2018年08月30日

8/30古本屋ツアー・イン・教授トランクルーム【第五章】

本日は“盛林堂・イレギュラーズ”に華麗に転身し、いざ新保博久教授の、毎回過酷を極めるトランクルーム整理活動へ!だがトランクルームに到着した途端、ボスの盛林堂・小野氏が「ごめん!」と泣き笑いの表情を見せる。「か、鍵を忘れて来ちゃった…トランクルームの鍵」…ガガァ〜〜ン!ぼ〜っとここで待っているのもなんなので、西荻窪に鍵を取りに戻る盛林堂号に同乗し、クーラーを満喫しながら一時間のドライブ………今度は無事に鍵が開き、トランクルームにようやく潜入成功となる。今回の教授不在のミッションは、文庫棚九龍城を空にすることと、以前結束した本&廃棄雑誌の運び出しである。まずはひたすら九龍城から文庫をマシンのように抜き出し、小野氏がそれをマシンのように結束して行く。するとすぐさま城は、明け渡された空家状態となる。
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続いて小さな部屋に押し込めていた結束本の束を廊下に出し、さらに大部屋の棚の上に教授の手によるあやふやな結束後に置かれた雑誌束を下ろしまくって行く。
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廊下に並べるといつもよりは少なめだが、全部を台車で車まで運び出すには、やはり三往復が必要な量である。チャチャチャッとすべてを二時間半ほどで済ませ、早々と撤収作業に入る。これで大部屋の棚以外の本はほとんど運び出したことになるので、次回からは、ダンボールに詰められた本を暴き、選別して後運び出しという行程に入ることになるだろう。だが、実は京都での教授の暮しに大きな変化が生じそうなので、それに合わせて今後の整理&運送計画も練り直しが必要となるのであろう、次回九月の教授上京時に、その打ち合わせを進めるつもりである…それにしても、昨年末からず〜〜〜っと、教授の蔵書整理をしている気がする…いや、気がするんじゃなくて、確実にしているのである。とても光栄で貴重な体験で楽しいのだが、まさかこんなにも長く深く関わることになるとは、夢にも思っていなかった。果たしてゴールは、いったいいつのことになるやら……。

そして本を台車に乗せ、車へと移して行く、最初は文庫本、次はハードカバーとノベルス、最後に雑誌類。だが、この最後の雑誌類が、軽い惨劇を巻き起こす。結束は緩いのだが、まぁちょっとの距離だ大丈夫だろうと、高を括ってガラゴロガラゴロ運んで行くと、振動により次第にバランスが崩れ始め、表に出て車まで後一歩のところで、哀れ崩壊してしまう…あぁ、やはり面倒くさがらずに、もう一度縛り直すべきであったか…。
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そんな今回の労働を癒す合法的強奪本は盛光社ジュニア・ミステリ・ブックス「耳をすます家/メーベル・イーリー 深夜の外科病室/クェンティン・パトリック」である。いつも通り、教授に大感謝を!西荻窪に無事に本を運び出し、献本していただいた盛林堂ミステリアス文庫新刊「冒険小説 宝島探検/森下雨村」とともに写真に収める。
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「冒険小説 宝島探検」は探偵小説の父・森下雨村が、“母子草”の名で十代の若さで著した、明治四十二年刊の幻の冒険小説である。
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2018年08月29日

8/29店猫・コト

連載の取材のため早稲田古本屋街に向かう。道すがらの阿佐ヶ谷では、現在「銀星舎」(2008/10/19参照)が8/31まで臨時休業の真っ最中で、「千章堂書店」(2009/12/29参照)も「所沢古本まつり」のために今週来週とお店を休む日が多い模様。少し寂しさを覚えながら、東西線に揺られて早稲田駅で下車する。件の古本屋街では、「渥美書房」(2015/04/24参照)の店頭で場違いとも思える講談社コミックス「八っ墓村1/影丸譲也 原作・横溝正史 」を見つけたので100円で購入する。その後『早稲田通り』両岸の様々なお店の店頭を覗いた挙げ句「古書現世」(2009/04/04参照)に尻を据え、店主の向井氏と長話をしていると、突然棚裏のバックヤードから、店猫のコトが奇跡的に顔を見せてくれた(コトは内気であまり姿を見せず、向井氏にもようやく最近撫でさせてくれるようになったくらいである)。向井氏が「あぁっ、珍しい。出て来ましたよ出て来ましたよ」と喜ぶ。本の山の上に、四つ足ですっくと立ち、「ニャオ。ニャオ」と何かを訴えている。あぁ可愛い。そしてこれも奇跡的に写真を一枚撮らさせてもらい(撮った瞬間、向井氏が「あぁ、カメラ目線だ!」と興奮)、古本を買うより満足を得てしまう。いつの日か、撫でさせてもらえるくらい、仲良くなりたいものだ。
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お店を出た後は高田馬場駅まで歩き、駅裏の「Book Taste」(2009/07/01参照)に立ち寄る。お店には週刊誌を売りに来るナゾの人たちが次々と現れている。幻冬舎新書「科学的とはどういう意味か/森博嗣」を290円で購入すると、レジの恐らく中国人のおばちゃんが、こちらの長髪をお団子で縛った髪型を見るなり「うわぁ、ステキ!」と花の様な妖艶な笑顔を見せた。「そういうの大好き」と言いながら手を握るようにしてお釣りを渡し「また、来て下さいね」とビリビリ秋波を送りまくる。…ここ、こんなお店だったっけ?
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2018年08月27日

