2017年03月01日

3/1手応えある空振りをして草分けデザイナーのモダンさに触れる。

先日の取材対談時に手に入れた情報を基にして、初めて東急池上線の大崎広小路駅で下車する。するとそこは広小路どころが、巨大な『山手通』に高層マンションの壁が連なる、巨人の世界である。裏通りにふいと入り込み、次第に住宅街となる道を歩いて、目的のお店を探すが、これがなかなか見つからない…おかしいな。『峰原坂』を下って再び駅前に戻り、もう一度周囲を精査して行く。すると、とある緑の日除けを持つ電機作業店の閉ざされたガラス戸の向こうに、古本が並んでいるのを発見する。おぉ、本当だ!町の作業場に古本が並んでいる!だがこれは、どうも閉じている状態らしい。場内天井を透かし見ると、電気は点いているのだが、扉がぴったりと閉ざされ人の気配も皆無なのである…本来はガラス戸が全開となり、古本棚に直接手を伸ばせるようになっているのだろう。仕方なく今日は諦めるが、シチュエーションが素敵過ぎる古本販売を発見出来たことに、満足を得る。要再訪。…よし、せっかくだから武蔵小山の愛しの古本屋さん「九曜書房」(2009/03/26参照)を徒歩で目指すとするか。そのまま坂をグイグイ上がり高台を西北に向かって突き進んで行く。横に流れ落ちる道の先には、下の町が見え、視線のちょっと上には中空のマンション群。そしてさらにその上には、天空とも言うべき異様な高さを誇る超高層マンション群が、現実離れした存在感でそびえ立っている。まるでアニメの未来都市のような立体感が、人間のスケールをゼロに近付けてしまっているみたいだ。蟻になった気分で歩き続け、アーチの角度が立派な『谷山橋』で、遥か下になった池上線線路を越える。これも大きな『第二京浜』と『中原街道』を越えたところで、ようやく住宅と商店街と小工場が入り交じる、人間の世界となる。ちょっと下町の迷宮に迷いつつ、どうにか「九曜書房」に到着。店内500均棚に熱い視線を注ぐとともに、今日は左側通路通路棚のプレミア文学本を集中的に漁り、大いに楽しんでしまう。青木書店「鬼遊び/かこさとし・永田栄一」文藝春秋「四十歳のオブローモフ/後藤明生」天人社「小市民街/北村小松」を計4000円で購入する。

本日一番の獲物は3000円の「小市民街」。昭和五年刊のオリジナルで、北村小松初の小説集である。主に活動写真界を舞台にした小説を多く収録。巻末の広告には、デイクソン・カー「夜歩く(怪奇密封版)」の広告(「〜物語の最後の部分を封して提供する。それまでに謎が解けたら、封を切らずに本社にお戻しあれ。代金返却を確約する。」とあるが、犯人が間違ってたらどうなるんだろうか?代金じゃなくて本が戻って来るとか?あ、犯人が当たってるかどうかは、別に問題じゃないのか。でも、犯人を知りたいのは、人情だよなぁ…)もあり。しかし何より素晴らしいのは、この装幀である。瀟酒でグラフィカルな四点のイラストを配し、かなり高度なクオリティを誇っているのだ。右下の手首のイラスト部分には『KOH』のサイン。気になって目次裏の装幀者の名を確認すると『河野孝』とある…知らないな…いや、でも、なんか知ってる…河野孝…河野タカシ…コウノタカシ…河野鷹思…あっ!河野鷹思の本名か!思えば北村も河野も松竹の人間である。そのよしみで、装幀を依頼したのだろうか。うひゃぁ、とにかくこれは、とても嬉しいぞ!
syoushimingai.jpg
早速店頭で袋から取り出して記念撮影してしまう。
posted by tokusan at 17:22| Comment(8) | TrackBack(0) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
東横目蒲線の大崎広小路駅 ×  東急池上線の大崎広小路駅 〇

Posted by kotaro at 2017年03月02日 01:09
河野鷹思さん、お好きですか?
30年近く前ですが、仕事の関係で名古屋でだったと思いますが、お目にかかったことがあります。若かった私もドキドキしました。明る目のグレー・スーツの恰幅の良い紳士で、当時すでに現役からは退かれていたと思いますが、闊達なお人柄とお見受けしました。ちっとも偉ぶらないご様子は「本物」の証し。良い想い出です。
Posted by ぺんぎん at 2017年03月02日 03:43
kotaro様。ご指摘ありがとうございます。お詫びして訂正させていただきます。
Posted by 古ツア at 2017年03月02日 07:17
ぺんぎん様。大好きです。昔の映画関連のデザインなんかもう、大好物です。お目にかかったことがあるとはうらやましい。長生きされましたもんね。とにかくこの本は、ことさら嬉しい一冊となりました。
Posted by 古ツア at 2017年03月02日 07:19
もう一か所誤記がありました。

蟻になった気分で歩き続け、アーチの角度が立派な『谷山橋』で、遥か下になった目蒲線線路を越える。

目蒲線 ×  池上線 〇


東急目蒲線は 2000年(平成12年)8月6日 目黒線と東急多摩川線に分割され、消滅しています。
Posted by kotarao at 2017年03月02日 09:40
kotaro様。うわ!重ねてすみません。そしてご教授ありがとうございます。こちらも訂正しておきました。
Posted by 古ツア at 2017年03月02日 19:09
いつも楽しく拝見してます。
川崎市多摩区のブックセンターいとう中野島店が3月21日で閉店します。
家からまあまあ近いので結構通っていたのでとても残念。
店内放送では平成5年オープンとの事で24年の営業だったみたいです。
Posted by 本ジャマカ at 2017年03月02日 19:19
本ジャマカ様。あぁ!そうなんですよね。行こう行こうと思っていたのですが、すっかり忘れていました。思い出させていただき、ありがとうございます。
Posted by 古ツア at 2017年03月02日 21:37
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