2017年12月31日

12/31ついに2017年古本納め

大晦日である。午前中から浴室で一年の汚れとびしょ濡れになって格闘し、早々に疲れ果ててしまう。午後二時過ぎになって、ご近所で古本を買って今年を納めようと、暖かくしてトボトボ外出する。お正月を迎えるために、紙垂の下がる商店街を歩き、「千章堂書店」(2009/12/29参照)にまずは吸い込まれる。ちくま文庫「ことばの食卓/武田百合子 画・野中ユリ」を250円で購入する。

阿佐ヶ谷から西荻窪まで電車で移動している途中、荻窪駅手前の車窓に、「ささま書店」(2008/08/23参照)の営業している姿がスラッと流れる。今年は大晦日まで営業しているのか。よし、後で寄ることにしよう。

西荻窪では真っ直ぐ「盛林堂書房」(2012/01/06参照)に向かい、東京ライフ社「綺堂読物選集 白髪鬼/岡本綺堂」を100円で購入し、「フォニャルフ」にも今年最後の補充を三冊だけ行う。そして店主・小野氏と今年を高速で振り返りお互いを労いつつ、春陽文庫「売国奴/永瀬三吾」(2017/12/26参照)にパラフィンを掛けてもらい、さらには一年半前の関西取材時に西宮の「2階洞」(「古本屋ツアー・イン・京阪神」p203参照)で150円で入手していたカバーナシの春陽文庫「完全犯罪/小栗虫太郎」(昭和三十二年第一刷)のためにカバーカラーコピーをいただき、これもまたパラフィンを掛けてもらう。おぉ、ようやくお前も、美しい姿に…。

冷た過ぎる夕闇に指先をかじかませながら、歩いて荻窪まで出る。すると「ささま書店」は、午後五時までの大晦日営業となっていた。つい先日来たばかりで、市も終わったこの年の瀬である。さすがの「ささま」もそう棚が動いているわけはないのだが、それでも何一つ見逃さぬよう、落ち着いて店内を一周する。現文社「作家と女性たち/清水信」を324円で購入する。すると渡された本に、珍しくB4サイズのチラシが挟み込まれる。外に出て、外灯の下で抜き出し開いてみると、手書きの来年一月の営業カレンダーであった。。下部には三枚の一月中使用期間指定割引券が付いている。2018年は5日から営業…これでは5日に早速駆け付けたくなってしまうではないか…。

と言うような2017年の古本納めをして、家に再び歩いて帰り着く。後は静かに本でも読んで、年が明けるのを待つとしようか。だがその前に、せっかくなので今年を振り返り、古本的に衝撃的な出来事をひとつ選んでみることにする。…う…む………ひとつだけ選ぶとするならば、それは本棚探偵・喜国雅彦氏の小さな小さな棚一段の古本屋さん、「ひとたな書房」が生まれたことだろうか。稀代の探偵小説コレクターが、一部の蔵書整理のために「盛林堂書房」内の「古本ナイアガラ」に本を並べ始めたのは、昨年末からである。最初この話を聞いた時、楽しみにしつつも『まぁ恐らく、それほど本気じゃなくて、そこそこの本を並べるのだろう』などと失礼にも勝手に思っていた。ところが蓋を開けると、これがエンジン全開フルスロットルで、憧れの探偵小説レア本ばかりが惜しみなく並び、次々と補充されて行くのである。探偵小説好きの端くれとしては、一瞬たりとも目の離せぬ棚が、出現してしまったのである!二月に、自分の棚の斜め上に、嘘のように少年探偵小説がズラッと並んでいたのは、心臓が口から飛び出しそうな、実に実に衝撃的な光景であった。しかも値段は相場の半額くらいから激安破格値までと、大変懐に優しい夢のような値付設定が為されているのである。棚が補充される度に、入れ替わる度に、何度短く悲鳴を上げてしまったことか…。おかげでそうそう高い本は買わぬ私でも、「これなら買える!」と自分の理性を説き伏せた場合が連続してしまい、すでに五冊を購入してしまっている。偕成社「白髪鬼/久米元一」(貸本仕様)川津書店「魔女を探せ/九鬼紫郎」(カバーナシ)春陽堂 探偵双書8「悪霊島/香山滋」ポプラ社「青い魔術師/島田一男」(カバーカラーコピー)自由出版株式會社 DS選書「傀儡師/水谷準」…その購入合計額は、驚きの18000円!本の価値と値段が、嬉しいほど全然合ってない!本棚探偵よ、本当にありがとう!そんな風に盛大に感謝を捧げつつ、来年も狂ったように喜び驚かせてくれるのを、欲深く大いに期待しているのである。さぁ、それでは「傀儡師」の続きでも読むことにするか。みなさんも、どうかよいお年を!
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2017年12月30日

12/30今日ものらりくらりと古本を買う。

昼食を摂ってから外出。午後の暖かな陽光を浴びながら、阿佐谷北から『日大二高通り』を南西下し、『青梅街道』に出て昨日無様にたどり着けなかった「Title」を目指す。どうやら、南の歩道と北の歩道を勘違いしていたらしい…。ほどなくしてお店に到着し、洒落た若者が本を物色する店内を通り抜け、左壁際にある二階への急階段を、手摺を掴まえギシギシ上がる。小部屋に広がる二階の小さな古本市会場にやっとたどり着けた(2016/12/27参照)。各店女子度高めな並びをフムフムと眺め、結局「にわとり文庫」(2009/07/25参照)から、歩兵社「組体操/浜田精一」を500円で購入する。現在は、面白いはずのアクロバチックさが危険視され、禁止になることが多い組体操の実践的指導マニュアルである。昭和四十年刊。二人で組んで行う高等組体操は、ほぼルチャ的なプロレス技に近いものがある。また集団組体操はやはり無茶なものや奇怪なものが多い。
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写真は『木製人間まわし』。ひとりが棒のような木製人間になり、腕を突き出して車座になった十人ほどの中心に入り、みんなにぐるぐる回されるという…ハハハハハ。また冒頭に掲げられた『実施上の注意』には、幾つか見逃せない事項が存在する。『愉快に行うのはよいが不真面目にやらない』(ケガの元ですな)『相手に不快を与えるような服装や動作はしない。清潔な服装で行う』(密着することが多いからですな)『努責作用を伴う運動もあるので、盲腸手術後間もない者や脱腸、特に心臓の弱い者は除外して行うようにする』(当たり前ですな)『よく運動の狙いを考えて拷問のような形や、かんじにならないよう注意する』(ひどいポーズがたくさんありますからな)…組体操って、やっぱり大変だ。

その後は吉祥寺に移動して、師走の買い物客の雑踏を突破して、ただのらりくらりと年越しには何の役にも立たない古本をさらに買うために、『パルコ吉祥寺店』地下一階上りエスカレーター横で開かれている「吉祥寺パルコの古書市」(2017/01/22参照)を見に行く。立ち読みする人が多い、混み合った空間をスイスイ擦り抜けて、北宋社「シャボテン幻想/龍膽寺雄」を756円で購入する。

阿佐ヶ谷に戻っての帰り道、早朝の片付けで発掘された本たちを後で売りに行くため「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)に一声掛けておこうとすると、焦げ茶のシャッターが下ろされ、商店街共通の長細い年賀が貼り出され、もはやお正月休みに突入していた。仕方ない、休み明けの1/4に持って行くことにするか。今年も一年お世話になった、シャッターの向こうのお店に向かって、小さく「良いお年を」と挨拶し、さらに帰り道をたどる。

※お知らせ
来年二月初めのお話しですが、地元阿佐ヶ谷にて、古本屋さんについての講演を行うことが決まりました。題して『古本屋ツアー・イン・阿佐ヶ谷』。古本屋に行く楽しさや、古本を買う面白さについて語り、阿佐ヶ谷とその周辺の古本屋さんを詳しく紹介いたします。古本屋に興味があってもなくても、阿佐ヶ谷に所縁があってもなくても、ぜひとも聴きに来ていただければ、幸せ一杯胸一杯になれるのではと思います。何とぞよろしくお願いいたします!

