●三ケ根「いこい古本店」
西口に出ると、小さなロータリーの向こうは、緑陰濃い神社の小山。そのすぐ前に横たわる、トラックが多く行き交う県道を、北西に向かってひたすら進んで行く。さしたる特徴も無い、長閑な田舎町の風景を眺めながら、ひたすら真っ直ぐテクテク…長閑過ぎて、古本屋さんがちゃんとあるのかどうか疑ってしまうが、とにかく迷わず歩を進める。信号をひとつふたつと過ぎて、駅から一キロ強の地点で、左手に『本』の文字が見えて来た。おぉ、こんな所に!と近付くと、あまりに素朴な自宅合体型店舗で、軒に黄色い日除けが少し張り出し、そこにボロボロになって『いくい古本占』と成り果ててしまった店名。冊子扉には何枚かの貼紙があり、『9月20日に雑誌など入荷しました』『文庫小説(時代劇)お譲り下さい』『お店が狭いので三人以上での入店は…』などと書かれている。二段のコンクリステップを上がって、カララと店内へ。ほぉ、コンクリ土間の、古くくたびれたお店である。左奥の帳場に座る老婦人が、「いらっしゃあ〜い」とにこやかに迎え入れてくれた。小さな空間は壁棚に取り囲まれ、入口左横には仕切り棚があり、左に小空間を生み出している。土間の真ん中には、下が平台・上が二段棚の木製什器がドデンと置かれている。そして棚に入っているのは、80〜90年代コミックの揃いなのである。他には平台や小空間にアダルトが集合している…。入った瞬間はコミックだらけの印象なのだが、落ち着いて棚を見て行くと、目指す古本もしっかりと所々に存在!入口右横奥に雑本棚が一本、平台に10円文庫、その上の二段棚に日本文学文庫と時代劇文庫、そして奥壁の四段ほどに実用単行本&日本文学。あくまでも街の古本屋さんである。この田舎町と共に生き続けているお店である。ほとんどがちょっと古めの雑本なのだが、値段は激安!文庫は10均以外は50〜150円。単行本も500円以下で、コミックバラは100円、コミック揃いでも1000円は稀である。そんな中で計四冊を手にして、老婦人に捧げるように帳場に差し出す。「ありがとうございます〜。あら、古い漫画ね。これって二巻で終りだったかしら?」とフレンドリーなコミュニケーションが嬉しい。「いえ、後一巻続きがあるはずですよ。…こんな漫画を良くご存知で…」「フフフ、漫画は結構見て来たのよ〜」などと楽しくやり取りしていると、単行本の『400』円の値段を見るや否や「あら高い。安くするわね」と鉛筆を持ち『200』円に書き直してくれた。ありがとうございますっ!先客のオジサンも、アダルト雑誌を大量購入していたら、一冊無料サービスに!おぉ、三ケ根の“いこい”の場よ!いつまでもこのままお元気で!ワニ文庫「世界の秘宝マップ/平川陽一」白泉社「低俗霊狩り」「低俗狩り 其の二」共に奥瀬早紀、双葉社「ペニス/津原泰水」を購入する。
続いて岡崎に向かい、西に北にとお店を求めるが、虚しく空振りが続いてしまう。最後に東にある『西友』内のお店を、ワクワクしながら目指したのだが、たどり着いてみると三階建ての2フロアを『ブックオフ』に占領された、もはや『西友』と言うよりは『ブックオフ』が目の前に…これじゃあ生き残れるわけがない…一応店内を探索してみたが、お店の姿は何処にも見当たらなかった。三たび虚しく、熱い日射しを顔に受け、悄然として駅に向かう…。疲労困憊した身体を前へ運び続け、ようやく駅舎が見えて来た。そしてこの時、何故私は右側を振り向いたのか…それは、古本の神が『ニヤリ』と微笑んだからではないのかっ!?
●岡崎「古本販売専門 読書人」
東口に出て、ロータリー左側をぐーっと回り込んで、駅前の大通りを北へ。少し道が右にカーブし、すぐに『羽根町東ノ郷交差点』に到着。ここで左の交差点際を見ると、暗いガンメタ色のコンテナ群が角地を取り囲んでいる。どうやらどれも、改造され事務所やお店として使われているようだ。そして道路際の一台のコンテナの傍に先ほど振り返った時に、偶然目に入った立看板…『本all 1冊100円』『マンガall 50円』などと書かれている。…これは、古本屋さんでは?このコンテナが?コンテナの間から中庭のような敷地内に入り、コンテナの前面らしき所に回ってみると、中央にドアがあり中の本棚が見えていた。古本屋さんだっ!突然の予期しなかった出会いに感激しながら、店名と共に『知識の無いのは心の病』と書かれた扉を開いて中へ。お店はもちろん横長で、奥側に十三本の壁棚が並び、手前側には左に四本の本棚、そして右側に低めの棚が続いて、その奥に帳場が設えられている。帳場前には、白髪黒眼鏡白髯を蓄えた恰幅の良い仙人的オヤジさんの姿があり、鼻歌を中断して「いらっしゃいませ」。礼儀正しく会釈して、店内精査の態勢に入る。それにしても、コンテナの中とは思えないほど、キレイな内装である。入口左横には歴史小説・時代劇文庫が並び、最奥に美少女コミックと同人誌が少々。入口右横は児童文学・児童書・絵本が集まっている。奥壁は右奥から、書の本・官能文庫・日本文学文庫・コミック・ミステリ&エンタメ・実用・ビジネス・ノンフィクション・食・新書・日本純文学文庫・絶版文庫少々・海外文学文庫・暮し・自己啓発など。足下の平台にはおススメ本や美術ビジュアル本などが置かれている。新しい本がメインで、古い本は少しだけ。ただし漫画には絶版が目立つ。本の背には色違いのシールが貼られており、100〜500円の値を表している…と言うことは『all 100円』じゃないのでは?ちょっと疑問に思いつつ、一冊を手に仙人の元へ。すると200円の値を即座に100円にしてくれた。疑ってすみません!ありがとうございます!この幸運な出会いと値下げに、感謝の念を捧げる。ちくま文庫「リリス/G・マクドナルド」を購入。
岡崎で見事な空振り三振をしたと思ったら、嬉しい振り逃げが成立。まさかあんな古本屋さんがあるとは…。しかしこれはあくまでも氷山の一角で、まだまだ様々な所に、古本が潜んでいるのだろう。夢の如き全国制覇の道のりは、相変わらず厳しく険しいのだ…。
※後で調べたところによると、『西友』のお店は、『西友』の裏手にあることが判明…不覚!これはまた調べに行かなければ…。


いこい古本店は雰囲気から本の値段まで駄菓子屋のようなお店でした。ただ、おばあさんは「そろそろ閉めようかなと思っている時期なの。昔ほど本は売れなくなった。今の子供はゲームだゲームだってね…。最近はうちの本を懐かしがって買っていく客が多いの」と、ちょっと不穏なことを言っていました。
読書人に入ると店員がいないので最初戸惑いましたが、隣の事務所から甲高い声のおばさんが迎えてくれました。本を購入した後「うちは読書人って名前でアマゾンに出品してるから帰ったら見てみて」と名刺を渡されました。名刺によるとこの店の正式名称は「笑呼老人倶楽部(エコロジークラブ)」だそうです。