2016年11月15日

11/15古本屋バイト・イン・J町 その2

規則正しく起床して行動開始し、古本屋バイト二日目に向かう。途中開いたばかりの「日本書房」店頭ワゴンに足を留め、六藝社「風流記/石黒敬七」(裸本)河出新書「外國拝見/門田勲」などを計400円でいそいそ購入していると、いつの間にか出勤時間が迫ってしまっている。本を受け取り慌てて駆け出し、J町某店に滑り込む…遅刻しなくて、良かった…。本日は昨日より店員さんの人数が少なく、ひとりでレジ担当をする時間が生まれるらしいので、すでに私の心臓は、早鐘のようにドキドキドキドキ…。だが当然の如く時間は容赦なく進むのでそのまま開店に雪崩れ込み、まず最初の仕事となる、大量の秋元文庫の状態チェック&クリーニング&ビニールカバー掛けに突入する。本を様々な角度から眺め、カバーを外し、本文をチェック…あぁ、ほとんどの本に値段ラベルが貼り付いているじゃないか。これはなかなか手間がかかるぞ。レジを打ちながら、黄色い本との格闘にただただ没頭して行く。それにしても、根無し草のフリーランス稼業の私が、このように体験バイトとは言え、まともな社会人として労働している奇跡的状況は、奇妙な清々しい感覚を、身の内に湧き上げている。ちゃんとした会社員デザイナーとして勤めていたのは、もう二十年以上前のことなのか…。まぁたかが二日目で、労働などと偉そうに宣ってはみたが、所詮は働いているお店のシステムや全体像も見えておらず、自分で自分がするべき仕事を作り出せない、指示待ち状態なのである。だがそれでも、働きに行く場所があるということを、なんだか新鮮な喜びとして感じてしまっているのだ。まるで映画『男はつらいよ』シリーズで、主人公の寅さんが時々、恋愛事情やええ格好しいや気まぐれから、フリーランス・テキ屋稼業を辞めて正業に就いたような感じと言えば、何となくその奇妙な喜びが伝わるであろうか。もちろんあの考えは甘々なのだが、何はともあれちゃんとした仕事をしてるんだぞ!形だけでも変わったんだぞ!と言う、子供的高揚感と清々しさが、春一番のように私の胸にも吹き荒れてしまっているのである。そんなことを考えながらも、手は動かしている…くぅ、強敵の秋元文庫が、全然終わらないぞ…。

途中妙齢のファッショナブルな女性とイタリア人のカップルがお店を訪れ「江戸川乱歩ってありますか?」と笑顔で質問される。取りあえず文庫コーナーや単行本コーナーを教えるが、私の手には余りそうなので、先輩店員さんにすかさずバトンタッチする。女性がイタリア訛の英語を通訳するには、「「江戸川乱歩の古い日本語の本が欲しい」と彼が言っている」とのことである。とにかく古いヤツを、イラストが入っているものをというリクエストが続くので、昭和初期の全集や少年探偵もの(中の挿絵を見たら「オゥ、チープ!と叫んだ)を見せて行くのだが、どうも反応が芳しくない。そして合間合間に「アランポウ」という言葉が頻出する。あれ?もしや?と思っていたら先輩もとっくに気づいていたらしく「あの、もしかしたら、江戸川乱歩じゃなくて、エドガー・アラン・ポーをお探しなのでは?」とまずは女性に日本語で聞き、さらにイタリア人に英語で質問。すると探していたのは、やっぱりエドガー・アラン・ポーであったことが判明する。途端に女性が「江戸川乱歩じゃなかったの〜!」と大笑い。彼から『エドガー・アラン・ポー』の名を聞き、ポーを知らぬ彼女はすぐさま『江戸川乱歩』と脳内変換したために起こった。お茶目な微笑ましい事件であった。先輩が江戸川乱歩はポーの名をもじった作家名であることを丁寧に説明し、一同納得してその場が優しい笑顔に包まれる。うむ、なんだか面白いものを目撃したぞ。乱歩先生、あなたの名は今日もこの地上で、たくさん囁かれていますよ!

そしてようやく秋元文庫作業にケリを着けたのは、午後三時前。
day2_akimoto.jpg
その後は、市場で新たに仕入れた本と棚の在庫を照らし合わせ、不足分を補充して行く作業を繰り返して行く。これは棚質の恒常的な維持に関わる、地味で大事な作業である。そんな風に、バイト二日目は、本に触れまくった一日として、ジリジリと過ぎ行くのであった。
posted by tokusan at 22:45| Comment(0) | TrackBack(0) | カテゴリ無し | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック