2018年02月28日

2/28現世でがっちり買う。

中野で用事を済ませた後、東西線に乗り込み早稲田へ。そして穴八幡下の、坂道の『早稲田通り』を、早足で歩いている。先日読んだ松崎天民の「東京カフェー探訪」が、鋭い観察眼と独善的な主観と気の効いた諧謔に満ちており、とても新鮮な読書体験だったので、心が別の松崎天民を求めて止まないのである。…そう言えば二ヶ月前に訪れた「古書現世」(2009/04/04参照)に、裸本だが数冊松崎天民が入荷していたな…と思い出し、焦りに焦って足をセカセカと前へ進めているわけである。その途中、昨年末に閉店した「谷書房」の電飾看板がビニールに包まれているのを目撃し、瞑目した後写真撮影する。
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パイプシャッター奥のガラス窓に貼られた閉店の挨拶の、最後の言葉である『ありがとうございました』が、あまりに情感が籠った達筆なのに感動を深くする。再び早足に戻り南側歩道を進撃していると、北側の歩道の「文英堂書店」(2012/08/20参照)がテナント募集中なのに驚き、車が切れたのを見極めて通りを横断する。後で聞いたところによると、閉店したのは昨年半ばで、その後ずっと「さとし書房」さん(2011/12/30参照)による整理片付けが年末まで続いていたそうである。
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それにしても早稲田の古本屋の灯が、いつの間にか二つも消えていたなんて…。そんな風にちょっと嘆きながら南側歩道に舞い戻り、「浅川書店」の二冊100均箱からハヤカワポケミス「黒衣夫人の香り/ガストン・ルルウ 日影丈吉訳」を見つけ出して帳場の奥さまに100円玉とともに差し出すと、「これ、二冊で100円なのよ」「あぁ、でも一冊でもいいです」「そんな、悪いわぁ〜。そうだ、好きなの一冊持って行っていいわよ!」などとやり取り。だが「ありがとうございます」と言いながらも、焦っているので本を選ぶことはせず、そのまま「現世」に到着。店内にスッと入り、松崎天民松崎天民松崎天民…と探して行くと、おぉ!残ってる!と喜び、並ぶ三冊を吟味する。「同棲十三年」「四十男の悩み」「戀と名と金と」…『探訪ロマンス』に頁を多く割いている弘學堂書店「戀と名と金と」(函ナシ)に決める。他にも調子に乗って、書肆ユリイカ「抒情の周辺/杉本春生」江水社「水蔭行脚集第六巻 北國中國東國/江見水蔭」(署名落款入)を掴んで向井氏の前に進むと、「あっ、これなんかもどうです?北原さんの本に出てたやつですよ。先日切ない買取をしたんですが、中にこれが混ざってたんですよ」と、一冊の児童文学をいきなり差し出される。あぁぁっ!確かに北原尚彦氏の「SF奇書コレクション」に載ってた「アトミーノは戦争がきらい」だっ!しかも帯が付いている!と一も二もなく一緒に買うことにする。講談社「アトミーノは戦争がきらい/M.=アルジルリ作 岩崎純孝訳 永田竹丸絵」を加え、計8500円で購入する…ふぅぅ、がっちり買ってしまった。気持ちいい…。そしていつものように、向井氏と色々長話していると、突然「ニャオ」と声が聞こえる。「あれ、猫?猫いるんですか?」と聞くと、なんと店飼いの猫が現在「現世」にはいるとのこと。名前はコト。だが、気が小さいようで、「ニャオ」と声はすれども姿は見せず…。氏が「おいで、おいで、ほら」と椅子の足を叩いて優しく呼び掛けるが、やはりなかなか姿を見せてはくれない。帳場前の本の山の上に静かに身を乗り出し、奥のバックヤードへの通路を必死に覗く。するとようやく、黒い瞳の茶虎猫の顔半分を見ることが出来た。うひゃっ、カワイイ!良し、今度また店飲み(2016/03/05参照)を決行して、触れるほど仲良くなってやろう。
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2018年02月26日

2/26映画『点と線』を観る。

花粉によるくしゃみを寝床で連発して目覚め、だがまだ春は遠いような曇天下の冷たい空気を潜り抜けて、午前十一時四十五分の「ささま書店」(2008/08/23参照)に古本を買いに行く。ハヤカワポケミス「バスカヴィル家の犬」「シャーロック・ホームズの回想」ともにコナン・ドイルと北海道新聞社「北海道 探そうビルの化石」を震えながら店頭で掴み出し、店内では《リキエスタ》の会「東京カフェー探訪/松崎天民」を見付け、計1188円で購入する。

そして午後四時半過ぎに再び外出し、ラピュタ阿佐ヶ谷の特集上映『ミステリ劇場へようこそ』を観に行く。午後五時から『点と線』が上映されるのである。先日吉祥寺の「バサラブックス」(2015/03/28参照)で、十四版だが当時の原作本を手に入れ(2018/02/15参照)一気に読了してしまった経緯で、俄然本の出版年と同じ昭和三十三年に速攻で製作された映画に興味を持ってしまったのである。いや、裏切られたように面白かったです。日本列島の鉄道路線図を、東京から博多、そして事件の端緒となる情死事件の起こる香椎まで赤いラインが進行するオープニング。新人・南廣(『殺しの烙印』のアル中の殺し屋・春日!)のド真っ直ぐな演技。博多弁を巧みに操り活動する饒舌で快活な加藤嘉。悪過ぎモテ過ぎ自信あり過ぎの山形勲。頼りになる係長・志村喬(時刻表のことを時間表と言う)。本当に美し過ぎる高峰三枝子。まさに原作当時の香椎の侘しい駅前商店街。昭和三十年代の蒸気機関車での旅。カラー映像だが灰色にくすんだ東京の都市風景。そして東京駅での『四分間の間隙』シーン(情死事件の片割れ・佐山は『ウルトラセブン』でプロテ星人を演じていた俳優だ!)。物語はだいたい原作通りに進み、多数のアリバイ崩しに奔走する三原刑事(南廣)の地道な捜査を中心に描かれて行く。鉄壁のアリバイにぶち当たる度に、三原がズズ〜ンと落ち込むのが、観ていて可哀想だが愉快。だが上映時間八十五分の制限故か、すぐさまその突破口が見つかり、悩んでいたのが嘘のように元気を取り戻すのが、またおかしい。原作が松本清張の後の代名詞とも言える『社会派推理小説』というよりは、純粋な『推理小説』に近いため、かなりしっかりとしたエンタメ作に仕上がっている。また清張は単行本のあとがきで『謎解きの方にウエイトを置いて、動機の部分は狭くした』と書いているのだが、映画ではこの動機を終盤で細やかに描いているため、犯人の言葉に意外なほどのカタルシスを感じてしまう。それにしても単行本は二月発売で、映画は十一月公開である。雑誌「旅」での連載が終わったのも同年の一月…超スピードで製作されたことが伺える映画である(そのせいか分からないが、ロケは福岡と東京のみ。北海道や熱海は恐らくB班の撮影した景色をセットシーンと巧くつないでいる)。
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ラピュタ前で原作本を手に記念撮影。すみません、こういう古本遊びが、好きでたまらないんです…。
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2018年02月25日

