根岸湾の形をなぞる『国道16号』を、磯子駅から北に向かって600mほど進むと『磯子旧道入口交差点』に到る。ここに二種の古本屋遺跡の姿。ひとつめの「池田書店」は交差点手前の16号沿い、時間の停まった古い商店建築群の中に沈んでいる。閉ざされっ放しの錆びたブリキの雨戸。その表面は丹念に育てられているのか、繁茂したほおずきに覆われてしまっている。小さな店頭が、在りし日の古本屋稼業の様子を伝えることはもはや無さそうだ。唯一の痕跡は、軒のモルタル壁に染み残る、看板文字だけ…。目を凝らして、その古代壁画のような白と灰色の模様を解読すると、『池 田 書 店』の四文字が浮かび上がった。2005年あたりまでは確実に営業されていたようだが、今はその役目を終え、静かにほおずきを育てている…。そして二つめは、交差点を北に越えると左手に賑やかに現れる闇市の名残り『浜マーケット』。この中にあった「磯子文庫」と言う名のお店である。光文社文庫「ミステリファンのための古書店ガイド/野村宏平」によると、元は貸本屋さんで昭和二十〜四十年代の小説や漫画が、かつては並んでいたと言う。こんな出会った瞬間に気絶してもおかしくない状況で、2007年まで現存していた。しかし!2007年4月にマーケットが火災に見舞われ、その後は仮店舗で営業されていたようだったのが、いつかお店を畳んでしまったのである。よってこの場には痕跡すら残っていないのだ。しかし、賑やかな入口から、狭く少し坂になって左右に角度を付ける、そのマーケット内を遡上して行くと、『あぁ、この先にはまだ古本屋さんがあるのではないか…』と心の中の幻影に繰り返し幻惑される。およそ200mほどのアーケードを抜けると、今度は『私は隙間にあったお店を見逃しているのではないだろうか…』の疑惑に捉われ逆戻り…。永遠に古本屋さんを求めて行きつ戻りつ…しかしいくら歩いても、その幻にたどり着くことは出来ない。今その痕跡を確認出来るのは、『浜マーケット』公式HP内の『店舗紹介』で、『2007年4月頃』のマップにある「磯子文庫/折紙」の文字。そこをクリックして、歩いてたどり着けなかった、在りし日の店内と店主の姿を、モニターに浮かび上げることだけなのである…。
2011年10月05日
10/5磯子の近接古本屋遺跡『痕跡と幻影』
根岸湾の形をなぞる『国道16号』を、磯子駅から北に向かって600mほど進むと『磯子旧道入口交差点』に到る。ここに二種の古本屋遺跡の姿。ひとつめの「池田書店」は交差点手前の16号沿い、時間の停まった古い商店建築群の中に沈んでいる。閉ざされっ放しの錆びたブリキの雨戸。その表面は丹念に育てられているのか、繁茂したほおずきに覆われてしまっている。小さな店頭が、在りし日の古本屋稼業の様子を伝えることはもはや無さそうだ。唯一の痕跡は、軒のモルタル壁に染み残る、看板文字だけ…。目を凝らして、その古代壁画のような白と灰色の模様を解読すると、『池 田 書 店』の四文字が浮かび上がった。2005年あたりまでは確実に営業されていたようだが、今はその役目を終え、静かにほおずきを育てている…。そして二つめは、交差点を北に越えると左手に賑やかに現れる闇市の名残り『浜マーケット』。この中にあった「磯子文庫」と言う名のお店である。光文社文庫「ミステリファンのための古書店ガイド/野村宏平」によると、元は貸本屋さんで昭和二十〜四十年代の小説や漫画が、かつては並んでいたと言う。こんな出会った瞬間に気絶してもおかしくない状況で、2007年まで現存していた。しかし!2007年4月にマーケットが火災に見舞われ、その後は仮店舗で営業されていたようだったのが、いつかお店を畳んでしまったのである。よってこの場には痕跡すら残っていないのだ。しかし、賑やかな入口から、狭く少し坂になって左右に角度を付ける、そのマーケット内を遡上して行くと、『あぁ、この先にはまだ古本屋さんがあるのではないか…』と心の中の幻影に繰り返し幻惑される。およそ200mほどのアーケードを抜けると、今度は『私は隙間にあったお店を見逃しているのではないだろうか…』の疑惑に捉われ逆戻り…。永遠に古本屋さんを求めて行きつ戻りつ…しかしいくら歩いても、その幻にたどり着くことは出来ない。今その痕跡を確認出来るのは、『浜マーケット』公式HP内の『店舗紹介』で、『2007年4月頃』のマップにある「磯子文庫/折紙」の文字。そこをクリックして、歩いてたどり着けなかった、在りし日の店内と店主の姿を、モニターに浮かび上げることだけなのである…。
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マーケットを入って割とすぐの左側で、小説は大衆もの、漫画は巴里夫のごきげんシリーズが揃っていたのを憶えています。少しづつなら譲ってくれるとの話でしたが聞いてみたところ、「貸出専門で売っていないから」と断られ、余り長居も出来ずすぐに出てきました。六畳くらいの小さな店舗で、新刊の雑誌を主に売っているようでした。
池田書店も当時は健在で、お婆さんが店番をしていました。全体に茶色い印象の店内で、もの凄い埃をかぶった本を一冊買いました。30円だったと思います。