最後の春の青春18きっぷを使い、いつもの如く長時間移動して、まずは浜松。そして赤い旧丸ノ内線風の遠州鉄道に乗り換えて、合計所要時間二分弱の二駅をガタゴトガタゴト。車掌さんに切符を手渡し、無人の高架駅から地上に下りる。地方都市の街中ではあるが、住宅街と混ざり合った光景が広がっている。駅の西側に出て、まずは高架沿いに北に歩き始める。真っ直ぐ進めば、石垣とコンクリで護岸された小さな新川にぶつかるので、高架と別れて西に家と家の間を進み、最初に現れた小さな橋で北に川を渡る。後はこの川沿いに、静かだが生活感のある街中を、西へトボトボ歩いて行く。冷たい風が、空の雲を勢い良く吹き流し、日向と日陰が目まぐるしく入れ替わる。道がうねったり細くなったりしようとも、小さな川沿いに歩き続ける。『元浜橋』を横切り、川の上の古い小さな広場のような『元浜大橋』を渡ると、道はいつの間にか左岸となり、白い箱型ビル『浜松市元目分庁舎』の裏手へと出る。ここまでは駅から500mほどで、庁舎西側の中華料理屋さんの隣りのブリキ張りビル風建物の一階に、目指すお店がオイルびきの木材を鈍く輝かせていた。ここは今年になって出来た、古本と珈琲のお店である。小さく店名の入った扉の向こうは暗く、大きな窓にも緑の簾が下げられているので、中の様子は窺いようが無い…。この店名は、やはり映画から採ったものだろうと思いつつ中へ踏み込む。シックに木材を基調にした店内。左が喫茶スペースで、奥に短いカウンターとフロアに数席のテーブル席、壁には藤原新也のポスターが飾られている。カウンターの奥から、ヌッと立ち上がって「いらっしゃいませ」とボソリ言ったのは、和風ジャン・レノ(若干崔洋一寄り)的なお洒落で渋いオヤジさんである。そして右側がちょっと薄暗い古本屋スペースで、右壁から三本の本棚が生え出し、三つの小さなスペースを造り出している。本棚脇には、斬新な薄暗さ対策として懐中電灯がぶら下がり、本の背文字が見え難い時はこれを使用するらしい…。入口右横スペースは“コ”の字型に棚が集まり、詩・言葉・日本文学・ノンフィクション・海外文学・現代思想などが向かい合う。真ん中には向かい合う棚に、新書・宗教・老い・死・反戦・反原発・自然・民俗学が集まる。棚脇のインド棚を上から下まで眺めてから奥に進むと、手前側に料理・映画・アート・ビートニクス・サイケデリック・医療・精神医療が並び、最奥の他より長い棚には旅・ガイド・鉄道旅・登山・音楽・漫画評論・本関連が収まる。本の値段は、主に背に貼られた金・銀・赤のシールで分けられているようだが、値段のアナウンスは何処にも見当たらない。シールの無い本には、割としっかりした値が付けられている。フロアの大テーブルにも、安売り洋楽CDの山と共に絵本が集められている。カウンター上にも、整然と音楽や哲学の本が並ぶが、これらは果たして売り物かどうか…閲覧用かもしれないな…ハッ!ふ、「古本屋ツアー・イン・ジャパン」が紛れ込んでいるじゃないか!心臓がドギンと跳ね上がり、嬉しくはあるが何故だかとても恥ずかしい。本当に思わず赤面し、本から目を逸らしてしまう…古本屋さんで自分の本に出会うのは、夢のひとつであったのに、何と言う情けなさ……。本はそこまで多くはないが、少数精鋭ジャンルのオヤジさんの気骨がドッと注入されたお店である。銀色シールの貼られた、朝日新聞社「紀信快談 篠山紀信対談集」を差し出すと、シールを確認して「300円」と一言。安いじゃないですか。と言うことはシールの値段分けは、100・300・500か300・500・700のどちらかであろう。
お店を出たら、賑わう『浜松城公園』をぐるっと回り込んで、坂の途中の「時代舎」(2008/05/26参照)へ向かう。軽く楽しむつもりだったのに、教養文庫「ソロモンの桃」「オラン・ペンデクの復讐」共に香山滋、徳間文庫「船旅の絵本」「良平のヨコハマ案内」「船旅絵日記」「船キチの記」すべて柳原良平、春陽文庫「博士邸の怪事件/浜尾四郎」ちくま文庫「上海コレクション/平野純編」21世紀ブックス「おもちゃの作り方/石川球太」を計3100円で購入してしまう…安かったとは言え、昨日に続けて買い過ぎたきらいがあるので、ちょっと反省しながら東海道線に揺られる帰り道。


古ツアさんが古本屋で「古本屋ツアー・イン・ジャパン」を見つけるのはある種必然でしょうか
私は我慢出来ずに新刊で買ってしまいました・・・
しかし古本屋で「古本屋ツアー・イン・ジャパン」を見つけること、は継続します