東口に出て、カーブするダイナミックな空中歩廊を東に進み、巨大原色商業施設『ビナウォーク』ビルの谷間の、日陰だが女子と子供で賑わう長細い広場に下り、さらに東に進んで行く。道路に突き当たったら南に曲がり、『中央公園口交差点』から再び東へ歩き続ける。『国分坂下交差点』を過ぎ、上り坂にちょっと足を掛けた所で、すぐに北に進路を採る。美しい斜度とカーブの坂をぐんぐん上がり、薄緑の『海老名歩道橋』を潜ると、古い大木や民家が現れ始め、時代をぐっと遡った雰囲気が漂い始める。さらに道なりに坂を上がり、右手に白い鉄骨の火の見櫓が見えてくると、左手が見晴らしよく開け始める。遠くに『相模国分寺跡』の史蹟らしい広い原っぱが清々しく臨める。坂をどうにか上がり切ると、そこは歪な形の丘の上の交差点になっており、その際に緑色の学習塾兼住宅が建っている。ところが窓には『古本 古書 珈琲』の文字が…ここは古本好き&ダジャレ好きの塾長が、その好きが高じて今年の十月に始めた古本屋さんなのである。聞けば教室をひとつ潰してお店にし、古本と共に珈琲も提供しているとのこと。横断歩道を渡って玄関に近付くと、まずは無料のリサイクル除籍本箱が展開。中に進むと、左におススメ絵本や三島由紀夫・原節子関連・単独行登山家加藤文太郎を飾ったラックがあり、右側に古本屋フロアが広がっている。ウッディな明るい空間で、古本屋というよりは、児童館などの図書室のようである。入口右横のカウンター内にいたご婦人に「靴のままどうぞ」とニッコリ招き入れられる。カウンター横にちょっとぐらつく本棚が一本あり、その奥に大きなテーブル席。フロアには、右に長い背中合わせの棚が一本、左に短めの背中合わせの棚が一本。左奥には木のベンチが置かれ、そこを壁棚が見守っている。カウンター横の棚には、日本文学の古書や絶版文庫が多く集まるが、中には非売品もある模様。長いフロア棚右側には、セレクト詩集・野坂昭如・永井荷風・絵本・随筆類・女流作家文庫・日本文学文庫・日本文学・日本近代文学・海外文学・文学評論・幻想文学・詩歌句。左側には絵本・宗教・精神・新書・江戸・古本・海外都市・旅・登山・歴史・近現代史が収まって行く。短い棚には、役者・テレビ・落語・児童文学・映画・音楽・コミック・美術・食が両面に集まっている。左壁にはミステリ・時代小説・海外ミステリ文庫が並び、下には横積みのダブり本やLPレコードあり。奥には日本純文学文庫を並べた棚が一本あり、映画パンフを飾った壁ラックと肩を並べている。これでフロアの棚は全部だが、実は入口正面奥の廊下にも、古本棚が設置されている。誰もいない薄暗い教室の前を過ぎ、本棚があるために狭くなった廊下に身を寄せる。村上春樹・吉行淳之介・開高健・北杜夫・井上ひさし・芥川賞&直木賞・小林信彦・宮脇俊三・中上健次・本関連・司馬遼太郎・松本清張・川本三郎・南方熊楠・藤沢周平・山形関連がビッシリ。各ジャンルには単行本と文庫本が入り交じり、塾長が己の眼と脚で集めた古本たちが、質実に堅実にその奮闘を形作っている。値段は普通で、良い本にはしっかりとプレミア値が付けられている。ぐるぐると二周して、講談社「拳銃を磨く男/島田一男」ウェッジ文庫「荷風のいた街/橋本敏男」を購入する。あぁ、この塾に通う子供たちは、必ず古本屋を通って教室に入り、また古本屋を通って、帰路に着くのだな。勉強はいつでも大変だが、それはそれで羨ましい…。
帰りに気まぐれに相鉄線に乗り込み、ツアーしてからまだ一週間も経っていない鶴ヶ峰の「往栄堂書店」(2015/12/13参照)をテクテク訪ねる。いや、前回とお店の棚は寸分変わっていないのだが、何となく来てみたかったのだ。山口書店「虹の花びら/火野葦平」を帳場に差し出すと、ご婦人は私の顔を見て「アラっ!」と小さな声を上げ、どうやら覚えてくれていた模様。続いて差し出した本を見て「渋いわね」とポツリ。500円で購入し、そういえば今日は外に100均棚が出ていたなと気付きつつ、駅へテクテク引き返す。

