岡崎武志氏からの密命を帯び、緑が爆発したかのような山中を通り抜け、三たびの月江寺!ついにこの、緩い斜面に広がる昭和三十年代的風景の中に、一軒の古本屋さんが誕生したのである!おめでとう、月江寺!乗って来た富士急線の車掌さんに切符を渡し、小さな駅舎から寂れた『月江寺駅前名店街』を南東に下る。通りは『中央通り』となり、急流の宮川を越えて、シャッターで鎧った商店の間をさらに先へ。やがて左手に、北東へゆっくりと長く下り続ける『西裏通り』が現れるので、様々な意匠の酒場建築を楽しみながら、水が流れ落ちるように坂下へ。ようやく行き着く『月江寺大門商店街』をまたもや南東に進んで行くと、カフェ向かいの四角い店舗兼住宅に、新しい古本屋さんが出来ていた…ここは「富士吉田一箱古本市」(2011/10/30参照)の時に、会場のひとつとして使われていた所だ。一階部分はタイルで化粧され、入口&ウィンドウ上部には『インテリア 石川表具』と前身店の看板文字が。入口のガラス戸に富士山型(上が白で下は緑)の店名看板があり、両側のウィンドウには妙なすだれが…何だこれ?規則的にたくさんの穴が穿たれているようだが…パンチカードみたいだな。この辺りは、機織りが盛んだったから、機織機のパンチカードを再利用したのかも…。ガラス戸を開けて中に入る。静かで誰の姿も無く、左右の両壁に七段の本棚が設置されている。奥壁にも同様の飾り棚があり、右奥の開け放しの扉がお店のバックヤードへと繋がっている。入口左横にはオルガンとテーブルと低い平台。右横には低い丸テーブルが置かれている。フロア左真ん中には四角い柱がドンとあり、小さな棚や椅子が取り巻いている。店内のそこかしこには、廃材を使ったアート作品や、空き缶&鉄棒で作った富士山グッズ・富士山トートバッグ・トタンポストカード・金子光晴肖像写真などが蔓延り、独特な雰囲気を充満させている。柱下棚にはちくま文庫・新書がキッチリ収まり、左側ウィンドウ周辺には音楽本が集められている。左の壁棚には、絵本・児童文学・児童書・女流作家・教育・美術など。入口右横テーブルには、雑誌「思想の科学」と共に何故だか缶ビールがディスプレイされている。右の壁棚には、東海林さだお・食・落語・スポーツ・近現代思想&人物・東京・大阪・名古屋・各地郷土・赤瀬川原平・南伸坊・映画・役者・タレント・サブカル・日本文学・文学評論・エッセイ・建築(藤森照信多し)・夏目漱石・詩などが丁寧に並んでいる…好みなのか『路上観察学会』関連に力こぶ。そして奥壁棚に、写真集・山梨関連・「鳩よ!」・金子光晴・富士正晴・竹中労・色川武大と共に、富士山グッズ・手書き短冊&パラパラマンガ(?)・『快傑ライ◯ン丸』『ドラ◯もん』のパチもん茶碗が並んでいる…絵柄が凶暴に愉快なので、思わず茶碗を買いそうになってしまった…。不思議な富士山グッズの多いお店で、脱力出来る感が非常に好ましい。しかし棚はピシッと背筋が通り、店主の見つめているものたちが、ボワッと浮かび上がっている。値段はちょい安〜普通。もうすぐ棚を見終わりそうなところで、女子客二人がご来店。「わぁ〜」と感嘆の言葉を吐き出しながら、奥壁の棚に駆け寄った。するとこの時、店主が奥から初めて姿を現し「いらっしゃい」と横向きの椅子に腰掛けた。モコモコと何やらたくさん着込んでいるので、古本屋さんと言うよりは、山小屋の主のよう。たいまつ社「私の大阪地図/寺島珠雄」(600円とはっ!)朝日選書「女絵かきの誕生/丸木俊」を購入する。同じ通りにある驚異の新刊書店「月之江書店」(2011/06/29参照)と共に、末永く営業していただければっ!
帰りに『ミリオン通り』に入り込むと、道の真ん中にプリティーな飼い猫。しかしこの柄は、素敵にスゴい!まるで地図のような虎柄だ!