『古本屋ツアー・イン・阿佐ヶ谷』
◆開催日 平成30年2月4日(日曜日)
◆開催時間 午後1時30分 から 午後3時30分 まで
◆対象 一般、高齢者
◆定員 80名(抽選)
◆開催場所 阿佐谷地域区民センター(杉並区阿佐谷南1丁目47番17号 電話:03-3314-7215
阿佐谷地域区民センター)
◆申し込み締切日 平成30年1月20日(土曜日)
◆申し込み 往復ハガキ(1人1枚)に「講座名(古本屋ツアー・イン・阿佐ヶ谷)、〒・住所、氏名(フリガナ)、年齢、電話番号、返信面のあて先」を明記のうえ、1月20日(必着)までに、阿佐谷地域区民センター協議会(〒166-0004 杉並区阿佐谷南1丁目47番17号)へお申し込みください。
http://www.city.suginami.tokyo.jp/event/kuminseikatsu/chiiki/asagaya/1037376.html
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2017年12月29日

12/29本棚探偵の『DS選書』に魂を奪われる。

本日は午後にゆっくり動き始め、まずは中野で一仕事。帰りに『中野ブロードウェイ』を冷やかして、「ブックス・ロンド社」(2008/08/28参照)で旺文社文庫「黄色い部屋の謎/ガストン・ルルー」を100円で購入する。『早稲田通り』をテクテク歩いて家に向かいつつ、高円寺『庚申通り』の「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)に立ち寄る。店主・粟生田さんと「今年も一年お世話になりました」「来年もよろしくお願いいたします」と年末の挨拶を交わしつつ、「こんな状態ですみません」とぬいぐるみだらけの帳場にて新潮選書「関西赤貧古本道/山本善行」小学館「少年探偵・岬一郎/楳図かずお」を計900円で購入する。

一旦家に帰り着き、午後五時前に再び外出。「Title 二階の古本市」(2016/12/27参照)を目指すが、不覚にもボ〜ッとし過ぎていたのか、愚かなことにお店を発見出来ずに西荻窪にたどり着いてしまう…「Title」は明日また改めて訪ねることにしよう。そのまま駅南口までテクテク歩き、「盛林堂書房」(2012/01/06)で「フォニャルフ」にズバババンと補充する。そして、本棚探偵の「ひとたな書房」に並ぶ、戦後すぐの粗悪な探偵小説文庫シリーズ『DS選書』にたちまち魂を奪われてしまう。挙げ句の果てにかなり悩みに悩みまくって、観念し自由出版株式會社 DS選書「傀儡師/水谷準」を8000円で購入してしまう。嗚呼、また本棚探偵に膝を屈してしまった…。
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その後は岡崎武志氏と合流し、さらに盛林堂さん・「古書西荻モンガ堂」(2012/09/15参照)さん、「古書むしくい堂」(2017/03/25参照)さんを迎え入れ、ささやかな古本忘年会を開く。今夜はとことん飲むぞ!と思っていたら、不幸にも仕事直し大至急の連絡が入り、泣く泣く二足早く西荻窪を離脱する。そして早く帰らねばと、阿佐ヶ谷の帰り道を早足で進んでいると、大晦日で店を閉じてしまう「ネギシ読書会 中杉通り店」(2017/11/14参照)の閉店セールの灯りに吸い寄せられてしまう。うわ!やっぱり新しい本が出されている!と喜び、たちまち両腕の中に映画関係の古本が積み上がる。リブロポート「バスター・キートン/トム・ダーディス」日本テレビ「ビリー・ワイルダー イン・ハリウッド/モーリス・ゾロトウ」青土社「聖ディヴァイン/バーナード・ジェイ」毎日新聞社「イギリス「族」物語/ジョン・サベージ」彌生書房「野田英夫スケッチブック/漥島誠一郎」講談社「涙香迷宮/竹本健治」思索社「人魚の博物誌/神谷敏郎」を計3150円で購入してしまい、古本を詰めた袋で、指がちぎれそうになりながら帰宅する。そんな古本に塗れた、愚かな年の瀬である。
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2017年12月28日

12/28家庭文庫に本を買いに行く。

総武線に一時間ちょっと揺られ、千葉の新検見川駅で下車。橋上駅舎から北側に出ると、階段の柵に店舗や住宅が間近に迫る、たて込んだ駅前である。階段を下りて家並の低い街に入り込んで行くと、すぐに懐っこい笑顔を浮かべたひとりの男が近付いてきた。移動古本屋さん「自動車古書店 いい日旅立ち」(2011/11/08参照)店主の石倉氏である。今日はその古本屋たる荷台を、オレンジの幌で覆い尽くした白いトラック・ボンゴにすぐさま乗り込み、近所の彼の自宅へと走り出す。途中、団地脇のミニミニ商店街で、営業しているのかどうか、いや店舗なのかどうかも定かでない古本屋さんを偵察した後、かつての新興住宅街の一角に建つ一軒家に到着する。階段を上がり、和風玄関から招き入れられ、スリッパを履いて廊下を進む。突き当たった右側の部屋に入ると、開いた本棚や机に囲まれた部屋。そこを通過して奥に進むと、本の詰まったダンボールと、まだ本がキレイに並ぶ色んな種類の本棚が立つ和室にたどり着いた。ここは石倉氏の母親が長年主催してきた“家庭文庫(自宅の一室を近所の子供たちに開放した小さな私設図書館)”で、残念ながらこの十一月にその役割を終え、閉鎖となってしまったのである。それを機に氏から連絡を貰い、児童文学がたくさんあるので箱に仕舞い込んでしまう前に見に来ないかと、嬉しいお誘いをいただいたのである。文庫の名は、息子二人の頭文字を並べた『TY文庫』。欄間には、かつて開かれた読書会などの写真飾られ、天井の際を名作絵本「やこうれっしゃ」の絵がぐるりと、列車のように取り巻いている。途端に岩波新書「子どもの図書館/石井桃子」が高速で頭を掠める。熱心に本を読みに来る子や、ただ遊びに来る子、ず〜っとひたすら本を読んでいる子、時間を潰しに来る子、新しい本を楽しみに来る子…色んな子供がここを居場所にして、やがては離れて行ったんだろうな、とかつての文庫の面影を想像する。ここを利用する時は、玄関から入るのではなく、左の庭先から直接上がり込むカタチになっていたそうだ。絵本や本の半分はすでに箱に詰められているが、奥一面だけは往時のままの姿である。私にとって懐かしい本から、最近の本までしっかりと集められている。気になる本は売ってもらえるとのことなので、子供に戻って棚を眺め、ダンボールの中も覗かせてもらい計四冊を手にする。その他にもサービスで、「いい日旅立ち」用の在庫古本棚も見せていただき、さらに二冊を選ぶ。途中帰宅した文庫主催者の母君と挨拶を交わし、「みんな子供たちが読んだ本ばっかりですみません」「児童文学の研究資料もだいぶあるんですよ〜」「最後の方は、みんなに本を読んでもらえるまでが、大変でねぇ〜」「残った本はどうしようかしらねぇ〜。この子が売ってくれるなら、それでいいんだけど」などとお話しする。いや、今まで本当にお疲れさまでした。この住宅街の中の、本好きの子供の居場所であった小さな文庫は、きっとみんなの心の中に、文字や物語の小さな種を宿し、何処かに受け継がれていることでしょう。理論社「かくれんぼ物語/今江祥智・作 長新太・絵」(カバーナシだがこれは嬉しい)宝文館「NHK放送 ヤンボウ ニンボウ トンボウ/飯沢匡」光信社「海底の探検/安川静夫」(カバーナシ)偕成社名作冒険全集「怪盗ルパン(1)/ルブラン 朝島靖之助編著」春陽文庫「無敵先生/小川忠悳」小学館てんとう虫ブックス「チャレンジ!名探偵カゲマンの推理クイズ/山根青鬼」を計2500円で購入する。
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そして来年一月、「自動車古書店 いい日旅立ち」は、クラウドファウンディングで資金の一部を集めた
『新刊書店の無い九州の自治体へ行き、古本を売りに行きたい!』という志高いプロジェクトを実行に移すそうである。
◆1月5日(金)熊本県合志市 ひのくにふれあいセンター
◆1月6日(土)熊本県南阿蘇村 ひなた文庫さんと共に。
◆1月7日(日)宮崎県串間市 あかつき荘
◆1月8日(月)鹿児島県垂水市 ベイサイドホテルアザレア

果たしてお客が本当に来るかどうかも分からない、あくなき古本販売チャレンジ!南の国の方々、ぜひこの多少オンボロトラックな移動販売古本屋をお楽しみに!
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2017年12月27日

12/26古本屋ツアー・イン・日下三蔵邸【プレリュード】

最近すっかり「盛林堂書房」(2012/01/06参照)の別動隊(つまり盛林堂・イレギュラーズ!)として、お手伝いバイトをしまくっているのだが、本日も三年ぶりの日本最大最強の古本魔窟・日下三蔵邸の片付けお手伝いに同行する(2014/12/10参照)。

