2016年11月14日

11/14古本屋バイト・イン・J町 その1

関西での新刊キャンペーンを終え、ようやくふぅと一息…と行きたいところだが、根が貧乏性なためか、ここで立ち止まったら、刀折れ矢尽き、がっくり膝を突いてしまう恐れに囚われる。なので、取りあえずはまだまだ前に向かって歩いて行こうと、今週から六日間を新しく奇異でいて真っ当と言えなくもないチャレンジに、人生の一部を費やすことにする。そのチャレンジとは、“古本屋さんで真剣にバイトする”ということ! 日本全国の古本屋さんを、すでにおよそ三千軒近く見て回っているといえども、それはあくまでも客として体験して来た、片面…いや多面性を持つ古本屋さんの一面だけなのである。そこでもう少し、違った角度から大好きな古本屋さんを捉えてみたい、お店側に踏み込んでみたいと考えた結果、一番最初に思い浮かんだのが、古本屋さんの一部に同化してみるということだったのである。今までにも色々なお店にお願いし、店番をしたり買取に同行させていただいたりと、ほんのちょっぴり“古本屋さんのお仕事”に触れて来てはいたのだが、それはかなり優遇された客分としての、特異な一瞬の職業体験に留まっていた。それはそれで、貴重で稀有な機会ではあるのだが、そんな風に甘えていては、恐らく肝心な古本屋さんの本質と真実には、一切触れずにただのうのうと過ごすことになってしまうのであろう。もちろんたどり着きたい本質&真実に対する解答も予測も皆無なのだが、とにかく古本屋さんの中に飛び込み、身を粉にして働いてみれば、何かが掴めるかもしれない、触れられるのかもしれないという闇雲さが、今回の齢五十近くにしてのおかしな行動の出発点なのである…。と言うわけで既知のお店に無理を承知でお願いし、大きな大きなご好意により、本日からJ町に短期通勤することに相成ったわけである。

午前十時半前にお店に飛び込み、ミーティング時に先輩方にガチガチになりながらご挨拶する。すると、たちまち外に飛び出し開店準備に取りかかる彼らの素早さに圧倒されながら、手渡されたエプロンを着用するのに愚かなほど一苦労し、己の無能さと、完全なる月とスッポンレベルの社会人格差に、今更ながら愕然としてしまう…。そんなまごまごあたふたしまくりテンパリ続けているド新人の今日のメインのお仕事は、レジ兼作業場に陣取り、本の状態チェック&クリーニング&ビニールカバー掛け、それにほんのちょっとの接客とレジ打ちと棚への補充である。すべてのことに緊張しながら、懇切丁寧に教えていただいた仕事の仕方やお店についての知識で頭の中をショート寸前にパンパンにしながら、ゆっくり不器用に仕事する。だがそんな中でも、ビニールカバー掛けが次第に上達しいく小さな小さな進歩に、まずは喜びを覚えてしまう…。本に掛けるビニールは、片側がポケット状になっており、中間から少し過ぎた所にベルト状の帯があり、反対側に留めるシールが付いているもの。まずはポケットに本の袖を差し込み、ベルトに反対側の袖を通し、シールで留めるというのが一連の作業となっている。だが、ソフトカバーの本は、ぐいんと表紙をたわめられ、ベルトに袖を通すのも楽勝なのだが、ハードカバーはそうも行かぬ。その名の通り表紙が板の如き硬度を誇っているので、たわめることはまず不可能。本を思いっきり反り返し、ギリギリの危険な力技で無理な角度を作り出し、素早く巧妙にベルトに通さねばならぬのだが、これが不器用者にとっては、千メートル級の山を越える以上に難事なのである。不覚にも何枚かのビニールカバーを駄目にして落ち込んでいると、先輩が魔法のようなカバーの掛け方を教えてくれた、まずはベルトに反対側の袖を通し、こちらの袖は本体からカバーだけを外し、それだけをポケットに差し込む。そしてそのカバーに改めて本体表紙を多少反り返しながら誘うように差し込むと、嘘のようにツルンと美しく収まり掛けられた状態になるのである。なので後半戦はこの魔法の手順を次第に己のものとし、古本をキレイな商品に仕上げることに快感を覚え始める。…ここまで書いて来て、あまりのミニマムさとマニアックさと伝わらなさ(恐らく)に恐縮しながらも、明日はどんな地道な仕事を割り当てていただけるのか、恐がりながらも楽しみに感じられた、一日をどうにか過ごす。
day1_vinyl.jpg
これはまだビニールをダメにするレベルの掛け方。この後、徐々に徐々に上達して行くのだが、次第にそのテクニックや知識が体に染み付いて来るに従い、暖簾分けしたお店が、本家のやり方(様々な業務上システム)を自然に継承して行くことについて、大いに納得してしまう。長年勤めて様々なテクが身に付いた時には、それが一番やり易いやり方になっているのだから、当然のことなのである。
posted by tokusan at 23:11| Comment(0) | TrackBack(0) | カテゴリ無し | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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