2017年08月23日

8/23「盛林堂」でダベる。

早い昼食を食べ終えて、ペタペタとビーサンを引き摺り外出。足は荻窪に向き、雨仕様の「ささま書店」(2008/08/23参照)店頭棚で、大塚書房「狂人の世界より歸りて/紀野親二」新潮社「六人の作家未亡人/野田宇太郎」荒地出版社「推理試験/二宮佳景編」を計315円で購入する。そしてそのまま判を捺したように西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)に向かい、「フォニャルフ」棚にドバッと八冊の昭和三十年前後の「探偵倶楽部」を並べる。雑誌でしか読めない南沢十七&今日泊亜蘭訳小説や、大河内常平・楠田匡介・狩久・夢座海二・潮寒二などが各誌に跋扈。状態はわりと良くお安めになっていますので、早い者勝ち!などと補充を終えると、たくさんの本を抱えた夏葉社・島田潤一郎氏が登場。「最近よく会いますね」と挨拶を交わす。いよいよ出来上がって来た、山本善行撰「埴原一亟古本小説集」を納本しに来たのであった。今直ぐこの場で買いたくなるが、ググッと我慢して27(日)の『善行堂in夏葉社』で買うことを、意味もなく宣言しておく。埴原一亟は、亀鳴屋のアンソロジー「したむきな人々」で、芥川賞候補にもなった『翌槍(あすなろ)』を読んだことがあるだけだが(確か立て場回りの古本屋さんの話だったような…)、他の作品がどんなものなのか、今から楽しみでたまらない。なんたって『古本小説集』なのである。颯爽と他店へ自転車で納本に回る島田氏を見送り、こちらはだらしなくさらに帳場横でだべっていると、今度は喜国雅彦氏が「ひとたな文庫」の補充に登場したのでご挨拶。鞄から出した茶色い探偵小説が次々棚に並ぶのを、唖然呆然と心の中で涎を垂らしながら眺める…。そして店主小野氏も交え、乱歩の話・フェティッシュが高じ過ぎて踏み外す性犯罪話と漫画があったからこそそうならないで済む話(氏は頼まれているプロフィールを「俺がもし色々やってしまったら、これが新聞にそのまま載るのか…」などと妄想を飛躍させながら作成しているのだ!)・雑居房ではなく独居房への激しい憧れ(本来は懲罰であるはずの独居房だが、誰にも邪魔されずひとりで色々考え続けられるから絶対に楽しいはずだ!と力説)などの、エッジの立ちまくった話に花を咲かせる。全く持って素敵で面白過ぎる、日本推理作家協会賞&本格ミステリ大賞受賞漫画家さんですよ!と、ついつい濃厚な時間を古本屋さんの帳場で過ごしてしまう。このまま閉店までいても大丈夫そうなので、慌てて引き上げることにする。

ところで今日買った「狂人の世界より歸りて」は、完治した文学者(編集者&小説家)の元精神病者が、その発病から全快までを小説仕立てで著した、昭和二十三年の本である。『發病篇(妄覺・妄想篇』『治療篇(精神病院入院篇』『全快篇(雜篇)』の三章で構成され、病的な妄想が刻一刻とすべての出来事と思考に広がって行くのが、つぶさに読みやすく展開して行く。脈絡のあまり無い夢の話などとは全く違い、現実と妄想の境目がずぶずぶと浸潤して行く、まるで恐怖小説のようで、不謹慎ではあるがなかなか面白い。何故か厚着カバーになっており、人文書的シンプルカバーの下には、色使いの派手な狂的世界のイラスト(出版社名も『照林堂』となっている)が隠れている…。
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2017年08月22日

8/22一房の葡萄、そして手紙舎

今日は午後二時半過ぎにつつじヶ丘北側に流れ着いたので、そのまま駅へと向かい、いつの間にか古本も売る雑貨屋「mater」(2016/02/23参照)が消滅しているのを目撃し、結構長い五分間の踏切待ち。上り電車と下り電車が永遠に間髪入れず行き交う雰囲気に、待っている人々の眉間にいらだちの縦皺が深く刻まれて行く…。そしてたった二十秒の隙に南に渡り、そのまま『神代団地』の商店街にある「手紙舎」(2009/12/13参照)を久々に訪れることに決める。何となく方向をアバウトに定めて歩を進めて行くと、何の変哲もない礫敷き駐車場フェンスに絡まる葉っぱの大きな蔓草が目に留まる。あれ?おかしいぞ?おかしなものが、葉の裏にチラリと見えているぞ?といぶかしみ裏側を覗き込むと、そこにはたわわに実った、大きな大きな緑の葡萄の房がぶら下がっていた…これは、なんだ。辺りを見回しても、別に葡萄畑があるわけではなし、何故こんな駐車場のフェンスに、マスカット的な大きな葡萄が自生しているのか!
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とかなり大きな衝撃を受ける。衝撃を受けつつ、次に思ったのは「これは食べられるのだろうか?」ということ。写真を撮り、少しだけ逡巡した後、ついつい誘惑に負けて、大きな一粒をプチリともぎ取る。そして皮をむいて口に放り込むと、少し硬く酸味はあるが、立派な美味しい喉の渇きを潤すほどの葡萄であった…イカン、私は道端で何をしているのか。我に返って住宅街の中を抜け、『神代団地』の中庭的店舗ゾーンにたどり着く。「手紙舎」は商店街の一角で、その姿をよりシックに変化させ、しっかりと営業中であった。地元のマダム客が二人いる店内に入り、大テーブルの片隅に腰を下ろす。そしてここでも誘惑に負けて、調布ビールをオーダー。その間にも男子・女子の一人客が訪れ、スイーツと紅茶を注文している。壁棚の古本は、今は女性系雑誌がメインとなり、暮し・ファッション・パリ・料理などがきめ細かく収まっているようだ。なので今日は、グラス二杯分のビールを飲みつつ、白昼の団地風景を漫然と眺めて過ごす。
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風に揺れるヒマラヤ杉の枝と、家賃値上げ反対の幟。誰も座らぬ吹き曝しのベンチ。『30』の番号を持つ矩形の白い団地棟。自販機前の側溝蓋を外し、落ちた小銭を探す少年たち。隣りの薬屋の、安売のラップと洗剤が山積みされたワゴン。そんなものたちにボ〜ッと幸せに視線を泳がせているうちに、あっという間に飲み終わってしまったので、648円を支払い帰ることにする。

ビールに頬を染めて阿佐ヶ谷に帰り着き、今日は古本を買わぬ覚悟で『旧中杉通り』を歩いていると、あれ?定休日のはずの「古書コンコ堂(2011/06/20参照)」が開いているじゃないか。ついつい嬉しくなり店頭で三冊掴んで中に入ると、店主・天野氏とばったり。「今日は何で営業しているの?」「いや、先週休んじゃったんで…それで、ツライから…」…と言うわけで、先週のお盆休みの分を取り戻すために開けていたらしい。ファイト、我らのコンコ堂!角川文庫「能面の秘密/坂口安吾」北隆館「しだ・こけ・きのこ/牧野富太郎・監修」「新宿PLAYMAP 1969 12月号」を計309円で購入する。
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2017年08月21日

8/21大阪・高円寺・知立!

午前中のうちに選び抜いた三十冊ほどの古本を箱詰めして、大阪に送り出す。現在『梅田蔦屋書店』で開催中の「夏の古書市2017」への追加補充である。香山滋「怪異馬霊教」式場隆三郎「二笑亭奇譚」赤瀬川原平「櫻画報永久保存版」小津安二郎「お茶漬の味 他」当時ものリーフレット「哈爾浜」などが含まれていますので、どうぞお見逃しなく。しばらくしたら古書コンシェルジユの手を経て、棚に並ぶことになると思いますので、西の方々に引き続きお気にかけていただければ幸いです!

