そこには左端に括られた全集本があるだけで、以前の台車棚は一台も見当たらない。その代わり、ウィンドウに扇情的な赤の『65周年 全書籍半額』のビラが貼り出されている。その脇には小さく『買取りはしておりません』の文字も…供給をストップすると言うことは、やはり閉めてしまうのか…。ちょっとセンチになりながら自動ドアを潜ると、そこは三年前と変わらぬギュウギュウの、自称“本の森”。おぉ、老店主も通路を行き来して、元気に棚の整理を休まず続けている。再会を一方的に喜びつつ、今日は多少通路の発掘に従事してみようと決意する。視認可能な棚の上半分を見た後は、人ひとりしか通れない通路(いや、もはやひとりが通るのも困難な通路に成りかけている…)で身体を右に左に前に後に折り曲げ、足下から積み上がる本や棚下を覗き込んで行く。気になる所は、頑張って本の山を退かしてみる(本の山は、冬ごもり前の薪の山の如し…)…すぐ疲れる。何が出て来るか判らないとは言え、重労働&底知れないので『何故こんなことをしているのか?』と言う当然の疑念が、心に墨のように広がってしまう…しかしそれでも、途中手を抜きながらもどうにか発掘作業を続けて行く。客同士は、相変わらず『パックマン』のように進む通路の先に別の客を見付けたら、違う通路に自主的に回避する。おっ、奥の倉庫扉が開いていて『こちらもご覧になって下さい』の貼紙が!遠慮なく中に入ると、裸電球がぶら下がる、括られた本の束が乱雑に積み上がるダークな空間!書名などろくに確認出来ず、這々の体で店内通路に這い出す。いや〜、こりゃもはや洞窟探検に近いな。一時間ほど悪戦苦闘し、新潮社「ウエー 新どれい狩り/安部公房」創元社「いのちの初夜/北條民雄」(青山二郎装幀!写真は左が表紙で右が扉。ビューティフル!)
新潮文庫「アウトドア・ライフ入門/小林泰彦」角川文庫「私は嘘が嫌いだ/糸井重里」ちくま学芸文庫「ケルト 装飾的思考/鶴岡真弓」東京創元社「魔人ドラキュラ/ブラム・ストーカー」を帳場へ運ぶ。そこには奥さんであろう老婦人がおり、「いらっしゃいませ」と本を選り分け始める。するとそれを遠くから見ていた店主が「計算しようか」と近付きペンを取る。婦人が裏表紙の値を読み上げ、店主がそれを書き留めて行く。その光景を勝手に麗しく思い、こうなったら以前記事に取り上げさせていただいたお礼を…と思ったその時、帳場脇に置かれたチラシの束が目に入った。全品半額セールのチラシなのだが、そのキャッチが『男の隠れ家の日本全国超厳選古本屋に出た北山書店』となっていたのだ!…見た途端に顔から火が噴き出した…すみません、私が書きました…もはや恥ずかしくて名乗ることは断念。二人のゆっくりしたやり取りを見つめながら、心の中で不義理を詫びて、締めて1050円也を支払い「お店はいつまで?」と聞いてみる。実はさっき、お客さんとの会話が耳に入り、『九月の半ばくらいまで(あ。少し伸びたのかな?)』と言うのが聞こえたのだが、やはり自分でも確認しておきかたったのだ。すると店主が「九月いっぱいかな…まだ良く判んないんだけど」。あれ?ちょっと増えたぞ。まぁもうしばらく営業してもらえるのは、とにかく有り難いことである。みなさんも発掘探検モードで、九月中に三島の老舗店にぜひ!


それにしても、倉庫はスゴイですね。一歩足を踏み入れて退散しました。
9月いっぱいまでやるそうです。お客さんはお会計の時に、皆営業期間を訪ねていました。
昨日はお客さんが次々にいらして、閉店を惜しむ常連さんと店主ご夫妻のやりとりがほほえましく、思わず耳を傾けてしまいました。単行本5冊で1000円、少しおまけしてくださいました。