
そんな風にして今日の夢は破れ、流れ着いたのはいわき駅。以前訪れ、ガラス窓越しに痛恨のツアーをしたお店を目指す(2014/08/19参照)。駅南口の空中広場から地上に降り立ち、西の『レンガ通り』へ。ゴールデン街的に猥雑な小路をうっとりしながら通り抜け、件の通りに出て南に下り、交差点をひとつ越えると、そこは『南レンガ通り』となる。さらに南に歩き、一本目の西への脇道に入れば、もう素っ気ない裏町。ほどなくして右手に古い肌色の雑居ビルが出現し、その一階左側に『グリニッジビレッジ』というヴィンテージ雑貨屋さんがある。ここに古コイン屋さんが古本を並べているのである。前回探訪時は「植田コイン 平店」だったのが、古本屋さんのみ「名前のない古本屋」と改名したようだ。入口前に車が停まっているが、どうやら開店しているらしい。躊躇せず中に踏み込むと、何だか少しガランとしてしまっている…もしや閉店準備中なのか?と一瞬考えてしまうが、左奥のガラスケース帳場に立つミュージシャン・SION風店主が「いらっしゃいませ」と声をかけてくれた。ちゃんと営業中なんだ。窓際にはレコード箱、そして右壁側にCDと古道具&雑貨類が固まっている。そちらには目もくれず、開けたフロアを横断して、左壁の白いスチール棚に向かう。以前無様にガラス越しに見たときより、遥かに冊数を減らしている。だが放置されているわけではなく、面陳も交えているので、販売の意志を微妙に感じ取れる状態…福島郷土本・オカルト・幻想文学・歴史・戦争・日本文学・知的ムック…時々古書が出現し、ガラスケース内には第二次大戦・満州・大陸・南洋の古書が多く飾られている。値段は普通。ムムムと少し悩み、回光社「亜米利加をのぞいてきて/西田天香」(昭和四年刊。新興宗教的思想団体開祖のハワイとロスアンゼルス旅行記)を購入。大きな空振りはしたが、振り逃げでどうにか出塁した思い。いわきに感謝しながら、次打席でのヒットを固く心に誓う。