2021年03月31日

3/31吉祥寺で「古本のんき」が暢気に営業開始!

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駅に着いたら北口へ出て東へ。吉祥寺の秘かなシンボル『ゾウのはな子』像を左手に見ながら交番前を通過し、ガード前の長い横断歩道を渡り切る。そこからさらに東へズンズン進んで行く。高架下は素焼きレンガで化粧されたショッピングモールだが、それが尽きる所に郵便局があり、その先で高架下を南に潜り抜け、広めの直線道を進む。すると右の雑居ビル一階、緑のテント看板から察すると、元お花屋さんの場所に、新しい古本屋さんがオープンしていた。店頭にはお祝いの花かごとともに百均文庫箱や百均雑誌かごが置かれている…だが、ガラスの向こうの店内を透かし見ると、棚にはほとんど本が並んでいない、完全なる開店準備中状態ではないか…こ、これは、入って良いのだろうか…まぁ百均は出ているんだし、ドアも開いてそこに小さな店名看板も立て掛けられているので、入店可なのだろう。そう決めつけて店内へ進む。そして本の多少並んでいる部分を見て行くことにする。児童文学・趣味・絵本・暮らし・旺文社文庫・ちくま文庫・角川文庫リバイバルコレクション・澁澤龍彦・カルチャー・思想哲学・100〜300円棚……とにかくこれから出来上がっていくはずの本棚の、ほんの一部の氷山の一角なので、なんとも評し難い状態である。だが、そんな少ない本の中にも欲しい本がチラホラ見つかるので、これからの棚造りへの期待だけは、いやがうえにも盛り上がってしまうのである。とにかくまずは古本を買おうと、100〜300円棚から二冊抜き取る。同光社「角田喜久雄代表作選集十四巻 捕物萬華鏡」(貸本仕様)ポプラ社「風雲紅玉陣/橋爪健」(カバーナシ)を購入する。するとカウンターの向こうで古本の山と格闘し続けてる女性店主さんが、「こんなガラガラの状態で、本当にすみません。これからドンドン本を並べていきますんで、良かったらまた買いに来てください」とマスク越しにニッコリ。あぁ、店名通りに、なんだか暢気な開店スタートと言った感じで、これはこれで面白いなぁ。吉祥寺に来る度に、徐々に徐々にお店が出来上がって行くのを、興味深く観察してみるか。とにもかくにも、開店おめでとうございます!

そして帰りに「古本センター」(2013/07/01参照)に立ち寄り、学藝書林「少女仮面 唐十郎作品集」を150円で購入し帰宅する。
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2021年03月30日

3/30岡崎氏書庫で少し猫と仲良くなる。

正午前に黄砂で多少霞んでいる街に出て、西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)へ。まずは店頭棚から一冊掴み出し、昨日古本を送った大阪に負けぬよう「フォニャルフ」を多少入替補充(訳アリのレア本アリ。気になる人は盛林堂にダッシュ!)してから帳場へ。店主・小野氏と挨拶を交わしつつ、桃源社「加田伶太郎全集/福永武彦」を100円で購入する。そしてすぐさま“盛林堂・イレギュラーズ”に変身し、氏とともに駐車場で盛林堂号に乗り込み、今年二度目の岡崎武志氏邸へと向かう。五十日(ごとおび)のためかいやに混む道を、まだ咲き誇る桜を眺めながら武蔵野の奥地へ入り込んでいく。一時間ほどで岡崎邸着。ドアをノックして「盛林堂で〜す」と名乗ると、今や無鬚の岡崎武志氏がにこやかにドアを開けてくれ、開口一番「仕事で奈良に行って来たんや。「柘榴ノ國」っていう古本屋さんが面白かったでぇ〜」と早速の古本話。奈良以外にも大阪と京都を回り、ちゃんと「善行堂」(2012/01/16参照)さんにも立ち寄ったそうである。そうですか、善行さんお元気でしたか。そんなやり取りをしながら、三人連れ立って地下書庫の様子をまずは見に行く。うわっ、全通路がちゃんと開通してるじゃないですか!そしてすべての本棚がちゃんと見られるじゃないですか!これは素晴らしい!それに最初の空間が、なんか広くなってるじゃないですか!「この階段の降り口にあった本棚を、奥に移動させたんや。実は酔っ払ってもたれかかった時に、倒してしまってなぁ。だから思い切って動かしたんや」とのこと。それにしても、やっぱりちゃんと本棚が見られるのは、気持ちの良いことですねぇ。「ほら、こんな本がありますよ!」と小野氏とともに気になる色んな本を引っ張り出しまくり、思わず遊んでしまう。そして「それは今日のお土産や」と、仕事前の前金のように三冊を譲り受けることになる。小学館「小学五年生8月号ふろく ドラえもんの探偵クイズブック」(昭和55年8月発行。構成は藤原宰太郎。漫画内でドラえもんが『名探偵ホームズセット』を使っているので、完全な北原案件である。これは報告しなければ…)日本出版販賣株式会社「少年少女向優良図書案内」(昭和廿五年発行の当時の児童文学出版の目録を集めた一冊。優良な児童文学以外にも、少年探偵小説や冒険小説も載っていて、とても素敵な資料である!)講談社 少年版江戸川乱歩選集「蜘蛛男/江戸川乱歩 作・中島河太郎 文」。ありがとうございます!
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「少年少女向優良図書案内」には優良じゃないこんなページも。ポプラ社や偕成社の少年探偵小説もちゃんと掲載されているのだ。

というわけで古本による気合いも入り、いざ作業開始。本日の本の量は少なめで、大体五百冊ほど。階段に積み上がったそれらを小野氏が結束し、すぐさま私が玄関に運び出し、さらに天気が良いので門の外にまで運び出し、後の作業を楽にする。途中、岡崎氏からさらに関西の古本土産話などを聞いたり、ナンニャナンニャ。ニャニが始まったニャ!と代わる代わる顔を出す二匹の猫にも挨拶し、特に灰虎猫のリンちゃんとは、初めて少し仲良くなる(指先の匂いを嗅いでくれたぞ!触らせてくれたぞ!)。ただし眼はズ〜〜〜〜〜ッと、びっくり眼であった。そんなこんなで無事に作業終了。どうやら後一回来て、机やベッド周りの本を整理すれば、ひとまず書庫復帰活動が終了するのを確認し、帰路に着く。本日もおつかれさまでした。
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プリティーなびっくり眼のリンちゃん。岡崎さんは何故か“チビ”と呼んでいるそうである。
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2021年03月29日

3/29古本屋さんに招待券をもらう。

朝から仕事を真面目にしつつも、床に古本をドバッと並べ、大阪行き古本の最終調整を図る。そして午前十時半に荻窪に外出し、「古書ワルツ荻窪店」(2020/07/30参照)へ。店頭棚から、文化生活研究會「雲の見方 國際雲級圖解説/三宅武雄譯述」(カバーナシ)南北社「坂口安吾/庄司肇」を計220円で購入する。「雲の見方」は大正十五年刊の訳本なのだが、俳句や短歌や漢詩とともに様々な雲を紹介しており、ほとんどオリジナル本の趣きを見せている。巻末自社広にある、ヴオーリズ著の「吾家の設計」「吾家の設備」はいつの日か読んでみたい珠玉の二冊である。荻窪からの帰路、開店準備中の「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)前を通りかかったので、シャッター枠を外している店主・天野氏に「チィッス」と挨拶すると「あっ、古ツアさん、ちょっと待っててください」とまだ薄暗い店内に駆け込んでしまった。なんだろう?と思っていると、すぐに笑顔で出て来た氏が、細長い赤い紙片を差し出した。「これ、まだ行ってませんか?良かったらどうぞ」。おぉぉ!もう始まっている『神奈川近代文学館』の『永遠に「新青年」なるもの』の招待券じゃないですかっ!「いいんですか?物凄く嬉しいです!」と本当に大喜びし、遠慮なくいただくことにする。いやぁ〜、嬉しいなったら嬉しいな。コンコ堂さんに、大感謝!いつ観に行こう。
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ささやかな昼餐後、古本箱を大阪「梅田蔦屋書店」に送り出す。今回コンシェルジュの指令により、ミステリ多めとなっておりますが、いつものように奇妙な趣味本も混ぜ込んでありますので、数日後に古書棚に品出しされた際は、胡散臭そうに眺めて楽しんでくだされば幸いです!そしてそのまま高円寺に足を延ばし、「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)で、情報センタ―「人生はデーヤモンド」冬樹社「嵐の中をアカ犬が走る」共に篠原勝之を計200円で購入し、さらに駅の南側に出て「大石書店」(2010/03/08参照)でサントリー株式会社「書き下ろし 酒の寓話」を200円で購入し、すっかり春めいた『馬橋公園』の桜の樹の下で、平凡社「ブラウン奇譚」を読み耽ったりして、気温が下がる前に帰宅する。
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2021年03月28日

3/28二駅分歩いて古本を買う。

天気が少し落ち着いた午後に、武蔵境駅の北に流れ着く。今までならすぐさま「浩仁堂」(2011/02/15参照)に向かうところだが、残念ながら現在は店売りをやめてしまったのだ(2021/01/13参照)…訪ねるのが楽しみなお店のひとつだったのに…そんな大きな喪失感を胸に抱えて、隣りのラーメン屋に行列が出来ている「おへそ書房」(2019/07/28参照)に到着。店頭棚からPARCO出版「NATIONAL LAMPOON」(米パロディ雑誌表紙のアートワーク集。企画はツルモトルームだ!)ブロンズ社「現代旅風俗絵巻 HOW TO NIPPON/安達忠良」(1970年代に「女性セブン」に連載されたイラストルポを核に編まれている。帯背の惹句『ヤングの旅ノート』が時代を感じさせる)を見つけ出し、計200円で購入する。いや、このようにして、ちゃんと古本が買えるのだ。いつまでも喪失感を抱えていてもしょうがない!と景気づき、電車には乗らずにそのままテクテク東に歩き始める。玉川上水近くの桜並木の桜吹雪を浴びながら、やがて三鷹にたどり着き、「りんてん舎」(2019/03/30参照)へ。雨仕様のため、表に出ているのは店頭棚のみである。中央公論社「ベティー・ブープ伝/筒井康隆」鱒書房 現代捕物シリーズ「暗黒街の午前〇時 刑事部屋/樫原一郎」を計660円で購入する。昭和三十一年刊の「刑事部屋」の装釘は田名網敬一。
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この時、若干二十歳の学生なのに、もうこんなお仕事をしていたのか…すげぇな。そしてええぃ、ここまで来たらついでだっ!と吉祥寺までテクテク歩き、「よみた屋」(2014/08/29参照)へ。ビニールが掛けられた店頭棚から、ユナイト日本支社「八十日間世界一周」プレスシート、ワーナーブラザーズ「燃えよドラゴン」映画パンフを引っ張り出し、計220円で購入する。よっしゃぁ!今日も古本屋さんを巡り、楽しく古本を買ってしまったぞ!
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昔のプレスシートも無闇におっきかったんだ(これはB4サイズ)。映画界の伝統なんですかね。
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2021年03月27日

3/27線路沿いに歩いて古本を買う。

昨日買った「槐多の歌へる」初版を読んでいると、次第次第に恐ろしいことに気付いてしまう…なんと誤植だらけなのである。よっぽど急いで出版したのか、奥付が間違っているのはすでにお知らせしたが、冒頭の山本鼎の『序』にも誤植があり、その後の詩にも、意味の通じないところは誤植度高し!なのである。色んな意味でスゴい本だ…そりゃぁ、新版を出さざるを得ないな、これは。あまりに気になるので誤植部分を昭和新版で確認してみると、もちろんちゃんと直っているのである。そして初版の印刷者は『大東印刷會社 關孝作』だが、新版は会社名なしで住所も異なる『山本源太郎』に変わっている…誤植のせいで、替えられたのだろうか…ブルブル。

そして本日はお昼過ぎに上北沢に流れ着いたので、京王線の地上線路を伝うようにして新宿方面にテクテク進む。下高井戸で「豊川堂」(2016/ 07/04&2008/09/09参照)に寄ると、数人の先客がいる賑やかな光景。早速その中の一人となり、棚を眺める。右側の壁棚にて、天竜社「或る兵器発明家の一生/南部麒次郎」を見つける。昭和二十八年刊の、三八式歩兵銃や南部式自動拳銃を開発した兵器発明の権威の自叙伝である。見返しに息子による贈呈印あり。千円で購入する。再び線路沿いをトボトボ歩き続け、明大前で「七月堂古書店」(2018/01/13参照)に立ち寄る。こちらもお客さんが入っているな…今日は何だか嬉しい古本日和なのだろうか?そんなことを戯れに思いつきつつ、店内をウロウロ。前から売れ残っていた若木書房「タイガーミステリーブック2 きみは超能力者 ビックリ!SF科学情報/五竜健二」を500円で購入しつつ、「また気付かなかった〜」と狼狽える七月堂さんと、アレコレお話し。お元気そうで何よりです。
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「きみは超能力者」は表紙が強烈。

そして大阪「梅田蔦屋書店」古書コンシェルジュより、四月の終わりにあるフェアが行われるので、それに合わせて補充古本に、あるジャンルを増量して欲しいとの依頼あり。期待に応えられるよう、蔵書を引っ掻き回しつつ、古本屋巡りで補充しつつ、近々発送いたします!
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2021年03月26日

3/26「槐多の歌へる」初版!

月末のせいかワチャワチャ生活が続いているので、家からは余り出られない状態である。だが、このワチャワチャを抜け出し、精神の安定を図るために、今日は古本を買うぞ!と様々な些事を投げ出して、すっかり春の外に出る。阿佐ヶ谷駅方面に向かい、まずは「千章堂書店」(2009/12/29参照)を覗く。すると左側通路の映画棚最上段に、背の文字が薄くなっているが、朝日書院「大根役者・初代文句いうの助/伊藤雄之助」が900円で売っていたので、スパッと迷わず購入する。
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そんな幸先の良さに乗せられるようにして、足取り軽く荻窪へ向かう。最初に「古書ワルツ荻窪店」(2020/07/30参照)を見るか、それとも街の中に入り込んで「竹中書店」を偵察するか…迷いながらも裏通りを進み、横丁から商店街に出て「竹中書店」(2009/01/23参照)前に立つ。ほぉ、店頭200均台に、何だかたくさん補充されているじゃぁないか。先にこちらに来て正解だった。そう確信しながら、見慣れた均一本の所々に混じる、新顔古本たちに熱い視線を落としまくる。今回は、素晴らしい補充が為されている!と実感しつつ、たちまち腕の中に四冊を抱え込む。そして古い焦げ茶色のクロス装の丸背の本に目が留まったとき、心臓がビタッと止まりそうになる。うっすらとその背に浮かび上がる文字の中に“槐多”の二文字を発見したのだ。抱えていた本を台の上に置き、そっとその本を抜き出す。アルス「槐多の歌へる/村山槐多」(函ナシ)じゃないかっ!店頭台で、こんな本と出会えるなんてっ!…だが、俺の知っている「槐多の歌へる」とは、装幀や本の厚さが全く異なる本だ。奥付を見ると『大正九年六月(発行日は『大正九月六月』と痛恨の誤植になっている!)』とある…そうか、初版はこんな本だったのか。よし、家に帰ったら持っている「槐多の歌へる」と見比べてみるか。他には桃源社マゾッホ選集1「毛皮を着たヴィーナス/種村季弘訳」中央公論社「つゆのあとさき/永井荷風」(昭和六年初版。これも嬉しい!)「おとうと/幸田文」(函ナシ)深夜叢書「彼方より/中井英夫初期作品集」(函ナシ。アングラ演劇王宛の献呈署名あり。これも嬉しい!)を計1000円で購入する。ぐおおおおおおおお、大収穫だ!
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というわけで家に戻り、二冊の「槐多の歌へる」を見比べてみる。既に持っていた方は、昭和二年の出版で、版数表示はナシ。今日買った方も版数表示はないのだが、編者の冒頭『例言』の日付けが一九二〇年六月と、発行日と同じなので初版だと考えられる。厚さの違いは紙質によるもので、本文の内容はページ数も含め、変わっていないようだ。ただ装幀・扉・口絵は大きく異なり、昭和版の装幀は恩地孝四郎だが、シンプルな大正版は不明。大正版の口絵は、冒頭に槐多のデスマスクと住居の写真が掲げられ、後は章ごとに四枚のデッサンやラフスケッチ、それに自画像が挟み込まれている(昭和版は冒頭にデスマスク写真があり、目次の後に原色口絵一枚とモノクロ写真口絵四枚がまとめられている)。いや、これは素晴らしいものが手に入った。古本屋さんに行くのは、やはり無類に楽しく刺激的で、人生に必要不可欠なことであるな。
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左が大正版で右が昭和版。ともに函が無いのは残念である。大正版の後見返しには「美術書・一般書 春光堂書店 東京・阿佐ケ谷」の古書店ラベルあり。奥付の端にも、小さな「春光堂書店」の印あり。手持ちの古い資料に当たってみても、お店の名前は見つからない。戦前のお店だろうか?
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2021年03月24日

3/24大正十二年の「半七捕物帳」!

一日ワチャワチャ過ごしてしまっているので、どうにも古本屋さんには行けそうにない。だが、新たなヤフオク落札品が到着し、古本不足の心を優しく宥めてくれた。新作社「半七捕物帳 第壹輯/岡本綺堂作」である。大正十二年五月の再版であるが、ちゃんと函付きで561円の激安値にて落札す。新作社は辻潤の「ですぺら」を出した出版社で、その「ですぺら」と「半七」の巻末自社広告を見ると、「戯曲 呪いの聖者/村田啄」(主役はラスプーチン)「蠅と螢/佐藤惣之助」「東京夜曲 影繪は踊る/正岡いるる」などが掲載されており、なかなかエッジの立った出版社であったことが想像出来る。「半七捕物帳」は大正時代に異なる出版社から三回に渡り本が出されているが、この新作社版「半七」は、大正六年の平和出版・大正十年の隆文館に続く出版で、全五巻という一番大掛かりなものであった。函はボール紙の機械箱で、今様色のクロス装も極々シンプルであるが、やはり大正時代の本は、確かな物質感があり、とても味わい深いものである。冒頭には綺堂の『はしがき』があり、江戸時代の探偵物語は科学的ではないが、特色があるとすれば背景をなしている江戸のおもかげの幾分をうかがい得られる点ではないか、云々と書かれている。目次を見ると『お文の魂』『石燈籠』『湯屋の二階』『春の雪解』『猫騒動』『お化師匠』『筆屋の娘』『帯取の池』『朝顔屋敷』『勘平の死』の順番となっている。こういう時に物凄く便利な、雑誌掲載時の誌面を覆刻した東都我刊我書房「初稿半七捕物帳六十九話集 壹 江戸時代の探偵名話 半七捕物帳」を引っ張り出し、初出一覧と見比べてみる。…だいぶ発表順とは異なり、後の巻へ回されたお話もあるようだ…ちなみに初出順は『お文の魂』『石燈籠』『勘平の死』『湯屋の二階』『お化師匠』『半鐘の音』(壹輯未収録)『奥女中』(壹輯未収録)『帯取の池』『春の雪解』『朝顔屋敷』『お照の父』(壹輯未収録)『猫婆』『筆屋の娘』である。『猫騒動』は『猫婆』を改題。そして本文を見比べてみると、漢字の開きや送り仮名の変更、季節表記の変更などなど、細かい異同がずいぶん行われているようだ…などとやりながら本文の流れに心を任せると、たちまちグイッと頭を引っ張られ、江戸の世界にトプンと沈んでしまう。全く、綺堂の文章は、柔らかな絹のように心地良い。おかげで、何度目かの「半七捕物帳」を、飽きもせずに読む羽目になりそうだ。
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2021年03月23日

3/23これもまた篠山紀信写真集。

午後に向こう側にボールを投げている状態の仕事の〆切があるので、早めに戻る心づもりで午前のうちにバタバタと外出する。総武線に乗って外堀端を眺めていると、桜はまだ三〜四分咲きといったところである。水道橋駅で下車し、空気は冷たいが、もはや春の陽光が眩しい『白山通り』を南下していく。古本屋さんの店先を覗き込みながら、ブーツを履き臙脂の袴を身に着け、鯛焼を頬張りながらそぞろ歩く女子卒業生と擦れ違ったりしながら、『神保町交差点』を経由して『靖国通り』に入る。そして歴史資料系のお店「慶文堂書店」(2012/02/14参照)店頭で良い物を掴む。銀座松坂屋「横尾忠則そしてインド篠山紀信」である。篠山紀信が横尾忠則を様々なシチュエーションで撮影し、さらにはインド旅行に同行して見たものを捉えて来た写真の展覧会の写真集パンフレットである。1976年刊。写真の下には表紙から全ページに渡りつつ表4まで、横尾と篠山の対談文が流されている。一見すると篠山紀信撮影のインド紀行本みたいな作りだが、中を見て吃驚。大量の当時横尾が気になる人との記念写真が多数収まっており、深沢七郎・悠木千帆(樹木希林)・大島渚・西城秀樹・南洋一郎!・柴田錬三郎!・内田裕也・和田誠・宇野亜喜良・四谷シモン・三島由紀夫・美輪昭宏・高橋睦郎・田中一光・楳図かずお・平野威馬雄・唐十郎・亀倉雄策・ユリゲラー・手塚治虫・浅丘ルリ子・石原裕次郎・高倉健・及川正通・谷内六郎・川上哲治&大下弘(二大名選手にユニフォーム姿で挟まれた横尾が大胆不敵過ぎて笑える)などなど、貴重な姿が拝めるのである。ニタニタしながら五百円で購入する。そして『駿河台下交差点』の「光和書房」(2021/02/19参照)で店頭古書棚と格闘し、民間傳承の會「服装習俗語彙辞典/柳田國男編」講談社「屑/江崎誠致」を計900円で購入して、速やかに帰宅する。
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想像以上に素晴らしい篠山紀信写真集である。対談冒頭でこの企画が始まった経緯が語られているのだが、天声出版の内藤三津子(後の薔薇十字社の創業者である)が横尾に「私のアイドル」という写真優を出さないかと持ちかけたのがきっかけなのだそうである。また滞印中、篠山はよくサイババに間違われたそうである…その原因はもちろんあのトレードマークのアフロヘアのせい…。
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2021年03月22日

3/22「左川ちか資料集成」再び!

何も変わらぬような、緊急事態宣言解除の日。朝から溜まったデザイン仕事をこなしていると、いつの間にか午前十時過ぎ。息抜きに荻窪にテクテク向かい、「古書ワルツ荻窪店」(2020/07/30参照)で光文社「長編推理小説 夜を探がせ/石原慎太郎」を110円で購入。さらに「藍書店」(2018/12/24参照)にて大日本猟友会「狩猟読本」を220円で購入し、家に戻って仕事の続き。一日のあっという間さを実感しながら、夕方近くになって、不要&読了本を「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)に持ち込み、近々出来る古本屋さんの話などしながら買い取っていただく。さらに午後五時、やけに警官が目を光らせている阿佐ヶ谷駅にて、カバーデザインを担当した新刊本、えでぃしおん うみのほし「左川ちか資料集成 増補普及版/紫門あさを」を受け取る。モダニズム詩のガイスト・左川ちかの新刊である。とは言っても、以前少部数出版された「左川ちか資料集成」を小型化&廉価化&増補したもので、函・別刷冊子・糸綴・スピンを省いてソフトカバー化し、値段を大幅に抑えているのである。その高値の元本はすでに売り切れで、いかに好事家や研究者が左川ちかに飢えていたと言う証拠であるが、まだまだあの冷たく強力に硬質に煌めく詩編群を、多数の雑誌から発掘し誌面復刻したオリジナルに接したいと言う人々の声に応え、今回の増補普及版出版の運びとなったわけである。今週末には「盛林堂書房」(2012/01/06参照)の通販サイトや店頭で発売開始されると思うので、モダニズムの夢を追い求める方々は刮目してお待ち下さい。ひとつの詩に、こんなにもバリエーションがあるのかと、良くもまぁこんなにも探し出したものだと、驚くこと請け合いの一冊なのです。
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2021年03月21日

3/21東京・吉祥寺 あぷりこっとつりー

今日も雨の中を吉祥寺に流れ着いてしまい、強風に傘を持っていかれそうになりながら、判で捺したように「よみた屋」(2014/08/29参照)に来てしまう。店頭棚はビニールシートが掛けられた雨仕様だが、ビニール越しの歪んだ本の背に視線を素早く走らせて一冊抜き取り、さらに店内の50均文庫棚から二冊…ほぼ毎日来ている感じになってしまったが、それでも買えるんだもんな。いや、全く持って頼もしいお店だ。東方社 新編現代日本文学全集「鹿島孝二集」青木文庫「武装せる市街/K島傳治」新潮文庫「聖ヨハネ病院にて/上林曉」(昭和二十四年初版)を計220円で購入する。

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その後は、そう言えば以前偶然開店準備を見かけたあのお店は、どうなっているだろうか?と、北口に出てパルコ向かいから『中道通り』を西西北に歩き始める。辛抱強くグングン進み、北側の七本の脇道をやり過ごして三百メートル強…気付けばいつの間にか「古本屋さんかく」(2009/05/12参照)が奥にかつてあった、建物と建物の隙間道の前である。あっ、オープンしている。『絵本と雑貨』の新しいお店である。手を消毒して中に入ると、おおっ!ちゃんと古本の絵本が並んでいるではないか。右壁沿いは奥深い棚が連続し、絵本の古本・洋絵本の古本・セール絵本がまずは収まり、その後に木の玩具が陳列されていく…棚の上にはぐりとぐらが巨大かすてらを焼いているフィギュアが!フロア中央には新刊絵本ラックが二台縦列し、左側ゾーンは主に木製玩具類と雑貨が優し気に並んでいる。早速古本絵本棚に意識を集中し、細く固い背を次から次へと読み込んでいく。途中、路上で「あっ、絵本だ。これは突撃突撃〜」と勇ましく若人カップルが入店して来るが、気にせずに絵本を追い続ける。CBSソニー出版のartbackシリーズ(2021/02/09参照)を一冊発見するが、1600円か…と二の足を踏んでスルー。結局カバーナシの1974年刊、文化出版局「ぶたのしあわせ/ヘレン・オクセンバリ―作 矢川澄子訳」を購入する。artbackシリーズは、しばらく悩むことにしよう。いつの間にか開店おめでとうございます!
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2021年03月20日

3/20函の細工に魅せられて。

昨日は午前中に家を出て、荻窪を定点観測。「古書ワルツ荻窪店」(2020/07/30参照)では學風書院「おばけの歴史/江馬務」の帯付きを店内で見つけて喜び、さらにミステリゾーンで古めの推理小説が何冊か出されているを確認し、函の細工が凝っている東都書房「一本の鉛/佐野洋」を選んで計880円で購入する。「一本の鉛」は、本全体に施された写真をモチーフにした昭和三十年代の先鋭的デザインもさることながら、その函の一部が表紙のデザインに合わせて刳り貫かれているのが刺激的。そう言えば巻末自社広に載っている山田風太郎「首」も、函に大きな丸い穴が空き、表紙のタイトルが見えている仕掛けであった。書店で目を惹くために、お金かけていたのだろう。
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一旦家に戻り、午後に再び外出。今度は高円寺に向かい、いつもの「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)で岩波書店「夢の女・恐怖のベッド/ウィルキー・コリンズ」を百円で購入する。高円寺でのお買い物はこれのみであった。そういえば「探偵大活劇 疑惑の影」を読了。小説家と悪党とさらなる悪党と仙人と市長と女探偵と警官が、上へ下への安っぽい大騒ぎを展開する、当時の活劇映画的内容であったが、意外過ぎる衝撃のメタ的結末に度肝を抜かれる。物語はグダグダなのに、その閉じ方が鮮やか過ぎて、もはや言葉もありません…。さらにそういえば、蒼社廉三の「ミステリー 戦艦金剛」も読了。艦内で殺人事件が発生したところで、即座にその密室トリックを見破ることは出来たのだが、結局最後まで犯人はわからずじまいのていたらく。最後の最後にある出来事で、その密室トリックが偶然暴かれることになるのだが『これはなんと大仕掛けで鮮やかなバレ方だ!』と甚く感動し、カタルシスを覚える。作者はこれを書きたかったがために、長い長い時間をかけて、原稿用紙を文字で埋めて来たのではなかろうか。

そして本日はまたも吉祥寺に流れ着いてしまったので、「よみた屋」(2014/08/29参照)をまたも頼りとし、ダイヤモンド社「六本脚戦争/アイザック・アジモフ 福島正美訳」(“アシモフ”ではない。“アジモフ”表記なのだ)安藤建設株式会社「一〇〇年一〇一歩」を計220円で購入する。「一〇〇年一〇一歩」は昭和47年刊の建設会社の記念本。会社が創立した明治時代から現代までを、世相風俗の動きを核にして、時代時代の代表的な建築と、安藤建設が手掛けた建築施工を豊富な写真で紹介する、なかなかに凝った構成を見せる、拾い物の一冊である。
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分離派についてのページもあり、その昔、省線沿いに建つ『東京中央電信局』が大きく掲載されている。
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2021年03月18日

3/18「疑問の鍵」続報。

夕方に吉祥寺東町に流れ着いたので、ヨタヨタと駅方面に足を向け、まずは「よみた屋」(2014/08/29参照)の店頭棚に張り付く。東京文藝社「無頼の系図/杜山悠」を110円で購入する。第47回直木賞候補作品か…。次は「古本センター」(2013/07/01参照)にて処分品棚とその脇に積み上がる処分本タワーに精神を集中し、ケイブンシャの大百科「王貞治大年鑑■現役引退記念号」洋泉社「人生解毒波止場/根本敬」を計230円で購入する。最後に「バサラブックス」(2015/03/28参照)で百均棚から紀伊国屋書店「われら不条理の子/P・V・D・ボッシュ 加藤周一訳」を100円で購入し、役目を果たした思いで帰宅する。

そして昨日、作家&ホームズ研究家の北原尚彦氏より電子来信アリ。題名は『疑問の鍵』。すわ!昨日届いた謎の大正時代の翻訳探偵小説『探偵大活劇 疑問の鍵』の正体を知っておられるのだろうか!とメールを開くと、内容はそんなことではなく、なんと北原氏もこの「疑問の鍵」をヤフオクでチェックしておられたとのこと。以下はそのメールより引用。『期限直前、底値の一件しか入札されてないのを見て、「2000円かあ。安いなあ。ちょっかい出しちゃおうかなあ」と考えたのですが、「待てよ。これ、もしかして小山さんなんじゃないか?」と、ピカっと閃きまして。見える情報の範囲からホームズ・ドイル関係ではなさそうですし、スルーすることにしたのです。』とのことであった。…いや、もう閃きというより、これは超能力の類いですよ。まるでテレビ刑事ドラマ『特捜最前線』に時々登場した、長門裕之演じる“稲妻の蒲生”並みの閃きですよ…世の中は、広いようで狭いものである。おかげで安く落札出来ました。感謝感謝であります。ちなみに「疑問の鍵」を読み進めて行くと、新しい文体の面白い活劇小説を、24時間で書けるか書けないか五千ドルの賭けをした、流行小説家と大金満家。小説家は山奥にある金満家の別荘を一日借り受け、そこで執筆に専念することにしたのだが、タイプライターを据えて、さて書こうとすると、別荘に謎の歓迎されぬ訪問者が、次から次へと侵入して来る。しかも別荘に入るための鍵は、ただ一本で、それは小説家が預かっているのに、侵入者は皆その一本きりしかないはずの鍵を所持しているのだ。というわけで、小説家はその侵入者と格闘したり様子を窺ったり誰何したり歓迎したりと、なんだか別荘コントのような展開を見せている。おかげで、まだ一行も書いていないのである…映画『シャイニング』のジャック・ニコルソン状態……。
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今回は「疑問の鍵」モノクロ口絵の写真であります。何故か鍵を持っている女のスカートの裾を捕まえ、激しく誰何する小説家…早く小説書けよ!
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2021年03月17日

3/17“鍵”シリーズ?

先週の水曜日同様、本日も夕方に上祖師谷に流れ着いてしまったので、今回はちゃんと仙川の「文紀堂書店」(2015/03/31参照)に立ち寄るぞ!と勇躍向かってみたら、シャッターアウトのお休みであった…ガックリ。しかしすぐに気を取り直し、駅方面に回り込んで「石本書店」(2017/07/02参照)を訪ねる。店頭棚を端から端まで精査し、新潮社「唐人お吉/十一谷義三郎」(函ナシ初版)あかね書房 現代子ども文学選8「ケンチとユリのあおい海/長崎源之助」(1971年初版箱付き。装幀挿絵・司修)を計200円で購入する。「ケンチとユリのあおい海」は横浜が舞台で、主人公はダルマ船に住む少年である。司修の描く横浜港付近の風景が、黒く陰鬱で何とも言えない美しさを各ページから放っている(あとがきを見ると、ちゃんと横浜港をロケハンしたそうである)。そんな二冊を携えて家に帰り着くと、やった、ヤフオク落札品が届いているではないか。盛陽堂「探偵大活劇 疑問の鍵/紫燈譯」。ライバルナシの二千円にて落札す。見たことも聞いたこともない、大正九年刊の探偵小説である。フフフフ、こういう海のものとも山のものとも知れぬ謎の小説、久しぶりだな…冒頭を少しだけ読むと、舞台はニューヨークで、流行作家と金満家が高等遊民が朝から集まる『シンガークラブ』で、二十四時間で今までの作風と異なる活劇小説が書ける書けないかで、五千ドルの賭けをするところから始まっている。うむむむ、一体何の翻訳なんだろう。まぁ楽しく読み進めることにしよう。出版元の盛陽堂は浅草の出版社で、他にも「探偵大活劇 金の鍵」という本も出している…“鍵シ”リーズなのか?
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表紙は文字だけで素っ気ないので、本扉の写真を。
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2021年03月16日

3/16本日も軽・古書狩り。

五月のような暖かさだが、基本的には家に閉じ篭り、なんやかんやと些事を片付けたり読書したりしながら過ごす。そして昼食後にちょっとだけ外出。高円寺まで足を運び、『庚申通り』の「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)へ。ふむぅ、店頭棚に薄い古書が固まって出されているな…よっしゃ、今日も軽く古書狩りだ!と嬉しくゴソゴソ品定めし、二冊を確保する。さらに木箱から一冊、さらに棚の左寄りからもう一冊抜き取り店内へ進む。老年カップル&若年カップル、それに単身のお客さんがおり、平日午後なのに賑わいの様相。寶珠會「靈山高野/新丸快寶」(昭和六年四版の写真豊富な高野山ガイドブック。巻頭折り込みの『高野山平面圖』が壮絶で、高野山の属するすべての寺と主な墓所が掲載されており、まるで生命進化樹形図みたい!)大日本雄辯會講談社 昭和十年少年倶楽部新年號附録「出世くらべ譽くらべ」フレーベル館「廣田尚敬写真集1 蒸気機関車」自動車工業振興会「自動車ガイドブック VOL.7 1960〜61年版」を計600円で購入する。「自動車ガイドブック」は『第7回全日本自動車ショー記念出版』の国産自動車事典である。新型車のモノクログラビアページに、心ときめかずにはいられない。乗用車・バス・トラックの他にも、消防車・3輪車・スクーター・モペットなどなどなど…フフフフフ、バキュームカーさえ載っているではないか。おっ『プリンスクリッパー衛生車』は、岡本喜八の奇天烈面白映画『ああ爆弾』に出て来るヤツ(大活躍するのだ)だ。あぁ、さらに3輪車のバキュームカーもちゃんと載ってる!などと楽しめる一冊なのである。
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そしてお店を出ようとした時、一口横の腰高棚天板に置かれたチラシが目に留まる。おぉ!今度『県立神奈川近代文学館』で開催される展示、『永遠に「新青年」なるもの』だ。これは何が何でも密やかに観に行かなくてはならぬ催し。探偵小説関連は言わずもがなだが、ファッションページ『ヴォガンヴォグ』の中村進治郎についての展示はあるのだろうか…くくくぅ、楽しみ楽しみ。
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2021年03月15日

3/15本日の軽・古書狩り。

朝からちょっと難しい仕事とビシバシ斬り結ぶ。諦めずに粘った甲斐があって、どうにか正午前に形となる…ホッ。上手く通るといいなぁ…。昼食を摂ってから午後に、暖かな陽気を楽しみながら、四つ辻でバスに飛び乗り中村橋へ。そこから西武池袋線に乗って保谷へ。もちろん目的地は、店頭百均棚がいつでも楽しみで楽しみでしょうがない「アカシヤ書店」(2008/12/17参照)である。スパスパとすぐさま四冊を手にし、店内の百均棚でも最上段の本を爪先立ちして懸命に取り出し、計五冊を550円で購入する。講談社「落語横車/和田誠」鹿島出版会「パッケージ・デザイン/金子修也」「建築家の発想/石井和紘」(献呈署名入り)架空社「バルコニー/高畠純」南光社「學校家庭 文明傳染病の話/本村秀繼・加藤洽三」が本日の収穫。「バルコニー」は昭和六十三年出版のイラストレーター高畠純の絵はがき本。十六枚ちゃんと揃っていてニンマリ。「學校家庭 文明傳染病の話」は昭和十年刊の、タイトル通り昭和初期にまだまだ猛威を奮いまくっている様々な恐怖の伝染病から始まる、衛生思想の分かり易い啓蒙本。スペイン風邪についても記述アリ(その予防法を見ると、今の新型コロナ対策となんら変わらないのであった…)で、内容の恐ろしさに反して、タイトルロゴがプリティー過ぎる一冊である(家に帰ってこの本について調べてみたが、皆無と言って良いほど情報ナシ。国立国会図書館にも収蔵されていないようだ…)。
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ちょっと軽めの良き古書狩りであった…と駅に戻り、さらに電車に乗って二駅戻って石神井公園駅で下車。「きさらぎ文庫」(2009/01/21参照)の外棚に立ち寄り、函ナシの社会運動資料刊行会「(復刻版)三菱川崎労働争議顛末」を300円で購入し、ロータリーから阿佐ヶ谷行きのバスに乗って帰宅する。
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2021年03月14日

3/14東京・阿佐ヶ谷 雑踏

強風の午後に吉祥寺南町に流れ着いたので、その風と日曜日の吉祥寺の人波に抗い、古本屋さんを素早く巡って行く。「バサラブックス」(2015/03/28参照)で毎日新聞社「放浪の画家 長谷川利行展」を200円で購入。さらに先に進み、「一日」(2017/08/11参照)でPARCO出版「ダダ 現代美術の源泉/ケネス・クウツ」「シュルレアリスム イメージの改革者たち/R・カーディナル R・S・ショート」日本生産性本部「公害の未来像/加藤辿著 真鍋博絵」(ほぼ全見開き真鍋博のイラストだらけで、表やグラフでさえ真鍋が描いている)を計990円で購入し、阿佐ヶ谷へと戻る。そして帰り道の「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)店頭棚に、桃源社「犬狼都市(キュノポリス)/澁澤龍彦」が出されているのが目に留まり、矢も楯もたまらず110円で購入する。ちゃんと帯付き初版で、正誤表(恐ろしいことに、表紙と扉のタイトルギリシャ文字が間違っているのだ!)付き。そういえば以前コンコ堂では、『犬狼都市』掲載の文芸誌、丸善株式會社「聲7号 1960・春」を店頭で買っていたのだった(2017/04/26参照)。サンキュー、コンコ堂!おかげで心弾むぞ!
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というわけで、家に帰ってから初出誌とともに記念撮影。

と浮かれながら、『旧中杉通り』から『中杉通り』に出て北上していると、豚骨醤油ラーメンで有名な「大慶」の隣りの隣りに、古道具屋さんの後釜に収まった、若者が営んでいる新しく渋い古着屋さんがあるのだが、その店頭に古本が三十冊ほど並べられているのだ。
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台や小さな椅子の上に、ファッション・アート・写真集・カルチャー雑誌・文庫本など。足を止めてムムと眺めていると、中から髪の毛が眺めの山ア賢人風青年が出て来て、「いらっしゃいませ」と言うや否や、こちらが見ている古本ではなく、周りに置かれたサボテンの鉢を薦め始めた…古本よりサボテン推しなのだな…。そんなことを思っていると、背後にサボテンに興味を持った女性が現れ、我が意を得たりと青年は、そちらに大攻勢を掛けるのであった。何にせよ、古本が売っているのは良いことだ。ベネディクト・タッシェン出版「グラフィックの魔術/ブルーノ・エルンスト」を購入する。それにしてもこの「雑踏」という、洋服屋らしからぬ店名が文学的でイカしている。
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2021年03月12日

3/12古本トレードと二十一世紀の三津木春影!

午前のうちにフラッと荻窪へ。最初に「藍書店」(2018/12/24参照)でPARCO出版「こぶたくんの恋ものがたり/ウルフ・ニルソン作 フィベン・ハルト絵」を110円で購入し、「古書ワルツ荻窪店」(2020/07/30参照)に雪崩れ込む。すると絵本棚の前に屈んでいる時に、探偵・幻想・怪奇小説単行本未収録作品発掘家の善渡爾宗衛氏に発見され、先日完遂した仕事の話などする。さらに奥のゾーンに踏み込んで棚を見ていると、中央通路の棚の上に痩身が飛び出した男が一人近づいて来る…あっ!古本神のミステリ評論家・森英俊氏ではないか。帽子の下の髪がだいぶ伸び、神としての威厳が増しているようだ。何はともあれ、お元気そうでなによりです。お互いに本の背から目を離さずに、棚を挟んで会話する。氏はやはりこのコロナ騒動で、他県には行かず、即売店や古書店巡りも控えているとのことであった。そして「コロナ騒ぎが治まったら、「ハナメガネ商会」(2014/04/26参照)に行きましょう」とお誘いいただく。ぜひぜひ。店内で氏と別れ、婦人画報社「MEN'S CLUB BOOKS-SE 男の一流品図鑑」ペヨトル工房「ロクス・ソルス/レーモン・ルーセル」を計660円で購入し、帰宅する。

夕方に古本を携え再び外出し、西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)の『フォニャルフ』棚に補充する。そして店主の小野氏とお仕事の話をしていると、北原尚彦氏がヤアヤアと登場。すぐさまホームズ翻案捕物小説の話に打ち興じると、実は北原氏がすでに所持していた佐々木壮太郎の単行本に、件の翻案捕物『謎三味線』が収録されていたことがわかったそうである。「いやぁ、やっぱりちゃんと読まないといけませんねぇ」…いや、やっぱり持ってたんすか!というようなことがあり、トレードのブツを拝受する。小峰書店「ベンケーさんのおかしな発明/大海赫」(カバーナシ、印・記名アリ)福音館書店「かがくのとも551号 びっくりてじなでだましっこ/佐伯俊男」岩崎美術社「方寸の昼夜 岩佐なを銅版画蔵書作品集」である。やはり大海赫のオリジナル本が嬉しい!表紙がもはや色盲検査表のようで、早速その異常さが伝わって来る。北原氏によれば、タイトルから推察してSFっぽい話なのかと思っていたら、だいぶファンタジー寄りだったとのこと。これは読むのが楽しみである。…などとワチャワチャ楽しくやっていると、カバーデザインを担当した盛林堂ミステリアス文庫の新刊「三津木春影翻案探偵小説集 浮出た血染めの手形/三津木春影翻案・北原尚彦編」が大量に到着した。おおぅ、何も材料がない投げっ放しジャーマン的依頼だったのに、良い本に仕上がっているではないかと、自画自賛する。役得として受け取った献本に、編者の北原氏にサインしていただく。ドイル・フリーマン・ルブランの翻案が、早く読め!とページの間から呼び掛けて来るが、圧巻は三十ページに渡る北原氏の解説で、古本発掘話がひたすらに楽しいのである。予約は3/14から盛林堂書房の通販サイトで、販売は3/20から盛林堂店頭&通販サイトでスタート。素敵にねじ曲がり時代がかった、和に染まった外国探偵小説好きの皆さま、刮目して販売開始をお待ち下さい!
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2021年03月10日

3/10消しゴムで消してやる!

夕方に上祖師谷に流れ着いたので、「文紀堂書店」(2015/03/31参照)に寄りつつ仙川駅に出ようと思っていたら、哀れ道を間違え、突然駅の近くに出てしまう。仕方ない、おとなしく帰るか…そう決めて京王線と井の頭線とすぎ丸を乗り継いで阿佐ヶ谷駅着。三たび吹き荒れ始めた冷たい風に抗い、『旧中杉通り』を進む。途中、「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)の店頭棚を先客越しに覗き込むと、七十年代の日本映画関連が固まって出ているのを確認する。ひゃっ!三一書房「けんかえれじい/鈴木清順」があるぞ!こりゃスゴい!と慌てて確保する。1970年刊の、映画監督・鈴木清順の隨筆・詩・座談会・脚本・原案小説集である。三一書房の謹呈簽入り。…くわわっ!だが中を開いて見ると、線引き本なのであった…だが、このくらいなら消せる!地道に消しゴムで消してやる!と決意して110円で購入する。すると店主・天野氏に「島田さんが来てますよ」と教えられる。あっ、本当だ。女性関連本ゾーンの前に、夏葉社の島田潤一郎氏の姿。声をかけると「ご無沙汰してます。なんとかやってますよ」と優しい笑顔。お元気そうで何よりです。そして家に帰り、消しゴム片手にページをひっちゃぶかぬように、丁寧にゴシゴシ鉛筆の線を、心を無にして消して行く作業に没頭する…。
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そろそろ発売の「本の雑誌 花かつお山盛り号」の連載『毎日でも通いたい古本屋さん』(ついに第40回です!)では、蔵前の「浅草御蔵前書房」に溺れまくる。このお店の佇まいは、訪れる度に感動を呼び起こします。そして取材時に買った「名作捕物小説集」は、連載後日譚として、北原案件を含んでいたので、スピード読了後に北原尚彦氏の元へ…というわけで、お楽しみいただければ幸いです。
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2021年03月09日

3/9一日をノンビリノビノビ。

本日は午前六時半に起床し、ノンビリノビノビと過ごす。午前中は古本の修繕をしたりしながら、例の「東京要塞」と、同じくプレゼントされた荷風の胡蝶本短編小説集「新橋夜話」も摘み読みする。すると、第一話の『掛取り』は、待合の女中さんが、銀座から大久保まで市電に乗り、大久保の客の家にツケの取り立て偵察に行くだけの話なのだが、普段出歩かぬ十代の少女が、銀座の裏通りから表通りに出て、乗り慣れぬ市電を二度も乗り換え、四苦八苦して大久保余丁町にたどり着くまでの、今は亡き都市の描写が、あまりに瑞々しくキラキラしているので、感動して涙が落ちそうになる…なんて優れた明治の都市小説なんだ!窪川いね子の名短篇「東京一九三〇年物語」(2019/09/18参照)に匹敵する面白さである。そして昼食を摂った後、BSプレミアムの映画『禁断の惑星』をじっくりと観てしまう。万能ロボット・ロビーの優秀さと可愛らしさに喜びながら、宇宙船の二枚目マッチョ艦長役がレスリー・ニールセンであることを、エンディングのクレジットで知り、軽い衝撃を受ける。その後は意外と気温の低い表に飛び出し、高円寺「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)でお買い物。垣内出版「アメリカ社会の小集団研究 ストリート・コーナー・ソサイエティ/W・F・ホワイト」祐学社「ホームズ少年探偵団 消えた死体事件/ロバート・ニューマン」を計200円で購入し、そそくさと帰宅する。箱のデザインがスタイリッシュな「ストリート・コーナー・ソサイエティ」は昭和49年刊の、一九三〇年代のボストン・スラム街のフィールドワーク本。その土地に引っ越し、小さなコミュニティに、研究者自ら参与観察して行く手法で、街と人々の姿を、ありのままに記録して行く。ちょっと読み始めると、研究方法を組み立てる前段階や、街に接触して行く過程がスリリングで(どこにでも潜り込めるメフィストフェレス的な街の案内者がいるのだ)、すぐにぐいぐいと引き込まれてしまう。帯の背には『「人間関係」事象研究の古典的名著』とある。七十年代学術本特有の本文Q数の小さめな本なのに、あっという間に二十ページも読い進めてしまった…確かに名著の予感が。世の中にはまだまだ私なんかの知らぬ、面白そうな本が溢れているのだな。
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2021年03月08日

3/8戦記物の中にしれっと!

昨晩のBS12の八十年代音楽研究番組『ザ・カセットテープ・ミュージック』は快心の作であった。『大人のアニソン』と題し、テレビアニメソングの特集だったのだが、どんな曲たちを面白おかしくたくさん紹介してくれるのかとワクワクしていたら、何とスージー鈴木は旧『ルパン三世』のサントラを取り上げ、マキタスポーツは『タイムボカンシリーズ』のエンディングテーマを紹介。予想外の少数精鋭なセレクトであった。だが、これが本当に面白かった。スージー鈴木が山下毅雄の偉大な格好良さに言及するのは当然の事として、マキタスポーツの『タイムボカンシリーズ』の主題歌&エンディングをほぼ担当した山本正之についての考察が絶品であった。中日ドラゴンズの応援歌『燃えよドラゴンズ』(作詞作曲は山本正之)とほぼ同じ歌を、アレンジし、アイデアを盛り込み、小細工し、手を替え品を替え新曲として提供し続ける、偉大で壮大なマンネリズム!以前NHKの『BSアニメ夜話』で、そのあまりのバカ加減をアピールする愉快な歌い方に言及されたことはあったが、こんなに山本正之について教えられたことは、かつてなかった。音楽を面白いものにするためなら、何でもやる男なのであった。『逆転イッパツマン』(悪のトリオが初めて正義の味方に勝利する、世間を騒がせた作品)のエンディング『シビビーン・ラプソディ』はその最たるもので、面白くするためなら、格好良くメジャー進行で始まった曲を、惜しげもなく即座にマイナー進行に蹴落とす構成は、異常とも言える面白さで、本当に涙を流して笑い転げてしまった。当時見ていた時は、そんなことにはまったく気付かなかったのに、この番組で曲の構造を教えられると、たちまち爆笑の種に変化した不思議さよ…。

そんな昨晩の笑いの余韻に引き摺られながら、冷たい雨の月曜日は定点観測しなければと、荻窪へ向かう。午前十一時過ぎ、まだ誰もいない「古書ワルツ荻窪店」(2020/07/30参照)である。だいぶ結束本が積み上がる店内を、ちょっとゆっくり目に見て回るが、結局店頭で掴んで来た内田老鶴圃「世界の珍草奇木余話 植物と花と人生と/川崎勉」を110円で購入する。再び傘を開いて街路を伝い、商店街の「竹中書店」(2009/01/23参照)へ。軒にテントが大きく張り出すこのお店では、雨でも風がほとんどなければ、いつものように古本台が見られるのだ。…新しい本が補充されているな…雑誌「月刊絵本」と戦記関連か…あまり食指の動かぬ並びであるが、気を抜かず丁寧に見て行くことにしよう。すると「月刊絵本」の間から、神が薄くてヘナヘナの冊子を見出す。偕成社の「絵本のリスト/絵本の教室」という、左右どちらからでも読み始められる、1978年刊の絵本ガイド&絵本研究誌であった(加古里子が、絵本創作の元ネタとなる海外の科学絵本を多数紹介している!)。これは確保だ。続いて戦記本の連続にも目を通して行くが、買うべき本はみつからな…あれ?蒼社廉三?…おぅっ!徳間書店「ミステリー 戦艦金剛/蒼社廉三」が、しれっと混ざっているじゃないか!“戦艦”の文字に危うく騙されて見逃すところだったぞ!そう興奮しながらそっと抜き出す。舞台は戦艦だが、その戦艦内で起こる殺人事件を巡る探偵小説なのだ。あぁ、古本屋さんの店先でたまに起こる、こんな小さな奇跡が、大好きで大好きでたまらない。だから毎日古本屋さんに、テクテクワクワク足を運ばにゃならんのだ!と大いに喜びお店に感謝し、計400円で購入する。今日も良い本が買えました。
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