●宮城・塩釜「明日香書店」
高台のホームからロータリーに出て、駅前の通りを北へ。右手には白く大きな『生涯学習センター』。そこを過ぎると、『古本 駐車場』とある黄色い立看板が出現…古本のための駐車場かっ!?…砂利敷きの駐車場を備えた、プレハブ小屋のちょっとアナーキーなお店である。おぉ!と感動しながら、小石を踏み締め建物へ近付く。左手には看板や木材が、廃物のように積み上がっている。入口横にも改めて立看板、壁面にも大きな店名看板…看板が多い…と扉の前に立つと、そこには小さな貼紙があった。『東北関東大震災の為、当分の間休業いたします。店主敬白』。誠に残念であるが致し方ない。営業再開の日を、待ちわびてます!すぐに駅に踵を返し、東北本線で仙台へ逆戻り。ここから再び新幹線に乗り、一ノ関でまたもや東北本線に乗り換える。パスが無ければ容易には実行出来ない荒技である…電車は美しい北上川の土手に沿いながら、みずみずしさに溢れた土地を、北へ進んで行く。
●岩手・水沢「白神堂書店」
有人改札を、パスを見せて抜ける。白く爽やかな、ちょっと大きな街で、中央には岩手競馬を応援する、和風の小塔が屹立している。ロータリー左奥の南へ延びる道を進んで行く。寂れた駅前の脇道と言う感じだが、明るい陽光と気持ちの良い風のおかげで、侘しさは生まれてこない。やがて県道のような『国道397号線』にたどり着くので、今度は進路を西へ採る。すると50mも歩かないうちに、左手の道路際にお店の看板が、ぴょこんと立っていた。近付いてみるとお店も道路際まで迫っており、シャッター四枚のうち二枚がガッチリ下ろされ、一枚が1/3、一枚が1/4下ろされている不穏な状況…これは営業中なのだろうか?そおっと開いている部分に近寄ると、岩手郷土資料本が並ぶウィンドウとガラス扉は、汚れて曇りガラスに成りかけていた。シャッターの隙間に本の入った木箱や壁棚が見えているが、詳しく見ることは出来ない。ちゃんと見られて本が取り出せるのは、入口横の新書棚のみである。ちょっと入口で逡巡したが、中の電気が点いているのを確認し、思い切って扉に手を掛けた。鍵は掛かっておらず、スッと抵抗無く開いた。その瞬間に押し寄せる古本の奔流!…店内はギチギチ状態だったのである。本のタワーと棚越しに右手を見ると、本の山に囲まれた真ん中で、西部邁風店主が前屈みな姿勢で読書中。店内が倉庫のようにも見えるので、取り合えず「こんにちは」と挨拶してみた。ギョロリと上目遣いに一瞬視線を寄越しただけで、すぐに本の世界へ…まぁ見ていいと言うことだろう。店舗は小さな逆“L”字型で、壁際には本棚、左手前には横向きの背中合わせの棚が一本、右奥は壁棚と真ん中にラック棚が置かれ、右側の帳場と思しき場所は、壁棚と幾重もの本の山と小さな棚に取り囲まれている。そして各通路には横積み本や未整理本が、顎辺りまでドバドバと背を伸ばしている。おかげで棚の下部は見えず&通路自体も人間ひとりが通れるかどうかの状況になっている。一応すべての通路に床は見えているのだが、これはもう古本職人だけが辿ることの出来る、秘密の間道である!私は周りに接触して被害を及ぼさぬようよう、赤外線センサーを切り抜けるかの如く、珍妙な動きで各間道にチャレンジして行く。入口右横の小さな棚に、古めの中国系文庫・海外文学文庫・思想系文庫が並んでいる。入口左横壁際には、岩手資料本・歴史。背中合わせの棚には、日本文学文庫・日本純文学文庫・海外文学文庫・新書が収まっており、品切・絶版が多く見応えあり。左奥壁にはミステリ&エンタメ・海外文学・フランス文学・辞書と続く。こちら側の二本の通路は、奥までの侵入は不可能となっている。身体を縦に横に巧みに操作し、忍び足で右奥へ。左には美術ビジュアル本と下に宗教棚。真ん中のラックには、落語・映画・音楽・鉄道雑誌・文学ビジュアル雑誌・兵器・美術が並ぶ。奥壁には、お茶・都市・政治・思想。右壁の帳場前にも一本通路棚があり、古典文学が並べられている。右壁棚には、科学・数学・動物・昆虫・日本文学・文学評論と続き、ウィンドウ裏のアジア&中国文学・探検・紀行・飛行・詩歌となって行く。おっ、帳場の周りに民俗学が…。店内はかなり過酷な状況だが、文庫と文学に良書が多い。上段しか見られないのが、返す返すも残念である。値段はしっかりの隙ナシ。文庫や新書には安い本あり。古本間道を脱出して、二冊の文庫を店主に渡すと、一冊を指し示し「これ高いよ。いいの?」と聞いてきた…時たま聞かれることであるが、こう言う場合は、1.こちらが値段を知らずに買おうとしてると思っている、2.何でこんな高い本を買うの?よく考えた方がいいよ…と言うことなのだろうが、まぁ“1”なんだろうな…などと考えるが、もちろん値段は知っていたので「ハイ!○○円ですよね!」と無邪気に元気良く答えてみた。すると何やら計算し、オマケの値引をしていただいた。ありがとうございます!角川文庫「青葉の旅・落葉の旅/田部重治」河出文庫「男の旅行カバン/くろすとしゆき」を購入。
帰りは北上川をゆっくり見ようと思い、水沢駅から新幹線の水沢江刺駅まで歩くことにする。…がっ!何と橋の手前に来た時に、人も車も通行止めなことが判明!上流にある橋に迂回しなければならないのだが、それではとても新幹線に間に合わない!水沢駅まで戻っても、東北本線はとうに出発…絶体絶命だ!見知らぬ土地でウロつきながら焦っていると、タクシー会社を偶然発見。そこに飛び込み、水沢江刺まで運んでもらい、事無きを得る。…それにしても、昨日と今日で電車に二十時間は乗っている。家に帰ってジッとしていると、何やら身体はずーっと振動している感じ…ガタガタゴトンガタガタゴトン。


はじめまして、たまにですがたのしく拝見させて頂いております。
この近辺は街道沿いのリサイクルショップ的な古本屋(CDとかDVDとかも一緒に売っているようなお店)が2〜3軒あります。
橋、大変でしたね。話には聞いておりましたが。
塩釜・明日香書店は、10年くらい前まで仙台市内にあったお店が引っ越したのですが、引っ越し前後を通じてガレージセール的な雰囲気の憎めない古本屋でした。復興以前に復旧できないお店がまだまだあるのですよ・・・。
萬葉堂書店鈎取本店がめでたく復活オープン。
書棚を新しく入れ替えねばならぬほどの損傷があり、3割近くの本を処分したと聞きました。
http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1076/20110617_01.htm
泉店は復活の兆しなし。
尚古堂書店も、地下1階は文庫本の棚が倒れたまま、奥半分が立入禁止状態。
余震が来たらいつでも逃げられるように?入口の自動ドアは5cmくらい隙間を空けて「手動」ドア状態のままにしてあります(涙)。