2010年09月09日

9/9福島・いわきで初電話二店+幻影一店!

スケジュールとはままならぬものである。本来なら仕事でビッチリだったはずの今日が、ポッカリと穴を開けてしまった…。やるせなさよりも“これはチャンス!?”の気持ちが大きくなり、ちょっとだけ迷った末に遠くへ!北へ!ナナメ北へ!早起き気味に、上野始発の電車に乗り込めば、もう後ろめたさはホームに置き去り。目指すは『いわき』!私がこの都市を初めて知ったのは、小学校低学年の時に読んだ漫画「ドカベン」によってである。確か凄いフォークを投げるピッチャーが『いわき高校』にいて……『ひたち』を過ぎると緑が異様に暗くなり、列車は未知なる都市に向かって走り続ける。果たしてどんな古本屋さんが待ち構えているのだろうか…?


nogi_shoten.jpg●いわき「野木書店」
最初に駅近くのお店に行ってみるが、まだ開いていない。時刻は12時過ぎ。早過ぎたのだろうか。仕方なく南東にある「古書じゃんがら」に向かうが、お店は何処にも見当たらない。駅方面へと引き返し、再び先ほどのお店へ…開いてない。現在時刻は13時。貼紙によると営業時間は『12時〜17時・水曜定休』となっている。また後ほどしつこく立ち寄ることに決め、南西のお店へ向かう。駅から南口を出て『駅前大通り』を南下。やがてぶつかる『国道6号』をひたすら西へ。一キロほど進んで新川を越え、道なりにまだ進んで行くと、左手に現れる分かれ道。その脇の古い家屋に古本屋さんの看板がっ!…しかしカーテンは閉じられ看板はボロボロ…窓の端に雑誌の束が見えているが、ちょっと営業している感じではない。しかしどれだけ格好良いお店なんだ!店内に入り、本棚を眺める幻影を創り出しながら、勇者をカメラに収めてさらに先へ…。


kyoritsumae_shoten.jpg●いわき「共立前書店」
さらに先にあるはずのお店を求め、道なりに南西へ進んで行く。この時、嫌な予感が頭をチラリ。さっきのお店には結局入れず、この先のお店も無かったとすると、今日の行程はすべて空振りに…そうなったら次の手をまったく考えていない!この街には結構お店があるから大丈夫だろう、と気楽に考えていたが(いつものことなのだが)私が愚かであった。やはり古本屋を侮るべからず!…とかなんとか頭をいっぱいにしながら一キロ強をさらに進む。すると『御厩一丁目交差点』を過ぎた所で、右手の大きな駐車場前に『古本』と書かれた立看板が目に飛び込んで来たっ!おぉ、ある!あるじゃないですか!対岸から白いお店を眺めると、店内は暗いが隣のドアが開いており、本の中にオヤジさんの後姿が見えている。『何とかなりそうだな』と道路を横断して、早速店内に入り込む。横長の小さな薄暗い店内で、目に入るのはコミックとアダルトばかり…オヤジさんのいるスペースとは、左の帳場でつながっているようだ。壁は一面本棚、フロアには横向きに背の低いラックと、奥には背中合わせの棚が一本置かれている。手前のラックや帳場周りには、すべてアダルト雑誌。右壁と背中合わせの棚はすべてコミックで、あらゆる隙間に丁寧に本が詰められている。奥の通路に行くと、奥壁と左壁に古本があるのを確認。文庫・ノベルス・ハードカバーが、ミステリ&アクション&バイオレンス&時代劇な並びを見せる。大人の漫画週刊誌のようなお店である。欲望&願望中心主義な棚造りが、国道沿いに毒々しい花を咲かせている。値段は安め。何とか一冊選んで帳場奥のオヤジさんに声を掛ける。カンカン帽に甚平姿の弱気な勝新太郎的風貌。本の値段を確認して即座に20円引き。「このままでいいよな」と裸の本をそのままヌッ。もちろんです!講談社文庫「名探偵に名前はいらない/関川夏央」を購入。


taira_dokusyo_club.jpg●いわき「平読書クラブ」
本日三度目のお店の前。サッシにまたもや手を掛けるがビクともせず、店内は暗いまま…やはりダメだったか。今にも開きそうなんだけどなぁ。まぁどうにか一軒ツアー出来たんで、形にはなるじゃないか…いやしかし、私は『いわき』に関川夏央の文庫を買いに来た訳ではないのだっ!爽やかな風が吹き抜ける店頭で、身体をグルグルひっくり返して悩み続ける。このままではイカン!とケータイを取り出し、意を決してお店の番号をプッシュ!…やれることは全部やろう…。十回ほどのコールの後、「ハイ、読書クラブです」女の人だ。「あの〜ちょっとお伺いしたいことがありまして…」「ハイ」「今日はお店はお休みなんでしょうか?」「どういったご用件ですか?」不審の声音。「いえ、今お店の前に来てるんですが、営業時間なのに開いてないな〜と思いまして」「あらあら、そうなんですか。じゃあ今開けますね。ちょっとお待ち下さい」…や、やった〜ぁっ!わざわざ開けてもらえるなんてっ!とジリジリしながら店頭でその時を待つ。しばらくすると、引戸の向こうにご婦人がにこやかに現れ、「お待たせしました。どうぞ。年取ると開けなくなっちゃってね」と気さくに言葉を掛けてくれる。「失礼します」と通路に入った瞬間、奥から灰と白斑の雑種犬がよたよたと飛び出し、「わんわん!」と吠え始めた。「ハナちゃん、いいの。吠えないの」との制止を無視し、吠えながらさらにジリジリ。屈んで鼻面に手をゆっくりと差し出すと、吠えながらも匂いをクンクン。一通り嗅いだところで満足し、奥の帳場に座ったご婦人の横に寝転んだ。店内は古めかしく少し雑然としている。壁は一面木製造り付け本棚で、真ん中に背中合わせの木製棚が三本。奥にカウンターと言うか、番台的な低めの木製畳敷き帳場がある。左奥に二階への階段と、小さな小部屋的スペース。ご婦人はドラマを見始め、時折掛かってきた注文の電話に受け答えをしている。最初に入った右から二番目通路は、右側に古いものを交え文庫と新書が並んで行く。左は本が横積みされており、並びはカオスのどうやらネット販売対応棚。右端の通路は行き止まりとなっており、左に文学評論・詩集・歌集。奥と右壁には、いわき・郡山・福島・東北の本がビッシリ並び(地方出版ふくしま文庫あり)、帳場近くには民俗学と柳田国男。テレビを見ているご婦人と、寝転んでいるが眼がギョロつくハナちゃんのいる帳場前を、ソ〜ッと通って第三通路へ。右は横積みネット販売対応棚、左は日本文学と文学評論中心の並び。左端通路は、右に美術・美術図録・作品集。左壁は宗教・書・陶芸・骨董・美術が並び、奥の小部屋まで日本文学・文学評論・風俗・社会・資料などが渾然一体となって続いて行く。古い本や箱入り本が多く、文学・東北・美術に強いお店である。お願いして開けていただいた状況なので、あまり腰を据えられずゆっくり見ることが出来なかったのが残念。電話によるお客さんとの会話では、店主さんは80代、奥さんは70代とのこと。本への情熱はしっかりと持ち続けているが、やはり体力が…と言うようなことを話されていた。非常に教養度の高いお店なので、いわきの本文化維持のためには、まだまだ奮闘していただきたい!最近では『日本の古本屋』で販売も始めたらしく、そのためかどうかは判らないが、値段は結構しっかりな普通〜高めとなっている。本を手にご婦人に声を掛けると「うわっ!びっくりした。今テレビがコワイシーンだったからさぁ」とお茶目過ぎる発言。お店を開けてもらったお礼を言い、ハナちゃんにも別れを告げ、最後に目録をいただき辞去。う〜ん、達成感が心地良い。ミリオン・ブックス「動物随筆 猫の裁判/内田亨」築地書館「昆虫放談/小山内龍」を購入。

一時はどうなるかと思った“いわき行”だが、一本の電話が道を切り開いたことが、本当に嬉しかった。「読書クラブ」に感謝。こちらは雲に日が隠れて、途端に肌寒い秋。東京からは200キロ。サラッとした風に吹かれて、人気の少ない街路を進んで行くと、視界の隅をオニヤンマが過ぎる、直線の鋭い軌跡。
posted by tokusan at 21:06| Comment(4) | TrackBack(0) | 東北 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
東京からナナメ北へ200kmですか。ご苦労様です。私は「日本の古本屋」から「昆蟲放談」を平読書クラブさんで購入しました。古ツア・ブログ読み出してこのかた、本と書店が同期したのは初めてで、ささやかですが、これはこれで嬉しいものです。時期も同じように2年前の夏の終わり。この季節は昆虫ものに手が出るのでしょうか。小山内龍という著者と店名(読書同好会みたい)で、どんなお店なのか、それとも卓を囲んで読書会でもしているのか、マジで想像したものです。これで疑問は全て解決しました。(遺跡カテゴリーみたいな)野木書店の看板風景いいですね〜。
Posted by ポール・スター at 2010年09月10日 13:59
なんたる偶然!なんたる奇跡!もはや笑うしかない楽しい状態!疑問が氷解したとは、遠征した甲斐がありました。それにしても売れた本をしっかりまた仕入れているとは、感心しました。いつの日かいわきに行かれることがあったら、何はともあれ訪ねてみて下さい!
Posted by tokusan at 2010年09月12日 00:21
野木書店行ってきました。今は自宅を立て直されたのか立派なお店になっていました。ただしかなりのきまぐれ不定期営業で、今回は電話をかけて開けてもらいました。ネットや古書市中心の営業らしいです。平読書クラブも電話をかけましたがこちらは出ず。植田コインはやっていたのでこちらは普通に入れました。戦前の本もあってかなりマニアックな品揃えですよ。
Posted by しんしん at 2015年02月16日 10:33
しんしん様。「野木書店」に入られたんですか!うわぁ、いいなぁ。しかもこの写真の姿から変わっているとは。機会があれば「植田コイン」と共に再チャレンジしてみます。
Posted by 古ツア at 2015年02月17日 17:45
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