牛乳受けのぶら下がる、狭くて急で短い外階段をカツカツ上がると、目の前に中国紙幣の貼り付いた看板が現れ、手前の薄い合板ドアが開け放たれている。
恐る恐る敷居を跨いで中に入ると、六畳ほどの小空間で、左側半分の壁際に本棚、中程を古銭&コインの飾られたガラスケースで仕切り、その向こう側に読書中の福々しく若々しい中年店主が座っていた。「あっ」とお互いに頭を下げ、私は早速本棚に目を移す。すると店主は、何くれと無くフレンドリーに、所々で話し掛けてきてくれる。「すいません、ちょっと荒れてますが…」「お近くの方なんですか?」「古本はあんまり売れないんで、最近は仕入れてないんですよ」「もしかしてお仕事は火力発電所?あそこも津波でやられたんですけど、どうやら動かすらしくて。それで人が流れて来てるんですよ」「古本は二割引。貴重なやつじゃなければ、もっと引きますよ」「ウチは、セドリの人も立ち寄らないですね〜」「お店はまぁ、私の気分で開けてるようなもんで…」。色々お話しさせていただきながら、棚に目を走らせて行く。ちなみに店主の言葉は、すべてプリティーな福島弁での発言である。宗教・オカルト・戦争・福島&いわき・性愛・満州・朝鮮・韓国・戦争…非常に偏りまくっているが、棚造りは極めてしっかりしている。特に満州&朝鮮&戦争関連は、茶色い古い本も含めて充実。足下には安売り文庫箱(ここは一般的)があり、入口右横には風水の羅盤と共に古い外国のシングルレコード、それに戦前のポスター類や、軍服なども飾られている。うむむむむ、よくぞ地方でこのようなマニアックなお店を営業してくれてました!うぉっ!ガラスケースの中に、中国・国民党の鉄兜(40万円)が!本を二冊ケースの上に差し出すと、しっかりと二割引精算!すると店主が「はぁ〜」と切ないため息をつき、「本が売れるなんて嬉しいなぁ」と一言。魂の震える、古本屋ツアー冥利に尽きる展開!私も嬉しいので、この後も満州資料・紙幣・陶貨!・鉄兜なども見せていただき、200円を古い50円玉に両替するなど興奮のひと時!店主の「あぁ、戦前の朝鮮半島に、本当に行きたいな」と言う夢が、狂おし過ぎました。もしまたこちらに来ることがあれば、遠慮なく再訪させていただきます!真珠社「横浜正金銀行の十九年/滝口昌英」文研出版「食中植物/近藤誠定・勝彦」を購入する。さあこれからまた四時間、ノンビリトロトロ読書しながら、長い海沿いを電車に揺られて帰るとするか。