盛林堂・小野氏と西荻窪から一時間半ほど車を走らせ、神奈川県某市の高台の住宅街に到着する。すると邸宅前には、午前十時半の陽を受けて、にこやかに手を振る日下氏の姿が。今日の最大のミッションは、倉庫化している別宅マンションの一部片付けにあるのだが、やはりまずは本邸を見ないと始まらぬと、邸内に招き入れられる。ぬぉっ、そこには以前と寸分変わらぬ、古本&献呈本タワーに挟まれた廊下が、奥へ奥へと延びて行く魂の震える光景が展開。あぁっ!永瀬三吾の「白眼鬼」がまだここにある!ほぅっ!三橋一夫の見たこともないスリラー小説本が!などと早速虜になっていると、「まずは寝室の本を少し仕分けして運び出します」と日下氏が宣言を下す。あまりにも本が積み上がり過ぎ、本が崩れるのが恐くてうつ伏せにしか寝ることの出来ない布団周りを(うつ伏せに寝ていれば、背中の方が防御力が高いので、本が落ちてきてもケガが防げるという論理に基づく)、すっきりさせようという目論見である。と言うわけで、日下氏が寝室入口の本を退かして中に入り、そこから玄関までの中継を私が受け持ち、小野氏が玄関から運び出して駐車場に置かれたダンボールに詰め込む体勢を採る。寝室内に立ち、本の山を崩しながら日下氏が選別に入るが、もう「ちっ、めんどくせえな」という声が聞こえる。単行本やコミックはパッと見で要不要が判断出来るが、雑誌類は表紙に掲載されたタイトルか、目次を見ないとその判断が出来ないのだ。だが、逡巡する日下氏のスローペースに合わせていても、周りに積み上がる本の背を見ているだけで、充分暇がつぶせて楽しめるのが恐ろしい。また、本は相変わらず絶妙なバランスで積上げられており、おいそれと手を出せない状態なので、何の本だか気になるが、書名が分からない本が散見される。だが、ちょっと見えている帯文、例えば三笠書房の本で『死刑台を組み立てる音が…』などと読み上げると、日下氏が即座に「絶体絶命」!と書名を教えてくれるのである。驚異の帯文イントロでドン!…末恐ろしい能力である…。

そんな風に仕事をジリジリ進めながら、奥の階段の下層に古書が積み上がっているのが気になり、目を凝らしてみると、春陽文庫「売国奴/永瀬三吾」を発見!だがこの本は以前の訪問時に、マンション倉庫で奇跡の署名本を見せてもらっているので、即座にダブり本であることが判明する。スゴい本が、ダブって階段の礎となっている…全く持ってクレージーである。そのクレージーさを小野氏に報告すると、ダブっているなら!と即座に買取交渉に入るため、本を掘り起こして行く。するとその過程で、大阪圭吉「海底諜報局」の珍しい異装第三版までもが、階段の礎なっているのを発見してしまう…嗚呼!
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そして初めてこの日下邸で、日下氏以外の人と出会う。何と二階から、八名信夫+藤子不二雄Aと言った感じのモミアゲがナイスな父君が姿を現したのだ。他にも人が住んでいたんだ…外出する父君のために、一旦玄関から外へ出る。「本ばっかりですみませんね」とにこやかに穏やかに宣う父君と、庭先でしばし京浜急行とこの辺りの崖地特性について語り合う。

と言うような有様で楽しく午前中を費やし、比較的軽めな作業を終えて、昼食を摂った後にマンション倉庫に車で移動する。日下三蔵号は、相変わらず期待通りに後部座席に資料や古本を満載し、サスペンションを深く沈めている…。

3LDKマンションの扉を開けると、二年前にスッキリ整理開通させた面影は消え失せ、本の山が極限まで迫り、物品を満載してはち切れんばかりの紙袋が通路を埋め尽くしてしまっている。日下氏は玄関棚の中から、平井和正のポケSF「虎は目覚める」を見付け「あれ、ここにあったんだ。これで買わなくていいぞ」などと、自分家なのに本を見つけて喜んでしまっている…。そんな風に主(あるじ)にとっても魔窟化しているこちらでのメインミッションは、右側の台所・居間・和室・風呂場への通路を開通させ、さらに様々な物の詰まっている風呂場をどうにかして改めて本置場に変貌させることに決まる。廊下部分に天井まで積み上がるコミック類を、それぞれが狭い通路で身体を無理な体勢に捻りながら、午前中同様リレー型式で馬車馬のように最大稼動して、玄関外に運び出して行く。私は廊下で山の切り崩しをひたすら担当していたので、二時間後にすべてを運び出した後表に出てみると、そこには奇妙な現代芸術的光景が誕生していた。階段壁に沿って積み上がる、コミック階段である。
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マンションの住人が通りかかる度に、「すごいですねぇ、本がたくさん」と言われ、日下氏が「いや、年末の大掃除なんですよ」と軽く虚偽発言を繰り返しているのが、微妙に切ない。だがそんな苦難を乗り越えたおかげで、無事に廊下の撤収作業は終了し、壁が見え(しかもフットライトやコンセントや何も詰まっていない納戸が発見される)、奥への行き来ができる状態となる。
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※左が作業前。右が作業終了十五分前。
「いやぁ、通れるっていいな」と思わず呟くと、何故かこの言葉が日下氏のツボに入り、その言葉を繰り返しながら爆笑をしている。

そんな楽し気な氏はさておき、ここからがようやく折り返し地点で、表に出した本を要不要に選別し、お風呂場の荷物を退かして新たな一時コミック置場にして、再び邸内に本を運び込む作業に従事すせねばならないのだ。階段下で選別途中、謎の本「ミッキーの宇宙旅行」というA4判の児童本が見つかり、日下氏が「こんなの買った覚えないなぁ。ミッキーマウスなんて、まったく必要としてないんだけど」と訝しがりながらビニール袋から本を取り出すと、ミッキーはミッキーでもただの茶色いネズミで、原作がなんとフレドリック・ブラウンなのであった。「ブラウンだからか!」と納得しつつ「これが僕が持っている一番大きいブラウンの本です」と、何だかとても嬉しそう。色々ちゃんと整理すると、面白い発見があるものですね。そんなことがありながら、二時間ほどまたもや馬車馬の如く働き、表がすっかり暗くなった頃、ついに風呂場が美しい倉庫として完成にいたる。
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う〜む、見たことのない麗しい光景だ。「正直ここまで作業が進むと思いませんでした」と日下氏から最大級の労いの言葉をいただく。いや、確かに三人とも、とても頑張ったのである。

ようやく一息ついたところで、その頑張りの奇妙な副産物として、部屋内各所から発見されたレアなTOMOコミックスを、戯れに一堂に集めてみる、各所で発見時から、ダブりがだいぶあることが分かっていたのだが、恐ろしいことに九冊がダブり、そのうち四冊は三冊もダブっていたのである!それをすべて並べてみたありえない異様な光景に、全員で大爆笑する。そして超絶嬉しいことに「ダブり本、どうぞ差し上げますよ」と、突然九冊をいただくことになる…いや、最近書庫整理を手伝う度に、素晴らしい本をいただいてしまっており、もはや“古本ゴロ”のような役得に預かっているのだが、正直言ってとても幸せなのである!いただけるものは、遠慮なくいただいておこう!そして大事にします!

結局夕飯も食べる長帳場の一日仕事となり、東京に戻ったのは午後十時半。長い長い楽しい一日であった。この整理作業は、年始に第二弾を行う予定なので、どうかみなさま、日下邸の変貌をお楽しみに!

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これが本日の収穫。TOMOコミックスは、やはり小酒井不木原作の「少年科学探偵 消えたプラチナ」クイーン原作で望月三起也劇画の「クイーンの事件簿 恐怖の家」構成永島慎二の「赤い酋長の身代金」が嬉しい。都筑道夫「いじわるな花束」もダブり本ということで手渡される。だがさりげなく一番嬉しかったのは、春陽文庫「売国奴」のカバーをカラーコピーさせていただたこと、これを先日新保教授から拝受した裸本(2017/12/19参照)に巻く!カバーコピーは日下三蔵氏提供!本体は新保博久教授提供!ここに、ミステリ界最強の「売国奴」が誕生した!万歳!
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2017年12月24日

12/24 NHKドラマ『事件記者』座談会

取材のために京浜東北線沿いの、ある古本屋さんを訪れる。いや、予想外以上に良い本が安値で買えてしまった。クリスマス・イブに浮かれる街を尻目に、ただただ古本屋を目指したことによる、古本神からのクリスマスプレゼントだろうか。その詳細は、二月発売の『本の雑誌』連載をお待ち下さい…何かもったいぶるようですみません…だが、欲しかった古本にはたと出会い、しかも買えることは、何度味わっても、とても幸せな出来事なのである!

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すっかり暗くなってしまった帰り道、蕨の「旭書房」(2010/03/30参照)に立ち寄ると、道路を挟んで小さな新刊書店と向かい合っていることを、初めて知る。これはまた稀有で素晴らしい光景。そんな風に感じ入りながら、テレビで『笑点』でのサンドイッチマンの漫才に見入る店主の横を行き来して、店内をくまなく探索する。やはり落ち付くのは古書や付録本や駄玩具の多い右端通路である。その古雑誌ゾーンで、500円の世文社「探偵実話臨時増刊 探偵怪奇恐怖小説特集」を見つけて喜び購入する。乱歩・横溝・木々・宇陀児・香山滋・日影丈吉・鮎川哲也・火野葦平・朝山蜻一・城昌幸・鷲尾三郎・大河内常平・楠田匡介・永瀬三吾・渡辺啓助など、お歴々が集まっていて興奮するが、嬉しいのはNHKドラマ『事件記者』の座談会が掲載されていること。原作の島田一男先生はもちろん、NHKのプロデューサーに加え、俳優陣も参加して、計十一ページも喋りまくってくれているのだ。
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そして帰りの車中では、宮敏彦の甘酸っぱい少女推理小説「しらかばの微笑」を読了する。奇しくも大団円を迎えるラストは、ささやかなクリスマス・イブのパーティーシーンであった。こんなおかしなカタチでも、多少のクリスマス気分を味わえたことを仄かに喜び、いつもの如く古本を抱えて帰宅する。
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2017年12月23日

12/23ご、「合成人間」!

昨日は東京の西、『味の素スタジアム』が間近に迫る飛田給に流れ着いたので、電車に飛び乗り調布駅まで移動し、ビルの隙間に咲き誇るアカデミックの古本花「円居」(2009/03/02参照)に立ち寄る。荘厳なオペラが流れる店内。帳場奥では店主が、寝ているのかオペラに集中しているのか分からぬポーズで椅子に腰掛けている。相変わらず冬は寒い店内をじっくりと一周し、書肆ユリイカ 双書・種まく人・6「詩の心理学/イヴオン・プラバール」を800円で購入する。

今日は今日とて静かな深大寺に流れ着き、今年初の霜柱を踏む。この足下の小さな氷の宮殿は、年を取って出会っても美しく神秘的で、小さくなった自分が、氷の柱廊に迷い込むビジョンもまた、永遠である。そんな思いに耽りながら住宅街を潜り抜けて、武蔵境駅方面を目指す。『富士見通り』に差し掛かったところで、やや!「プリシアター・ポストシアター」(2015/01/03参照)が店頭棚&ワゴンを出して、しっかりひっそり営業中ではないか!と喜び駆け寄り、冷たくなった古本たちに熱い視線を注ぐ。
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そして店内に進み、右側の帳場に後横向きに座る店主に挨拶する。たちまち笑顔を綻ばせ迎えて入れてくれ、今秋に行われたスタンプラリーについて熱く語り始める。やはり、古本屋を目指して来る人、ただスタンプを捺しに来る人が訪れる体験は、大変に刺激的であったそうである。営業が不定期で、駅からも遠いこのお店は難関のひとつに数えられていたが、なんとおよそ五十人の人がスタンプを捺しに訪れたとのこと。「あの企画はヒットだよ、ヒット!」と今でも楽しそうなのである。それにしてもお店の中がとてもスッキリしている。どの通路にも、以前のように木箱や本が積み上がっておらず、スムーズに良質な棚が見られる状態になっているのだ。聞けばなんとお店に隣接する二つの部屋をを借り受け、倉庫として使用しているとのこと。「一月二月は催事もないんで、倉庫の整理でもしていますよ」とまたもや笑みを浮かべる。倉庫!見たい!ということで、次回訪れた時には倉庫をツアーさせていただくことを約束する。「プリ・ポス」さん、いつでも良い本出したり並べたりしてるもんな。倉庫にはいったいどんな本が犇めいていることやら…よし!来年ぜひとも入れてもらうぞ!と心の中で怪気炎を上げながら、岩崎書店 エスエフ世界の名作18「合成人間/ベリヤーエフ作・馬上義太郎訳・井上洋介画」を1080円で購入する。

「合成人間」は「ドウエル博士の首」を翻案した作品であるが、井上洋介の絵がもう大変なことになっているのだ。表紙は博士の生首だし、口絵は犬の首を切り落として、別の犬の身体にすげ替えているところ。児童文学なのに、あまりに直裁的な!
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これがそのポップなタッチではあるが、ひどく残虐な口絵である。
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2017年12月21日

12/21神奈川・日ノ出町 9Bricks

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以前から「たけうま書房」さんに開店をタレ込まれていたオカルト系ネット古本屋さんが、ついに昨日実店舗をオープンさせたので、早速駆け付けることにする。京浜急行で東京を抜け出し、横浜で各駅停車に乗り換え日ノ出町駅下車。南端の大きな改札を潜れば、そこは駅と線路の真下で、太いコンクリ橋脚が威圧的に林立している。階段を下りて『平戸桜木道路』を南に出ると、道の両側には古い雑居ビルと商店建築が連なる懐かしい街並。右手に野毛山の気配を感じながら道路を南下して行き、『日ノ出町一丁目信号』を通過したところで、右手のキレイなマンション一階前に、古本ワゴンが出されているのが目に留まる。おぉ!何と立派な路面店!まさかこんなにちゃんとしたお店だとは!と軽く度肝を抜かれる。化粧岩ブロックに飾り立てられた、中にガラスウィンドウが連続。看板などはなく、ガラスドアに紙の案内が貼られているのみである。店前には四台の銀ワゴンが出され、100〜300円の新書サイズ本・オカルト・児童文学・女性実用ムック・雑本・単行本・古書がギッシリ詰められている。古書や古い新書サイズ本が楽しい。そしてすでにオカルト系があふれ出してしまっている…大陸書房の本が多いなぁ…。店内は横長で、カーペットの上に白いスチール棚が並び、三本の横長通路を造り出している。壁棚は左壁のみで、右壁と奥壁にダンボール箱が積み上がっているのが事務所っぽい。右奥に帳場があり、『ひょっこりひょうたん島』のハカセ的男性が、慣れない接客に戸惑いながらも古本と格闘しておられる。お店は元々事務所店としてスタートするはずだったのだが、ひょんなことから嬉しいことに、実店舗としの機能も兼ね備えるようになったそうである。だから店内の本に値付はされておらず、ある程度のジャンルは固まっていたりするのだが、基本的にはネット用並びの、普通客から見たらカオスな棚造りとなっている。だが楽しい!以前から横浜の催事に出展しており、偏ったおかしな本を出す新星として注目していたのだが、UFO・幽霊・怪談・お化け・宗教・新興宗教・迷信・民俗学・民間伝承・疑似科学・心霊科学・恐怖・あの世・UMA・異次元・霊界・超能力・サンカなどがドバドバヅラヅラ続いているのだ。古書がかなり多いのも、楽しさに拍車を掛ける要因となっている。あぁ、棚の上に横積みされている本にも、気になるタイトルが散見される。この店内空間では、普段は弾かれたり蔑まされたり“科学的”にいじめられたりする、こちらの隠秘学の世界の方が、断固たる正統派なのである!ここがシールの剥がし目で、今にも世界がベロンと捲れてしまいそうだ…素晴らしいぞ!もちろんオカルト系以外の本も混ざり込んでおり、戦争・文学・ミステリ・歴史・将棋・山岳などが、世界の秘密と恐さに凍りかけた心をポッと温めてくれたりもする。この感じだと、今のところ実店舗として機能しているのは表のワゴンで、店内は従来の事務所店といった感じである。ちなみに値段の付いていない本は、店主に聞くとすぐ専用データベースを検索して素早く答えてくれる。帳場に気になる何冊かを持ち込み確認してみると、手堅い値段が付けられている印象であった。しかし、ジャンルのメーターを振り切ってしまったお店は、どうしてこうも輝いて見えるのだろうか。店頭&店内で、嬌声を上げながらオカルト本を吟味している女性客の出現も、またスゴい。開店おめでとうございます。日ノ出町に来る新しい喜びが生まれました!新教育研究会「怪奇傳説の科學/豊田清彦」荒地出版社「わが最大の事件/クルト・ジンガー」を購入する。

鶴見まで移動して「西田書店」(2010/01/07参照)に立ち寄る。店頭100均+税棚から、昭文社出版部「デザイン街路図/和田誠」(カバーナシ)ちくま少年文学館5「おっちょこちょ医/なだいなだ」を計216円で購入。ここからは京浜東北線で帰路に着くことにした途端、東海道線の事故に巻込まれ、駅間で車中に一時間ほど閉じ込められてしまう。
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2017年12月20日

12/20夜の「あきら書房」

早く暗くなり過ぎて嫌になる夕方に、『和田掘公園』近くの成田東に流れ着く。暗闇の多い住宅街の慣れぬ道を、己の方向感覚を信じて懸命に縫い、やがて『五日市街道』と『青梅街道』を越えて、「あきら書房」(2016/03/28参照)前にたどり着く。庭もすっかり暗闇だが、嬉しいことにお店に充てられている部屋には、煌煌と明かりが灯っている。非常に情緒溢れる光景である。
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庭草を踏み分けサッシ戸に近付くと、『戸を閉めて下さい。あきら書房』の貼紙がしてあるではないか。最近閉まっていることが多く、店主のご婦人もだいぶご高齢なので、お店の去就が気になっていたのだが、ちゃんと元気に色々やっているので、ひとまず安心する。スラリと戸を開けて靴のまま上がり込み、茶褐色の光を放つ電球の下で、古本を吟味して行く。右奥の古書ゾーンで、海野十三や北村小松が戦線報告を寄稿している興亜日本社「大東亜戦争と帝國海軍」を見付け、さらに青英社「路上の宝石/松山猛」を掴んだところで、店じまいのためか、ご婦人がガラス障子を開けてお店に姿を現すと同時に、通路で蠢く私の姿を見つけて「わぁ、びっくりした!」と笑顔を見せる。驚かせてしまってすみません。なんだか長居するのも申し訳ないので、即座に精算をお願いし、相変わらずの激安価格である計100円で二冊を購入する。

