昨日の夜に『週末パス』を手に入れ、朝五時に東京を出発。例の如く普通列車を乗り継いで、何度見ても飽きることのない景色の東北本線で北へ進む。仙台駅にほど近い岩沼駅で常磐線に乗り換え、まずは二駅先の亘理まで。ここから常磐線は寸断され、途中隔離された相馬〜原ノ町間を走るのみとなるので(南は、亀田駅からはいわき駅まで。その先は上野まで続いている)、JR東北代行バスに乗って相馬を目指す。駅に隣接する城の形をした図書館に別れを告げ、黄金色になった稲穂の大地をバスは走り抜けて行く。仮設住宅や仮説商店街、造成盛んな海岸線、やけに売りに出されている高台の土地、草木に埋もれてもはや自然の谷と化した常磐線線路などを目にしながら、約一時間で相馬駅着…午後三時二十分…移動時間は八時間、延べ待ち時間は二時間、計十時間の長旅であった…。東京からは直線距離でたかだか300kmだが、震災と人災が距離をそれ以上に延ばしてしまっているのだ…東北は今、一部が歪に広くなってしまっている…。駅前は広くキレイに整備されており、街も新しい部分が非常に多い。まずは西に進み、直ぐの交差点を南に曲がると、閑散とした『相馬駅前商店街』(この街の賑わいは、もう少し西寄りにある)。交差点をひとつ越えると、何も様子は変わらないが『ハートフル商店街』となる。そして次の交差点際に、UFOの遊具が楽しい『新町緑地』がある。さらに南に進むと、その公園に接して、真新しい建物の古本屋さんが待ってくれていた。不定期営業だと聞いており、開いているかどうかかなり心配だったのだが、見事に営業中ではないか!ありがとう「書林堂」!ここは二年半前の震災以来、その消息がとても気になっていたお店である。何たって海に近く、原発にも近いのである。しかしその後、『日本古書通信社』の方より無事と再建を知らされ、喜びながら『これはいつか必ず訪ねなければ』と心に密かに誓っていたのである。その誓いを、十時間の移動でズタボロになりながらも、守ることが出来たぞっ!そう心の中で熱く絶叫しながら、表情はあくまでクールを装い、サッシ扉に手を掛け中へ。まだ新しい家の匂いが漂う、三角形の狭い店内。斜めの右壁に四本の本棚、フロア真ん中に三本の棚の組み合わせ、左に二階への階段があり、階段下に本棚が一本。階段外壁に棚が続き、奥の三角形な隠れた部分に机だけの帳場がある。そこからゴマ塩角刈り頭の店主が身を反らし「いらっしゃい」。階段下の棚には武道と官能小説に少々の児童文学。階段には所々に本が積み上がり、二階を見上げると本棚がチラリ。右壁棚には歴史・映画・差別・社会運動・日本文学・句集・詩集。フロア棚には近代史・戦争・中公文庫・ふくしま文庫など。階段棚には、時代劇文庫・新書・句集が収まっている。中々硬めな印象である。古い本はあまりないが、80年代辺りの本はチラホラ。値段はちょい安〜普通。では二階はどうだろうと、本を「これは何の汚れなんだ!」と呟きながら激しくクリーニングする店主に「二階は見られるんですか?」と聞くと、キョトンとした後に「上はね、まだ片付いてないんだよ。まだ…一年ぐらいかかるかな」「そうなんですか。じゃあ上は広いんですか?」「ん、一階とおんなじ。上はね、ここより硬くなるよ」とニヤリ。と言うわけで二階を見ることは叶わず。TBSブリタニカ「ガロ曼荼羅/『ガロ史』編纂委員会」ポプラ社「おばけ野球チーム/水木しげる」を購入。「おばけ〜」の方には値段が付いていなかったが、何と「サービスだ!」とタダでいただけることに。ありがとうございます!そして「ちょっと本を拭かさせてね」と、およそ三分にわたり本をクリーニング!重ねてありがとうございます!二階が片付いた暁には、ぜひとも再訪するつもりだが、その時には常磐線も開通していて欲しいものである。
帰りの代行バスの中で、山に日が落ちるのを見る。知らない土地で日が暮れてしまうのは、とても心細く寂しい。どんどん明度の落ちて行く、夕闇の亘理駅に到着すると、目の前に一匹の白黒猫がゴロン!おぉ、おぉ!と撫でさせてもらい、寂しい心持ちをたっぷりと慰めてもらう。猫の名は“大五郎”であった。

