今日一番のめっけものであろう。それにしても聞いたこともない出版社の『博通』が何だか気になる。まるで『博報堂』と『電通』を合わせたかのような名ではないか。
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2017年07月19日

7/19東京・国分寺 胡桃堂喫茶店

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コメントタレコミで知ったお店が、朝八時から営業していることを知り、まだそれほど気温が上がらぬ前に悠然と訪れてみることにする。ダイヤが乱れ気味の中央線で西へ向かい、巨大な駅コンコースから、これまた巨大な空地が目の前に広がる北口へ出る。北にそのまましばらく進んで、『本町二丁目交差点』で東へ曲がり込む。新しい街並の中を迷わず直線に進むと、やがて『国分寺街道』に合流する『本町一丁目交差点』にたどり着く。その北側角地に、炭色の壁を持つ開放的な喫茶店が出来ていた。右側は扉が大きく開け放たれ、路上と地続きのようなカフェ的雰囲気だが、左側は昭和アンティーク調な扉とウィンドウを備え、喫茶店然としている。そしてウィンドウの向こうには本棚が見えている…こういうお店で毎度困るのは、本を買うだけでも利用出来るのか、ということである。ここも店構えは完全に喫茶店なのであるが、取りあえずは様子を見るために突入して、本棚にまずは張り付いてみよう。喫茶利用が必須なら、いずれは声を掛けられるはずだ…。そう予想して、右側の開放的な入口から、左側の本棚を目指してナナメに店内に切り込んで行く。エプロンを着けた店員さんが「いらっしゃいませ」「いらっしゃいませ」と迎えてくれるが、席には着かずに窓際の本棚前に立つ。ここは自社出版の本と新刊、それにテーマ別の新刊と古本が並べられている。さらに隠れるようにして左奥に進むと、壁際から二階への階段壁が本棚になっており、およそ二十ほどの棚段とボックスが連なっている。ここも新刊と古本が混ざり合い、民俗学・映画・絵本・児童文学・料理・天文・自然・博物学・詩集・出版・本&古本・東京・散歩などを細かく端正に並べている。古本は挟まれているデータスリップの飛び出し部分が、三角カットになっているので、わりと分かり易い。本の量はそれほど多くはないが、知性と教養を芯にしたセレクトがすべての棚に行き渡っている。値段はしっかりの高めが多い。一冊を選んでカウンターに差し出しながら「本買うだけでも大丈夫なんですか?」と聞くと「もちろんです。ここは書店でもありますから。水金土は、夜遅くまで書店としても営業していますので、またぜひいらして下さい」と教えてもらう。ふぅ、良かった。勁草出版サービスセンター「神戸の本棚/植村達男」を購入する。外に出ると通りがかりのおば様が、カウンターの店員さんに向かって話し掛け始めた。「突然ごめんなさいね。でも素敵なお店ね〜。後で絶対来ますわ〜」。

7/16にジョージ・A・ロメロが死んでしまった。映画監督であの現代的なゾンビ(死んだ時の姿の普段着で登場。動きはゆっくり。人の肉を求める。頭を吹き飛ばされると行動が停止。ゾンビに噛まれると潜伏期間を経てゾンビとなる。などなど…)を発明し、映画・ゲーム・漫画・ドラマ・小説の世界に、数多のエピゴーネンとリスペクトとパロディとパスティーシュが現在進行形で蔓延し続ける状況を作り出した、偉大なる人物である。そこで、家にあるロメロに直接関わる物を集めて追悼。LPレコード「ZOMBIE DAWN OF THE DEAD」はGoblinによる映画のサントラで、下北沢にある曽我部恵一経営のお店『CITY COUNTRY CITY』で購入。ABC出版「ゾンビ/ジョージ・A・ロメロ+スザンナ・スパロウ」は映画のノベライズ本。意外にレア本であり、安く手に入れようとすると、結構苦労すること必至。他にも講談社X文庫「死霊のえじき」があるはずなのだが、残念ながら文庫の山に埋もれて発見出来ず…。
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2017年07月17日

