ゲラを百ページ過ぎまで読み進めてから、冷たい風の吹き荒れる外へ出る。神田に新しく出来た、古本も置いているギャラリーカフェを訪ねるためである。時刻は午後六時前。神田駅の南口は工事の真っ最中で、通路や階段が狭まっており、仕事帰りのサラリーマンでごった返している。改札へ向かっていると、階段下の柱に面白過ぎる貼紙を発見する。
こ、これは伝説の『神田の古本屋街に初めて行こうとして、神田駅で降りたら、古本屋など何処にも見当たらなかった!』と言うベタな失敗を裏付けるような注意書き!…やはりおられるのですな、ここに来てしまう人が…しかも貼紙があるほどだから多人数なのであろう…ウフフフ。激流の如きサラリーマンの流れの中で、独り立ち止まってニヤニヤしながら写真を撮る。あぁ、とても良いものに出会ってしまった。
神田の街は飲み屋と風俗店が多く、とても賑やかで、寒さに首をすくめて歩いていると、まるで今日が大晦日のような錯覚を覚えてしまう。そんな街をぶらついていて発見した次の奇跡は、このお店。
『うまい 本屋 安い』!見た瞬間に、条件反射的にギクッとしてしまったが、これはやはり“もとや”と読むのであろう。一階は古本屋の如き古い建築の、ちょっと荒れた酒屋さんで、地下がお店となっているようだ。でも、もしかしたらもしかすると、本当に本が酒と共に安値で売られているかもしれない…良し、今度神保町に来たら、帰りに勇気を出して寄ってみることにしよう。
二つの本に関わる小ネタを拾い、気分良く件のお店を目指して歩く。しかしそのお店は、中に電気は点いて人もいるのだが、お店は開けていない模様。まだなのかな…そう思って喫茶店で三十分ほど時間を潰し、再度訪ねてみるが状況はまったく変わらず。うぅ、別の日に再チャレンジするしかないか。肩を落としてすぼませ、ビル街の裏路地を伝って、何となく神保町方面へ。しかしこの時間に行っても、ほとんどのお店は閉まっているはず。そんな暗い気分を抱えた涙目に飛び込んで来たのが、おぉ!「澤口書店」(2008/08/14参照)の柔らかで暖かな光!
外灯に吸い寄せられる蛾のように、何も考えずに細長いお店に飛び込む。同じように、お客さんが次々とお店に入って来る。壁面の文庫棚に心和ませ、奥の小上がりが小さなアダルトコーナーに変化して、二階がなくなっていることに気付いたりする。新評論「探書遍歴 封印された戦時下文学の発掘/櫻本富雄」を1100円で購入する。
阿佐ヶ谷では、今や枯れ葉だらけの『中杉通り』に古本の光を放つ「銀星舎」(2008/10/19参照)に寄り道し、小さな店内にホッと身を落ち着ける。
ダンナさんと少し言葉を交わし、教養文庫「ソロモンの桃/香山滋」「死の蔭探検記/橘外男」を計1400円で購入。ツアーとしては冴えないことになってしまったが、今日は何だか小ネタに救われた感じがする…すみません、明日こそはまともなツアーを……。


そしてその話を帰って父に訴えたら大爆笑されて更に哀しい記憶に…(涙)
最近この張り紙を発見して、「遅かったよ!!」と思ったことでした。