お正月も一日から営業している、メールタレコミのあったお店にのんびり出かけてみる。南口に出て、ロータリーから南に下ると、小さな神社のある『我孫子駅入口交差点』から先は、道が少し狭くなる。さらに南に進むと、辺りは駅前からあっという間に住宅街に早変わり。狭過ぎる歩道を伝い、人と道を譲り合いながら、うねる坂道の『公園坂通り』を下る。やがて坂を下り切ると、『手賀沼公園前交差点』となり、南に広がる公園の林の向こうに、煌めく沼影が垣間見えている。交差点に立つ名所案内には、『志賀直哉邸跡』『武者小路実篤邸跡』『白樺文学館』『嘉納治五郎別荘跡』『バーナード・リーチ碑』などとあり、この地がかつて様々な文人や文化人に愛されていたことを、うかがい知ることが出来る。そこから郊外型店舗の並ぶ大通りを東へ進んで行く。道が大きくカーブし、信号を過ぎてからさらに100mほど進むと、左手にレンガタイルで化粧された二軒長屋の商店建築が姿を見せる。その右側が、アメリカのロードサイドスタイルな、カフェと古本のお店であった。おっ、ちゃんと入口横に安売古本棚が出ているじゃないか。これならここで本を一冊でも手に出来れば、カフェに気兼ねせず堂々と中に入れるぞ…と心中に小さな勝利の凱歌をあげる。値段は100〜200円で単行本がメイン。ちょっと面白い本も混ざっており、単行本一冊と、絶対にここにあるべきではないと思えるプログラムを一冊掴み取る。そのまま店内に進入すると、L字カウンターの向こうから、大人の落ち着きとお洒落さを兼ね備えた男女が「いらっしゃいませ」と声をかけてくる。ちょっと会釈して、右側のカフェ席を一瞥した後、すぐに入口左横の頑丈で大きなスチール棚前に張り付くと、そのままフリーにしていただいた模様…本を買うだけの入店もOKなのだな。ありがたい。棚にはエッセイ・片岡義男・小島信夫・食・日本文学・詩集・大判美術本・美術図録・自然・山岳・児童文学・LPレコード・アート・ビートニクス・海外文学・植草甚一・野坂昭如・映画・文庫と、限りあるスペースに意志の流れのある並びが続く。棚前には木製絵本ワゴンと文庫ワゴンが置かれ、その下にはポスター箱や雑誌箱も置かれている。素直さと好みが手を携える、キラキラとキレイな棚造りである。真鍋博の「超発明」がしれっと並んでいたりもする。値段はちょい安〜普通。毎日新聞社「山族・海族/飯山達雄」恒文社「不滅の大投手 沢村栄治/鈴木惣太郎」シールズ親善野球普及會「親善日米野球 昭和24年10月(San Francisco SEALS GOODWILL BASEBALL TOUR of JAPAN SOUVENIR PROGRAM)」を購入する。
お店を出て、ロードサイドをしばし歩いて手賀沼へ出てみると、陽光煌めく水面で、カモメ・鴨・白鳥がギャアギャアクェクェガァガァと、三つ巴の大戦争の真っ最中。そんな騒ぎをよそに、本日の嬉しい収穫を記念撮影する。
「沢村栄治」も嬉しいのだが、昭和24年(1949年)にサンフランシスコシールズが日本にベースボールツアーで訪れた時のプログラムが素晴らしい!GHQ占領下のためか、全124ページのうち94ページ分が英文で30ページ分が和文となっている。英文の方はほとんどが選手の写真とチーム歓迎の広告類なのだが、ペプシコーラ・コカコーラ・四輪の薔薇印ウイスキー(フォアローゼスだ!)・モービルオイル・ノースウェスト・レミントンなどの、懐かしいアメリカが盛りだくさん。対戦する日本の全日本軍・全関西軍・全関東軍・巨人軍の選手名鑑ももちろん掲載されている。来日したシールズの日程の中に、米軍野球チーム(極東空軍と極東陸海連合軍)との対戦が組まれているのは、新鮮な驚きであった。あぁこれが100円とは、間違いなくどひゃっほうである。それにしても1949年と言えば、黒澤明の『野良犬』が公開された年でもある。劇中に満員の後楽園球場で容疑者を捜すシーンがあるが、プログラムによると対巨人戦が10月15日に後楽園球場で開かれているのだ。球場のキャパシティは55000人か…確か劇中でも志村喬がそれに近い数字を口にしていたと思う。うむ、こんな風に一冊の古本が、違う世界とリンクするのは、実に実に楽しいものである。

