と言うわけで明けて本日は、全国の一箱古本市に出没する「駄々猫舎」さんのタレコミを基に、まだ昨日の冷たさを引き摺る早朝に出立し、三回目の青春18きっぷでいつもの東海道線。いつもの長時間行程で西へ進み、豊橋で東海道線を乗り捨てる。新豊橋駅までテクテク移動し、単線ローカルの豊橋鉄道渥美線に乗って、田舎町とキャベツ畑と菜の花畑の中を走り抜け、半島の奥へ奥へと三十分余。終点ひとつ手前の無人駅は電車が走り去ると、町中なのに恐ろしいほどの静寂に包まれてしまう。コンクリ板のような簡素なホームから出て、すぐ西にある踏切を北側へ渡り、大通りにぶつかったら即座に東へ。300mほど進んで『大坪交差点』で北に折れ曲がる…駅の名は『神戸(かんべ)』。そして行く手には『蔵王山』…私は今、神戸で蔵王山方向に向かっているのだ…字面だけだと、特定の土地性が消滅するどころか、時空がねじ曲がってしまっている…。砂州がきめ細やかな川を渡ると、左手に立派な箱型公共施設の集合体が現れる。手前の『田原市総合体育館』をやり過ごし、隣りの『田原文化会館』の薄暗いエントランスへ入って行く。廊下を進んだ先は、円形のターミナルゾーン。左の『総合体育館』方向を選択すると、左にすぐに、開放的に古本の並ぶ姿が目に入って来た。ここは図書館の除籍本や、市民からの寄贈本を棚に並べ、一律50円の激安値で販売しているのである。通路には小さく扇形に配置された三本の本棚があり、日本文学・ミステリ&エンタメ・地図・ガイドブック・料理・ビジネスなどを収めている…ほとんどがコーティングされて、分類ラベルが貼り付いたままの除籍本である。棚で隣りのフリールームと仕切られた室内には、左にイベントチラシを置いたテーブル、右にボランティア女性が座る会計テーブルがあり、壁際の本棚に囲まれている。左は文庫・新書・ラノベ&コミック(少量)・日本文学・海外文学・社会・ビジネス・旅。ここも除籍本ばかりだが、文庫新書にはまっさらな寄贈本が、十冊に一冊ほど紛れ込んでいる。奥の棚には日本文学・実用・雑誌、右側には実用・児童文学・教育など。除籍本がほとんどの、常設図書館リサイクル店である。ピカピカでツルツルの蒼ざめた本たちに目を光らせていると、よぉっ!河出書房新社「そこのみにて光輝く/佐藤泰志」を見出し、大いに気を良くする。青弓社「幻想書誌学序説/村上博美」と共に購入して、計100円也。除籍本でなければ、完全なるどひゃっほうなのだが…と贅沢なことを考えながら、会館を後にする。
帰りに静岡駅で途中下車し、昭和五十年代な在庫をコールドスリープさせた「一冊 萬字亭」(2013/03/01参照)に、一年ぶりに駆け付けてみる。営業中だが誰もおらず、以前より片付いた感のある店内を、ワサワサ物色。獲物を手にして大声で「すいませ〜ん!」と奥に何度も呼び掛け、「ごめんなさいね〜」と出て来たご婦人に精算していただく。東京文藝社「お小夜悲願 長篇自撰集9/角田喜久雄」ソノラマ文庫「北北東を警戒せよ/光瀬龍」「星が流れる」「盗まれた表札」共に藤村正太、春歩堂「安吾捕物帖/坂口安吾」ポピュラーブックス「死角の罠/中田耕治」サンケイ出版「電卓パズル&ゲーム/ウォーレス・ジャッド」創元推理文庫「赤毛のレドメイン家/イーデン・フィルボッツ」を20円オマケの計1300円で購入する。
さぁ、すっかり日も暮れてしまった。楽しかった日曜を引き摺って、いい加減家路に着くとしよう。

