2013年11月11日

11/11神田で小ネタに救われた気になる

午前中から、当ブログ単行本のゲラ(本になる前の校正刷り)を、必死にあえぎあえぎ見ている。自分の文章は、良く言えば勢いに満ち溢れているが、悪く言えば雑である。しかし読み続けて思ったことは、これは音楽のアルバムで言えば、いわゆる『ライブ盤』なのであると。一店一店の記事に、違う日々が塗り込められており、それを書いた自分に、未だに書き続けている自分に、改めて驚きを覚えてしまう。それにしても、一冊の本を作ると言うことが、何と難しく大変な作業であることか。古本屋に並んでいる本たちも、複雑な行程と様々な人の手と思いを経て出来たものかと思うと、何だか少し畏れ多い感じである。と言うわけで、ジリジリと作業は進行中であります。

ゲラを百ページ過ぎまで読み進めてから、冷たい風の吹き荒れる外へ出る。神田に新しく出来た、古本も置いているギャラリーカフェを訪ねるためである。時刻は午後六時前。神田駅の南口は工事の真っ最中で、通路や階段が狭まっており、仕事帰りのサラリーマンでごった返している。改札へ向かっていると、階段下の柱に面白過ぎる貼紙を発見する。
kanda_station.jpg
こ、これは伝説の『神田の古本屋街に初めて行こうとして、神田駅で降りたら、古本屋など何処にも見当たらなかった!』と言うベタな失敗を裏付けるような注意書き!…やはりおられるのですな、ここに来てしまう人が…しかも貼紙があるほどだから多人数なのであろう…ウフフフ。激流の如きサラリーマンの流れの中で、独り立ち止まってニヤニヤしながら写真を撮る。あぁ、とても良いものに出会ってしまった。

神田の街は飲み屋と風俗店が多く、とても賑やかで、寒さに首をすくめて歩いていると、まるで今日が大晦日のような錯覚を覚えてしまう。そんな街をぶらついていて発見した次の奇跡は、このお店。
umai_honya.jpg
『うまい 本屋 安い』!見た瞬間に、条件反射的にギクッとしてしまったが、これはやはり“もとや”と読むのであろう。一階は古本屋の如き古い建築の、ちょっと荒れた酒屋さんで、地下がお店となっているようだ。でも、もしかしたらもしかすると、本当に本が酒と共に安値で売られているかもしれない…良し、今度神保町に来たら、帰りに勇気を出して寄ってみることにしよう。

二つの本に関わる小ネタを拾い、気分良く件のお店を目指して歩く。しかしそのお店は、中に電気は点いて人もいるのだが、お店は開けていない模様。まだなのかな…そう思って喫茶店で三十分ほど時間を潰し、再度訪ねてみるが状況はまったく変わらず。うぅ、別の日に再チャレンジするしかないか。肩を落としてすぼませ、ビル街の裏路地を伝って、何となく神保町方面へ。しかしこの時間に行っても、ほとんどのお店は閉まっているはず。そんな暗い気分を抱えた涙目に飛び込んで来たのが、おぉ!「澤口書店」(2008/08/14参照)の柔らかで暖かな光!
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外灯に吸い寄せられる蛾のように、何も考えずに細長いお店に飛び込む。同じように、お客さんが次々とお店に入って来る。壁面の文庫棚に心和ませ、奥の小上がりが小さなアダルトコーナーに変化して、二階がなくなっていることに気付いたりする。新評論「探書遍歴 封印された戦時下文学の発掘/櫻本富雄」を1100円で購入する。

阿佐ヶ谷では、今や枯れ葉だらけの『中杉通り』に古本の光を放つ「銀星舎」(2008/10/19参照)に寄り道し、小さな店内にホッと身を落ち着ける。
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ダンナさんと少し言葉を交わし、教養文庫「ソロモンの桃/香山滋」「死の蔭探検記/橘外男」を計1400円で購入。ツアーとしては冴えないことになってしまったが、今日は何だか小ネタに救われた感じがする…すみません、明日こそはまともなツアーを……。
posted by tokusan at 22:19| Comment(8) | TrackBack(0) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
『神田の古本屋街に初めて行こうとして、神田駅で降りたら、古本屋など何処にも見当たらなかった!』というベタな失敗をしたのは正に30年前の私です(笑)。しかし、こういう貼紙があるということは、未だに同じ失敗をする人が結構いるからでしょうね。もっとも、今はそのものズバリの神保町駅がありますから、神田駅で降りてしまう人も昔に比べれば少なくなったでしょうね。
Posted by アルファ at 2013年11月12日 11:10
ああ、その神田駅の貼り紙、40年前に欲しかった(涙)
Posted by よしだ まさし at 2013年11月12日 13:08
私も20年以上前に父から「神田」には古本屋街がある…とうろ聞きして神田駅に降り立ち、古本屋どころか本屋一軒すらみつけられず帰った哀しい記憶が。
そしてその話を帰って父に訴えたら大爆笑されて更に哀しい記憶に…(涙)
最近この張り紙を発見して、「遅かったよ!!」と思ったことでした。
Posted by 七 at 2013年11月12日 16:15
アルファ様、よしだ まさし様、七様。ワハハハハハハ!みなさん、何と言う素晴らしいエピソードをお持ちなのですか。そしてみな、いまだにその失敗を心に秘めておられるとは!『全国神田古本屋街被害者の会』をいずれ結成して、一堂に会せば、相当に面白いことになるのではないでしょうか。愉快なコメント、ありがとうございました。
Posted by tokusan at 2013年11月12日 20:32
ブやオク・Amazonで買った方が早い・安い・疲れない、という習性が身についたためか、神保町も3年以上御無沙汰。神保町から秋葉原への途中にあるため頻繁に通過した「澤口書店」もご多分に漏れず。ひょっとして、アダルト屋だった2階はオクやネット通販向けの事務所になっているかもしれません。
Posted by 下新庄3丁目 at 2013年11月12日 20:38
下新庄3丁目様。ものすごいものぐさモードじゃないですか。あれだけ、東海道沿いの古本屋さんに、該博な知識を持っていると言うのに。もはや安楽椅子探偵みたいです。「澤口書店」は、やはり『厳松堂ビル』にその様々な機能を移したのかもしれませんね。
Posted by tokusan at 2013年11月13日 20:26
はじめて神田古本屋街に行ったのはたしか十年ぐらい前になるはずです。下調べをしたので、正確に御茶ノ水駅で降りた記憶があります。このころから神保町行きを続けていれば、けっこうな古本エリートになれたかもしれませんが、あっさり古本屋街に到達した私の古本レベルはいまだ「童子」程度。古本好きとして成熟するためには、間違って神田駅で降りるという通過儀礼(?)を受けておく必要があるのかもしれません。というわけで、これからの若者には下調べなどという小利口なことはせず、ぶっつけ本番、どんどん神保町を目指して神田で降りまくってほしいところです。
Posted by 古本童子 at 2013年11月14日 21:33
古本童子様。神田で間違って降りたとしても、東京は意外に狭いので、古本屋街もすぐそこに。街を楽しみながら神保町を目指すのも、乙なものでしょう。神田の街も、賑やかで楽しいですからね。
Posted by tokusan at 2013年11月15日 17:24
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