2017年04月21日

4/21爆心地発行の写真集を手に入れる

昨日は下高井戸に流れ着き、フラリと駅踏切際のアーケード市場を潜り抜け、サッシ扉になってしまったが、それでも昔ながらの営業スタイルを保持している「豊川堂」(2016/07/04参照)へ。
toyokawadou0420.jpg
漂着の疲れを癒すために一冊を選び、ご婦人の座る番台に差し出す。第二書房「花とメノコと/竹内てるよ」(献呈署名入り。300円。アイヌ系ロマンス小説…)である。本を受け取るや否やご婦人は「あら?野坂さんかしら?」「いえ、竹内…」「あっ!てるよさん!てるよさんの本じゃなぁい。てるよさんね、この近所に住んでらしたのよ。ウチにも良く来ていただいて、奥で一休みしてもらったりしてたわぁ。わぁ〜懐かしい。晩年は身体壊して、で、拝み屋さんになっちゃってね〜」などと、一冊の本から飛び出す、予想もしなかった文学者話。瞬時に心と身体が、シュワッと癒されてしまう。

本日は野暮用で西東京方面に出没。帰途、西八王子に立ち寄り、以前素敵な本が安値で買えた「ガレージランドHarps」(2017/01/24参照)を訪ねてみる。だが、右から三列目通路に集まる古本は、すっかり枯れ果てた状態である。三ヶ月前の高揚を虚しく未練たらしく反芻しながら、諦め悪く薄暗い店内をウロウロ。すると、左奥の壁際のアイドル写真集コーナーに、違和感バリバリの一冊を発見してしまう。「HIROSHIMA 戦前 原爆 復興 写真輯録」である。昭和三十年発行の、42ページに『被爆前の広島』『原爆をうけた広島』『復興の広島』『原爆をうけた長崎』の写真を掲載したモノクロ写真集である。戦前と復興後の姿は平和そのものだが、やはり原爆投下後の写真は、ただただ街と人が被った恐るべき惨状ばかりで、まさに原民喜が言うような『新しい地獄』が克明に映し出されている。450円で購入し、帰りの電車内で改めて写真と対峙して行く。そして奥付を見ると、発行者の名に“吉川清”とある。あれ?これ特殊な閃光火傷をした背中を見せている写真の被写体が、この人ではなかったか…。気になり色々調べてみると、吉川清氏は『原爆一号』と呼ばれた被爆者で、戦後は原爆ドーム側で土産物屋を営み、訪れる観光客に背中の火傷を見せ、原爆の非道さを訴えていたそうである。写真集の奥付住所を良く見ると、『広島市 細工町 爆心地』となっている。もしやこの写真集、自費出版し土産物屋で販売されていたものではなかろうか…。
hiroshima.jpg
そんな物を手に入れて、西荻窪で途中下車する。「盛林堂書房」(2012/01/06参照)に立ち寄り、ある緊急作業の打ち合わせ。その報酬は……古本…買おうと思っていた古本、春陽堂 世界大都會最尖端ジャズ文學第四巻「モン・パリ變奏曲・カジノ/フィリップ・スーボウ フランシス・ミオマントル」(カバーナシ)である。分かりました。やりましょう。早急に一日で仕上げてみせましょう。がんばります!
posted by tokusan at 20:46| Comment(10) | TrackBack(0) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
古ツア様、大変なものを発見されました。当地の古本屋にもないようで、あるのは佐々木氏のものが多い。あるものですね。やはり、丁寧に捜し歩くことが重要。「合算」購入予定です。
Posted by 広島桜 at 2017年04月22日 06:14
吉川清氏、原爆ドーム近くの屋台のような土産物屋で、丸木位里の絵葉書とともに、この写真集を販売していたのでしょうか。もしやあの、原爆投下後の市街地で、すぐに営業を始めた本屋「アトム書房」と何か関わりがあったのではなどと、色々夢想してしまいます。
Posted by 古ツア at 2017年04月22日 20:11
当時の広島には「はだしのゲン」が始めたみたいな古本屋があったんですね。「アトム書房」については、木村伊兵衛が写真の記録を残しているそうですが。(因みに、例の銀座の古本露店の写真も、木村が撮ったもののようでした。)
戦後4年目に広島市街を撮った米兵のカラー写真に、「山陽書房」なる古本屋の店頭がチラと映っているのを見たことがあります。
消失風景、とりわけ古本屋のそれは、何故こんなにも我々の心を惹き付けるのでしょう?
Posted by 東奔西走 at 2017年04月25日 09:28
古ツア様、以前出された「古本屋」さんの写真は広島大学が市内にあったころのもので、不明でしたが、該当のもの、広電本社前でした。そのほかに、本通りでは、2軒ありましたが、いずれも閉店。今ではアカデミイ金座街店。また、原爆ドーム付近には現在は一店舗、以前はその前にもう一軒ありましたが、中心地に移転後しばらくして店主がなくなり閉店。以前の大学前には、今も、ネットもやって店売りの古書店。岡崎氏が広島に訪れた折に、偶然遭遇。その八百屋さんのような古書店でしたが、そのあとには、アカデミイ紙屋町店。ところで、「山陽書房」はどこでしたか?記憶にはないような。
Posted by 広島桜 at 2017年04月25日 19:24
木村伊兵衛が「アトム書房」の写真を撮っていたとは知りませんでした。調べると確かに!そして私が消えた古本屋の光景に心掻き乱されるのは、もう見られない入れないということも大きいのですが、やはり中にもしかしたら、スゴい本が並んでいるかもしれないと考えてしまう、果てしもない欲望が、一層の喪失感を引き起こしていると想像できます。
Posted by 古ツア at 2017年04月26日 20:31
広島桜様。広島も、古本屋事情はだいぶ変化していますよね。私ももう何年もご無沙汰しており、その間に消えた店もあれば、新しく誕生したお店もあります。いつの日か、また古本を買いに訪れ、裏路地の老舗お菓子屋でバターケーキも買って、貪り食べたいなと、常々夢想しております。
Posted by 古ツア at 2017年04月26日 20:34
古ツア様。岡崎氏や古ツア様が訪れた時よりも変貌しています。若手の古本屋さんたちが市内に進出されていないのは場所がないということでしょうか。結構、古書展は活発ですので(ネット販売も含めて)、楽しみがあります。雑本好きには物足りませんが。
Posted by 広島桜 at 2017年04月27日 05:33
うっかりミスで、名乗り忘れるわ、広大なスペースを取ってしまうわで、御免なさい。(出来たら修正お願いします)
「アトム書房」の写真、見てみたいですね。冷戦期のアメリカには、「アトミックカフェ」って名前の喫茶店もあったそうですけれど、こちらは「アトミックブックショップ」か。
ところで、かねてより老舗の古書店が、昔の店内の様子が写っている写真を公開してくれないものかと思っていたのですが…この度の新刊では、そうした私の願望を満たしてくれる部分があるようで、凄く感謝しています。明後日が楽しみです。
Posted by 東奔西走 at 2017年04月27日 09:06
東奔西走様。本日「中央線古本屋合算地図」が無事に出来上がって参りました。古本屋本というより、バラエティに富んだ古本屋ムックの趣です。しかしそのすべてが中央線沿線限定…まったくもって愉快痛快です!
Posted by 古ツア at 2017年04月27日 21:48
古ツア様、5月が近づくと、古書者にはわくわく。当地でもざわつきがあるようで、穴場は該当の古書展ではなく、フリーマーケット。当地の戦後の古書店の流れを把握できる人は、現在は隠遁された古書店主、南海xxの方だけ。なんとなく調査したくなります、「合算」ができた今は。山田風太郎、当たり。
Posted by 広島桜 at 2017年04月29日 08:44
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