2015年01月09日

1/8岡山で「万歩書店」全店スピードツアー!

昨日本日と、本の雑誌『おじさん三人組が行く』の新企画『岡山・万歩書店ツアー』に便乗して、三時間半の新幹線移動で、およそ二年ぶりの岡山へ向かい、観光など一切せずに二日間を「万歩書店」内のみに蠢く!端折って書いたつもりが、やはり大作になってしまったので、心してお読み下さい…。

一月七日午前十一時。岡山駅改札で同行して来た編集M氏と共に、昨日から別件で前乗りしていた編集長H氏と営業S氏と合流し、すぐさまレンタカーで津山へと旅立つ。津山…三十人殺し…八つ墓村…横溝センセイ!と連想しながら、昭和なドライブイン文化が花開き続ける山間の街道を、ウネウネと走って二時間。いつの間にか雨が降り出した陰鬱な空の下に、津山の城下町が吉井川沿いに栄えていた。風情ある横溝ワールドな町中を進んでアプローチした、憧れの「万歩書店」への第一歩は、訳も分からず地下駐車場に進入してしまい、その全貌がなかなか判然としない。車が停まると同時に車外に飛び出し、スロープを駆け上がって川沿いの街道に顔を出すと、平屋に見えるが実は土手の高低差を利用した、二階建て三角屋根の大きなお店が出迎えてくれていた。

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●東津山「万歩書店 津山中之町店」
限られた時間の中、正式なツアーは望むべくもないが、とにかくこれが、記念すべき万歩への第一歩なのだ!と大きな喜びを携え、『業者・マニア大歓迎』とある広大な店内に突入する。入口は二階に通じており、そこにはコミックやゲーム類が並んでいる。それらには目もくれずに、レトロな映画ポスターや雑誌創刊号に飾られた中央大階段を下ると、そこは見事なまでの古本世界。およそ六本の通路が切れ切れに全フロアに広がり、多ジャンルが棚や床上に並ぶ中、目を惹き付けるのはやはり茶色い古書群!中戸川吉二のボロボロの本を発見したり、ショウケースに飾られた下村千秋「天国の記録」の竹中英太郎装に目を奪われたりする。全体的に良い本の値は手強いスキ無しの構え。しかしこれが万歩!とこちらも積極的に介入し、春陽文庫「三角館の恐怖/江戸川乱歩」六興出版「神州纐纈城/国枝史郎」金沢文庫「失われた世界へ/デビッド・ノット」朝日ソノラマ「海外旅行撮影のすべて/渡部雄吉」(最近『張り込み日記』で名を馳せたカメラマンのハウツー本!)を購入し、景気を付けて気合いを入れる。この二日間で、古本をたくさん買うぞ!続いて川沿いに西に引き返して、街中街道沿いの二店目へ。

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●津山「万歩書店 津山小田中店」
赤く滑り易い地面に囲まれた平屋のお店である。とは言え通常の古本屋さんよりは、やはり遥かに広い。二十メートルほどの通路を九本備え、コミックやラノベを中心に、わりと通常寄りなリサイクル店の様相。それでも文学や郷土本の棚は存在するので、しっかりとそこに食らいつき、また50円文庫を愛でたりしながら講談社「自伝 わたくしの少年時代/田中角栄」記録文化社「武林無想庵盲目日記」(後妻・武林朝子の識語署名入)を購入する。ここでは店員さんに声優で同姓同名の小山力也氏と間違われ、恥ずかしいやら申し訳ないやら…。赤面しながら東に一時間弱移動して、道に迷いながらもどうにか日の暮れる前に美作のお店に到着する。

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●林野「万歩書店 美作店」
平成二十一年に出来た一番新しい支店で、自称“一番小さな万歩書店”。外観から察するに、元はパチンコ屋ではないだろうか。先の二店から比べたら確かにコンパクトだが、十本の通路は偉大である。ここでは隙間的な本を目ざとく見出し、秋田書店「若さま侍捕物手帖/城昌幸」徳間文庫「古墳殺人事件/島田一男」日本文教出版社「岡山文学アルバム」(地元でこういう本を買うのは特別な喜びあり)を購入。外灯の少ない横溝ワールド夜道を疾走し、命からがら岡山市街に逃げ帰る。目まぐるしかった第一日目の総括をする前に、ちょっと本店にも一瞬寄ってみようということになり、夜の帳に包まれた、待望の「万歩書店」総本山に、ロッカーに荷物を預けて突入。その瞬間、すべての古本屋既成概念と知識と経験がホワイトアウトし、次元の捩じれたような超現実のような長大な通路に、たちまちノックアウトされてしまう。今までの三店を見て、確かにスゴいが「ブックセンターいとう」や「ほんだらけ」に似ているなと思っていたのだが、これは想像を遥かに越えまくる光景!とてもじゃないけれど、体調がどれだけ良くても、時間がたっぷりあっても、ツアーで太刀打ち出来る代物ではない。古本を探すにしても、的を絞りに絞らなければ、集中力と精神がひたすら肥大し薄まってしまう!ならば俺は、茶色い古書に、この瞬間のすべてを賭けよう!中央通路に連なる300均古書ワゴンや、恐るべき中央右寄りの古書棚にべったりとマンツーマンマークを施していると、浦島太郎的にあっという間に現実の世界では二時間が経過してしまった。見たことのない本のオンパレードに魂を奪われっ放しで、取りあえず角川文庫「監禁/小林信彦」東方社「僕は会社員/北町一郎」ポプラ社世界小説推理文庫「第三の恐怖/江戸川乱歩」日本圖書出版株式會社「地と人/早坂一郎」牧書店「砂漠の国ジャングルの国/高村暢児」(以上すべて裸本)日本音楽雑誌株式会社「音楽は愉し/野村あらえびす」を怒濤のように購入してしまう。一通り買ったところで、後ろ髪を引かれまくりながらお店を後にする…しかし、とても気になる本が、高値なのだが気になる本が、いやそれでも買ってしまおうと心に誓った本が一冊…あぁ、あれを早く我が物にしなければ…。

明けて一月十八日。午前九時にホテルを発って、ほぼ隣町の倉敷へと向かう。しかし一時間ぴったりで到着した場所は、いわゆる倉敷感はゼロの、市民球場の隣にある2フロアの広いお店であった。

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●倉敷「万歩書店 倉敷店」
まだお店の前を掃除している店員さんを尻目に、一番乗りに店内に雪崩れ込む。一階はコミックやフィギュアやアダルトがメインなのだが、入口右横奥にある古漫画雑誌・貸本漫画・雑誌附録漫画が異彩を放ちまくっている。1000円〜10万円の値段幅にも度肝を抜かれる。そこで古本魂を吸い取られてしまったのか、二階の「ブックセンターいとう」的古本フロアに向かうも、全員が何を見て何を買うべきか分からぬ状況に陥り、絶望的に広いフロアを右往左往し、時間だけがいたずらに流れて行ってしまう。ここでもやはり古書に注目するが、狙いが定められず値段との折り合いもつかず、結局ロマンブックス「幽霊男/横溝正史」光風書店「幽霊紳士/柴田錬三郎」東方社「ぜいたくなホテル/黒岩重吾」を購入。ここに来て、岡山でようやく横溝本が買えたことに安堵する。柴錬の本と合わせ、謎の“幽霊”コンボになったのも微妙に嬉しかったりする。続いて少し北上し、「悪魔の手鞠唄」の舞台でもある、山に囲まれた盆地の総社に向かう。

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●総社「万歩書店 総社店」
交通量の激しい交差点近くにある、窓のない倉庫的なお店は、万歩にしては小振りな部類である。店内は2フロアだが、二階からは一階の棚が所々見下ろせるほど、ちょっとワイルドな空間となっている。コミック・ゲーム・玩具類がメインで、一階に100均本と一般本が少々と、二階のコミック空間の端に文庫通路が一本あるのみ。その規模の小ささに、何故かちょっとだけホッとしてしまう。角川文庫「戦国残酷物語/南條範夫」を購入。ロッカーにカバンを忘れる愚かなアクシデントを乗り越え、午後二時。この旅のラスボスである、憧れの「万歩書店 本店」に満を持して再突入する。

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●岡山「万歩書店 本店」
書店首脳メンバーと挨拶を交わし、取材を終えた後(詳しくは「本の雑誌四月号」に一文書かせていただく予定。それにしても、ここでは事務所ぐるみで声優・小山力也氏と勘違いされており、その釈明に必死にならざるをえなかったのが、哀れなピエロ的でどうにもこうにも…)いよいよ本腰を入れて、再度古書棚に挑みかかる。そして昨夜から目をつけていた一冊を、勇気を持って誇り高く抜き取り、昨日は足を踏み入れる暇もなかった二階へ。そこでは奥の壁棚にドババッと揃う、仙花紙文学本にただただ垂涎!祈るように棚の前に跪き、戦中戦後の世界に耽溺!値段は800〜2500円で、大変にジャストな値付が為されている。やはりとても時間が足りぬ焦燥感に囚われながらの一時間半。民友社「新疆探險記/橘瑞超師著」報知新聞社「飛燕合気道/牧野吉晴」山ノ手書房「たぬき尼僧/宮下幻一郎」を購入。一番感激したのは橘瑞超の大正元年オリジナル本!まさかこんな物に出会えるなんて!値段は四千円と高値ではあったが(県外訪問者割引で10%オフの3600円となった)これは絶対にそれ以上の価値がある!そう信じて手に入れた大満足の一冊なのである。
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今回の万歩ツアーは、本を買うことに眼目を置いた、普段とは精度の異なるものであるが、感じとしてはとにかく古書がスゴい!の一言に尽きる。文庫などは量も膨大で絶版も混ざり込むが、それほど色めき立つ発見はなかった。全体的な値段もわりとしっかり付けられているので、所々でブレーキが掛かり、欲しい本は次々と見つかるが“バカ買い”という域には達しなかったのである(それでも初日に作ったスタンプカードは見事にいっぱいに…)。しかし見たこともない古本に多数出会えたのもまた事実で、非常に激しく興奮しっ放しの、スピードツアーとなった。この旅を提供してくれた本の雑誌社に感謝しつつ、岡山の地で巨大でアナクロな古本屋さんとして根付き奮闘する「万歩書店」全店に、さらに大いなる感謝を!
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※二日で溜まったスタンプカード。古本屋ツーリストとしては、買った本も嬉しいが、この旅の軌跡は何ものにも代え難い勲章である。
posted by tokusan at 00:09| Comment(10) | TrackBack(0) | 中国・四国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
祝!新春初万歩ツアー完走おめでとうございます。
短期間での全店訪問には驚きです(地元に居りましてもなかなか全店とは・・)。体力眼力思考力が無いと持ちませんね(本の雑誌4月号期待しています)今年もガンガン攻めて行ってどどひゃほう連発期待しています。

あっ・・今回は忘れ物無かったですか?・・・・・・
Posted by 倉敷から遠いで at 2015年01月09日 09:29
こんにちは。私は学生時代を岡山で過ごした者です。万歩書店にもよく行ったものですが、最近何店舗か閉店してしまったと聞き、残念に思っています。特に平井店など、内部が他に類を見ない立体的な構造になっていて面白かったのですが……。
Posted by mir at 2015年01月09日 11:07
ちょっと遅れましたが、新年明けましておめでとうございます。
東京でも名前がとどろいている万歩書店はやはり圧倒的ですね。ツアーの様子を読んでいたら、「ブックセンターいとう」短期間全店舗制覇への誘惑に駆られてしまいました。これぞ古本と『古本屋ツアー・イン・ジャパン』の魔力・・・・!
Posted by 古本童子 at 2015年01月09日 20:14
新春らしいBIGなお年玉的記事ありがとうございます!!興奮して読みました!!
Posted by 東中神の男 at 2015年01月10日 00:47
倉敷から遠いで様。ご無沙汰しております。その節は大変お世話になりました。今回の万歩ツアー、堪能と言うには駆け足過ぎましたが、その一端が垣間見られただけでも幸せです。いつの日かゆっくりとじっくりと一店ずつ…。今回の忘れ物は、総社店のロッカーに見事にカバンを忘れてしまいましたが、Uターンして取り戻しました。大変危なかったです…。
Posted by 古ツア at 2015年01月10日 18:42
mir様。コメントありがとうございます。万歩が思い出のお店とはうらやましい。最盛期には九店があったらしいですね。平井店もモタモタしていたら、いつの間にか無くなってしまいました。立体的な構造!あぁ、見てみたい!
Posted by 古ツア at 2015年01月10日 18:44
古本童子様。今年もよろしくお願いいたします。「ブックセンターいとう」スピードツアー、綿密な計画を練り、ぜひとも実行に移して下さい。その経験があれば、万歩攻略もなんのそのとなりましょう!今年も精一杯古本にまみれて下さい。
Posted by 古ツア at 2015年01月10日 18:47
東中神の男様。これで少しでも万歩の様子が伝われば嬉しい限りです。きっとそのうちの何人かは、近々実際に訪れることでしょう。いざ「万歩書店」へ!
Posted by 古ツア at 2015年01月10日 18:49
万歩書店、総社店が今月いっぱいまで閉店セールを行っているそうです。
また美作店も今年の3月いっぱいで閉店したそうです。
私も行きたいのですが遠いのでなかなか…
Posted by W.O.K. at 2017年11月18日 04:42
W.O.K.様。情報ありがとうございます。「万歩」にも縮小の兆しが…。どうにかしてこれからも、本店と倉敷店と津山中之町店は死守して欲しいですね。またいつか、訪れる日のために…。
Posted by 古ツア at 2017年11月18日 17:23
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