いよいよ使用可能になった“JR東日本パス”で遠くへ!普段手の届かない、東京から離れた所へ!とやたら意気込んで、新潟駅で古びた特急列車の羽越本線に乗り換える。生まれて初めて乗る路線である。広大な機関区と阿賀野川を過ぎると、スケールのデカイ水田群が続く。もはやそれは、稲が揺れる緑の海である。途中、坂町駅にある操車場のイカした廃墟に震えたりしながら、一時間ほどで待望の日本海に接触!水田や墓場越しに見る、岩礁あらわな海は、今までに見たことの無い新鮮な景色である。絶壁に挟まれたような、砂浜のある集落を、トンネルと共に次々と通過して行く。初めて目にする車窓を楽しみまくっていると、時間は素早く流れ去り、いつの間にか庄内平野に入り込んでいる。またもや稲の海となるが、山が近いので新潟とは異なる印象を受ける。駅に到着して降りようとすると、足元の電車とホームの隙間には、大きな蕗の葉が広がっていた。長閑さを感じつつ、跨線橋を渡って改札から外へ。ぽっかりした小規模な地方都市である。まずはロータリーを抜けて『駅前通り』に入ろうと思ったのだが、左右共に大きく回り込まないと先には進めない構造になっている。ブツクサ言いながら車道をショートカットし、南へ進み始める。ビルの間を抜け空の広い通りを歩き、交差点を三つ過ぎると、歩道屋根の架かる『サンロード日吉商店街』に差し掛かる。そこもタッタカ抜けると、行く手にナナメの交差点が現れ、右には『山王日枝神社』。そこを南西に曲がり込むと、道は『山王通り』となり、道だけが新しい観光地的な商店街。さらに進む…ちょっと不安になりながら歩を進めるが、それは杞憂に終わった。通りの終わりが見えて来た時、右手にある古本屋さんが視界に入って来た…こ、これは…ここまで来た甲斐があったと即座に思わせる外観に、先制パンチをバスッと食らう!少し新宿紀伊国屋書店のファサードを連想させるな…。モダンな昭和四十年代的建築!丸みを帯びた軒にある明朝の看板文字が、その印象をさらに強くする。二階真ん中はガラスブロックがはめ込まれ、壁からは『週刊現代』&『with』の看板が飛び出している…元は新刊書店だったのだろうか?一階真ん中には、大きな『本』の看板があり、二ヶ所の出入口には「古書ビビビ」(2009/10/15参照)と同じようなプラ扉のある手作り棚や、スライド本棚・ダンボール箱・柳行李が迫っている。文庫・新書・単行本・雑誌・実用ノベルス・コミックなどの、それほど古くはない本が並んでいる。左端の棚には『古本50円』の看板あり。一通り眺めてからラジオの流れる店内に入ると、ちょっと雑然としているが…あれあれ?新刊書店みたいだな…古本はあることにはあるが…。左側手前にまずは古本で出来た大きな島がある。古い単行本・和本・雑誌が構成物。左奥には二階へ上がる階段があり、その壁沿いに上がって行く階段の下に、文庫と新書の棚が二本。古い岩波文庫が特徴的である。右側にあるラック下に詰まった和本の束に驚きつつ右奥へ。すると壁棚に、山形・庄内の本がズラッと並んでいる。大半は古本のようだ。右端通路はその流れか、山形関連の新刊や地方出版物が集まる、素晴らしい棚とラックが続く。ラック脇には鶴岡出身作家・藤沢周平の色紙や手紙と共に、藤沢周平地図も置かれている。棚から一冊取って入口側にあるレジへ。そこには元気な鼻歌交じりの老婦人。本を差し出すと同時に、上がれそうだった二階について聞いてみると、「あ、二階は古本です。どうぞご覧になってください」とのこと。やった!古本への喜びが滲み出ていたのか、精算が終わると老婦人は一枚の紙片を取り出し、「これよかったらどうぞ。佐藤賢一さんが中央公論に、このお店について書いてくれたんですよ」とにっこり。ありがたく頂戴する。「じゃあ見させてもらいます」と、全集の積み上がる階段を上がり、電灯の点いていない薄暗い二階へ!するとそこは、予想もしなかった驚きの古本迷宮!これは大変だっ!壁際はすべて本棚で、三本の背中合わせの棚と、間仕切り的な本棚が一本、右奥は小部屋状になっておりそこにも本棚は続いているのだが、大きな机と大きな収納棚があり、どうやら作業スペースのよう。階段部分は吹き抜けになっているので、フロアの手前側の辺がナナメになっており、二階全体を少しだけ複雑な印象にしている。そして棚の並びはかなりのカオスっ!しかも棚には二重に本が入っており、奥に背がチラリと見えている。完全なる無秩序ではないのだが、各所に同ジャンルが出現したりと、非常に把握し辛いことになっているのだ。そのジャンルは、山形・庄内・鶴岡・東北・日本文学・日本近代文学・丸谷才一&佐藤賢一など地元所縁作家・文学評論・俳句・短歌・古典文学・古い翻訳本・文芸雑誌・歴史・歴史小説・近代史・戦争・民俗学・古代史・考古学・風俗・世相・修身教科書・和本・仙花紙本・思想・科学・自然・宗教・全集・辞典・学術書・文庫・新書…。山形・歴史・日本近代文学・戦争が目立ち、とにかく古い本が多い。いやいや、とてもこの短時間で見きれる量じゃないぞ。薄暗い棚の間で、ひとり激しく静かに興奮しながら、必死に本の背文字を読み取る作業!…楽しかった!しかしどれも値段が付いてないな。四十分ほど二階に篭もり、三冊を手に階下へ。いくらなんだろう?とドキドキしながら「ありがとうございました。二階、スゴイですね」と本を渡すと、一律四百円の値を告げられる。安いっす!さらにお礼を告げて精算を済ませ、歌うような「ありがとうございましたぁ〜」に送られ外へ。気持ちの良い庄内の空気を、胸いっぱいに吸い込むが、大変だ!もはやタイムリミット!急いで駅まで駆け戻り、またもや羽越本線の人となる。日帰りで遠くまで来ると、やっぱり滞在時間がシビアになるなぁ…。一階にて東北出版企画「横光利一とやまがた/工藤恆治」を、二階にて日本週報社「どろんろん 最後の忍者/藤田西湖」弘文社「歌境心境/吉井勇」現代思潮社「虚空/埴谷雄高」を購入。
2011年06月12日
6/12山形・鶴岡 阿部久書店
いよいよ使用可能になった“JR東日本パス”で遠くへ!普段手の届かない、東京から離れた所へ!とやたら意気込んで、新潟駅で古びた特急列車の羽越本線に乗り換える。生まれて初めて乗る路線である。広大な機関区と阿賀野川を過ぎると、スケールのデカイ水田群が続く。もはやそれは、稲が揺れる緑の海である。途中、坂町駅にある操車場のイカした廃墟に震えたりしながら、一時間ほどで待望の日本海に接触!水田や墓場越しに見る、岩礁あらわな海は、今までに見たことの無い新鮮な景色である。絶壁に挟まれたような、砂浜のある集落を、トンネルと共に次々と通過して行く。初めて目にする車窓を楽しみまくっていると、時間は素早く流れ去り、いつの間にか庄内平野に入り込んでいる。またもや稲の海となるが、山が近いので新潟とは異なる印象を受ける。駅に到着して降りようとすると、足元の電車とホームの隙間には、大きな蕗の葉が広がっていた。長閑さを感じつつ、跨線橋を渡って改札から外へ。ぽっかりした小規模な地方都市である。まずはロータリーを抜けて『駅前通り』に入ろうと思ったのだが、左右共に大きく回り込まないと先には進めない構造になっている。ブツクサ言いながら車道をショートカットし、南へ進み始める。ビルの間を抜け空の広い通りを歩き、交差点を三つ過ぎると、歩道屋根の架かる『サンロード日吉商店街』に差し掛かる。そこもタッタカ抜けると、行く手にナナメの交差点が現れ、右には『山王日枝神社』。そこを南西に曲がり込むと、道は『山王通り』となり、道だけが新しい観光地的な商店街。さらに進む…ちょっと不安になりながら歩を進めるが、それは杞憂に終わった。通りの終わりが見えて来た時、右手にある古本屋さんが視界に入って来た…こ、これは…ここまで来た甲斐があったと即座に思わせる外観に、先制パンチをバスッと食らう!少し新宿紀伊国屋書店のファサードを連想させるな…。モダンな昭和四十年代的建築!丸みを帯びた軒にある明朝の看板文字が、その印象をさらに強くする。二階真ん中はガラスブロックがはめ込まれ、壁からは『週刊現代』&『with』の看板が飛び出している…元は新刊書店だったのだろうか?一階真ん中には、大きな『本』の看板があり、二ヶ所の出入口には「古書ビビビ」(2009/10/15参照)と同じようなプラ扉のある手作り棚や、スライド本棚・ダンボール箱・柳行李が迫っている。文庫・新書・単行本・雑誌・実用ノベルス・コミックなどの、それほど古くはない本が並んでいる。左端の棚には『古本50円』の看板あり。一通り眺めてからラジオの流れる店内に入ると、ちょっと雑然としているが…あれあれ?新刊書店みたいだな…古本はあることにはあるが…。左側手前にまずは古本で出来た大きな島がある。古い単行本・和本・雑誌が構成物。左奥には二階へ上がる階段があり、その壁沿いに上がって行く階段の下に、文庫と新書の棚が二本。古い岩波文庫が特徴的である。右側にあるラック下に詰まった和本の束に驚きつつ右奥へ。すると壁棚に、山形・庄内の本がズラッと並んでいる。大半は古本のようだ。右端通路はその流れか、山形関連の新刊や地方出版物が集まる、素晴らしい棚とラックが続く。ラック脇には鶴岡出身作家・藤沢周平の色紙や手紙と共に、藤沢周平地図も置かれている。棚から一冊取って入口側にあるレジへ。そこには元気な鼻歌交じりの老婦人。本を差し出すと同時に、上がれそうだった二階について聞いてみると、「あ、二階は古本です。どうぞご覧になってください」とのこと。やった!古本への喜びが滲み出ていたのか、精算が終わると老婦人は一枚の紙片を取り出し、「これよかったらどうぞ。佐藤賢一さんが中央公論に、このお店について書いてくれたんですよ」とにっこり。ありがたく頂戴する。「じゃあ見させてもらいます」と、全集の積み上がる階段を上がり、電灯の点いていない薄暗い二階へ!するとそこは、予想もしなかった驚きの古本迷宮!これは大変だっ!壁際はすべて本棚で、三本の背中合わせの棚と、間仕切り的な本棚が一本、右奥は小部屋状になっておりそこにも本棚は続いているのだが、大きな机と大きな収納棚があり、どうやら作業スペースのよう。階段部分は吹き抜けになっているので、フロアの手前側の辺がナナメになっており、二階全体を少しだけ複雑な印象にしている。そして棚の並びはかなりのカオスっ!しかも棚には二重に本が入っており、奥に背がチラリと見えている。完全なる無秩序ではないのだが、各所に同ジャンルが出現したりと、非常に把握し辛いことになっているのだ。そのジャンルは、山形・庄内・鶴岡・東北・日本文学・日本近代文学・丸谷才一&佐藤賢一など地元所縁作家・文学評論・俳句・短歌・古典文学・古い翻訳本・文芸雑誌・歴史・歴史小説・近代史・戦争・民俗学・古代史・考古学・風俗・世相・修身教科書・和本・仙花紙本・思想・科学・自然・宗教・全集・辞典・学術書・文庫・新書…。山形・歴史・日本近代文学・戦争が目立ち、とにかく古い本が多い。いやいや、とてもこの短時間で見きれる量じゃないぞ。薄暗い棚の間で、ひとり激しく静かに興奮しながら、必死に本の背文字を読み取る作業!…楽しかった!しかしどれも値段が付いてないな。四十分ほど二階に篭もり、三冊を手に階下へ。いくらなんだろう?とドキドキしながら「ありがとうございました。二階、スゴイですね」と本を渡すと、一律四百円の値を告げられる。安いっす!さらにお礼を告げて精算を済ませ、歌うような「ありがとうございましたぁ〜」に送られ外へ。気持ちの良い庄内の空気を、胸いっぱいに吸い込むが、大変だ!もはやタイムリミット!急いで駅まで駆け戻り、またもや羽越本線の人となる。日帰りで遠くまで来ると、やっぱり滞在時間がシビアになるなぁ…。一階にて東北出版企画「横光利一とやまがた/工藤恆治」を、二階にて日本週報社「どろんろん 最後の忍者/藤田西湖」弘文社「歌境心境/吉井勇」現代思潮社「虚空/埴谷雄高」を購入。
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阿部久書店はその後モダンに改装して、カウンターやいすが置かれて、前も好きでしたが、いい感じにリニューアルされました。
二階へも上りやすくなりましたよ。
どろんろんの本、学生時代に新刊で読んだので懐かしかったです。私は二階で「邪馬台の美姫」を買いました。
鶴岡市の古書や古文書は市立図書館にも収納されているので、機会があればそちらもどうぞ!
藤沢周平記念館も荘内神社脇にできました。