2017年03月02日

3/2長崎の息の長い老舗を知る。

日中傘を持っていなかったので、雨に降られたりと悲しい目に遭いながら、午後六時の祐天寺。まだ雨はちょぼちょぼと降り続けているのだが、もはや濡れることも厭わず、駅東側の「北上書房」(2009/02/21参照)で古本休息をとることにする。店頭は完全防備の雨仕様だが、店内に入れば、通路狭めで古書多めのいつもの空間。棚上段〜中段と、その前に大量に横積みになった本を、時に頭を横にして背文字を見ながら、ゆるりと通路を一周。店主は真剣な表情と漲る気合いを発し、古書の値付に勤しんでいる。いつもはほとんど見向きもしない歴史棚から一冊、さらに右側通路のエンタメ文庫棚から一冊抜き取り、精算をお願いする。宮本書店「長崎の史蹟と名勝 雲仙及其附近/仁尾環」ケイブンシャ「うわさの恐怖体験大百科」を計750円で購入する。表に出ると、商店街の先の高架を、東横線がンガァ〜と走り抜けて行く。明かりを灯す古本屋の店頭と相まり、詩情豊かな一瞬が目の前に出現。
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「長崎の史蹟と名勝」は昭和七年刊の、地元の本屋さんが出版した、写真豊富な史蹟名勝観光ガイドである。その本文も充分魅力的なのだが、それより素晴らしいのは本文の合間に、計28ページの地元企業や店舗の広告が挟まれていることである。旅館・ホテル・文房具屋・食料品店・からすみ・洋傘・自動車屋・写真機&活動写真機屋・運動具&玉突臺屋…あっ!大好きなカステラの『福砂屋』もあるじゃないか!むむっ、高級食堂長崎名物『カフェー クロネコ』なんてのもあるが、銀座の『クロネコ』とは似ても似つかぬしょぼい店舗で、盆踊りみたいな飾り付けが悲哀を誘う。看板に目を凝らすと可愛いクロネコの絵が見えるのもご愛嬌。
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おぉ!そして古本屋さんの広告もあるじゃないか。『遠近にかかわらず参上』の「長崎書店」と『書店と良友とは近づくほど益多し』の「大正堂書店」である。長崎書店は今昔古本と新古雑誌や美術紙物を扱い、大正堂書店は古典稀書・各種資料とある。…この書店たち、いつまであったのだろうか?と手持ちの古本屋地図などで調べてみると、昭和五十三年の時点で長崎書店はすでに見当たらないが、ぬぉっ!大正堂書店はある!さらに時代を新しくして、1981年版や21世紀版で探してみると、ちゃんと載ってる!スゴい!創業が明治四十三年とあるのもスゴい!さらに最新の「古本屋名簿」にあたってみると…の、載ってる…さらにネットで調べてみると、げ、現役バリバリで営業中だ…すげぇ老舗だったんだ。今から八十五年前の広告には、『弊店は創業以来誠實を以て、今日の榮を得感謝に絶へません』『尚一層讀書界に盡す事を只管念願する次第であります』と、熱い言葉が掲載されている。長い年月を貫き、その純な心意気が、ビシバシと伝わって来るではないか!いつの日か長崎のこのお店に、この広告をそっと懐中に忍ばせて、訪れてみたいものである。
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posted by tokusan at 21:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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