2/25東京・国立 店名未確認

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すべてのエネルギーを放出した態で疲れ果て、国立の南西に流れ着く。足を引き摺りながら、元「ブックステーション門」(2009/12/18参照)の「祐夢」にたどり着く。ひっそりとしているが、ちゃんと営業してくれている!店頭ワゴンから一冊つかんで、とても静かな店内へ。古書が多く混ざる本棚に魅了され、奥へ奥へと進んで行く。う〜む、楽しい。欲しい本が次々と目に入る。しかも隙アリで嬉しい。偕成社「幽霊屋敷/西野辰吉」東京創元社 世界恐怖全集11「蜘蛛/H・H・エーベルス」(箱ナシ)正進社名作文庫「太陽系最後の日/奥野健男編」を計1134円で購入する。良い買物が出来た心地良さで古本心を暖かくしながら、国立駅に向かって『富士見通り』を北東に遡上していると、様々な絵本を狭い歩道際ギリギリに並べている、小さなお店に出くわす。駅南口からは400mほどで、『セブンイレブン』を通り過ぎたら見つけることが出来るだろう。木箱やミニベンチのような平台に、カラフルなハードカバーの絵本たちが明るく優しく煌めいている。最近の物や覆刻物が中心で、値段は定価のものもあれば、100均・定価の半額〜20%オフまで複雑な値段模様を見せている…バーゲン本なのだろうか?取りあえず日本作家の箱から一冊抜き取り、店脇の短く狭いアプローチに入り、土足厳禁らしいお店の扉をカラリと開ける。狭い店内には絵本ラックが置かれ、窓際に低い絵本棚、そして左壁一杯の絵本棚。すぐにマスク姿のご婦人が近寄り、手にした絵本を見て「ありがとうございます!」と声を上げる。即座に精算体勢に入ってしまったので、靴を脱ぐ間も店内の絵本を見る間も奪われてしまった…。福音館書店「ぴかくん めをまわす/松居直さく・長新太え」を400円で購入しながら、「ここは絵本屋さんなんですか?」と聞いてみると「そうです。絵本の古本屋なんです。また買いに来て下さいね」と返って来る。おぉ、しっかりと古本屋さんであったか!と喜んだのも束の間、本を受け取り表に出ると、何処にも店名が見当たらない…さりとて、もう一度店内に引き返し、店名を訪ねる勇気もなし。仕方ない、次回来店時の宿題としておこう。それにしても偶然に未知の古本屋さんに出会えるとは、想定外のラッキー!と、ウキウキしながら駅へと向かう。

西荻窪で途中下車し、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)に向かい、表紙デザインを担当した盛林堂ミステリアス文庫二月新刊「戦後 春陽文庫 資料集成 β版/小野純一編」を受け取る。小悪魔的な春陽文庫に魅せられた古本屋さんが編んでしまった、楽しい楽しいマニアックなカバー資料集である。大人の事情で表紙デザインにカバー関連の図案は使えなかったので、いっそシンプルに文字だけで組んでしまおうと一時は思ったのだが、それではやはりつまらない。と散々悩んだ挙げ句、ヒントを掴むために開いた春陽文庫「若さま侍捕物手帖2/城昌幸」(昭和三十四年第六刷)の巻末『春陽文庫目録』のラインナップが奇跡のような並びだったので、それを地紋としてそのまま活用することに決める。鷲尾三郎・楠田匡介・小栗虫太郎・江戸川乱歩・黒岩涙香・永瀬三吾・香山滋…あぁ、失神するほど悩ましい。
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2018年02月23日

2/23「東京書房」は「東京書房」に戻っていた。

去年から取りかかっていた『全国古書籍商組合連合会』とのささやかなお仕事を、本日午後に無事に一区切り付け、ホッと胸を撫で下ろす。後は出来上がって来るのを待つのみ。そんな謎のブツのお披露目は、今しばらくお待ち下さいませ。なのでフワッと解放されて、連載の来月号の取材に出かける。その結果、流れ着いたのは自由が丘。大井町線のホームから南口に出て「西村文生堂」(2013/09/10参照)に向かおうとした足が、ふいっと『マリクレール通り』を東に向かう。そしてすぐの、雑居ビル一階から四階に移った「東京書房」(2016/07/25参照)の階段上がり口前。…何故か引き寄せられてしまった…そしてそこに立つ立看板を眺めると、『古本』の文字とともに店内の写真がペタペタ貼られている。それらから察するに、店内の様子がだいぶ変わり、以前のような古本屋さんらしくなっているではないか。すぐさま三階までの直線階段を上がって行くと、途中から階段脇に本の列が出現し始める。三階から四階までの旋回階段も同様のディスプレイがされている。扉から中に進むと、よっ!本がだいぶ蔓延っているではないか!左壁は思想・みすず本・詩集や文学・幻想文学・探偵小説・漫画関連・美術・写真集が集まり、右の机回りには雑誌類やビジュアル本が固まっている。フロア中央には文庫棚・値下げ本棚・SF・写真集ガラスケースが集まり、右壁にカルチャー・サブカルなどが続いた後、窓際の絵本&児童文学へ続いて行く。いつの間にか帳場は左奥に移動したようだ。本の量が増えたこともさることながら、所々に古書が混ざり込み、なかなか油断出来ない状況である。詩集の棚の本の上にあった、古く小さなシナリオブックや小冊子の積み重なりが気になり、一気に掴んで引き出してみる。するとその中の一冊に戦前の探偵小説雑誌「ぷろふいる」が混ざっているではないか!値段を見ると4500円!何故か頭の中では『これ、「ぷろふいる」にしては、安いんじゃないかな?買った方が絶対にいいんじゃないかな?』の問いに対し『買った方がいいダス!買うべきダス!』と野沢雅子・風大左衛門の口調で返答がある…俺はちょっとどうかしてしまったのか?と訝りながらも意を決して帳場へ。ぷろふいる社「ぷろふいる 十一月號」(昭和八年 第一巻 第七號。小栗虫太郎『寿命帳』九鬼澹『神仙境物語』西田政治『横溝正史を語る』黒沼健『シャーロック・ホルムズの言葉』甲賀三郎『探偵時事』江戸川乱歩原作・小納戸容脚色『陰獣』などを掲載)を4500円で購入する。精算中、ほわわんとしたエプロン姿の女性店員さんに「スタンプカードはお作りになりますか?」と聞かれたので「はい、お願いします」と答えると、「あの…」と顔を見つめられ、メガネの奥で目玉がくるんと一周した後「小山さんですか?」と問いかけられる…うっ、久々に正体がバレる体験!改めて挨拶を交わし、ブログの話やお店の話や「尾花屋」(2017/06/15参照。店主は「東京書房」出身だった!)の話など。そしてスタンプカードには、一気に困り顔の犬(熊?)のスタンプが八つも捺されてしまう。いやぁ、何気なくこちらに足が向いて、とても良い買物が出来ました。文庫棚の横に挿された手書きフリーペーパー『東京書房通信 第一号』をいただき、お店を後にする。
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とても嬉しくて階段にて記念撮影。
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2018年02月21日

