2019年09月30日

9/30出戻り本と定点観測。

朝から仕事していると、玄関のベルが鳴る。午前中に人が訪ねて来るのは珍しいなと思いつつ、ちょっとドキドキしながら扉を開ける。そこにいたのは、重そうなダンボール箱を抱えた、宅急便配達人。どうやら大阪から本が届いたようだ。「梅田蔦屋書店」(2016/11/14参照)の『4thラウンジ』というカフェの壁棚で、長らく古書を販売させてもらっているのだが、そこでかなり長い間売れずに残っていた本を、棚の新陳代謝のために送り返してもらったのである。その数、およそ三十冊ほど。つまりこの分だけ棚が開いたので、早々に三十冊余の新古本を、大阪に送らねばならぬのだ…が、頑張ります!ダンボールを開けると、何だか懐かしい本や、こんなの持ってたっけ?といういような本がギッシリ詰まっている。黒白書房「近世快人傳/夢野久作」(函ナシ)なんて、いつかの「みちくさ市」で激安値で売ったはずなのに、何故ここに?…二冊持っていたということか…まぁせっかく出戻って来たんだ、大事にしよう、と寝床脇の本タワーの上にソッと置く。これらの本は、しばらく寝かせたり、また別の本と組み合わせて販売すれば、動くこともあるだろう。ただ、また大阪に送ってしまわぬよう、気をつけて分けておこう。
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「近世快人傳」の本扉。探偵小説の装幀も多く手掛けた山下謙一のナイスなデザインワーク!

そんなことをしていたら、いつの間にか午前十一時。定点観測に向かう時間だ。慌てて身支度を済ませ、ビーサンを引っかけて夏のような表に飛び出す。ペタペタ歩いて荻窪「ささま書店」(2019/08/20参照)。七分で遅れているのに誰もいない。いつものように目玉に古本魂を集中させ、本をじっくり吟味して行く。角川文庫「黄色い犬」「男の首」ともにジョルジュ・シムノン、三月書房「聞きかじり 見かじり 読みかじり/坂東三津五郎」冨山房「天然記念物開設/三好學」を計648円で購入する。「聞きかじり見かじり 読みかじり」は参百部限定特装本の内、第番外十三番本の布装本(つまり参百番の中には含まれない別枠ってこと?ややこしい…)で、ちゃんと八代目三津五郎の署名入りである。大正十五年刊の「天然記念物解説」はその名の通り、当時の日本の天然記念物の實例を写真豊富に細かく解説する五百ページ余の大著である。写真を見ているだけでも楽しい。それにしても、無くなっているのも、多そうだな…。
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この厳めしさと金文字がまたワンダフル!

そして買った古本袋のなかには、一枚のちらしがソッと忍ばせてあった。取り出し広げてみると、十月の営業カレンダーとともに、『読書の秋 5%値引きSALE』のお知らせが!十月から非道にも10%に上がる消費税対策の一環であろうか。10/2(水)〜10/31(木)まで、ほぼ一ヶ月に渡り、店舗の商品が値引対象となるようだ。よ〜〜〜し、いつものように、買ってやる!
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2019年09月28日

9/28Peroさんの挿絵!

正午過ぎの国立に流れ着いたので、裏路地の「飛葉堂」(2018/10/24参照)を見に行くことにする。すると開店はしているが、以前とちょっと様子が変わっている。表に百均ワゴンが出ていない。それに左側のガラス窓際の棚が姿を消し、ただのディスプレイ棚になっている。いったいどうしたのだろう…と心配しながら自動ドアを潜ると、目の前に百均ワゴンが現れたので、まずは抱いたばかりの心配をよそに、文庫の列に視線を落とす。するとたちまち、一冊二冊と掴み取る。これで古本心が多少落ち着いたので、今まで古本が並んでいた左側ゾーンに視線を移すと、フロア棚は無くなり、窓際の棚も消えている状況。ただ窓際下部には文庫を詰めた木箱が積み上げられている。そして以前フロア棚裏側にあった児童文学や絵本は、中央棚の文庫が並んでいた部分に移されていた…恐らく奥のカフェスペースが拡大されるのかもしれない。右奥の古本屋ゾーンは喜ばしいことに今までと変わらずである。変化しつつある現状を把握したので、中央右奥の古本屋事務所ゾーンに進み、二冊の精算をお願いする。すると、本の地に引かれた百均目印である鉛筆の線を確認した青年は、「これだけでも108円ですが、もう一冊加えても108円ですよ」とアドバイス。そうか、三冊108円であったか。と、そそくさワゴンに引き返し、もう一冊を加える。ハヤカワポケミス「ゆがめられた昨日/エド/レイシイ 田中小実昌訳」カッパノベルス「日本アパッチ族/小松左京」創元推理文庫「帽子蒐集狂事件」を計108円で購入する。
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「日本アパッチ族」は角川文庫で読了しているのだが、初版なのでついつい買ってしまった。だが帰りの車中でページを開くと、イラストレータ・伊坂芳太良(愛称“Pero)”のシュールでアーティスティックな懐かしくもある挿絵が載っていたので、嬉しい誤算にイヒヒヒと満足を覚える。開高健の、大阪の陸軍砲兵工廠跡地(通称“杉山鉱山”)に出没する屑鉄泥棒軍団、通称“アパッチ”が縦横無尽の活躍をする「日本三文オペラ」も最高だが、同様に“アパッチ”を題材にし、そこから“食鉄人種”が蔓延る日本を描いたSF「日本アパッチ族」もまた最高なのである。ちなみに東宝で、岡本喜八監督、クレージーキャッツ主演で映画化される予定だったが、撮影開始直前に頓挫してしまったそうである。…あぁ、そんな面白そうな映画、物凄く観てみたかった…。
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2019年09月27日

9/27“川原たんてい”の正体判明す!

午後に吉祥寺に所用で出たついでに、テクテク『井の頭通り』を西に歩いて、久しぶりの「りんてん舎」(2019/03/30参照)に向かう。あぁ!左側の通路棚の右左が、入れ替わっている。つまり左端通路の通路棚に文庫が並び、中央通路左側に風俗・ミステリ・探偵・推理・SF・世相・エッセイなどが並ぶ状態に変化。中央通路の居心地の良さが、アップした感じだ。ジ〜ッと棚を集中して眺め、昭和四十二年に、外国特派員が実際に足を運びその身で味わった、日本の十七の歓楽郷をルポする東都書房「夜のニッポン探検/J・F・モンゴメリ」を864円で購入する。

家に戻ると、古本神・森英俊氏より一通のメールが届いていた。タイトルは『川原たんてい』となっている。どうやら昨日の当ブログを読んでの連絡らしい。慌てて本文に目を通すと、『川原たんていは、自身も小学館の編集者だった梶龍雄が学年誌向けに作り出したキャラなので、その推理クイズ本も作者名はクレジットされていませんが、梶龍雄の手になるものだと思います』とあった。うぉぉっ、疑問がたった一日で一気に氷解!“川原たんてい”が梶龍雄の生み出したキャラだったとは!これで、頭の中の名探偵リストに、川原たんていが突如仲間入り。付録本では梶龍雄とちゃんとクレジットされた『世界びっくり〜』とか、雑学本系はたまに見かけるが、ちゃんと推理ブック類も手掛けていたのか。ということは、この本の後半に載っている推理読み物、『怪とう紅コウモリ事件』『なぞの地図』『アレブ首相を殺せ』『川原たんていあやうし』『あの宝をさがせ』『むらさきのひみつ』も梶龍雄の作品ということになろうか。くぅ、こういう嬉しい展開、俄然盛り上がるなぁ。貴重な情報を齎してくれた古本神・森英俊氏に改めて感謝である。
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これは『上級コース』扉の、何故かお茶目なポーズをとる“川原たんてい”。
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2019年09月26日

