日ノ出町駅前から『横浜駅根岸道路』を南南東に下って行く。繁華で猥雑なビル街は、まるで新しい平成が、古い昭和に飲み込まれようとしているかのような、独特な土地の雰囲気を、昼間でも精力的に発揮している。大岡川を越え、『イセザキモール』を越え、『国道16号』を越え、大通り公園に至ると、そこには市営地下鉄『伊勢佐木長者町駅』の地上口。ここからさらに南南東に300mほど歩き、『長者町一丁目交差点』で西北西へ足を向ける。しばらくすると右手に、ロケットと着陸ポッドのイカした遊具が設置された『千歳公園』が現れるので、公園をナナメにザクザク横断して、一本北の裏通りに抜け出る。さらに西北西に進めば、左手大きなビルの一階に、明るい緑のテント看板を張り出した、野球古書専門店に出会うことが出来る。コメントタレコミで知ったお店である。寂しい裏道に古本屋さんの唐突感、そして野球古書という専門性が、微妙に足を竦ませる。だが、ガラスに貼られた長嶋のバッティングフォームに勇気を貰い、ガラス戸を引き開けて店内に入る…小さい。気持ちの良い、小ささだ。壁際に本棚、そして棚前にはラックや箱や小ワゴンが置かれ、通路スペースを不規則な形にしている。左奥に小さく狭いカウンター帳場があり、物静かな現役引退した野茂英雄風青年が座っている。それにしても本当に野球本ばっかりだ!入口左横の100均野球本二段ワゴンを見てから、そこに立ったまま奥の野球特集グラフ誌ラックと、セパ各球団広報誌がズラッと並ぶ棚を、ほへ〜っと臨む。帳場横のプロ野球選手名鑑と野球雑誌に視線を走らせ、奥の棚前にちょっぴり近付く。ジャンル外50均100均箱の向こうには、高校野球・大学野球・プロ野球・小関順二(スポーツライター)・メジャーリーグ・野茂英雄が収まっている。右壁には「number」などの野球を特集したスポーツ誌、それに野球関連の文庫と新書・長嶋茂雄・王貞治・野球漫画が並んで行く。入口右横の棚には、星野仙一・野村克也・原辰徳・落合博満・松坂大輔・イチローなどが勢揃い。小さなお店だが、それでも全部を野球本で埋め尽くされると、清々しいほどの意志の強さと野球愛が、遠慮呵責なく伝わって来る。古い本はほとんどなく、九十年代以降の本が中心だが、専門店なのに値段が安め〜普通なのは魅力的である。値段は本に書かれたり貼られたりしているのではなく、スリップ形式で挟まっている。講談社「早慶戦百年 激闘と熱狂の記憶/富永俊治」を購入する。
この後は『イセザキモール』に戻り、愛しの「なぎさ書房」(2016/01/10参照)を再度訪れる。閉店セール中の店内は、相変わらず賑わっており、棚はブランクなく補充がこまめに行われているようだ。恐らくここに来られるのは、これが最後となるであろう。…ならば、何を買うべきか…。店内をじっくり一巡して選んだのは、美術本棚最上段に場違いに挟まっていた、小山書店の少年少女世界文庫第十編「街の少年/豊島與志雄」であった。50%オフの2250円で購入する。三十年間、今まで本当にお世話になりました!
日ノ出町駅にいくばくかの寂しさを抱えトボトボ戻っていると、大岡川の手前で横浜市の公共掲示板に何気なく目が留まる。あっ!そこには、さっき訪れたばかりの野球古書専門店の宣伝ビラが、ルールを守って張り出されていた…渋い!なんと渋く奥ゆかしい宣伝方法なんだ。

