『A1出口』を出て東に二十メートルも歩くと、そこには瀟洒な街角がある。「波多野書店」(2011/06/02参照)とビルの一階を分け合う、洋書古書のお店がそこにある。振り仰ぐビルの六階角に店名看板があり、一階には洋風の看板がぶら下がると共に、軒にも風雪を経た店名看板が掲げられている。“BOOKS”と“小”の文字をあしらったロゴマークが可愛らしい。角はコンパクトなショウウィンドウになっており、プレミア文学洋書が美しく飾られているが、何やら国際的な英文の「小川図書」の鑑札も輝いている。出入口の左右にワゴンがあり、その足元や歩道には本の詰まった小ダンボールが広がりを見せている。しかしそこに並ぶのは、ペーパーバックや学術書や辞典の洋書…一部に日本語の本もあるにはあるが、専門的な言語学や英語のガイドブックや辞書…それに何故か新渡戸稲造本…。三冊だけ唐突にあった古い「スクリーン」を頼りにして、小さな店内に突入する。すると目の前に立ちはだかるのは物質感たっぷりの横積み事典の壁。通路は左右に分かれ、壁棚は当然洋書で埋め尽くされている。右壁は言語学・言語哲学・旅行ガイド・辞書・書物の本・聖書類と、奥の音無美紀子風女性のいる帳場まで続く。左壁はアルファベット順英米文学・カリカチュア・挿絵本・都市などが、ドッサリドッシリ重厚に腰を落ち着けている。この辺の光景は洋古書屋さんではいつものことだが、このお店は一歩中に入ると目を瞠ることとなる!真ん中には背の高いラックと低いラックが連なり、そこには50〜70年代の洋雑誌が美しく揃っていた!右はファッション系で「VOGUE」「ELLE」「BAZAR」など、左はカルチャー系で「ESQUIRE」「PARIS MATCH」「HOUSE&GARDEN」映画雑誌など。奥のラックには「LIFE」と「FORTUNE」が年代順に蒐集されている。言語学と文学の洋書だけかと思ったら、古色優しく洋雑誌が微笑んでいてくれたお店である。値段は私の知識では判断出来ず。近代映画社「スクリーン 1956/3」を購入する。お店を出て早足にお茶の水駅を目指していると、信号待ちの間に「三茶書房」(2010/10/26参照)の右端100均ワゴンに吸い寄せられ、一瞬のうちに春陽堂文庫「かんかん蟲は唄ふ/吉川英治」を掴み出す。神保町でこのような古い文庫を100均で手に出来るのは、何物にも代え難い喜びを呼び起こす!
この後は気ままに北東へ向かい、今年初めての「プラハ書房」(2010/12/22参照)を訪問。何度も何度も口を酸っぱくして言おう。やはりこのお店は良い!講談社版世界名作全集「黄金虫/原作・ポー 江戸川乱歩」(函に補修あり)春陽堂少年少女文庫「黄金虫・黒ねこ/ポー」労働文化社「新十郎捕物帳/城昌幸)」(背セロテープ補修)鷺ノ宮書房「人形佐七捕物文庫/横溝正史」を計2000円で購入。
さらにこの後町屋へ向かい、「丹青通商」(2012/08/22参照)にも突入し、春陽堂少年文庫「古事記/鈴木三重吉」双葉ポケット文庫「怪奇探偵小説集1/鮎川哲也編」を計1100円で購入しつつ、店主に名乗りを上げてご挨拶。実は去年年末に単行本を出した時に、わざわざ掲載のお礼のメールをいただいていたのである。その懐の深さに感謝しつつ、“古書と電子部品”の異例な店舗形態について様々に尋ねてしまう。荒川区で、思わぬ楽しいひと時。