8/27古本を持ったままパンクを知らせる。

朝から早々と昨日の取材の原稿書きを始める。一生懸命書き続ける。鉄は熱いうちに打て!だがしかし午前十一時過ぎともなれば、熱波の表に飛び出して月曜恒例の「ささま書店」(2018/08/20参照)詣で。今日は一番乗りである。キネマ旬報社 キネマ旬報別冊「日本映画代表シナリオ全集(1)(2)」河出文庫「メグレと消えた死体」「メグレと口の固い証人たち」共にG・シムノン、青樹社「86分署物語 名探偵退場/桜井一」(ミステリ関連のイラストを多く手掛けたイラストレーターによる名探偵パロディー小説集。目暮、シャイロック宝水、穂新、鱈尾番外、ゴロンボ、抜智小五郎など、何処かで聞いたことのある人たちが珍推理を披露。「ミステリマガジン」に連載されていたそうである)を計540円で購入する。「シナリオ全集」には、北村小松『マダムと女房』山中貞雄『街の入墨者』『盤嶽の一生』山上伊太郎『浪人街(第一話)』衣笠貞之介『十字路』『狂った一頁』が載っていて嬉しい。『狂った一頁』は“新感覚派映画連盟作品”で、川端康成・横光利一・岸田国士・片岡鉄兵らが関わっている。なのでシナリオは、短いセンテンスと情景が瞬き煌めく、まさに新感覚派の世界!
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古本を携えて帰っていると、後からパタパタと異音を立てる軽自動車が近付いて来た。気になったので、追い抜き通り過ぎる車に目をやると、なんと左の後輪がパンクしているではないか。運転手は気付いていないのか、そのまま走り続けて行くので、古本の入った袋をガサガサいわせながら慌てて追いかけ、信号待ちで停まったのを幸いと、どうにか追いつきサイドウィンドウ越しに声を掛ける。「う、後のタイヤがパンクしてますよ!」すると相手は優しいえびす顔で「おや、本当ですか。ありがとうございます」と危機感ゼロの雰囲気。信号が変わると同時に、再び発進してしまったので、もしやそのまま走り続けるのか?と思ったが、交差点を過ぎたところで路肩に停車し、パンクの様子を確かめている。まぁ事故にならなくて、よかったよかった。家に帰り、原稿の続きに取りかかる。鉄は熱いうちに打つんだ!
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2018年08月26日

8/26福島・いわき 阿武隈書房

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岡崎武志氏との共著古本本のために、本日はいわきで単独取材。すると先日メールタレコミのあった新店が、無事に開いてくれていた。元々は「つちうら古書倶楽部」(2013/03/31参照)や柏の古書市で見かけていた、古本屋さんなのであるが、福島・泉の「古書文楽」(2011/08/27参照)を引き継ぎ、当地で倉庫店を開いていたのが、いつの間にかのいわき進出となっていたのである。駅からは南口の空中デッキから『駅前大通り』に下りて、二つ目の信号を東へ。繁華なはずの駅前なのに人気のない街路をズンズン300mほど進み、『五町目(ごちょうめ)』交差点にたどり着けば、もう青い『古本』と書かれた幟が翻るのが目に入るであろう。何だか古い伝統ある商店建築であるが、元は何屋さんだったのだろうか?軒下には笹らしきシンボルマークが残されているが…。重い扉を動かして店内に進むと、入口右横には大量のスヌーピーぬいぐるみが集められている。やむなく仕入れてしまったのだろうか?天井の高い店内には、オリジナルの木製本棚が立て込み、現状では四本の通路を造り出している。奥のガラス障子の向こうには、雑然としているがとても奥行きのあるバックヤード&住居的空間が続いている。そこから現れた年配のご婦人が「いらっしゃいませ」。さらにしばらくしてクール目な男性が後姿しか見せずに「いらっしゃいませ」と声をかけてくれた。二人とも、なんだかとっても忙しそうである。そして目指すべき棚は、まだまだ盛大に準備中&模索中らしく、右端の通路は棚に空きがあり奥は倉庫のようになっている…。入口右横の小さな棚には、本&出版&古本関連が集まっている。入口左横にはちくま文庫・岩波文庫などの文学&教養文庫系本棚が。その裏側は、自然科学・数学・オカルト系文庫などが集まっている。左の天井近くまで延びる壁棚には、コミック・近現代史・古書・和本・戦争・社会学・社会運動&闘争・福島&いわき関連郷土本が集まり、奥の帳場脇まで郷土本の攻勢は続いて行く。頭くらいまでの棚で作られた二番目の短い通路には、棚脇やその裏も含めて絵本・児童文学・民俗学・宗教・幻想文学・海外文学・アニメDVD・貸本漫画・古い少女小説・ノンフィクション・映画DVD・映画が集合。帳場下の棚には、永島慎二・手塚治虫・辞書が並んでいる。右の高い棚には、世界文化&風俗&歴史が集まり、わりと硬めに圧巻な並びを見せている。取りあえず現状の棚造りを見ただけでも、志の高いお店を目指しているのが見て取れる。大変に喜ばしいことである。値段は普通だが、安めなのもチラホラしており探し甲斐あり。奥でご婦人が「ほら、うろうろしないのよ」などと足下に話しか
けている…何か小動物がいるのだろうか…恐らく猫なのではないかと推測するが、残念ながらその姿は確認出来ずじまい。風濤社「当世滑稽裁判譚 いかれる七人証言集/呉智英・高橋悠治・鈴木志郎康・野坂昭如・神吉拓郎・中島誠・赤瀬川原平」を購入する。
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2018年08月24日

8/24散歩がてら古本を買う。

早朝から取りかかっていた原稿仕事に一段落着いたので、散歩がてら強い風の中を外出する。フラフラと阿佐ヶ谷駅方面に向かい「穂高書房」(2009/02/15参照)の店頭台を覗き込む。晶文社「ポケットのなかのチャペック/千野栄一」牧書店「人間の尊さを守ろう/吉野源三郎」(箱ナシ)を計300円で購入する。
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相変わらず店奥の鉄扉を全開にして、そこに座っている店主のオッチャンは、上半身裸のワイルド接客であった。そのまま高架を高円寺方面に伝い、「都丸書店」(2010/09/21参照)の高架下棚から洋酒天国社「洋酒天国35 TV GUIDE」「洋酒天国39」を計千円で購入する。
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35号は全編テレビネタでギッシリ。TVドラマ『事件記者』主要出演者をバーに集めて撮った写真はレア。39号には都筑道夫訳の『エミリーという名の鼡』が載っている。

さらに『庚申通り』を北上して「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)へ。店頭箱に古い雑誌が出ているじゃあないか。朝日新聞社の戦中航空雑誌「航空朝日」が五冊ほど100〜300円で置かれている。それぞれの目次をチェックして行くと、『成層圏飛行』の特集号に、海野十三が『成層圏飛行と私のメモ』という一文を寄稿しているので買うことにする。太田出版「失点イン・ザ・パーク/ECD」富士見文庫「実践!RPGマスター道/安田均・グループSNE」とともに計250円で購入する。精算時に店主の粟生田さんが「阿波踊りは観に行かないんですかぁ?」と質問して来た(今週末に高円寺では阿波踊り祭りが開かれるのだ)。「行かないです」「何でですかぁ?」「だって、地獄(大混雑するということである)じゃないですか。えっ、観に行くんですか?」「行かないですよぉ。だって、地獄じゃないですかぁ。うっはっはっはっはっ」…まったく面白い人だなぁ。
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2018年08月23日

