2014年03月21日

3/21長野・松本 日米書院

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空は明るいのに、小雪が所々で舞う中央本線で、長野県入り。ドアが開いてホームに降り立つと聞こえる、「まつもと〜まつもと〜」の女性アナウンスは懐かしい空気を纏っているので、改めて旅情を掻き立ててくれる。『お城口(東口)』に出て、ロータリーから蜘蛛の巣のように広がる道の中から『公園通り』を選択し、東北東へ歩き始める。続いてパルコ手前の道を北に進み、『中央大手橋』で流れの清冽な女鳥羽川を渡る。通りは『西堀通り』となり、『西堀公園前交差点』で東に向かうや否や、一本目の細い観光地の裏通りを北に入り込む。板塀が沿い、木造家屋が続く、気持ちのスッとする通りである。しばらく歩くと左手に、一際古い木造の二階建て商店長屋が登場する。三軒続きの一番奥のお店だけが営業しており、店頭に生花や野菜を並べている。ここは去年、古本さんぽ&街歩きをしていた岡崎武志氏が偶然見付け、その陰鬱な店内に本棚があるのを確認するも、「どうも入れなかった」と言うお店なのである。「キミなら入れるはずだ」と、お鉢を回してくれたのを長らく放置していたので、本日ようやくおっとり刀で駆け付けた次第。確かに薄暗く天井の低いコンクリ土間の店内には、半ば放置されたかのような本棚が見えている…それにしても菓子類やパン粉やホットケーキミックスが陳列されているので、一見何屋か判然としない珍妙な店先が展開。その混然一体な不可思議な状況が、店内に入るのを躊躇わせている…。しかしその時!店内から一匹の茶トラ猫が舌をペロペロさせながら、悠然と登場した!「ア、アオ」と一声鳴いたので、こちらもしゃがんで挨拶する。そして決心。よし、入るぞ!トラ猫とすれ違うようにして中へ。途端に時間の質がくるっと変化してしまう。土間に置かれた縦長の平台に置かれたお菓子類以外は、停滞したような店内。奥には広い上がり框があり、そこに立つ短躯の村長さん的鼻髯老店主が、訝しがりながらも「いらっしゃい」とボソリ。「あの〜、この本は売ってるんでしょうか?」「はっ?えぇ。一応、売ってますよ」「そうですか。ではちょっと見させて下さい」…それにしても“一応”って何だ?左壁には様々なタイプの本棚が並び、宗教・心・全集・児童文学・絵本・料理・「銀花」・美術がカオスに並ぶ。1980〜2000年くらいが中心か。お店の古さに比べて割と新しめな印象ではある。棚の前には雑誌の山・CD・レコードなどが積み上がり、間には完全に忘れ去られた地形図を収めるマップケースが埋もれている。奥の古めかしい造り付けの本棚には、エッセイ・ノンフィクション・実用・文学などが並ぶ。それにしても、どの本もスリップが天から頭を覗かせているようだ。これはみんな新刊なのか?良く見ると、平台のお菓子の下には横積み文庫の列が隠れていた。右壁の重厚な造り付け本棚には、大判美術本・美術全集・豪華写真集・ガイドブック・文学・信濃郷土・山岳・実用などが二重にごちゃごちゃと並んでいる。店内の光景に圧倒されながらも、一冊を手にして「これを下さい」と差し出すと「古い本だけどいいの?じゃあ半額でいいよ」となった。お礼を言いつつ「ここは古本屋さんなんですか?」と畳み掛けると「ここはね、元は新刊書店だったの。松本ではかなりの老舗店。でも店を畳むことになっちゃって、それをそのまま俺が引き継いだの」「あぁ、そうだったんですか。棚は以前のお店、そのままなんですね」「前はもっと良い本があったんだけどね。古本屋さんがみんな持ってちゃった。俺も良い本隠してるし」「隠してるんですか!」「読みたいからね。倉庫にもまだまだあるんだよ」「うわ〜、見てみたいッス…。ところでお店の名前は何て言うんですか?」「日米書院。ほら、そこに看板があるでしょ。もう出せないけど。ガッハッハッハ」…確かに、雑誌やガラクタの中から、『日米』とだけ見える立看板が、頭を覗かせている…。と言うわけで、編集工房ノア「北園町四十三番地/山田稔」を購入。店主はニコニコしながら「もう来なくていいよ。来ちゃダメだよ。あまりここの空気を吸うと、病気になっちゃうよ。ガッハッハッハ」。来るなと言われると、逆に来たくなるのが人間の性。じゃあ次は、お菓子でも買いに来ることにしようか。
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これが店内に招いてくれた茶トラ猫!ペロペロ真っ最中!
posted by tokusan at 18:31| Comment(6) | TrackBack(0) | 信越 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
そうか、行ってくれたんだ。ものすごい店だね。ぼくはとてもとても、入れなかった。同じ通りの向いにある、古い銭湯も気になっていたんだが、秘境駅ってあるが、秘境本屋というのもあるんだな。それにしてはいい本、抜いてきたなあ。
Posted by 岡崎武志 at 2014年03月21日 20:38
松本、未踏地古本屋ですか。こちらは「北海度&東日本パス」で一年ぶりに須賀川の古書ふみくらにいきました。こちらも山から強風にあおられた粉雪が舞い散る寒さ。そのあと、貴ブログで知った一駅隣の安積永盛駅の「Small Town Talk」も拝見。どちらも駅から歩いて20分。「Small Town Talk」は初めてで、貴ブログの適切なルート解説がないとなかなかたどり着けないところ。感謝です。そのあとこれまた貴ブログ紹介で知った西那須野の古書丸高にも行きたかったのですが、時間の関係で断念(白線文庫は金曜日おやすみのようでしたし)。上野に戻り、昔ならこれから上野古書センターにも寄れたのに…と。明日はとりあえず…近場でと?
Posted by 古本虫がさまよう at 2014年03月21日 20:54
そのお店、五年前に行きました。店主は永島慎二の友だち(知り合い?)だったはず。
Posted by passing by at 2014年03月22日 02:52
岡崎武志様。と言うわけで、タレコミありがとうございました。次回松本行の際は、ぜひとも突撃してみて下さい。斜向いの、塩類鉱泉『塩井の湯』は、確かに尋常じゃない魅力を放っていました。
Posted by tokusan at 2014年03月22日 22:00
古本虫がさまよう様。確かに二店とも、駅からだいぶ離れていますね。それにしても相変わらずアグレッシブなハシゴっぷりには感心いたします。パスを巧妙に駆使して、さらなる古本旅を!
Posted by tokusan at 2014年03月22日 22:02
passing by様。うぉ、何と言うレアな情報。店主はかなりの美術好きで、今は村山槐多にはまっているようです。それにしても、五年前にすでにあったんですね。恐らく2000年より後に、引き継いだと思われます。
Posted by tokusan at 2014年03月22日 22:04
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