重い古本から解放されて、テクテク歩いて高円寺パトロール。「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)では店頭から二冊を掴んで中に入ると、店主の粟生田さんは、まるで料理か洗濯物を干している時のように、店内BGMに合わせてハミングしながら古本を結束しているではないか。他に店内で歌う人と言えば、神保町の「三進堂書店」(2009/04/07参照)店主を思い出してしまう…後はちょっと違うが、「青聲社」(2011/10/17参照)店主の口笛演奏がそれに近いか…。集英社「名探偵クマグスの冒険/東郷隆」奇想天外社「サタデイ・ナイト・ムービー/都筑道夫」を計200円で購入する。その後は何も買えないのが連続し、結局「アニマル洋子」(2014/03/14参照)まで行き着いてしまう。宇宙船文庫「東宝特撮映画2ポスター全集/構成・竹内博」(“2”なので、東宝特撮映画のB面的作品を収録。ポスターがすべてポストカード化された硬い文庫本。「獣人雪男」も載っている)を100円で購入する。

さて、そして少し先の話ではあるのですが、今年になって愛知県の本屋さん「正文館書店本店」が目出度い創業百周年を迎えています。それを記念して、かなりの長い期間、様々なイベントが多数開催されるのですが、その中のひとつ「一箱古本市in正文館書店知立八ツ田店」に遥々参加させていただくとともに、当日はあまりにも畏れ多過ぎる目黒考二氏とのトークショーも行うことと相成りました。今後もことあるごと宣伝して行くつもりですが、まずは少しでもみなさまの心に情報がわだかまるよう、お知らせした次第であります!

★一箱古本市in正文館書店知立八ツ田店
■11/11(土)第2駐車場(雨天時は店内カルチャースクエア))
■10:00〜14:00

★THE対談 目黒考二×小山力也(古本屋ツアー・イン・ジャパン)
■11/11(土) 14:00~15:00 トークショー 15:00~15:30 サイン会
※一箱古本市の一環として開催します。
■第二駐車場にて(雨天時は入口特設会場)
■予約は、インフォメーションカウンター、またはお電話にて承ります!。
正文館書店知立八ツ田店 知立市八ツ田町曲り57-1
TEL0566-85-2341 10:00~22:00 年中無休 http://www.shobunkanshoten.co.jp
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2017年08月20日

8/20三井信託文庫?

今日は夕方に世田谷の千歳台に流れ着いたので、千歳船橋駅までテクテク歩く。駅近くのコンビニで、お坊さんがカップラーメンを立食いしながら缶チューハイを呷る光景に度肝を抜かれる。一駅移動して経堂で途中下車。「大河堂書店」(2009/03/26参照)にいそいそと向かう。店頭店内をいつものようにじっくりと観測する。おっ、今日はご婦人だけではなく、若い頃の植草甚一似店主も店内に姿を現している。今日は単行本に食指の動くものはなく、レジ周りも何だかおとなしい。そこで文庫棚に照準を合わせ。さらにじっくり端から端まで目を凝らしてジリジリ移動する。結果、アテネ文庫「朝/織田作之助」三菱信託文庫「暮し切りかえ読本 明日に向かってトライしよう」を計510円で購入する。人文系中心のアテネ文庫に織田作之助が収録されてたんだと軽く驚きつつ(織田が学生時代に書いた戯曲である)、見事に岩波文庫“赤”に擬態した『三菱信託文庫』は面白い収穫であった。ご丁寧にオリジナルパラフィンも掛かっているが、全64ページとだいぶ薄手の、様々な財産運用と人生の利口な楽しみ方を提案する銀行のパンフレットなのである。鈴木義司の四コマ漫画を多数掲載。文庫と名の付いている限りは、“文庫スキー”のあの方が持っていなかったら、いずれ献上しなければ…。
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2017年08月19日

8/19古本屋さんで雨宿り

今日は石神井公園に流れ着いた途端、大粒の雨がボタボタ落ち始め、激しい本降りとなる。その雨にもめげず、シャボン玉を飛ばして遊び続ける親子三人が、次第にたがが外れたように奇声を上げ始め、土砂降りの中ではしゃぎまくり動物的に解放されて行くのを目撃…う〜む、何だか涙が出るほど美しい。てなことに見蕩れていると、傘を差していてもたちまちずぶ濡れになって来たので、急いで石神井公園駅方面に急行する。靴の中がたちまち海のようになり、頭上では雷光と雷鳴がタイムラグなく発生し続けている。仕舞いには巨大な神がまるで巨大な蛍光灯を点けたり消したりしているような、異常な状態に。練馬って、いっつもこんな感じなのか…。雷鳴がもはや“ゴロゴロ”ではなく、“ドッカン”“ガッシャン”と自動車事故のような音を立て始めたところで、駅南口の「草思堂書店」(2008/07/28参照)にたどり着く。
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びしょ濡れの下半身で店内に逃げ込み、冷房に震えながら一安心する。お客は私一人で、濡れた靴音を微かに響かせながら、店内をゆっくりと一周する。それでも、雨と雷は収まる気配がまったくない。辛抱してさらに二十分近く様子を見るが、表は雨に煙ったまま…。あきらめて評論社「ビッケと赤目のバイキング/ルーネル・ヨンソン」(箱ナシ)を300円で購入し、再び身体を派手に濡らしてしまい、雷に首を竦めながら石神井公園駅。駅前はたくさんの人が雨宿り&途方に暮れており、ちょっと非日常的な光景となっている。そんな中、駅舎下に滑り込んで来たバスに乗り込み、またもや冷房に震えながら無事に阿佐ヶ谷に帰り着く。
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2017年08月18日

8/18古本屋さんに売りに行ったり買ったり補充したり。

先日手に入れたラコステの本(2017/07/13参照)と、部屋内のそこかしこから発掘されたファッション関連の本をひとまとめにして、白楽の「Tweed Books」(2015/07/10参照)を目指す。とにかく門外漢であるファッション関連本は、応援する意味も込めてツイードさんに買い取ってもらうことに決めているので、神奈川くんだりまで出かけるのは決して苦ではない。車中の読書は宣言通りに「風の歌を聴け」である。やはり映画のイメージにだいぶ引き摺られながら、半分を読み終えたところで白楽着。テクテク歩いて店前にたどり着き、今更ながら『古本屋さんらしくなったなぁ』と感じ入り、店頭ワゴン&棚をチェックして店内へ進むと、おぉっ!平日午後一時なのに、お客さんが四人もいるじゃないか!と失礼な驚きで口元を緩め、ファッション関連を揺るぎない核にしながらも、バラエティ豊かになり、棚も本の量も厚みを増した感のある店内を回遊する。思えばこの場所に開店してもう二年が経つのだ。古本屋らしさを増すのも、当たり前の話である。二冊の絵本を掴んで帳場に差し出し、同時に買取も依頼しつつ店主にご挨拶する。ラコステ本と「原宿ゴールドラッシュ」を喜んでもらい、買取成立。福音館書店 こどものとも355号「やぎのはかせのだいはつめい/槇ひろし」(大名作「カポンをはいたけんじ」の著者による、一歩間違えばマッドサイエンティストとなりかねない、優しさ溢れるやぎのはかせの発明披露絵本)年少版こどものとも99号「かさ/松野正子さく 原田治え」(イラストは『OSAMU GOODS』の原田治である。可愛くクオリティ高し)を計600円で購入する。
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お店を出た後は、最近閉まり気味と噂の「鐵塔書院」(2008/08/15参照)に行ってみると、よかった、しっかりと営業中。だが店内に入ると、パラフィンに包まれ整然としている本たちは相変わらずなのだが、通路に結束本が積み上がり、棚の下部が見られないところが多くなっている…くぅ、残念だな…。創元推理文庫「女魔術師 /ポワロ&ナルスジャック」(初版だが厚着カバーはナシ。愛読者カードアリ)を300円で購入する。

