一旦家に戻り、夕方になって買い物のために新宿へ出る。すっかり用を済ませてから、雑踏の流れに乗って東口へ。『スカウト通り』で、今日は何だかお店が小さめな「路上古本販売」(2011/06/16参照)を冷やかしてから、すでに怪しい人々が集い路上に蠢く歌舞伎町。この街にはかつて「一草堂書店(明治物絶版書、稀書の蒐集)」なるお店があったことは、2013/06/26に記したが、私はこのお店については古い「古書店地図帖」などで知るのみで、見たことも入ったこともないのであった。しかしある日、記事を読んだ「古書現世」(2009/04/03参照)向井氏より連絡があり、お店のあった場所には、未だにお店の名を冠したビルが残っていることを教えられる。お店の痕跡が少しでも残り、取り戻せない時を越えてそれと接触出来るならば、意地でも訪ねなければならない!今は亡き『コマ劇場』に向かって進み、一本手前の脇道を東へ。ちょっと歩いただけなのに、「DVDあるよ」「ソープどう?」「遊んでって」などと、矢継ぎ早に囁きが身に降り掛かって来る。弁財天のある小さな『歌舞伎町公園』前を通り過ぎれば『さくら通り』。さらに北に進み、左手の毒々しい雑居ビル群を注視して行く。すると、地下にマッサージ店、一階にドレスショップ、二・三階に炉端焼き屋の入った、白い小さな雑居ビル…ビルの名は、地下への入口にも上階への入口にも、何処にも書かれていない。しかし、壁面右側に突き出す、ビル案内看板を上へたどって行くと、あぁ!その一番上に『一草堂ビル』とあり、確かに古本屋さんの名が燦然と残っているのであった!
決して関わることの出来なかった過去のお店に、今ここで人生がかろうじてクロス!欲望渦巻く歌舞伎町で、ひとり古本屋への欲望に身を焦がし、感動する。ここの二階では、かつて市が開かれたこともあったとのこと…こんな場所で…。感動ついでに、雑居ビル群のヤバ目な裏通りに入り込み、『一草堂ビル』の裏側も堪能する。遥か遠くの、ビルに切り取られた通りと空の光が、心を一瞬だけ、古本屋の裏手に佇ませてくれた…。

