古ツアフェアの一月売り上げ遠征第二弾は、天気が荒れ模様の東北と信越方面は避け、早朝の東海道線で地味に西へ向かう。小田原を過ぎると雪はほとんど姿を消し、日射しが暖かで春の匂いを少しだけ感じさせてくれる。しかし浜松を過ぎたあたりで、次第に風が強くなり始め、ダイヤを乱れさすほどの強い風が吹き荒れて行く。結局七時間半で名古屋着…青春18きっぷでもないのに、普通列車を乗り継いでここまで来てしまった…我ながら愚かな行動だと思う。市営地下鉄東山線に乗り換え、二十分ほど名古屋の地下を疾走する。『5番出口』から地上に出ると、大きな二叉路の坂の途中で、東に大きくうねりながら上がって行く大通りに足を向ける。高く大きな建物が並ぶ、ニュータウン的風景が圧し掛かって来る。坂道を上がり切ると、道は同様にうねりながらの下りとなる。『名東本通』の一丁目〜四丁目を軽快に走破すると、一キロ強来た『名東本通五交差点』の右手に、街からちょっと浮かび上がった明るくジャンクなお店が姿を見せた。何でも取り扱うリサイクルショップなのだが、店頭には無料の物や5円の物が早々に並び、ちょっと普通では無い感を醸し出している。『事情があって大幅値引き』『何が起こるかわからない』などの惹句と共に、左端に『洋書ガレージ』『洋書・輸入雑貨どれでも200円』などの看板が…洋書か。しかし何はともあれ、古本が売られているのに変わりはない。そう自信を持って店内に突入する。一階・中二階・二階に、家具・インテリア・古道具・骨董品・雑貨・米軍放出品・古着・甲冑などが和洋に渡って溢れ返り、一言では形容出来ぬほどの迷路の如き通路が入り乱れている。そんな八幡の薮知らず的通路に、端から一本一本丹念に分け入り、上下左右を見回して古本のある風景を探し求める。すると最奥の隠れたような細い通路に、大量の200均ペーパーバックやレコードと共に、文庫棚を一本発見!30円均一で、中途半端に古い需要の無さそうな角川文庫が多く並んでいる。そこから苦しみながらどうにか一冊抜き取る。その他には、天井の低く薄暗いアメリカコーナーで、二段分の映画パンフレットと、見たことも無いアメリカ雑誌群に遭遇。続いてもはやそれほど期待せずに二階の調査へ(中二階は畳敷きの和コーナーである)。ほぼ古着ばかりのフロアだが、階段上がり口の裏側に、もはや古着に隠されてしまったような海外文学文庫棚と、新書・教育・文学(丸谷才一・五木寛之)の列も発見する。だが食指はやはり動かず…。古本はあることにはるが、どうにも燃え上がらぬ棚となっている。しかし値段だけは激安である。角川文庫「コブテン船長の冒険/矢野徹」を購入する。
お店を出て、坂道を上がりながら考える。せっかくここま来たのに、お店の実態は調査出来たが、古本心がとても不満足だ。せめて帰りつつも何処かに寄れたら、と考える。そうだ、覚王山には古本カフェがあったはず…しかし調べてみると一週間のお休み中…何たる不運。地下鉄に乗り込み、栄あたりで古本屋を探そうかと考えるが、そう言えば伏見に笠寺から移転して来た古本屋さんがあったはず!とそちらを目指すことにする。三十分後、当該住所に到着すると、お店の姿など影も形も…おかしい…焦りながら不審に思い、もう一度詳しく調べてみると、何と足下に広がる『伏見地下街』にあることが判明する。“地下街の古本屋さん”とは、燃えるシチュエーションだ!興奮しつつその地下街への入口を探すが、何故か何処も鉄柵が閉められている。ぐわっ!日曜・祝日は休みなのかっ!そんな地下街があるものなのかっ!階段途中の柵を両手で掴み、地下から吹き上がる生暖かい風を顔に浴びる。俺は、この地に、読むかどうかも分からない30円の文庫を、ただ買いに来たと言うのか…くそぅ、次の青春18きっぷで、この借りをこの地下街に必ず返してやるっ!


……そうなのです。そんな地下街もあるのです。そこの休業日は、あのあたりに密集している衣料品問屋の営業日の都合に合わせているのだと思います。
それから、地下街が大好きな名古屋っ子にも意外とそこを知らないのがいます。
では、店頭から回収されないうちに、週刊文春を買いに行くとしますか。