神奈川にサヨナラして西荻窪へ向かう。その間の車中で「風の歌を聴け」読了。何故、大森一樹は『ジェイズ・バー』のマスター“ジェイ”に坂田明をキャスティングしたのか…そればっかりが気になってしまった…。そんなことに思考を支配されながら、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)で「フォニャルフ」に補充する。帳場には、横田順彌氏と北原尚彦氏の古典SF&奇書SF研究師弟コンビがいらしたのでご挨拶。色々お話を聞かせてもらう中で、北原氏が「そうだ、持って来れば良かったな。大正時代の探偵文庫「要塞の秘密」。怪しい匂いがしたので買ってみると、シャーロック・ホームズの「海軍条約文書」の、書誌にも載っていない翻案だった」と勘で本を買い見事大当たりのエピソードを披露すると、すかさず横田氏が「俺も明治本の「はねこ夫人」(すみません、マニアック過ぎて、正確な表記が分かりません…)を怪しいと思って買ってみたら、見事にSFだったもんなぁ」と感慨深く同様の超絶エピソードを披露。“怪しい”という勘だけで古本を買う師弟!この師匠にしてこの弟子ありの、誠に麗しき師弟関係を目の当たりにする。話は流れて横田氏が「小酒井不木の作品に、ノロマと常に蔑まれてる眼科医助手が、教諭と患者に同時に復讐するために、手術の時に◯◯と◯◯の◯ーゼを入れ替える話があったよな。何だっけ?」に対して思わず「『恐ろしき錯誤』ですかね」と言ってしまうが、これは大勘違いの、乱歩作品でありました。…すみません…。「確か『痴』が付くんだよな…」の言葉を覚えておいて、家に帰り着き、奥付と最終ページの一部が切り取られた(T蔵書ではない)、以前500円で買った春陽堂創作探偵小説集「恋愛曲線/小酒井不木」を掘り出して、目次に“痴”の字を探す。すると49ページに“痴”が旧字表示の『癡人の復讐』という作品があり、内容はまさに横田氏の語ったストーリー。…ふぅ、ここまで含めて、すべてに古本の絡んだ、真夏のとても楽しいひと時であった。
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2017年08月17日

8/17刹那の邂逅と発見。

夕方に出先から阿佐ヶ谷に戻って来ると、北口アーケード商店街で、向こうからやって来る夏葉社・島田氏に気付いたので擦れ違い様の挨拶を交わし、立ち止まることなくそのまま別れる。刹那の邂逅であった。その一瞬の擦れ違いに何だか勝手にインスピレーションを得たので、アーケード内の「千章堂書店」(2009/12/29参照)前で立ち止まり、店頭右側の100均単行本をチェックしてみることに。九割方は変わりないのだが…そんな本の列の上に、村上春樹「風の歌を聴け(新潮社)」がゴロリ…『群像新人文学賞受賞』の帯が付いている。これが初版だったら素晴らしいのだけど、と手に取り奥付ページを開いてみる。あっ、『一九七九年七月二五日 第一刷発行』…つまりは初版じゃないか!途端に願いが叶ったことに、充分な幸せを感じ入る。本は天が少し経年の埃で汚れているくらいで、状態は極めて良好。太田出版「完全自殺マニュアル/鶴見済」とともに計200円で購入する。「千章堂」さんはしっかりチェックしていると、時々こういう思わぬプレゼントを掴ませてくれるなぁ…。ちなみに私は村上春樹を一冊も読んだことがないのであるが(「風の歌を聴け」は大森一樹監督のATG映画で見たことがある。主演は小林薫で、鼠役・巻上公一の映画内映画が面白かった記憶が…)、これはようやっと、読む日が来たということか。つまりはこの本を、ただ価値のある古本として買っただけなのだが、それが“読む”という本が本来の役目を果たす行為により、一歩踏み込んだ新たな関係性を、その古本と結ぶことになるのである。せっかくの刹那の邂逅が齎した、刹那の発見。その体験も加味して、この掘出し物をじっくりと楽しむことにしよう。
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2017年08月16日

8/16今日も家の古本山を掘る。

今日は三鷹と吉祥寺の間に流れ着いたので、吉祥寺へとトボトボ向かい、いくつかの古本屋さんを覗き込んでみるが、気分が乗らぬためまるで成果ナシ。古本を買えないと、どうしてもこうも荒んだ気持ちがイガイガと湧き上がって来るのか…。阿佐ヶ谷でも古本屋さんを伝いながら家に向かうが、定休日とお盆休みが多いため、こちらでも何も買えずに帰り着いてしまう。あきらめておとなしく届いていた仕事をこなした後、よっしゃっ!と気合いを入れて、大阪に送る追加補充本を作るため、仕事部屋左側手前の難攻不落の古本山の採掘作業に取りかかる。…ここだけは今までの古本販売や一人古本市でも、下層まで到達したことはなかったのだ…何が出て来るか非常に楽しみであるが、縦横手前奥と立体的に各々が支え合うように古本が積み上がっているので、さて何処から手をつけたら良いものやら…。まずはとにかく上半分(ここはわりと本を探しやすいので、出入りが頻繁なのである)を退かすことにする。仕事部屋には鍵型の極狭けもの道しかないので、バンバン隣接するキッチンに運び出し、下半分をとにかく露出させることに集中する。二十分ほどで七本の古本タワーを作り出すと、およそ六年は手つかずの古本層+かつての新刊層が見えて来た。ほとんどが単行本と写真集&デザイン関連である。だから、重い。掘り出すのに、手間がかかる。掘っても掘っても、闇のように本が出て来るる出て来る…まるで底無し古本沼である。おぉ。井上青龍や鈴木理策も出て来た…これは取っておくか…。
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掘り出しながら、本を選別し、後にドシドシ積上げて行く。そしておよそ一時間半で作業は終了。すっかり疲労の極みに達してしまったのだが、販売用の本をまとめた後は、動かした古本を再び堅牢に積上げねばならぬのだ…。結果山の高さは変わらぬが、少し厚みが減少した…通路が広くなったぞ。ウフフフ…。そんな束の間の肉体労働の最大の喜びは、フィルムアート社「特撮と怪獣/成田亨」を発掘したことのなのだが、これは確か遥か昔になくなった「阿佐谷南口駅前のふるほんや」(2008/05/29参照。2008/05/28に閉店したのか…)で安値で見つけた掘出し物のはず…と後見返しを見てみるが、値段も書いてなく値札もなく、痕跡はゼロ。う〜む、残念だなぁ、と思いつつ諦め切れずにパラパラ本を見ていると、何と前の見返しに値段札上部の古本屋ラベルが残っているではないか!まるでつい昨日購入したかのような、ピンと張ったラベル…これが写真以外に唯一手元に残った、お店の確かな名残なのである。
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2017年08月15日

8/15火曜日にクルトと出会う

先日三鷹台の「獏の店」を訪ねた折(2017/08/06参照)、オッチャンの方から『ちひろ美術館』の招待券をいただいていたので、上井草まで観に行くことにする。現在開催中の『奈良美智がつくる茂田井武展』は8/20(日)で終わってしまうので、茂田井にぞっこんな身としては、決して見逃すわけには行かぬのである。親切に連続する電信柱の案内に導かれ、無事に住宅街の中に佇む瀟酒な小美術館に到着する。老若男女で賑わう一階二階の展示室で、素朴で心がフツフツ優しく醗酵してしまう、戦前〜戦後の絵本原画やスケッチ風カラー水彩画を存分に楽しむ。名作「セロひきのゴーシュ」も展示されているとは!だが二階で茂田井の年表を見ていると、1935年に『新青年』掲載の横溝正史「かひやぐら物語」に挿絵を描いて初めての画料を得たことや、小栗蟲太郎「廿世紀鉄假面」に独特な挿絵を描いたことで評判を得たことなどがしっかり書かれており、おかしなところで探偵小説好きの血が大騒ぎしてしまう。

せっかくここまで出て来たので、雨は降ったり止んだり強くなったり弱くなったりを繰り返しているが、東村山「なごやか文庫」(2012/01/10参照)まで足を延ばし、安値の古本を漁って行くことにする。各駅停車でノロノロ西東京方面へ向かい、まだお盆休みの雰囲気が濃い人影の少ない街を線路沿いに進んで、文庫着。誰もお客はおらず、しかも無人販売時間帯の店内では、結束本のセールが行われている。右壁棚に妙に七十年代の推理小説や時代小説が多いなと思いながら、激安本を次第に一冊二冊と手にして行く。すると左奥の児童文学コーナーに、十冊強の偕成社文庫が固まっているのを発見する。余りお目にかかれぬ珍しい光景…と左から右に視線を移動させて行くと、いよぉっ!「水曜日のクルト」があるじゃないか!今日はこの本に呼び寄せられて、俺はここまで来たのだな。そう妄想して無人レジに向かい、各本からそれぞれ値札を引き出し、計算をした後に代金を料金箱に落とし込む。偕成社文庫「水曜日のクルト/大井三重子」「燃えるアッシュ・ロード/サウスオール作」新潮社「恋紅/皆川博子」「襤褸/木野工」トクマブックス「野球はアタマや/江夏豊」福音館書店「年少版こどものとも ずかん・じどうしゃ/山本忠敬さく」を計430円で購入する。まさか雨の火曜日に「水曜日のクルト」に出会ってしまうとは…。そう言えばこの童話集には「血の色の雲」という、大井三重子=仁木悦子自身の、兄の一人を戦争で失った体験を元にした、悲しい物語が収録されている。終戦記念日に読むに相応しい、主人公の少女が次々と戦地に赴く親しい人たちに放つ「ころさないで、死なないで」の悲痛で切実な叫びを心に響かせ車中読書しながら、帰るとしよう。それにしてもこの偕成社文庫のクルトを買ったのは何冊目だろうか…いつの日か、東都書房のオリジナル・クルトも、何処かで大発見したいものである。
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そして明日から大阪駅駅ビルのひとつ『ルクア イーレ』九階「梅田蔦屋書店 4thラウンジ」壁面で始まる「夏の古書市2017」も、何とぞよろしくお願いいたします!
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2017年08月14日

8/14古本市の奇妙な成果

昨日NHKの午後六時台のニュースを見ていると、「渋谷大古本市」(2014/08/14参照)の様子が突然流れ始めた。一瞬映し出された、日本近代文学古書が大量に並ぶ「中村書店」(2008/07/24参照)の台に古本脳を撃ち抜かれ、本日午前十時過ぎに『東急東横店西館』八階の催事場に駆け付ける。開店直後の人影が疎らな左端通路から、古本群に視線を照射し始める。このくらいなら、楽に見られるなぁ〜と思っていると、中央通路にたどり着いた辺りで、いつの間にか会場が混雑し始めたことに気付く。…やはりこうなるのか…。と、譲り合い争い合い気をつかい合い火花を散らし合い、今日買うべき一冊を探し求める。「中村書店」の並びは物凄く幸福な並びであったが、値段がビシッとしているので、目玉を楽しませていただくだけに留まる。ジリジリ移動して、何冊か欲しい本に目星を付けているのだが、決定打というわけではないので、とにかく最後まで見なければ気が済まない。そして「九曜書房」(2009/03/26参照)の薄暗い台下に視線を落とした時、煤けた厚めの仙花紙本の背に『浅原六朗』の名が浮かび上がっているのを目ざとく発見。素早くしゃがみ込んで引き出してみると、あおぞら出版社「欲情の果/浅原六朗」であった。値段を見ると500円なのでほくそ笑みながら抱え込む。これさえ手に入れば、もうここに来た使命は全うされた。そう余裕綽々の気分になり、後の台は気楽に流し、一時間強で会場を見終えて、精算待ち列の最後尾につく。ところが、今日の獲物を改めて眺めていると、奥付はあるのだが、最終の何ページかが落丁していることが判明する…なんてことだ。だからこんなに安かったのか…だがそのまま、何はともあれ浅原六朗なのだと、あやふやな欲望を胸にうやむやに抱いてそのまま購入する。市は明日15日(火)まで。

そんな冴えない感じであったが、実は気になったことがひとつ。それは「アート文庫」の棚で見た、箱ナシの児童文学本、太平出版社「けむりの家族です/杉山径一・作 池田龍雄・絵」が心に引っ掛かったので手に取ってみると、驚くことに五桁の値が付けられている。何故引っ掛かったかと言うと、ボンヤリとこの本を持っている気がしたからである。だとしたらとてつもなくラッキー!急いで家に戻り、キッチン隅の古本山をガシガシ掘り返すと、やはり同じ本がちゃんと箱付きで発見された。今年の四月あたりに「盛林堂書房」(2012/01/06参照)の100均棚から、見たことがない上にSFっぽさが漂っていたので、何となく購入していたのである。だからもちろん読んではいない…。調べて行くとやはり裸本でも五桁の値が付けられている。なんでこんな値段なのだろう?驚きつつ喜びつつさらに調べを進めてみるが、この本が何故高値なのかがまったく判然としない。う〜む、恐らく絵を描いてるのが、現代美術家の池田龍雄だからではないだろうか(どなたかご存知の方がいましたら、ご教授を!)。せっかくなのでこれを機会に読み進めてみると、寄る辺ない不思議な家族と団地の子供を主人公に、家族の父が宇宙から受け取った電波に応えるために、赤いのろしでUFOを呼び始めるSF一歩手前の展開で、確実に読んだ児童の心にぽっかりとした喪失感&宙ブラリ感を生み出す、小トラウマとなるであろう面白い物語であった。古本市に出かけたことにより、初めて積ん読にしていた本の価値を知り、しかも読了してしまう奇妙な成果。そんな、時間差で時限爆弾的に生まれた突然の喜びに、盛大に乾杯!
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2017年08月13日

8/13東京・新宿 花園神社骨董市

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午前七時前の新宿駅東口駅頭は、爽やかな朝の光に包まれながらも、どこか饐えた匂いを漂わせ、夜を街で明かした疲れた顔の人たちが、数少なく帰路に着いている。鳩が路上にゴミを漁り、『靖国通り』にはタクシーを捕まえるために、間隔を置いて手を挙げる人々が目に留まる。ようやく長い夜が終りを告げ、朝に入れ替わり、新たな一日が始まろうとしているのだ。そんな街中をヒタヒタと影のように歩き、『靖国通り』沿いの『新宿五丁目交差点』が目前に近づいた、ビルの谷間の『花園神社』参道前に立つ。その狭い入口両脇には『骨董市』の幟が、頼もしくはためいている。薄暗い参道に踏み込むと、すぐに両側に骨董露店が並び始める。だが、午前六時からのスタートなのに、まだ準備中のお店が四分の一ほど見受けられる。骨董市には、なるべく開始時間に駆け付けるのが良いそうである(もしくはお店の常連で可能なら、もっと早く準備時間中から顔を出し、品定めが行えることも…)。だが余りに早過ぎるとお店が始まっていないことも多いので、早く来て、なるべく長く市に腰を据えて、次第に開店して行くお店も徹底的にチェックするのが、効率の良いパトロール方法かもしれない…(もちろん達人や常連さんは、お店の市での大体の開店時間を熟知しているのだろう)。おっ!早速入って数歩の右手に、紙物&古本を二十ほどのダンボール箱に収めたお店があるではないか!箱横のテントの下では、常連さんたちが車座になり、絵葉書や手紙の念入りな品定めを進行させている。シートの上に上がり込んで、色紙・和本・漫画雑誌・手紙・教科書・古写真・地図・雑誌・古本などなどの箱を、すぐに群れよる蚊を警戒しながら、丁寧に漁って行く。むぅ、本当だ。早いと結構良いものが出て来るものだ。そんな風に胸をトキめかせながら、映画ポスターが重なり寝そべる長テーブルを回り込み、端に置かれたダンボールも覗き込んで行くと、常連さんのひとりが近寄り「その辺のは、もう箱ごと買い手がついてるものですよ」と優しく諭してくれた…すげぇ、箱買いか…。結局三冊を手にして、誰が店主か分からぬのだが、「これ、お幾らでしょうか?」と車座に声をかけ、奥の人に手渡す。するとみんなで相談しながら「千円くらいか?」と値付。と言うわけで、誠文堂「子供の科學 昭和六年五月号」龍河洞保存會「天の降り石」(昭和二十二年発行の高知県の鍾乳洞『龍河洞』を紹介する小冊子。平面図・洞内写真・探勝案内・洞内の生物&水質研究など、洞窟大好き人にはたまらない一冊!)日本週報社 週報文庫「ヂーキル博士とハイド氏/ステイブンソン著 田中宏明譯」(今日一番の収穫。昭和二十三年刊の、文庫サイズ横開き本。表紙には週報社社長からの贈呈印あり。口絵グラビアは野口久光画!この文庫は巻末広告を見ると、他に七冊が確認出来る)を購入する。すでに役目を果たした開放的な気分になり、石畳の脇参道を抜け出し、本社前のメインの明るい参道に抜け出る。露店は全部で三十ほどであろうか。その中のご婦人の出されている平台に、古い大正時代の医学雑誌が一冊500円で売られているのを発見する。パラパラ捲ると、田中香涯がどの号にも激しく寄稿している。何か他に面白い人は書いていないかと、目次をひたすら確認して行くと、何冊目かで小酒井不木の『醫学に関する初版本』という記事にたどり着いたので、喜んで購入することに決める。醫文藝社「醫文學 第十一號」を購入。満足して参道を抜け出すと、午前八時の新宿は、先ほどまでの疲弊した物憂げな感じは何処へやら、いつの間にか激しく運動を開始していた。ビルに運び込まれる物流、町に流れ込む働きに出て来た人々、ビル下にとぐろを巻く謎の行列。動き始めた街路を後にして、驚くほど空いた電車で家へと戻る。
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2017年08月11日

