トンネルを抜けた途端に駅のホームに滑り込み、階段を下って西口から出ると、改札横ではジャズのビッグバンドが演奏中。迫力ある生音を背に浴びながら、『平坂』に足を掛けグングンと山の上を目指して南に上がって行く。急角度の商店街を抜け、山上の『上町1丁目交番交差点』にハアハアと息を切らせながら到着する。このまま真っ直ぐ道なりに進めば薄型店舗の「沙羅書店」(2009/06/02参照)にたどり着くが、今日は帆船のモニュメントが入口に据えられた『中里通り商店街』を西へと進む。ここら辺りにはその昔、古本と貸本の「栄文堂」というお店があったそうだが、今は影も形もなくなっている。だが四本目の外灯を過ぎると、右手に前面を陶板タイルで飾った小さなビルが現れ、その一階に真新しいブックカフェが開店していたのである。サッシ扉にはジャック・タチの映画ポスターや外国市街地地図、それに本棚のある風景が描かれたイラストポスターが貼り出されており、その前に小さな洋書絵本の安売箱が置かれている。恐ろしく滑りの良い戸を引き開けて中に入ると、左に小通路とこじんまりとしたカフェスペースがあり、右にはちゃんとした古本屋スペースが広がっている。その右スペースに奥から顔を出すようにしてレジが設置され、すぐにカフェにも対応出来る造りになっている。座るのは頭にタオルを巻いた年配で面長の武満徹風男性である。カフェ入口前の小通路には二本の棚が置かれ、ペヨトル工房本・自然・山岳・サッカー・旅・海外などがキレイに収まっている。入口右横の洋書絵本や、レジ前の洋書ビジュアル本に軽く視線を流してから、壁棚と一本の通路棚で造られた二本の行き止まり通路に対峙する。奥の通路には、哲学・現代思想・政治・社会・海外文学・日本文学・時代劇文庫・詩・澁澤龍彦・日記・戦争などが集合し、文庫を中心として棚に二重にビッシリ収まっている。手前通路には雑貨類・暮らし(お母さんと一緒にいた子供が「あっ!「暮しの手帖」だ!商品テスト載ってるかなぁ〜」とすかさず手にしていた…朝ドラ『とと姉ちゃん』、恐るべし!)・落語・江戸・料理・児童文学・絵本が並び、棚脇に美術や写真の小さめ棚が置かれている。硬めの良書を揃え、文庫本を主力とし、値段ちょい安な、フレッシュなお店である。これは完全に横須賀方面では、かつて存在したことのないタイプのスタイル!その勇気と行動力と健闘を称えつつ、ちくま文庫「私の絵日記/藤原マキ」旺文社文庫「ウスバカ談義/梅崎春生」を購入する。どうかヨコスカが、この新しいタイプの古本屋さんを受け入れてくれますように!と願いつつ、そのままの足で交差点へと戻って「沙羅書房」へ。今日は奥の通路に帳場前からしか入れないのかと戸惑いつつ、光文社文庫「シャーロック・ホームズに再び愛をこめて/ミステリー文学館編」音楽之友社「ぼくらのライブハウス/岩永文夫」を計550円で購入する。
『平坂』を下って『若松マーケット』を通り抜け、『米が浜通り』を南東へ進む。海は見えぬが匂いで分かる強めの潮風が、重たいがそれでもこの暑さには心地良い。やがて右手に先日全焼してしまった海軍御用達料亭「小松」跡地が姿を現わし、板塀の節穴から寂しくなった亭内の様子をうかがってから、愛しの「港文堂書店」(2010/05/08参照)に到着。店頭で100均本を一冊掴み、店内に入るや否や、郵便配達人が帳場前で話し込んでいる不思議な状況。これ幸いと棚に視線を走らせるが、すぐに「あ〜っ!」と発見され、元気過ぎる母&クールでニヒルな娘さんの、炎と氷の母娘コンビに歓待していただく。呼び名がいつのまにか“力也さん”となっているのに面食らい、店内の古本を見る間もなく手作りの梅干しやジャムをお土産にいただく。嬉しや嬉しや。これでどうにか厳しい残暑を乗り切れる気が…。後は楽しいヨコスカ・ディープ話と世の中には何故面白人間がたくさんいるのかを真剣に話しつつ(まぁ大体は聞き役なのだが…)、隙をうかがい古本探し。ちくま文庫「明治探偵冒険小説集1 黒岩涙香集」カッパ・ブックス「合気道入門/植芝吉祥丸」ロマン・ブックス「黒い白鳥/鮎川哲也」文園社「名月捕物噺/久我荘多郎」宝文館「やもめ貴族/川崎長太郎」(カバーなし)を計1500円で購入する。すっかり一時間ほど話し込んでしまったので、段々と横須賀の故郷となりつつある老舗店を、後ろ髪引かれて後にする。


上町に新しいお店が出来たんですね!これはやっぱり探検するに如かずかと。カフェ併設なら、お茶いただくだけでもいいかも!港文堂さんにもご無沙汰しています。雨模様の日曜日がうらめしい。
どうも、似てない親子の氷の娘の方です。
昨日は、奥でゴロゴロしていたら炎の母に「力也さん来たよ〜」と呼び出されましたが冷静に考えると「いや、来たから何やねん。」と突っ込みたくなるのですが…。閑話休題、全国に蜘蛛の巣の如く張り巡らされた古書ネットワークの情報の早さは流石ですね。どんな小さな獲物も見逃さない。
商売屋は一日に一人は必ずキチ〇イか変態が現れるものですが、もはや力也さんも立派にその領域に入っているよね。と母とは話しております。誉め言葉です勿論。
なにぶん口が悪く喧しい母娘で恐縮ですが、また潮風を感じるついでに顔を出していただければと思います。私が居るときは何かしらお土産がつくかもしれません。ああいったものを作るのが私の趣味なので。
まだまだ、暑い日が続きそうですので、どうぞ御自愛くださいませ。
あります。奥付けは、この本でも「荘太郎」となっていますから、混乱します。
AMIS知りませんでした。今度顔出してみます。
港文堂相変わらずですね。この間行ったら、戦前の恐ろしく分厚い航空関係の書籍を裏から持ち出してきて、買わない?と言われました。とても興味深い本でしたが、見る人が見ればお宝だったと思います。
ところで、10月第1週に横須賀で佐藤さとるのコロボックル物語展が開催されます。イベント企画もあって『わんぱく天国』登場人物ご本人の案内でコロボックル文学散歩がある模様。平日なので私は参加できませんが、ご興味があればまた横須賀にお出で下さい。
私はやっぱり港文堂
岡本太郎のお父さんの一平全集とか、神社の百科辞典とかアメリカの女優の大ポスターとか百均だけでなく中の棚を丹念に見ていると時々良いもの見つかります。
神奈川では一心堂さんが一番かなと思ってます。
客にもう来るなという評判の悪い店主がいる沙羅にはいきません。沙羅でひどい目にあった人が弘文堂にきて愚痴をいっているのを聞いたことがありました。