
●「跡形も無く…」
根津にあった木造商店の貸本屋「なかよし文庫」である。その凛とした姿は、時代を高く飛び越え過ぎていた。私はこのお店が営業しているのを見た事が無い。扉には貸本屋を閉店し、在庫を放出して古本屋として再スタートすると宣言した、立派なプレート掲げられていた。しかしこの宣言は中々実現することなく、時は坦々と過ぎて行った…。そして去年の9月に訪れてみると、そこは杭に囲まれた更地と化していた。ガラスのカケラがキラキラと輝く…古本屋として開店したところをぜひとも見てみたかった…そして古本を買いたかった!お店の跡地が、それでも昭和の風景に見えるのは、まだお店の魔力がかろうじて効力を発揮しているのだろうか…。お疲れさまでした。

●「柳丁木書」
市谷柳町の交差点近くに佇むその姿は、異様な迫力に満ちている。肌色の壁が風雨のために、斑に黒く変色。一階店舗のシャッターも雨戸も閉ざされたままである。かろうじて生活の気配があるような…。そして軒下にあるボロボロの欠落した看板文字…これが無ければ、この建物が書店と言うことには到底気付かなかっただろう。元は「柳町 鈴木書店」だったのが「柳丁 木書」と成り果てた、造作の美しい木製の看板文字。“鈴”“店”の文字の運命や如何に?ある日突然店頭に落ちていて、無事に回収されたことを願いたい。

●「塵芥箱」
板橋の大山駅から板橋区役所前駅に向かう途中、『中山道』手前の氷川神社前で偶然発見。その崩壊寸前の建物が、在りし日の古書店の姿であることに気付き、激しい衝撃を覚えた。平屋の側面を見ると、剥がれ落ちる下見板、垂れ下がる雨樋、歪んだ根太、傾いたガラス戸…そして壁際に懐かしいコンクリ製の塵芥箱…随分と人の手から離れた雰囲気なのである。表に回るとピッチリと閉じられた木枠のガラス戸。中もカーテンが閉め切られている。そして板ガラスに、古風な「末広書房」の文字。かつては金色に光輝いていたことを伺わせる。それにしても何と旧世代の古本屋の姿を、見事に留めていることかっ!外の塵芥箱も含め、「東京たてもの園」に移築する価値ありなのは間違いない!
「なかよし」文庫以外は、ネット検索にしっかり引っ掛かるので、この建物の内部で、今もしっかり営業中なのかもしれない。過去の古本屋地図では「鈴木書房」は“即売会が中心”、「末広書房」は“閉まっていることが多い。倉庫形式”などと書かれている。今回の物件は、完全なる店舗の姿なので“生きた化石”ということにしておこう。それにしても「東京たてもの園」さん、そろそろ園内に古本屋(もしくは本屋)を移築しませんか?不景気なので予算は苦しいと思いますが、建物は姿を消して行く一方です!


この塵芥箱、形態は同じでも、大きさはまちまちですね。三島市では、今もって生きている(使われている)モノもあります。ゴミ寸前の物件、他の用途に使われている(花壇)物件もずいぶんありますね。