そういえば先日、大阪『梅田蔦屋書店』に精鋭古本四十冊ほどを送付しました。近日中に古書コンシェルジュの手を経て、『4thラウンジ』の壁面『古ツアゾーン』に並び始めると思いますので、西の古本好きのみなさま、お近くにお寄りの際は、ぜひチェックをよろしくお願いいたします!
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2017年12月19日

12/19古本屋ツアー・イン・新保博久邸【第一章】

新保博久教授邸引越しお片づけ大作戦の、早くも第二回目を迎える。「盛林堂書房」(2012/01/06参照)小野氏と午前中のうちに教授邸に突撃し、本日の作業のメインを、同マンション内にあり教授が四つの部屋とその通路を占領している、併設トランクルームの整理に据える。廊下の奥にある鉄扉を開けると、真ん中に短い通路があり、さらに四つの鉄扉が向かい合っている…なんだか警察署の留置場みたいな雰囲気である。
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奇しくもミステリ本にはとてもピッタリのトランクルームと言えようか。各部屋内は二畳ほどだが、本棚がしっかりと立て込み、主に日本ミステリの文庫本を作家五十音順に収めているのだ。だが当然ここにある本も、京都に持って行く本・東京の倉庫にひとまず置いて行く本・必要の無い本に選別しなければならないのである。選別するには作業スペースが当然必要となる。そこでまず、通路に積み重なったダンボールを引き出し、通路中央に立つ大きなスチール棚の整理&解体をしなければならないのだ。そのスチール棚にも当然本が並んでいるので、まずは本を出して教授に選別してもらわねばならない…とにかく色々と本格作業前の前段階作業が多いミッションなのである。というわけで小野氏と教授と力を合わせ、三時間強を黙々バリバリ作業する。すると本が出てくるわ出てくるわ。扉外側の廊下にはたちまち結束本の山が築かれ、まるで古書会館の市会場のような光景になってしまった。
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だがこれでもまだ氷山の一角の一角といったところ。なんたって目算ではおよそ八万冊がこのフロア内に犇めいているらしいのだ。なのでスピーディーに作業を進め、本を次々選別処理していかないと、教授はいつまでも京都に引っ越せないことになってしまうのだ!トランクルーム内にしゃがみ込み、懸命にヒヨコのオス・メスを選別するように、文庫本を目的地別箱に仕分けている教授の背中に、ビビビビと盛大にエールを送っておく。そして通路の邪魔な物が消えたことにより、扉を開けられるようになった四部屋をチラリと観察。むぅ〜、戦前から現代まで日本ミステリが文庫を中心に美しく形作られている。コレクションと言うよりは、生きた資料的棚造りが為されているのだ。教授はあまり高い本は買わぬ派なのだが、それなのにこの充実度は目を瞠るものがある。ちゃんと島久平とか楠田匡介とか鷲尾三郎とか三橋一夫とかも並んでるんだもんな。後の値段を見ると、確かにほとんどが千円以下の値段で見つけたものばかりなので、目を丸くして感心し、見習わなければ!とさらに今後も古本探しに血道を上げることを、勝手に決意する。午後一時半には無事にスチール棚の解体まで漕ぎ着け、前回と同じくとんかつ昼食休憩に入る。お腹を満たした後教授宅に舞い戻り、これまた前回と同じくノンアルコールビールを振る舞われながら、次の作業として雑誌の選別処理に入る。これを済ませて雑誌をたくさん運びだせれば、奥の二部屋にわりと広めの教授の選別スペースが生まれるのだ。こちらは前回粗い仕分けはしておいたので、かなりスムーズに進む。そして午後五時半、別のトランクルームに運び込む本を盛林堂号に積み込み(その際、マンション前に積上げた本の山を、悲鳴を上げながら豪快に崩壊させる不覚をとる。入口付近が少し傾斜しているのに、まったく気付かなかったのだ…だが結束は崩れなかったので、まずは一安心。気をつけなければ)移動。車内では教授に牛乳飴と乳飲料を振る舞われる。二台の巨大台車で本を運び上げて、本日の作業は終了となった。これで後は、教授がひたすら邸内&トランクルーム内の本の選別を進めてくれれば、来年からは本を縛って運び出すという、本来の作業に入ることが出来るようになる。教授!地道な作業と思い切りに期待しておりますので、来年も引き続きよろしくお願いいたします!そして今回も厚かましく本日の作業の記念品にと、春陽文庫「消えた娘/三橋一夫」「売国奴/永瀬三吾」(初版カバーナシ。教授、50円で買ってる!)をいただき、ピョンピョン飛び跳ねて喜んでしまう。いやぁ、これだったら、いくらでも手伝いし続けていたいものだ。よし、この「売国奴」には、来週うかがうはずの某所にて、カバーのカラーコピーをお願いしてみよう!………つづく
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posted by tokusan at 20:38| Comment(5) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月18日

12/18東京・鶯谷 古書ドリス

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森下から隅田川を超えて鶯谷に移転して来た「古書ドリス」(2012/12/03参照)が、本日オープン初日を迎える。何はなくとも見に行かなければと、午前中の山手線に乗って駆け付ける。島型のホームに降り立てば、そこは青空の下の墓場の下の崖際である。南口への階段を上がり、橋状の通路を長く歩いて改札を抜けると、南北に架かった橋の中間にある小さなロータリーのある駅前となる。北に橋を下り、集合住宅&雑居ビル街の中へ入り込んで行く。途中の階段を下り、東に橋の下のコンクリトンネルを潜ってさらに北に進めば。巨大な『言問通り』に突き当たる。しばし信号待ちして横断歩道を渡り、すぐの『うぐいす通り』に歩を進め、さらに北へ。通りの最初に古い看板を掲げた酒屋やお寺があったりするが、後は現代的なビルが建ち並ぶぼんやりとした商店街である。そんな通りが終わろうとする東側マンション一階に、立派な古本屋さんが端然とオープンしていた。自動ドアから中に入ると、奥に向かって縦長く広がる空間である。左右両壁をしっかりした棚が覆い、奥へ延びて行く。手前のセンターには背中合わせの棚があり、途中一旦くびれるようになり、さらに奥の空間には左に帳場、中央に低めの棚台、そして右壁はガラスショウケースを含んでいる。左側の通路に進むと、壁には村上春樹・詩集・古書・古書詩集・怪談・奇談・幻想文学・稲垣足穂・中井英夫・種村季弘・日影丈吉・海外幻想文学・レコード・妖精・魔法・魔術・オカルト・SFが続き、向かいには哲学・思想・心理学・自然科学・音楽・精神などが収まっている。右側通路には、入口脇に絵本・児童文学・文庫本が集まり、壁棚は下段に大判のビジュアル本をズラズラ並べつつ海外文化・昭和モダン・落語・芸能・南方熊楠・博物学・絵葉書・寺山修司・アングラ・全集を上段に集めている。向かいには絵本・美術図録・アートブック・ファッション・セレクトコミック・諸星大二郎・上村一夫・水木しげるが並び、棚脇には少女・ゴシック・人形・ロリータゾーンが設けられている。奥のゾーンに進むと。帳場下には澁澤龍彦を核にフランス文学が固まり、中央にはタロットーカードとその関連書物を集めた島が造られている。右壁のガラスケースには当然の如くレアな本が収まっているのだが、その中にイナガキタルホの「第三半球物語」や「天体嗜好症」が混ざり込んでいるのを見つけ、独り静かな店内で心拍数を上昇させてしまう。さらにはCD&SF文庫棚が置かれ、奥に向かってアート&美術・映画の幅広いゾーンが展開し、帳場脇に曲がり込んだ棚には奢灞都館本や国書刊行会の新刊が暗い額を寄せ集めている。…むむむ、完璧!と言って良いほどのきめ細かい棚造りは必見である。すべてのジャンル、すべての本が“幻想”をキーワードにして、まるで日常から非日常の扉を開く鍵として機能してしまいそうな気になる、そんな魔法に瞬時に掛けられてしまうのである。こうなればもはや、お店自体がシュールレアリズムを現出させる装置のようである。つまりここは、街という日常から続く古本屋さんではなく、空間的にはつながっているが、精神的には街という現実から高貴に隔離された古本屋さんと言えるのかもしれない。いや、とにかくこの古本で出来た幻想タペストリーは、かなりの迫力なのである。値段はしっかり目が多いが、時に優しい値段も付けられているので、執念を持って見つけるべし。そんな優しい一冊を嬉しく掴んで帳場に向かい、店主・喜多氏と言葉を交わす。お店は前店舗より広くなったそうだが、ちょっとまだ持て余しているとのこと。引越し当初、ダンボール100箱くらいと見積もっていたら、結局300箱になってしまったこと(このことから、並ぶ本をざっと眺めて何冊か把握出来る古本屋的能力が、自分に欠けていることを確信。だからやっぱり、一冊ずつ数えるしかないと、気持ちを新たにしたそうである…)。鴬谷に移転して谷根千や上野が近くなり、新たな流れが生まれそうなことなどなど。それにしても、「D.BOOK」(2009/04/05参照)がいつの間にか姿を消して以来、古本屋無風地帯であった鶯谷に古本屋さんを開いてくれたことは、歓迎すべき事柄である。移転開店、おめでとうございます!學進書房「ユーモア中篇小説集 雑音横丁/城戸禮」を購入する。