9/26川原たんていと臺灣本。

昨日は夕方に駅頭で、立ち話のように軽く打ち合わせた後、フラフラ家に戻りながらも「ネオ書房」(2019/08/11参照)に吸い寄せられる。外の安売棚を屈んで眺めた後は、ゆっくりと店内へ。今日は奥さまが店番なのか。まずは右壁棚…おっ、小さな本は付録本の昭和49年小学四年生1月号ふろく「推理探偵クイズ」。それを両手で優しく挟み込みながら、続いて左壁棚…講談社ゼミナール新書「都筑道夫の小説指南」は初めて見る本だ(怪奇・推理・SF小説の書き方が載っているのは言わずもがなだが、パロディ&パスティッシュ小説の書き方までもが!)。というわけでこの二冊を計900円で購入する。「推理探偵クイズ」は、見たことも聞いたこともない“川原たんてい”がメインキャラのクイズ&懸賞推理よみもの。川原たんていは実写でも漫画でもイラストでも小説内にもふんだんに登場するが、彼についての説明は一切ない…いったい誰なんだ!そして“たんてい”を演じている眼鏡のオッサンも、一体全体誰なんだ!
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下部のモノクロ写真が“川原たんてい”である。本誌の方で激しく活躍していたのだろうか…。

本日は正午の西荻窪に流れ着いたので、「古書音羽館」(2009/06/04参照)に立ち寄り、ハヤカワ文庫「ペガーナの神々/ロード・ダンセイニ」白水Uブックス「異端教祖株式会社/ギョーム・アポリネール」を計200円で購入し、満足して帰宅する。するとポストには、嬉しいヤフオク落札品が投函されていた。大正十一年刊の實業之臺灣社「新世界の旅より/宮川次郎」である。1620円にて落札。当時『臺灣新聞』に連載され、臺灣の出版社から刊行された(中身はもちろん日本語である)、臺灣→神戸→京都→東京→横濱→シアトル→サンフランシスコ→シカゴ→ニューヨーク→ワシントン→ロンドン→パリー→ベルリン→ロンドン→マルセーユ→ポートセッド→コロンボ→シンガポール→バタビヤ→スマラン→香港→アモイと巡る、九十八年前のとても威勢の良い、世界一周毒舌漫遊記である。内外のすべてをぶった切りながら、豪華な旅が進んで行く…。こういう外地出版の本は、知られていないものが、まだまだたくさんあるのだろうな。そんな中の一冊が、我が家に来てくれたのは、非常に喜ばしいことである。先日買って読書中の「東京-パリ バイク無銭旅行」とともに、ゆっくりと旅をするように、ジワジワ読み進めることにしよう。
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2019年09月24日

9/24久しぶりのイレギュラーズ!

九月とは思えない暑さに耐えながら、午前十一時の街路を進む。今日は、久々の盛林堂・イレギュラーズとして、千葉県某所まで出張買取に向かうのである。西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)前に到着すると、すでに銀色の盛林堂号が、陽の光をギラギラと反射させながら待ち構えていた。良く見ると、後部のワゴン部分には、すでに結束本束やダンボールが詰め込まれている。「ちょっと古書会館寄って、これ下ろして行くから」…ハイ、私は盛林堂・イレギュラーズ。仰せの通りにいたします!とまずは神保町へ。古書会館の一階搬入口に車をキュキュッと乗り入れ、速攻でカーゴに本と箱を積み上げ、後は小野氏が上階に運び上げ作業終了。ようやく東京を離れ、しばし車を東に走らせる。午後一時半前に現場着。早速依頼主と挨拶を交わし、奥の書庫を見せていただく。当初の報告では、本棚六本分ということだったので、まぁスパスパ作業は進むだろうと、二人は思っていた…ところが、その書庫にあったのは、巨大で横幅のある天井までの高さの頑丈スチール棚で造られた、三本の通路であった…そ、想像と全然違う、確かに棚は六本だが、まさかこれほどの大きな棚だったとは!しかしここで心を折るわけにはいかず、早速小野氏と買取全体プランを打ち合わせ、本の結束に入って行く。その前に素早く各棚を動き回り、盛林堂店舗好みの本を勘で抜き出し、核となる本をまずは大雑把にまとめ上げる。その後改めて、私が棚から本を下ろし、小野氏が結束を進め、その本束を運び出し易いように私が固め積み上げて行くという戦法を採る。取りあえず今日持ち出せるのは恐らく三分の一ほどなので、残りは後日改めて大きな車で運び出すことに決める。テキパキテキパキ狭い通路空間で馬車馬の如く働き続け、およそ三時間が経過する。ゼイゼイ。程よい感じなので、玄関に本束を移動させ、続いてそれらを盛林堂号に詰め込んで行く。この辺はわりとあっという間。
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そんな風にどうにか作業を終え、午後五時過ぎに現場を離れる。ところが!高速にのり、新富町手前に至ると、そこからはもう大渋滞。およそ一時間強を掛けて都心をノロノロと横断する羽目になる。おかげで車内で色々と小野氏と下らない話に花を咲かせることとなったのだが、バンプレストの名作ゲーム『スーパーロボット大戦』シリーズに出て来る、並み居る有名ロボットに混ざり出ていた、存在感の薄いゲームのオリジナルス―パーロボットはなんだったけ?と聞くと、「魔装機神だよ」と小野氏に即答される。あぁ、そうだったそうだった、ギャハハハと無闇に爆笑する…などとやっていたら、高速出口前でようやく渋滞を抜け、西荻窪に午後七時に帰り着く。後は倉庫に荷を下ろし、本日のイレギュラーズとしてのお仕事が終了する。ふぅ、おつかれさまでした。作業のオマケお土産として、海野十三の会「海野十三」日本美術刀剣保存協会「人間国宝 宮入昭平」などをいただく。たちまち元気が出るなぁ。よし、次回も頑張ります!
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2019年09月23日

9/23二つの街で定点観測する。

祝日など、フリーランスにとっては関係なく、早朝から馬力を入れて仕事をこなす。雨が上がり、気温も上がり、風がとても強くなって来た午前十一時に外出し、荻窪「ささま書店」(2018/08/20参照)へ定点観測に向かう。アメックスビルの前で、身の危険を感じるほどのビル風を前のめりにどうにか突破し、お店に到着。ここにも風は吹き荒れているが、店頭は通常通りの晴天仕様である。百均棚から二冊、三百均棚から一冊選び出す。PARCO出版「現代美術の流れ/エドワード・L=スミス」荒竹出版「世界の前衛演劇/J・ルース=エヴァンズ」沖積舎「紀ノ上一族/久生十蘭」を計540円で購入する。再び風に抗いながら一旦帰宅し、昼食を摂ってから再び外出。今度は『早稲田通り』を伝って高円寺「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)へ向かう。店頭棚前に立つと、後に通りかかったおばあさんが「この前ここで買った本、もう読み終わっちゃったのよ。また何か買わなきゃ。ホホホ」と連れの人に笑いかけながら、本選びに入った。他にもお客さんが立ち読み座り読みしており、祝日の幸せな古本屋風景を見せている。筑摩書房「キミは動物と暮らせるか?/飴屋法水」文藝春秋「テレビ屋独白/関口宏」を計200円で購入する。パフォーマーの飴屋法水がこんな本を書いており、おまけに東中野で珍獣のペットショップを経営していたとは…。そして関口宏の「テレビ屋独白」は、書店に流通していた本とは異なり、紺のクロス装ハードカバーで背文字が銀箔押しの豪華非売品本。出版時に関係者に記念品として配ったものだろうか。こういうのがポロリと見つかるのは、古本屋巡りのちょっとした醍醐味である。
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2019年09月22日

9/22古本屋で伝説のアニメーターを目撃する!