8/11東京・吉祥寺 一日

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駅から、北口でも南口でもどちらかから出たら、線路沿いを心がけて西へ進む。北口からなら、やがて『PARCO』前の『中道通り交差点』に行き着き、南口からならバス通りの飲屋街を通った挙げ句『吉祥寺駅前交差点』に行き着くだろう。ここから取る行動はひとつで、信号を渡り、高架北側の脇道にスルリと入るのだ。行く手の高架の向かいには酒屋があるのだが、ここには街頭灰皿が置かれており、いつでも喫煙者が道端に集う光景を作り出している。そこを通り過ぎると、アコーディオンフェンスが現れ、鋭角な角地のビル一階で、「百年」(2008/09/25参照)の支店がオープン三日目を無事に迎えていた。窓際に架かる黄色い飾り鉄格子と、何だか正体の分からぬ緑の蔓草が、外観の特徴である。思い鉄扉を開けて中に入ると、一段上がる木材で内装された、ちょっと複雑な空間となっている。入口左側窓際にギャラリー室があり、その奥が幻想文学・オカルト・海外文学・現代文学・映画・ミステリー・建築・アート・「洋酒天国」・「銀座百点」・串田孫一(超充実)・荒木経惟・図録類などの本棚に挟まれたような古本ゾーン。右側にはまずは洋書絵本が集まり、奥にシンプルで美しい帳場が据えられている。表から見ていただけでは、これで終りかと思っていたのだが、気付けば右にさらなる出入口があり、その奥に薄暗い空間が広がっているではないか。当然の如く惹き付けられて入ってみると、そこはあのアコーディオンフェンスの内側であった。ここもお店だったのか!ここにはテーブルとソファが設置され、とても薄暗いが落ち着いて古本を楽しめるようになっている。壁際には、324or108円単行本棚&平台、それに大体324円中心の文庫台が置かれ、「百年」が催事に参加するときのような、良書安売ゾーンとなっているようだ。ミニコミやリトルプレスも多く紛れ込んでいる模様である。左側ゾーンの古本は良い本がたくさん並んでいるが、値段はきっちりぴったり。左側ゾーンの古本には、大いに探す楽しみに溢れている(「百年」の入口右横の小さな安売棚が拡大した感じ)。桃源社「西洋 暗黒史外伝/吉田八岑」を購入する。同じ吉祥寺に新たなお店を出した「百年」。その狙いはいったいなんなのか?そして次に出すお店は「一秒」か「一時間」か「千年」なのか?とても気になるので、今度店主にさり気なく探りを入れてみることを心に決める。

※お知らせです。去年同様、またまた大阪「梅田䔍屋書店」の「夏の古書市」に参加させていただきます!いや、もう去年出させてもらって以来、棚が常設となってしまっているのですが、そこは新たに力の限り、部屋中から集めまくった二百冊ほどのおかしなおかしな古本をドバババと送り込んだので、大いに私の趣味が炸裂する異様な本棚が、あの洒脱な店舗内に展開せざるをえない楽しい状況と化していること請け合いなのです!早い者勝ちのレア本も紛れ込ませていますので、どうか西のみなさま西に足を延ばすみなさま、何とぞよろしくお願いいたします。
■夏の古書市2017(こだわりの絶版ミステリ・SFから絵本やサブカルチャーまで)
■2017年08月16日(水) 〜 2017年09月03日(日)
■7:00〜23:00
■梅田 蔦屋書店 4thラウンジ
■共催・協力 小山力也(古本屋ツアー・イン・ジャパン) /古書 鎌田 /ジグソーハウス/ひなたブック
http://real.tsite.jp/umeda/event/2017/08/2017sf.html
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2017年08月09日

8/9「一日」に入れなかったおかげで「刺青殺人事件」を手に入れる!

皆に平等に襲い掛かる猛暑の中、午前十一時半の西荻窪「盛林堂書房」に向かい、「フォニャルフ」に単行本を中心にわりと多めに補充する。帳場までは塩山芳明御大と遭遇し、ピンク映画のスチール写真について会話の花を咲かせる。だが今日はそれほど無駄話をせずにお店を辞し、吉祥寺へと向かう。本日「OLD/NEW SELECT BOOKSHOP 百年」(2008/09/25参照)の支店「一日」が同じ吉祥寺にオープンするのである。支店を出すのはスゴいことだが、それも同じ町に出すというのはさらにスゴいことである。いったいどんな風なお店で、「百年」とはどんな違いを見せてくれるのだろうか?と期待しながらお店の前に着くと、開店の挨拶が書かれた立看板は置かれているが、ドアはぴったりと閉ざされている。
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看板の右上で風にはためく急遽貼付けられた用紙に目を凝らすと『15:00に開店します』とあるではないか。正午オープンのはずだったのに…何かトラブルでもあったのだろうか…今は午後十二時三十分。ちょっと後二時間半も炎暑の吉祥寺で待機するわけにはいかぬので、今日のところは残念ながら退散することに決める。しかしこのまま帰るのは余りに寂しいので、駅南側の「古本センター」(2017/03/06参照)に立ち寄ることにする。この時間の店内は、なんだかとても静かで密やかである。また何処かに素敵な古書でも潜んでいないかと、帳場近くの棚や棚脇棚を見た後に、帳場前の通路棚端に新設された最近入荷本棚下段に目が行くと、ぬぉっ!岩谷書店の江戸川乱歩監修寶石選書「長編讀切 刺青殺人事件/高木彬光」がセロファン袋に入れられ、なよっと面陳されているではないか!しかも値段は二千円!そっと手にして袋から取り出しパラパラと見てみるが、別に瑕疵はない。再版で乱歩の「再版を祝す」が追加されているものだが、二千円!うぅむ、時間通りに「一日」が開いていたら、果たしてこちらに顔を出したかどうか…とにかくこの偶然の流れから生まれた、素晴らしい出会いを喜び、ニヤニヤと購入する。無論どひゃっほうである。
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夜は駒込にて南陀楼綾繁氏と落ち合い、お互いの未来や一箱の未来や出版業界の未来について、忌憚ない意見をぶつけ合う。あぁ〜酔っ払った。
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2017年08月08日

8/8東京・西太子堂 Cat's Meow Books

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路面電車の面影を残す世田谷線のホームから出て、踏切の南に立つ。そこからすぐに西に真っ直ぐ延びて行く、住宅街の細道に入り込む。ツツツツと百メートルも進めば、本日オープンしたばかりの、猫のいる新刊屋+古本屋+カフェな新店が左に輝き現れる。すでに店内は激しく賑わっており、何やら取材も入っているらしい。その小空間の喧噪にユラッと飛び込むと、左奥の帳場に立つ男女二人が「いらっしゃいませ」と迎えてくれて、女性の方が「こちらは新刊コーナーになってまして、奥は古本を販売しています。奥は靴を脱いで入っていただくんですが、猫がおりますので逃げ出さないよう素早い開け閉めをお願いします」とレクチャーされる。ちなみにこのお店の猫は、全員元保護猫の店員さん(店長さんもいるのだが、この時は二階に籠っているらしく姿を見せず…)という位置づけである。新刊コーナーにはテーブルを真ん中にして猫本が多く並び(犬本もあり)、帳場前には洋書の猫写真集や絵本が飾られている。また帳場背後頭上には、グロテスクなほど巨大な猫の顔面ぬいぐるみアリ。狭いカウンター前を通過して、奥の木の格子戸をスラリと開けて、素早く身を入れて閉めて、靴を脱ぐ。左右が猫も遊べる壁棚(棚の棚板や側板には、猫が通れるほどの大きな穴が空いているのだ。もちろんそこに本は置かれていない)となっており、中央には大きなテーブルが置かれている。おぉ!窓際に鯵虎猫が寝ている!そしてその姿をお客さんがかわりばんこに激写している!他にも黒猫がチラチラ姿を見せ、鯵虎猫の横に身を横たえると、控え目な歓声とともに激しいシャッター音が連続して鳴り響く。完全に猫カフェ的一幕が展開され続けている。本当は私も撫でたり話しかけたりしたいのだが、この大いなる猫人気者状況ではそれも叶わぬので、一心不乱に古本を眺めることにする。並んでいるのはすべてが猫に関する本なのだが、ボックスごとにテーマが何となく設定されているのが楽しい。『猫と文学』『猫とミステリー』『「我が輩は猫である」と猫』『猫と美術』『猫と科学』『猫と民俗学』『猫と歴史』『猫と怪談』『猫とパリ』『猫と海』『猫と島』『猫と町』『猫と犬』『空飛ぶ猫』etc.etc.etc.…と、かなりバラエティ豊かに展開して行くのである。私的には『猫と怪談』ブロックに注目し、もしや橘外男の怪猫物がしれッと紛れ込んでいるのではと、視線を何度も往復させるが、残念ながら最初から一ミリたりとも存在していなかった…。中には値段の付いていない本があるので、棚の整理をしているお姉さんに聞いてみると「今値付けしているところなんです。気になったのがあったらお調べしますよ」と言われたので、さっき目ざとく見つけておいた、サンリオSF文庫「猫城記」を差し出してみると、ネットでしっかりと調べられてしまい、4500円の値付が為されてしまった…大体ネット値付の中位を参考にしているらしい。と言うわけで、値付はわりとしっかりしております。裏表紙に値札の貼られた「猫城記」をそっと棚に戻し、別な本を取り出して、早々にスヤスヤ眠る猫店員さんたちに別れを告げて、格子戸の向こう側へ。人文書院「のら猫トラトラ/鴨居羊子」を購入する。まるで星新一の短編小説のように、猫にすべてが支配されているお店である。可愛い猫たちに振り回されたければ、この西太子堂の新店へどうぞ!

帰りに寄り道して、渋谷で『宮益坂』を上がり、「巽堂書店」(2008/07/04参照)で広済堂ブルーブックス「不連続殺人事件/坂口安吾」を100円で購入する。
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2017年08月07日

8/7「暮しのなかで考える」

仕事の答え待ちの隙を突いて外出。だがそれほど多くの時間を自由には出来ないので、近所の古本屋さんを見に行くに留まる。風が強くなり、段々と灰黒色の雲がハイスピードで動き始めた空の下を早足で歩き、まずは阿佐ヶ谷「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)。ちょうど店主・天野氏が出入口のガラス戸を、キュッキュッと磨いていたので挨拶を交わす。時間は無いのに冷房が涼しい店内にわりと滞留し、中公文庫「日本妖怪変化史/江馬務」本の雑誌社「本の雑誌風雲録/目黒考二」マガジンハウス「BRUTUS 137 特集:ブルータスの古道具三昧」を計356円で購入する。まだ少し、天気にも時間にも余裕がありそうだと、さらに足を早めて『七夕祭り』で地獄の釜のような賑わいを見せる駅周辺を突破し、そのまま荻窪まで歩いて「ささま書店」(2008/08/23参照)。ちょうど店頭を雨仕様にチェンジする場面に出くわす。こちらでも店内冷房の恩恵にたっぷりと預かり、徳間書店「町の案内図/河野典生」を105円で購入する。そんな感じで、あっという間に時間一杯になったので、さらに足を早めて『日大二高通り』を北東に遡上して、雨の降り出す前に家に帰り着く。

さて、ここ二日ほど私の頭は何をしていても、すっかり一冊の本の魅力に捉えられてしまっている。それは「書肆スーベニア」(2017/08/05参照)で購入した、暮しの手帖社「暮しのなかで考える/浦松佐美太郎」によって齎されているものだ。この本が珍しいものであることは、ぼんやりと門外漢的にも知っていたのだが、改めて調べてみると、思っていたより稀少な本であることが分かったのである(ただ本に関する情報は、それほど浮かび上がって来ないのが残念)。長い間絶版になっている一冊らしく、所持しているのは昭和三十八年四月刊の三刷である。変わった名を持つ著者の浦松佐美太郎(うらまつ さみたろう)はジャーナリストで登山家。この本は「暮しの手帖」に三年間連載した十五篇の随筆を収録。装本はもちろん花森安治で、表紙絵のフライパンとそこに乗る食材の線画装飾具合が、果てしなく懐古的にプリティーである。さらに角背で132mm×186mmの、正方形に近づくような少し寸詰まりの変型サイズが、物質として手に馴染む愛らしさを演出している。肝心の内容は“考える”をテーマに据え、日常に潜む問題(お金、読み書き、家族関係、人口、洋服、生活リズム、文章、言葉、愛情、政治、人格、願望、欲望などなど)を真面目に掘り下げて行くのだが、それはいわゆる“思想”や“哲学”などの形而上での難しい思考実験ではなく、あくまでも形而下、つまり生活の中で思考し暮らすことを提唱し展開して行く。難しく考えるのではなく、まず暮しがあり、その中の身近なことをはっきり意識して考えて行くための、様々な例と方法と気付きが書かれているのだ。“考える”を、大きな世界の真理や秘密を探るものとしてではなく、小さな暮しをよりよくするための道具として、使用しているのだ。傾向としては花森安治の「さかさまの世界」と似た匂いが漂っているのだが、この“暮し思考”が何だかとても新鮮なのである。本来ならこういう超地味真面目な本は肌に合わないので、ほとんど読まずに「ヒヒ、高い本を安く買えたぞ。すぐに「フォニャルフ」で販売だ!」と卑しく売ってしまう可能性大だったのだが、まず造本に捉えられ、次いで本文に捉えられ、あげく「暮しの手帖」ワールドに引き込まれてしまい、真剣に読み続けてしまっている。こんな予想外なこともまた、古本屋さんで、この本と出会えたおかげなのである。あぁ、世の中には、まだまだまだまだ、知らない本が満ち満ちている。
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2017年08月06日

8/6「獏の店」の野望を嗅ぎ付ける。

本日は三鷹台に流れ着いたので、『神田川』を渡って「絵本&アート 獏の店」(2015/08/10参照)の様子を見に行くことにする。途中おばあさんが店番をする、お洒落さゼロの余りに日本的なアンティークショップの50%OFFセールに惹き付けられつつも、記憶をガツガツ掘り起こして水色の日除けのお店にたどり着く。店頭絵本箱をまずは漁り、300円の福音館書店ものがたりえほん36「あな/谷川俊太郎作・和田誠絵」をパスポートとして店内に突入。中央テーブルには絵本空間に似合わぬオッチャンが店番をしており「いらっしゃいませ」とボソリ…のっぴきならぬ理由で頼まれての店番中だろうか…。主に右壁棚の箱入児童文学本に熱心な視線を注ぐが、本日は出物なし。ということであっさりと表から持ち込んだ絵本を購入することに。そこに外から戸川昌子風マダム店主が帰還し、いきなり「何?何買ったの?」とフレンドリー過ぎる距離感で、心の垣根をを飛び越えて来た。谷川俊太郎&和田誠コンビの絵本であることを告げると「そっかー。俊太郎さんかぁ」と感心し始める。そしておもむろに「今は絵本が多いんだけどね、近々絵の展示を始めようと思うの」「はぁ…」「現代美術なんだけど。その壁に飾ってあるリトグラフ、いつ頃のだか分かる」「う〜ん、1950年代くらいでしょうか…」「生まれたのは1885年生まれの人の作品よ。ドローネ。ソニア・ドローネ」「あっ、知ってます!(何故知っているかと言うと、昔録画したNHK『日曜美術館』の鴨居玲特集で、本編終了後の展覧会紹介ミニコーナー『アートシーン』の初っ端が、ソニア・ドローネ展だったのである。…ただそれだけなのだが、何度もその録画番組を見ているせいか、名前だけが頭の中にこびり付いていたのである…)」と答えると「ちょっとアナタ時間ある?」と奥に引っ込んでしまった。すかさずオッチャンが「時間、なくてもいいですよ」と助け舟を出してくれるが、ちょっと面白そうなのでマダムの話を拝聴する覚悟を決める。持ち出して来た、しっかりと作成された自分史のファイルを紐解きながら長いお話がスタート。聴けばその昔、神保町でギャラリーを開いており、ソニア・ドローネのコーディネーターもされていたとのこと。上野の『西洋美術館』での展覧会も、彼女が当時の美術館館長にフランス語を教えていた縁で、ドローネ展(1979年)の企画が通ったとのことであった。うむ、それはスゴい。その他にも前衛芸術運動『コブラ』の話(こちらの日本への紹介にも大いに貢献していた模様)などの数々を、学生気分でおとなしく聴き続ける。と言うわけで「獏の店」は、いずれソニア・ドローネとコブラ派の作品で、埋め尽くされることになりそうです。最後の最後に「あなたは学生さん」「いえいえいえいえ、もう全然とっくのとうに卒業してますよ」と言うと「あら、やぁねぇ〜。もう年取ると、年下はみんな学生に見えちゃうのよ」とひとり大笑いされている。この場所の旧店である「B-RABBITS」(2008/08/27参照)の女性店主も面白い人だったけど、「獏の店」も負けず劣らずだなと感じ入り、雲がモクモク広がる青空の下を、京王線浜田山駅からすぎ丸に乗り込んで帰路に着く。
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2017年08月05日

8/5東京・とうきょうスカイツリー駅 書肆スーベニア

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昨日向島方面に古本も扱う書店が出来たことを察知し、地下鉄を乗り継いで、スカイツリーの足元にひょっこり顔を出す。ここまで来たならまずは「イセ屋」(2014/07/13参照)に向かわねばと、押上駅から人気の少ない東北方向に足を向けるが、残念ながらお店はお休みであった…ちぃっ。慌てて北西に足を向け、「甘夏書店」(2014/10/22参照)の入るカフェ前から『水戸街道』に入る。駅からは『言問通り』を経由して『水戸街道』に入り、北側の歩道を北東に進んで行けば、歩道橋を過ぎたところ右手のマンション一階に、小さなお店が姿を現すだろう。その前に差し掛かると、ちょうど若くさっぱりした髪の毛の強いうじきつよし風青年が店頭の小さな100均棚に補充をしているところ。バチッと目が合ってしまったので、覚悟を決めてお辞儀しながらお店へと近づく。その100均棚から二冊を抜き取り、ビニールカーテンの掛かった入口から小さな店内に入り込む。ほぼ正方形の空間の壁際には木製の壁棚が巡らされ、入口左横から、世界文学全集・「現代思想」・「彷書月刊」・A5サイズ雑誌・面陳新刊絵本・絵本・「美術手帖」・昆虫・動植物・自然・食&料理・都市&場所&土地・言葉・出版&本・散歩・写真集などが左壁を経由して奥壁まで続く。右壁には「暮しの手帖」関連・セレクトコミックと新刊が並び、わりと大きく採られたコミックゾーンは、そのジャンルに寄せた文学本が唐突に混ざり込む個性的な並びを見せている。未だこれが完成形ではないだろうが、複雑多様化した世界に様々な方法で向き合うための健全な並びが、古本にも新刊にも展開するお店である。冊数は多いとは言えないが(今のところは意外に古本多め)、その目指すべき個性はすでにじわりとにじみ始めている模様。値段は安め。右奥の小さな帳場に向かい、国際空港ニュース社「空の旅一万時間/青木正雄」(何故か奥付が天地逆に印刷されている…)暮しの手帖社「暮しのなかで考える/浦松佐美太郎」(これはなかなか見かけない良書!嬉しい!)愛宕書房「日本の面影/小泉八雲作」(カバーナシ)を計500円で購入する。開店おめでとうございます!どうか末永く、こちらの本&古本文化を支える一端になっていただければ、とても幸いです!

そのまま『とうきょうスカイツリー駅』方面に歩き続け、駅前で「業平駅前書店」(2009/04/20参照)に差し掛かると、そのドアには『あと数年でなくなるお店』の寂し過ぎる貼紙が!
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慌てて店内に飛び込み、ロマン・ブックス「黒いトランク/鮎川哲也」安田書店「福井名探偵実話集 第一集/安田輝雄編」を計800円で購入しつつ、しばし店主さんと話し込む。聞けば今年の一月に、一帯の再開発が本格始動する話が役所から持ち込まれたのを機に覚悟を決めて、貼紙を出したそうである。だがそれ以来役所からは何の音沙汰なく、何となく中途半端な宙ぶらりん状態に陥っているそう。しかし再開発はいずれ確実に行われるので、そろそろ色々考え行動を起こさなければいけないとのことであった。何とも差し迫った話であるが、だがここで頼もしい言葉が店主の口から飛び出した。何処に移ろうが店舗はしっかり継続したいそうである。営業形態はネットに比重が傾いているが、それでもお客さんと話し対面で古本を売ることは、とても手放せぬ楽しさに満ちているとのこと。それを聞いて一安心し、また近々去就を確かめに来店することを約束する。

そこからまたまた地下鉄を乗り継ぎ池袋に出て、二代目「ますく堂」(2014/07/20参照)最後の「スナックますく堂」(2012/09/14参照)に参戦する。持参した差し入れ缶ビールを飲みながら、結局いつも通りの「ますく堂」で、居合わせたお客さんたちと楽しくワイワイと過ごす。講談社「君は花の如く/藤澤桓夫」青林堂「沈黙の弾機 上野昂志評論集」(「暮しのなかで考える」に続く本日二番目の収穫!ますくさんありがとう!)を計600円で購入。缶ビール二本を空けて、お店に居合わせた『ポエカフェ』終りの近代詩伝道師・ぴっぽさんと小説家志望の山梨青年とともに帰路に着く。「ますく堂」の引越しはどうやら八月中旬に行われそうだが、引越し後の新店舗では8/31(木)にそれを祝し、岡崎武志氏×世田谷ピンポンズさんトークと、ピンポンズさんのミニライブが開かれるとのこと。この池袋にへばりつく守り神的魔窟を応援するために、みなさまどうか奮ってご参加ください。予約&問い合わせは「ますく堂」まで。
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2017年08月04日

8/4古本を買い込み発散する。

掛かりっきりでめんどくさいことをこなし続け、本日夕刻に作業を終える。即座にセレクトした古本を抱えて家を飛び出し、まずは「ささま書店」(2008/08/23参照)の店頭にむしゃぶりつく。すると、なんだか探偵&推理小説関係文献が散見されるので、ついつい次々と抱え込んでしまい、最終的には自分へのご褒美的大発散となる。日本放送出版協会「趣味の世界1 推理教室」(中島河太郎&山村正夫による推理小説入門&研究)高文社「推理小説の謎/村田宏雄」双葉社「幻の傑作ミステリー 怪奇探偵小説集/鮎川哲也編」パシフィカ「シャーロック・ホームズ事典/ジャック・トレイシー」N.C.Y「さらば長州力/長州力」町田書店「小山内薫と築地小劇場/水品春樹」(カバーナシ)三菱地所株式會社「縮刷 丸ノ内今と昔」(カバーナシ。昭和二十七年再版の非売品。一丁倫敦や丸ビルを中心に、東京の中心であった『丸ノ内』という街の歴史が、江戸から太平洋戦争後まで写真資料豊富に語られている)毎日新聞横浜支局「横浜今昔」(昭和三十二年発行の、横浜に関わる有名無名人たちが語る、土地の風俗&歴史&思い出アンソロジー集)春陽堂少年文庫「ほら物語/佐々木邦」(佐々木による「ほらふき男爵」の翻案少年小説。キップリングの「いかさまばなし」も収録。これが一番嬉しかった!)を計1785円で購入する。指に、古本がたっぷり入った袋の持ち手を存分に食い込ませながら西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)へ。「フォニャルフ」にスパパッと補充して、先月分の売り上げを受け取りつつ、さらに表紙デザインを担当した盛林堂ミステリアス文庫の新刊「活劇絵小説 暗黒街の群狼/ジェームズ・B・ハリス文 伊勢田邦彦」を受け取る。うむ、なかなか良い出来ではないか。「少年少女譚海」に連載された、ロバート・ハリスの父“ジェームズ・バーナード・ハリス”による、都市に巣食う強大なギャング団と正義の少年&新聞記者の対決をみっちりたっぷりと描いた、楽しい良い子の読み物である。全ページに二色刷りで花開く伊勢田のイラストワークにはウットリするばかり。今月のコミケで先行発売された後、8/19から店頭&ネット販売予定である。ニヤニヤしながらページをめくりながらも、少し色々と今後の作業予定について打ち合わせる。
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2017年08月02日

8/2こ、こ、こ、こ、こ、こ、こ、「幸福論」!

所用で高田馬場に出たついでに、『早稲田古本街』のパトロールに取りかかる。だがまずは「ブックオフ 高田馬場北店」(2012/11/15参照)に立ち寄り、東峰書房「一筆対面/清水崑」を108円で購入してから、細かい雨の降る中を神田川沿いに東へと向かう。静かな裏通りをひたすら歩き続け、『明治通り』の坂を上がって『早稲田通り』に到達する。北側歩道→南側歩道と古本街を巡るつもりで、まずは「平野書店」(2010/01/12参照)。桃源書房「若さま侍任侠剣/城昌幸」を100円で購入して表に出ると、偶然に自転車で坂を上がって来た「古書現世」(2009/04/04参照)向井氏に声をかけられる。まさか巡り初めの初っ端に、最後にたどり着く予定のお店の店主にお会いしてしまうとは…区役所に向かう氏と後ほどお店で会うことを約束して、しばしのお別れ。そのまま疎らに続く店頭をたどって行く。だがなんだかあまり買うことなく、ようやく「三幸書房」(2012/09/05参照)でちくま少年文学館1「ユリアと魔法の都/辻邦生」を100円で買い、谷底に下って行くと、またも偶然区役所から帰還した向井氏と遠目に遭遇する。氏は颯爽と片手を上げてこちらに合図を送りながら、お店への横丁に曲がり込んで行った。遅れて店頭に到着すると、お父様と店番を交代しながら「さぁ、どうぞ」と店内に招き入れてくれた。左壁沿いには、古本市から戻って来た本や未整理本が積み上がるが、久しぶりに見た棚はその様相を変えて輝いており、たちまち何かないかと鼻をピクつかせて探索モードに。凸凹と同じ棚に様々なサイズの本が肩を並べるお店独特の景色を楽しみながらも、決して眩惑されて見逃さぬよう、本と本の間の影のような隙間にも視線を通して行く。すると、右壁中ほどの棚に、恐るべき本を発見してしまった!筑摩書房「幸福論/小山清」である。昭和三十年発行の新書サイズの、清貧小説家の随筆集であるが、その姿をお店で見られるのは大変に稀なことである。うぉぉぉぉ!と興奮しながら、これは万難を排してでも買わなければいけないのでは?と、こういう時にだけ発現する『男らしい古本心』が早速気弱な心に囁きかけて来るではないか…まぁしかしこの場合の『万難』というのは、概ね価格のことなのだが…。そういうわけで、何はともあれ値段を確認してみようと決めて、後の見返しを開いた瞬間、嬉しいことに万難は、いとも容易く排されてしまったのである!三千円!買える!読める!家に来てもらえる!そのまま奥の帳場に直行し、絞り出すようにして「これをくださいっ」と氏に差し出す。「小山清、こんな本出してたんですね」と精算してもらい本を受け取る。そして我慢し切れずに「向井さん、この本きっともっと高いですよ」と言うと「あぁ、そうでしょうね。でも自分そのくらいしか付けられないんですよ。まぁ古ツアさんに買ってもらえるなら、それで充分です」と嬉しさ倍増のお言葉をいただく。即座に、どひゃっほう!読みます!大事にします!このことは一生忘れません!これからは何でも言いつけて下さい!と盛大に心の中で謝辞を並べてしまう。それほど、とてもとても嬉しい一冊なのである。うぅむぅ、やっぱりお店には労を厭わずに足を運んでみるものだと、改めて思ってしまった、八月最初の古本的慶事体験!俺は今日、この本に出会うために、古本の神に、早稲田へと導かれたのだ…。その後は、鞄の中の「幸福論」の存在を、大きく幸せに感じながら、帳場前に立ち尽くして一時間ほど色々お喋りしてしまう。
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posted by tokusan at 18:13| Comment(0) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月01日

8/1安泰について言葉を交わす。

雨が酷くなる前に代田橋に流れ着いたので、環七で関東バスに乗り込み、高円寺方面をブンブン目指す。車窓の向こうが、高円寺に近づくごとに、激しく濡れそぼって行く。『新高円寺バス停』で途中下車し、『青梅街道』から長い長い『ルック商店街』を北に遡上して行く。「アニマル洋子」(2014/03/14参照)は残念ながらシャッターアウト。「大石書店」(2010/03/08参照)はライトを眩しく輝かせ、雨仕様の店頭を夜店のような雰囲気に変えている。厚いビニールをまくり上げ、けいせい出版「ギャンブル人生論/阿佐田哲也」を150円で購入する。帳場に座っているのは、珍しく老店主御大であった。そのまま商店街を進まずに遊歩道を西に曲がり込むと、長毛系の猫が、雨に濡れるのも構わずに煉瓦上に寝そべっている…ずいぶん風変わりなヤツだなぁ。と訝しがりながら、すっかり雨模様の「えほんやるすばんばんするかいしゃ」(2014/09/11参照)に到着する。
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傘を畳んで狭い急階段をギコギコ上がり、BGMに流れる『はっぴいえんど』の日本語ロックに身を任せながら、児童文学と絵本に満たされた小空間を舐るように味わい尽くし、すっかり今は大人の自分と子供時代の自分が角突き合わせて散々悩んだ末に、童心社「きんいろのあしあと/椋鳩十・文 安泰・画」1200円を選んで、帳場に座るお姉さんに差し出す。すると精算しながらお姉さんが「安泰の絵は本当に素敵ですよね」と呟くように発言したので、色めきたちながら同意して「もう本当に、彼の描く動物の絵は、可愛くて仕方ないですよね」と返す。すると「可愛い中にも険しさがちゃんとあって…そう、最近安泰の熊の絵本も見たんですけど、それもやっぱりいつも通りに素敵で…」「そんな本があるんですか!いや、私も安泰が大好きで、見かけるとつい買ってしまうんです。「スイッチョねこ」を見て以来もう…」「そう!「スイッチョねこ」!」とお姉さんは破顔して大喜び…いや、決してデレデレしているわけではない。まさかこんな風に安泰の話を普通に出来る日が来るなんて…安泰の描く動物たちは、フォルムと仕草が完璧とも言える仕上がりを見せながら、リアルとはまた異なる独自のタッチが、超絶なプリティーさを紙面に常に降臨させているのである!この動物画の可愛さ素晴らしさにタメを張れるのは、方向性はまったく異なるが、恐らく森やすじや宮崎駿くらいではないだろうか…。
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※これはシンボリックな絵本の見返し部分。THE・月に吠える!
それにしても「えほんやるすばんばんするかいしゃ」は、常に買った本に対して、ぼそっとコメントをしてくれるので、それが何とも楽しみなお店なのである。児童文学や絵本について語りたい方は、ぜひとも高円寺を目指すべし!きっと「えほんやるすばんばんするかいしゃ」が、堂々と受けて立ってくれることでしょう!雨なので二重に袋に入れていただき、狭い階段をエッチラオッチラ下って、いつの間にか雨の激しくなった午後五時半の高円寺。雨の飛沫に身体を濡らしながら阿佐ヶ谷方面へ徒歩で向かう。ふとアスファルトに視線を落とすと、そこにはかなりちゃんと映っている、己の影法師…まるで足の下に別の世界があり、その世界の自分と、足の裏を接して、相対しているようではないか…。
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posted by tokusan at 21:13| Comment(2) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする