2015年07月12日

7/12埼玉・坂戸 蔦文庫

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濃緑の稲の葉が、剣山のように尖るのを車窓に見ながら、東武東上線で北上。駅北口に出て、よさこい祭のゲートから始まる欅並木の『坂戸駅東通り』をちょっと北へ。二本目の広い脇道『あけぼの通り』に入り、東に真っ直ぐ進んで行くと、護岸された飯盛川にぶつかる。かつてその対岸には「BOOK ONN 坂戸店」(2009/07/19参照)があったはずなのだが、今はコンビニに成り果てている…誠に残念である。そのまま交通量の多い県道に合流し、南東へと歩を進める。『坂戸陸橋』の下を潜ると、左手に天文台ドームのような屋根を持つ体育館が現れ、中学校や高等学校が道沿いに続く。その対岸である、中学校の正門斜向いに、メールタレコミで知ったお店が、置き忘れられたように、時の淀みを作り出していた。軒の古びた看板、くたびれた緑の日除け、文房具の看板、窓ガラスに貼られた騒音への抗議…だがしかし、何よりもこの目を惹き付けたのは、サッシの向こうに見える、キッチリと古本の並ぶ棚であった。興奮を抑えて戸を開けると、電子メロディがピロピロリ。即座に奥に人の蠢く気配が生まれ、和菓子職人のような白衣を着た、川端康成的オヤジさんが団扇片手に姿を現す。会釈してコンクリ土間の小さな店内を探索する。壁際にはスチール棚が置かれ、中央に上部が棚で下部がラック&平台の棚。これが店内を縦に二分し、右が新刊&文房具雑貨ゾーン、左が古本ゾーンの構成となっている。左壁棚には実用ノベルス・児童書・日本文学文庫・海外文学文庫・新書が並び、奥壁に学術系古書が集まる。中央棚には大衆小説・推理小説・時代小説・官能小説・漫画・雑誌が集まる。店内は古びているが荒れてはおらず、本は昭和四十年〜五十年代が中心で、時間の停まり具合が“何かあるのではないか?”という予感を絶え間なく走らせる。実際は本の数はそれほど多くなく、冷静に見るとそれほどでもないのだが、昭和タイムカプセルの魔法はとかく甘美なのである。裏表紙見返し下部に書かれた値段は激安。本を二冊抜き取り、右側ゾーンに入って、オヤジさんの視線に晒されながら棚を見て行く。古ぼけた新刊書・絵本・新潮文庫・岩波文庫、それに蔦文庫が出した新刊も並ぶ。こちらで特に目を惹くのは、棚の所々に横積みされたプラモデルであろうか。青樹社「屈辱の太陽/高村暢児」番町書房「愛猫記/吉行淳之介・伊丹十三ほか」を購入。包装はかなり劣化した文庫カバー(店名入り)で、のり巻き方式。こういうお店が残っていたことも、そしてタレコミにより出会えたことも幸せな、日射しの強い日曜の午後。部活に勤しむ子供たちの声が、高いフェンスと道路を越えて届いて来る。
posted by tokusan at 15:37| Comment(2) | TrackBack(0) | 関東 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
日曜の午後を描写する最後のまとめ部分は、落語名人のオチを聞いたような幸福感で充たされます。いつもながら、古本ツアー様の名調子には感心させられました。コメントは時々ですが、毎回、楽しみつつ拝読しています。
Posted by 青木明 at 2015年07月12日 15:59
いつもありがとうございます。こういう楽しいお店を発見すると、つい嬉しくなって色々書いてしまいます。
Posted by 古ツア at 2015年07月13日 21:34
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