2/21売るためにも買う。

連絡待ちの仕事が時間指定の締め切りなので、ほとんど自由に動くことが出来ない。だが古本は買いたいので、午前と午後の二回に分けて、少し抜け出すことに決める。どうやら三月は古本を売る機会が多くなりそうなので、地道に補充を進めておかねばならぬのである。古本販売にあたる時、家の本だけで対応しても良いのだが(そうすれば本は減る一方だ!)、それではなんだか面白くないので、日々並びに潤いと艶を与えるためにも古本を買わねばならない。古本屋さんでない一般人としては、市などで安値で古本を仕入れられるわけではないので、普段から100均本に目を凝らしている必要がある。販売する時の割合を大雑把に説明すると、気に入っている蔵書から一割、読了済みの面白かった本から一割、読了していなくとも面白そうな本が三割、後の五割が古本市用に買い集めた本、と言った感じだろうか。もちろんこれは厳密ではなく、それぞれのゾーンに食い込み合っていたりもする。とにかく通りかかったお客さんが本の並びを見かけた瞬間に、心をときめかせて『何かありそうだぞ』と立ち止まってもらい、楽しく古本を買ってもらえれば、万々歳なのである。と言うわけで、午前中は「ささま書店」(2008/08/23参照)へ。店頭100均棚から二冊掴んで、続いて店内文庫棚を眺めていると、海外文学文庫最下段に、古い付録本が少し集まっているのを発見する。薄い手品本が面白そうなので、確保して帳場へ。文藝春秋新社「笑うとくなはれ/渋谷天外」[財]東京都文化振興会「朝香宮邸のアールデコ」世界社「昭和二十三年「富士」十一月號附録 誰でも出来る奇術手品種明し全書」を計432円で購入する。そしてお釣りを財布に入れて歩きながら、入口までの右壁棚を眺めていると、気になる一冊が目に留まる。講談社「井上ひさしコント集」である。てんぷくトリオのために書かれたコントを二十四作掲載している。値段を見れば300円なので、『ラッキーな安さだ!』と感嘆して帳場に引き返し、324円で購入して、先ほどの袋に同梱してもらう。午後には高円寺へテクテク出かける。お店のほとんどが水曜定休なのは分かっているが、「十五時の犬」(2011/11/22参照)なら開いているはずだ!と『あづま通り』に抜ける。無事に開店状態のお店に出会い、跪いて店頭棚とじっくり向き合う。その時、店内から二人の若者が飛び出し、声高に話し始めた。「俺、疲れた。今日で一番疲れた」「通れないもんな…」。どうやら店内の迷路的極狭通路に、やり込められたらしい。店頭で一冊掴み、通路に身を滑り込ませる。新保博久教授旧邸や日下三蔵氏邸を経て来た身には、もはや普通の見易い通路と化している…。広済堂「帝国ホテル ライト館の幻影 孤高の建築家 遠藤新の生涯/遠藤陶」創元推理文庫「マギル卿最後の旅/F・W・クロフツ」(初版帯ナシ)を計400円で購入する。帰り道、駅近くの雑居ビル二階にあるはずの「七星堂古書店」(2015/09/21参照)の窓を見上げると、古本と古着で作られたウッディな空間はすっかり消え去り、蛍光灯が煌煌と点灯中の現状復帰の丸裸状態であった。…閉店してしまったのであろうか。少なくとも、そこにあったお店は、残念ながら消滅してしまったようである。
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2018年02月20日

2/20是政から武蔵境へ。

昼過ぎに大名のような名の土地、是政に流れ着く。武蔵境から出る、杏仁豆腐のような白い電車の西武多摩川線の終点である。遠くでは、多摩川をコンクリ橋で渡る、南武線の走行音。新旧の集合住宅で出来た比較的新しい街並。残念ながら古本屋はゼロである。ブラブラと駅の横から歩き始め、長い塀の続く線路沿いの殺風景な直線道を東へ向かう。工場の塀は、途中から、高いスチールの『多摩川競艇場』の塀にすり替わり、時折ボートの独特なエンジン音が聞こえるようになる。やがて競艇場前駅にたどり着き、陸橋の上で競艇場を遠望する人たちとしばらく肩を並べ、大きなスタンド前に満々と湛えられた黒い水の上を、ミズスマシのように滑って行く小さなボートを目で追いかける。ここから多摩川線に乗り込み、『今日は火曜だから新小金井「尾花屋」(2017/06/15参照)はお休みかもしれない…一気に武蔵境まで行くか』と、武蔵境駅をガタゴト目指すことにする。その昔、途中の多磨駅には、小さな駅前ビルの二階に「にしがはら書店」(2009/04/02参照)があったのだが…と思い出しながら、恐らく古本屋が新しく出来なければ二度と降車しないであろう光景を、目を細めて懐かしく見つめる。およそ十五分で到着し、JR連絡改札を抜けずに、通常改札を抜けて北口に出る。トコトコ歩いて「浩仁堂」(2011/02/15参照)へ。店頭絵本ラック裏側の、木棚を立ったりしゃがんだりを繰り返し、つぶさに調べて行く。すると下段の端にあった、古めな紙質の本が気になってしまう。スッと抜き出すと、おぉ!月曜書房「ある晴れた日に/加藤周一」が帯付きで!と俄に興奮する。素早く浅ましく値段を確認すると、200円が100円に直されている!この本が200円で売られていたのもスゴいことなのだが、さらに驚愕半額の100円とは!大事に抱え込んで暖かい陽の差し込む店内に進み、全日本交通安全協会「運転のエチケット」(昭和38年刊の、イラストや写真に味があり過ぎる交通安全小冊子)新潮社「扉のかげの男/大岡昇平」東京都交通局「ひとりぼっち荒川線」とともに計600円で購入する。面倒くさがらずお店に足を向けたおかげで、良い本が買えた買えた。
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2018年02月19日

