●沼津「古書 長島書店」駅南口に出てロータリーへ。富士山の雪解け水飲み場や井上靖の文を刻んだ像の横を通り過ぎ、ロータリーから南へのびる『さんさん通り』に入り、ヒトデのようなやけに浅い地下道を潜り抜け、『沼津西武』側の歩道を進む。そして最初に現れた脇道を東に進むと、神社の鳥居と空地の向こうに、細長いトタンの横腹を晒したお店に出会う。平屋の店舗は、プラ日除けの下に店看板、入口横も店名看板…店頭台は無し。しばらく古めかしい街の古本屋然とした姿を楽しんだ後、サッシ扉に近付く。右の扉に手を掛ける…開かない!ビクともしない!…仕方なく左の扉へ…こっちも開かない!ガッチリ鍵がぁ〜!心の中で悲鳴を上げつつ肩を落としていると、背後に停まった車から杖を突いた喪服の老婦人が降りて来た。付き添いの方とこちらに向かって来ながら「まあまあすいません。今開けますからね」との素早い対応に、ええっ!と驚く。大丈夫なんですか?付き添いの方と挨拶を交わした後、鍵を開けながら「お待たせしちゃってすみません」「いえいえそんな」「ほら、法事でね…」と言いつつ扉を開け放ち中へ。「どうぞどうぞ」と招き入れてくれる。「それでは」などと訳の判らないことを言いつつ、かしこまりながら入店。「電気を点けますね」と言って老婦人は奥に消えた。静かになる店内。ちょっと狭めの正方形で、壁はぐるりと古い造り付けの本棚、真ん中には平台と棚が複雑に組み合わさった背中合わせの棚。右通路棚下には幅も広めな本の島、左通路棚下には低めの平台が設置されている。そして左奥に住居への入口兼帳場があり、そこにはピカピカの床板。とそこに、素早く着替えた老婦人が戻って来た。「ゆっくりしていってくださいね」に「ありがとうございます」と答え、ツアースタート。左壁棚には、経済・日本文学・文学評論・歴史・木曾関連・宗教・映画・精神・戦争などが並び、下には大判の美術&ビジュアル本がテーブルのように積み上げられている。上の天井近くには「東海道五十三次の『沼津』の浮世絵」が飾られている。向かいには、カラーブックス・文学関連・海外文学文庫・ブルーバックス・図録、下にアダルトと並んでいる。裏側にはミステリ&時代劇文庫、そして棚脇には全集本や雑学文庫・新書・アダルトなどが置かれている。店奥壁棚には、郷土本・資料本・学術本・自然・辞書・新書と収まる。左壁には、日本文学・海外文学・最近刊文学・歴史&時代小説、下には雑多な文庫本と共に、新書サイズの山田風太郎や南篠範夫。上質ではあるが、アダルトまでしっかりと手を伸ばしている街の古本屋さんである。右壁棚に何かがある予感!値段は安いです。本を二冊選び出して帳場に差し出す。「まあまあありがとうございます」と言いつつ、丁寧に袋に入れてくれる。そしておもむろに「どうぞ文庫本、お好きなものをお持ち下さい。そこの推理物など軽いやつをどうぞ〜」えっ?ど、どう言うことですか?「お待たせしちゃったんで、二冊お好きなのをお持ち下さい」…あぁ、何と素晴らしき提案!こんなことがあるなんて…オミヤゲを頂ける古本屋さんなんて…。では、と棚に目をやると、何だか上手く選べない。まるで「舌切り雀」でつづらを選んでいるような不思議な気分…俺は今、民話の世界の中にいるのだろうか?非常に恐縮しながら二冊選び出し「ではこれを頂きます」と本を見せると、「どうぞどうぞ、またお越しになってくださいね」のありがたいお言葉。あぁ、今日の電車が時刻通りに動いていたら、先に昼食を食べていなかったら、このお店に入ることは叶わなかった。古本屋の神々のイタズラに感謝!そしてお店の老婦人に大感謝!!!実業之日本社「文学碑のある風景/小川和佑」駸々堂「欲望する映像/小岸昭」を購入。そして、春陽堂「恐怖城/佐左木俊郎」講談社文庫「すべてがFになる/森博嗣」を頂く。
●沼津「古書 平松書店」『さんさん通り』をさらに南へ。『大手町』の交差点で西側歩道に移動して、そのまま南へ。交差点から二本目の脇道を西へ進む。アーケードの終わりの尻尾部分を潜り抜けると、右側にホテルとパーキングが合体した大きな建物。しかし経年劣化が激しいようで、ホテルは閉鎖中のようだ。そんな建物の一階にお店はある。一階軒には黄色い大きな日除け、その下右側壁に洋風ランプ、その下には室外機の上に置かれた辞書と郵便受、路上にはベンチが置かれている。左側には巨大な正方形の黄色い看板と、100均平台が二台。それぞれに単行本が古い本を間に挟んで詰められている。入口から入った左側にも文庫の平積み安売り台。中を見通すと、縦長で奥深く天井の高いお店。しかしその下半分の通路には本が激しく積み上がり、通路はかろうじて人が擦れ違える幅となっている。両壁は本棚、真ん中に背中合わせの本棚が一本、奥に帳場と一本の本棚。首にタオルを巻いた好々爺なオヤジさんが座っているが、その周囲は危険な本の崖に囲まれている。と言うわけで左右両壁の下半分は、積み上げられた本しか見ることは出来ない。右壁には写真集・アダルト雑誌・ビジュアルムック・美術図録・日本文学(沼津名誉市民・井上靖多し)・文学評論・随筆・美術・工芸(日本刀関連多し)と並ぶ。下の本の山も古い文学本が平気で紛れ込んでいたりするので、充分なチェックが必要である。向かいには文庫がズラッと並び、再びの日本文学・骨董・京都本・外国文学。オヤジさんとアダルト棚前を通り右側通路へ。壁棚には郷土関連本・学術&資料本・歴史・古典・映画・戦争・経済と続き、下には未整理本や兵器関連などが積み上げられている。向かいには、ハーレクイン・囲碁・将棋・新書・ノベルス・実用と並ぶ。乱雑だが見応えはバッチリ。少し硬めと言えども、うまく本の波に乗りさえすれば、時を忘れて楽しめます。棚前の山の中に欲しい本を発見してしまう。上から六冊目くらいの位置だが、左右からナナメに本がしなだれ掛かり、抜き出すのに一苦労。上の本を左右の山を崩さぬように、一冊一冊抜き取って行く。ちょっとの動きが本の山をユラユラと動かしてしまう…これじゃあまるで巨大なリアルジェンガ!ようやく目的の本にたどり着き、慎重に手元に引き寄せる。苦労して手にした本の裏見返しには二つの値段…帳場に向かい「これ、値段が二つ付いてるんですけど、どちらが本当の?」と聞くと、店主は二カッと微笑み「あぁ、これはこっちですよ」と優しく安い方の値を指差す。と言うことで即座に購入決定!本を包装中に店主が本を見ながら「これ…」と一言発したが、後には何も言葉が続かない。何?えっ何?この本がどうかしたんですか?甲文社「寺田寅彦の追想/中谷宇吉郎」を購入。
ここまで来た甲斐があると言う、古本ではなく、正に古本屋さんに出会うための沼津行となった。よし次ぎは『静岡』目指してがんばるぞっ!