8/23「モンガ堂」で涼む。

午後二時前に桃井辺りに、暑さのために塩塗れになって流れ着いたので、『青梅街道』沿いの「古書西荻 モンガ堂」(2012/09/15参照)に這々の体で避難する。…おや、今日は表に一冊の本も箱も出ていないじゃないか…やっていないのだろうか?窓から店内を透かし見ると、天井の蛍光灯は点いている。おかしいな?と首を傾げながらドアを開いて涼しい店内に進む。うわ、各通路が、古本箱で一杯になっており、足の踏み場もない。右を見ると、帳場に縮こまって座るモンガさんの姿。「どうしたんですか、本出さないで」「いや、雨が降るかなぁ〜と思って」「雨、夕方からですよ」「アメッシュ見てると、西からも東からも雨雲が迫って来てるんだよ」…と言うわけで店内は乱雑になっているわけである。それでもモンガさんと古本屋話や原民喜の話をしながら、入れるところには入り込んで、古本を探って行く。すると、中央通路の奥の箱で、大阪朝日新聞が出した古い簡易写真集を見つけたので、帳場に持ち込み値段を訪ねる。「あれ?こんなのあったっけ?」と、オトボケ顔のモンガさん。「あったんですよ。自分のお店なのに、忘れてるんですか」「いやぁ〜。もうさすがにね。もうすぐお店開いて六年だから」…あぁ、「モンガ堂」も、もうそんなに営業しているのか。全く持って、素晴らしい。これからもブツクサ言いながら、頑張ってもらおう。そんなことを考え、大阪朝日新聞社「世界周遊畫帖 第一輯」「西日本現代風景」を計二千円で購入する。
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乱雑な中央通路をバックに「西日本現代風景」(昭和六年)を記念撮影。オープンカーで海辺をドライブするモボともモガが、日本画のようなタッチで精緻に色鮮やかに描かれている。そして中には華々しい昭和初期の都会風景が満載。稲垣足穂や西東三鬼が親しんだ『トア・ロード』の一枚が感激である。
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2018年08月22日

8/22クマゴロウからアカシヤへ。

またもや太陽が二つになったような暑さが戻って来てしまった。うんざりしながらも、全身をその暑さに容赦なく包まれながら、ヒタヒタ歩いて中村橋。「古書クマゴロウ」(2018/03/21参照)に避難する。だが、外棚を眺めていると、日射しが容赦なく身体の背面をジリジリ焦げつかせ始める。
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むぅ…と涼しい店内にひとまず逃げ込み、一周する。棚のジャンル分けが、以前より細かく丁寧に進んでいるようだ。冷房でどうにか身体が冷えたところで外に再び飛び出し、ハァハァ喘ぎながら三冊を選ぶ。角川mini文庫「さよならごっこ/俵万智」ハルキ文庫「吉野弘詩集」KKロングセラーズ「井上ひさしを生んで育てて夢を見た!/井上マス」を計324円で購入すると、整理中の本の山に囲まれた店主さんが、一瞬お釣りを渡すのを躊躇しながら、覚悟を決めたように話しかけて来た。「あの、間違っていたらすみません。もしかしたら小山さんじゃないですか?」。うわっ、クマゴロウさんにまさかバレてしまうとは!途端に気恥ずかしくなってしまうが、店主と幾つか言葉を交わし、ちゃんとこのお店が好きであることを告げておく。なんたって、今日も面白い本(「井上ひさしを生んで育てて夢を見た!」井上ひさしの母による、波瀾万丈の人生と息子ひさしとの交流を描いた、なかなかにアナーキーな本)が無事に安く買えたのだ。やはり良安古本発見のアベレージは高めなのだ!なのでここはもはや立派な定点観測店なのである。続いて西武池袋線に飛び乗り、大泉学園の「ポラン書房」(2009/05/08参照)は定休日なので保谷へ一直線。「アカシヤ書店」(2008/12/17参照)店頭にたどり着くと、今日は古書薄めな店頭百均棚である。だがしっかりと二冊つかんで、続いて店内の百均壁棚に取りかかると、初っ端に良い本を発見!宝文館「民藝図鑑/監修・柳宗悦 編集・日本民藝協会」である。芹沢_介の装幀挿画が渋く輝き、多数の民藝品写真を収録しているこの本が、なんだかすでに民藝品の趣である。エヘエヘしながら、実業之日本社「与平の日記 波勝崎に野猿と生きる/肥田与平」人文書院「世界の湖/滋賀県琵琶湖研究所編」を計324円で購入する。
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2018年08月20日

8/20東京・荻窪 リニューアル「ささま書店」


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月曜恒例の「ささま書店」(2008/08/23参照)詣でであるが、少し出遅れて午前十一時四十分に店前に到着する。だがいいのだ。今日は、大幅にリニューアルしたお店を、ツアーするためにここに来たのだ!百均天国の店頭に変化はなく、右に文庫棚が二本、左に単行本棚が二本直列し、入口左横には300均単行本棚が泰然と構えている。長細く奥深い店内に入ると、棚のレイアウトなどはそれほど変わっていないのだが、入口側ゾーン・中央帳場ゾーン・最奥ゾーンのうち、最奥ゾーンに変化が認められる。以前は少しナナメに配置されていた通路棚二本が、動線と並行に置かれるようになったのだ。なので店内の見通しが増した感覚がある。入口側ゾーンは壁棚に挟まれるようにして、長い平台付きの背の低い通路棚が置かれている。右壁には映画文庫・美術文庫・音楽文庫・五十音順日本文学文庫・海外文学文庫・古い小型本少々・海外SF&ミステリ文庫・学術系文庫がズラッと収まっている。向かいの通路棚には自然科学・経済・東京などが集まり、裏側には最近刊文学・古本&本関連・エッセイ・文学評論・歌句集が集まる。左の壁棚には、今まで奥に籠っていた日本文学・日本近代文学・ミステリ・SF・幻想文学・海外文学・詩集が大移動。これまで奥で必死に目を凝らしていたジャンルが、明るい入口付近にあるのは、なんだか意表を突かれた珍妙な感じである。中央帳場ゾーンには大きな動きはなく、右の凹んで広がるスペースに二本の絵本&大判本・ビジュアル本棚が置かれ、その周りを取り巻く壁棚には、児童文学・神話・昔話・日本伝統文化・古典文学・芸能・演芸が並んでいる。帳場正面の棚脇には、ビニールに入ったプレミア本が展示され、今は亀鳴屋の「稚児殺し/倉田啓明」の特装本が強力に輝いている。最奥ゾーンに進む前に立ちはだかるナナメの通路棚には、民俗学と美術・音楽が揃えられている。左の帳場脇から延びる行き止まり通路には、店員さんが箱を組み立てる作業の真っ最中で、どうも入り難い。遠目に棚を伺うと、鉄道関連があるのを確認出来た。そして以前映画関連が収まっていた右壁棚は奥まで一直線となっており、今は近現代史・歴史・古代史を集めている。最奥ゾーン通路棚右側には、仏教・中国関連・哲学・思想・社会学が並び、左側には世界文化&歴史・音楽・映画・演劇となっている。奥の壁棚は東洋文庫・全集類・政治関連が収まり、左奥に出来た作業場横の棚から帳場横までは、カルト&セレクトコミック・風俗・性・世相・写真・美術などが並んでいる。前後が大きく入れ替わった形だが、しばらくするとこの状態にも、いつの間にか慣れているのだろう。店頭の豊潤な百均と、眺め渡せば必ず欲しい本が見つかってしまう深い棚があれば、それでいいのだ。店頭ではリブロポート「春歌 小林恭二 初期句集」を。店内では大移動した映画棚で、同文館「外国の映画界 その映画をつくる人、演ずる人/植草甚一」を見つける。植草の譯著・共著以外の、初単行本である!値段を見ると二千円で、相場の半額!これを買わぬ手はない!と己を即座に説得し、計2268円で購入する。こんな本がホロリと見つかるので、ついつい悪魔に囁かれ、財布の紐が緩んでしまうのである。
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新書サイズで装幀は花森安治。カラフルなリールの絵がとてもプリティ!
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2018年08月19日

8/19「色ガラスの街」!(ただし復刻版)

今日は古本神・岡崎武志氏と午前中から何軒かの古本屋さんを、六十一歳と五十一歳のオッサンの行動力とやり方でゆるゆると経巡り、古本を買い、さり気なく秘密取材する。古本屋さんに自分の足で出向き、自分の目を血走らせて古本を買う。幾ら何度でも繰り返そうが、決して飽きることのない興奮と喜びが、今日もそこに確実に存在していた。古本屋さん巡りと古本ハンティングは、やはりとても楽しいのである。これらの動きについては、色々固まったところで後日詳細を発表する予定だが、今日のところはまだ海のものとも山のものとも知れぬ状態なのである。だが、幸運にも入手出来た掘出し物を、フライング気味にここに発表しておこう。柏「太平書林」(2010/06/13参照)では、カバーナシの裸本ながら、岩谷書店「鬼火/横溝正史」を500円で。選者・高木彬光のあとがきに興奮するとともに、扉に貼付けられた新聞記事の切り抜き『新しい探偵小説/横溝正史』がさらにその興奮を加速させる。そして今や金町唯一の古本屋さん「書肆久遠」(2009/12/04参照)では、稀覯詩集復刻叢書「詩集 色ガラスの街/尾形亀之助」を千円で購入。活字の印刷で踊る、狂おしく切ない祈りの様なモダニズム詩の数々!外箱も、亀之助印刷サイン入りの栞もちゃんと揃っているのが嬉しい。今晩はこれを抱いて、スヤスヤ眠ることにしよう。
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2018年08月18日

8/18ハンガリーとチェコの絵本市

酷暑の中に突然割り込んで来た九月のような午後三時に、南荻窪に流れ着く。フラフラとうろ覚えの住宅街の道をたどりながら、西荻窪駅を目指す。JRの高架線が近付き、見慣れた『平和通り』に出られたので、ホッとしながら西へ。すると小さな「にわとり文庫」(2009/07/25参照)の店先が、まるで外国の街角のお店のようにささやかに華やいでおり、何かイベントを開いているようである。
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外国新聞の並んだラックや、300均絵本箱に目をやりつつ、ウィンドウに万国旗のように下げられたカラフルなハガキに顔を近付けると、『ハンガリーとチェコの絵本市』の文字が。ちょっと見て行くか、と小さな店内にスルリと入る。先客は浴衣姿の女性に明るい柄のワンピースの女性、それに入口付近で写真を撮影中のカップルさん。なんの負けるもんかと、即座に入口付近で展開されている、読めぬ言語の絵本たちに自分なりの闘いを挑んで行く。無条件に可愛い絵、独特なアクを持つ不気味とも見える絵、作家性の強い絵、グラフィカルな絵、ケースの中で輝くダーシェンカ!…古いものほど魅力的なのは何処の国も一緒だが、やはり値段もそれなりとなる。背が布張りで、手にした瞬間に紙の軽さを如実に実感出来るのは、本の多様性を今更ながら感じ取れる楽しいひと時である。窓際には丁寧にラッピングされた可愛い紙物も多数並べられている。見知らぬ国の絵本に溺れるように、何を買おうかと散々多数の絵本を手にした挙げ句、結局は一冊の写真絵本が目に留まる。二人の兄弟と思しき少年が、港に停泊していた巨大客船にそっと乗り込んだところ、船が出港してしまい、密航者として船旅を余儀なくされる…と言うようなストーリーらしい。写真はすべてモノクロで、日本の写真絵本の名作「よるのびょういん」を彷彿とさせる、不安と寂しさと切なさと楽しさが交錯する、魅力的な一冊である。値札の説明によると、フィンランドの本のハンガリー語版らしい(複雑な…)。奥の帳場でにわとりさんご夫妻に挨拶し、Mora「Potyautasok/Tutta es kristiasn Runeberg」を1800円で購入する。この市は8/31まで。
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家に帰って『Potyautasok』の意味を検索してみると、やはりハンガリー語で『密航者』であることが判明する。
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2018年08月17日

8/17八十と人生がちょっとだけクロスする。

午後に東小金井に流れ着くが、「BOOK・ノーム」(2009/02/13参照)に立ち寄っても収穫ナシ。なんだかんだまだ張り切っている暑さにめげて。阿佐ヶ谷に真っ直ぐ帰ってしまう。それでもユラッと「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)に立ち寄り、メディアファクトリー「うたう百物語/佐藤弓生」八重洲ブックセンター「ティファニーのテーブルマナー/J・ホービング」(『八重洲ブックセンター荻窪ルミネ』開店記念の小冊子である)河出ブックス「日本SF精神史/長山靖生」を計515円で購入する。そして家に帰り着くと、探偵小説創造機械の芦辺拓氏から、嬉しい献本が到着していた。戎光祥出版 少年少女ミステリ王国1「西條八十集 人食いバラ 他三編/芦辺拓編 大橋崇行校訂」である。異常にピーキーな少女向け冒険探偵小説である『人食いバラ』『青衣の怪人』『魔境の二少女』『すみれの怪人』を収録しているのだが、昭和31年12月号「少女クラブ」附録の一冊「すみれの怪人」を、光栄にも資料として提供したことが縁で、我が家にも現代の八十本が届くことになったのである。「すみれの怪人」は単行本になっていないので、これで通して読むことが出来る!芦辺さん、ありがとうございます!まさかこんな風に、西條八十と人生がちょっとだけクロスする瞬間を迎えることになるとは。人生ってなかなか面白い。ニヤニヤしながら分厚い本を手にして、ページをパラパラと繰りながらしばらく部屋をウロウロした後、ハッ!と思い出して、大阪に古本を三十冊弱発送する。明日の到着後、しばらくしたら古書コンシェルジュの手を経て、『梅田蔦屋書店』カフェラウンジ壁面古書コーナーに並ぶと思うので、可愛い古本子供たちを何とぞよろしくお願いいたします。
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口絵にはしっかりとこの本の書影が掲載!ウキウキするなぁ。
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2018年08月16日

8/16「ささま書店」、変化する!

昨日は千歳台に流れ着いたので、祖師ケ谷大蔵駅に向かって進路を採りつつ、『祖師谷通り』を南下して行く。途中の「祖師谷書房」(2009/03/05参照)が開いていれば良いのだが…おっ、お盆なのにちゃんと開いている!ありがとうございます!と足を停め、まずは右側の児童文学本の、山となっている本の背を、サッシガラス越しにチェックして行く。路上で中腰体勢となり、山の下部にもしっかり目を通して行く。すると、「せんにんのひみつ」のタイトルを発見したので、スラッと戸を開け店内に横向きに身を滑り込ませ、本の山一列を半分ほど持ち上げ、ポプラ社の創作童話5「せんにんのひみつ/斎藤了一作 池田仙三郎絵」を華麗に取り出す。箱から本を抜き出し、黄色が鮮やかな後見返しの値段を確認すると、250円!この瞬間にお店が開いていて、この本に出会えたことを大いに感謝しながら、左側通路にも登場。酣燈社「鞭を鳴らす女/岸田國士」とともに計750円で購入する。
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仙人の山『花雲山』で、仙人になるべく修業する、モウとワンの物語。一癖も二癖もある、個性的な仙人たち四人が与える、奇抜で突飛な試練がとにかく過酷なのである。

本日はテクテク歩いて、お盆休み明けの荻窪「ささま書店」(2008/08/23参照)へ。実はさる情報筋から、この休みの間に「ささま書店」が小さな店内改装を行うと密かに聞いていたので、楽しみにしていたのである。店頭棚を見るのもそこそこに店内へ入ると、左側の壁棚が、日本文学・日本近代文学・ミステリ&SF・幻想文学・海外文学・詩集となり、その向かいの通路棚も古本&本関連・文学評論・詩歌となっている。…こ、これは!奥の改装だけではなく、ジャンルの配置転換も行われたのか!少し焦りながら、帳場前を通過して奥のゾーンに向かうと、左奥に新たに棚に囲まれた作業場があり、スチール棚で作られた通路は、従来の角度を付けた配置ではなく、入口からの直線に倣うように、真っ直ぐ置かれている。ここには漫画・サブカル・音楽・映画・精神科学などが集まっている。ということは、映画棚のところも入れ替わっているのか。これは変わらぬ途中のナナメ棚にも変化が認められる…これほど大掛かりだったとは…どうやら出直してのツアーが必要となりそうだ。驚きながら何も買わずにお店を出て、『今月の「本の雑誌」連載での「ささま」の店内説明が、すっかり過去のものとなってしまった…』などと考えながら、「岩森書店」(2008/08/23参照)前を通りかかる。ぬ?店頭台の脇に、古い文庫が詰まった百均箱が出されているな…大抵は岩波文庫だが、角川文庫「注文の多い料理店/宮澤賢治」が気になったので手にしてみると、この文庫はオリジナルの「注文の多い料理店」を、わりと忠実に文庫化したものであることを初めて知る。オリジナルの扉絵や挿絵が掲載され、巻末には『『注文の多い料理店』新刊案内』が附録として付けられているのだ。108円で購入する。この後は西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)に赴き、ついに二段となった「フォニャルフ」に補充&微調整を加える。
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2018年08月14日

8/14神保町で小さな本ばかり買う。

さる古本神よりタレ込まれた小さな古本市に行こうと思っていたら、昨日までの開催であった…不覚。仕方なくBSプレミアムの映画『ミクロの決死圏』を、体内に注射されたところで振り切り、久しぶりの神保町パトロールへ向かうことにする。神保町は閉まっているお店は四分の一ほど。お店によっては、二日間〜一週間と、幅のあるお盆休みである。だが通りには古本を求める人が集まり、思ったより賑わいを見せている。というわけでさほど寂しさを感じることなく、街をツラツラ流して行く。店頭ワゴンを覗き込みながら、『三省堂書店』八階の「夏の古書市」(2014/08/27参照)にも繰り込んでみる。エレベーターが開くと、ほほう、ここもなかなか賑わっているではないか。軽く本の背を追いかけ続け、「ジグソーハウス」(2016/06/11参照)で日本小説文庫の浅原六朗(千円)を見付けたので、買おうかどうか盛大に迷うが、ちょっと状態が悪いので保留にして、隣りの広島の「古書あやかしや」ワゴンに取り憑くと、端に付録本を詰め込んだ箱が置かれている。懸命に繰ってみると、100〜350円の安値で質も良い。思わず夢中になり、学研1972年「五年の学習 第2学習教材」5年生文庫シリーズ「黒いかばんの秘密/原作=ジョルジュ・シムノン 文=山村正夫」旺文社1973年「中一時代2月号 第7付録」中一ロマンブック「奇巌城 /原作・モーリス=ルブラン 文・山村正夫」小学館1962年「小学六年生9月号付録」小六名作推理小説文庫4「盗まれた名画/原作 モーリス・ルブラン 文 竹淳」を計800円で購入する。その後も炎天下の街路をうろつくが、「アムール」(2011/08/12参照)で國民書院「フランス土産 西洋うらない」を100円で買うに留まる。
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最後に水道橋駅脇の歩道橋にて記念撮影。獲物は小さな本ばかりとなった。「盗まれた名画」が95mm×128mmと一番小さな本である。「西洋うらない」は昭和九年の占い本。こういうものが「アムール」のようなアダルト店の店頭で買えることに、奇妙な満足感を覚えてしまう。
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2018年08月12日

8/12やはり買ってしまうのであった…。

午前中から実家に日帰り帰省し、しこたま酔っ払って午後七時過ぎに東京へ戻り始める。酒精に浸された頭で考えるのは、やはり昨日の気になる古本のこと…買うべきか、買うまいか、買うべきか、買うまいか……。よし、営業時間に間に合い、まだ残っていたのなら、これも運命と諦め、潔く買うことにしよう。渋谷に到着したのは午後八時半。エレベーターでで西館八階まで上がり、昨日来たばかりの「渋谷大古本市」が開かれている、人影の少ない催事場に飛び込み、吉祥寺「藤井書店」(2009/07/23参照)のブースを一心に目指す。一番端の上段の木箱の、本の列の上に横に詰め込まれた古本の背に目を凝らす…ある、残ってる!迷うことなく素早く抜き出し、帳場へ直行して精算する。新潮社 新興藝術派叢書「高架線/横光利一」、五千円である。背の下に蔵書ラベルが貼られ、経年劣化の茶色さを誇っているが、それでもこの値段は充分に安いはず。これでこの叢書は「街のナンセンス/龍胆寺雄」「物質の弾道/岡田三郎」「神聖な裸婦/楢崎勤」に続き四冊目を手に入れたことになる。とほくそ笑みつつ、会場の外で袋から本を取り出しページを開くと、横光が将来は捨てることになる、新感覚派スタイルが、眩しいほど本文に満ち満ちている!『O川はその幼年期の水勢をもって鋭く山壁を侵食した』…ぐぐ、シビれる!やはり買って良かった、買って良かったんだ!と確信して記念撮影を行う。するとその行動を、半身の見切れた格好で、入口近くに立つひとりの古本屋さんに鋭い視線でチェックされていた。一連の動きがやはり怪しかったのだろうか。だが、さほど臆することもなく、酔いと、本を無事に入手出来た喜びに包まれながら、本を袋にそそくさと戻し、静かな閉店間際の百貨店を後にする。
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2018年08月11日

8/11城昌幸の『地下鐡サム』!

取材で遠くへ行こうかと思っていたのだが、ここ最近の無理が祟って、どうも身体か重めである。というわけで自分を甘やかし、無理をせずに、ただ近場に古本を買いに行くことに決める。午前十時に家を出て、街に人影は少ないが、妙に混み合う電車を乗り継いで渋谷着。『東急東横店』の西館八階催事場にエレベーターでたどり着き、「第27回東急東横店 大古本市」(2014/08/14参照)を覗き込む。横長の会場に、八本の通路とショウケースゾーンとミニ回遊通路で造り出された古本市である。今日でもう市が始まって五日目…初日に駆け付けなかった愚か者たる己に余裕を持たせるために、まぁ何か読める面白そうなものが一冊でも買えればいいさ。そんな心持ちで熱心に本を選ぶ人の中に分け入って行く。それほど熱の籠らない眼で、本の背をダラリダラリと追いかけ続ける。そして途中で思い出す。そうだこの会場は、いつでも冷房が効き過ぎていて、寒いんだった。半袖でいると、三十分経った頃には、身体がブルブル震え始めるほどである。なので足を早めて、台の上と下に視線を走らせて行く。何冊か気になる本を見つけたが、購入しようとつかんだままになるには至らないものばかり。だが中盤の「石田書房」(2010/01/15参照)の台下に、何故か心に引っ掛かる一冊を発見する。雄鶏社「増刊日曜日 銀座読本」である。野口久光の銀座夜景の表紙絵に惹かれたのは、まず間違いない。昭和二十七年刊の、銀座の表裏に渡り特集した、当時のシティガイド本である。二千円か…セロファン袋からスルリと取り出し、まずは目次の執筆者に注目する。菊岡久利・山本嘉次郎・三船敏郎・原節子・三国連太郎・佐田啓二・淡島千影・春山行夫・北村小松・古川緑波……ふむふむ。おっ、城昌幸も書いているのか…!なにっ、『新版地下鐡サム』だと!城が『地下鉄サム』を書いていたと言うのか!慌てて当該ページにたどり着くと、メインタイトルは『銀座の栗鼠』で、サブタイトルが『新版地下鐡サム』となっている。内容は日本の銀座を舞台にしたオリジナルストーリーで、主人公は若干廿歳のアプレ娘掏摸・リエである。本家の「地下鉄サム」(原作マッカレ―。気が良く腕も良い、地下鉄専門掏摸のサムが巻き起こす都会軽犯罪冒険譚)よろしく、この娘が掏摸仲間と掏摸の矜持を守るため、殊更詳しく描写された昭和二十年代後半の銀座を縦横無尽に駆け回るのだ(タイトルの“栗鼠(りす)”は“掏摸(すり)”に掛かっているのだろう)。おぉっ!「地下鉄サム」好きとしては、決して逃すことの出来ない一冊!と購入決定。その後も更に会場を経巡るが、やはり襲って来た寒さによる震えには勝てずに、そそくさと購入して百貨店の外に逃げ出す。…そして実は迷っている。他に見つけたある一冊を買うべきかどうか…安い気がするんだよなぁ…でもちょっと高いかなぁ…でも欲しいなぁ…読みたいなぁ…どうしよう………。
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2018年08月10日

8/10東高円寺〜高円寺をテクテク。

ちょうど正午に、東高円寺の『蚕糸の森公園』近くに流れ着く。緑陰濃い公園は、降るような蝉の鳴き声に満たされ、まるで巨大な炭酸水のようにジュワジュワジュワジュワ弾けている。公園近くの裏道に入ると、「イココチ」(2009/12/10参照)がしっかりと営業中。
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8/31まで古本20%オフのサマーセールが行われており、グッドタイミング。ワニの本「世界の名探偵50人/藤原宰太郎」を160円で購入する。そのままテクテク歩き通して、高円寺を経由して『早稲田通り』まで、古本屋さんと古本を売っているお店をたどりながら帰ることにする。ところが、『青梅街道』沿いの古道具屋「まるゆう」(2016/02/03参照)では収穫ナシ。『ルック商店街』の「アニマル洋子」(2014/03/14参照)はシャッターを下ろしてしまっている。「大石書店」(2010/03/08参照)&「藍書店」(2014/01/14参照)でもつかむ本は見つからず、「都丸書店」(2010/09/21参照)はシャッターを下ろしていた。ここまでダラダラと来てしまったが、実はそれほど落胆はしていない。何故なら最後に麗しの「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)があるからだ!と余裕綽々で、胸に『睡眠不足』背中に『寝るの大好き』と書かれた奇妙なTシャツを着た外国人と歩調と歩幅をシンクロさせながら、『庚申通り』を遡って行く。ここまでわりと元気に来られたが、「サンカクヤマ」前に着いた時には、すでに体力ゲージが突然怪しくなり始めていた…。フレーベル館トッパンのキンダー絵本「こびとといもむし/肥塚彰・文 黒崎義介・え」(「みにくいアヒルの子」の変形。泣ける!)筑摩書房「世界無銭旅行者 矢島保治郎/浅田晃彦」書物展望社「書物展望 第一巻 第四號 十月號」を計1000円で購入する。うむ、満足。近くの銀行ATMに立ち寄ると、オッサンが端の椅子に座り声を荒げて電話している。「振り込まれた給料の額が、どう考えても少ないんですよ!」…どうか無事に解決しますように。
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これは昭和六年「書物展望」の表4広告。日本橋の「白木屋」が、満を持して巨大百貨店をオープンさせるというものである。『創業二百七十年の老舗 いよいよ十月上旬開店 東洋一の大百貨店』とあり、地下二階地上七階(一部八階)、エレベーター十二臺、エスカレーター三臺などのスペックが表示されている。設計者は石本喜久治。掲載されている写真は実物ではなく、建築事務所が作った模型であろう。『白木屋大火』と呼ばれる、歴史に残る大火事を起こすのは、次の年の昭和七年である。
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2018年08月09日

8/9こネズミとディズニーランド

午後イチに上連雀に流れ着いたので、跨線橋や車両基地に集まる電車をボ〜ッと眺めてから、『良し、古本を買いに行こう!』とまずはテクテク「水中書店」(2014/01/18参照)へ。蚊取り線香の煙に守られながら、まずは店頭木箱を気にしてみる。むむむ、なかなか良い絵本たちが混ざり込んでいるじゃないか!と二冊をピックアップ。他にも単行本棚から二冊抜き取り、店内の堀内誠一が多く面陳された絵本棚を楽しんだ後、奥の帳場でバイトのお姉さんに精算していただく。平凡社「はみだし生物学/小松左京 絵=長尾みのる」九藝出版「ターザン日本へ来る ジャングルの王者たちと全作品 ゲーブ・エソー」フレーベル館「キンダーおはなしえほん いたずら こネズミ/作・いぬいとみこ 絵・村山知義」福音館書店「どうぶつえんのおいしゃさん/降矢洋子さく 増井光子監修」を計400円で購入する。
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「いたずら こネズミ」は未知の『村山知義・絵』絵本だったので嬉しい。1973年の出版なので、村山72歳と晩年の作品である。リアルなこネズミたちが、気色悪く可愛らしい。

そのまま『井の頭通り』をテクテクテクテク東に歩き続けて吉祥寺に到達。駅前も通過して井の頭線の高架を潜れば、そこは「よみた屋」(2014/08/29参照)前。多くの人が店頭棚に取り憑き、左端の老人は何故か棚の整理に一生懸命手を染めている…どうやら本がナナメになっているのが許せないらしい…。店頭で二冊、店内文庫棚で一冊抜き取り、かなり忙し気な本の積み上がった帳場で精算。ちくま文庫「JAMJAM日記/殿山泰司」大日本學術協會「人間の進化/石川千代松」(大正六年刊の『古い最も簡単な生物が如何にして又如何なる變化を経て今日の人間になったのか』解き明かす本。しかしそれより何より、後見返しに貼り込まれた『ガンヂアン書房 香川縣観音時町柳町』とある古いレッテルがとても気になってしまう。おそらく大正〜昭和初期にこの書店名…格好良すぎる!)Walt Disney production「WALT DISENEY'S Disneyland A PICTORIAL SOUVENIR」を計250円で購入する。
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「Disneyland A PICTORIAL SOUVENIR」は『ディズニーランド』で売られていた、お土産用の記念写真集であろう。フロリダの『ディズニーワールド』も最終ページに掲載されていることから、70年代のものと推測できる。豊富な各ランドの写真とともに、必ずはしゃぎ気味のウォルト・デイズニーがそのランドに合った扮装をしたり、アトラクションに乗り込む写真も掲載されている。

そしてそろそろ「本の雑誌No.423 指ぬき逃走号」が発売になりますが、連載「毎日でも通いたい古本屋さん」では、本当に恥ずかしいほど通い詰めている荻窪「ささま書店」を秘密取材!店頭だけで上手く済ませようと思っていたら、見事に店内で高い本を買ってしまいました。だって、我慢できなかったんです!事の顛末は、ページを開いて確かめて下されば幸いです!
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2018年08月08日

8/8古本屋ツアー・イン・教授トランクルーム【第四章】

台風が接近中だが、“盛林堂・イレギュラーズ”として出動を余儀なくされる。イレギュラーズであるからにはボスである「盛林堂書房」(2012/01/06参照)小野氏とともに、都内某所のトランクルーム前。セキュリティの高い鉄扉がガチャリと開くと、そこには懐かしい新保博久教授の笑顔!上京のタイミングに合わせ、教授の飛石書庫でもあるトランクルームの整理を、少しでも進めるための、荒天の下の集合である。今日の作業は、教授がいつもの如く本の仕分けに専念し、小野氏は仕分け本と廃棄雑誌の結束、私が雑誌の運び出し&さらなる仕分けのための箱整理となる。と言うわけで、まずは大部屋2の積み上げられた箱の中から、雑誌をひたすら穿り返さねばならない。ダンボールをふんぬふんぬと移動させ、見やすいように固めて積み上げ、潜む雑誌を廊下に積み上げて行く(文芸雑誌類は意外に重いなぁ)。たちまち失われる体力とともに、廊下はいつものように物品で溢れ返る…何度見ても恐ろしい光景である。
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教授は、せっせと仕分けるとともに、性懲りもなくまだ京都に本を送るために、新たなダンボールを生み出している…や、山村美紗のノベルスなんて、もういらんでしょう!…などと心の中で突っ込みながら、新ダンボールと旧ダンボールを大部屋2に新たに積み上げて行く…。
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旧ダンボールは恐らく三部屋合わせて百箱近くあるのだろうが、資料や本や雑誌や雜物が、引越のドサクサで詰め込まれた状態なので、これはすべて開けてみて仕分けなければならないのである…こればっかりは、教授の上京頻度アップと根気強い作業に期待するしかない…ガンバレ、教授!
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※大部屋1で床に座り込みひたすら本を仕分ける教授。準備万端ジャージに着替え、午前十一から五時間程ぶっ続けで作業中。

そして結束された雑誌を、雨の中運び出すために、控え目に束を積み上げた台車の上に、展開ダンボールを広げて乗せる…何だか百科事典の列に変装した小林少年のような感じに…。
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一度西荻に廃棄雑誌を運び出し、戻ってからは結束作業と整理作業。午後四時半に作業を終了する。…三時間半だが、やはり本との格闘は重く濃密で、身体の芯にどっしりした疲労を残している。これで三部屋ともずいぶん余裕が出来、スペースを作るなどの雑用的仕事も少なくなって来たので(つまり古本屋的には後はひたすら本を運び出すだけ)、今後の作業の進行は、ひとえに教授の腕にかかっているわけである。教授は明日もここを訪れ、仕分けを進めるとのことである。果たしてこのシリーズは、いったい何章まで続いて行くのだろうか…。そんな本日の嬉しい収穫は、今は亡きミステリ古本屋「TRICK+TRAP」のブックカバー。以前いただいた物とは別バージョンで、こちらは、いしいひさいち描くシャーロック・ホームズがプリントされている。他には目をギラリと輝かせて、函ナシで背が赤いテープで補修された春秋社「Yの悲劇/バーナビイ・ロス」を強奪すると、教授が「「紙魚殺人事件」を抜かれてから(2018/06/22参照)、もう完全じゃなくなりました。いっそのことこっちも持って行って下さい」と笑いながら、ぶらっく選書の「Xの悲劇」「Zの悲劇」も手渡される。ありがたや〜ありがたや〜。
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「Yの悲劇」がやはり嬉しい。装幀は吉田貫三郎。この人の民藝チックなデザインワークに、本を手にする度に魅せられて行く。しかしその本がどれも高値なのは何故だろうか…。序文は江戸川亂歩で、冒頭近くの『私は今この翻譯のゲラ刷りを讀み終わったところなのだが、私の中の探偵小説の鬼が眞赤に興奮して踊り出してゐるのを感じる』の素敵で滑稽な一文が、物語への期待を俄然高みへと誘いまくる!
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2018年08月06日

8/6ルビについて少しだけ考える。

そんなわけで谷譲次「テキサス無宿他三十一篇」をオリジナル本で再読しているわけだが、やはり無類に面白い!異国・亜米利加で、“めりけん・じゃっぷ(谷譲次(ジヨウヂ・テネイ)含む)”として生き抜く、怪しくたくましい人たちの、胸のすくような嘘のような活躍小話!デキシーランド・ジャズのような文体で、それらが生き生きと滑るように描かれているのである。しかし今回再読してつくづく思ったのは、ルビを読む楽しさである。通常ルビは、読み難い漢字などに振られたりする、本文を読み易く補助するためのものだが、いつしか文章や表現方法の進化により、別な形で使われるようにもなっている。読み方を表すのではなく、事物の意味や通称などを単語の横に掲げ、文章の現実感&親密感を強固にしたりもする。例えば小栗虫太郎の「黒死館殺人事件」では、読む人を惑わし、迷宮へと誘い込むように、登場する事物に様々な言語のルビが振られている。漢字で読んでもルビで読んでも、もはや本文をそっちのけにして迷宮の脇道に入り込むしかない、まさにペダンチック(眩学的)で暴走的な使用方法である。で、「テキサス無宿他三十一篇」であるが、こちらは漢字の読み以外にも、要所要所の単語に、洋行気分を演出するためか、ブロークンな英語のルビが振られている。『廣小路(アヴエニウ)』『摩天楼(スカイ・スクレイパア)』『小憩(オフ)』『土人の夏(インデアン・サンマー)』『鹿狩り(デア・ハンテイング)』『皿振人足(デイシユ・スウインガア)』『小猫(プシイ)』『熱い犬(ハツト・ドツグ)』『玉菜(キヤベイジ)』『幸福神(マスコツト)』『こせう(ペパア)』『降誕祭・菓子(クリスマス・ケイキ)』『鈴小僧(ベル・ボウイ)』『汚い(ダアテイ)』『四角(コウナア)』などなど。万事がこの調子で、おまけに本文にもカタカナ英語と英語が混ざって来るので、大変にバタ臭い異国情緒が噴出して来る仕組みになっているのである。だが決して読み難いようなことはなく、むしろ頭の中でも軽快にイングリッシュが跳ね踊るのだ。あぁ!谷譲次のとっくにいない九十年後にも、このルビ装置が効果を上げているなんて!
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そんなことをツラツラと考えながら、月曜日の通い路をたどり、午前十一時半の「ささま書店」(2008/08/23参照)へ。ぬぉ、今日はやけに人が多いなぁと驚きつつ、三百円棚から一冊、百円棚から一冊。新潮社「大陸の琴/室生犀星」(函ナシ。満州が舞台の長編小説)學風書院「おばけの歴史/江馬務」を計432円で購入する。「おばけの歴史」はなかなかの拾い物である。
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2018年08月05日

8/5午前中の横浜。

早くから動き出し始め、午前十時ちょうどの反町。古く短く歪なアーケード商店街とビルの谷間を伝い『反町公園』沿いに出れば、赤い『古本まつり』が力無くはためく「神奈川古書会館」が視界に入る。一階の薄暗い横長のガレージでは、昨日今日と「8月反町古書会館展」が開かれているのだ。暑さ厳しく、この時間なら一番乗りか!と会場内を透かし見ると、半袖半ズボンの探検家or南洋の日本兵スタイルの先客二人が、骨張った手足を素早く動かし、棚にがっしり食らいついていた…ま、負けた。だが、実に平和な古本市である。六つの大きな古本島が並び、場内の両脇では大型扇風機が唸りを上げ、温い空気をかき回している。会館前の道路では打ち水も始まっている。そんな緩く温い雰囲気の中、久々の神奈川の棚に視線を走らせて行く。「香博堂」の安売古書棚に秘かに感動していると、「グリム書房」さんが「久しぶりですね。暑い中をありがとうございます。ゆっくり見て行って下さい」と声をかけてくれ、風のように去って行った。結局二十五分ほど滞在し、大日本雄辯會講談社「講談倶楽部新年號附録 怪奇 探偵 情話 美談 最近実話集」(昭和十二年)民友社「風速五十米/武田麟太郎」(昭和二十一年仙花紙版)を計600円で購入する。
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会館向かいの『反町公園』の木陰に立ち、リンゴジュースを飲みながら、本に光の斑を落として記念撮影。「最近実話集」は怪奇と探偵の割合が高く嬉しい。『監獄部屋で消えた女』『若妻の放火事件』『殺人鬼は夫か妻か』『怪盗まぼろし小僧』『闇を縫ふ魔影』などなど。
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