2/19『ラジオ・スターの悲劇』とJ・G・バラード

色々乗り切った昨晩、BS-TBSの音楽ドキュメンタリー番組『SONG TO SOUL』を見ていると、特集はイギリスのバンド・バグルスの『ラジオ・スターの悲劇』。聴く度に魂がキュンキュンしてしまう名曲であるが、常々『ビデオがラジオ・スターを殺してしまった』の部分に得体の知れぬ悲哀と難解さを感じていた(『新しいビデオ文化が古いラジオ文化を衰退させた』ことを歌っているなどの説はあったが)。だが番組中メンバーのインタビューで、この曲はJ・G・バラードの短篇SF『音響清掃』をベースに作られていると、驚くべきことを語っているではないか!知らなかった!そしてSF小説を元に楽曲を作るとは、なんてロマンチック!と即座に大いに盛り上がり、原作を読むことを決意する。調べると創元推理文庫SF「時の声」に収録されているようだ。と言うわけで本日午前、早々と神保町入りし、いつものようにパトロールしながら「時の声」を探すことにする。読みたい古本を探しに神保町に来る純粋行動は、何だかとても久しぶりである。まずは「田村書店」(2010/12/21参照)店頭100均箱に引っ掛かり(ちょっと箱の置き場所が変わり、以前は通りに面した左側店頭に出されていたが、今は入口アプローチの左側に集められている)、河出文庫「群集の中のロビンソン/江戸川乱歩」ウェッジ文庫「東海道品川宿/岩本素白」を計200円で購入する。続いて「明倫館書店」(2012/04/04参照)では鱒書房「ろんどん怪盗伝/野尻抱影」を200円で購入し、『白山通り』をずっと北にたどって「丸沼書店」(2009/12/17参照)で静山社文庫「名探偵クマグスの冒険/東郷隆」を100円で購入する。通りをバカみたいに引き返して『靖国通り』に舞い戻り、「@ワンダー」(2009/01/21&2014/05/22参照)で、横丁を吹き抜ける冷た過ぎる風が長時間の鑑賞を許さぬ外壁棚からアルス日本児童文庫「飛行機/富塚清編」を抜き出して店内へ。中央通路の創元推理文庫SFゾーンに目を凝らすが「時の声」は見当たらず、「飛行機」を216円で購入する。ならばとこれもバカみたいに『靖国通り』を引き返して裏通りに入り、「羊頭書房」(2014/05/02参照)へのコンクリステップを上がる。すると創元推理文庫SFコーナーに、無事「時の声/J・G・バラード 吉田誠一訳」(4版)を見つけたので600円で購入する。「羊頭書房」、そして神保町よ、ありがとう。
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『音響清掃』は、超音波音楽の発明により落ち目となって潰れたラジオ局に住むプリマドンナと、物に残留してしまう音の滓を特殊な掃除機で掃除する口のきけぬ若者の物語。読み進めて行くと、物語の設定やシーンが、『ラジオ・スターの悲劇』の歌詞(私が読んでいるのは訳詞である)に、かなりダイレクトに使われているのが分かって来る。歌に感じていた世界観がクルリとひっくり返る!こりゃあ面白い!だからと言って、歌詞の意味をすべて理解できるわけではないのだが、その由来にたどり着いただけで、あの楽曲がより印象深く素晴らしいものに変容して行く読書の瞬間を味わい、気分が高揚する。

家に帰ると、本の雑誌社新刊「絶景本棚」が届いていた。連続する本棚写真を見ていると目眩を起こすほど楽しい。多くの方が意外にも棚の一部をミステリに割いているんだな…。私の巻末エッセイ『家に本棚がない曖昧な理由』とともにお楽しみいただければ幸いです!
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2018年02月16日

2/16今日もただ古本を買う。

ちょっと今週に入ってから、精神的にも時間的にも余裕のない日が続いてしまっている。ただ、そんな状況でも変わらぬのは、古本を買いたいという気持ちに忠実に従い、しっかり古本を買って帰ること…。今日は荻窪の静かな住宅街・清水に夕方前に流れ着いたので、まずは『四面道交差点』近くの「象のあし」(2014/11/26参照)をかなり久々に訪れてみる。リサイクル系+軽マニアックの珍妙なコンボは相変わらず。右端通路中央のラック古書棚にしゃがみ込んで挑みかかり、二見書房「秘境ヒマラヤ/大森栄」を525円で購入する。組写真で克明に紹介する“鳥葬”の章はかなり衝撃的だなぁ…。そのまま駅方面に向かい、かなり賑わっている地元デパート『タウンセブン』で買物をした後、地下一階から駅コンコースを通り抜け、南口に顔を出し、いそいそと「ささま書店」(2008/08/23参照)へ。珍しく店頭単行本棚で何も掴めなかったが、店頭新書棚上段に集まる大判ムック&冊子列から、キネマ旬報社「キネマ旬報別冊 日本映画シナリオ古典全集 第一・二・三巻」(このシリーズ、別冊が特に欲しかったりする。なんたって谷崎潤一郎脚本のドタバタ喜劇『アマチュア倶楽部』が掲載されているのだ)を迷いなく抜き取り、さらにその裏側の文庫本ゾーンで講談社 国枝史郎文庫「神州纐纈城 上・下/国枝史郎」を見つけたので迷わず救出し、計540円で購入する。…今日もただ普通に楽しくささやかに古本が買えて、よかったよかった。
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家に戻って色々片付けながら、昨日手に入れたばかりの松本清張「点と線」を、昭和三十年代に浸りながら豪快に摘み読み…と思っていたら、やがて摘むどころかガッツリした読書時間に遷移。読み進めながら、いつか福岡方面に行くことがあったら香椎駅には絶対立ち寄らなければと、奇妙な決意が頭をもたげて来てしまう。
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2018年02月15日

2/15三店三様の100均棚。

吉祥寺と三鷹の間に横たわる、御殿山の住宅街に流れ着いたので、自然と吉祥寺の古本屋さんを巡ることにする。まずは最近しっかり開いている「バサラブックス」(2015/03/28参照)店頭ラックの前にしゃがみ込むと、サブカル本の多い最下段の二重棚の奥に違和感…ちょっと古い単行本を引っ張り出すと、オリジナルの「点と線」であった。う〜む、十四版だが(初版は二月。三ヶ月で十四版!)ジワジワと喜びが込み上げて来る!これでようやく昭和三十年代の息吹を感じながら、この名作を読み始められるぞ!意外に混み合う店内にて、光文社「長編推理小説 点と線/松本清張」を100円で購入する。続いて「よみた屋」(2014/08/29参照)に突撃すると、100均棚にワケアリ難アリの児童文学が一列ほど出されている。おっ、箱の背が壊れているが、偕成社 世界のこどもの本6「ムーミン谷は大さわぎ/トーベ=ヤンソン作 矢崎源九郎訳」はちょっと珍しい本。表紙絵や挿絵がトーベ=ヤンソンではなく、赤星亮衛という日本人の作家が描いており、スナフキンは『かぎタバコ屋くん』、ミムラ姉さんとミーは『ミュムラとミュー子』になっていたりするのだ。ドングリ眼のムーミントロルたちも意外や意外、魅力的!さらに毎日新聞小年少女シリーズ・ジュニア「ふしぎめがねのかんちゃん/宇山次雄」(巻末広告の同シリーズの一冊「消えたカナリヤ/窪田昭三ほか」がとても気になる。『消えたカナリヤを追う、たのしく愉快な推理小説』とあるのだ)を掴み、店内でも光風出版社「コミマサにっぽん博物誌/田中小実昌」を掴んで、計700円で購入する。そして阿佐ヶ谷に帰り着き、「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)の100均棚に引っ掛かると、最新入荷の部分に句集や歌集が多い…するとたちまち、あっ!山崎方代!石川桂郎!と抜き出してしまう。不識書院「迦葉/山崎方代」牧羊社「高蘆/石川桂郎」を計206円で購入すると、天野氏が居合わせた娘さんに「ほら、小山さんにお釣りを渡すんだよ」とレシートとお釣りを手渡している。娘さんは難しい顔をして、まるでこちらを見ようとせずに、レシートとお釣りをじっと見つめている。だが突然、腕をぐいんとカウンター上に伸ばし、まずお釣りをピシリ!続いてレシートをファサリ!天野氏が思わず「愛想悪いなぁ」と笑う。だが娘さんは、渡し切ると同時に、はにかみの笑みを浮かべ、顔を手で隠し気味にして身を捩っていた。全く持って子供は、可愛くて不可解で愉快な生き物である。
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2018年02月14日

2/14千葉の名店「キー・ラーゴ」よ、さらば!

色々あって、古本屋ツーリストとして動きの取れぬ二日間を過ごす。本日、少しだけ動けるようになったので、早い時間に東村山に向かい、最終日となる「なごやか文庫」(2012/01/10参照)「初売り大古本市」(2012/02/15参照)の超落ち穂拾いに向かう。最終日は、古書・洋書・結束本がすべて半額となるのである。ということは、古書は100円!早速茶色い本をじっくり選んで九冊ほどつかみ、一般本一冊と合わせて計1100円で購入する。精算時にボランティアのご婦人が半額制度をど忘れしており、「2000円です」と言われる。「あの〜半額では…」と言うと、顔を途端に赤らめ「あら、そうだったわ。ごめんなさいね。そうすると幾らになるのかしら…」「1100円です」「あら、やだわぁ〜。お客さんに教えていただいちゃって。ありがとうね。古本市、今日の賛辞までやってるんで、また来て下さいね!」「えっ、また来なきゃいけないんですか!?」「そうですよ。たくさん買って下さい。買い逃すと、次回は来年ですからね!」などと会話を交わす。隣りの児童書&CD&コミック部屋では、三冊を19円で。姉妹社のサザエさんえほん「サザエさんとどうぶつえん」が70円なのは、ちょっとした拾い物である。そのまま西武国分寺線経由で西荻窪に立ち寄り、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)で「フォニャルフ」に用意して来た古本を補充する。色々打ち合わせ&古本与太話を。

そして残念なお知らせコメントが舞い込んでしまう。先週、千葉の名店のひとつに輝く大久保の「キー・ラーゴ」(2009/11/25参照)が閉店してしまったそうである。「本の雑誌」連載の『毎日でも通いたい古本屋さん』で第一回目に取り上げたほど、大好きな大好きな大好きなお店であった。店頭&店内手前部屋の古書と対峙する瞬間の、あの色褪せぬトキメキ!それがもう味わえないとなると、暗澹たる気分に囚われてしまう。これでもう、あの学生だらけの、所々化粧舗装がガタガタな長い商店街を歩くことは、二度とないであろう。いや、長いこと楽しませていただき、良い本を安く買わせていただき、誠にありがとうございました!私にとってのこのお店での最大の掘出し物は、箱ナシで昭和十九年の二刷りだが、200円の新潮社 日本童話名作選集「銀河鐵道の夜/宮澤賢治」である。古書棚に、茶色く変色したパラフィン越しの黄色い背を認めた出会いの瞬間は、賢治ファンとしてはまさに奇蹟であった。「キー・ラーゴ」よ、さらば!
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2018年02月11日

2/11毎月発行、探偵小説!

本日は午後の早いうちに梅ヶ丘に流れ着いたので、テクテクと東松原まで歩き、「古書 瀧堂」(2014/05/01参照)を覗こうとするが、うぉっ!お休みか。おとなしく京王線とすぎ丸を駆使して阿佐ヶ谷まで帰り着き、さらにおとなしく机に向かって仕事する。だが、これで終わっては読んで下さる皆様に申し訳ないので、昨日届いたヤフオク落札品についてひとくさりお話しを。

さほど争わずに落札した明治の探偵小説、大川屋書店「探偵文庫 生殺自在 一名毒殺事件/丸亭素人譯」駸々堂「探偵小説第十集 美人殺/嶋田美翠」が、送料含めて2330円で我が手に届く。やれ、嬉や嬉や。丸亭素人の本は、同じ探偵文庫の「死人の掌」に次いで二冊目。だが同じ『探偵文庫』シリーズなのに、「死人の掌」は今古堂、「生殺自在」は大川屋書店が発行元となっている。ただし編者は共に瀧川民治郎で、「死人の掌」は明治三十六年の六版、「生殺自在」は明治四十一年の十版なので、この年月の間に出版社がシリーズごと異動した可能性が考えられる。そしてもう一冊の「美人殺」は、関西の書店&出版社・駸々堂が明治三十三年に出したもの。明治三十三年…つまりは1900年か…118年前の本が目の前にあるなんて…。駸々堂の古本は今までに多数購入しているが、探偵小説を見たのは初めてである。奥付ページには二十冊を数える六銭の『探偵文庫』の広告があるのだが、表4はさらにスゴいことになっていた!読切り雑誌として月一回発売される『探偵小説』が、もはや第四十四集まで到達しているのである!うぉぉぉぉぉぉぉぉ、欲しい!読みたい!集めたい!「薄皮美人」(まったく内容が想像出来ない!)「鬼美人」(コワい!)「大蛇美人」(もっとコワい!)「七人の惨殺」「六人の死骸」「妬み男」「拳銃自殺」「幽靈船」「妖怪寺」「X光線」「地下鐵道の女賊」(日本の地下鉄は専用&一般用が大正と昭和の開通なので、翻訳物なのは明らかである)などなど、探偵小説だけでなく、怪談っぽいものやSFっぽいものまで、魅惑的なタイトルが連続している。また脇に細かく書かれた説明文が奮っている。一部を書き写すと『他に類のない探偵小説、奇想妙案、神出鬼没、午睡の伽に、旅行の伴、内外嫌はぬ重寶品、紙数は毎も百頁以上、代價は僅か銅貨八枚、之を買はぬは損、之を讀まぬは痴』とある。良し、早速「美人殺」から読み始めてみよう。
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2018年02月10日

2/10決戦は土曜日!

今日は毎年ずーっと楽しみにしている、東村山「なごやか文庫」(2012/01/10参照)の「初売り大古本市」(2012/02/15参照)初日である。午前七時に起床し、万全の体勢を整えて、西武新宿線で決戦の地へ!午前九時半にたどり着くと、すでに会場入口前には十五人ほどの古本&レコード猛者たちが、開始時間を今か今かと待ち構えている。その列の最後尾に付き、寒さに震えながら三十分を耐え忍ぶ。土曜日が初日というためか、例年より訪れる人が多いようで、列はどんどんどんどん後へと伸びて行く。やがて午前十時を迎え、会場にドドッと雪崩れ込み、入ってすぐの右手に集まる古書棚にとにかく食らいつく。すると目に飛び込んで来たのが、橘外男の「酒場ルーレット紛擾記」!途端に血液を沸騰させ、まずはその一冊を抱え込む。その後も目を血走らせながら、次々と古書を抱え込み続ける。何だか探偵小説が多くて嬉しいなぁ!と夢中になっていると、後から腰の辺りをやたらと小突かれる。誰だ!この至福の時を邪魔するのは!と眉間に皺を寄せて振り返ると、岡崎武志氏の柔和な瞳がそこにあった。まったく、イタズラ好きなんだから。その瞬間に氏と色々言葉を交わし、進めたいプロジェクトの打ち合わせも軽く行う。そして今日はこの後に大事な用が控えていたので、後ろ髪引かれながらも古書棚だけに集中して会場を離脱する。それでもとっても良い買物ができました。春秋社「酒場ルーレット紛擾記/橘外男」(カバーナシで強烈な貸本仕様)地球社慰問文庫「飯食ひ地蔵/国枝史郎」高志書房「怪奇探偵小説 魔童子/小栗虫太郎」警醒社書店「三人の告白/山中峯太郎」(会津蔵書の印あり)紫書房「現代女豪珍譚/宮本幹也」京文社「殺人論/小酒井不木」(函ナシ)六月社「妖花イレーネ/橘外男」羽田書店PTA文庫「象のワンヤン/豊島與志雄」同盟出版社「大東亞少年軍/山中峯太郎」(カバーナシ)旺文社こどもの本「よわむしなおばけ/きたもりお わだまこと・え」滿鐵社員會「ウスリー地方探検記/ウェ・カー・アルセニエフ」を計2050円で購入する。この市は2/14(水)まで。
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まず第一に嬉しかったのは「酒場ルーレット紛擾記」であるが、とにかく壮絶な本なのである。貸本として使用されていたらしいのだが、その補強の仕方がとにかく独特。銅線で縢ってあるので、何だか奇妙な芸術作品のようになっているのである…本当に嬉しいのだが、改めて見るとちょっと恐い本でもある。
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だがこの日とにかく一番嬉しかったのは「ウスリー地方探検記」である。滿州鐵道の関連会社が発行した満州本で、黒澤明が映画化した『デルス・ウザーラ』の大元の原作本なのである。しかも極美!見よ、この洗練された装幀を!今夜はこれを枕頭に置きながら、安らかな眠りに着く予定です。おやすみなさい。
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2018年02月09日

2/9静かに眠る「芳林文庫」

明るいうちに下井草に流れ着くが、残念なことにこの地は、七年前に「大村書店」が閉店(2011/02/27参照)してからは、寂しい寂しい古本屋不毛地帯に成り果ててしまったのである。すべてを諦め途方に暮れそうになるが、あることを思いつき、駅から南西の住宅街に足を密やかに運ぶ。古い記憶をズルズル引きずり出し、ようやく探し当てた灰色の集合住宅。その一階端にたどり着くと、おぉっ!まだある!「芳林文庫」の看板が、時の流れに薄れながらも、まだ現役のように架かっている!レアな探偵小説を扱うことと、マニアックな特集記事が話題になった目録で名を馳せた、一見さんお断りの事務所店である。およそ四年前に店主が逝去すると同時に、当然のことながらお店は閉じられてしまったのだ……だが、まだある!看板もある!
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私にとっての「芳林文庫」体験は誠に貧弱で、九年前に事務所前まで来て怖じけ付いたことがあるのと(2009/02/15参照)、神保町の「古書かんたんむ」(2011/12/31参照)で棚を見たくらいである。目録すら知らずにウダウダ過ごしていたら、熱中する時期を逸してしまっていたわけである。今頃になって目録を探して手に入れて読み込んだりしているが、逆に考えればこんなものを当時手に入れていたら、お金がいくらあっても足りなくなりそうな、“探偵小説”と言う悪魔の誘惑に膝を屈しまくっていたのではないかと…。あぁ、ガラスブロックの向こうには、棚やら箱やらの気配が感じられるが、まだ今でも、レア探偵小説を室内にたっぷりと湛えているのではないだろうか。「芳林文庫」は、看板の文字をジワジワと薄めながら、静かで安らかな眠りについている…。
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2018年02月08日

2/8東京・吉祥寺 空と虹と古本市

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夕方午後五時過ぎに吉祥寺の西に流れ着く。段々と長くなり始めた陽に感謝しながら、『中道通り』を駅方面に向かって歩いていると、バッタリと偶然に、白墨で『古本市』と書かれた小さな立看板に出会ってしまった。う〜む、嬉しい。場所は『吉祥寺パルコ』前から件の『中道通り』を北東に五百メートルほど進んだ『中道公園』の向かいである。会場の名は『八月の空』で、小さな白いマンション一階の一室を改装し使用している。短く狭いエントランスには絵本箱が置かれ、その奥に開け放たれた入口。そこから中に上がり込むと、床は板敷きの縦長の小さなスペースがつながった空間である。什器や机に、古本が点在している。絵本・洋書絵本・鳥類・女流作家・紙関連・猫・妖精・自然・文庫本・大判ビジュアル本…全体的にキレイな本が多く、春のような爽やかさが小さな市全体に通底している。帳場に立つ女性二人が、客の私に遠慮してひそひそ声で会話しているので、早く買う本を決めて、小さな世界を常態に戻してあげようと、誠文堂新光社「山手線に眠る3億年探検記 東京化石地図/先崎譲一・文 安藤博・写真」を選んで帳場に持って行くと、あっ!本を受け取ったのは、よく「みちくさ市」でご一緒する「ママ猫の古本や」さんであった。「偶々通りかかって、「古本市がやってる!」って喜んで入って来たんですよ」と言うと「偶々?こんなところを?」と何故か疑われる。そしていただいたチラシを見ると、出店者は一箱でお馴染みのメンバーや、中野の「ブックス・ロンド社」さん(2008/08/28参照)であった。いやぁ、世の中、狭いですな。ママ猫さんに見送られ、外に出ようとした時、「その本、売れなかったら私が買おうと思ってたんです」と告げられる。400円の「東京化石地図」が、モテにモテた奇蹟の一瞬だったわけである。この市は2/12(月)まで続く。さらに帰り道で、「一日」(2017/08/11参照)のかなり薄暗いガレージに寄り道。雪華社「足穂入道と女色/小高根二郎」を324円で購入し、書肆ユリイカの伊達得夫が稲垣足穂&志代夫妻の仲人であったことを知る。

そしてそろそろ発売になっている「本の雑誌三月号 早春ふとん干し号」の連載「毎日でも通いたい古本屋さん」第三回では、蕨の「なごみ書店」(2016/08/14参照)でレポート&お買い物。正座して極める俄古本道をお楽しみください。そしてさらに、今月22日頃に発売されるであろう、本の雑誌社「絶景本棚」に『家に本棚がない曖昧な理由』という七枚半のエッセイを寄稿しております。この本は連載グラビアの「本棚が見たい!」をまとめた、本棚と本だらけの贅沢な一冊。実は以前、私のところにも本棚取材の申し込みがあったのだが「ウチに本棚はありません」と伝えると、見事に話は流れてしまったのである…。というわけで、何故本棚を使わずに本を積み上げてしまっているのか、その理由、もしくは言い訳を延々書き連ねてみたのであります。二冊まとめてよろしくお願いいたします!
http://www.webdoku.jp/kanko/page/9784860114114.html
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2018年02月06日

2/6外でも家でも古本と格闘する。

早起きして色々こなしていると、今日から池袋の『三省堂書店』で「古本まつり」(2016/02/09参照)が始まるのを思い出す。素早く家を飛び出して、『池袋西武 別館二階』に着いたのが午前十時十分。エスカレーターを上がった入口からチラリと見える会場には、それほど人影が見えない…わりと空いてるのかな?と中に入ると、左に広がる会場には、すでに恐ろしいほど大量の古本修羅が、静かに静かにひしめいていた…そうか、そうだよね。そうじゃなきゃおかしいもんね。修羅に混じり、神の姿もチラホラ…。すっかり出遅れているのを認識し、古本を前にして、半径十センチほどの縄張りがぶつかり火花を散らす光景に気圧されてしまい、まつりに馴染めずに無目的に通路をウロウロ…。取りあえずはワゴン脇に掲げられた店名を頼りにめぼしいお店に近寄るが、どこも人気があり過ぎて押すな押すなのおしくらまんじゅう状態である。隙間や足下の箱を眺めたりするが、たちまち縄張りアタックを食らい弾かれてしまう…もうしばらくしたら見に来ることにしよう。というわけで、古書の影を求めてあっちこっちと流浪していると、たちまち体力が奪われてしまった。だが、手の中にはどうにかこうにか二冊の本が!春陽堂文庫「男兒出生/尾崎一雄」新潮社 現代脚本叢書第四編「髑髏舞/吉井勇」(大正十一年五版。表題の「髑髏舞」は、田端の癲狂院を舞台に、入院している落語家が弟分の講釈師に、魂の仕組みと魂製造機発明とを説明し、機械製造後の死者が蘇る世界を幻視するお話)を計1080円で購入し、一時間弱滞在した会場を後にする。このまつりは2/12まで続く。
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家に帰ってからは、仕事の待ち時間の間に、蔵書減らしの一環として古本の山を掘削する。仕事部屋の三ヶ所を、本を地道に移動させて掘り起こした後に戻すことを繰り返し、およそ三十冊の重〜い重〜い写真集・アートブック・図録を手に入れる。アリ・マルコポロスなんて持ってたのか…。よし、これでまた各山が少し体積を減らし、通路が通り易くなったぞ。本は明日早速、「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)に売りに行くことにしよう。
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2018年02月05日

2/5日本アニメーションの父!

今日は夕暮れ時に武蔵境と東小金井の間に流れ着く。目の前には、西武多摩川線のカーブを描く単線線路…これをたどって行けば、すぐ新小金井駅か…よし、開店してもはや半年経過した「尾花屋」(2017/06/15参照)に行ってみるか。そう決めてテクテクトボトボ歩き出す。見知らぬ薄暗い住宅街で、左の線路を意識して、懸命に歩を進める。だが、歩めど進めど駅は見えて来ない…こんなに遠かったけ、と新たに現れた踏切に身を乗り出し是政方面を臨むと、百メートルほど先に駅の灯りが瞬いていた。後少しだ………そうして無事にたどり着き、黄昏れた商店街を奥に入って行く。「尾花屋」はちゃんと開店中である。表の百均棚は、最初見た時と変わらず、やはり質が良い。一気に三冊つかんで、何だかトボケた音楽の流れる店内へ進む。古い児童文学や絵本があるのは楽しいなぁ、とそこにぐいっと惹き付けられ、特に左壁棚最下段に十冊ほど集まっていた、講談社の一年生文庫が気になってしまう。ボール紙を綴じた三十ページほどの絵本シリーズである。扉に絵と文の作者が表記されているので、中身より作家重視でチェックを進める。すると最後の一冊の絵を描いていたのは、政岡憲三!名作「くもとちゅうりっぷ」や「すて猫トラちゃん」を作った、『日本アニメーションの父』と呼ばれるアニメーション作家!人形を写真に撮った絵本は知っているが、こんな絵本も描いていたのか。バタ臭く独特なタッチの優しい絵柄に、しゃがんだままの五十過ぎのオッサンが、ついついうっとり見蕩れてしまう、新小金井の夕暮れ時…。講談社「こびととくつや/絵・政岡憲三 文・西山敏夫」(昭和二十八年)青土社「シネアスト 1(特集ヒッチコック)・3(特集マキノ雅裕)・6(特集喜劇の王様)」を計700円で購入し、いつの間にか出来ていたお店のスタンプカードもいただく。
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映画『パンダコパンダ』に出て来るような大好きな小駅・新小金井駅前で「こびととくつや」&ショップカードを記念撮影。
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2018年02月04日

2/4東京・国立 museum shop T

午後に古本を携え家を出て、昭和感満点の『阿佐ヶ谷区民センター』にて『古本屋ツアー・イン・阿佐ヶ谷』と題して二時間ばかり講演する。集会室を横向きにぶち抜いた会場に、寒い中を集まってくれた六十名ほどの奇特な皆様に、ただただ感謝を捧げ、演台に立ったまま、ひたすら古本屋と古本について、間隙が生まれるのを恐れるように話し続ける(まぁ、それしか出来ないのだが…)。静聴していただいた皆様、大変おつかれさまでした。

すっかり魂と体力を擦り減らしてしまうが、講演用の古本を携えたまま、電車に飛び乗り西に向かってしまう。南口から東側に回り込み、『旭通り』西側歩道を南東に下る。そして一本目のビルの間の脇道を西に入り、真ん中辺りの煉瓦で化粧された雑居ビルの直線階段を三階までストスト上がる。すると右側に扉が二枚現れるので、さらに右側の白い扉を選択してドアノブを捻る。左右の壁に大きなボックス棚が据え付けられ、中央にテーブル台や棚が続く、国立近辺の様々な作家や表現者の作品&雑貨類&本&リトルプレス類を取り扱う、文化的アンテナショップである。だが何故かここで、古めのSF文庫を売っているとの情報をキャッチしたので、駆け付けた次第である。入った左側すぐに、目的のSF文庫が固まってくれていた。二台の平台手前にはハヤカワSF文庫(八十〜九十年代中心)が面陳&積み上げられ、奥の台に創元推理文庫SF(七十年代中心)が面陳&並べられている。値段は一律270円となっており、じっと辛抱強く眺めて、読みたい二冊(いったいいつ読むのかは分からないが…)を選び出す。創作元推理文庫「自動洗脳装置/エリック・F・ラッセル」「山椒魚戦争/カレル・チャペック」を計540円で購入する。レジテーブルは一部がガラスケースになっており、藤田嗣治の本が修復され高値で販売されている。三階踊り場に出ると、階段袖手摺に『古書買い取ります』の貼紙もある…じゃぁしっかりと古本を扱うお店なのか。こちらに来た時は、なるべく足を向けることにしよう…などと考えつつ、携帯でお店の扉を写真に撮ろうと、左のポケットに手を差し入れる…あれ?ない、携帯がない!どうやら家に置き忘れて来てしまったようだ。じゃあこの携帯みたいな感触の四角い物体は…それはキャラメルの箱であった…俺はこれをずっと、携帯と勘違いしていたのか。なんと愚かな…。
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というわけで写真は撮っていないので、メモとキャラメル箱の写真でお茶を濁しております。悪しからず。
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2018年02月03日

2/3「竹中書店」も看板が!

暗くなり始めた夕方に、南荻窪に流れ着く。なのでそのままトボトボ歩いて、荻窪駅方面に向かう。『荻窪南口仲通り商店会』を遡っていると、やがて右手に「竹中書店」(2009/01/23参照)…だがなんだ、この違和感は…おわっ!お店の上を見上げると、あの大きな店名袖看板が、無くなってるじゃないか!
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「竹陽書房」看板喪失事件(2018/01/24参照)に続き、またも荻窪で喪失事件が発生!…これは真相を確かめなければ…慌てて表の300均単行本台から一冊抜き取り、扉を開けて帳場を目指す。「いらっしゃいませ」と安楽椅子に座る奥方に迎えられ、ソフトバンククリエイティブ「まぼろし商店街/串間努」を購入しながら「表の看板、無くなってますよね?」と聞いてみる。すると奥方は、鳥獣戯画書皮を掛ける手を休める事なく目をキランと輝かし「取っちゃったのよ」「えっ」「ほら、最近看板が落ちる事件が多いでしょ。それで恐くなっちゃって。ウチのは物凄く大きいから、落ちたら大変なことになっちゃうじゃない。だからね。オホホホホホホホ。そのうち小さいのを架けようと思ってるんだけど、まだめんどくさくてやってないの。オホホホホホホホ。まぁもう、看板なんてあってもなくてもいいんだけどね。オホホホホホ」…とのことであった。そう言えば、日除けの上の看板文字も、無くなってるんだな…。その後は賑わう「ささま書店」(2008/08/23参照)にも当然の如く立ち寄り、創元推理文庫「ミス・マープルと十三の謎/アガサ・クリスチィ」(白帯初版)青心社「暗黒神話体系 クトゥルー1/H・P・ラヴクラフト他」新評社「都筑道夫の世界」角川新書「アメリカの暗黒/中川五郎」河出新書「東西自慢話/京都新聞編集局編」アテネ文庫「北原白秋詩集/室生犀星編」奇想天外社「SFゴタゴタ資料大全集」などをドバッと計1188円で購入し、暗い夜道を帰路に着く。
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2018年02月02日

2/2雪の神保町

仕事の返事待ちを利用して、雪の神保町を見に行くことにする。午前十時過ぎに家を出ると、まだ雪は降り続けており、電車のダイヤが乱れるとともに、車内は大変に混み合ってしまっている。確保した自分のスペースで春陽文庫「船富家の惨劇」を読み進めていると、理解不能な一文に出会ってしまう。『電柱をさくさくと踏み砕きながら庭におりて…』(225ページ一行目)…で、電柱?なんだろう、縁側として電柱を横向きに置いているのだろうか…それにしても『さくさく』?……あぁ、なんだ。これは、『霜柱』の誤植なんだ。などとやっていると、遅れながらも御茶ノ水駅に到着。だが神保町に雪の気配はそれほどなく、ほとんど雨の時と変わらぬ様相である。ただし、人影は物凄く少ない。
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わかってはいたが、店頭台も雨仕様で店内収納気味になっているので、いつものように100均ハントも出来ずに、ただただ濡れた舗道を歩いて行く。『白山通り』に入って、ようやく「アムール」(2011/08/12参照)で教養文庫「愛と苦悩の人生〈太宰治の言葉〉/檀一雄・野原一夫編」集英社文庫「谷崎潤一郎犯罪小説集」を計100円で購入する。おや、珍しく「神田書房」が開いていない、とさらに北に進んで「日本書房」(2011/08/24参照)前。木製ワゴンは一台だけ外に出ており、後の二台は店内左右の通路に収納されてしまっている。すると右側通路の台に、新潮社の新興藝術派叢書の一冊「神聖な裸婦/楢崎勤」が挿さっているではないか!水ヌレのためにたわんではいるが(全体はわりとキレイ)、値段は500円!うむむむむ、痛快だ!と購入し、雪の日にわざわざ出て来た自分を、盛大に褒めそやす。
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水道橋駅からは、早速「神聖な裸婦」を摘み読みしながら西荻窪まで移動。「盛林堂書房」(2012/01/06参照)の「フォニャルフ」棚に、寒さよ吹き飛べとばかりに細々と補充する。斜め上を見上げれば、本棚探偵の「ひとたな書房」が、いつの間にか探偵小説仙花紙本をズラリと並べているではないか!即座に薄く妖しい並びの虜になり、千代田書林「怪奇小説 獣愛/橘外男」を3800円で購入してしまう。本棚探偵に、感謝感謝。
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2018年02月01日

2/1雨のユマニテ

夕方前に国立に流れ着いたのは良いのだが、予報より早く昼過ぎから降り始めた雨に祟られ、すっかり濡れ鼠。震えながら『旭通り』を駅に向かって歩いていると、当然の如く「ユマニテ書店」(2009/06/22参照)が目に入る。
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慌てて犬のように胴震いをして水滴を出来るだけ振り落とし、店内に何食わぬ顔で滑り込む。奥の帳場には誰もいないのだが、すぐに奥から半纏を羽織ったふわふわパーマの奥さまが出て来られた。…暖かいかと思ったら、外よりはマシという程度の室内気温である。だが棚の古本に意識を集中して行くと、段々と夢中になり、寒さも次第に気にならなくなった。通路棚の文庫本や新書やノベルスが二重に並んでいるため、執念深く手前の本を退かして、確認して行く。かなりワクワクするが、結局何も見つからず…唯一、ジャクリーン・オナシスをストーカーのように追っかけるパパラッチの新書サイズ本に目を惹かれるが、1500円か…。右側通路から左側通路に至り、最終的に右側通路に戻って、ちくま文庫「文豪怪談傑作選・明治篇 夢魔は蠢く/東雅夫編」を抜き出し、450円で購入する。奥さまに、長崎・大浦天主堂のイラストが描かれた書皮をきっちりと掛けていただく。そして本を受け取り通路を入口に向かっていると、「あの…」と声が掛かる。「ハイ?」と振り返ると「これから雨が雪になるそうなので、どうかお気をつけて」とお辞儀をされる。慌てて答礼し、サッシ戸をバカ丁寧にソロリソロリと開けて、再び冷たい雨の下に出る。駅前では「みちくさ書店」(2009/05/06参照)にも立ち寄り、ふらんす堂「生死 永田耕衣句集」を400円で購入し、それを早速車中で繙きながら、帰路に着く。
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