7/17夏の「あきら書房」

今日は早い時間に初台辺りに流れ着くが、古本屋さんを行動の基準とする私にとっては、どうにも動きの取り難い場所である…いや、いつの日からかそうなってしまったと言うべきか。ちょっと『甲州街道』に立ち尽くし、過ぎ行く車が巻起こす排ガス臭い風さえも涼しく感じながら、かつてはたどれた近辺のお店を思い出してみる。幡ヶ谷ではまずは『六号通り商店街』の「小林書店」(2008/07/09参照)。可愛い鳩的店名ロゴと、右側の隠し部屋的ゾーンが印象的であった。そして商店街を抜け、さらに『水道道路』も渡って坂を下ると「なつかし屋」(2008/09/28参照)。通路にうずたかく積み上がる本やプラモに苦心しながらも、勇気を胸に本の隙間を進む、そんなスリリングなお店であった。笹塚まで移動すれば、『甲州街道』沿いの「一新堂書店」(2008/06/24&2011/02/07参照)が、常に逸る古本心を優しく受け入れてくれたものだ。美術系に強かったが、私的には文庫でお世話になっていた…。この三店を巡るだけでも、だいぶ心は燃え上がるはずなのだが、今はもうそれも叶わない。現存する「BAKU」(2012/05/28参照)や「DORAMA」(2012/03/16参照)で代用しようにも、代用出来ない味が、なくなったお店には厳然と存在していたのである。右頬をツツッと流れたのは、汗かそれとも悲しみの涙か…。

いつまでも女々しく思い出に浸っていても仕方ないので、京王バスに乗り込んで阿佐ヶ谷方面へ戻り始める。だが終点の駅までたどり着くことなく、『青梅街道』沿いの『梅里中央公園入口』で途中下車し、北側の路地に入って、夏の「あきら書房」(2016/03/28参照)の様子を見に行くことにする。おぉ、この蒸し暑い中、草木の咲き誇る庭の向こうに、ちゃんと古本屋部屋が開放されているではないか。
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間髪入れず店内に入り込み、あまり動きの見られない手前ゾーンはササッと流して、右奥の床に置かれた本の山と本棚中段の古書ゾーンを集中的に漁る。その間に、俊敏な蚊にブスブス刺されてしまい、気がつけば右頬も刺されており、かゆみに悶絶してしまう。だが、牧神社「夢みる人 エドガー・アラン・ポーの生涯/マリー・N・スタナード」白鳳社「婦人職業戰線の展望/東京市役所編纂」(箱ナシで背は傷んでいるが、昭和七年発行の職業婦人についての資料集。巻頭のグラビア『婦人職業の尖端を往く女性』が最高!エアガール・ガソリンガール・マーリンガール・パラシュートガール・ニュースペーパーガール・マネキンガールなどなど)を見つけたので、計100円で購入することにする。奥のガラス障子前に立ち「すいませ〜ん」と何度か声を出すが、応答がまったくない。大丈夫だろうか…もしかしたらこの暑さで老婦人は…などと不吉なことを考えつつ、棚の横に大振りな鈴が下げられているのに気付く。そうか、呼ぶ時はこれを盛大に鳴らすのか。紐を引っ張りンガランガラ…するとすぐに障子が開いて、老婦人が元気な姿を見せてくれた。ホッとしながら百円玉を手渡し、「今日は暑いですね〜」「ええ、本当に」と他愛無い会話を交わし、庭に脱出する。家に帰ってからは、大阪へ再び送る古本の準備に手をつける。
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2017年07月16日

7/16暑さに挫けて大いに怠ける。

朝から仕事をこなした後、予定をしっかり立てて正午過ぎより外出行動を開始する。色々飛び回るつもりで、駅では『都区内パス』を750円で購入。まずは荻窪に向かい「ささま書店」(2008/08/23参照)で外棚に対峙。それにしても暑い。そして珍しく誰もいない…湿気の籠った暑さに舐られていると、体力とともに思考能力も行動力もグングン低下して行くようだ…。だが幸いにも、青木書店「どれい狩り 快速船・制服 安部公房創作激集」(カバーナシ)東峰書房「随想 鼠の王様/椿八郎」(中野・新井薬師の眼科医であり推理作家の随筆集。巻末に中島河太郎による作品目録アリ)を発見出来たので、ニヤニヤと計210円で購入する。暑さに足を重くし続いて西荻窪に向かい、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)で「フォニャルフ」に補充しつつ、晶文社「幻の探偵作家を求めて/鮎川哲也」杉山書店「人形佐七捕物文庫 春色眉かくし/横溝正史」を計200円で購入しながら店主・小野氏と打ち合わせや無駄話などを進め、昨日買った「黄いろい楕圓」を化粧直ししてもらったりしながら冷房の効いた店内で、盛大に楽しくだらしなくだべってしまう。すると、これからの行動予定が涼しい店内から、すべて熱いアスファルトの上にドロリと流れ出てしまい、たちまち雲散霧消してしまった…古本もちゃんと買えたし、今日のところは、予定を返上してもう帰ることにするか。そんな風に怠け心に火を点けて、『都区内パス』が無駄になったことに多少心を痛めながらも、早々に帰宅してしまう…あぁ情けない。
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すると長野県上田市を訪れている南陀楼綾繁氏から、上田の古本屋ルポがメールで届いており、喜ぶとともに、己のだらしなさを大いに反省してしまう。…7/25には閉店してしまう「斉藤書店」(2010/04/24参照)には、どうにかして滑り込みたいものである…そして不定期営業の「ほその書店」(2012/04/30参照)に、たった一度のチャレンジで入れたとは!南陀楼氏はなんというラッキーボーイ!とモニターを前に羨ましがることしきり。やはり古本屋さんは、労を惜しまず足を運んでなんぼの空間なのであろう。
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2017年07月15日

7/15 KITKAT!!

本日は上祖師谷の奥地に漂着したので、住宅街から『祖師谷通り』に脱出して、当然のように「祖師谷書房」(2009/03/05参照)に駆け付ける。どうしたことか店内に迷い込んでいた勇気ある母子と交代するように、極狭の店内へ。そしてそのまま集中的に右側ゾーンの児童文学コーナーを攻め、牧神社「パタシュ星をとる/トリスタン・ドレーム」を300円で購入する。本文挿絵ともに青一色刷りの洒落た児童文学本である。「ありがとうございました」の甲高い聲に送られ表に出て、そのまま通りを下って行くと、「DORAMA祖師ケ谷店」のド派手な100均&五冊400円ワゴンに惹き付けられる。丁寧に各ワゴンに視線を走らせると、ぬっ!創元推理文庫「火葬国風景/海野十三」が紛れてしまっているではないか!と小さく喜ぶ。このようなリサイクル店では、分相応なこのような小さな喜びに巡り会えるものなのだ…と充分に満足して、他に買う本を見出せずにその一冊だけを108円で購入する。
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小田急線に乗り込み、疲労の溜まった身体をシートに落ち着け、ホッと一息。そのままのんべんだらりと新宿に運ばれるはずだったのだが、急に何かのテレパシーを感じ取り、気まぐれに経堂で途中下車してしまう。すると水飲み場に、一羽の鳩がジッと止まっているではないか…水が飲みたいのであろうか。この暑さである。まったく以てしょうがないと、ゆっくり近づいて蛇口を捻ると、鳩は逃げもせずに、流れ出た水に嘴を押し付け、一心不乱に水を吸い始めた。
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おうおう、存分に飲むが良い。その代わり。しっかりと私に渇きを癒した恩返しをするのだぞ。と呪いのような念を鳩に送り、ほどほどのところで蛇口を閉める。そして駅構外に出て、南の商店街の坂を下って「大河堂書店」(2009/03/26参照)へ。店頭で美濃の蜜蜂養蜂業者の小型本を一冊掴んで、店内を徘徊。右から左へと巡り、いまいち色めきたつ本が発見出来なかったので、来たルートをなぞるようにして右側へと戻って行く。あの流氷の絵本でも買って行こうかと、微妙な諦めムードが流れていたところに、通路棚手前側最下段の詩集コーナーにも丁寧に屈みながら目を凝らすと、無造作に本の列の上に突っ込まれていた本に、『北園克衛』の名を見出す!これはっ!と興奮しながら取り出すと、宝文館「北園克衛詩論集 黄いろい楕圓」であった。値段を見ると驚愕の五百円!どひゃっほう、どひゃっほう!と心の中で連呼しながら、ありがたく購入させていただく。これはあの駅にいた鳩の恩返しなのか?いや、最近本当にスゴいぞ「大河堂書店」!!!!!!!そして憧れの垂涎のKITKAT(北園克衛)、どうかこのままお家へおいで下さいませ!
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2017年07月14日

7/14勝地涼のブロマイドが挟まっていた

涼しいうちから能率よく進めて行こうと、早起きして猛烈に仕事する。気温の上昇と競るようにして、どうにか午前十一時前には一段落。昼食後にノンビリした後、猛烈に仕事したご褒美にと古本を買いに外出する。目指すは本日が初日の「五反田遊古会」(2013/01/19参照)である。だが電車に乗っているとき以外は、強烈な日脚にけたぐり回されているような錯覚を覚え、体力をざっくり削り取られて『南部古書会館』に命からがらたどり着く。会館がすでに日影なのにホッとしていると、表の台で「黒死館殺人事件」研究の大家・素天堂氏に声をかけられる。抽選で本が当選したらしく、笑顔である。会場の人影は、すでに嵐が通り過ぎた午後なので、パラパラという感じ。こんなに落ち着いた雰囲気で本を見られるのは、『南部古書会館』では初めての経験である。それにしても今回は、何だかとても古雑誌が多い。安部公房スタジオ上演台本「改訂版 友達 黒い喜劇二幕/安部公房作・演出」を200円で購入し、「古書 赤いドリル」さんと「青聲社」さん(2011/10/17参照)に挨拶し、二階へ移動する。上も雑誌がよく目につく上に、全体的に硬さが漂っている。少し苦しみながらも、河出新書「太宰治の手紙/小山清編」新感線文庫「金田真一耕助之介の冒険」を計800円で購入する。ここでは「月の輪書林」さん(2012/03/29参照)と「古書一路」さん(2013/03/08参照)にご挨拶。

さて、「金田真一耕助之介の冒険」は公演『犬顔家の一族の陰謀』のパンフレット同梱品の、横溝パロディ文庫である。そのパロディレベルはかなり高い上に、執筆陣も戸梶圭太・大倉崇裕・ほしよりこ・笹公人・喜国雅彦など豪華。安く売られているのを見かけたら、ついつい買ってしまう癖がついているのだが、今回の本はいつもとちょっと違っていた。本を開くと、これもパロディ栞が挟まれており(小さく『おしりとしてお使いください』と書かれている…)、さらに古写真風の勝地涼(劇には犬顔家の居候役として出演)のブロマイドが挟み込まれていたのだ…これは今までに見たことのない代物だ。ブロマイドも同梱品なのかどうか不明だが、ちょっと得した気分である。いや、全く必要は無く、正直言って嬉しくはないのだが、ただ何となく得した気分なのである…栞とともに、ちゃんと本に挟んでおくことにしよう。
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2017年07月13日

7/13ラコステと岡田三郎!

本日は夕暮れを迎える前に武蔵境の南に流れ着いたので、これ幸いとまだ高い日に照らされ店頭の本が熱している「浩仁堂」(2011/02/15参照)へ足を運ぶ。その熱い店頭では珍しく何も手に出来ずに、涼しくホッとする店内へ。大好きな児童文学作家・大石真の「ぼくたちの緑の時間」の続編を見つけて喜び、さらに床の木箱からポロシャツで有名なラコステのビジュアルブックを見つけてニンマリ。偕成社「ミス3年2組のたんじょう会・大石真」大沢商会「LACOSTE」計300円で購入する。『LACOSTE』はその歴史と由来から、商品のイラストカタログ+商品用カラーチャートまでを掲載したプロモーションブックである(大沢商会が日本版ラコステを売り始める1986年辺りの出版。ちなみになぜラコステはワニをトレードマークにしているかと言うと、創始者のテニスプレーヤー、ルネ・ラコステがワニのように粘り強く頑固に戦っていたことに由来するそうである…ワニって、粘り強く頑固なのだろうか…。この本は充分楽しんだ後に「Tweed Books」さん(2015/07/10参照)に持ち込むのがベストだろうなぁ…)。疲れてはいるが興が乗って来たので、そのまま強い日射しの下をテクテクトボトボヒタヒタ歩き通し、三鷹の「水中書店」に喘ぎ喘ぎたどり着く。店頭で見つけた学生援護会「POST CARD/安西水丸」名著刊行会さみっと双書「新感覚派の文学世界/紅野敏郎編」を、クーラーの動作音が妙に心地良いリズムを刻んでいるのに気付きながら、計200円で購入する。「新感覚派の文学世界」は、もしや!と思って目次に視線を走らせると、追っかけている岡田三郎のコントについての論考を発見。三鷹でもニンマリ出来たことに満足して、ようやく電車に乗って帰宅する。
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2017年07月12日

7/12春浪の続きを一応探しに行ってみる

午後にひとつの取材を受けた後、そのまま外出継続。先日大阪に新たな古本を大量に送り出したばかりなのだが、まだまだ不足気味なので良さげな本を手配しなければならないのだ。…まったく、私自身が大阪に行きたいのに、本ばかりが大阪に出向いているこの状況…。そしてさらに、先日の「古本まつり」で手に入れた押川春浪「日歐競事 空中大飛行艇」(2017/07/07参照)が、楽しくあっという間に読み進めたことにより、続き物であることが判明してしまう。物語中盤まで、肝心の飛行艇は説明だけでなかなか完成に至らず、妙な痴話話を中心に展開して行くのに大いに戸惑いながら、最後に悪玉博士の飛行艇を追って、善玉の飛行艇が出発するところで、本は終わってしまったのである。巻末の広告を見ると、『世界怪奇譚』シリーズの六遍目に「續空中大飛行艇」があるではないか。これは是が非でも続きを読まなければ!…とは言っても、おいそれと手に入る本ではない。恐ろしいことにその巻末広告の説明文には、これからのストーリーが超短く要約されてネタバレも甚だしいのだが、物語の結末をあっさり知ってしまった今でも、この同じ明治の本で読み耽りたい気持ちは変わらないのである。というわけで、足はまつりで「空中大飛行艇」を出していた武蔵小山の「九曜書房」(2009/03/26参照)へと軽やかに向かっている。いや、片割れがないことは百も承知なのだが、万が一ということもあるかもしれない。見つけたならば、またATMに走って…。蒸されたような熱さの駅前は、珍しく人影が少なく白っぽい。そんな中でも元気に高校球児が練習するグラウンド脇の小道に入り込み、暑さにやられながらお店に到着する。表に出されている本も、かなり熱を帯びてしまっている。二冊掴んで店内に入り、まず麗しの500均棚の観察に入る。相変わらずグッと来る本をさり気なく並べてくれていて、期待を本当に裏切らないなぁ。そう言えば表のウィンドウに、恐らくお店オリジナルのイラストポスターが貼られているのだが、『心をくすぐる古書の店』のキャッチフレーズが書かれ、古書を取り出す白猫が、横から飛び出す三本の虎猫の足に『古書 古書 古書』とくすぐられているのだ。私にとっても、まさにここは『心をくすぐられるお店』であるな!と激しく同意して一冊本を掴み取る。そして左側通路に入って、押川春浪の幻を追いかけ始める。だが春浪本でみつかったのは、博文館文庫の二冊のみ…いや、分かっていたんだ、最初から無いのは。だが大いなる難関ではあるが、いつかは見つけなくちゃならない…しかも、いやどうしても安値で…。ちょっと周りがすっきりした帳場に向かい、講談社少年少女世界探偵小説全集15「ポッツ家の怪事件/クイーン」(カバーナシ)国書刊行会「私が選ぶ国書刊行会の三冊」美術公論社「キキ エコル・ド・パリ追想」を計900円で購入する。
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何だかすでに暑さにめげ始めているが、どうにか気力を振り絞ってもうちょっと古本を買いたいと、高円寺駅で途中下車。だがいつになったら私は、高円寺は水曜定休の古本屋さんが多いことを覚えるのか!と激怒したくなるほどお店のシャッターは下りまくっていた。最後に「あづま通り」に向かうと、午後五時に「古書十五時の犬」(2011/11/22参照)は開店準備を始めており、「越後屋書店」(2009/05/16参照)はなんと臨時休業。残念ながら気力尽き果て、「十五時の犬」の開店さえも待ち切れずに、暑い夕陽を正面から浴びてヒタヒタ帰宅する。
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2017年07月11日

7/11元古本屋さんの写真展を見に行く。

本日流れ着いたのは永福町駅の北側。この後どうしても高円寺に行きたいのだが、東京のへそ『大宮八幡宮』前から出ている京王バスが来るのは二十三分後…よし、歩こう!とテクテクテクテク午後七時の杉並の住宅街を、北に向かって切り裂いて行く。道の途中の松ノ木にて、古本も商うリサイクルショップ「AMANAYA AI2」(2009/06/12参照)に飛び込み、
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若木書房「隼/望月三起也」を200円で購入しつつ、レジ前に置かれた昭和四十年代のガメラのブロマイドが気になったので、店番を任されいたであろうご婦人に、値段について追求する。そのブロマイドには、千円と三百円の異なる値付がされていたのだ。「300円なら買います」と伝えるが、ご婦人はとても嬉しそうに「うわ、値段が二つ、なんでだろ」と笑顔を浮かべまくっている。結局謎は解明されず。店長さんの判断待ちというところに落ち着いたので、「また来てね、その時までに調べときます」と言われる。さらに北へ北へと歩き詰め、途中「アニマル洋子」や「大石書店」の閉店風景を目撃しつつ、駅前の『富士そば』で腹ごしらえをしてから、高架脇の『屋根裏酒場 ペリカン時代』の狭く急な階段を上がる。
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本日から7/29(土)まで、元西荻窪の古本屋さん「なずな屋」(2014/09/24参照)の石丸澄子さんが、『1990年 道東』という写真展を開いているのである。古本屋さんに関することなら、何処までも顔を突っ込んで行こうと酒場の扉を開けると、石丸澄子さんは当然のこと、暢気文庫さんや『三省堂書店 神保町店』のOさんがお出迎え。恐縮しながらみなさんにご挨拶し、壁に貼られた六十枚余のモノクロ写真を、ビールやキューバ・リブレを飲みながら、じっくりと堪能する。ホンダのベンリィに跨がり、北海道を旅した奇蹟である。写真の間間には、原稿用紙に書かれた朴訥な当時の思い出が出現。思えばこの写真を撮っている澄子さんは、まだ「興居島屋」(2008/09/12参照)も開いていない時代なのであるな。無意識なのか、乗物の写真が多い事に気付きつつ、三十分ほどで楽しい酒場を後にする。
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2017年07月10日

7/10本郷でレジスターの歴史を遡る

東大近くでひとつの用事をこなし、そのまま北から『本郷古本屋街』に突入する。灼熱の陽光を浴びる通りは、車の通行以外はいつもの静けさを保っている。うわっ!楽しみにしていた「第一書房」(2011/08/16参照)がお休みだ…。本郷に来て、ここの外棚を見られないのは、だいぶショックが大きい。だが開いてないものは仕方ない。手ぶらでそのまま南下を続けて「棚澤書店」(2009/10/08参照)にたどり着き、外に並んだ100均箱に希望を託す。
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小学館学習百科図鑑「化石と岩石・鉱物」晶文社「子どもたちを犯罪から守るまちづくり/中村攻」中公新書「ル・コルビュジエを見る/越後島研一」を計300円で購入する。今まで気付かなかったが、薄いエメラルドグリーンのレジは鉄製で、だいぶ古風である。精算はガシャコンとレバーで行い、前面に集まる数字ボタンが、まるで柱状節理のように段々に美しく密集しているのだ。珍しい木製バルコニーを備えるお店とともに、長い年月を働いて生き延びてきたのであろう。店内を吹き抜ける生温い風を浴びながら、そんなことを考える。外に出て、再び暑い街路を歩き始めるが、身体が早くも水分の補給を求めているようだ。『東大正門前』で脇道に曲がり込み、思い切って憧れの『万定フルーツパーラー』に飛び込んでしまう。
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店内には客は一人もなく、ただただ昭和の喫茶&食堂風景を凍り付かせたような空間が存在している。内装は焦げ茶の木材を基調にしており、茶と白の市松模様タイルの床上には、細い鉄脚を持ったテーブル席が窓際に広がる。そして何と言っても一番目を惹くのは、入って正面左にある、円形のカウンター席…あぁ、懐かしいという言葉だけではすまないこの感じ、秩父のカフェーの生きた化石『パリー』(2011/06/07参照)とまったく同種の味わいではないか!と大いに喜び、勧められた窓際の涼しい席に陣取り、レモンスカッシュを注文する。すると壁には写真家・高梨豊の、大きなオリジナルプリントが掛かっているではないか。写っているのはお店の巨大な木製レジスターで、もはやアンティークの域に突入してしまっている、とてつもなく素晴らしい物である。棚澤のレジも格好良かったが、こりゃあ格が違い過ぎるな…。そんなお店でたっぷりと昭和初期空間に浸かった後(メニューにあったカレースパゲッティとハヤシスパゲッティはいつか絶対食べに来よう…)、レモンで元気を得たのでさらに南を目指し「大学堂書店」(2009/01/06参照)へ。色々ゴソゴソと漁るが、奥の大型雑誌箱から探し出した一冊の俳句雑誌を購入することに決める。東炎山房「東炎 第九巻 第十一號」を350円で。俳句には縁遠い身なので、中身にはほとんど興味がないのだが、なんと表紙が織田一磨の自刻木版画なのである!『ランプ』とタイトルが付き、裏表紙にはそのランプに火を灯したであろうマッチも刷られている。表紙は印刷ではなく、その木版が直接刷られているようだ。さすがに織田一磨が刷ったわけはないだろうが、どんな形であれ、これは立派な織田一磨の版画作品と言えるだろう!中を見ると、谷中安規のカットも発見したので、即嬉しさ倍増となる。
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2017年07月08日

7/8閉店する無人店から追い出される

本日は広い広い世田谷区の僻地の如き『祖師谷公園』に流れ着く。生まれて初めて来た場所で、今年初めての蝉の鳴き声を耳にして夏を実感するが、公園の北側部分に、あの『世田谷一家殺人事件』の事件現場となった住宅が、緑色の防護シートに包まれて保存されているのに気付き、慄然としてしまう。しかし家屋に接する公園では、子どもたちが遊具で無邪気に遊ぶ光景が展開している…凄惨な未解決事件の記憶とほのぼのとした日常が混ざり合う奇妙な状態に戸惑いながらも、しばしの黙祷を捧げて、バスで京王線の千歳烏山駅へと向かう。

駅北側に出て、もう午後七時前だがまだやっているだろうか?と、無人で素敵にクレージーな古本屋「イカシェ天国」(2008/09/23参照)に足を向ける。まだ営業中だ!と喜び飛び込み、ほぼ動かぬ態の棚に視線を注ぎ始めると、渡辺竜王のようなネクタイ姿の男性が、表の小ワゴンを中に運び入れてきた。どうやら斜向いの本の料金を支払う不動産屋の方らしいのだが、この様子ではどうやらもう閉店らしい。「お店、終りですか?」と聞くと「ハイ、閉店です」ともはや本を買わせてくれぬ模様である。「そうですか、すみません」とそのまま表に出ると、竜王は音楽を止め、電気を消し、立看板を素早く取り込み、あっという間に閉店してしまった。古本を買えなかったのは残念であるが、無人古本屋で店員さんと接するレアケースに出会えたので、今日のところは良しとしておこう。
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その後阿佐ヶ谷に帰り、「千章堂書店」(2009/12/29参照)にて光文社知恵の森文庫「冒険手帳/谷口尚規著・石川球太画」を100円で購入する。
posted by tokusan at 22:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする