2021年04月30日

4/30どうにかこうにか取材を終える。

そろそろ連載の取材に行かなければ。そう決心して午前六時半に起床する。だが、緊急事態宣言発出中のため、臨時休業中の古本屋さんも多く、取材を予定していたお店も案の定、休業に突入してしまっていた。仕方ないので神奈川県にこっそり出張るか…と決めかけていたのだが、やはりここは生真面目に思い留まることにする。どうしよう…と暫く悩み、思いついた窮余の策…今回はこれしかないかと覚悟を決めて、午前十時過ぎに外出すると、これが安値で良書を買えた、ハッピー・アクシデントな展開となり、結果オーライの取材となった。よかったよかった。意気揚々と帰路に着くも、取材とは別に古本を買いたしと、荻窪に立ち寄ることにする。うぁっ!やってると思っていた「竹中書店」(2009/01/23参照)が、臨時休業に入ってしまったか…うぅぅぅぅぅ、仕方ないのだが、く、くるしい…。「古書ワルツ荻窪店」(2020/07/30参照)に立ち寄り、さんいちぶっくす「東京ゲリラ戦線/藤本泉」を550円で購入する。

今日の古本屋行動はこれでおしまいなので、古本ヨタ話をひとつ。先日「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)で買った日本小説文庫「爬蟲館事件/海野十三」(素人探偵・帆村荘六が活躍する短篇探偵小説集)を楽しく読み進めているのだが、その中の一篇『ラヂオ殺人事件』の毛色の違う冒頭書き出しに、ちょっと目を瞠る。『犬小屋のように軽い車體(ボデイ)をもった郊外電車は、放送局員植木冬助の疲れきつた身體を拾ひあげると、またゴトゴトと、餘り速くないスピードで動きだした』と始まるのだが、このようなレトリックの使い方は、はまるで、新感覚派の文章のようではないか。横光利一の名作『頭ならびに腹』の『真昼である。特別急行列車は満員のまま全速力で駆けてゐた。沿線の小駅は石のやうに黙殺された』と似たような味わいを備えている。小説の書き出しというものは、たいていちょっと洒落てたり気取ったりしているのだが、この『ラヂオ殺人事件』の書き出しは、他の海野作品と比べてみても、かなり気取った異色な始まり方である。ちなみに新感覚派の始まりと言える『頭から腹』は1924年発表で、『ラジオ殺人事件』は1932年の発表である。その間には八年の開きがあり、海野が書いた時には、もはや新感覚派はその短い役目を終え、消えようとしていたはずである。穿った見方をすれば、探偵小説に登場するほど、その尖った表現方法は消費されてしまったのだ。でもこの書き出しは、なかなか堂に入ってて、うまいけどなぁ。
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2021年04月29日

4/29西荻窪の様子と生人形。

午後三時過ぎに上連雀の南の端に流れ着いたので、駅に出て「水中書店」(2014/01/18参照)を見に行くか…と思っていると連絡が入り、急遽西荻窪で受け渡しをせねばならぬ案件が飛び込んで来た。イカン、すぐに向かわなければと、降ったり止んだりの小雨に傘を差すのももどかしく、急ぎ足で三鷹の街を駆け抜けて行く。途中「上々堂」(2008/07/17参照)が休業に入っているのを確認し、総武線に乗り込んで西荻窪へ。待ち合わせ場所の「盛林堂書房」(2012/01/06参照)で無事に受け渡しを済ませ(いつも物を預けたり待ち合わせたり、すみません…)、白水社「ボクの学校は山と川/矢口高雄」文藝春秋社「ジョン・フォード伝 親父と呼ばれた映画監督/ダン・フォード」毎日新聞社「春来る鬼/須知徳平」を計300円で購入する。お店を出たら駅北側に回り、営業しているはずの「古書音羽館」(2009/06/04参照)を見に行くが、なんとシャッター半開きの臨時休業であった。残念無念…。そして帰りに阿佐ヶ谷で「千章堂書店」(2009/12/29参照)を覗き、今日も角川写真文庫に注目する。「東京の中の江戸/長谷章久」を300円で購入する。タイトル通りに、昭和四十年代の東京に残る江戸の面影を、微に入り細に入り追いかけた一冊である。『刺青』について11ページも割いていたり(写真が多くて生々しい)、安本亀八の驚異の生人形が登場したりと、なかなか剣呑な雰囲気が大いに気に入る。
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生人形は見世物興行に使われた、本物そっくりな超絶技巧の超写実的人形である。リアル過ぎると、そこに生まれて来るのは恐怖の感情…あぁコワい。
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2021年04月28日

4/28吉祥寺の様子とC・A・スミス散文詩集。

意外に晴れた午後に仙川の北にある中原に流れ着く。本来なら仙川に出て「文紀堂書店」(2015/03/31参照)を訪ねたいところだが、休業に入っているとの情報をキャッチしているので、。小田急バスに乗って吉祥寺まで出ることにする。大ガード下の終点で降りて、駅北側に沿って西に進み、「一日」(2017/08/11参照)の様子を表通りからうかがうと、おっ!幟が立っている…ということは…やっぱり営業中だ。どうやら今回の緊急事態宣言下では、休業しない模様である。鉄扉を開けて手指消毒し、ビニールカーテンを潜ってガレージに入る。ぐうるりと中央平台の周りを一周し、角川書店「名著ゼミナール 今夜も眠れない/開高健」を330円で購入する。続いて「バサラブックス」(2015/03/28参照)に向かうと、ここもいつものように営業中。みき書房「天使のワードロープ/荒俣宏編著」を100円で購入する。さらに駅に一番近い古本屋さん「古本センター」(2013/07/01参照)は当然営業中。大和書房「傷だらけの天使/市川森一」中央公論社「チャーリー・チャップリン/ピーター・コース セルマ・ニクロース」を計160円で購入する。さらに井の頭線の高架を潜り「よみた屋」(2014/08/29参照)の営業も確認するが、今日は残念ながら何も買えずに終わる。店頭棚には多くのブランクが生まれており、何がそんなに売れたのだろうか?面白い本がたくさん並んでいたのだろうか?と思わず妄想してしまう。そして最後に吉祥寺一番の新顔古本屋さん「古本のんき」(2021/03/30参照)を見に行くと、残念ながら休業に突入していた。ガラス窓に貼られた臨時休業の案内に、涙を流して平身低頭する店主の自画像が描かれている。お店をオープンしたばかりなのに、さぞ断腸の思いだろう。だがこの休業期間に、いよいよお店の棚が完全体に近づくことは間違いないので、休業明けを楽しみにしておこう。

ようやく阿佐ヶ谷に戻り「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)の前を通りかかると、お店は開いておらず、臨時休業の貼紙が出されていた…むぬぅ、ここが閉まるのが一番痛いが、仕方ない、仕方ないことなのだ!休業開けには、真っ先に古本を買いに来ることにしよう。

そして夕方、阿佐ヶ谷駅頭に駆け足で駆けつけ、カバーデザインを担当した新刊を編集さんより受け取る。綺想社「綺想紙漿雑誌 暴譯叢書 捌 記憶の淵より C・A・スミス散文詩集/クラーリ・アシュトン・スミス」である。この叢書八冊目の新刊であり、ついにスミスは五冊目に突入したわけである。これはもう、世界でも稀な翻訳叢書になりつつあるのだ。しかも今回は散文詩集。古代や神々の世界や異世界までを包み込む、暗黒色な美しい言葉たちの連なりが、誌面から脳髄にズブズブ流れ込んで来る…今夜は、これを読みながら眠ることにしよう。4/29より、西荻窪「盛林堂書房」の店頭&通販サイトや、中野「まんだらけ海馬」で販売開始されるので、お楽しみに。
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2021年04月27日

4/27大阪の古書棚と高円寺の様子。

大阪府にも緊急事態宣言が発出済みなので、「梅田蔦屋書店」が入っている駅ビルの『ルクア イーレ』も休業中である。つまりは私の西の古書棚も、休業中となったわけである。つい先日補充本を送ったばかりだが、お客さんの目に触れることなく、お休みに突入してしまった…まぁ、しばしの辛抱である。どうにか感染が下火になり、宣言が解除された曉には、古書コンシェルジュさんの働きにより並んでくれるのだ。元々四月下旬から書店では、翻訳者さんたちが選ぶミステリフェアが開かれ、それに合わせて古書ゾーンでもミステリ関連を「ジグソーハウス」さん(2016/06/11参照)と共にミステリを多めに並べ、フェアに便乗する予定であった。なのでここ二回ほどの補充は、ミステリ増量にしていたわけだが、宣言解除後にスライドしてフェアは開かれるようなので、決してムダにはならない模様。次回の補充もミステリ増量を心がけることにしよう。そしてミステリではないけど、先日カバー付きを手に入れた山田書店「山名の場合/梅崎春生」(2021/04/20参照)のカバーをコピーして、目出度くダブりとなった裸本に掛け、これも補充の中に紛れ込ませることにしよう。
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右がコピーカバー本である。お安くしときますよ!

今日は午後にひっそりと高円寺へ、営業中の『庚申通り』の「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)に感謝しつつ、少年少女講談社文庫「図解 世界の戦車/アルミン=ハ・久米穣訳編」を100円で購入する。カバーの背はすっかり焼けているが、それでも幸福である。その後はツラツラと街中の古本屋さんを見て回るが、開いていたのは「ドラマ高円寺庚申通り店」と『あづま通り』の「Amleteron」(2013/06/10参照)だけであった。そして最後に「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)天野氏よりタレ込まれた、古本を置いているクリーニング屋さんを見に行くが、残念ながらシャッターアウト。聞いたところでは古本濃度が希薄で、買うのに苦労するそうだが、諦めずにまた見に来ることにしよう。
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2021年04月26日

4/26地元阿佐ヶ谷の様子をうかがう。

早起きして、謎の“古本屋分布図”の再修正を粛々と地道に進める…ようやく、長く暗いトンネルの向こうに、光が見えた気がする…あと二息くらいだ!と、手と目玉をウリウリ動かし続ける。午後、ご飯を食べながら何気なくNHK BSプレミアムで放送中だった映画『聖の青春』を観ていると、ロケ地として「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)が映ったので、阿佐ヶ谷駅まで出る用事のついでに、コンコ堂に古本を買いに行くことにする。創元推理文庫「氷柱/多岐川恭」ソノラマ文庫「怪奇 迷宮の扉/横溝正史」を計640円で購入しつつ、店主・天野氏に「今回はお店開けてるんですか?」と緊急事態宣言下の休業要請について訪ねてみると、実はまだ、開けるべきか閉めるべきか、悩んでいるとのこと。まぁそりゃそうだよな。明日がお店の定休日なので、一日じっくり考えて判断するそうである。何はともあれ、また古本買いに来ますよ。続いて「千章堂書店」(2009/12/29参照)へ立ち寄ると、左通路の店頭際の文庫ワゴンに、角川写真文庫が十冊近く出されているのが目に留まる。これはもしや…と急いでパラフィン越しの背文字を精査すると、あったあった!レア文庫の「日本の離島/宮本常一監修・法政大学カメラ部編」があるではないか!営業してくれていることも有り難いが、欲しかった文庫を並べてくれていてありがとうございます!と激安の300円で購入する。
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そして用事を済ましたその後は、ズンズン住宅街を北に抜けて『早稲田通り』沿いの「古本 ブック流通センター」(2008/08/09参照)へ。ここもしっかりひっそり開いているのを喜びつつ、主婦と生活社「自然と遊ぶための野外雑学読本」を300円で購入する。「銀星舎」(2009/10/19参照)と「ネオ書房」(2019/08/11参照)は残念ながら臨時休業に入ってしまっていた。ちと寂しいが、緊急事態宣言解除後に、また古本を買いに行くことにしよう。
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2021年04月25日

4/25古本を買って微力ながら応援する。

緊急事態宣言下の中、午後に荻窪駅北側の天沼に流れ着く。街はいつもとさほど変わらぬ表情を見せ、閑散とした感じにはなっていない。そこで気になるのは古本屋さんである。恐らく今日から休業に入ってしまうお店も多いことだろう。仕方のないことはわかっているが、やはりさみしく切ないものである。せめては感染対策に傾注しつつ、開けてくれているお店を訪ね、古本を買って秘かに応援して回ろうと、テクテク駅方面に流れ込み、まずは「中央線書店」(2021/04/08参照9へ…おっ、店頭にちゃんと古本棚が出ているではないか!と喜び、修道社「遠い日のうた/谷内六郎」を100円で購入する。これは初めて見る文庫本だなぁと感心しつつ、線路下を潜って南側に出ると、「竹陽書房」(2008/08/23参照)のグラフィティ擬きが悪戯書きされたシャッターには休業の貼紙が…。続いて「竹中書店」(2009/01/23参照)に行ってみると、こちらはいつものように営業中。店頭木製ワゴンには偉人伝の古書が多く補充されているようだ。函ナシの臼井書房「短歌歳時記/吉井勇」を200円で購入する。続いてビルの谷間を抜けて「藍書店」(2018/12/24参照)へ。しっかりと営業中でありがとぷございます!と感謝しながら店内へ。すると窓際の安売棚に、箱入りの児童文学が十冊近く並んでいるのに気付く。ほうほう、ちょっと古い珍しいものも混ざっているじゃないか…あぁぁぁぁっ!冨山房「ふしぎな虫たちの国/シーラ・ムーン作 山本俊子訳」だっ!十三才の少女が異世界に迷い込み、虫たちと力を合わせ、謎の“けもの”と対決するファンタジー児童文学である(会話以外は少女の一人称で物語は突き進むのだ)。話も面白いんだけど、挿絵がなかなか細密でグロテスクで、心震えるんですよ!しかも1975年の初版!と即座にギュッと抱え込む。他にも理論社「プラテーロとわたし/J・R・ヒメネス 長新太・え」岩波おはなしの本「マルコヴァルドさんの四季/イターロ/カルヴィーノ」を抜き取り、計330円で購入する。いやぁ、これは収穫大収穫!と喜びつつ、駅前の「岩森書店」(2008/08/23参照)を見ると、シャッターが半開きで休業に突入中。最後に「古書ワルツ荻窪店」(2020/07/30参照)を覗くと、盤石の営業中であった。店内ミステリ系文庫棚で、ソノラマ文庫「古都に棲む鬼女/風見潤」が並んでいたので550円で購入する。古本屋さんを応援しようと思ったら、意外に良い本が安値で買えて、とても楽しいひと時を過ごしてしまった…。
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2021年04月24日

4/24小さな本を追加購入する。

午後に吉祥寺〜三鷹間の御殿山に流れ着いたので、吉祥寺にスルリと出て、「バサラブックス」(2015/03/28参照)でプレイガイドジャーナル社「山本さん家の場合に於るアソコの不幸に就て/ひさうちみちお」を200円で購入し、賑わう人気タウンを脱出する。そして西荻窪に至り、仕事の資料を受け取るために「盛林堂書房」(2012/01/06参照)へ。早川書房「「新青年」の頃/乾信一郎」岩波少年文庫124「クマのプーさん/A・A・ミルン作 石井桃子訳」(昭和31年第1刷)を200円で購入。偶々帳場に居合わせた、高円寺からのサイクリング帰りのホームズ研究家&作家の北原尚彦氏と「お久しぶりです!」と、お互いにマスク越しのニコニコ顔で挨拶を交わす。店主・小野氏より資料をワンサカ受け取りつつ、「何か安値の面白い本なぁい?」と厚かましくリクエストする。すると「じゃあ、これ見てみる?北原さん用に用意しといたやつなんだけど」と、小型本や古めの文庫をドサッと出して来た。「見る見る〜」と喜ぶと、北原氏も「私ももう一度見ておこうかな」と再びの参戦。二人でためつすがめつ小さな本を精査する。北原氏は気になる本を見つけると、すぐさまスマホで蔵書データベースにアクセスし「あぁ、持ってる!」などと繰り返している。真横で繰り広げられる、そんな面白シーンを尻目に三冊をセレクト。平凡社 世界探偵小説集18「アクロイド殺し/クリスチイ作 松本恵子譯」相模鉄道株式会社「相鉄瓦版第十一号 映画特集・思い出のシーン」「相鉄瓦版第十二号 特集八十年代」を計300円で追加購入する。「相鉄瓦版」の映画特集には和田誠のカラーイラストが四枚、八十年代特集には湯村輝彦のイラストが四枚掲載されているのだ。
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というわけで嬉しい今日の収穫。和田誠の、映画『断崖』のケイリー・グラントが、発光している牛乳の入ったグラスを運ぶイラストは、いつ見ても名作である。色刷りを見るのは初めてなので興奮する。

その後は「忘日舎」(2015/09/28参照)にも立ち寄り、読売新聞社「建築巨人 伊東忠太/読売新聞社編」を300円で購入しつつ、三度目の緊急事態宣言発出について、店主さんと長々意見を交わす。そして「とにかくどうにかこのヒドい状況をサヴァイブして、また元気に会いましょう」と約束し、お店を後にする。
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2021年04月23日

4/23閉店セール中の「大学堂書店」を見に行く。

御茶ノ水駅から、鋳鉄製の『お茶の水橋』を渡り、『順天堂大学病院』の谷間の坂を上がって、ビルだらけの本郷の街の中に入って行く。『本郷通り』を北上し、やがて本郷三丁目駅への脇道を過ぎると、雑居ビルのエントランスに古本ワゴンが出されている。そこには『閉店セール合計¥1000以上30%OFF 4月末まで』の黄色い貼紙が…一階通路奥にある「大学堂書店」(2009/01/06参照)が、四月一杯でお店を閉じてしまうのである。開け放しのガラス戸を通過し、一本道の通路を進み、少しだけ左に折れると、行き止まりの奥に、古本をごっそりと固めているお店が見えて来た。
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ここも『春日通り』を挟んではいるが、本郷古本屋街の一角である。硬い学術的なお店が居並ぶ中で、買い易い一般書も並べてくれていた、庶民寄りなお店で、こちらに来たら、まず一番に立ち寄るお店であった。そんな足場のお店が閉店してしまうのは、なんとも寂しい限り…そう思いながら、店内の狭い通路に身体を滑り込ませる。よくお世話になったのは、奥の両面文庫棚、通路棚奥の古雑誌コーナー、それに最奥の文学棚である。今日もその辺りに目を光らせながら、他の棚にも目を通して行く。しばらくゴソゴソやっていると、古書組合の広報の方が現れ、帳場で動画撮影が開始されてしまった…店主さんは、お店の成り立ちから、真摯に朴訥と語り始めている(撮影編集後に古書組合のYou Tubeチャンネルで観られるらしい)…あまり大きな音は出せないな。と行動に気を遣いながら、二冊を手にする。さて、動画撮影は続いているのだが、精算してもらえるだろうか。おそるおそる帳場に近づくと、広報の方がそれに気付き、静かな仕草で精算を促してくれた。ありがとうございます。すみません、撮影のお邪魔をしてしまって。東宝シナリオ選集「姿三四郎/黒澤明■脚本」白水社「巴里文学散歩/」を、30%引きの計700円で購入する。長い間、ありがとうございました。そしておつかれさまでした。

お店を出たなら、せっかくだから「第一書房」(2011/08/16参照)も見て行こうと『本郷通り』をズンズン北上して行く。通り沿いに貸しテナントが増え、いつの間にか新しいビルも建っていたりするので、かなり様変わりしているのが見てとれる。そんな中、洋風石造りの『郁文堂』脇道にある「ペリカン書房」の看板が現存し続けるのに感動し、
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ちょっと楽しみにしていた「棚澤書店」(2009/10/08参照)が開いていないのにがっかりし、さらに「ヴァリエテ本六」(2010/01/22参照)が、本棚をほとんど空にした骸骨状態で、店内の改修作業に取りかかっているのを目にし、悩ましく身悶える…これは、閉店してしまうのだろうか?ただのリニューアルだと嬉しいのだが、それにしても店内を空っぽにするのは大掛かり過ぎる…いったいどうなるのだろう?
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などと懊悩しながら先へ進むと、なんと「第一書房」は開いていなかったのである…はぁ。仕方ない。来た道を引き返して、こうなったら神保町に出ることにしよう。というわけでテクテククネクネビルの間を三十分ほど歩き続け、神保町着。「慶文堂書店」(2012/01/14参照)で店頭ワゴンを見ていると、同じく神保町パトロール中の古本神・森英俊氏に声をかけていただく。素早い挨拶を残し、たくさんの古本に呼ばれているの、すぐさま神保町の雑踏の中に消えて行った…博文館「常磐津集/海賀篤麿編」を200円で購入する。「田村書店」では古めの茶色い本が店頭に出されているのに目の色を変え、一生懸命に漁る。結果、嬉しい博文館「少年文學十三 暑中休暇/大江小波著」を発見し、1300円で購入する。「暑中休暇」は明治二十五年刊の、校長の夏休みの過ごし方の厳しい説教から始まる、少年たちのひと月の夏休みを描く小説である。『游泳』『復習』『端艇(ボート)』『遠足』『旅行』『歸省』の章から成る。
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これは美しい色刷りの口絵。校長の周りに集まった夏休み姿の少年たち!

そして大阪には古本を無事発送する。古書コンシェルジュさんも、『いずれにしても補充本は欲しいので、たとえ休業になったとしても、誰もいないと言うわけではないので、粛々と営業再開の準備を進めます』とのことであった。今回も探偵小説と良い本ムダな本馬鹿らしい本を厳選して送りましたので、それらが棚に並ぶその日まで、どうか首を長くして、忘れずにおまちいただければ幸いです。
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2021年04月22日

4/22映画『ヴィデオドローム』のパンフは立派な造りだった。

昨日は夕方に北烏山に流れ着いたので、千歳烏山駅近くの、闘うアナーキー無人古本屋さん「イカシェ天国」(2008/09/23参照)を見に行くも、残念ながらお休みであった。扉を閉ざしていると、より強いメッセージが街路に放射されているようだ…闘ってるなぁ。
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お休みでは仕方ないので、関東バスに乗り込んで荻窪へ向かい、「古書ワルツ荻窪店」(2020/07/30参照)で彌生書房「武井武雄の世界 青の魔法/武井三春編」を330円で購入する。帰宅した後は、大阪へ発送する古本の準備…だが、ここ二〜三日でまたもや緊急事態宣言が発出される模様なので、駅ビルに入っている古書棚のある「梅田蔦屋書店」もどう対応されるのか不明なのである。準備はひとまず終わらせたが、送ってよいものかどうか、古書コンシェルジュさんにおうかがいをたてることにする。

そして本日は午後に浜田山に流れ着いたので、本来なら駅前からすぎ丸に乗って阿佐ヶ谷に帰るところだが、古本と戯れたい気持ちが膨らんで来たので、吉祥寺に出て小さく古本屋さんを巡ることにする。「古本センター」(2013/07/01参照)で見つけたのは、80円のユーロスペース「ヴィデオドローム」。デビッド・クローネンバーグ監督の伝説のカルト映画のパンフレットである。パンフレットと言うよりは、ほとんどペヨトル工房の本のような造りが為されているので(これもバブルの一端か!?)、非常に読み応えのある一冊となっている。さらに「古本のんき」(2021/03/30参照)にぐるっと回り込み、佐藤出版部「メエテルリンク傑作集/村上静人譯編」(大正六年刊。函ナシ)を500円で購入する。ある一ページの上半分がビリッと欠けている故の安値だが、途中の解題ページなので、本編に影響はナシ。神秘劇三編・悲劇一編・童話劇一編・歴史悲劇一編を収録。
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アールデコの浮き彫りな装飾や、残る天金を愛でながら阿佐ヶ谷へと戻り、帰路「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)に立ち寄る。ほほぅ。店頭百均棚のハヤカワ・SFシリーズがごっそり無くなってしまった。SF猛者が大人買いしたのだろうと想像して店内へ。ハヤカワポケミス「夜歩く/ディクスン・カー」を320円で購入する。棚を見ている時に、店主・天野氏にとあるお店の古本販売情報をタレ込まれる。聞けば聞くほど古本濃度の薄そうな状況なので、なにかのついでに見て来ることにしよう。
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2021年04月20日

4/20「虚空に消える」と「山名の場合」

朝から謎の『古本屋分布図』の校正反映ラストスパート。大変に苦しかった最難関のエリアを、正午前には切り抜ける…ふぅ、自分よ、まだまだ作業は続くのだが、ひとまずおつかれさまでした。
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付箋だらけの校正紙…気がおかしくなりそうだった…。

そして夕方に外出。毎度お馴染みの西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)に届け物をして、さらにカバーデザインを担当した新刊を受け取るためである。本日盛林堂は店内改装の真っ最中なので、表の百均だけが機能している。その百均棚から、河出書房探偵小説名作全集「高木彬光集」「坂口安吾・蒼井雄集」幻影城「黒岩涙香 幽霊塔・無惨・紳士のゆくえ」宝文館「天狗の羽風/尾崎一雄」を掴み取り、入口を塞き止めた台車の前で、奥に向かって「こんちは〜」と声をかける。すると番台から頭だけが見えている店主・小野氏が「入って来ちゃっていいよ〜」。「お邪魔します」と台車の脇を擦り抜け奥に進み、まずは前述の四冊を四百円で購入する。そしてまだまだ棚の本入替中の店内を少し見て回る。右壁の文庫棚や奥のSFに変わりはないが、向かいの通路棚がサブカルから音楽・映画とつながるようになった。そして左側通路が、壁棚の一番手前に貸し棚が移り、古本&本関連・同人誌・人文と続き、間に美術を挟んで奥の幻想文学の横に詩集が移動。向かいの通路棚は、入口側から海外文学・日本文学・濃厚ミステリの順番である。…なるほどなるほどと変化を楽しんでいると、文学棚に山田書店「山名の場合/梅崎春生」が並んでいるのを発見してしまう。裸本しか持っていないので「おぉ、カバーはこんななのか」と小さく感動する。そして値段を見ると千円じゃないですか!これは幸せな安さであるので、迷わず追加購入してしまう。そうこうしているうちに、新刊の別冊Re-ClaM「虚空に消える/ホレーショ・ウィンズロウ&レスリー・カーク」が大量に到着する。超自然的な力を持つと言われた悪党・スプークが死亡した後、幽霊となり不可思議な事件を巻き起こす、1928年刊の知られざる“不可能犯罪”ミステリである。カバーを良く見ると幽霊がおりますので、心臓の弱い方はご注意を。4/24から盛林堂通販サイトや店頭で発売開始となるので、クラシックミステリファンは迷わず購入すべし!
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「虚空に消える」と「山名の場合」…なんか語感がちょっと似てる…。だがそれにしても「山名の場合」が嬉しい。普段盛林堂に来た時は、ミステリや幻想文学やSF&明治探偵冒険棚の前で涎を垂らしてるだけだから、改装したことにより改めて文学棚を見ることになり、「山名の場合」発見に至ったと言えよう。
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2021年04月19日

4/19大正九年の発禁詩集を吉祥寺で!

午後に吉祥寺と西荻窪の間に流れ着いたので、吉祥寺方面に足を向け、北から南に中央総武線の高架を潜り「古本のんき」(2021/03/31参照)へ。しっかり手指消毒して店内に上がり込むと、本棚古本充填75%と言ったところ。徐々にではあるが、お店の完成に近づいているようだ。増殖した古本の背に目をピカピカ光らせていると、左壁の文学棚最上段に日本評論社「勞働詩集 どん底で歌ふ/堺利彦・序 根本正吉・伊藤公敬」を見つける。編集者・古河三樹松らが復刻したやつか…と背伸びしてウンと手を伸ばして取り出し見ると、妙に古いではないか…こ、これは…唾をゴクリと飲み込みながら奥付を見てみると、案の定大正九年刊のオリジナル本であった。函はなくて経年劣化の傷みはあるが、とても稀少な文庫サイズの発禁詩集なのである!工場生活者と波止場人足の魂の呻きが詰め込まれた一冊!値段を見ると破格の千五百円なので、陶然としながら購入する。「古本のんき」の完成が増々楽しみになる、素晴らしい買物時間であった。
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興奮覚めやらぬまま、駅南口の「古本センター」(2013/07/01参照)で処分品棚を眺めていると、手札サイズの卓上カレンダーが、無造作に文庫本の間に挿し込まれているのを見つける。これ、芹沢_介の1964年型染めカレンダーじゃないか!プラケースから取り出して中身を確認すると、十二ヶ月ちゃんと揃っているので、激安の百円で購入する。小さくとも、見ていて飽きない民藝的色味と繊細さと大胆さと懐かしさである。さらに興奮しながら電車に乗って荻窪へと向かい、「竹中書店」(2009/01/23参照)の木製二百均ワゴンに縋り付く。すぐさま目についたのは、1962年刊の毎日新聞社「ヨーロッパの声・僕自身の声/大江健三郎」。大江二十六才のときのヨーロッパ旅行記で、あまり見ない本である。200円で購入し、相変わらず良い古書を安値で買わせてくれるここ最近の「竹中書店」に感謝しつつ、さらにこれからも良い古書が買えますように!と祈りながら帰路に着く。
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2021年04月18日

4/18セブンを観てからイレギュラーズ!

午前八時、NHKBSプレミアムで『ウルトラセブン』第三話『湖のひみつ』を観賞する。ウルトラセブンは、いつ観ても何度観ても、ミステリアスでダークでエロチックなイメージが横溢し、揺るがぬ世界観を維持し続けている、稀有な特撮番組である。成田亨の独創性が光るエレキングとミクラスの造形を慈しみ、朝に特撮番組を観るという、夏休みの小学生のような過ごし方をしてから、外出。西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)の裏手で店主の小野氏と落ち合い、非正規古本屋お手伝いの“盛林堂・イレギュラーズ”に変身する。今日は、小金井の一角にあるマンション一階から、およそ二千冊の文庫本を運び出すお仕事である。というわけで早速盛林堂号で西へ。道はわりと混み合っているが、およそ三十分で現場に到着し、依頼主さんと挨拶を交わし、現場の状況を確認する。四つの部屋に本棚が六本。そのほとんどにミステリ&SFの文庫本がぎっしりと二重に詰まっている…こりゃあ、二千冊どころじゃない気が…。依頼主さんの都合上、四時までにすべてを運び出さねばならぬので、すぐさまテキパキ作業に取りかかる。フォーメーションはいつもの通りで、私が本棚から本を取り出して床に並べ、それを小野氏がひたすら結束。それをさらに運び出し易いように本束を私が積み上げて行くカタチである。ほとんど文庫本のみなので、形状の違いや大きさの違いに悩まされること無く、グングン作業は進んで行く。たちまち出来上がる本束…およそ三十冊で一括りの束が、たちまち十本二十本と完成し、午後一時には114本を数えることとなった…ということはおよそ三千冊か。昼食休憩を挟んだ後、一気に本を運び出す。小野氏が査定結果を伝えたり、マンション裏手に車を回す
間に、セッセセッセと本束を裏門にピストン移動…およそ三十回も往復したところで、異様な文庫の山が堂々完成した…あぁ、まるで映画『007ゴールドフィンガー』で、ゴールドフィンガーが放射能汚染させようとした、アメリカ合衆国の金塊の山のようではないか…などと、激しい腕の疲労のためか唐突に連想してしまう。
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後はこれを盛林堂号に運び込み(百本以上の文庫束をステーションワゴンの荷台に詰め込む小野氏の手腕が冴える!)、帰りも混み合う道をひた走り、西荻窪の倉庫に下ろして作業終了となる。時刻は午後四時前であった。おつかれさまでした!心地良い疲労感を抱きながら、帰りに阿佐ヶ谷「銀星舎」に立ち寄り、旦那さん店主と徒歩移動の必要性と厳しさについて語り合いながら、ワイズ出版「日本カルト映画全集3 夢野久作の少女地獄」を1200円で購入する。
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2021年04月17日

4/17絵札を自作する。

午後二時過ぎに方南町近くの堀ノ内に流れ着いたので、勘を頼りにグングン北上して、祝祭日のように賑わう高円寺に出て、古本屋さん伝いにさらに北上して行く。大石書店では潮出版「人形たちの夜/中井英夫」(初版帯付き。後見返しに「都丸書店」(2010/09/21参照)の古書店ラベルアリ)を300円で購入。高架下を通り抜けて『庚申通り』に入り、買い物と散策をする人々を掻き分け「ドラマ高円寺庚申通り店」へ。河出書房新社「民俗のふるさと/宮本常一」を110円で購入する。そして最後は「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)に到達。店頭で福音館書店「ぐりとぐらかるた/中川李枝子さく・山脇百合子え」を見つけてから店内へ。すぐさま右側の絵本棚の前にしゃがみ込み、前から狙っていつつも買おうかどうか迷っていた一冊をついに買うことにする。サン企画 国際版カラーレコードつき「ドリトル先生航海記2【グレゴくんのがーるふれんどのまき】」である。1972年にNHKで放送されたアメリカ製作のアニメ版「ドリトル先生」を絵本化した一冊。シュッとしたちょっと気障なドリトル先生と、Pコートがよく似合う9才とは思えぬトーマス(トミー)・スタビンズが印象的で、ドラマレコード(ソノシートではなく、ちゃんとポリ塩化ビニール製のレコードなのである)もしっかり付属。計1900円で購入する。
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すると店主の粟生田さんが「ぐりとぐらかるた」を指し示し、「これ実は、“へ”の絵札がないんですよ〜。だから百円なんですぅ。読み札はちゃんとあるんで、それを元にして自分で描いてください〜ウハハハハハ〜」と宣った。“へ”は『へたでもへいき げんきにうたえ』。というわけなので、予備の無地の絵札に、がんばって描いてみました。おぉ!これでこの「ぐりとぐらかるた」は『中川李枝子さく 山脇百合子・小山力也え』というオリジナルな物になってしまった。いつの日か「みちくさ市」が再開した曉には、無謀にも安値で売りに出してみるか。
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2021年04月16日

4/16カーを買うはずだったのに。

午前十時半、阿佐ヶ谷駅近くで所用を済ませ、そのままの足で荻窪に向かう。「古書ワルツ荻窪店」(2020/07/30参照)では講談社X文庫「大阪ウォーターフロント幽霊事件/風見潤」新潮文庫「帽子収集狂事件/ディクスン・カー」(昭和三十四年初版)講談社「危険な関係/新章文子」(箱ナシ。第五回江戸川乱歩賞受賞作)を計550円で購入する。その際『お買得!!』と書いてある『1回のお会計につき『2000円で¥300引き』『3000円で¥500引き』』二枚綴り券をいただく。続いて「竹中書店」(2009/01/23参照)に赴き、宮内省博物館藏版「増補訂正 工藝志料」實業之日本社「續芳水詩集 復原版 旅人・ふる郷・悲しき笛/有本芳水」を計400円で購入し、曇り空の下を阿佐ヶ谷へと戻る。そして正午を過ぎ、開店したばかりの「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)に立ち寄る。中央通路で、棚の一段を半分ほど占めるディクスン・カーのポケミスに熱視線を浴びせる…どれにしようかな。やはり番号が若い具象絵が表紙のポケミスから…などと熱視線を左から右に流して行くと、ポケミス並びの終わりにパラフィンの掛かった文庫があるのが目に留まる。その次には春陽堂文庫「殺人小説集/濱尾四郎」が並んでいる…ではこの文庫は?すでに期待を込めながら手にすると、春陽堂の日本小説文庫266「爬蟲館事件/海野十三」であった。表紙上部に少し傷みはあるが、お値段2100円也!…嗚呼、俺は今日、この文庫を買うためにコンコ堂に入って来たのだな。これを買おうこれを買おう。これを買わずして、何の探偵小説好きか!と帳場へ颯爽と向かう。「カーを買おうかと思ったら、これを見つけてしまいました」と店主・天野氏に、文庫購入の経緯を説明しながら購入する。
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夕方に再び外出して、西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)へ。盛林堂ミステリアス文庫最新刊「童女裸像/宮野村子」を受け取る。同じ宮野の「無邪気な殺人鬼」に続き、カバーデザインを担当させてもらったのである。カバーの地は、まだ朝早い杉林…未発表作『童女裸像』の冒頭シーンにインスパイアされてのデザインである。収録作は前作に続き単行本未集録のものばかりであるが、中でも表題作『童女裸像』は未発表で、生原稿は高木彬光の旧蔵品なのである。巻末の野地嘉文氏による論考『宮野村子と抜打座談会事件』も魅力の一冊となっておりますので、4/18盛林堂通販サイトで予約開始、4/24通販&店頭で販売開始されるので、気になる方は早めに入手に動かれることをおススメします!
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2021年04月15日

4/15給水塔とカー。

昨夕、雨が束の間上がった桜新町に流れ着くと、住宅街の向こうに異様で荘厳な巨大建築物を認める。大正十二年に作られた、未だ現役の『駒沢給水塔』である。まるで廃墟のように風雪に古びた、高所の鉄橋でつながる二基の給水塔が、現代住宅街の王冠のように空に突き出ている光景は、今が2021年であるのを忘れさせてくれるほどのインパクトであった。過去と現在がわかりやすく交錯する街は、とかく魅力的なものである。
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そして本日、バタバタしている間に阿佐ヶ谷「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)前を通りかかると、店頭百均棚にディクスン・カーのポケミスが出されているではないか!慌てて二冊+αを掴んで店内に入ると、中央通路のミステリ本ゾーンに、やはりカーのポケミスがババッと安値で並んでいた。ついに来たか。懐と相談して、少しずつ買って行くことにしよう。取りあえず今日は店頭で掴んだ三冊を帳場に差し出すと、店主の天野氏が「品出ししておきましたんで」とニッコリ。よし、早速明日またバカみたいに買いに来ることにするか!ハヤカワポケミス「三つの棺」「火刑法廷」ともにディクスン・カー、創芸社「怪談全集2/田中貢太郎」を計330円で購入する。
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ところで和同出版社「白魔の歌/高木彬光」を読了したのだが、精神異常者が多く住まう元鬼警部の家で発生する、異常なほどの粉飾殺人のお話。神津恭介シリーズの一編だが、その粉飾殺人の理由がかなり斬新で、大いに感銘を受ける。こういう華麗に捻った話、大好き!
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2021年04月13日

4/13古本から新聞の写真を軽推理する。

朝からフル回転で机に齧り付いて仕事し、正午前に家を飛び出して、阿佐ヶ谷の南にある『杉並税務署』へ。確定申告滑り込みセーフ……ふぅ、得体の知れぬ肩の荷が、ひとつ下りてくれた…。「千章堂書店」(2009/12/29参照)の百均台を覗き、食指の動く本が見当たらないので、何も買わずに家へと戻る。今日は以降外に出る予定はないので、古本屋さんにも足を運ばぬつもり。たまには家でおとなしくしていよう。なので戯れに、古本が思わぬ発見を齎した出来事をひとつ。今日の「朝日新聞」朝刊(4月13日(火))の文化面に、料理愛好家・平野レミの連載『語る 人生の贈りもの』四回目が載っている。話題は和田誠との新婚当初の面白話。そこに、当時暮らしていたアパート階段前で撮った白黒写真一枚がレイアウトされているのだが、この写真に妙に見覚えがある…というよりは、和田誠の服装と、背後の階段に見覚えがあるのだ。ピン!と閃き、これはもしや…と2021/03/23に神保町「慶文堂書店」(2012/02/14参照)で買った展覧会パンフ、銀座松坂屋「横尾忠則そしてインド篠山紀信」を引っ張り出して来て、51ページの和田誠と横尾忠則のツーショット写真に注目する。和田誠が新聞に載った写真とまったく同じ服装で立っており、ズボンの前ポケットに両手の指先だけを突っ込んだポーズも、ほぼ同じである。印刷物が違うため、粗さの違いはあるが、モノクロの諧調もほぼ同じと言えよう。つまりこの新聞掲載の和田誠とエプロン姿の平野レミのツーショット写真は、クレジットは何処にもないが、恐らく篠山紀信が撮影したものなのである。横尾忠則の「私のアイドル」という幻となった写真集の企画で、和田誠と横尾忠則の写真を撮影した後に、平野レミとのプライベート写真を撮ってもらったのだろう(ちなみにパンフ15ページには横尾忠則が平野レミの父親・平野威馬雄と空のUFOを探すツーショットも)。うふふふふ、持っていた古本から、面白いことがわかってしまった。まぁ何の役にも立たないが、ワクワクしちゃう発見だなぁ。
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2021年04月12日

4/12予定変更の荻窪で結果オーライ!

朝から色々お仕事をこなし、午後に少々の不要&読了古本を抱えて外出。「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)に立ち寄り、古本を買い取っていただきつつ、三一書房「昭和の探偵小説/伊藤秀雄」を530円で購入する。古本を売ったお金で多少懐を暖かくし、さて、あのお店でも見に電車に乗ろうかと、阿佐ヶ谷駅に到着。だがその瞬間、頭上のホームで電車の警笛が鳴り響き、悲しい人身事故が発生してしまった。しばらくはダイヤが乱れるのは必定なので、電車に乗るのを諦め、ズンズン歩いて荻窪に向かうことにする。そう言えば今日から、新型コロナウィルス対策のために、効果があるかどうか不明な『まん延防止等重点措置』が東京23区&6市に適用されたのであった。まぁ今日のところは、静かに素早く近場を見るだけに留めるとするか。と言うわけで「古書ワルツ荻窪店」(2020/07/30参照)に到着。心ざわめき立つことに、結構新入荷が目立つじゃないかと、ミステリ&児童文学&ポケミスゾーンに暗躍する。学研少年少女サスペンス 推理8「少年監督の推理/A=メイヤー」平凡社「世界探偵小説全集3 シャーロック・ホームズの記憶/コナンドイル作 三上於菟吉譯」(箱ナシ)改造社「世界大衆文学全集 世界怪奇探偵事實物語集/松本泰譯」偕成社「世界怪奇名作 幽霊屋敷/西野辰吉」を計2090円で購入する。ふぅ、早速古本を売ったお金で古本をたくさん買ってしまったと、奇妙な感慨を覚えながら「竹中書店」(2009/01/23参照)に移動する。すると、お店のオヤジさんが、店頭二百均台にまさに補充の真っ最中ではないか!これは良いところに行き当たったぞ!しばらく少し離れた場所から補充が終わるのを待ち、オヤジさんが店内に姿を消すと同時に店頭台に駆け付ける。古めの文学本が…井上靖・里見ク・大佛次郎・徳川夢声・源氏鶏太・羽田書店の「宮澤賢治名作選」などなど……ふぅむ。じっくりと隅から隅まで目を通し、一條書房「成蟲樓隨筆/天沼俊一」(函ナシ)朝日新聞社「火の誓ひ/河井寛次郎」を計400円で購入する。うむ、結果的には、電車に乗らずに良かったのかもしれない。リュックを古本で膨らませ、テクテク歩いて帰宅する。
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2021年04月11日

4/11吉祥寺パトロールで探偵双書を。

お昼過ぎに井の頭公園南側の住宅街に流れ着いたので、日曜日の人出でごった返す『井の頭公園』を、スワンボートでさえもごった返している『井の頭池』を怖れを抱いて突っ切って階段を上がり、さらに人が渦巻く吉祥寺の繁華街に身を投じる…素早くパトロールして帰ろう。まずは「バサラブックス」(2015/03/28参照)にて、ポプラ社完全復刻版「少女小説 緑の校庭/芹沢光治良」を300円で購入する。続いて「よみた屋」(2014/08/29参照)に出て、陽の当たる店頭棚から函ナシの朋文堂「峰・峠・氷河/藤木九三編」を110円で購入する。昭和八年刊の、世界の登山愛好者の登山随筆集である。そんな緑色の古書を小脇に抱え、「よみた屋」の裏手に回り込み、中央総武線の高架に近づいて行く…パトロールの〆は「古本のんき」(2021/03/31参照)にて。店頭に様々な古本箱や古本籠が出て、華やかな雰囲気である。手指消毒して中に進むと、まだ結束した本が床に置かれているが、棚はようやく六割ほどが埋まった感じか。大瀧詠一をBGMに、店主さんは懸命に品出し中である。入口入ってすぐの、恐らく児童文学&絵本ゾーンはそのほとんどが埋まっており、現在でもかなり見応えがある。欲しい絵本が何冊か…と感じつつ、左壁棚の一番手前の恐らく文学棚になるであろうゾーンに移動する。最上段には文庫ゾーンとは異なる文庫が固まっている…坂口安吾が集められているな…ぬぅ?あの一際古めの変な文庫は一体?腕を精一杯伸ばして人差し指を引っかけて引き出すと、ほぉっ!春陽堂書店の探偵双書4「不連続殺人事件/坂口安吾」であった。値段を見ると、やれ嬉しや嬉しやの千円なので、即座に購入する。やはりこのお店は、こういう思わぬ出物にふいっと出会える、素敵なお店になるのやもしれぬ。またパトロールに来るのが楽しみである。
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※明日ぐらいにそろそろ書店に並び始める「本の雑誌 さやえんどう炸裂号」の連載『毎日でも通いたい古本屋さん』では、国分寺「七七舎」を秘密取材。とにかく発音し難いこのお店は、店頭も二店分を繋ぎ合わせた店内も、中央線カルチャー的な魅力が満載なのであります。記事を読んだ後は、無闇に触発されて、ぜひ実地にお店を訪ねていただければ幸いです。
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2021年04月10日

4/10古本屋さんで「オバケちゃん」がミュージカル化されていたことを知る。

午後三時過ぎに千歳船橋と祖師ケ谷大蔵の間の千歳台に流れ着いたので、迷わず西に足を向け、古い団地の中を突っ切って、大好きな「祖師谷書房」(2009/03/05参照)をしばし楽しむ。小さな極狭通路の店内の棚と積み上がった本を、丁寧にあちこち突つき回し、三冊を手にする。前進座宣伝部「前進座〈青少年劇場〉公演 オバケちゃん 2幕13場のミュージカル」学研 ムー10月号別冊付録「創刊20周年記念・第1弾 UFO小事典 これ一冊でUFOがわかる!」北海道新聞社「手作り 木のおもちゃ/伊藤英二」を計400円で購入する。松谷みよ子の名作「オバケちゃん」を原作にしたミュージカルのパンフ(1978年刊。劇はこの前年に『厚生省児童福祉文化奨励賞』と『東京都児童演劇優秀賞』を受賞している)がとても嬉しい。まさか吉祥寺の『前進座』が「オバケちゃん」を舞台化していたとは知らなんだ。16pのパンフには原作本の絵が存分に使われており、ちょっとシュールな舞台の写真も一枚掲載…結構大人の女性がオバケちゃん役…み、観てみたかった!
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2021年04月09日

4/9北の貸本屋本と南の稀覯本。

昨夕、突然雨と雷が激しくなった阿佐ヶ谷駅の雑踏で、刷り上がったばかりのカバーデザインを担当した新刊、綺想社 綺想紙漿小説スパイシー三昧貳「叛徒たちの海 生意気娘號の叛乱/ロバート・E・ハワード 海野しぃる訳」を受け取る。水夫で射撃手で密猟者のワイルド・ビル・グラントンが、海や街でB級アクション的に八面六臂の活躍をするシリーズの二巻目である。とにかく邪魔するものはぶん殴り(余りにも自分の鋼鉄の拳での攻撃に固執するため、最愛の恋人に『彼は自分の拳に頼りすぎる悪癖がある』と嘆かれている…)、彼の行くところ、敵の顔面に血の花が咲きまくり、美女にモテまくるのである。例えるなら、秘境に行かない超乱暴でワイルドな人見十吉(香山滋作の秘境探検家)と言ったところか…あぁ痛快痛快。明日から「盛林堂書房」(2012/01/06参照)や「まんだらけ海馬」(2015/02/06参照)で発売開始なので、ハワードのパルプマガジン小説の世界に頭をカラッポにして浸りたい方は、お店にタッタカ走るべし!
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一巻の「地獄船の娘」とともに記念撮影。

本日はお昼過ぎに中野で所用を済ませた後、「まんだらけ海馬」へ。貸本仕様の和同出版社「神津恭介探偵小説全集9 白魔の歌/高木彬光」を880円で購入する。レジのお姉さんに「これ、ビニールでぴっちりコーティングしてあって取り出し難いので、ちょっと上のところを切っておきましょうか?」と親切に言われたのでお願いする。おかげさまで、後で簡単にビニールを剥くことが出来ました。ありがとうございます。カバーは一部貼り付き、後見返しに貸出票(二重に貼り付けられ、人気のほどがうかがえる。みな一日〜二日で読了している)があり、最終ページには貸本屋の印が捺されているが、それほど傷んではいないので、880円なら納得の買物である。印は札幌の伝説の貸本屋「沖本貸本店」のものであった。そのまま『中野ブロードウェイ』を北に通り抜け、『早稲田通り』を西に歩いて家へと向かう。途中、『東京警察病院』の敷地内にカラス避けのカラス人形があるのを目撃したりして、やがて『環七』を越えて高円寺に到達。『庚申通り』に入り込んで「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)に立ち寄る。古本屋さんなのに、店頭の棚にお土産人形を品出しする粟生田さんと挨拶を交わし、いつものように店頭棚にへばりつく。『東京都写真美術館』オープニング展示のカタログ「東京 都市の視線」は消え去った東京の景色オンパレードの素晴らしい一冊。すぐさま抱え込み、さらに棚を見て行くと、琉球文化社「沖縄のユタの本質 霊思想からみた沖縄深層文化の究明/田上晃彩」という本が気になったので引っ張り出してみる。ユタの研究本というのは珍しい気がするが…とページを繰ると、民俗学的な事柄に加え、ユタの超常的能力の秘密に、霊数学で激しく切り込んでいるようだ…な、なんだ、このおかしな本は。事細か過ぎて、かなり鬼気迫るものを感じる…こういうおかしな本は、安ければとにかく買っておかなければ。先ほどの図録とともに計600円で購入する。家に帰って「沖縄のユタの本質」について調べてみると、なかなかの稀覯本であることが判明する。こういう当たりは、古本好き冥利に尽きる展開である。
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北海道の貸本屋本と、沖縄の稀覯本を記念撮影。
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