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まさかドリスでこんな本を買うことになるとは。昭和二十二年の再版仙花紙本。鬼多作小説家・城戸禮のわりと初期作である。『サイレン夫人』『明るい仲間』を収録。傷みと汚れがあるため1500円であった。
posted by tokusan at 15:00| Comment(2) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月16日

12/16「巽堂書店」店主が誰に似ているのか最後の最後に思い至る。

今日は早い時間に経堂に流れ着いたので、まずは北側の「遠藤書店」(2008/10/17参照)で新人物往来社「異国漂流奇譚集/石井研堂編」を200円で買い、南側の「大河堂書店」(2009/03/26参照)で鳩の森文庫「三四六/村野守美」を105円で購入する。そして今日・十二月十六日は「巽堂書店」最後の営業日(2017/11/27参照)ということは起きたときから分かっていたので、急ぎ渋谷に駆け付けることにする。途中下北沢での乗り換え時に、小田急線ホームで強風に帽子を飛ばされてしまう。一瞬見失った帽子を慌てて探すと、あぁっ!さらに風に煽られ、今まさに上りホームの線路際に向かって、スルスル進んでいるではないか。ホームに落としてはなるまじと、駆け寄りダイブして飛びつき(電車が来ないのは確認済み)、ホーム際で帽子を押さえつけるのに成功する。脳内セルフイメージでは、川に落ちようとする小犬を華麗に身を呈してキャッチし、際でピタリと止まる感じとなっていたが、端から見たらただのオッサンが無様に飛ばした帽子を無様に倒れ込み掴んだだけなのである…お騒がせしました。そんなことをして渋谷にたどり着き、たくさんの人を掻き分けるようにして『宮益坂』を上がり、「中村書店」(2008/07/24参照)前を通過して「巽堂書店」に到着する。わぁ!店内がお客さんでいっぱいだ!どうやら私と同じように、皆お店と店主にお別れを告げに来ているらしい。店頭の100均棚には、結構ブランクが生まれてしまっている。素早く目を凝らして一冊抜き取り、今日も変わらずバロック音楽の流れている店内に進む。そこでは、学生やご婦人や壮年の男性が、懸命に本を選んでいる真っ最中であった。店主は、いつもと変わらぬ落ち着いたスタンスで帳場に静かに腰掛けている…ひとつ違うところと言えば、本の整理や値付をしていないことだろうか。いつもはそんな場面に出くわすと、何か怒っているんじゃないかと思うほどダガンダガンと豪快な音を立て、本の整理をしていたものであった。お客さんは精算時に、丁寧に店主に言葉をかけて行く。対する店主ははにかみながら「いや、どうも」「ありがとうございます」と言葉を返して行く。常連のお客さんはたくさん本を買いつつ「これ、日持ちするやつだから」とお菓子など渡したりしている。皆が愛するお店に感謝の念を伝えているので、店内には様々な人の様々な万感の思いが満ち満ちてしまっているようだ…長時間いたら泣いてしまいそうだな。店内でも一冊選び、ゆっくりぐるりと一周すると、キリスト教や歴史関連の硬く重厚な本たちの、強い光に目を射られ、やはり私は店頭の客であり続けていたことを自覚する。春陽文庫「ただひとりの人/北条誠」法政大学出版局「思い出の作家たち/横関愛造」を帳場に差し出すと、春陽文庫はサービスしていただいたので、500円で購入する。そしてこの時、マジマジと店主の顔を眺めながら「ありがとうございます」と言いつつ、ピンと閃いてしまう。ずっと前から店主が誰かに似ているような気がしていたのだが、まったく思い当たることが出来ていなかった。だが、最後の最後に分かった!永世七冠・羽生善治に似てるんだ(もちろんおじいちゃんになった羽生善治である。そしてこれはあくまでも個人的感想である)!なんだか物凄くスッキリしたぞ!と表に出て、都会のビル街の古本屋さんの最後の姿を、うっとりと目に焼き付ける。さようなら、『宮益坂』の上の古本屋さん!
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posted by tokusan at 17:50| Comment(4) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月15日

12/15変な古書命!

もはや病み上がったのかどうか分からない状態で、今日は夜の武蔵境に疲労を引き摺って流れ着く。南側から、ダイヤが乱れまくった中央線の高架を潜り、北側の「浩仁堂」(2011/02/15参照)に癒しを求める。…決して贅沢は言わぬ。何か、何か面白い変な古書が買えれば、それでとりあえず満足なのだ…しかも安値で買えれば尚更だ…。と、店内の灯りを頼りに店頭の箱やラックを眺めるが、アンテナに引っ掛かるような本は見つからず。続いて店内に進み、本棚にじっくり目を凝らす。すると裸本だが、昭和十九年刊の彰考書院「首狩種族の生活/A・C・ハッドン」なる面白そうな変な本を見つけたので、二百円で購入する。十九世紀後半にイギリスの動物学者が、ニューギニア&ボルネオの特殊な原住民を調査した本なのである。良かった、望み通りに、変な古書を買うことが出来た。夜の「浩仁堂」に感謝!
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かなり明るいお店の巨大電飾看板前で記念撮影。
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2017年12月14日

12/14古本屋ツアー・イン・新保博久邸【プレリュード】

「盛林堂書房」(2012/01/06参照)のお手伝いで、ミステリ評論家&乱歩研究の権威・新保博久氏(通称:新保教授)のお宅の片付けに同行する。実は寂しいことに、教授が来年早いうちに京都に帰京することになっているので、そこに照準を合わせた、超迅速な片付けを行わねばならないのである。もちろん「盛林堂」さんの最終的な目的は本の買取にあるのだが、そこに至るまでには、本が一杯のマンション四部屋の整理と、本がいっぱいの同マンショントランクルーム(四部屋+通路)の整理と、ご近所のトランクルーム大小二部屋の整理を行い、本を処分するものとしないものに選別し、縛り上げるスペースを作り出さないと、にっちもさっちも進まないのである。そこで今日のミッションは、マンション奥二部屋の整理を行い、作業スペースを作り出すこととなる。都内某所のマンション四階に上がり、教授に邸内に招き入れられる。うぉぅ、本が棚やティッシュ箱や本ケースに詰められそこかしこに積み上がり、これでもかと合理的に適確に組み合わされている。なので通路は激細で、本があらゆる角度で視界に入って来ても、それほどの圧を感じないのが、なんだか不思議なところである。…いや、決して整理されているわけではないので、独自の積上げ論法がそう擬態させているだけなのかもしれない…。午前十時五十分から作業を開始し、盛林堂・小野氏が切り込み隊長を務めて積み上がるものを掘り起こし、そこから出たものたちを私が新たに積上げつつ出たゴミをひたすら袋詰めして行く。本当にこれをただただ六時間余マシンのように繰り返し(途中、とんかつ昼食の休憩を挟み、戻ってから教授にノンアルコールビールを振る舞われたりする)、大量の献呈本&雑誌・書類・ゲラ・プルーフ・原稿・プラケース・ティッシュケース・本ケース・新聞・パンフレット・書簡・シュレッダー・i-pod shuffle・パソコン・洗濯ばさみ・3Dメガネ・コート・靴下・VHSビデオ・ウェストバッグ(何か入っていると思ったら、中にはもうひとつのウェストバッグが詰められていた!)・財布・手帳などと格闘する。小野氏はもはや掘削ドリルのようである。本は書評用の九十年代以降のものがほとんどだったが、途中古本地層から発掘されたアンティーク棚脇の乱歩評論本ゾーンには、『さすが教授!』と大いに感動する。まぁ本日の私は、本と言うより紙ゴミばかりに触れていたので、本格的な教授邸ツアー(トランクルーム含む)は次回訪問以降に行えればと思っている。そして夜になり、ダンボール十二箱を携え、ご近所のトランクルームへ移動。そこに箱を運び込んで積上げ、さらに次回以降の作業効率を考え、トランク内の整理にも手をつける。
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トランクルーム通路で作戦を練る教授と小野氏。実は整理用に新たにもう一部屋を借り、合計三部屋が教授のテリトリーとなっている。

結局色々終わったのは午後七時過ぎ。だがこれで、一応全貌の確認が終るとともに、作業スペースが確保出来たことになる。教授がちゃんと、二十ほどのゴミ袋を指定日に出してくれていればの話だが…。それにしても片付け作業していると、古本より資料関係の方に物凄いものが含まれており、時々手を止めてしまう。資料としての滅多に見られぬ生原稿コピー類や、有名人からの書簡、ミステリ関連本の企画やイベント企画など、現在進行形の生な資料がわんさかわんさか出て来るのだ。う〜んスゴイスゴイ。そして今日の作業の記念にと、かつて吉祥寺にあったミステリ書専門店「TRICK+TRAP」の書皮と、復刻版の「少年探偵団B・D・バッジ」「少年探偵手帳」をいただく。ちなみに、すべて古本山の中からの発掘品である。
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「TRICK+TRAP」の書皮は連続したシャーロック・ホームズのプロファイルがモチーフになっている!