当たらぬ天気予報に翻弄されながら、お昼過ぎに吉祥寺の北に流れ着く。駅方面にトボトボ向かいながら、先日ガレージで良い本が買えた「一日」(2017/08/11参照)にまずは向かってみることにする。カップルが古本デートを楽しんでいる空間に割り込み、気合いを入れて本の背を眺めて行く。自然と古めかしい本を求めてしまう目は、昭森社「大切な雰圍気/小出楢重」を発見する。函ナシだが昭和十一年の四刷。後見返しには荻窪「岩森書店」(2008/08/23参照)の古い古書店ラベルあり。ビニールカーテンを潜り、店内レジで324円を支払うと、ギャラリー部分ではNHK朝の連続テレビ小説『なつぞら』主人公のモデルとなった、アニメーター・奥山玲子の銅版画展が開かれていた。思わず引き寄せられ、アニメとは違う作家性の強いシニカル・ファンタジーな世界をしばし眺める。するとそこに「あっ、今日もいらっしゃったんですか」と店員さんに言われ、ひとりの老紳士が姿を現した。げげぇっ!アニメーターで奥山玲子の旦那さんの小田部羊一じゃないか!すかさず他のお客さんが話しかけると、丁寧に優しく応対している。うひぃ、伝説のアニメーターが、今目の前に!ついつい頭の中で、ハイジが「おじいさんに知らせて来るぅ〜」と、血相を変えて何度も駆け出してしまう…。はぁ、畏れ多くてとても話しかけられないが、ご尊顔を拝謁出来ただけで、なんだか光栄である。
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ポヤ〜ッとしながらお店を出た後は、「バサラブックス」(2015/03/28参照)の外の安売箱から、弥生書房「詩集帰郷/金井直」を300円で購入。さらに足を延ばし「よみた屋」(2014/08/29参照)で、冒険&ハードボイルド小説がたくさん並ぶ店頭棚から、立風ノベルス「ゴールド/ウィルバー・スミス」を見つけ出し100円で購入する。
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2019年09月20日

9/20東京・神楽坂 アルスクモノイ

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「新宿支部に新しい人が入ったんですよ。お店もやるらしいですよ」と随分前から「古書現世」(2009/04/04参照)向井氏にタレ込まれていたお店が、いよいよ本日開店を迎えるという。色々と片付けてから、東西線で神楽坂に向かい、構内を吹き抜ける強風に嬲られながら『1b』出口から地上に出る。するとそこは露店が参道に並んだ『赤城神社』の前。露店の誘惑に抗い、鳥居前から離れ、『白銀公園』方向に足を向け緩い坂を東に下る。そしてすぐに行き当たる北北東に延びる道に曲がり込む。趣きのある神楽坂の裏路地が、たちまち変哲の無い住宅街へと変化する。道なりにぐいぐい進むと、道は急激にガクンと落ち込み、神田川沿いの谷間へと誘い込んでいる。コンクリに刻まれた丸い滑り止めを踏み締めて、落込むように北北東に進み続ける。途端に街の雰囲気は一変し、スクエアな街区に、集合住宅と雑居ビルや小工場が殺風景に建ち並んで行く。大小印刷会社・箔押し会社・孔版印刷…フォークリフトがやけに目につくのも、この辺りの特色である。ずんずんずんずん進み、『目白通り』一本手前の通りを西へ。すると小さな十字路の先、右手の小さなビル一階に、シンプルなファサードの、白っぽいお店が見えて来た。白い立看板の上の壁には、丸傘の付いた電灯が備え付けられている。夜になったら、路上に明るく看板を、照らし出すのだろう。蜘蛛の巣をモチーフにしたロゴマークの刷られたサッシ扉を開き、店内へ。板敷き白壁のシンプルな広めの空間である。右側にはしっかりしたカウンターが据えられ、先客の数人が楽しくお酒を飲みながら、有名グラフィックデザイナーについて熱く論議を交わしている。入って直ぐ右側のゾーンには、アンティークな机の上に、古い紙物が飾られている。足元にはマッチ箱を詰めた箱も置かれている。忍者記念館のパンフレット、いいな。左壁沿い初っ端には、ミシン台が置かれ、洋書などを並べている。腰高に平台を備え、下部が大判棚となった壁棚には、海外文学(充実)・洋絵本・パリ・アート・デザイン・海外詩集・言葉・民俗学・西洋思想・ビジュアルブックなどが、良く練られた感じで端正に並んで行く。ヨーロッパを核とした偏愛の棚である。古書も良く混ざり、時々太宰治や林芙美子の古書が混ざるのもまた面白い。奥には、洋雑誌や「暮らしの手帳」が入った箱が床に置かれている。さらに右奥のゾーンに進む。手前壁際には小さな文庫棚があるが、思想・学術・民俗学・歴史・江戸などの特殊な並びである。右奥の壁棚には、性風俗・志村ふくみ・ファッション・児童文学・澁澤龍彦・佐野繁次郎装幀本・料理・金持ち・建築・武田百合子・女性関連(何故か『女性便所』の強烈な木札あり!)・旅などが収まっている。所々に額装された古い変な紙物があり、お店の雰囲気を造り出すのに一役買っている。こだわりが美しく顕在化した、見ていて気持ちの良いお店である。右奥の資料的にいががわしい本も混ざる棚がとにかく魅力的で、欲しい本が何冊も見つかってしまう。値段は普通〜ちょい高。店主はショートボブの、笑顔と笑い声を絶やさぬ女性で、お客さんとの会話で「砂漠のような場所に店を出したかったんです。寂しいところにポツンと灯りが浮かんでいるようなお店」と語っていたのがとても印象的であった。帝國出版協會「世界建築めぐり/藤島亥治郎」(カバーカラーコピー)を購入する。開店おめでとうございます。この地での古本オアシスとしての活躍を、心より祈っております!

「世界建築めぐり」に載っていた、ニューギニヤの住宅がスゴ過ぎて、思わず口アングリ。
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2019年09月18日

9/18水曜日の定点観測。

今日は午後前にようやく雨の降り始めた吉祥寺に流れ着く。傘を差しながらブラブラと古本屋さんを巡るが収穫ナシ。そう言えば月曜は定点観測が出来なかった…荻窪に移動して「竹陽書房」を覗いてから「ささま書店」(2018/08/20参照)に向かおう。そう決めて、総武線で二駅移動。荻窪到着前に上半身を南側の車窓に捻り、「竹陽書房」が開いているかどうか確認する…あれ、シャッターが下りっ放しだ。時刻は午後一時である。まだ少し早いのかな…と早々に諦めて、「ささま書店」へ一直線。雨が強くなり始めた。店頭はもちろん雨仕様。ビルの庇に守られた均一単行本棚二本に、じっくり視線を走らせる。ここ最近で何度も見ている本の間々に、昭和三十年代の大衆小説がふわりと浮かび上がる。二冊を確保して店内へ。左側通路に均一文庫棚が一本引き込まれ、奥の帳場斜め前にもう一本が置かれている。おっ、詩集棚の下では、つい先日逝去した池内紀特集が組まれている。それを横目に文庫棚からも一冊抜き取る。光文社「長編推理小説 蒼い描点/松本清張」(初版)東方社「はだか太平記/北町一郎」角川文庫「土屋耕一回文集 軽い機敏な仔猫何匹いるか」を計324円で購入する。
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うっとうしく降り掛かる雨も吹き飛ばす、なかなかの収穫である。テクテク歩いて帰宅すると、筑摩書房から何か届いている。どうやら本らしいのだが、筑摩から本が届く覚えなどないはずだが…とボール紙の封筒を開けると、出て来たのは岡崎武志氏の新刊、ちくま文庫「上京する文學」であった。岡崎さん、ありがとうございます!パラパラとページを捲ると、18の作家上京話に加え、新たに二編が追加されている。その内の一編が野呂邦暢の上京物語で、本文内では氏とともに編集した「野呂邦暢古本屋写真集」についても触れられている!…そうだ、東京と言えば、今楽しみにジワジワ読み進めている春陽堂「大東京・インターナシヨナル」は、やはりとてつもなく面白い。徳田直『裏切者』は、バクチ好きの写植工が、無意識の密告や警察への収監を経て、共産黨員として目覚めて行く物語。橋本栄吉『ゼネ・スト』は、印刷所での労働争議を組織の目から忠実に描いた物語。…ここまではまぁプロレタリア的に普通である。ところが、三人目の窪川いね子に突入すると、ギアがぐいっと何段か上がる。「東京一九三〇年物語」は、黨の通信員として働く少女が、当局に目をつけられぬよう、東京の様々な場所で手紙を投函するスケッチ風の物語なのだが、少女が東京内を細々と移動するとともに、自然と東京の街の風景も文章の中を流れて行くという、素晴らしい仕掛けが施されている。他に、乗合自動車のバスガールが変装して、ストライキをする同士と密会する物語。監視入院している若者が、病院から脱走する物語。王子の街の描写と、女工の暮らしが美しく絡み合う物語。そして、銀座のデモ行進で使われた催涙瓦斯を起点に、共産黨員の地味な草の根行動を描く物語。そんな小さな物語たちが連なり固まり、大きな一つの物語となっているのだが、労働者というよりは、東京のあちこちの街を主人公としているような展開に、シビレまくってしまう。窪川いね子は「私の東京地図」も名作だが、この小品も、負けないほどの東京への愛おしい情感が込められている!そして次の山田清三郎『求人廣告』はちょっと奇天烈なユーモア風(期せずしてそうなってしまった感あり)プロレタリア小説だが、そこから続く未読の、小島勗『アスファルト』、藤澤桓夫『首府の欲情』、武田麟太郎『淺草・餘りに淺草的な』黒島傳治『お化ケ煙突』、片岡鐡兵『アスファルトを往く』は、さらにボルテージがアップして行くようだ。特に最後の片岡作品は、まるで詩というか、プロレタリア新感覚派と言ってもいいような(ある意味めちゃめちゃである。何たってプロレタリア文学の隆盛が、新感覚派を衰退させたのだから…)、言葉が文章から先走りギラギラと煌めく掌編のようである。あぁ、スゴい!色んな昭和五年の大東京を渉猟して、早くここまでたどり着かなければ…。
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2019年09月17日

9/17さらば「穂高書房」!

ヒドい残暑にブツクサ言いながら、まずは古本を抱えて西荻窪へ。「盛林堂書房」(2012/01/06参照)の「フォニャルフ」棚にザクザクと補充する。飛鳥部勝則の良いところを並べて来ましたので、目がキラリと輝いた方はぜひ。忙しい店主・小野氏と少しお話しをし、その忙しさのひとつである、横田順彌追悼展「ヨコジュンのびっくりハウス」の案内ハガキをいただく。若き日の横田さんの写真は、神保町の一角で撮られたものである。十月に横田さんが、神保町に帰って来る!
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そして阿佐ヶ谷に戻り、いきなりの店主の訃報に驚いた「穂高書房」(2009/02/15参照)の様子を見に行く。…やはりお店は開いていない。おまけにこの間の強風台風のせいか、お店のシンボルであった灰色のブリキ看板が剥がされ、壁沿いに横たわっている。ここでは、小さな店内の古本山脈を構成する専門の山岳書というよりは、店頭に安く出されていた、門外の古本をよく買わせてもらった。基本的には凪いでいるのだが、その凪ぎの中に微かな動きを見出すように足繁く通い、地元民として大いに楽しませてもらった。暑くなると、ビル横手の鉄扉を開け放し、上半身裸で古本と静かに格闘していた、横向きのオヤジさんの崇高な姿も忘れ難い(見るたびに、分かっているのに、一瞬ギョッとしてしまうのだ)。ここが開くことは、もうないのか。うぅ、安らかにお眠り…いや、どうか、どれでも好きな山に登りまくって下さい。今まで阿佐ヶ谷の古本文化の一角を支えていただき、本当にありがとうございました。
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家に帰り、ダンボール一箱分の古本を大阪に送り出す。しばらくしたら「梅田蔦屋書店」の古本壁にツラツラ並び始めると思いますので、何とぞよろしくお願いいたします。
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2019年09月16日

9/16亂歩全集見本をカラーコピーさせてもらう。

昨日日曜は予想以上の良い天気になり、そのため少し暑過ぎたが、楽しい一日となる。余裕を持って出かけたはずが、受付を済ませて開店準備を始めていると、いつの間にか午前十一時が近付いて来ていた。最初は誰もいなかったので、ノンビリ本を出して並べ始めていたのだが、開始三分前くらいになると、いつの間にか背後が黒山のひとだかりに…まるで群狼に狙われている気分。激しいプレッシャーを感じながらも、振り向かないようにして、午前十一時を過ぎてようやく準備完了。「準備終わりました。さぁどうぞ」と言うと、たくさんの手が伸び、それぞれ狙いの古本を掴み取って行く。そんな順調な滑り出しでそのまま突っ走り続け、午後四時までに六十九冊を旅立たせることに成功する。いやぁ、皆々様、毎度ありがとうございました。これからも良い本を流通させて行く所存ですので、引き続きご愛顧のほど、よろしくお願いいたします!途中、今回も参加していた杉江松恋氏が顔を出してくれたので、しばらく古本屋話と古本屋情報交換に、楽しくうつつを抜かす。氏の、細かく虱潰しに古本屋を探索する姿勢は、古本屋ツーリストとして大いに尊敬してしまう。。目的のお店のためには、聞き込みも辞さないのである。それにしても探求書が、浪曲関連やユースホステル関連とは…とても難易度の高い世界である。また「古書現世」(2009/04/04参照)向井氏から、出来立てホヤホヤのタレコミをいただき、近日中にツアーすることを約束する。疲労と売れ残りの古本を引き摺ってヒィハァ帰宅してから、良し!次は大阪へ送る古本の準備だ!とまめまめしく働く。

そして本日は代田橋に流れ着いたので、東松原「瀧堂」(2014/05/01参照)を覗き、大和書房「火の柱/レイ・ブラッドベリ」を500円で購入する…だが、こんな風に古本屋さんに寄っている場合ではないのだ!今日はミステリ研究家の松坂健氏が、同好の士を集め、『アンティーク ミステリ共和国』なる会を立ち上げるのだ。錚々たるメンバーの末席に、こっそり私も連ねていただいたので、東京の東に駆け付けねばならないのだ。急いで一旦家に戻り、色々片付け再び外出。およそ三十分遅れで、会場である松坂健氏書庫(2019/03/08参照)にどうにか駆け込む。するとそこはもはやミステリとアルコールに酔い痴れている空間で、高度でマニアックなミステリ話が、普通の人の1.5倍ほどの早さで語られまくる、恐るべき空間であった。ビールをグイグイと呷り、三十分の遅れを取り戻しながら、飛び交う話に耳を傾け、フムフムと勉強させていただく。途中、当然書庫に飛び込み、素晴らしい本たちをウットリと見学する。
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その時目についたのが、一枚の全集見本…くぉっ!額に青筋を立てながら半眼で口を三日月にして笑う、黄金仮面のマスク!そう、平凡社「江戸川亂歩全集」の全集見本である。こ、こんなものまであったのか…かぁぁ、スゴいなぁ。と開いて見ていると、紙のサイズはA3ほど。ここでピンと閃いた。そうだ、コピーさせてもらおう。一枚でこのサイズなら、時間もかからずにコンビニでコピー出来るはずだ。早速松坂氏に進言し、嬉しいことに許可を貰う。慌てて夜の街にひとり飛び出し、ほどなくして昼のように明るいコンビニ内のコピー機前に到着。丁寧に全集見本をガラスの上に広げると、あれ?ちょっとA3より大きいのか…では98%でコピーするか…ンガァ〜…おぉ、どうにか収まった。取ったコピーを裏返し、下部のA3トレイにセットする。そして裏面をコピー…やった!上手く両面がコピー出来て、一枚の全集見本が完成。俺の「亂歩全集見本」!もう、これが手に入っただけで、今日、この会合に参加して本当に良かった…と思いながら、その大事な会合をほっ放り出す不遜な行動を取りつつも、楽しい夜は更けて行くのであった。
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これは表面のコピー。裏面『内容總覧』の書き出しが、『江戸川亂歩氏の探偵小説は阿片の妖気である。一度これを呼吸したが最後、生涯治癒する事なき亂歩患者になって了ふ』とある。いや、まさにその通りで、私は完全な亂歩患者なのである。
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2019年09月14日

9/14明日日曜は久しぶりの「みちくさ市」!

涼しい何だかすっかり秋の屋外で用事を片付け、急ぎ帰宅して、ひたすら明日の「みちくさ市」の準備に没頭する。…どうやら明日は天気が保つらしい…ならば、存分に嫁がせる古本を準備するぞ!と、自主的に八面六臂の大活躍。いつものように、おかしな本も探偵小説も文学本も混ぜ込みました。またもや掘り出された津原やすみ&泰水も持って行きます。ちょっと傷んだ平山夢明の今やレア本「SINKER」も安値で放出。裸本の特価本も準備万端。ブログに載っけた本も幾冊か惜しみなく持って行きます。「西荻窪古本屋マップ」も配ります。まぁとにかく見に来て下さい。古本を買いに来て下さい。それでは明日、雑司が谷でお会いいたしましょう!
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■「第48回 鬼子母神通り みちくさ市」
■9月15日(日)11:00〜16:00 雨天中止(当日午前八時に天候による開催の有無を決定)
■東京都豊島区雑司が谷二丁目・鬼子母神通り周辺
https://kmstreet.exblog.jp/
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2019年09月13日

9/13パトロールと大東京。

栃木から戻ってから、数日を忙しくバタバタと過ごす。そんな中、「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)に重い本や厚い本を買い取ってもらおうと持ち込むと、驚くことに店主・天野氏が左腕に怪我をしている。「ど、ど、どうしたんですか?」と意気込んで聞くと、恥ずかしそうに「骨折です。スケボーで…」と返って来た。あぁ、そんな時に、重い本を持ち込んでしまってすみません…。「でも、折ったのが左腕で良かったです。一応店も開けられますし、本も縛れるんですよ」とのこと。「しばらくは、重い本を持って来ないようにしましょう」と言うと、慌てて「いや、遠慮しないで下さい。持って来て下さい。大丈夫です」と、肉体的逆境に古本屋魂が燃え上がっている模様。とにかくお大事に!

そして本日は、日曜日の「みちくさ市」用の釣銭をジャラリと作ってから、午前十時に水道橋から神保町入りし、パトロールに精を出す。ご近所のラーメン仕込み中の美味そうな匂いを嗅ぎながら、まずは「日本書房」(2011/08/24参照)店頭台に釘付け。おっ、箱ナシだが、新潮社「幽霊はここにいる/安部公房」(昭和三十四年初版)があるぞ!と千円で購入する。続いて『靖国通り』をフラフラ流していると、歴史&民俗学に強い「慶文堂書店」(2012/01/14参照)が店頭に三島由紀夫本を放出しているのが目に留まる。こういう専門外のモノが出ているときは、注意しなければ…おっ、牧羊社「戯曲 黒蜥蜴/三島由紀夫」も混ざってる!と喜び、300円で購入する。早起きの神保町は、やはり古本心を限り無く優しく受け止めてくれるなぁ、と感心しながら帰宅する。
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そして家に帰ると届いていたのは、久々のヤフオク落札品。3260円で落とした、春陽堂 世界大都會尖端ジャズ文學「大東京インターナシヨナル/プロレタリア作家十人」である。水濡れ跡があったり、表紙が少し変形していたりと傷んではいるが、ちゃんと読めるのでこの値段なら申し分ない状態である。表紙の青が鮮やかな港湾のイラストが素晴らしい。黒々としたキリンクレーン、海に浮かぶランチ、煙を薄く伸ばし走る機関車。見返しには斬新なメーデーの群集写真。そして、徳永直・橋本英吉・窪川いね子・山田清三郎・小島勗・藤沢桓夫・武田麟太郎・黒島傳治・片岡鐵兵と…あれれ?九人分しか載ってないよ?別に落丁があるわけじゃなし…これはいったいどういうわけだ?一人の作家が間にあわなかったのか、それとも削られでもしたのだろうか?…そんな謎に気付いてしまったが、ひとまず横に退けておいて、この本の素晴らしさを存分に楽しむとしよう。ページを開くと、先鋭的で攻撃的な言葉たちが、脳にグサグサ突き刺さって来る。おぉ、この中に詰まっているのは、空前のプロレタリアブームに沸く、昭和初期の大東京だ!
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2019年09月10日

9/10青春18きっぷ古本屋への旅2019・夏

古本神・岡崎武志氏に誘われ、『青春18きっぷ』の残り一枠をいただき、一緒に古本屋を訪ね回る小さな旅に出ることにする。言わば去年出版した「青春18きっぷ古本屋への旅」の外伝といったところか。ところが朝、出かける準備を進めていると、氏から着信が入る。「おはようございます!」と元気よく挨拶すると、氏は笑いながら「財布が見つからんのよ」と衝撃の報告!とにかく今必死に探しているので、見つかったらまた電話する、ということになる。あぁ、岡崎氏は、必死に地下の古本山を掘り返したりしながら、その周りを二匹の猫が「ナニシテルンデスカ。ナニシテルンデスカ」と鳴きながらじゃれついているんだろうなぁ…などと楽しく想像していると、再び電話があり、無事に財布が見つかったとの報告。それならばスケジュール通りに行動出来るはずだ!と、氏と午前九時二十分に阿佐ヶ谷駅で待ち合わせる。18きっぷにすでに捺された氏の分のハンコに加え、私の分を改めて捺してもらい、二人連なり有人改札を抜ける。中央線→湘南新宿ライン→両毛線と順調に進むはずが、湘南新宿ラインが遅れ、両毛線への乗り継ぎが上手くいかず、一時間ほど足止めを食らう。仕方ないので炎天下の街を少しだけ散策し、駅で昼食を摂り、ようやく両毛線に乗り込み、十分ほどで栃木駅着。高架下の駐輪場でまずはレンタサイクルを借り、駅前ロータリーの山本有三碑に挨拶。
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その後、駅近くのハンコ屋+古本屋の変わり種「長谷川枕山堂」(2011/03/02参照)に向かう。その激渋な佇まいは昔と変わらず、巨大なブリキ看板も健在。今でも果たして古本を売っているだろうか…と恐る恐るドアのガラスを透して店内の様子をうかがうと、おぉっ!まだちゃんと古本棚が並んでいるじゃないか!岡崎氏に「古本、売ってますよ」と報告すると、すぐさまドアを開けて入店してしまった。続いてスルリと滑り込むと、入ったところはハンコ屋スペースだが、右側に古本棚が見え、奥の二本の通路も古本が並んでいるのである。岡崎氏が、入店と同時にハンコ屋スペースのレジに座る店主に、このお店について、さり気なく色々な質問を投げ掛けて行く(これが非常にうまいのである)。たちまち店主とお客の垣根が楽しく取り払われて行き、自然と「今日はどうしここに?」の質問に行き着いてしまった。そして話には参加せずに、ひたすら古本を眺めていた私を氏が紹介したので、「古本屋ツアー・イン・ジャパン」ですと遅まきながら挨拶をする。実はこのお店をブログで取り上げた時に、店主といくらかのやり取りがあり、すでに交流を持っていたのである。店主は取り上げてくれたおかげで、お店の知名度が上がったことを盛大に感謝してくれ、大いに恐縮してしまう。こちらも改めて、今でもしっかり古本を扱われていることを感謝したりしながら、並んでいる本の核となっている世界関係の本は、世界史の教師であったお父様の蔵書であることを知る。なるほど、そうだったのか。そして奥の片隅にしっかり健在の推理小説コーナー前に跪くと、一冊の素晴らしい本を発見する。むぅ、今日はここに来て、本当に良かったぞ。ついでに時々サロンとして開放する二階のスペースも見せていただくと、美術全集や大判全集とともに、ハヤカワポケミスやクリスティーが多く並んでいるのが目に留まった。推理小説もまたお父様の好きなジャンルで、まだまだ自宅には色々あると聞いてしまったので、ぜひともお店に並べて下さいと、強くお願いしておく。これは二階から見た、巨大看板の裏側!
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その後、店主のお母様も現れ、来栃を大いに歓迎される。挙げ句、本の普及活動をこの地でされている知り合いや、「吉本書店」(2010/12/25参照)に「あの、今、古本屋ジャパンさんともうひとりの方が来ていてね、挨拶したいって言ってるの」などと慌てながら電話を掛けられ、次々に会う仕儀となる。…お母様はとてもパワフルである。栄光出版社「長編推理小説 死者の木霊/内田康夫」を500円で購入する。というわけで三人で自転車に乗り、炎天下の栃木の街を疾走して行く…お母様のスピードはとても早い。
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最初に向かったのは近所の市民活動推進センターで働き、そこで本に関する活動を展開している「読み書き堂」さんにお会いする。お仕事中にお邪魔してしまった形だが、岡崎氏との対面を喜んでいただき、ホッと胸を撫で下ろす。様々な活動のパネルを眺めながら、話の中に「駄々猫さん」「脳天松さん」「レインボーブックス」さんなど、一箱猛者たちの名前が挙がり、驚いてしまう。これからも本を武器に、頑張って下さい!再び街に出て三人で自転車を疾駆させ、「吉本書店」へ。
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ずいぶん中心部から離れた住宅街なのに、今日もしっかり営業中である。九十を越えた店番のお母様や、倉庫からわざわざ駆け付けてくれた姉妹店主のお一人と、お店の来歴や古本屋についての昨今や、猫の話に花を咲かせる。三一書房「デザインの発見/粟津潔」を300円で購入する。お店を後にして、「ここからは巴波川沿いに帰っていただきたい」との提案に従い、軽やかに自転車を走らせる。走りながら、お母様は色々とガイドしてくれるのだが、距離があり、風と前を向いて声を出しているので、良くは聞き取れない。「栃木高校です」「新しい幼稚園です」「市役所跡地です」「この旧庁舎は文学館になります」「駐車場です」「お壕です」「鯉です」「遊覧船です」「一方通行です」「鯉です」……あ、あ、ありがとうございます!などとやっていると、あっという間に二時間経ってしまった。「家はこっちなんです」と駅近くでお世話になったお母様と別れ、レンタサイクルを規定時間内に返却する。ふぅ、と駅のホームで一息入れる。
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岡崎氏は、リポビタンDでエネルギーチャージ!

ところがこの後乗り込んだ電車は、何と下りの高崎行き…途中でそれに気付き、佐野駅で下り電車を乗り捨て、引き返すことにする。待ち時間は四十分余り。もはや街を散策する余裕もなく、駅前の噴水前で、二人でガリガリ君をガリガリ齧り、涼をとる。ついでに本日の嬉しい獲物を噴水前で記念撮影。
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この内田康夫の処女作は文庫でも読めるのだが、栄光出版社の単行本は自費出版でなかなかに珍しいのである。枕山堂さん、ありがとうございます!

帰りの車中、気付けば茶色い電気機関車に牽かれた特別急行列車カシオペアが、銀色の車体を夕陽に光らせ、スルスルとスピードを上げながら車窓を長く横切って行く。何という美しい、夢のような光景。こんな風にして、栃木への短い旅は、美しく終わりを告げたのであった。
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2019年09月09日

9/9色々お知らせ

昨晩、BS12の面白音楽番組『ザ・カセットテープ・ミュージック』を観ていて、長年頭の奥底にこびりついて離れず、ことあるごとに口ずさんでいたカセットのCM曲が、村田和人の「一本の音楽」であることを知る。思いっきり驚きスッキリしたところで、YouTubeで検索すると、目的のマクセルのCMが一発で浮かび上がった。再生とともに一緒に歌い始めると、そのCMに出演していたバイク乗りが、まるで山賊のような風貌の『都市探検家・松山猛』なのに気付き、二度目のビックリ…。夜中、あまりに強い風雨に目を覚ましてしまう。西側の窓を叩く雨風の音が凄まじ過ぎる。今にもガラスが破けてしまいそうで、窓際の枕元に固めている古本の行方を心配してしまう。夜中の不安事は、目を冴えさせ、さらに無駄に不安を深めて行く…思わず暗い中で身を起こし、窓際から古本をセッセと別の場所に移動させる…夜中に俺はいったい何をしているの
だ…。もちろん窓は破れること無く、無事に朝を迎える。
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これが枕元。復旧しているが、右の窓際の古本山を、暗い中移動させたのであった…バカ。

午前十一時過ぎに家を出て、街路樹の葉と枝が一面に散らばる道を歩き、定点観測に向かう。「ささま書店」(2018/08/20参照)では、講談社文庫「ノックの音が/星新一」(青カバー帯付き)白水社「妖姫二コティン/ジェー・エム・バリイ」を計216円で購入する。ちょっと歩いて「藍書店」(2018/12/29参照)では筑摩書房リュミエール叢書1「小津安二郎物語/厚田雄春・蓮實重彦」ハヤカワポケミス「おんな/カーター・ブラウン 田中小実昌訳」を計500円で購入する。

さて、色々お知らせです。

1. もうすぐ発売の「本の雑誌 さるかに合戦開始号」の連載『毎日でも通いたい古本屋さん』では、荻窪の中央総武線から身見える「竹陽書房」をご紹介。ブログ同様、めげずに北原案件にチャレンジしております。案件認定なるか!? その顛末は本屋さんでお確かめ下さい。

2. 三ヶ月ぶりの「みちくさ市」に元気一杯に参加させていただきます!三ヶ月ぶりなので、面白い本がたくさん溜まっております。ぜひとも逃さず良い&おかしな古本を買いに、秋の気配が滲み始めた雑司が谷に遊びに来て下さい!
■「第48回 鬼子母神通り みちくさ市」
■9月15日(日)11:00〜16:00 雨天中止(当日午前八時に天候による開催の有無を決定)
■東京都豊島区雑司が谷二丁目・鬼子母神通り周辺
https://kmstreet.exblog.jp/

3. 十月に熊本の老舗古本屋さん「舒文堂河島書店」(2008/12/21参照)さんの尽力にて、熊本地元デパート展での『第50回 鶴屋古書籍販売会』開催を記念し、古本先輩・岡崎武志氏とともに、トークすることが決まりました。二人で来熊します!そして、古本屋さんについて、二人の知識と経験を総動員して、喋って喋って喋りまくります!九州のみなさま、古本屋狂いの二人を、何とぞ暖かい目で見守ってやって下さい!…あぁ、楽しみ楽しみ。
■オカタケ&古ツアの古本屋を語り尽くす夜 in 熊本
■10月17日(木)19時より
■くまもと県民交流館パレア10階 第7会議室 熊本市中央区手取本町8-9
■入場無料・申し込不要
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2019年09月08日

9/8東京・高円寺 tata

昨晩気まぐれに、昭和十二年第二刷の岩波書店「墨東綺譚/永井荷風」(“墨”は本来、さんずいに墨である)を一気読みする。暗闇に向って窓を開け放ち、生温い空気を取り入れ、蚊取り線香を炊きまくり、大きな総ルビの活字と、木村荘八の墨の挿絵を目玉で追い、玉ノ井の迷宮を脳内でうろつき回る。何度目かの再読だが、やはり荷風の街の描写は、愛と寂謬を引き摺りまくりながら、微に入り細に入り叙情を湛え、やがて失われる風景を、見事に文中に定着させている。巻末には「作後贅言」という「墨東綺譚」とはそれほどクロスしない、隨筆とも創作ともつかない掌編が載っているのだが、こちらは銀座の街と風俗が詳細に記されており、荷風といつも行動を共にする、帚葉翁という老人が街行く人々を今和次郎のように考現学的に観察記録しているのが、何とも言えず味わい深い。二編併せてまさに名作の逸品である!…などと感じ入った晩夏の寝苦しい夜…。
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これは函背の『蚊遣香』の絵。第七章の章タイトル横にも載せられている。

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そして本日は、綿菓子のような雲がモクモクと青空にはびこるのを口を開けて見上げ、高円寺へ。駅北口に出て、喧噪の『高円寺純情商店街』を北へズンズン突き進む。突き当たったら西に曲がって『庚申通り』に入り、そこからさらに北へ進む。ちょいちょい進んで、右に通りの名の由来となる『庚申塔』を眺め、さらに先へ。この辺りから、道の右側に潜む細路地に神経を使って歩くようにする。すると、中華麺屋の手前の行き止まり路地の入口に、白い儚い立看板が出ているのが目に留まる、看板上部に細い線で幾何学的に書かれたお店のロゴも、これまた儚い。それを目印に路地へふいっと入り込む。飲み屋や食べ物屋がひっそりと並んでいるが、右手奥には白い袖看板を掲げた洒落たお店が潜んでいる。おぉ、ここは「アバッキオ」(2008/10/14参照)のあった所ではないか!そうか、ここに新しい、bookshop galleryが出来たのか!と西洋風扉を開けて店内に滑り込む。そこは、いつか来た「アバッキオ」とほとんど変わらぬ光景。右にカウンターがあり、一人のシュッとした青年が先客と楽しそうに話している。入口左横には本棚、左壁に小さな棚が続き、真ん中には二階への鉄梯子。さらに棚が続き、奥には大きな棚が張り付いている…什器も旧店そのままのようだ。並んでいる本はかなりセンスが良く、池波正太郎・伊丹十三・岸田衿子・原節子・赤瀬川原平・粟津潔・カンディンスキー・ジョン=ケージ・ブルーノ=ムナーリ・アート・絵本・モビール・デザイン…う〜む、いいなぁ。値段はかなりしっかりめ。気になる本を手に取っていると、先客を送り出した店主が、フレンドリーに話しかけてくれた。「アバッキオ」さんとは以前からの知り合いで、本屋をやる条件で、この場所を受け継いだこと、今は並んでいるのは古本だけだがそのうち新刊も取り扱うこと、二階は急な梯子で昇るのが難儀だがギャラリーとして使うこと、カウンターではコーヒーやお酒を提供すること(恐らく飲み屋になってしまうのでは…と店主は楽しそうに危惧)、などなど楽しくうかがう。まさに「アバッキオ」の場所も精神も受け継いでいる感じである。色々整ったら、お酒を飲みにフラリと寄ってみることにしよう。晶文社セレクション「バウハウスからマイホームまで/トム・ウルフ」を購入する。うらぶれた路地裏に開店、おめでとうございます!
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2019年09月06日

9/6東京・江古田 がらくた屋ネバーランド

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古本神・森英俊氏より、江古田にある古本もちょっと扱う昭和レトロ雑貨屋をタレ込まれる。早速駅北口に立ち、お店に向かって歩き始める。目の前に見える『浅間神社』を右にしながら、北へと進んで行く。浅間神社の奥には、鬱蒼とした富士塚があり、街と雰囲気を異にしている。そのまま坂道を下って行き、斎場前を過ぎたら西へ曲がり込む。小さな商店街に突き当たったら、再び北へ…すると、緑の日除けテントに『体質整体院?』と書かれた、角地のお店が見えて来る。良いロケーションだ。店頭では物品がすでにせめぎ合っているが、それほどカオスな感じはしない。一部には物品保護のために布が掛けられている。中に入ろうと思ったら、前を歩いてた女子二人に先に入られてしまった…ちょっと間を置くか…。しばらくして扉に近付くと、そこには『10円ゲーム機、今日は故障中です。すみません』と書かれている。ようやっと中に入ると、アジア的音楽が流れ、昭和な物品や古道具やアンティークや駄玩具やプラスチック製品やパチ物製品が集められた空間。くすんだカラフルさが、過ぎ去った昭和を間近に感じさせる。古本は古本は…とまずは手前の通路に視線を走らせると、古いキャラクター商品や古着で盛り上がる女子二人の向こうに、本が並ぶ棚が見えている…あそこか。よし、奥の通路から回り込もう。と通路をずんずん進むと、うひゃっ、カウンター帳場前で行き止まりになっている。そこに座るポニーテールの女性店主と思わず視線がバチリ。照れながら通路を引き返し、意を決してショッピングを楽しむ女子二人に「すみません」と声をかけ、奥へ通してもらう。途中の通路棚に、雑誌やオールドファッションムック類があり、最奥に下にビジュル本やガイド本やテキスタイル本を並べたラックを従えた、一列の古本棚があった。『セレクト古書 50円〜』の小さな貼紙がある。横積みの文庫本が十冊弱、それに精神&超能力・森見登美彦・町田康・バロウズ・「こども家の光」・「たくさんのふしぎ」・雑誌など。珍しい大判B5サイズの昭和三十七年「こども家の光 進級お祝い特大号」(つまり文字通り“特大”というわけだ)を購入する。その後は日芸前の「根元書房 日芸前店」(2008/10/07参照)を見に行くと、森氏がタレコミと同時に『根元書房、の店内がすごいことになっています!』教えてくれた通り、本がギッシリ通路に詰まっている状態である。真ん中通路でかろうじて奥と行き来が出来るようだが、入った途端に店主が探し物途中の手を止め、こちらをギラリと睨んだ…と、とてもこれ以上は進めない。そんな風に即座に心を折り曲げ、入れたばかりの身体を外に出し、そっとガラス戸を閉めてしまった…。そしてせっかくなので、ちょっと最近どうなっているのか気になっていた、富士見台の「新井書店」(2010/08/30参照)を見に行くことにする。商店街の坂を下り、お店の前にたどり着くと、そこにあったのは右半分のシャッターを
1/3ほど開け、日除けテントが破れて垂れ下がる侘しい光景…う〜ん、これは営業しているのだろうか。低い、低いなぁ。以前はもう少しシャッターが上がっていて、奥に声をかけたら入れたのだが、これはもう開けているというよりは、風を通すためにちょっと開けているだけみたいだ。ちょっとしゃがんで声をかける勇気はないなぁ。だが、店内にまだ本はあるみたい…また見に来て、もっとシャッターが上がっていたら、入店チャレンジしてみよう。
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2019年09月04日

9/4今日は何だか良い吉祥寺。

午後イチに下連雀に流れ着いたので、井の頭公園の森を抜け吉祥寺へ。そう言えば「一日」(2017/08/11参照)では、吉祥寺の出版社・夏葉社誕生十周年を記念して『夏葉社の10年展』が開かれているはずだ。観に行こう、と中央総武線ガードを潜り、斜めの裏道にあるお店へ。まずは安売ガレージを覗き込み、組合書店「東京-パリ バイク無銭旅行/高橋昭次・高橋雄次」(昭和三十二年刊の、若い兄弟がタイトル通り、バイクで無一文で東京→パリを走破するノンフィクション。写真も豊富で、こういう本大好き!)を見つけ、ビニールカーテンを潜ってガレージから店内へ。展示は窓際の小スペースでささやかに開かれているが、あっ、社主の島田潤一郎氏がちゃんといる。そうか、今日は初日なのか…と気配を殺し、壁に飾られた高橋和枝さんの「さよならのあとで」のアウトテイクイラストや、得地直美さんの細かく描き込まれた本屋イラストを眺める。低いテーブルには夏葉社のこれまでの本が、面陳&ブックエンドに挟まれ勢揃いし、まるで島田氏がこれまで作り上げて来た、誠実で静謐で独特な世界の地図や、街を見ているようである。特にブックエンドに挟まれた本が造り出す景色は、家並みの、小さな可愛いジオラマを連想させ、それぞれが個性的で優しく、歪な人間の心の様々な営みをジワジワと滲ませている。帽子も被り気配も殺していたのに、あっさり島田氏に気づかれてしまったので、改めて挨拶をし、ちょっとだけお話しさせていただく。出すのに二年も掛かった「さよならのあとで」の心温まる話や進行具合のヒドい話、七年越しでとあるお店の倉庫に眠っていた「故郷の本箱」が返品されて来て驚いたこと、本を千部売ったり増刷したりすることの大変なことなどなど。どうぞこれからかも、古本関連の本を作ってくださいね!会場では記念のTシャツやトートバッグの販売もあり。テイクフリーの中綴じ文庫サイズ小冊子「10年34冊」をいただき、芳名帳の一番最初に記名して、会場を後にする。展示は9/8(日)まで。先述の本は324円で購入する。
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その後は「バサラブックス」(2015/03/28参照)に寄り、外の安売箱の中からキネマ旬報社「時代劇映画の詩と真実/伊藤大輔 編・加藤泰」を掘り出せたので300円で購入する。そのままの勢いで「よみた屋」(2014/08/29参照)に向かい、店頭で美術出版社「幻想の画廊から/澁澤龍彦」講談社「サユリ・マイ・ミステリー/山村正夫編」を抱え込んでいると、入口前の棚でちょっとカバーはボロいが、毎日新聞社「宇宙旅行/原田三夫」がソッと並んでいるのを見つけ、心中で大いに快哉を叫ぶ。先日の「モンガ堂」に続き、またもやの原田三夫宇宙関連児童書である(2019/08/31参照。でも内容はわりと難解な部分も)。ウフフフと店内に進み、計900円で購入する。いや、今日は何だか良い吉祥寺であった。
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2019年09月03日

9/3西荻窪→早稲田と動き回る。

早めの昼食を摂って西荻窪へ。「盛林堂書房」(2012/01/06参照)店頭で二冊を掴み取ってから店内に進み、「フォニャルフ」に大量に補充する。だいぶ景色が変わったので、来西荻の際は是非とも足を向けてみてください。早川書房「ハヤカワミステリ図書目録 1959」角川文庫「闘いの詩/戸井十月」を計200円で購入し、この度「盛林堂書房」と「古書いろどり」(2015/12/11参照)が合同でで出した目録「707目録」をいただく。うひょ〜〜〜〜〜〜、涎の出まくるレアな高額探偵小説と創元推理文庫と古い漫画がいっぱいだぁ〜。蘭郁二郎の署名入り「夢鬼」とか江見水陰の「滑稽童話集」「愛国童話集」とか…あぁ!谷譲次の「モダーン讀本」がっ!とカラーページに興奮する。その後は高田馬場に移動し所用をこなした後、「ブックオフ高田馬場北店」(2012/11/15参照)で平凡社カラー新書「香りへの旅/中井英夫」を210円で購入し、ヒタヒタと、ビル裏の谷間にある神田川沿いを歩き詰め、「古書現世」(2009/04/04参照)にたどり着く。珍しく閉まっている扉を開けて店内へ。現在左壁棚前には、催事用の棚が重なるように置かれている。じっくりと十五分ほど棚に集中し、ようやく奥の帳場に向かうと、向井氏が「今日は最初から気付いてましたよ」とニヤリ。古本屋放置プレイ、ありがとうございます!日本評論社「日米戦争夢物語/佐藤鋼次郎」を1800円で購入する。氏とは、今度の『みちくさ市』(また出ます!詳しい告知は後日に)や『本の雑誌スッキリ隊』や代々木「東豊書店」(2015/10/27参照)などについて語り合い、しばし楽しい時間を過ごす。「日米戦争夢物語」は大正十年刊の、日本と亜米利加の未来予測戦記である。だが、物語の構成が奇妙奇天烈で、ある町で開かれた将軍の講演を聴いた民衆が、その夜それぞれに日米開戦の夢を見て、それを町の有志家の家に宿泊している将軍に、語りに来るという形を採っているのだ。最初に話し出すのは有志家の親戚に当たるオールド・ミスで、女性が男性より地位も体格も優位に立つパラレルワールド的日本に国難が迫り来るという、早速ヘンテコな展開を見せ始めている。こりゃあ素敵だ。挿画は樺島勝一の美しく硬質なペン画である。あれ、なんか挟まってるぞ…古い名刺だ。肩書きが『所澤陸軍航空學校研究部』となっている。軍人さん(とは限らない。研究者かもしれない)もこんなSFモドキの小説を読んでいたのか。栞代わりに名刺をつかっていたのだろうが…よし、受け継いで、この本を読む間栞として使っていこう。函には亜米利加国旗と何故か赤とんぼがモチーフになっており、青い表紙には並べて掲揚されている三角形の亜米利加・日本国旗の上で、二羽の軍鶏が戦闘態勢に入ったレリーフが施されている。
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2019年09月02日

9/2荻窪→中野→高円寺と動き回る。

前回の北原案件について、当の北原尚彦氏に報告すると、『一週間前にすでに訪問しております』との返事が…まさかあんな小さなギャラリーのマイナーなホームズ展示まで追いかけているなんて(展示は昨日9/1に終了)。愕然としながら激しい敗北感に襲われる。このように、案件認定の道はいつも果てしなく険しい。シャーロック・ホームズに関する情報収集にかけては、もはや神の如き手腕を発揮している北原氏。彼が知らぬ未知のホームズ関連物を提示するのは、もはや運動場に落とした針を探すように難しい。だが、だからこそ燃えるのである。案件報告をして、氏にとって未知のものだと認められるのは、十件に一件にも満たないが(これはさすがに…というようなものでも「持っています」「当時新刊で買っています」「封切り時に観に行ってます」などと即座に返されるのだ)、あまりにもその壁が高過ぎるせいか、未知の案件と判定されたその時の喜びたるや、計り知れないものがあるのだ。なので案件ハンターとして、これからも何十回も「持ってます」を聞くことになるだろうが、めげずにホームズ物に目を光らせて行くことにしよう…そんなおかしなことを考えながら、月曜午前十一時半定点観測の「ささま書店」(2018/08/20参照)へ。ちょうど外に店頭棚が引き出され、女子店員さんたちがカラフルな髪を風に揺らしながらドカドカと補充しているところ。サンリオ・ギフト文庫「マッチ売りの少女/文=アンデルセン・絵=味戸ケイコ」角川文庫「世界のミステリー・ゾーン/アーディーケント・T・ジェフリィ」講談社「ミニミニSF傑作展/アシモフ他編」岩波全書「東亞植物/中井猛之進」を計432円で購入する。「東亞植物」の中井猛之進は、言わずと知れた中井英夫のお父さん!北はカムチャッカから南は台湾までの広い『東亞』に分布する植物を、地域ごとに紹介する労作である。巻末の索引だけで八十七ページもある…。
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そして昼食を摂ってから所用で中野へ。中野へ来たら当然「まんだらけ海馬」(2015/02/06参照)を覗き、春陽堂書店 日本探偵小説全集「完全犯罪/小栗虫太郎」(カバーナシ)を108円で購入し、トボトボと『早稲田通り』を伝って帰路に着く。当然途中の高円寺にも立ち寄ると、『あづま通り』の「越後家書店」(2009/05/16参照)も「十五時の犬」(2011/11/22参照)も何故か開いていない。その代わりに通りに面したシャッターを下ろした店舗に、自由に持ち帰っていい古本が、クリップに挟まれぶら下がっているのを見つける。磁石付きクリップは十四個あり、その内の五つに文庫本が挟まれている。端にある紙を見ると、「コトバノニオイブックス」とあり、『クリップに挟んである本はご自由にお持ち帰りください(1日1人1冊まで)』『空いているクリップにはおすすめの本を挟んでください(厚さ1.5cm以内)』と二つのルールが書かれている。こんなところでも、本は読まれるためにひっそりと、息づいているのだ。
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そんな楽しい光景を目撃しながら『庚申通り』に出て、「DORAMA高円寺庚申通り店」に引き寄せられてしまい、店頭のラックから大日本図書「ワールドブック 世界はひとつ 船の旅四九〇〇〇キロ/日下実男 イラスト梁川剛一」を108円で購入し、ようやく寄り道を終える。
posted by tokusan at 17:40| Comment(2) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする