ここは昨年末に、古本神のひとり・森英俊氏が訪ねた折り、中央棚の一列に仙花紙ジュブナイル本が渋く輝かしく並んでいるのを発見し、驚喜購買したとの報告を受けていたのである。早く見に来たかったのだが、年明けになってしまった…。まずは強風に嬲られる老人と共に店頭台をチェックしていると、東京堂「硝子張の中の人/南雄三」という八千代生命その他もろもろの経営者の本を発見する。大正十三年刊で、函と本体の装釘が共に素晴らしい。見返しの値段は1080円で、鉛筆で『前川千帆』と書かれている。これは千帆の装釘なのか?と目次部分を目で追うと、おぉ!装釘は水島爾保布ではないか!と大いに喜ぶ。前川千帆は挿画の数枚をポンチ絵のような軽いタッチで担当しているだけであった。爾保布装釘本を手にして店内に進むと、ほほぅ。確かに壮観な仙花紙ジュブナイルの群れが、強力に古本心を誘惑している!南洋一郎・高垣眸・海野十三・野村胡堂・久米元一・小山勝清…これは確かにスゴい!しかし値段は普通に良い感じに付けられているので、おいそれと手が出るものではないのだ。だがやはり、見ているうちにとても欲しくなってしまい、悩んだ末に値段下層クラスの偕成社「古城の怪寶/久米元一」(初版蔵印あり)を選び取る。いざ精算と思ったら、雨風が強くなって来たため、帳場のご婦人が店頭棚や台を店内に一生懸命引き入れいている…ビニールシートを掛けたりせずに、完全避難なんだな。こりゃ大変だ。その大変な作業が落ち着いたところで精算をお願いする。前述の二冊を計4320円で購入。「これは初版よ。いい買物したわね」と何故か褒められつつ、店頭台で一杯になった通路を擦り抜けて表に出る。
続いてさらに南に向かい、こちらが本日のメインイベントである、その消息が気になっていた本鵠沼の「古南文庫」(2011/04/27参照)を訪れてみるが、残念ながら一心同体の酒屋と共にシャッターを下ろしていた。雨がひどくなる中を駅まで戻り、さらに一駅下って鵠沼海岸の「太虚堂書店」(2009/09/23参照)にも焦りつつ向かうが、ドアは堅く閉ざされ、その向こうに積み上がるダンボールなどがうっすらと見え、窓には藤沢のお店の地図が貼り出されている…もう営業していないのだろうか?
この辺りは週末に活気あふれるはずなので、再びいつかの土日あたりに「古南文庫」と共に再チェックしに来ることにするか。
雨風は強いが潮の匂いに誘われ、街中を通り抜けて海にフラフラと近付いて行く。しかし海岸に近付くと、とてつもない強風が襲い掛かり、雨が貫くように体を撃つ。砂浜に出ると、強風と雨粒と砂粒が一斉に襲い掛かり、前に進むのも目を開けているのも厳しい状況に陥る。痛い!色んな粒が痛い!体を風に持って行かれないよう注意しながら大荒れの海岸線まで近付き、写真を撮って引き返す。
…これが今年初の海とのコンタクトであった。帰りの車内で砂混じりの体を暖めながら、今日の収穫も写真に収めてみる。この爾保布描くところのスタンドのシェードはどうだ!カーテンはどうだ!夜の闇は、どうだ!


雨にも負けず風にも負けず、新年早々、古本屋ツアーへの連続出撃、お疲れ様です。精力的なツアーには、早くも続々と成果が挙がっていますね。
お気に入りの挿絵画家・水島爾保布ですが、この人の挿絵は大昔に、様々な文学全集や探偵小説集などで見かけた記憶があり、懐かしさで一杯です。この年齢になって初めて、その姓名を知りました。告知、有難う御座います。
お礼に、ネット上に公開展示されています【東海道五十三次・漫画絵巻】の「袋井」に、彼(か)の水島爾保布が描いた「袋井の宿場風景」が含まれている事実をお報せします。
ご関心あれば、著名な動画共有サイトにて、以下の要素で検索を掛けてみて下さい。原本は大正拾年に制作された歴史的な文化財ですし、既に公開されていますから、多分、此処で披瀝しても大丈夫でしょう。
[東海道五十三次・漫画絵巻, Toshio Hattori]
上記ビデオの5分04秒頃に【水島爾保布、袋井の宿】が登場します。挿絵の左上に画家本人による詞書が4行あり、その末尾にある「尓」が画家の署名で、姓名の「爾」の略字でしょう。この漫画絵巻には、貴殿のもう一人のお気に入りの画家・前川千帆も登場します。
ご関心あれば、どうぞ。お元気で。