そんな風に疲れ果てて家に帰ると、癒してくれるように嬉しいヤフオク落札本箱が届いていた。3100円で落とした、小栗虫太郎の戦後仙花紙本群である。だがその中には一冊、昭和十三年刊の裸本だが、不盡書院「爆撃鑑査寫眞七號」が含まれていたのだ!ぬぐぅ〜嬉しい!これだけがとにかく欲しかったのだ!このオリジナル本で、『爆撃鑑査寫眞七號』『金字塔四角に飛ぶ』『皇后の影法師』『破獄囚「禿げ鬘」』『屍體七十五歩にて死す』が読める日が来るなんて…うひょぉ〜〜〜〜うっ!
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posted by tokusan at 21:31| Comment(4) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月13日

12/13一月の古本市

今日は明日に控える難事業のために、なるべく身体を休めて風邪からの回復を図りたいのだが、その前に家を出てまずは荻窪「ささま書店」(2008/08/23参照)でお買物。CBS・ソニー出版「暗色コメディ/連城三紀彦」角川新書「スター見本市/十返肇」(文藝評論家による文壇を舞台にした小説集である)を計432円で購入する。そしてフラフラしながら西荻窪に赴き、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)で先週土曜の古本市の後始末を行いつつ、「フォニャルフ」にドバッと補充する。さらには持って来た「三等列車中の唄」(2017/11/24参照)にパラフィンを掛けてもらい、裏表紙と背がない無惨な姿の「百万の目撃者」(2017/10/07参照)の修理を、店主・小野氏にお願いする。講談社「黒い白鳥/鮎川哲也」(函ナシ)を100円で購入し、古本市で余った本をバッグに詰めて、会話もそこそこに早々と家路に着く。白昼の西荻窪をバッグを提げて歩いていると、その側面ポケットに何か紙が入っていることに気付く。抜き出してみると、それは先週の『西荻ブックマーク』後に、「古書ますく堂」(2017/07/26参照)さんから渡された、古本市のチラシであった。いつの間にか間近に迫ってしまった新年早々、「ますく堂」に神戸「トンカ書店」(「古本屋ツアー・イン・京阪神」 p170参照)と大阪「本は人生のおやつです!!」(同「京阪神」 p72参照)から大量の本が届き、店内『二人古本市』が開催されるのである。そう言えば、移転した「ますく堂」にはまだ行っていないし、あの個性が迸り過ぎている二店の古本が東京で見られるなんて、一石三鳥じゃないか!と今から大いに楽しみにする。だが…このすさまじく破壊的に稚拙なチラシはいったいなんだ!もはやアウトサイダーアート…いや、小学校低学年の教室の壁に貼られた、児童の作成した標語ポスターのようではないか…絵心・文字心・配色心がすべてゼロの三拍子!いい意味で言えばピュア過ぎる!そんな寒々しい紙面を見つめていると、「ますく堂」さんのガハハ笑いが頭の中に勝手に谺する…これを人々に臆面もなく配りまくるとは、やはり何かしらの大物なのだな、「ますく堂」。
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2017年12月12日

12/12/未だ病み上がり足りえず。

未だ病み上がり切らないうちに、世田谷の下馬に流れ着いてしまう。すでに暗闇を迎えた見知らぬ住宅街の中で、身体と心が鉛のように重くなって行く…は、早く帰って布団に潜り込まなければ…だ、だが、その前に古本を買いに行こう。そう固く決心して、足を三宿方面に向ける。住宅街の屋根の向こうに高く輝く『キャロットタワー』を目印にして、歩みを進める。やがて『三宿通り』に抜け出て、交差点脇の「江口書店」(2010/03/29参照)にようやっとたどり着くが、火曜日は定休日であった…。だがめげることなく足を引き摺り『玉川通り』を越え、緩い弧を描く坂道を下って行くと、ふぅ「山陽書店」(2014/04/09参照)は暖かい光を放ち、営業中であった…良かった。
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店内に入り、パラフィンに包まれた本や文庫を軽い視線で流しつつ、中央通路の本命ゾーン『一列古書棚』に意識を集中する。以前見た時とさほど変わっていないようだが…と思いつつも、そこから東京文化新報社「最新版 流行歌手になる法/川口忠」を1000円で購入する。奥付が何故かないので正確な出版年は分からないが、『年内順によるヒット・レコード』が昭和37年で終わっているので、恐らく昭和三十八年に出されたのではないだろうか。『マス・コミと流行歌』『あなたも流行歌手になれる』『私はこうして流行歌手になった』『地方の歌手志望者へ』『歌手として世に出る方法』『コンクール合格必携十ヶ条』『声をよくする方法』『人気歌手声の秘訣』などなど…。調べてみるとこの著者は「映画俳優になる法」も同じ出版社から出している。

そんな本を車中で読み耽りながら阿佐ヶ谷に帰着。フラフラ家路をたどっていると、火曜定休のはずの「古書 コンコ堂」(2011/06/20参照)が、クリアな照明に照らし出されている。またもや何かの撮影ロケに使われているようだ。今や日本で一番ドラマや映画に、『古本屋』という撮影舞台を提供しているお店かもしれない。
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店内奥をガラス越しに覗くと、奥の壁にセットの一部として掛軸が何本か掛けられているので、ちょっと古めかしいお店の雰囲気を作り出しているのだろうか。横の駐車場には美味しそうなケータリングまで用意されているので、撮影は恐らく深夜にまで及ぶのだろう。さぁ、こちらはサッサと帰って、早く寝ることにするか。…我、未だ病み上がり足りえず…。
posted by tokusan at 21:02| Comment(0) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月11日

12/11師走の風邪

連日の無理が祟ったのか、無様にも風邪を引いてしまい、日曜から臥せって過ごす。だがしかし、迫り来る仕事は進めねばならぬので、机と布団の中を行き来して様々に作業し、やり取りをする。布団の中では、読書とうたた寝を繰り返している。薬を飲んでいるので、活字を追っていると、すぐに睡魔が襲い掛かって来るのだ。だがそれにはあまり逆らわずに、スウッと寝て、しばらくしたら起きて再び本の中の世界へ。すでに「黒バラの怪人」と「文壇底流記」を読了し、今は飛鳥高「疑惑の夜」とミルン「プー横丁にたつた家」(昭和十七年初版)と浅原六朗「都会の点描派」に、取っ替え引っ替え取りかかっているところである。幸いにも枕元周辺には、読みたい本が積み重なっているので、読書には全く事欠かないのである…あぁ、もうこれから、ず〜っとこうやって過ごせれば、楽しいのだが…それにしても、この本の山をいつになったら読了出来るのであろうか…などと熱にうかされながら少し思う。
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そして午後夕方近くになって、どうしても済ませなければいけない用事のため、着膨れして足をふらつかせながら外出する。樹冠に光の当たった長い欅並木が、大振りの落葉をハラハラパラパラと落とす下を歩いて、駅前着。ふぅ、まるで厳しい旅をしているようだ。今更ながら健康な日々を眩しく思い、用事をこなす。そして習慣のように「千章堂書店」(2009/12/29参照)に立ち寄り、新潮文庫「松本清張傑作選 時刻表を殺意が走る 原武史オリジナルセレクション」を250円で購入し、またもや厳しい旅路を乗り越え、どうにか家に帰り着く。こんな情けない状態でも、古本を買いに行けたことを幸せに思い、すっかり冷たくなった布団の中に潜り込む。古本屋ツアーにも行けず、掘出し物も見つからないが、読書に耽溺出来る、病気に臥せった静かな一日である。

◆もうひとつお知らせ
本の雑誌増刊「おすすめ文庫王国2018」の『キャラ別攻略 目録読書のススメ』にチラリと登場し、大好きな「初期創元推理文庫 書影&作品目録」についてチョッピリ語っております。書店でお見かけの際は、お手にしていただければ幸いです!
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2017年12月09日

12/9宮澤賢治の戦中文庫!

待ちに待った岡崎武志氏との年末恒例古本市の日を無事に迎える。午前十時過ぎに冷え込む西荻窪『銀盛会館』ガレージ会場に入り、入念な準備を進めた後、午前十一時に開店。すると、例年より多い気がした古本修羅の波と古本神の愛の鉄槌は、会場の古本をたちまち薙ぎ払って行った…みなさま、お買い上げありがとうございました。そして売れた古本たちよ、どうか嫁ぎ先で幸せに暮らすのだぞ。
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写真は開店前のシャッターから覗く、今にも飛び込んで来そうな気配の足!足!足!足ぃ!

途中、岡崎氏と恐ろしい品揃えと安値の盛林堂ゾーンをチェックして、講談社「疑惑の夜/飛鳥高」フィルムアート社「魔術師メリエス/マドレーヌ・マルテット=メリエス」を計3500円でチャッカリ購入しつつ、岡崎氏と欲しさがかち合ってしまった、横山エンタツ著「漫才読本」(カバーなしだが500円!)を懸けてジャンケン勝負!一発勝負で、私はパー、岡崎氏はチョキを出し、残念ながら軍配は岡崎氏に!「いやぁ〜当然やろ。この本はオレにこそ相応しい本や。来るべきとこに来たんや」と敗者を完膚なきまで叩きのめす勝利宣言をされてしまう。キィ〜、くやしぃ〜!
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憎らしい勝利のVサインと、垂涎の「漫才読本」。

そして午後六時の市終了後には、同じ西荻窪で開催されていた『第100回西荻ブックマーク』の記念講演に駆け付け、束の間飛び入り参加して、登壇した思い出などを語る。記念に発刊された小冊子「西荻ブックマーク 100th anniversary booklet 本と西荻窪」にも寄稿しているので、ご興味ある方は「古書音羽館」(2009/06/04参照)でお求めを。

役目を果たしてブックマークを途中で抜け出して、市会場に戻って撤収作業を手伝う。ところがその途中目に入ったのが、見たこともなかった一冊の文庫本。すでに結束されていたのだが、盛林堂・小野氏に頼んで抜き出してもらう。大日本青年館 青少年文庫9「農民とともに/宮澤賢治」である。昭和十五年初版の同十八年再版本である…よもや戦中に宮澤賢治の文庫本が出ていたなんて…。中身は農民指導に関係深い詩・四十六編を集めたものであるが、すでに敵性語である外国語が意譯漢字に改められてしまっているのだ(その代わりもとの外国語はルビとして振られている)。これが100均に出されていたなんて、まったく気付かなかった!オレの愚か者!と鼻息荒く興奮していると、小野氏があまりにもあっさりと譲渡してくれた。うぉぉぉ、ありがとうございます!…とそんな風に一日を古本塗れで過ごし、売れ残りの本の一部をヒイコラ抱えて、家路に着く。
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巻末の広告を見ると、文庫シリーズ15冊目として「宮澤賢治童話集」も出ているらしい…ほ、欲しい!

◆お知らせ
そろそろ発売になる本の雑誌社「本の雑誌」新年一月号から、連載が開始されます。名付けて『毎日でも通いたい古本屋さん』。一ページですが、毎日でも通うのに値する、ウハウハ定点観測し続けている古本屋さんを、そこで買った本とともに紹介して行きますので、どうかご継続してご笑覧していただければ、もっけの幸いであります!
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2017年12月08日

12/8東京・下高井戸 SOLID DESIGN

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大変に冷える一日ではあったが、どうにか雨には降られずに、世田谷の赤堤に流れ着く。そして偶然にも、雑貨屋のようなお店の店先で、映画パンフレットが売られているのを目にしてしまう。駅からは南口に出て、踏切から『プラザ通り』→『日大通り』と変化する商店街を、南西に歩いて行く。ズンズン進んで、『松原高』が右手に現れる交差点で左手を見ると、マンション一階の牛乳屋さんの隣りに、そのお店はスタイリッシュに存在している。店頭には古着や雑貨やアンティーク類が並び、左端に件のパンフ木箱が置かれている。『古い映画パンフ』の札があり、一律500円となっている。だがこういう『古い』という文句は、すぐには鵜呑みには出来ない。確かに古いは古いが、八十年代のものだったりすると、思わずがっくりしてしまう。いや、八十年代ももはや三十〜四十年前…充分に古いのではあるが、それが価値を持つ古さであるかどうかは、また別問題なのである。そんなことをうっすら考えながら、五十冊ほど薄手のパンフが収まった箱に手を伸ばす。むむむむ、でもこれは本当に古いものが多い。ロマンス映画・ヤコペッティの残酷映画・SF映画、それに『バンビ』や『白雪姫』や『ジャングルブック』など、ディズニー映画の数々…映画会社の出していた冊子・「映画の友」・グレムリンのアメコミ・ロスのガイド一式・アメリカのマイナーアトラクション施設のお土産本一式・バレエ&演劇関連のパンフレット…どれも魅力的な品々である。だが値段は500円なので、ポンポンと買うわけにはいかない…などと思いながら冊子を繰っていると、ぬぉう!スゴいのが出てきた!1970年、東宝チャンピオンまつり『モスラ対ゴジラ』のパンフレットだ!やったぁ!こんな偶然流れ着いたところで、こんなエクセレントなパンフレットが、俺を待ってくれていたとは!さらに藤城清治の木馬座ファミリー劇場・プログラム「カエルのぼうけん」(有名キャラ・ケロヨンの舞台パンフである)を見つけて喜びを重ね、アクセサリー中心の厳かな店内で、計1000円で購入する。
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このパンフを入手出来たのは劇的に嬉しい。本来の『モスラ対ゴジラ』は1964年に製作上映されたものであるが、この1970年の『東宝チャンピオンまつり』で上映されたのは、その短縮編集版である。同時上映は『柔の星』『アタックNo.1 涙の世界選手権』『昆虫物語 みなしごハッチ』。なので中身はすっかりお子様仕様なのである。モスゴジ『ものがたり』の、「ゴジラはついにモスラの卵をみつけました。「これは、おいしそうなごちそうだ、ひさしぶりに卵やきでもたべよう」ゴジラは、ほうしゃのうを卵にはきかけました。」「ゴジラとモスラおやこのだいけっせんは、いつまでもつづきました。ゴジラがんばれ!モスラまけるな!さあ、どっちが勝つでしょう」などが、大いに泣かせてくれます。
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2017年12月06日

12/6一足先に準備完了!

起床してからすぐに、古本市の準備を開始する。値付はすべて終わっているが、まだなんだか本が足りない気がするので、ガサゴソとあちこちから掻き集める。そんな新顔たちを値付してから、午後に結束作業を始める。文庫本は四十冊前後、単行本は二十冊強をメドに、紐でグルグル縛って行くのだ。椅子の上に本を積み重ね、縛った紐で本を傷付けぬよう新聞紙を上面と下面に当て、椅子から半分山をずらして崩れぬようグッと押さえ込み、縦に一気にグルグルと紐を巻いて行く。不器用な私にとっては、これがなかなか重労働なのである。だがしっかりやらないと、いつかのように運搬中に本が無様に崩れてしまうのだ(2017/02/18参照)。ハアフウ不慣れな作業に汗を流し、どうにか二十三本ほどの古本束を作り出したところで作業終了。終わったは終わったのだが、果たしてこれで足りるのだろうか…。夕方五時過ぎになって、盛林堂号に迎えに来てもらい、本をエッチラオッチラ後部に積み込んで、いざ西荻窪へ。なんとか渋滞には巻込まれずに、ほどなくして夜の『西荻南中央通り』にひっそりと佇む『銀盛会館』に到着する。またもやエッチラオッチラ古本を下ろし、後は一人棚入れ作業に腐心する。足下のコンクリ床から迫り来る冷気と闘いながら、すとんすとんと古本を並べて行く。…………おぉぉ!足りた!全部の棚に本が入った!スゴい!こんなの初めてだ!完璧だ!と、取りあえず古本市のカタチになったことに、ホッと一安心する。後はここに、続いて岡崎氏の本と盛林堂の本が入れば、完全に準備万端となる。みなさま、心の準備は良いですか?古本を買う準備は良いですか?身を斬る思いで、結構良い本放出しております。かつて『どひゃっほう!』と叫んだ本も並べております。12/9土曜日にお待ちしておりますので、よろしくお願いいたします!
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【オカタケ&古ツアガレージ古本市】
◆日時:2017年12月9日(土)11時〜18時
◆会場:西荻窪 銀盛会館1階 JR西荻窪駅南口徒歩5分(杉並区西荻南2-18-4)
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posted by tokusan at 21:37| Comment(2) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする